【ガルパン】カールくんがやって来た (46)

アンチョビ「おーい!大変だ大変だ!」

カルパッチョ「一体何事ですか」

ペパロニ「姐さんカチコミっすか!?」

アンチョビ「違うよバカ!ウチに新しい戦車が来るんだよ!」

カルパッチョ「本当ですかそれ!?」

アンチョビ「文科省の辻のおっさんが『大学選抜との試合におけるアンツィオ高校の働きは
実に素晴らしかった、文科省から戦車を寄贈するので戦車道の振興と発展に協力して欲しい』
って言ってさ、ウチに1輌まわしてくれるんだって!」

ペパロニ「あのおっさん、ヤなやつだと思ってたけど、意外とイイ人だったんすねえ」

カルパッチョ「それで何がもらえるんですか?」

アンチョビ「聞いて驚け!なんとカールだ!」



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カルパッチョ「ええええ!」

ペパロニ「姐さんすっげええええ!」

アンチョビ「だろ!?あの火力があれば怖いものなしだぞ!」

ペパロニ「ウチの機動力にあの火力が加われば鬼に金棒どころかキ○ガイに刃物っすよ!」

アンチョビ「おいおい、それ褒め言葉じゃないから」

カルパッチョ「で、本当に来ちゃいましたね、カール…」

ペパロニ「改めて見るとマジパねぇっす」

アンチョビ「私らも杏も、よくこんなのに特攻かけようなんて思ったよなあ」

カルパッチョ「まずは仕様の確認と点検からですね」

カルパッチョ「1941年に製造されたオリジナルのカールは直接火力を交えるようなことは
想定していなかったので、装甲はなく、外板も重機や普通の自動車と同じ軟鉄製でしたが、
これは戦車道のレギュレーションに合わせて内部を特殊カーボン処理した超硬スチールで装甲
してあります」

ペパロニ「そうなんだ、道理で8mm機銃じゃ歯が立たなかったわけだ」

アンチョビ「いや、オリジナルのカールでも機銃じゃ倒せなかったんじゃないかな」

「『競技者保護のため乗員室は連盟公認の装甲材で覆い安全対策を施すこと』って戦車道の
レギュレーションに合わせてオリジナルの露天式操縦席を撤去、車体後部の両サイドの
フェンダー上に密閉式兵員室を増設してあります。ちなみに進行方向に向かって左側が操縦席、
右側が射撃管制室です」

カルパッチョ「本来ならⅣ号戦車を改造した特殊クレーン車と弾薬運搬車が1輌づつ
ついて、大勢の装填手が車上で作業して装填するんですが、戦車道のレギュレーションに
合わせて車体下部に増設された弾薬庫から自動装填装置がフルオートマチックかつ無人で
装填します」

アンチョビ「1940年にそんな技術なかったろ。レギュレーションを守るために
レギュレーションに違反するっていろいろと矛盾してないか?」

ペパロニ「なんか哲学的っすね」

カルパッチョ「まあ形は似てるけどオリジナルのカールとは全くの別物ってことですね」

アンチョビ「こんなの持ち出すなんて、あのおっさんよっぽど大洗女子学園が気に入らなかったんだなあ」

ペパロニ「なんか恨みでもあったのかな」

カルパッチョ「譲渡の目録にはカール本体に加えて試射用の訓練弾が3発ついてるとあります」

ペパロニ「3発だけぇ?ケチくさいなあ」

アンチョビ「取りあえず動かしてみようか。そーれ、アヴァンティ!」

アンチョビ「遅い!遅すぎる!なんとかならんのかこれ!」

ペパロニ「アクセルベタ踏みのフルスピードでも時速10キロくらいですからねえ」

カルパッチョ「カールの自走能力って射角を取るための方向転換や射撃位置の変更の
ためのもので、高速で機動したり長距離を移動するためのものじゃありませんからねえ」

つづく

アンチョビ「それで、肝心の主砲なんだが」

カルパッチョ「使用する砲弾によって射程距離が変わってきます。貫通力を重視した
対建造物用の重べトン弾で4千メートル、爆風と破片効果を重視した軽べトン弾で
6千メートルです。大学選抜チームが使ったのは軽べトン弾のほうですね」

アンチョビ「意外と短いんだな」

カルパッチョ「いくら大きくても曲射弾道しかとれない臼砲ですからねえ」

ペパロニ「早く撃ってみたいっす!」

アンチョビ「待て待て、こんなの学園艦の上では撃てないって。陸の演習場に
持って行かないと」

カルパッチョ「クレーンで海の上のバージに降ろして港までタグボートで曳航してもらって、
港に着いてからまたクレーンでトレーラーに乗せてもらって…、それだけで一日仕事ですね」

アンチョビ「経費がどんくらいかかるんだ…」

カルパッチョ「それにペパロニ、撃ちたいんだったらこれを全部頭に入れてもらわないと」

ペパロニ「何その電話帳みたいなの」

カルパッチョ「臼砲の曲射弾道における弾道特性の計算式よ。跳超角と実際の射線や発射線の違いとか
弾道基線や最大弾道高と実際の着弾点の求めかたとか」

ペパロニ「ええっ!あたしが数学苦手なの知ってるだろ!そんなのバカスカ撃たせてくれたら
体が覚えるって!」

アンチョビ「だからバカスカ撃つ場所がないんだっての!」

カルパッチョ「それ以前に弾薬のお値段が…、一発あたりこうなっています」

アンチョビ「ええっ!こんなにするの!?2発分の予算でCV33が買えるじゃないの!」

カルパッチョ「5発分の予算でセモベンテが買えますね」

アンチョビ「弾代を捻出するには未来永劫おやつ抜きにするしか…」

ペパロニ「そんなのやだぁぁぁぁ!」

カルパッチョ「そんなことしたら暴動が起きかねませんよ」

カルパッチョ「それに、さっきちょっと動かしただけで燃料や部品をこんなに
消耗してますし、ウチみたいに財政の厳しいところじゃ使わずにただ置いとく
だけでも破産しかねませんよ」

アンチョビ「格納庫に入りきらなくて別の場所借りて保管してもらってるからなあ」

ペパロニ「いっそのこと売り飛ばしちゃったらどうですか?サンダースは導入を
検討してたっていうし」

アンチョビ「それがダメなんだよ、使用の規約に『他校への売却は禁止』って書いて
あるんだ。違反したら裁判沙汰にするってさ」

カルパッチョ「他所の学校も買ってくれないと思いますよ、これだけ経費がかかる上に
使いどころが極端に限定されてるんですから」

ペパロニ「だったら事故に見せかけて海に落っことして保険金をもらいましょう」

アンチョビ「アホかお前!そんなのすぐバレるわ!保険金詐欺なんてやったらキートン先生に捕まるぞ!」

ペパロニ「冗談ですって」

カルパッチョ「あの…、総帥、これってもしかしてご褒美じゃなくて厄介者を押しつけられたんじゃ…」

アンチョビ「なんか私もそんな気がしてきた…」

カルパッチョ「それにしてもなんでウチなんでしょうね?押し付けるにしても黒森峰やプラウダだったら
もっとうまく活用してるでしょうし」

RRRR…

ペパロニ「はい、こちらアンツィオ高校戦車道…あっ、どうもお久しぶりっす、はい、すぐ呼んできますんで、
アンチョビ姐さん、大洗の角谷姐さんからお電話っす」

アンチョビ「お前か、今取り込み中なんで…え?なんだって?それ本当か?うんわかった、知らせてくれてありがとう、
だからチョビ子って呼ぶなっての、じゃあな」

カルパッチョ「あの、お電話なんだったんですか?」

アンチョビ「辻のおっさんの腹が読めたよ、さっき杏が教えてくれたんだ。あのおっさん、大洗が勝ったのが
気に入らなくて、大洗に協力した学校に職務権限を利用して嫌がらせしてるって。カールもウチが扱いきれなくて
返しに来るの待ってるんだ。私らに恥をかかせるのが目的だったんだ」

カルパッチョ「そんなことだろうと思ってましたけど、大人げないおっさんですねえ」

アンチョビ「ごめん…、私があんなおっさんの口車に乗ったばっかりに、みんなに恥をかかせることになって…」

ペパロニ「アンチョビ姐さんは少しも悪くねえっす!悪いのは全部あのおっさんっす!おい!道具揃えろ!
文科省にカチコミかけっぞ!」

アンチョビ「わあ!待て待て!事態をややこしくすんな!なんでお前はそう血の気が多いんだ!」

カルパッチョ「でも総帥、このままじゃ本当に破産ですよ?くやしいけど頭を下げて返しに行くしか…」

アンチョビ「うーん…」




しばらくして…

辻「な…、なんだこれは…」

アンチョビ「ウチのカールくんですがなにか?邪魔な60cm砲を撤去して代わりに大型のピッツァ窯を設置、車体下部の
弾薬庫も最新式の厨房スペースに改装、更に大型飲料水タンクやオープンカフェ設置資材の格納庫を増設し、どこでも本格的
イタリア料理が楽しめる大型野外炊事車輌に生まれ変わりました!」

カルパッチョ「使用の規約では改造は認められてましたし、なにより『使用は戦車道に限ります』とは書いてありませんでしたし」

ペパロニ「色も辛気臭いダークグレイからイタリア風のトリコロールに塗り直しました。お洒落でしょ?」

アンチョビ「いやあ、カールくん大人気であちこちのイベントに引っ張りだこですよ、おかげで
改装の費用やらその他の経費やらあっという間に元が取れました」

辻「60cm砲は!60cm砲はどこ行ったんだ!?」

アンチョビ「ああ、それだったら西住のお姉ちゃんの方が『主砲だけでも使いようはある』って言うから
黒森峰に売っちゃった」

辻「何ぃぃぃっ!」

カルパッチョ「本体の売却は禁止されてましたが改造のために取り外した部位の
売却は明記されてなかったので」

ペパロニ「ウチの事情を察してくれて買い取り価格にだいぶイロつけてくれたっす。
まほ姐さんマジ天使っす」

辻「なんてことをしてくれたんだ!戻ってきた後の売却先も決まってたんだぞ!」

アンチョビ「あれあれ~?『戻ってきた後』ってどういうことかなあ?まさか私らが
『アホで貧乏人のアンツィオにはこんなの扱いきれないです~』って泣きながら
返しに来るとでも思ってたのかなあ?」

辻「くっ…!」

アンチョビ「わっはっは、あのおっさん当てが外れて呆然としてやんの、ざまあみろ」

ペパロニ「やっぱりアンチョビ姐さんは最高っす!」






アキ「大変だよミカ!文科省の人がウチにカールくれるんだって!」

ミカ「それって本当に必要なものなのかな?いやマジでマジで」


                    終

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