エーリカ「わたしにできること」 (54)

―――1947年 欧州―――
【マーストリヒト・アーヘン基地 基地廊下】


バルクホルン「おいエーリカ!ちょっとこっちに来い!」

エーリカ「んあ?なーに?」

バルクホルン「なにじゃない!さっきの戦闘についてだが……!」

エーリカ「ああ、完全勝利だったよね~」

エーリカ「こう…背面飛行からの切り返しが上手く決まってズバババーっと……」

バルクホルン「なんだあの戦い方は!」

エーリカ「え?」

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バルクホルン「あんな戦い方が今後も通用すると思っているのか!?」

バルクホルン「いくら自身の力が突出しているからといって、ワンマンプレーも大概にしろ!」

バルクホルン「小隊の統率を放棄してまで戦果に拘るとは……貴様、それでも大尉か!」

バルクホルン「お前はもっと自分の強さに自覚を持て!」

エーリカ「えー、倒したんだからいいじゃん」

エーリカ「おかげでトゥルーデの小隊にも迷惑かけずに済んだでしょ?」

バルクホルン「…!そういう問題じゃない!」

バルクホルン「一体どうしたというんだ!?近頃のお前は変だぞ!」

バルクホルン「常に僚機の動きに気を配るお前らしくもない!」

エーリカ「…………」


「えっと、どうかしたのでありますか……?」


エーリカ「あ、ヘルマ」

ヘルマ「なにか問題でもあったのでしょうか?」

バルクホルン「いや……何でもない」

エーリカ「あ、行っちゃった……」

ヘルマ「え、えっと…私、なにか少佐の気分を害することを…?」

エーリカ「いやいや、そんなことないよ」

エーリカ「………」

―――翌日―――
【ブリーフィングルーム】

バルクホルン「ここ数日のネウロイ出現パターンから観測班が割り出した出現予測地点は……ここと、ここと、ここだ」

バルクホルン「出現頻度から察するに、今後大規模攻勢がある可能性は低いものの、油断は禁物であることには変わりはない」

バルクホルン「とくに、近頃のネウロイは部隊が機能している昼間よりも、夕暮れから深夜にかけて出現する頻度が高くなってきている」

ヘルマ「ふむふむ!」メモメモ

バルクホルン「…そこで、今後はローテーションを組み、交代制で夜間哨戒を行っていきたいと思う」


「えぇ~……」

「わたし夜苦手ですよぅ……」


バルクホルン「……なにか問題があるようだな」


「い…いえぃえそんな!?」

バルクホルン「……まぁ、ナイトウィッチでもない諸君にいきなりこんなことを任せるのが酷であることは重々承知している」

バルクホルン「というわけで、まずは夜間哨戒の経験がある私から哨戒任務に就こうと思う」

ヘルマ「え、そんな……!?」

ヘルマ「そ、それじゃあ、日中の部隊の作戦指揮等は誰がとるのでありますか!?」

バルクホルン「いい質問だ、ヘルマ少尉」

バルクホルン「なに心配することはない、私以上の適任者がいるだろう」

エーリカ「ふーん、誰?」

バルクホルン「お前だ、ハルトマン」

エーリカ「ふーん……ん?」

エーリカ「え、私?」

バルクホルン「私を抜いて部隊内での階級が最も高いのはお前だ」

エーリカ「ミーナがいるじゃん……」

バルクホルン「……お前はアガリのミーナに戦闘をさせる気なのか?」

エーリカ「…冗談に決まってるじゃん」

バルクホルン「それに、戦闘経験数はお前が群を抜いているし」

バルクホルン「お前以上の適任者がいるか?」

エーリカ「うーん……」

バルクホルン「哨戒任務を行うのは来週からだが、ハルトマンには明日から日中の指揮を取ってもらう」

バルクホルン「頼んだぞ」

エーリカ(…………)

エーリカ「……分かった」

エーリカ「まあどうせ一時的なものだしね。請け合うよ」

バルクホルン「あ、あぁ…そうか……では頼む」

エーリカ「ほーい」

バルクホルン(…………)

―――その日の夕方―――
【エ―リカの自室】


エーリカ「…………」


≪あんな戦い方が今後も通用すると思っているのか!?≫

≪一体どうしたというんだ!?近頃のお前は変だぞ!≫


エーリカ(……なんだかなぁ……)

―――1週間前―――
【基地執務室】


エーリカ「そ、その話本当…!?」

ミーナ「ええ…」

エーリカ「トゥルーデが……」

ミーナ「指令本部からの通達でね、召還に応じるようにって」

ミーナ「内容は、本国でユニット開発のアドバイザーになってほしいっていうのと…」

ミーナ「そのままテストパイロットとして、試作機の試験運用を行ってほしいそうよ」

エーリカ「なんで……」

エーリカ「なんでトゥルーデが行かなくちゃいけないんだよ……!」

ミーナ「…私だって、正直に言えば行ってほしくない」

ミーナ「でも、あの娘の今の状態を思うと……」

エーリカ「…………」

ミーナ「あなたも…いえ、一番近くでトゥルーデを見てきたあなただからこそ…」

ミーナ「あの娘が今どういう状態なのか…よく分かってるでしょ?」

エーリカ「それは……」

ミーナ「……私としても、今回の話をただ素直に喜んでいるわけじゃないの」

ミーナ「そこだけは分かって……」

エーリカ「………」

ミーナ「あくまでも、決めるのはトゥルーデよ」

ミーナ「私達がとやかく言える事じゃないわ」

エーリカ「そりゃ…そうだけど……」

ミーナ「それと、このことはまだ私達3人しか知らないことだから」

ミーナ「混乱を避けるためにも、他の隊員にはまだ口外しないでね」

エーリカ「……分かった」

―――――――


エーリカ「招集……かぁ……」

エーリカ(まぁ理屈では分かってるんだけどね……)

エーリカ(いつシールドが張れなくなるか分からない今の状態で飛び続けるよりも……)

エーリカ(前線から遠いところで仕事してるほうが安全なのは分かってる)

エーリカ(でも……それじゃ……)

エーリカ(…………)

エーリカ「….トゥルーデもトゥルーデだよ……」

エーリカ「な~にが「ワンマンプレーも大概にしろ~!」だよ」

エーリカ「話が来てたなら、私に一言相談してくれたっていいじゃん……」


コンコンッ


「エーリカ、ちょっといいか?」


「……どーぞ」



ガチャッ


バルクホルン「入るぞ」

エーリカ「………」

バルクホルン「…訓練がないからといって、そうやってベッドでごろごろしているのは感心しないぞ」

バルクホルン「それにまた部屋をこんなに散らかして…だいたい…」

エーリカ「………」

バルクホルン(…っと、こんな話をしにきたわけじゃないな……)

バルクホルン「隣……座ってもいいか?」

エーリカ「…好きにすれば」

バルクホルン「その…すまなかったな」

エーリカ「なにが?」

バルクホルン「昨日の戦闘終わりに、廊下で問い詰めた件だ」

エーリカ「あぁ、あのことね」

バルクホルン「あのときは少し感情的になって言い過ぎたと思う…その…」

エーリカ「いいよ別に、あのときは私の方が一方的に悪かったし」

バルクホルン「そんな、そこまで言って……」

エーリカ「僚機を一度も失ったことがないのが私の誇り」

バルクホルン「え……?」

エーリカ「いつかトゥルーデにも言ったよね」

エーリカ「仲間を必ず連れて帰ることが、私にとって一番大事なことだって」

バルクホルン「あ、あぁ……」

エーリカ「そんなこと言っておいてあの戦い方じゃあ、怒られても当然だよね~」

バルクホルン「……なら」

エーリカ「ん?」

バルクホルン「ならどうして、近頃のお前はその信条に反するような戦い方をするんだ?」

バルクホルン「お前の事だから、何か理由があるんだろう?」

エーリカ「…………」

バルクホルン「あんな戦い方……お前らしくもない」

バルクホルン「近頃のお前は、何かに焦っているような……」

エーリカ「ほんとに分からない?」

バルクホルン「え?」

エーリカ「私が何であんな戦い方してるか、ほんとに分からない?」

バルクホルン「エーリカ……」

バルクホルン「……わ、分からないから聞きにきたんじゃないか」

エーリカ「……じゃあもういい」

バルクホルン「な……なんだその態度は!」

エーリカ「もういいから出てってよ」

バルクホルン「貴様…子どもじゃないんだから、ちゃんと口で説明しろ!」

エーリカ「……じゃあ私が出ていく」

バルクホルン「エーリカ!」

エーリカ「…………」

バルクホルン「……どうして……」

バルクホルン「もっと……私に頼ってくれたっていいだろう」


ガチャッ

キィィィ…パタン……


エーリカ「………」

エーリカ「……それは私も同じだよ、トゥルーデ……」

―――翌日―――


エーリカ「うぇ~……げろ眠~……」

ヘルマ「大尉!朝からそんな調子では困るであります!」

ヘルマ「大尉は一時的とはいえ、この部隊の戦闘隊長なのでありますから」

ヘルマ「もっと自覚と態度をもって、隊員に示しをですね!」

エーリカ「んも~……ミニトゥルーデうるさい……」

ヘルマ「なにか言ったでありますか?」

エーリカ「なんにも~……」

エーリカ「……あり?そういえばトゥルーデは?」

エーリカ(朝も珍しく起こしてこなかったし……)

ヘルマ「少佐は……」

エーリカ「ああそっか、昨日夜間哨戒やったから、今は寝てるわけか」

エーリカ「いいなぁ~、私も昼までお昼寝したい……」

ヘルマ「もう!何をぐうたらなことを言ってるでありますか!」

ヘルマ「それに、夜間哨戒任務は来週からでありますよ」

エーリカ「え?」

ヘルマ「……大尉、ちゃんと聞いていたでありますか?」ジト

エーリカ「あ、あぁ……聞いてた聞いてた……」

ヘルマ「どうだか……」

エーリカ「……あれ、じゃあなんでいないわけ?」

ヘルマ「あれ、聞いてないでありますか?」

ヘルマ「少佐なら、今朝方基地から出かけていきましたよ?」

エーリカ「え……?そうなの?」

エーリカ「…どこ行ったんだろう?」

ヘルマ「なんでも、指令本部からの招集に応じて出かけるとかなんとか……」

エーリカ「え……」

ヘルマ「……あ!ちょっと大尉!どこへ……」

―――【執務室】―――

ガチャッ!


エーリカ「ミーナ!」

エーリカ「……あれ、いない……」


「た、大尉!」


エーリカ「あ、ヘルマ」

ヘルマ「き、急に…ぜぇ…走って…ぜぇ…どうしたのでありますか……?」

エーリカ「あぁいや……トゥルーデがさ……」



≪それと、このことはまだ私達3人しか知らないことだから≫

≪混乱を避けるためにも、他の隊員にはまだ口外はしないでね≫


エーリカ「あ、いや……」

ヘルマ「?」

エーリカ「あ、それよりさ、ミーナどこ行ったか知らない?」

ヘルマ「ミーナ隊長なら、本日は査察でサントロン基地に出向いておりますが……」

エーリカ「査察……」

エーリカ(トゥルーデ……やっぱりあのことで出かけていったわけだよね)

エーリカ(話がどこまで進んでるのか分からないけど、私になにも言わずに決めたりしないよね……?)

エーリカ(……あれ、そういえば……)

エーリカ(昨日部屋に来たのって、そのことを相談しにきたんじゃ……?)

エーリカ(謝りにきたついでに、今後どうするかの話をしたかったんじゃ……)

ヘルマ「あの、大尉?」

エーリカ「私…馬鹿だ……」

ヘルマ「あの、大尉!」

エーリカ「え、あ…なに?」

ヘルマ「いえ、なにというか、そろそろ訓練の時間なのでありますが……」

ヘルマ「大尉に訓練の指示を仰ぎたいのであります」

エーリカ「く、訓練……」

―――【訓練飛行場】―――


エーリカ「良し、今の動き忘れないで」

エーリカ「次はヘルマが前衛に入って、小隊の先陣をきるよ」

『了解であります!』

エーリカ「後衛も前衛の動きばかりに気を取られないで、各機索敵を怠らないでね」

『了解!』

エーリカ(……トゥルーデがいなくなっちゃうかもしれないってときに、私……なにやってるんだろ)

エーリカ(本当は今すぐにでもトゥルーデのもとに飛んでいって、言いたいことがあるのに)

エーリカ(まぁ、そんなことしたらミーナにもトゥルーデにも滅茶苦茶怒られちゃうだろうけど……)

エーリカ(でも…このままだと、私を怒ってくれる人がいなくなっちゃうんだよね……)

エーリカ(…501にいた頃は、こんなことで悩むことなんてなかったのに……)

エーリカ「……宮藤だったら、迷わず飛んでいったかな……」

『大尉、何か仰いましたか?』

エーリカ「あ、いやいや、なんでもない……」

―――訓練終了後―――


エーリカ「みんなお疲れ」

「「「ありがとうございました!」」」

「なんか今日の飛行訓練、いつもより分かりやすかったよね?」

「うん、なんか飛びやすかった」

エーリカ「え、そ、そう……?」

ヘルマ「はい!大尉の的確且つ明確な指示のおかげであります!」

ヘルマ「大尉がこれ程までにご指導が上手いとは存じ上げておりませんでした!私、大尉に対する認識を改めます!」

エーリカ「え、それどういう意味?」

ヘルマ「あ、いや、べつに大尉が戦闘時以外はぐうたらだとか思ってないたたたたた!」

エーリカ「ほれほれ指導指導~」

ヘルマ「ご、ごめんなひゃい~……」

「私!もっと上手く飛びたいです!」

エーリカ「ん?」

「今までは大尉の飛ぶ姿から技術を盗もうとしてましたけど……」

「今日みたいにもっと教えてもらって、大尉のようになりたいんです!」

「「「お願いします!」」」

エーリカ「みんな……」

ヘルマ「えへへ、実は私も大尉にご指導してもらえるのを密かに楽しみにしていたのでありますよ」

ヘルマ「なにせ大尉は人類最多の撃墜数を誇る、ウルトラエースでありますからね!」

エーリカ「エース……」


≪お前はもっと自分の強さに自覚を持て!≫


エーリカ「…そっか、そういうことか…」

ヘルマ「大尉?」

エーリカ「ん、何でもない」

エーリカ「それより君たち、まだ訓練は終わってないよ?」

「「「え?」」」

エーリカ「基地に戻るまでが訓練なのだよ。というわけで、ビリっけつの人は1週間トイレ掃除ね」

「「「え!?」」」

エーリカ「はいよーいどん!」


スタコラサッサー


「は、速ぁ!?」

「もうくたくたなのに~……」

ヘルマ「やっぱり大尉は大尉であります……」

―――夜―――
【基地 正面玄関口】

ブロロロロ………キィ……


バルクホルン「すまんなミーナ、途中で拾ってもらって」

ミーナ「いえ気にしないで、久しぶりにたくさん話ができて楽しかったわ」

バルクホルン「こちらこそ…色々と悩みを聞いてもらえてよかった」

ミーナ「うふふ、いえいえ」

ミーナ「私はこのあと会食があるからまだ戻れないけど、エーリカによろしくね」

バルクホルン「あぁ、了解した」

ミーナ「それじゃ……すみません、出して下さい」


ブロロロロ………


バルクホルン「さてと、今日一日基地をエーリカに任せてしまったものの、大丈夫だったろうか……?」

エーリカ「いやぁ~、それがもうダメダメでさぁ」

バルクホルン「うわ!?エーリカ!?」

エーリカ「やっほ~、グーテンアーベント、トゥルーデ」

バルクホルン「お、脅かすな……」

エーリカ「にしし、ごめんごめん」

バルクホルン「もしかして、待っててくれたのか……?」

エーリカ「うん、まーね」

バルクホルン「春とはいえ夜は冷えるだろうに……」

バルクホルン「ほら、この上着を着ろ」

エーリカ「え、いーよ別に……」

バルクホルン「いいから着ろ。私のせいで風邪をひかれたのでは寝覚めが悪い」

エーリカ「……じゃあお言葉に甘えて……」

エーリカ「おぉ~、温かいねぇ」

バルクホルン「……エ―リカ、あのな……」

エーリカ「トゥルーデ」



ギュッ….


エーリカ「トゥルーデ、ごめんね」

バルクホルン「え、エーリカ……?」

エーリカ「昨日部屋に来てくれたのに、酷いこと言ってごめんね」

バルクホルン「あ、あぁ……そのことか……」

バルクホルン「気にするな、今さらあの程度でお前を嫌ったりしないよ」

エーリカ「そっか……良かったぁ」

エーリカ「…それとね、私今日ちょっとだけ分かったんだ」

バルクホルン「え、な…なにがだ……?」

エーリカ「強いって何だろうって、前からずっと考えてた」

エーリカ「ハンナみたいにすごい空戦の技術を使って、自分がネウロイを全部やっつけちゃえば、みんなの事を守れるって思ってた」

エーリカ「でも、違ったんだ……」

エーリカ「力を使って敵をたくさん倒せることも「強い」けど……」

エーリカ「みんなを導くってことも、「強さ」なんだってこと……」

エーリカ「今日の訓練で、分かったんだ……」

バルクホルン「……そうか」

エーリカ「だからね」

エーリカ「だから……安心して、もう休んでいいよ」

バルクホルン「え……?」

エーリカ「トゥルーデの魔法力が弱くなってきてるの知ってるよ」

エーリカ「このまま飛び続けたら、危ないことも……」

バルクホルン「……あぁ」

エーリカ「……だから」

エーリカ「だから……あとは私がなんとかするから……」

エーリカ「私がみんなを導くから………」

エーリカ「だから……安心して」

バルクホルン「…エ―リカ…」

バルクホルン「……ありがとう」

エーリカ「トゥルーデがいなくなっても、私……頑張るから」

バルクホルン「ああ……うん?」

エーリカ「だから私……」

バルクホルン「おい、ちょっと待て」

バルクホルン「……なぜ私がいなくなるんだ?」

エーリカ「え?」

バルクホルン「え?」

エーリカ「…………」

バルクホルン「…………」

エーリカ「だって、指令部から通達が来たんでしょ?」

バルクホルン「ああ、来たな」

エーリカ「それで……今日はそのことで出向いたんじゃないの?」

バルクホルン「そうだな」

エーリカ「え、それで話を受けるんでしょ?」

バルクホルン「いや、受けなかった」

エーリカ「……は?」

エーリカ「いやだって……断る理由が……」

バルクホルン「まぁ、ないな」

エーリカ「だったらなんで……」

バルクホルン「…………」

―――少し前―――
【送迎車 後部座席にて】

ミーナ「それじゃあ、本当に断っちゃったのね」

バルクホルン「あぁ」

ミーナ「そう……」

ミーナ「ねぇ…トゥルーデ」

ミーナ「その、本当に……これで良かったの?」

バルクホルン「……………」

ミーナ「ここに残っても、みんなと一緒に飛ぶことはできないのに……」

ミーナ「もし私とエーリカに気を使ってるのだとしたら……」

ミーナ「……いえ、もう過ぎたことよね」

ミーナ「あなたが自分で選んだ道だもの」

バルクホルン「……あぁ」

バルクホルン「…私には、まだここでやり残したことが……」

バルクホルン「まだ、見ておきたいことが……あるんだ」

ミーナ「トゥルーデ……」

バルクホルン「私は……」

バルクホルン「私は、ここで私にできることをしたい」

バルクホルン「だから、これでいいんだ」

ミーナ「……ふふっ、あなたらしいわね」

―――――


バルクホルン「…前線に残り作戦を考え、部下たちの指導をしていくことも重要な任務である」

バルクホルン「っていうことを、話してきたよ」

エーリカ「え、えぇ~……」

エーリカ「……わざわざ出向かせた相手が、命令を断って帰っていくなんてよく許したね」

バルクホルン「まぁ、どうも推薦してくれていたのがあのボニン司令だったらしくてな」

エーリカ「え、そうなんだ」

バルクホルン「それで、断る際理由を言ったら納得してくれたよ」

エーリカ「…………」

エーリカ「そっか……」

バルクホルン「……何だ、あまり嬉しそうじゃないな」

バルクホルン「私に出ていってほしかったのか?」ニヤニヤ

エーリカ「…そんなわけないだろ!」

バルクホルン「え……」

エーリカ「…私がどんな思いで、トゥルーデのこと待っていたかも…し、知らないで……」

エーリカ「……勝手なこと言わないでよ……」

バルクホルン「エ―リカ……」

エーリカ「ほんとはユニット履いて飛んでいって「行くな!」って言いたかったんだよ」

エーリカ「でも、それじゃトゥルーデに迷惑かけちゃうと思って……」

エーリカ「私……必死に……」

バルクホルン「…すまない、もう何も言うな」

エーリカ「相談にも乗ってあげられないまま、遠くに行っちゃうかと思って……」

バルクホルン「エーリカ……」

バルクホルン「……そんなわけないだろ」

バルクホルン「私達は家族だ。家族に何も告げずに出ていく奴がいるか」

エーリカ「トゥルーデ………」

バルクホルン「もっと私のことを信頼してくれていいんだぞ、相棒」

エーリカ「……っぷ、あはは」

エーリカ「了解……」

―――1ヶ月後―――


バルクホルン「コラ!この程度で音を上げるとは何事か!」

バルクホルン「カールスラント軍人たるもの、1に訓練、2に訓練、3、4、5、6全て訓練だ!」

バルクホルン「訓練を乗り越えた先にしか成長は無い!」

「は、は…はひぃぃぃ….」

「しぬぅ………」

「や、やっぱりハルトマン大尉が指導した方がよかったんじゃ……」

ヘルマ「な、なにを言うでありますか…!?」

ヘルマ「あのバルクホルン少佐から直々にご指導いただけるなんて、光栄だとは思わないでありますか!?」

エーリカ「にっしっし、そう思ってるのは2人だけだと思うよ」

ヘルマ「なー!そんなことないであります!」

ヘルマ「……あれ、2人……?」

ヘルマ「も、もう一人は誰でありますか?」

エーリカ「さーね、しーらない」



おわり

おしまい

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