「今日からこの館が君の世界だ」 (23)

……おはよう、いい朝だね

よく眠れたかい?多分答えはNOだろうけど

ここはどこかって?

この館はだね

君と私の愛の巣、そしてこれからの君の生きる領域

つまるところ、君の世界だ

その手錠と足枷は君が寝ている間につけさせてもらったよ

君がこの館から逃げ出さないようにするためにね

改めて、今日からこの館が君の世界だ

何を言っているか理解できないって?

そんなことより、昨日君と一緒にいたあの女性は誰だい?

道案内をしただけ?とぼけないでほしいなあ

はいこれ、君とあの女性とのメールのやり取りの写し

それとこんな写真もある、お城みたいなホテルに君があの女性と一緒に入って行くところ

ついでに領収書

言い逃れは、できないよね

まあいいさ、あの女性と君が会うなんてことなんてもうないから


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君をあの女性に会わせたくない、だからこの館に閉じ込めたんだ

ああ、気にしないでいいよ

あの女性には何もしてないし、今後もするつもりはないから

代わりに君にここに閉じ込めさせてもらったけれど

さて、君はこれからここで生活をするんだ

この館は君の好きに使ってくれて構わないよ

それと、君が望めば何だってやろう

食事は最高のものを用意しよう、君を絶対に飢えさせないと誓うよ

家具や寝具、食器なんかの必要なものは既にこの館に準備してある、気に入らなければ君が望むものを取り揃えよう

娯楽だってそうだ、君は遊ぶのが好きだろう?君の好きな玩具や映画、本なんかを外から持って来る

人が恋しくなったら私がいる、話し相手や添い寝ぐらいだったらいつでもやろう、夜の相手だっていいさ

君の望みには全力で応えよう

君の願いは何でも叶えてみせるよ

ああ、ちょっと嘘をついた、何でも叶えるって言ったけれど無理なものは無理だから

その手錠と足枷を外してくれ、とか

館の外へ出たい、とかね

そういえば、朝食がまだだったね、すぐに用意する

少しの間待っていてほしい

それじゃあ失礼するよ





おはよう、いい朝だね

あれから1週間、ここでの生活には慣れたかい?

……この館から出たい?それはできない相談だ

あれから毎日聞いているよ、そんなに外へ出たいのか君は

いいかい?この館にいるだけで何もしなくても好きな食事が出てきて、欲しいものがすぐに手に入り、いつまでも続く安住が得られるんだ

その裏を何が支えているかとか何も考えなくていい

館から絶対に出ない、ここで寝て起きて食べて遊ぶ、たったそれだけで君の望む生活ができる

それだけのことを考えていればいいんだ

それじゃあ朝食を用意するよ

君の好きなベーコンエッグとトースト、それにコンソメスープだ







朝食はどうだった?美味しいって?それは良かった

あれから1週間経っている

私は何でも君の言う事を聞くと言ったのに、君は何も望んではくれないじゃないか

何でもいいんだ、好きなことを言ってくれ

どんなことでもいいんだ、私にできることなら何でもいい

遠慮なんて必要ない、ほら

……ケーキ?ケーキが食べたいと?オーケー、わかった

すぐに最高のものを焼き上げてくるよ、苺のケーキは好きかい?結構、もっと好きなることを保証するよ

それじゃあまた後で、少しの間待っていてくれ





……外が気になるって?

……

いつもと変わらないよ

君がどこにも居ないってこと以外は

君の世界はこの館の中だけだ

外のことを知る必要なんてないだろう?

この館の外、そこの壁の外には君の求めるものは何もない

わかったかい?

わからないって?まあいいさ

改めて言うけれど、外に出ようだなんて絶対に思わないでくれ

……いい加減にして欲しい、あれから一ヶ月経っている

毎日々々同じことばかり君に聞かれ、同じ答えを返す

もううんざりだよ

そんなに外が気になるのかい?

そうか、それが君の答えか

じゃあこうしよう、失礼するよ

また明日




おはよう、いい朝だね

早速だけど良いニュースと悪いニュースがある

良いニュースは君はこれから今まで以上に心置き無くここで暮らせること

悪いニュースはそれは君はもう死んだ人間になってしまったからってこと

君の死をでっち上げさせてもらったよ、これで君の心配事はなくなった

君の安否を案ずる家族や友人も、これで遠慮なく君と決別できる、君の生死とは関係なくね

どうした?そんなこの世の終わりを見たような顔をして

むしろ始まりじゃないか

君と私のこれからの生活がね

それじゃあまたあとで、朝食の準備をしてくるよ







そんなに気を落とさないでくれ

ほら、君の好きなトマトスープとベーコンエッグだ

……美味しくなさそうに食べないでほしいなあ

不満かい?この生活に、こうして私が尽くしているのが不快かい?

まあいいさ、君の居場所はここだけだから





手錠と足枷を外しても不調のままなのかい、君の望む自由をほんの少し解禁したけれども、無意味か

それより、今日の食事、何か妙だとは思わなかったのかい?

実は一服盛らせてもらったよ

ああ、大丈夫、変な薬じゃない

いや、変ではあるけれども、害はない

そんなに慌てないでくれ、何を入れたのかって?

媚薬だよ

この頃君は元気がない、無論精神的に

何もかもみんな投げ捨てて忘れて快楽に身を任せてみるってのもいいんじゃないかな?

生憎私の体は豊かとは言えないが、仮にも女だ

君とってちょっと離してくれ、まだ話は終わってな……それにまだ心の準備が……





はぁ

ああ、体が痛い

それに動けない、全身が言うことを聞いてくれやしないや

あと、食事に媚薬を混ぜたってのは嘘だ、偽薬効果って知っているかい?

思い込みの力って凄いねっていう話

あそこまで君が君じゃなくなるとは思ってなかった

いつもの優しい君からは想像できないよ

こうして脱力して身動きの取れない私を抱きしめる今の君のことだよ

……君に壊されるなら本望だよ、続けるかい?

わかった、さっきよりも優しくしてほしいな

……ちょっとくすぐったい、それじゃあよろしく頼むよ





あれから

君は私に色々求めて来るようになったね

何も望んでくれなかった前の君とは大違いだよ

殺風景で寂れたこの館がどんどん君の色へ染まっていくよ

私も君の色に染まりたい

そう思って早速、昨日君が言っていた私になってみたよ

この服も髪も何もかも、ちょっと頑張ってみたよ

流石に少し恥ずかしいな、この格好は

似合う、かな?

……

……

……

……

ごめん……君に可愛いって言われたのが恥ずかしくて、それで嬉し過ぎて……

うう……照れる……顔から火が出てるみたいに暑いよ

……ああもうっ

ん……

……

……どうだい?私に唇を奪われる気分は?

思えば今までのキスは、君が毎回強引に私の唇を奪うところから始まっていたね

嫌がる私に無理矢理、唇だけじゃない、君は色々なものを私から奪っていった

まるで私の愛を奪い取るかのように

君は略奪が好きなようで、今度は君が奪われる番だよ

君の心を奪い尽くす

そして君を、私の色に染める

君色に私は染められたんだ、今度は君を私色に染める

君の心に、私のエゴを塗りたくって、私の色で染め上げたい

これが私の想いだ、君に受け止めてほしい





ちょっとこっちに

早く

頼みたいことがある、私を抱きしめて欲しい

ぎゅって強く

……しばらくこのままがいい

……ちょっと話していいかな?

正直、私は疲れたんだ、この生活を支えるのに

でもそれは君とは関係ないことだ

ただ君はここから出ないで過ごして、それで

私の心の依り代になって欲しい

それだけだ

こうして一緒に過ごす、それだけでいいんだ

もう少し強く抱きしめて欲しい

……

ありがとう、私は君が大好きだ





ねえ、君はなんでここから出ようとしたんだい?

黙らないで何か言ってよ、こっちは質問をしているんだ

……へえ、外のみんなに会いたかっただって?

そんなに、私と2人きりで過ごすのが嫌なのかい?

違うって?じゃあなんで外に?

……ああ、外にまだ未練があるんだね?

じゃあその未練を断ち切らせてもらう

この際言うよ

外に君を知る人間は居ない、ちょっと前に全員私が消しといたから

それに、戸籍とかのあらゆる君の記録も消したよ

ああ、例外がいる、あの女性だ

彼女は消してないから安心して

でも……ちょっと君には謝らないとね、彼女には何もしないって嘘をついたことをね

今彼女には、死んだ方がマシな目にあってもらってるよ

きっと君を恨んでいるよ、君のせいでこんな目に合ってるって吹き込んでおいたから

それと

これからこの館の地下が君の世界だ

再び手錠と足枷をつけさせてもらうよ、あと首輪もついでに

君に逃げられないようにするためにね

それ以外は、今まで通りだから安心してくれ

改めて、ここから出ようだなんて絶対に思わないでくれ

そうしてさえくれれば、この地下での最高の生活を保証するよ





おはよう、いい朝だね

太陽が恋しいかい?でも君に拝める太陽はないんだ

代わりに、このライトスタンドを用意したよ

これが君の太陽だ、とても明るい、それにモダンでお洒落だ

それと朝食だ

……最近君は元気が無いね

前みたいに、やるかい?

……その気力も精力もないのかい

はぁ、じゃあこれは?

君の好きな苺のケーキだ、これで少しでもいいから元気を出すといい

……聞き間違いかな?もう一度言ってくれ

死にたいだって?面白い冗談を言うね

君を絶対に死なせはしないよ、私がいる限り永遠に





おはよう

今日の君は綺麗な顔をしているね

死なせはしない、か

君には嘘をついてしまったね

そこまでして、ここから出たかったのかい?

聞いても返事は来ないか

人ってのは、簡単に死んでしまうんだね

なんで気づかなかったのか、過去の私に問い詰めたいよ

……昨日、君が動かなくなってから少し考えたよ

私も一緒に行く、それまで添い遂げるよ

ひとりは寂しいだろう?私が尽きるまで一緒にいるから

だから、安心してくれ





君と出会った時、君とは赤の他人のまま疎遠になると思っていたよ

でも、そんなことはなかった

どういうわけか、君は私と長く付き合うような仲になってしまった

とても困惑したよ、どうして君が私と一緒にいるのか、どう接すればいいのか

それと形容のしようのない感情も

君と出会ってから、世界の色が変わった、白黒だった世界が鮮やかな色へ染まったんだ

相対的に、白黒がさらに強くなる時があった

それは私ひとりになったときだ、君と出会ってから、孤独を知ったよ

相対的に、君と出会うまでの常だった私ひとりの時間が大きく減ったからね

……

また孤独へ戻るのか、ちょっとつらいよ




また来世でも、君に会えたら嬉しいな

会えたらいい

君の声を聞くだけでもいいんだ

遠目に見かけるだけでもいい

……

ひとりは寂しいだろう?

寂しい思いはもうしたくないんだ

あと少し、あと少しで君のいるところに行ける

私も……すぐに行くから、行けるから、すぐに追いつくから

だから安心して先に行ってほしい

君をひとりにはしない、絶対に

私だって、ひとりは嫌なんだ

もう、ひとりにはなりたくないんだ

君と出会う前の、ひとりだった私には戻りたくないんだ

すぐに追いつく、だから少し先で待っていてくれ






天国への階段を、君ひとりで登らせはしないよ




これで終わり
結構前に勢いで書いてここに上げたものを色々添削したりして形を整えてリメイクしたらこうなりました
依頼出してきます

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