志希「他人のことを嫌いになっちゃう薬!!」 (178)

志希「か~んせ~いっ!!」



モバP(以下P)「なんてもん作ってんだ」

志希「にゃはは~もっと褒めていいんだよ~?」

P「1ミリも褒めてないぞ」

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志希「てことでさっそく…」



P「いやどす」

志希「むぅ、まだ何も言ってない~」

P「どうせ実験体にさせられるんだろ?分かってるんだぞ!!」

志希「えぇー?だってもう慣れたでしょ?」

P「まぁな…ってそういう問題じゃない」

P「そもそもなんでそんなもん作ったんだ?」

志希「いやー、他の薬作ってたら失敗作として出来上がっちゃったってわけ」

P「えぇ…なんで失敗作にそんな効能があるんだよ…ていうか失敗作飲ませようとしてたのか」

志希「美味しいから大丈夫だよ」

P「嘘つけ」

志希「まぁまぁとりあえず飲んでみなって?」グイッ

P「うっ、グエッ、待て待て待てせめてちょっとくらい説明してお願い」



志希「もう~注文の多い実験体だなぁ~」ヤレヤレ

P「酷すぎる」

志希「簡単に説明するとねー」

P「うん」

志希「コレを飲んだあとに最初に顔を見た人のことを大ッ嫌いになっちゃうわけ!」

P「うん…」



志希「じゃあいこうか」グググ

P「今の聞いて『分かった!やる!!』なんて言うわけないだろ!やめろやめてください」グググ

P「だいたい誰のことを嫌いになれって言うんだ。この事務所には天使しかいないってのに」

志希「それはさすがに実験に付き合わせてるってことであたしがやるよ」

P「志希か……でもなぁ…うーん…それってどんくらいで治るの?」



志希「さぁ?」

P「ダメだこいつ。早くなんとかしないと」

志希「まぁとりあえず効果について詳しく知りたいだけだし、すぐ解毒剤作るから大丈夫だよ~」

P「…はぁ…まったく、仕方ないなぁ」

志希「さっすが!物分りがいいねぇ♪」

P「ちゃんと解毒剤作っといてくれよ?」

志希「ふっ、任せなさい」ドヤ



P「じゃあ飲むぞ?」

志希「グイッといっちゃって!!」ワクワク


ゴクゴク…

P「ふぅ…不味い。まるでスタドリとエナドリとイチゴパスタを混ぜたような…」

志希「さあっ、しっかりこっち見て!どうどう!?なんか感じる!?」ワクワク

P「んん~?別になんにも…」



P「うっ!?」

志希「!!」

P「うぐぐぐぐぐ…」

志希「だ、大丈夫~?身体に害があるものは入ってないはずだけど…」

P「ううぅ…」

P「……」



志希「ど、どう?」

P「……」

志希「おーい?大丈夫~?」

P「……」



P「…志希」

志希「あ、大丈夫だった?よかったよかった、さすがの志希ちゃんもちょっと焦った――」



P「お前そろそろレッスンの時間だろ」

志希「えっ、あ、うん」

P「とっとと準備して行け。お前が遅れたら俺まで怒られるんだからな」スタスタ

志希「う、うん…」

P「……」ガチャバタン



志希「……」ポカン

志希「………」


志希「……」


志希「…」



志希「…ちょっと…やりすぎちゃったかも…」

今日はここまでです

―――――
―――


トレーナー「はいっ、今日はここまで!お疲れ様!」

「「お疲れ様でした!!」」



志希(はぁ…やっと終わった~…なんかあんまり集中出来なかったな~)


フレデリカ「どーん!!シキちゃんお疲れ様ー♪」ギュー

志希「おっ、お疲れ~。うーんレッスン終わりのフレちゃんの匂いハスハス」クンクン

フレデリカ「きゃー!ヘンターイ!!」

志希「むふふふふ♪」ハスハス

奏「レッスン終わったばかりなのに相変わらず元気ね。志希はさっきまでちょっと難しい顔してたみたいだけど」

志希「へ?そう?」

フレデリカ「なになに?シキちゃん悩みでもあるの?それならフレちゃんにどんどん相談してねー!!」

奏「険しい顔なんて似合わないわよ?」フフッ

志希「…にゃはは~大丈夫だよ。心配してくれてありがとねー!」



志希(あちゃー顔に出てたかー…解毒剤の調合成分とか考えながらやってたからなー)

志希(…よしっ、とりあえず薬の経過を見てみよう!もしかしたら効果が切れて治ってるかもしれないし!)


―――――
―――


志希「ふぅ~…なんか緊張しちゃうな~」

志希「…いざっ!!」ガチャ

志希「ただいま~♪」



ちひろ「あら志希ちゃん、お疲れ様♪」

志希「お疲れ様~」

志希(さて…どうだろ?)



P「……」チラッ

P「……」カタカタカタ



志希(うわぁ~…チラ見するだけで何も言わず…)

ちひろ「?プロデューサーさん、志希ちゃん帰ってきましたよ?」

P「はぁ…そうですか」カタカタカタ

ちひろ「?…し、志希ちゃんは今日はもう予定ないわよね?」

志希「あ…う、うん…ちょっと忘れ物取りに来ただけだからすぐ帰るよ~」

ちひろ「そ、そうですか~」チラッ

P「……」カタカタカタ

志希「……」



志希「うーんやっぱりダメだったかぁ…ちひろさんも困って思いっきり気使ってたよねー…」

志希「…早く解毒剤作らなきゃ!」

―――――
―――


志希「うーんと、ここがこうだから…あぁ違う違う。えーっと…」カキカキ

志希「……」カキ

志希「……」

志希「…はぁ。なーんか頭働かないにゃ~」

志希「いつもならパパッとできちゃうのに…」



志希「…なんでだろ」

―――――
―――

ピピピッピピピッ

志希「うぅーん…?」ネムネム

志希「……」

志希「……」ダラダラ



志希「ち、遅刻する!?」バッ‼︎



志希「マズイよー!いつもならともかく今遅刻するのはマズーイ!!」アワアワ

志希「解毒剤作ってたら寝ちゃったんだ…ていうか結局全然完成しなかったし…」

志希「もし遅刻なんてしたら…」

―――――

P「お前クビだから」

―――――

志希「あわわ…」

志希「急げばまだ間に合うよね!急げ急げー!!」ダッシュ

―――――
―――


志希「ハァハァ…よし!なんとかセーフかな!」

志希「でもちょっと怒られちゃうかも…」


志希「おはようございまーす!!」ガチャ



P「……」カタカタカタ


志希(…ちひろさん今はいないみたい…)


P「……」カタカタカタ

志希(…正真正銘の無視かぁ…さすがにキツイかなぁ…)

志希(ちょっとくらい怒ってくれた方がまだよかったかも…)

P「……」カタカタカタ

志希「……」

P「……」カタカタカタ


志希(…早く準備して行こっと…)トボトボ

今日はここまでです

―――――
―――

志希(はぁ…今日のお仕事、全然上手く出来なかった…)

志希(今まではなんだかんだちゃんと出来てたのに…こんなの初めて…)

志希(…だけどまた、きっと怒ってもくれないんだろうな)


志希(…どうしよ、一回事務所に戻ろっかな…)

志希(……)

志希(でも…戻ったってまた…)

志希(……)


志希「…帰ろ…解毒剤作んないと…」

―――――
―――


志希「……」カチャカチャ

志希「……」カチャカチャ


志希「…出来た…たぶん」

志希「でも、なんだろ…確信が持てないっていうか…ちゃんと出来てるのかな…」

志希「…いつもはこんなことないのに」

志希「……」


志希「もしダメだったら、どうしよ…」

―――――
―――


志希「…この扉の先に、いるんだよね…」

志希「気分はさながら、バレンタインデーに好きな人にチョコを渡そうとする乙女だねー、なんて…」

志希「……」

志希「ちゃんと話聞いてくれるかなぁ…」



志希「…よしっ」

志希「クヨクヨしてたって始まらない!」ガチャ

志希「おはよーう♪」



P「……」カタカタカタ



志希(…また二人っきりか~……でも今日はその方が都合いいかな)

志希(……)

志希(おしっ!志希にゃんファイト!!)



P「……」カタカタカタ

志希「…あの…プロデューサー…」

P「……」ピタッ

志希「……」ドキドキ



P「…なに?」

志希(うっ…すっごく冷たい目…)


志希「ちょ、ちょっとお願いがあって…」

P「……ハァ、なんだよ」

志希(よかった、聞いてくれそう…)


志希「コレなんだけど…ちょっと飲んでみてくれないかなー、なんて……にゃはは~…」スッ

P「……」

志希「……」ドキドキ





P「お前…いい加減にしろよ」

志希「…っ!」


P「いつもいつも俺にふざけた薬ばっか飲ませて……楽しいか?」

志希「ち、違うの!コレはこの前の解毒――」

P「俺のことを都合のいいモルモットとでも思ってるんだろうけどな」

志希「そ、そんなこと…!!」



P「とりあえず、金輪際お得意の手作りお薬は俺の前に持ってくるな。反吐が出る」ガタッスタスタ


志希「あっ…」


P「……」ガチャバタン

志希「……」

志希「…あはは……もっと、嫌われちゃった…」

志希「……」



志希「…どうしたら、いいの…かな」

今日はここまでです

ちひろ「これで志希ちゃん、ちゃんと反省してくれるといいですね」

P「ですね…いや、その前に俺の胃がダメになりそうです…げふっ」

―――――
―――


志希「はぁ…どうやったら飲んでもらえるかなぁ…」

志希「でももうあたしが頼んだって絶対ムリだよね…」

志希「……」

志希「…そうだ。プロデューサーが休憩のときにいつも飲んでるお茶にこっそり入れて…」

志希「あのお茶、いつもちひろさんが淹れてるやつだから、プロデューサーにバレないように混ぜてくれるように頼めば…」

志希「…ちょっと卑怯だけど、もうこれしか思いつかないよ…」

志希「決行は明日だね。とりあえず今日は仕事行かなきゃ…」

―――――
―――


志希「…おはようございまーす」ガチャ


ちひろ「おはよう、志希ちゃ――」

P「ちひろさん、そこの資料取ってもらえます?」

ちひろ「え、あっ、はい…」

志希「……」

ちひろ「…どうぞ」スッ

P「ありがとうございます」


志希(…なんかもはや慣れてきちゃった…全然嬉しくないけど)


志希(とりあえず、プロデューサーが休憩するまで待ってよっと…)

―――――
―――


志希(全然休憩しない…)

志希(あたしたちのために頑張ってくれてるんだな~……こんな状況で気づくなんて皮肉なもんだね…)



P「ふぅ~…疲れた~」ノビー

ちひろ「あら、休憩ですか?プロデューサーさん」

P「えぇ、ひと段落ついたんで」


志希(…!!)


ちひろ「じゃあお茶淹れてきますね♪」ガタッスタスタ

P「いつもありがとうございます~」



志希(今だ…!!)ササッ

ちひろ「ふんふんふふーん♪」コポコポ


志希「ちひろさん…!」コソコソ

ちひろ「ひゃあ!?し、志希ちゃん!?一体どうし――」

志希「しーっ!静かに静かに!プロデューサーに気づかれちゃう!」

ちひろ「ぷ、プロデューサーさん…?…そういえば志希ちゃんとプロデューサーさん、最近なんだかギクシャクしてますよね?それと何か関係が?」

志希「まぁ…実はちょっとね~。にゃはは…」

ちひろ「そうですか……まぁ二人のことにとやかく言うつもりはないですけど、ちゃんと仲直りしなきゃダメですよ?」

志希「…うん」


ちひろ「それで、ご用件は?何か手伝えることがあるなら何でも言ってくださいね」ニコッ

志希「うぅ、ありがとうちひろさん…久しぶりに人の優しさに触れた気がするよぉ…」

ちひろ「えぇ…そこまでですか…」

志希「単刀直入に言うと…そのプロデューサーのお茶にコレを入れて欲しいんだ」スッ

ちひろ「コレって…志希ちゃんが作ったお薬ですか?」

志希「まぁそんな感じかなぁ」

ちひろ「…でもそんなことしたらプロデューサーさんもっと怒っちゃうんじゃないですか?また何か変な効果があるんですよね?」

志希「え、えぇっとぉ…」


志希(やっぱりそう言われちゃうよねぇ……そうだ!!)

志希「こ、これはねっ!お茶を美味しくしてくれるエキスなの!コレを入れれば高級茶がご家庭でも気軽に楽しめるのだっ!!」バーン


志希(…キツイかな)



ちひろ「へぇ~、スゴイですね!そんなものも作れちゃうなんて…」


志希(セーフ…)フゥ


ちひろ「じゃあ入れてみましょっか」

志希「あ、うん」


ポチャポチャ


志希(…うまくいきますように)

ちひろ「それじゃあ持っていきますね」

志希「うん、お願い…」

ちひろ「大丈夫ですよ!志希ちゃんがプロデューサーさんのためを思って作ったんですから!!」

志希「そ、そうだよね…アハハ」

志希(なんか罪悪感が…)

ちひろ「プロデューサーさん、お待たせしました!」コトッ


志希「……」コソコソ


P「お、ありがとうございます~…ではいただきますね」ズズズッ


ちひろ「どうですか?」


志希「……」ドキドキ


P「あれっ?なんかいつもと違いますね。茶葉変えました?」ズズズッ

ちひろ「おっ、気づきましたか?なんと今回は、志希ちゃんにお茶が美味しくなるエキスっていうのを貰ったので入れてみたんです♪」


志希(ありゃりゃ!?言っちゃったよちひろさん…)

志希(でもまぁ…ちゃんと飲んでたし、効果が出るには十分なはず…)

P「へぇ…そうなんですか…」

ちひろ「やっぱりいつもより美味しかったですか?」

P「…まぁ、そうですね」

ちひろ「ふふっ、よかったです♪……あっ、もうこんな時間!私ちょっと外に出る用事があるので行ってきますね!!」ガタッ

P「そうなんですか。お気をつけて~」

ちひろ「はいっ、行ってきます~」タタタッ

P「行ってらっしゃーい」フリフリ


ガチャバタン‼︎



P「……」


志希(ちひろさん行っちゃった…)


志希(大丈夫、だよね…)

P「……」コトッスタスタ


志希(…?湯呑み持って…給湯室…?)

志希(…ついてってみよっと)コソコソ


P「……」

志希(……?)



P「……」スッ



ジャバーッ!!



志希(…!?)

志希(捨てた…?なんで?)


P「ハァ、せっかくちひろさんが淹れてくれたのに無駄になっちまった…」

P「ホント余計なことしてくれるよなぁ、アイツ」



志希(…!?…解毒剤、効いてない…?…失敗、した…?)

P「あーあ…イライラするなぁ~」


志希(……)


P「マジでアイツ…」






P「事務所辞めてくんねぇかなぁ」



志希(…っ!?)

志希(……)

志希(……)

志希(……)


タタタッ…

バタン



P「ん?誰か居たのかな…」

P「まぁいっか。さぁ、気を取り直して仕事仕事!!」

―――――
―――


志希「……」カキカキ

志希「……」カキカキ

志希「……」カキカキ


志希「……」カチャカチャ

志希「……」カチャカチャ

志希「……」カチャカチャ



カチャカチャカチャカチャカチャカチャ……



―――
―――――

今日はここまでです

―――――
―――


志希「……」カチャカチャ


ピピピッピピピッ


志希「ん?…あっ、もう朝じゃん…」

志希「…一睡もしてないや」

志希「解毒剤も改良してみたけど完成してないし……ホントこんなの初めてだよ」

志希「まぁ完成したところで飲んでもらえないんだけどね~。アハハハ…」

志希「…ハァ」


志希「えーっと今日は……レッスンかぁ」

志希「…みんなの前では元気でいないとね~」

―――――
―――


志希(眠いし、なんか頭もボヤーッとする…)

志希(それも相まって、この扉を開けるのがなんか憂鬱に感じてきちゃったよ)

志希(…もう今日からは無難に過ごそっと。これ以上傷つきたくないし…)


志希「おはようございまーす…」ガチャ



周子「それでねープロデューサー。そんとき美嘉ちゃん顔真っ赤になっちゃって~」

奏「あのときの美嘉すごく可愛かったわ」クスクス

P「マジか。くそ~、見たかったわ~」

美嘉「ちょ、ちょっと二人共!あのときの話はやめてー!!」


ワイワイガヤガヤ


志希(……)


フレデリカ「おっ、シキちゃんおはよ…ってどうしたのその目の下のクマ!?」


周子「ホントだ…寝不足?」

志希「あっ、うん…」

奏「まったく…どうせまた怪しい薬でも作ってたんでしょう?」

志希「にゃはは~…バレちゃった?」

フレデリカ「夜更かしなんていけません!ママはあなたをそんな子に育てた覚えはありませんよ!!」

美嘉「いや、ママでもないでしょ…」

志希「アハハ…」チラッ


P「……」カタカタカタ


志希(…ハァ)


奏「……」

周子「レッスン大丈夫なんー?今日はキツめってトレーナーさん言ってたよ?」

志希「だいじょぶだいじょぶ~。別に徹夜したのだって初めてなわけじゃないし」

美嘉「そっか……あっ、そろそろレッスンルーム行った方がいいかな?」

奏「そうね。それじゃ行きましょうか」

フレデリカ「はーい♪プロデューサー、行ってきまーっす!」


P「おー。頑張れよー」フリフリ


志希(その『頑張れ』にあたしは入ってないんだろうな~、なんて…)

志希(ハァ、卑屈になりすぎかな…)

―――――
―――


トレーナー「ワン、ツー、スリー、フォー!」


志希「ハァ…ハァ……」タッタッ

志希(キッツイにゃ~…寝不足でのレッスンをちょっと舐めてたかも…)


志希「ハァ…ハァ……あっ」グラッ


ステンッ


志希「いてて…」

志希(しまった…コケちゃった…)


フレデリカ「シキちゃんだいじょぶ!?」

志希「だ、だいじょぶだよ~。ちょっとつまづいちゃっただけだから」

奏「…志希あなた、さっきから足元おぼつかないわよ?寝不足以外にも何かあるんじゃない?」

志希「へ?」

美嘉「熱とかあったりするんじゃない…?」

トレーナー「どれどれ……うん、運動中で身体が温まってるとはいえ、これはちょっと……医務室に行った方がいいですね」

志希「え?いやいや~大丈夫だよ~。それに休んだらみんなに迷惑――」

トレーナー「ダメです!自分ではそこまで辛くないつもりでも、身体は嘘をつきませんから」

周子「そうだよ~志希ちゃん。あたしたちのことは気にせずちゃんと休みな~」

志希「でも…」

奏「志希」

志希「ん?」



奏「一人で考えすぎないで、もっと周りに頼っていいのよ?」

志希「!…うん」

―――――
―――


先生「じゃあ、とりあえず熱が下がるまではここで安静にしててね」

志希「はぁ~い」


志希「ふぅ…結局休んじゃったよ」

志希「……」

志希「…奏ちゃんには、なんか変だって気づかれちゃったかな~。バレないようにしてたんだけど」



奏『一人で考えすぎないで、もっと周りに頼っていいのよ?』



志希「……」

志希「……」

志希「…よしっ」

―――――
―――


志希「お疲れ様~」ガチャ


周子「おっ、志希ちゃん!もう平気なん?」

志希「うん。もとからそんなにヤバかったわけじゃなかったしね~」

フレデリカ「そっか!いやーよかったよかった!!それじゃ退院おめでとうパーティしよっか!!」イェーイ‼︎

美嘉「いやいや!さすがに大げさすぎるでしょ!?」

志希「にゃはは~」


奏「それで志希。私たちに何か言いたそうな顔してるけれど、どうしたの?」

志希「…うわ~またバレちゃった?」

奏「ふふっ、女のカンは鋭いのよ♪」

フレデリカ「ん?なになに?まさか志希ちゃん…アタシに愛の告白!?キャー!!」

周子「フレちゃんさっきから飛ばしすぎだよー。ツッコミ役の美嘉ちゃんがついていけてないって」

美嘉「いつからツッコミ役に!?」



奏「ほら、みんなふざけないの。……さ、話してくれるかしら?」

志希「…実はね」


かくかくしかじか

奏「まったく…何やってるのよ」フゥ…

志希「い、いや~まさかこんなことになるとは思わなくて…解毒剤もすぐ完成させるつもりだったし」ニャハハ…

周子「それにしてもスゴイね~。そんなものも作れちゃうなんて志希ちゃん天才だね」

志希「ふっふっふ、まぁね~」

美嘉「言ってる場合かっ!」

フレデリカ「ナイスツッコミ!!」



奏「とりあえず、プロデューサーさんになんとかして薬を飲ませることが重要ね」

周子「そだね~。まぁあたしたちが協力すれば楽勝楽勝」

志希「…手伝ってくれるの?」

奏「当たり前でしょ?私たち、同じグループのメンバーで仲間なんだから」フフッ

フレデリカ「それに、元気がないシキちゃんなんて見たくないし!」

美嘉「元気がありすぎても困るけどね★」



志希「みんな…ありがと!!」

続く

―――――
―――


志希「みんな協力してくれるとは思わなかったな~」

志希「…よしっ!解毒剤がんばろ!!」

志希「みんなのおかげでヤル気出てきちゃった!!」

―――――
―――


志希「ここがこうで…」カチャカチャ

志希「……」

志希「できた!!」


志希「ハァ~長かった~。まさかこんなに手こずるとはなぁ…まだまだ勉強が足りないね~」


志希「とにかく、みんなに伝えに事務所行こっ!!」

―――――
―――


周子「おっ、完成したん?さっすが志希ちゃん」

志希「まぁね~♪」

フレデリカ「うぅ…この日をどんなに待ちわびたことか…」シクシク

美嘉「そんなに待ってないでしょ…」


奏「それじゃ早速作戦を決めましょう」

フレデリカ「おぉ!なんだか盛り上がってきたね」ワクワク

美嘉「うーん…作戦かぁ…」

フレデリカ「はーい!!全員で力づくでプロデューサーを押さえつけちゃえばいいんじゃないかな?」

美嘉「さ、さすがにもうちょっと平和的にいこうよ…」

周子「じゃあ…お色気作戦?」

美嘉「えぇ!?どういうこと!?」

周子「だからー、あたしたちでプロデューサーを誘惑して、怯んだところにグッと…」

奏「なるほど」

美嘉「ちょっとちょっと!ダメに決まってるじゃんそんなの!!」

美嘉「みんなもっと真面目に考えて!」

周子「十分真面目だったんだけどな~」


奏「志希はどうやって飲ませようとしたの?」

志希「プロデューサーの飲んでるお茶に混ぜたんだよ。解毒剤自体が失敗作だったからダメだったけどね~」

奏「…ならもう1回それで行きましょ」

美嘉「え?でも1回失敗してるからプロデューサーも警戒してるんじゃない?」

奏「何もそっくりそのままもう一度やるわけじゃないわ」

周子「と言うと?」

奏「まず最初は普通のお茶を出すの。そしてそれをプロデューサーが飲んだら、私たちの内の誰かが部屋の外に呼び出す」

周子「ふむふむ」

奏「その間に残りのメンバーが薬をお茶に混ぜる。戻ってきたプロデューサーは、まさかさっきまで飲んでたお茶にこの短時間で細工されてるとは思わないでしょう」

フレデリカ「なるほどー。さっきまで飲んでたお茶だからこそ油断してるってわけだね!」

美嘉「でもそんなにうまくいくかなぁ…もし解毒剤入れたのバレちゃったら…」

周子「まぁたしかにプロデューサーさんってたまに常人とは思えないことをサラッとやっちゃうしね~」

フレデリカ「心配しすぎだよ~。さすがのプロデューサーでもそれはないよ!」

周子「根拠は?」

フレデリカ「ない!!」キリッ

奏「でもそんなことまで気にしてたらどんな作戦もダメになっちゃうわよ」

美嘉「まぁ…そうだよね」


奏「どうかしら?志希」

志希「…うん。イケると思う!」

志希「みんなホントにありがとね!」

―――――
―――


奏「それじゃ、役割の確認をするわね」


奏「周子がお茶を淹れてくる係」

周子「ほーい」

奏「フレちゃんと美嘉がプロデューサーを部屋から出させる係」

フレデリカ「ハーイ♪」

美嘉「心配だなぁ」

奏「この間私と志希は部屋に隠れていて、ここですかさず解毒剤を入れて、また隠れる」

フレデリカ「ダメだったときはアタシが合図するからみんなで飛びかかってね~」


奏「さて…作戦開始ね」


志希(…今度こそ!)

―――――
―――


P「……」カタカタカタ

P「…ハァ~」ノビー


周子「ん~?プロデューサーさん、もしかしなくてもお疲れかな?」

P「ん、周子か。まぁな、最近特に忙しくてなぁ」

周子「へ~。じゃあこの優しいシューコちゃんがお茶でも淹れてあげよっかな~」

P「おっ、マジか。ならお願いしようかな」

周子「おっけ~。ちょっと待っててね~」


奏「ここまでは順調ね」コソコソ

志希「うん」コソコソ

―――――
―――


周子「はい、お待たせさん」コトッ

P「さんきゅー。……なんか入れてないよな?」

周子「…なんかって何さー。せっかく心を込めて淹れてあげたのにー」

P「ハハッ、だよな。すまんすまん、いただくよ」ズズズッ

P「うん、美味い」

周子「当然♪」


奏「…やっぱり警戒されてるわね」

志希「だねぇ…」

志希(この前の思い出しちゃってヤダなぁ)

ガチャ!!

美嘉「ぷ、プロデューサー!大変だよ!!」

P「なんだなんだ、騒がしいな」ズズズッ

美嘉「自主練してたらフレちゃんが急に倒れたの!息してない!!」

P「なんだと!?こうしちゃいられん!待ってろフレデリカーー!!」ガタッダッシュ‼︎

美嘉「ちょ、ちょっと速すぎ!待ってよー!!」ダッシュ


バタン!!


奏「……」

志希「……」

奏「…ずいぶん単純ね」

志希「…ねー」

奏「…やりましょっか」

志希「うん」

続く

ポチャポチャ


志希「よしっ!」

周子「完璧だね~。あとは祈るだけって感じかな」

奏「そうね。さぁ、三人が戻ってくる前に早く隠れましょう」

志希「ハーイ」コソコソ

周子「じゃああたしも隠れよーっと」コソコソ

―――――
―――


ガチャ

P「ハァ…なんつーイタズラするんだよ…」

美嘉「アハハ…ごめんねー…」

P「ったく…ホントに心配したんだぞ?」

フレデリカ「スゴイ形相で走ってきたもんねー!いやぁ、フレちゃん愛されてますなぁ~♪」

P「もう絶対やるなよ?」

フレデリカ「お?フリかな?」

P「ちゃうわ」


周子「いよいよだね」コソコソ

奏「えぇ」コソコソ

志希(お願い、成功して~!!)

P「せっかく休憩してたのに、余計疲れちゃったぜ…」スッ


志希(いけっ!!)ドキドキ


P「……」ピタッ

P「……」


美嘉「……どうかした?プロデューサー」

P「なぁ…お前たち、何か隠してるだろ?」

美嘉「へ!?な、何かって?」

P「…このお茶、なんか入ってるだろ?」


志希「……!!」


フレデリカ「そ、そりゃ入ってるよ!お茶っ葉が!!」

P「いやそうじゃなくて」



P「たとえば…志希が作った薬とかな」

奏「嘘でしょ…」ボソッ


美嘉「え、えーっと…」アセアセ

フレデリカ「な、何言ってるのさプロデューサー!」アセアセ


P「…その焦りよう、ホントに入ってるみたいだな」

美嘉「…あっ」


周子「…カマかけられた、ね」ボソッ

志希「……」

P「そうだな~、大方、LiPPSメンバーみんなグルってとこか?」

フレデリカ「あ、あ~…」

P「まったく……まぁ別にお前たちを怒る気はないけどな」

P「どうせ志希に頼まれてやったんだろ?」

美嘉「うっ…」

P「いいか?」



P「アイツは事務所のみんななんて、自分の実験道具としか思ってないんだよ」


志希「――ぇ」

フレデリカ「そ、そんなこと…!」

P「俺のことなんて実験台としか見てないし、お前たちのことも都合のいいアシスタントみたいな感じで思ってるんだろう」

美嘉「さ、さすがに言いすぎだよプロデューサー!!」

P「どうかね……ん、そろそろレッスンの時間じゃないか?」

美嘉「……そうだけど…」

P「ホラ!今回のことは忘れとくから、早く準備準備!」

フレデリカ「う、うん…」


美嘉「……行ってきます…」

P「しっかりな~」


…バタン

志希「……」


奏「……志希…」

周子「ええっと…」


志希「…あたしたちも行こっ!あっ、もちろんプロデューサーにバレないようにね!」ボソボソ

奏「え、えぇ…」

周子「……」

―――――
―――


フレデリカ「シキちゃんごめん!!隠し通せなかった…」

美嘉「ホントにごめん!!」

志希「にゃはは~、いいっていいって~。協力してくれただけでもありがたいからさ~」

奏「まさかあそこまでだとは思わなかったわ…」

周子「なんていうか…口を挟める空気じゃなかったね…」


志希「みんな気にしないでいいって~。あとはあたし一人でなんとかするから!」

志希「さっ、レッスン始まるよ~♪」

奏「……」

―――――
―――


トレーナー「はいっ、10分間休憩!!」


志希「……」ボーッ

奏「…志希、大丈夫?」

志希「……」ボーッ

フレデリカ「シキちゃん!」

志希「…へ?どしたのー?」

美嘉「…志希ちゃん、さっきからボーっとしてること多いよ?また具合悪くしちゃったんじゃない?」

周子「…医務室、行った方がいいんじゃない?」


志希「あー…そだねー。ちょっと行ってくるー」


ガチャバタン


奏「……志希…」

―――――
―――


コンコンガチャ

志希「……あれ、先生いないやー」


志希「ふぅ~」ボフッ

志希「……」ゴロゴロ

志希「……」ゴロ

志希「……」

志希「…どうなっちゃうんだろなぁ~」

志希「いつもの悪ふざけのつもりだったのになぁ~」

志希「ずーっとこのままなのかなぁ~」

志希「……」



志希「…ヤダなぁ~」ポロポロ

志希「前みたいに…普通におしゃべりしたいよ…」ポロポロ

志希「ただ、普通に…」ポロポロ

志希「もうわかんない…わかんないよ…」ポロポロ



――タッタッタ


志希「……?誰か来る…先生かな……泣き止まないと…」ゴシゴシ



ガチャ!!





P「志希!大丈夫か!?」

志希「――え?」



P「具合が悪くて医務室に行ったって、トレーナーさんから連絡があってな。どれ……たしかにちょっと顔色悪いな…」


志希「プロ、デューサー…?なんで…?」

P「なんでって言われても……担当アイドルが大変なときに、プロデューサーが駆けつけるのは当然だろ?」

志希「……効果が切れたんだ…」

P「…?とりあえずしっかり寝ときなさい。起きてたら治るもんも治らんぞ?」


P「しっかりここにいてやるから」



志希「……う」

P「う?」


志希「うわぁぁあああん!!」ギュー

P「うおっ、なになに!?急にどうした!?」

志希「うぅ、よかったよぉ…」ギュー

P「な、何がだ……くるしい…」グググッ



P「…落ち着いたか?」

志希「うん…」


志希「…なんにも覚えてないの?」

P「ん?どゆこと?」

志希「薬、飲んだこととか」

P「薬…?……あぁ!あの嫌いになる薬とかいうやつか?そういえばアレ飲んでから……あれ?なんも思い出せん」

志希「記憶障害かぁ…」

P「えっ、何それ。怖いんだけど」

コンコンガチャ


フレデリカ「シキちゃーん、レッスン終わったからお見舞いに来たよ!」

美嘉「具合どう――ってプロデューサー!?」

P「おう」

周子「な、なんで…?」

P「志希もそうだったけど、どうしてそんなこと聞くんだ?俺だってお見舞いくらいするよ」


志希「あー…薬の効果が切れたみたいなんだ」

奏「なんだ、そうなのね…」

志希「みんなごめんね~…迷惑かけちゃって…」

周子「いいよいいよそんなの。結局大したことも出来なかったしね~」

フレデリカ「そんなことよりも!よかったね~シキちゃん!!めでたしめでたし♪」

周子「それにしてもプロデューサーさん、薬のせいとはいえなかなか酷いコト言ってたよねー」

P「え?マジ?」

美嘉「あっ!プロデューサーとぼけるつもり!?」

P「いやいや!!ホントに何も覚えてないんだよ。ここ数日の記憶がスッポリと…」

奏「覚えてないって……随分と怖い薬飲ませたのね志希…」

志希「にゃはは~…」

P「まぁ失敗作とか言ってたしな……ったく、ちょっとは反省しろよ?」

志希「は~い♪」



志希(とりあえず…一件落着っ♪)

―後日―

志希「ねぇねぇプロデューサー!」

P「ん?どうした志希」カタカタカタ


志希「じゃーん♪」スッ

P「……お前まさか…」

志希「新しい薬作ったよ~」


P「……さてと…外回り行ってくるかなぁ」ガタッ

志希「行かせないよ?」ガシッ

P「反省しろって言っただろ!なんでまた作っちゃったんだよ…」

志希「チッチッチ、甘いよキミ~。反省から学び新たしいモノを作る!それが科学者ってものだよ♪」

P「たしかに!…ってそうじゃない!」


志希「てことで飲んでみて!」

P「何が『てことで』なのかよく分からんが俺は飲まんぞ。また面倒なことになったらやだし」

志希「むぅ~」

P「そんな顔してもダメだぞー。そろそろレッスンだろ?早く準備しなさい」カタカタカタ



志希「……おりゃ!♪」グイッ

P「ん?何して――うぐっ、おまっ……!!」ゴクッ


志希「ふぅ」

P「『ふぅ』じゃない!飲んじゃったじゃん!!相変わらずクソ不味いし!!どうせならそこも改良してくれよ!!」

志希「まぁまぁ落ち着いて~」


P「……ちなみにどんな薬なの…?」



志希「この前のヤツと反対の効果だよっ!」


P「反対…?……まさか!?ウッ…」ウググ





志希「…にゃははっ♪」

おわり!

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