【艦これ】響「雨」 (13)

駆逐艦響、進水日記念 支部に上げたものをこちらでも上げてみます
ちょうど梅雨の時期なので合わせた話を記念にひとつ置いていきます
久しぶりの投稿なのでどこか変だったりしたら申し訳ないです


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さあさあと雨が降る


いつもは澄み渡っている海は、雨粒の波紋で揺れている

窓から見える紫陽花は、まるで雨を喜ぶように華麗に揺れている


私は梅雨の季節は嫌いじゃない こうやって外を眺めるだけで、いろんな違うものが見える


私の妹の電はてるてる坊主をつくっている


「ここをこうして… こう… 出来たのです!」

だれでも出来るようなことを、電はまるで幸福が訪れたかのように無邪気な笑顔を見せる



「電、何作ってるの?」

もう一人の妹の雷が手持ち無沙汰そうに電にそう話しかけた

「てるてる坊主なのです! 明日は遠征があるから晴れてほしいのです!」

「いいわね!私にも作らせて!」


雷の明るい声を聞いて私の姉の暁が、お昼寝から目を覚ました

「…うぅん、どうしたの? ふあぁ…」

「暁おねえちゃんもどうですか? てるてる坊主を作ってるのです」

「へえ、いいじゃない 雨が続いてるからぴったりね!」


「響もつくらない?」

と、雷が私に声をかける

実際の所待っていた
私も入ろうかな…と思っていたからちょうどよかった

「…私かい?」

「元気ないわね、なにか考え事?」

「ううん 外を眺めてただけさ」

「明日みんなで遠征でしょ? 響もつくりましょ!」

「うん いいね」


ちり紙をひとつ丸めて、もう一枚のちり紙でつつんで紐や輪ゴムでしばる

そんな簡単な作業が どこか心を寂しくさせる雨が聞こえる中で とても良いものに感じた


「見て!私は色を塗ってみたわよ!」

暁が自慢げそうにちゃぶ台の真ん中に差し出す


「…暁のそれは…なんだい、怪獣?」

「か、かいじゅう!? なんでよっ!」

どんなカタチかは言葉ではとても表現できないが、なにやらこよりをつくって頭から突き出していた

「もう、ひどいじゃない響 私を作ってたのよ?」

「…ああ、ここの跳ねている髪かい?」

「そうよ!ちゃんと私が響たちの分も作ってあげるわね!」

とてもではないが暁が自分というそれは、独特な画家の絵を表したようなものだ


「こよりを刺すんじゃなくて、横をやぶって髪っぽくしたらどうだい?」

「… そ、そうね!それもいいわね!」


暁はいつもの調子みたいだ

窓際に、ちょっと作りすぎたてるてる坊主を吊るした

私たち四人のてるてる坊主をまん中にして、いっぱい吊るした

「これできっと明日は晴れるのです!」

「ふわあ… 一段落したらまた眠くなってきちゃった」

「もう、暁また寝るの? 夜眠れなくなっちゃうわよ?」

「大丈夫よ、私はお姉さんなんだから!」

「…まぁ、それくらいにしておきなよ それにもう少しで夕飯だ」





「ちょっと出てくるよ」

「おでかけなのです?」

「外は雨だし、中を歩いてくるだけだよ 少し動きたいんだ」

どうしても梅雨だと外には出られない だけど、建物は広いので散歩するにはちょうどいい広さだった



来る途中、廊下で雨を眺める艦娘 楽しげに話しながら廊下で立ち話をする艦娘


…なにやらいつにもまして不幸なオーラを漂わせる艦娘


とくに会話をするわけではないが、通りすがったみんなはにっこりと笑いながら挨拶をしてくれた

こう建物が広いと一日顔を合わせない艦娘もいるほどだから、夕刻を過ぎてもそう珍しくない

…結構歩いたかな そう窓の外を眺めながら歩いていると、いつのまにか執務室の所まで来ていた

電や雷、暁がいた部屋とは執務室は別棟にあるのだ


次いでに、司令官にも挨拶をしていなかったので顔を出して見ることにした


こんこん と戸を叩く


「どうぞ」
と、声が聞こえたので戸を開ける



「どうかしましたか?」

そこには大淀さんがいた

いつもは秘書は私がやっている 
だけど、最近まで忙しかったので大淀さんに代わってもらっていた


「… いや、たまたま寄っただけなんだ 司令官は?」

「それが、昼ごろ出掛けてからまだ帰ってないんです 傘もお持ちになってないので…」

そうか、司令官は出掛けて雨宿りをしているんだ

夕刻にはいつも椅子に座っているので、なんとなくそう思った


「私が迎えに行くよ どこにいるんだい?」

「本当ですか、助かります」

ぴちゃ、ぴちゃと足が水を叩く

司令官の分の傘をもって、出掛けているであろうところへと歩く


外から見ていた梅雨の景色もまたいいもので
室内から聞く静かな雨音も好きだったが、外に出ると一変 ちょっと騒がしい


梅雨の季節だけど雨脚は強くなく、白と黄色のラインが特徴のレインコートを羽織って外に出た

帽子は濡れるといけないので置いてきた 

足は出てから気付いたが、革靴のままだった 

大丈夫と思って戻らなかったが、歩を進める旅に靴の中が少しずつ濡れていくのが分る


「これは失敗だったかな」

呟く声も雨音に呑まれて、私は歩いた


雨の降る街中はいつもと違う空気だった

昼間に蒸されたコンクリートのにおいが立ち込める


傘がなく頭を押さえながら帰宅をいそぐ人、軒下で雨宿りする人

水たまりをふんで喜ぶ子ども たくさんの人がいる



やがて人通りも減ってくる道 歩く人もまばらになってきた


「ちょっと休憩しようかな…」

意外と時間の掛かる距離だったかな いや、正確な時間は時計を持ってないのでわからないけど。


ぐっしょりぬれた靴を脱ぐ ソックスも蒸れていて気持ちがわるい


雨は地面に落ちるのをいそぐように、先程より雨脚を強める

司令官が居るというところへはもう少しだ 休憩もほどほどに、靴を履き立ち上がる



すると、白い服を纏った男性が走ってくる



「司令官!」

顔を下に向け、頭を抱えて走っていたので声を大きくして、その司令官であろう人に声をかける

「…響!」

「まいったよ…突然雨が降るものでな…」

「今は梅雨の季節なんだから、傘は持っていくべきだよ」

そう言いながら、私のものより少し大きめの傘を差し出す

「すまん、ありがとう 大分濡れただろうな、靴も」


すっかり水に濡れて色が濃く見えるようになった靴を見て司令官はそう言う

「うん これは失敗だったよ  大淀さんも心配してる 帰ろう」

「ああ、そうだな」


そう言って傘をさして歩き出す

雨の音は、どこか心を寂しくさせるけど 

こうやって、雨のおかげでふたりきりになれる時間も そう悪くない



綺麗に咲いたあじさいのように会話に花を咲かせてると 

歩いてきて遠く感じた道も、すぐ終わってしまうように感じた


雨はいい。 心を洗い流してくれるようだ


そんな雨のおかげで、何気ない姉妹の会話も、司令官との会話も特別なように感じられた



「…雨」


「どうした?」


「司令官は、雨が好きかい?」


「ああ こうやってお前と歩く日の雨は好きだよ」


「私も」



終わり 数えてみたら2000文字くらいだったけど、意外とレスにすると短いね
二三時間で仕上げた割には綺麗にかけたと思います 見てくれるひとがいるかわかりませんが
とにかく響、進水日おめでとう! 依頼してきます

おつ

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