ゆの「お腹が・・痛い・・」【ひだまりスケッチ】 (120)

・初めての地の文
・溜め書き
・口調がおかしいところがあるかも
・文章力はそんなにないです

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とある日の深夜。わたしは今、何故か凄くお腹が痛い・・

ゆの「ハァ、ハァ、お腹が・・痛い・・」


ゆの「とりあえず、トイレに行って・・」

とりあえずトイレに向かおう。ただ単にお腹を壊しただけかもしれないし。

【30分後】

ゆの「何も出ない・・でもお腹が痛い・・」


ゆの「多分、冷えたんだね?そうだよね?」


ゆの「今は夜中の1時だし、こんな時間に起きてたら明日起きられないよ・・」


ゆの「とりあえず寝よう!寝たら治るかもしれないし」バタンッ

そう言ってベッドに寝転ぶ。もしかしたら痛みはすぐに治るかもしれないし。

でも、実際はそうではなかった。

ゆの「・・・・」グギュル


ゆの「・・・お腹、痛い・・」グギュル


ゆの「トイレ行かなきゃ・・」

【1時間後】

ゆの「ハァ、ハァ、これ本当に痛い・・何かあったの…?」


ゆの「とりあえず、一人じゃ不安だな・・」


ゆの「こんな時間だけど、もう仕方がない・・」

このものすごく痛い腹痛を一人で乗り越えることは難しいと思った。
だから、友達である宮ちゃん・・もとい宮子に電話をした。

プルルル・・

宮子「zzzz・・ん?」


宮子「もしもしゆのっち…?どうしたの・・?こんな時間に」

電話から聞こえた宮ちゃんの声は凄く眠そうな声だった。
まあそれもしょうがない、今の時刻は2時前。普通の人ならとっくに寝ている時間だ。


ゆの「宮ちゃん・・こんな時間にゴメン!ちょっと部屋来てくれる?」


宮子「えっ?今からゆのっちの部屋に?」


ゆの「うん・・」


宮子「こんな夜中に?」


ゆの「ほんとゴメン!」


宮子「・・・ゆのっちのお願いなら仕方がありませんな」


宮子「今から行くから鍵開けといて」


ゆの「わかった・・じゃあね」

プツン


ゆの「鍵を開けて・・」ガチャッ


ゆの「うっ・・またお腹が・・トイレに・・・」バタバタ

鍵を開けた途端、またお腹が痛くなる。
そしてまた、トイレに駆け込んだ。

コンコン

宮子「あれ?ゆのっち?」


宮子「ゆのっちー?」


【トイレ】

ゆの(あっ、宮ちゃんが・・)

遠くから声が聞こえる。
そうだ、宮ちゃんが来たんだ!

ゆの「ここだよー」

宮子「ん?ゆのっちトイレの中?」


ゆの「うん・・」

トイレの扉の向こうから宮ちゃんの声が聞こえる・・


宮子「ところでなんてわたしを呼んだの?」


ゆの「宮ちゃんごめん・・今晩ちょっと泊まってくれる?アイタタ」

この痛みを一人で耐えるのは無理だ・・・
せめて、宮ちゃんが一緒にいてくれれば・・



宮子「ゆのっちの部屋に泊まるのはいいよー?」

宮ちゃんはあっさりOKしてくれた。
まあ宮ちゃんがわたしの部屋に来るなんてことはよくあるのだけど。


ゆの「宮ちゃん、ちょっと待ってて…」グギュル

【30分後】


ゆの「・・・ハァ」


宮子「随分長かったね、そんなに長い間トイレで何してたの?」


ゆの「実は・・・」

ここまでの出来事をすべて話す。
このとき宮ちゃんは、真剣そうな顔でわたしの話を聞いてくれた。


宮子「へぇ・・ゆのっちも大変なんだね・・」


ゆの「うん・・」

でも、このときわたしは思った。
ここまでの痛みは尋常じゃない。
何かおかしい。そう思った。
だから、宮ちゃんにこう聞いた。

ゆの「宮ちゃん、病院に行ったほうがいいかな?」


宮子「うーん・・・」

宮ちゃんは少し迷った様子だった。
でも、わたしと目を合わせて、真剣な顔で言った。


宮子「ゆのっちがおかしいと思うなら、病院に行ったほうがいいんじゃないかな?だって、いつもと違う痛みなんでしょ?何かあってからじゃ遅いし」


宮子「そうだ、今春休みで学校ないでしょ?だから、明日にでも病院に行けば・・」

そう言うと宮ちゃんは、わたしの背中をさすってくれた。

宮子「ほら、こうすると楽になるんだよ?こうしておけば、お腹の痛みがましになるって聞いたことがあるんだ」


ゆの「ありがとう・・宮ちゃん・・」

しばらくさすっていると、お腹がだいぶ楽になってきた気がした。
そして、気づいたらわたしはベッドの上で眠っていた。

【翌朝】

ゆの「・・・お腹痛い」

痛みが続く・・・
いつもなら寝たら治るのに・・・


宮子「うーん・・ゆのっちおはよう、どう?お腹は?」


ゆの「変わらないよ・・・」

昨日の痛みは治まるどころかどんどんひどくなっていく。

宮子「・・・やっぱり病院だね」

こんな宮ちゃんがまじめにこんなことを言ってくれるなんて・・

ピンポーン

病院に行ったほうがいいという話が出た直後、インターホンが鳴った。


沙英「ゆのっ!!大丈夫!?」


ヒロ「ゆのさん、お腹大丈夫なの?」


乃莉「ゆのさん!?腹痛で苦しんでるって本当ですか!?」


なずな「宮子先輩に聞きました!お腹大丈夫ですか!?」


いきなりみんなが集まってきて、一瞬ビックリした。


ゆの「宮ちゃん、これ何!?」


宮子「実はゆのっちが寝てる間にみんなにメールしたんだー」


宮子「わたし一人だけじゃ心配でしょ?だから、とりあえずみんなをメールで呼んでおいたの」


ゆの「なんて送ったの?」


宮子「『ゆのっちが腹痛で悶えてるから、朝すぐに来て』って」


ゆの「悶えてるって・・でも確かに今も結構お腹痛いかも」

沙英「どの部分が痛いの?」


ゆの「えっと、おへその下の・・右に近い部分ですね」

そう答えると沙英さんは、少し考えてからこう答えた。


沙英「右に近い部分・・もしかして盲腸?」


ゆの「盲腸・・・ですか?」


沙英「うん。右側のお腹が急に痛くなったら大体盲腸ってどこかで聞いたことがある」


ゆの「わたしが・・盲腸?」

『まさか』と思った。だって、この私が盲腸なんて…
聞いたことはあるけど、そう簡単にはならない病気かと思っていた。

沙英「とりあえず、病院に行かないとわからないから・・・どこか開いてる病院ない?」


なずな「えっと・・ここから少し行ったところに総合病院があります・・・」


沙英「わかった。ゆの、病院行く準備して」


ゆの「は、はい」

急に言われたから一瞬呆然としたが、今はとりあえず指示に従うしかなかった。
そしてわたしは、別室で着替えをし始めた。


沙英「付き添いは!?」


宮子「わたしが行きます!」


沙英「宮子!はい他!」


ヒロ「ゆのさんのことが心配だから一緒に行くわ」


乃莉「わたしも行きます」


なずな「皆が行くなら・・・」


沙英「・・・結局全員だね」

ゆの「着替えましたー・・うっ・・またお腹が・・」


沙英「ほら!すぐにトイレ行って!」


ゆの「は、はい・・」

このときの痛みは夜中の痛みと一緒だった。
もう何回トイレに行ったんだろう。

【20分後】

ジャー

ゆの「行ってきました・・・」


沙英「よし、行こう。なずな、ここから病院までどのくらい?」


なずな「えっと・・2kmくらいです…」


沙英「2km・・微妙だな・・・ゆの、歩ける?」


ゆの「すみません・・ずっとお腹が痛くて歩くのも一苦労です・・イタタタ」

腹痛というのは歩けないこともある。
このときはじめて知った。腹痛のつらさと言うのを。

ヒロ「ゆのさん、苦しそうな顔してるわよ?」


ゆの「ハァ、ハァ・・」


宮子「そうだゆのっち、後ろのって」


ゆの
「・・・こう?」

そういうと宮ちゃんは、わたしを背中に乗せておぶってくれた。


宮子「ゆのっち重たい・・」


乃莉「宮子さん大丈夫ですか?無理しないでくださいね?」


宮子「うん、平気ー」

【しばらくして】


沙英「よし、タクシー呼ぼう」


ゆの「えっ、タクシーですか!?」

まさかのタクシー。


沙英「うん。だって2kmってことはここから歩いても20分くらいかかるし・・タクシーだったら5分くらいだし」


ゆの「すみません・・お願いします」

わたしはついタクシーを呼ぶようにお願いしてしまった。


宮子「一回おろすよ」


ゆの「うん」


宮子「重かった・・結局わたしはなんでおぶったんだろう」


ゆの「うん・・宮ちゃんなんでわたしをおぶってくれたんだろう・・」

沙英「もしもし・・・・」


乃莉「ゆのさん・・本当に大丈夫ですか?」


ゆの「大丈夫・・でも、本当に痛い・・座っているより立っているほうが楽・・」


なずな「立ってるほうが楽、なんですか?」


ゆの「うん…」

【2分後】

沙英「呼んだよ。すぐ来るって」


ゆの「あっ、ありがとうございます」

そしてしばらくして、タクシーが来た。


沙英「ほら、タクシー来たよ」


ゆの「あ、ありがとうございます・・・」


わたしは部屋を出た。
そして、ゆっくり階段を下りた。
階段を下りるのも一苦労。それほどわたしのおなかの痛みは増していく。


ゆの「ハァ、ハァ」


沙英「宮子は一緒に乗って!あとのヒロ、乃莉、なずなは後で来て!」


ヒロ「わかったわ」


乃莉・なずな「はい!」

そしてわたしはタクシーに乗り込んだ。
横には宮ちゃんがいる。そして前には沙英さんが。

運転手さんがどこまで?と聞くと、沙英さんは病院までと言った。
そしてタクシーは、病院まで向かった。
この間も、わたしの腹痛が止まることはなかった。むしろ、どんどん悪化していった。


数分後、あっという間にタクシーは病院に着いた。
そして沙英さんに料金を払ってもらったあと、宮ちゃんと沙英さんに抱えられながら、病院に入った。このときの時刻は午前8時ごろだった。


沙英「ゆの、病院着いたよ」


ゆの「あっ、もう病院なんですね・・・」


沙英「とりあえずこの機械で予約券を・・」


沙英さんは券売機で予約券を取った。

その予約券を見ると、『内科』と書かれてある。


そしてわたしたちは内科のほうへ向かった。

【内科】

ゆの「いたたた…」


宮子「ゆのっちこれ本当に大丈夫?」サスサス

待合室にいる間、ずっと宮ちゃんは背中をさすってくれた。


沙英「はい、券と保険証渡してきたよ」


ゆの「あっ、ありがとうございます」


ゆの「・・・・・お腹痛い」


宮子「なんなのでしょうか。ゆのっちの腹痛は」


沙英「さぁ。でもあんだけ痛がってるから、普通の腹痛ではないな・・」


宮子「やっぱりそう思います?」


沙英「ゆの、なにか心当たりある?」


ゆの「何も・・ないです・・」

ゆの「ハァ、ハァ…」


宮子「ゆのっち・・・やつれてるね」


ゆの「ずっとお腹痛いし・・・やつれてるかもしれないよ」


沙英「まあ、そこに座りなよ」

沙英さんがそう言い、わたしは待合室の椅子に座った。


宮子「ゆのっち、もうすぐで呼ばれるからね」


ゆの「うん。ありがとう」

そしてわたしは、激しい腹痛に耐え、呼ばれるのを待った。
そして、数十分後…


<ユノサマー、ドウゾ

ゆの「行ってきます」


宮子・沙英「いってらっしゃい」

【診察室】

医者「どうされましたか?」


ゆの「あの・・ずっとお腹が痛くて・・」


医者「ほう、それで?」

わたしは今までの経緯をすべて話した。

そしてお医者さんは少ししてから口を開けた。


医者「ちょっと超音波で調べてみますね」

超音波?聞いたことはあるけど、それってどうやるの?
わたしはそう聞いた。


医者「お腹とかに異常がないか調べます」

・・・多分、お腹の中の写真を撮るんだろう。


医者「では、超音波検査室は…」

超音波検査室の場所を教えてもらい、わたしは診察室を出た。


ゆの「ありがとうございました」

わたしが診察室から出ると、ヒロさん、乃莉ちゃん、なずなちゃんが来ていた。

乃莉「ゆのさん、どうだったんですか!?」


ゆの「とりあえず、超音波検査室に来てって」


ヒロ「えっと・・超音波検査室の場所は…」


ゆの「教えてもらいました」


ヒロ「あら、そうなの」


沙英「誰が連れていく?」


宮子「じゃあ検査室まではわたしが連れていきます」


なずな「私も連れていきます」


乃莉「わたしも」


沙英「・・・頼んだ」

そしてわたしは、宮ちゃん、乃莉ちゃん、なずなちゃんにかかえられながら、超音波検査室に行った。

【超音波検査室】

ゆの「何かあったら怖いよ・・」


宮子「大丈夫!たいしたことじゃないって」


なずな「そ、そうですよ!ゆの先輩のことですし」


乃莉「まさかゆのさんが大病なはずが…」

皆は大丈夫と言ってくれたそのとき、


<ユノサマドウゾー

呼ばれた…
これでわたしのお腹の中がわかるんだ・・

ゆの「じゃあ、行ってくるね」

そして、超音波の機械があるところに入った。

そこは若い看護師さんがいた。優しそうだ。

超音波担当看護師「それじゃ、ベッドに横になってください」


ゆの「はい」

看護師さんの言われる通り、横になった。
今お腹の中はどうなってるんだろうと少し不安だった。


超音波担当看護師「服をめくってください」

めくるって…何をするんだろう

服をめくると、何やらゼリーみたいなのを機械に塗って、それをわたしのお腹の中に置いた。

ゆの「きゃっ!」


超音波担当看護師「最初は少しくすぐったいかもしれませんが、すぐになれますよ」


ゆの「そ、そうですか」

看護師さんの言葉を信じ、私はじっとしていた。
しばらくすると、看護師さんが深刻な顔をしてさっきわたしを診てくれたお医者さんを呼んだ。

超音波担当看護師「これ見てください、ここの部分。少し腫れてますね」


医者「確かに・・ここの部分は虫垂?」


超音波担当看護師「虫垂ですね。虫垂炎です」

虫垂炎・・・?聞いたことがない病気だ・・


超音波担当看護師「これを見てください、ここの部分が少し腫れてるのがわかりますか?」


ゆの「腫れてる・・・?」


超音波担当看護師「ここが炎症を起こしてるんです」

画面にうつっているわたしの虫垂?の部分を指さした。


超音波担当看護師「ここが大腸の下、虫垂と呼ばれる部分です。ここの部分が少し腫れています」


ゆの「そ、そうですか」

そもそも虫垂がよくわからないので腫れているとかいわれてもわからない…


超音波担当看護師「では、とりあえずもう1回診察室に行ってください」


ゆの「はい。ありがとうございました」

ゆの「虫垂炎ってなに?」


宮子「うーん・・・」


なずな「何なのでしょうか・・」


乃莉「盲腸の事じゃないですか?」


ゆの「え?」


乃莉「どこかで聞いたことがあるんです。盲腸っていうのは昔、虫垂炎が盲腸まで広がってしまってから発見されたから盲腸炎って呼ばれてたみたいです」


ゆの「そうなんだ・・・」


乃莉「多分、そのあたりは沙英センパイが詳しいと思いますよ」


ゆの「とりあえず沙英さんに聞こう」

そしてわたしは、また乃莉ちゃんとなずなちゃんと宮ちゃんにかかえられながら、内科のほうに戻った。

【内科】

ゆの「帰ってきました」


沙英「あ、どうだった?」


ゆの「なんか、『虫垂炎』って言ってました・・」


沙英「あーやっぱり。盲腸だよそれ」


ゆの「やっぱり盲腸だったんですか・・」


ヒロ「虫垂炎っていうことは入院よね・・」


ゆの「えっ、入院ですか!?」


ヒロ「いや、まだわからないわ。お医者さんがなんと言うかよね・・」

ヒロさんは少し不安げな顔でそう言った。
すると・・

<ユノサマ、ドウゾー

呼ばれた。


ゆの「あっ、行ってきます」

【診察室】

医者「超音波検査で見た結果、虫垂炎・・盲腸でした」


ゆの「はい」

お医者さんが言うから、盲腸であることは間違いがない。


医者「このまま放置すると腹膜炎という病気になる可能性があり、命にかかわることもあります」


医者「なので、入院を強くお勧めします」


ゆの「入院・・ですか」

そうだとは思ってたけど、まさか本当に入院と言われるなんて・・


医者「はい。普通虫垂炎だと手術で切るのですが、今回はそんなに進行していないので薬で散らすことになります。そのほうが早く退院できます」


ゆの「どのくらいの期間入院するんですか?」


医者「うーん・・4、5日くらいでしょうか?手術になれば10日間、とかあるのですが・・」


医者「それに、もし入院となればあなたはまだ未成年なので親の同意がいるんですよね・・」


ゆの「そうなんですか・・少し考えさせてください」


医者「わかりました」

ガラガラ..

ヒロ「やっぱり入院?」


ゆの「はい・・そう言っていました」


ゆの「でも、入院生活の事や、今は休みだからいいですけど、もし学校とかぶってしまったら・・」


宮子「もしそうなったら学校休めば・・」


ゆの「・・・・」

ゆの「・・入院するとなれば、親の同意がいるみたいなんですが」


沙英「あー、それね・・」


ゆの「ちょっとお母さんに盲腸になったこと言ってきます」


なずな「あ、あの、大丈夫ですか?一緒に行きますか?」


ゆの「あ、ゴメン、お願い」

そしてなずなちゃんにかかえられて電話できるところに行った。

プルルル・・

ゆの母「あら?電話?」


ゆの母「もしもし?」


ゆの「あ、お母さん?ちょっと大事なことを言うから聞いてくれる?」


ゆの母「どうしたの?」


ゆの「私、虫垂炎・・盲腸になっちゃったの・・」


ゆの母「えっ!?盲腸に!?」


ゆの「うん・・それで、入院することになったんだけど、入院のときに親の同意書っていうのがいるんだって」


ゆの「だから、今からこっち来てくれる?」


ゆの母「そんな・・急に言われても・・」


ゆの「お願い!来れる?」


ゆの母「・・・わかった、すぐに行く。病院の場所は?」


ゆの「病院の場所は・・」

お母さんに病院の場所を伝えた。


ゆの母「・・・・そこね」


ゆの「うん。ゴメンね、お母さん・・」

プツッ


お母さんが来てくれる。
そして入院が確定になる・・

なずな「あの・・どうでしたか?」


ゆの「お母さん、くるって。今から」


なずな「そ、そうなんですか・・」


そして電話を済ませたわたしは、再び戻った。
でも、ここからが問題だ。
なぜなら、実家からここまでは少なくとも2時間半はかかる。
それまでこの腹痛に耐えられるか。

【内科】

宮子「どうだった?」


ゆの「お母さん、来てくれるって」


沙英「来てくれるんだ・・」


ゆの「はい。来てくれるみたいです」


ヒロ「でも、ゆのさんの実家からここまでどのくらいかかるの?」


ゆの「最低でも2時間半なんですよね・・それまで耐えられるか・・」


そして、腹痛に耐えながらずっと待った。

・・・3時間が経とうとしたころか、病院にお母さんとお父さんがやってきた。


ゆの母「ゆの、大丈夫!?」


ゆの父「虫垂炎って聞いたから飛んできたぞ!」


ゆの「あっ、お父さんも・・」


沙英「あ、こんにちはー」


宮子「こんにちは」


乃莉「こんにちはー」


ヒロ「こんにちは」


なずな「こ、こんにちは・・」


ゆの母「こんにちは」

ゆの父「で、その同意書というのは?」


ゆの「入院が確定してから書くみたいなんだけど・・・」


ゆの母「そうなの」


ゆの「じゃあ、入院のこと言ってくるね」


そして入院するということを伝えると、お医者さんは同意書を渡してきた。
それをお母さんが書いてくれて、わたしは入院することになった。


沙英「ゆのが入院かー…」


宮子「ゆのっち、来れたら毎日お見舞いくるからね!」

看護師「それじゃあ、入院が確定したとことなので、点滴打ちますね。チクッとしますよ」


ゆの「はい」

入院が確定したわたしは点滴を打たれ、皆に支えられながら病室に向かった。
このときの時刻はすでに13時を過ぎていた。

ヒロ「えっと・・病室は7階だったわよね・・」


乃莉「じゃあそこのエレベータから病棟に行って…」


ゆの「はい、そこから行けば・・・」

そしてずっと歩いているうちに、病室に着いた。

【病室】

ゆの「えっと、ベッドは・・って誰もいない!?」

病室に着いたのはいいものの、病室にはわたし以外誰もいなかった。


沙英「4人部屋の一番手前・・しかもこの部屋の他の入院患者はいない・・」


なずな「す、少し寂しいですね・・」


ゆの「うん。でも多分大丈夫・・」


ヒロ「何か必要なものがあれば言ってね?」


ゆの「はい、ありがとうございます」


ゆの「あっ、服とか日用品は・・」


宮子「わたしがゆのっちの部屋から持ってくるよ!」


ゆの「あっ、ありがとう!これ鍵」


宮子「あいよ」


宮ちゃんはわたしの荷物を取りに帰った。

ゆの母「どこの部分が痛いの?」


ゆの「へそ下の右側」


ゆの父「いや、盲腸なんだし右側でしょ」


ゆの「だからそうって言ってるでしょ」


看護師「・・・・」スタスタ


ゆの「あっ、看護師さん」


看護師「・・・言い忘れていました。あなたは明日の昼まで飲食禁止です」


ゆの「えっ!?何でですか!?」


看護師「腸を空っぽにするためです。そして改めて検査をします」


ゆの「は、はい・・」

突然の絶食宣言にびっくりした。
昨日の夜から何も食べていないのに…

でも、検査をするためらしいし、仕方ないよね・・


看護師「それでは、何かあればこのナースコールのボタンを押してください」


ゆの「はい」


看護師「それでは」


ゆの「うん・・・腹痛と空腹に耐えられるかな」


ゆの母「大丈夫!あなたならきっと乗り越えられるわよ」


ゆの「そ、そうだよね!」

お母さんが励ましてくれた。
その時、ヒロさんは言った。


ヒロ「絶食絶飲と言うことは食料の差し入れはダメだよね・・」


ゆの「あと飲み物もダメみたいです・・」


ヒロ「そうだったわ」


ゆの「はぁ・・・」

そしてみんなと話しているとき、宮ちゃんが帰ってきた。


宮子「ゆのっち!はいこれ!」


ゆの「えっと・・服と歯ブラシと箸?」


宮子「うん!あと下のコンビニでプリンも買ってきたよ!」


ゆの「・・・・」


宮子「・・・あれ?嬉しくないの?」


沙英「あー」


ゆの「宮ちゃん・・その気持ちは嬉しいんだけど…」


ヒロ「ゆのさん、絶食絶飲みたいなの」


宮子「えっ?」


ゆの「腸を空っぽにしないといけないから、絶食しないといけないの」


宮子「そ、そうなんだ…」


乃莉「あっ、このプリンどうします?冷やすならこの冷蔵庫、専用のカードがいるみたいですし、カード買ってきますよ?」


ゆの「専用のカードがいるんだ・・ゴメン、乃莉ちゃん買ってきて」


乃莉「わかりました!」

そうわたしが言うと、乃莉ちゃんはカードを買いに行った。

・・・そして


乃莉「買ってきました」


ゆの「ありがとう」


乃莉「ん?このカードよく見ると『テレビカード』と書いていますね」


ゆの「えっ!?もしかして間違えた?」


乃莉「いや、確かに『冷蔵庫』と書いていました」


ゆの「じゃああってるはずだけど・・」


なずな「一回この『カード挿入口』というところに入れてみたらどうですか?」


ゆの「うん。一回この中に入れてみて?」


乃莉「はい・・」

すると・・

乃莉「あっ、開きました」


ゆの「でもこれテレビカードって書いてますよね?」


乃莉「これもしかしてテレビと冷蔵庫が一緒に使えるんじゃないですか?」


沙英「うん。だってテレビって書いてるし」


ゆの「じゃあテレビの電源つけてみるね」

本当にテレビも使えるのか。
半信半疑でテレビの電源をつけてみた。


ポチッ

ゆの「あっ、テレビの電源入った」


沙英「テレビと冷蔵庫が一緒になってるんだ」


ゆの「そうみたいですね」

・・・そして、一緒にテレビを見たり、雑談をしたりしているうちに気が付いたらもう夜でした。

ゆの「それで・・」ペチャクチャ


ヒロ「・・あら、もうこんな時間」


ゆの「えっ、もうこんな時間なんですか!?」


宮子「病院食を運ぶ音がするね」


沙英「しーっ、今のゆのの前でそんなこといわない!」


乃莉「絶食中なんですよ!」


宮子「そうだった、ごめんごめん」


ゆの「みんな・・・そんなこといちいち言わなくても普通にお腹すくよ!」


ヒロ「・・・まあ、そういうということは、食欲はあるのね」


ゆの「はい」

ゆの父「そうだ、お腹はどうだ?」


ゆの「まだ少し痛いけど、ましにはなっていってるかな」


ゆの父「ましにはなっていってるんだな。よかったよかった」


ゆの「うん・・」


なずな「あっ、そろそろお見舞いの時間も終わりみたいです」


ヒロ「あら、もうお見舞いの時間は終わりなのね」

気づくと時間は午後8時前。お見舞いの時間はここまで。


ゆの「今日はありがとうね」


宮子「また明日も来るからね」


乃莉「来れたら来ます」


なずな「あっ、わたしも来れたら・・」


ゆの「宮ちゃん、乃莉ちゃん、なずなちゃん、ありがとう」


ゆの「・・・沙英さんとヒロさんはどうですか?」


沙英「ゴメンッ、明日来れない!」


ヒロ「わたしもちょっときついかも・・」


ゆの「そうですか・・」


沙英さんとヒロさんは来れないみたいだけど、宮ちゃんと乃莉ちゃんとなずなちゃんが来れるみたいだし・・


ヒロ「それじゃあ、わたしたちはこれで」


ゆの「うん、バイバイ」


そしてみんなは帰ってしまった。一人ぼっちになった。
まあ、いつも一人でくらししてるから一人ぼっちにはなれてるけど。
でも、何とないとさみしいなぁ・・

【外】

宮子「まさかゆのっちが入院なんてね・・少し寂しいや」


沙英「うん、正直ビックリした」


ゆの母「もし病院でなにかあったらどうしよう・・」


ヒロ「そうね・・帰るときはお腹大丈夫って言ってたけど、もしあの後再び痛くなって苦しんでたら・・」


なずな「で、でもそんなにみんなが暗かったらゆの先輩も元気になりませんよ」


乃莉「そうですよ、みんなが明るければゆのさんも元気になりますよ」


ヒロ「・・・そうよ!みんなが明るければゆのさんもすぐに治るわ」


ゆの母「そうだといいんだけど・・」


沙英「あの、少し話変わるのですが、今晩どうします?」


ゆの母「そうねぇ・・こんな時間だと家までの電車もないし・・泊まっていくわ」


ゆの父「自分も」

【病室】

看護師「消灯時間なので電気切りますね」


ゆの「あっ、はい」

カチッ

ゆの(はぁ・・ずっと注射の針が腕の中だし、こんな早くに眠れないよ・・・)


ゆの(そうだ、テレビでも見よう)ポチッ

この時間にテレビをつけるのは久しぶりだ。
この時間帯と言えばみんなでわいわいしたり、勉強したり、テレビを見ることはなかなかないなぁ・・


ゆの(この時間ってテレビなにがやってるんだろう・・)

そう思いながらいろいろ番組を見てみる。


しかし、ずっとテレビを見ていてもそんなに面白い番組はなかった。

結局テレビを消す。

ポチッ

ゆの(はぁ・・凄くヒマだなぁ)


ゆの(何もすることがないなぁ)


そう思ってるうちに、眠ってしまった。

ゆの(うっ・・・お腹痛い・・)

わたしは突然の腹痛で目が覚めた。


ゆの(はぁ、はぁ、なにこれ、すごく痛い・・)


わたしはあまりの痛みに耐えきれず、ナースコールを押した。


スピーカー<どうされましたか?


ゆの「あの、すごくお腹が・・ハァ、ハァ」


スピーカー<わかりました。すぐにそちらに向かいます


ゆの「はい・・」

突然の激しい腹痛に耐えられなくなり、ついに悶えてしまった・・
まさか宮ちゃんが言ってたことが本当になるなんて・・


ゆの「はぁ、はぁ・・」

この看護師さんが来るまでのわずかな間、わたしは痛みで泣きそうになった。でも、頑張って耐えた。

看護師「大丈夫ですか!?」


ゆの「はぁはぁ・・痛い・・」


看護師「どこが痛いんですか?」


ゆの「お腹が・・」


看護師「わかりました。痛み止め持ってきます!」


看護師さんは痛み止めを持ってくるみたい・・
しかし、この持ってくるのを待つ間も私は痛みで苦しんだ。

そしてしばらくして・・


看護師「点滴、痛み止めを」


看護師2「はい」


2人がかりの作業だった。

そして、痛み止めを点滴に入れてもらったが、その激しいお腹の痛みは治まらない。
すると、一人の看護師さんがこう言った。

看護師「そうだ、ベッドを移動させて・・・」

ゆの(えっ、ベッドを移動させるの!?)


看護師「ナースセンターの横にベッドを置いて・・」


ゆの(ナースセンターの横に置くって・・そこまで!?)


看護師「はい、移動!」ガラガラ

そしてベッドが移動され、わたしのベッドはナースセンターの横に置かれた。

ゆの(・・・・・・)


ゆの(これはこれでいいかも・・・)

ナースセンターはもちろん廊下にあるので、廊下の電気が目に入る。

ゆの(・・・・)


ゆの(あっ、痛み少しましになってきたかも)


ゆの(でも、眠れない・・)

だんだん痛みもましになってきて、いつの間にか痛みが引いていた。


ゆの(うーん・・今の時間は4時・・1時間ぐらい苦しんでたのかぁ・・)


ゆの(それにしても痛み止めの力ってすごいや・・あんだけ痛かったお腹を一瞬で抑えるんだし・・)

改めてわたしは思った。
痛み止めのすごさを。

ゆの(あっ、そろそろ寝なくちゃ・・)

ぼーっとしていると、いつの間にか朝になっていた。
そして、ベッドは元に戻されていた。


ゆの(あっ、もう朝・・今の時間は・・えっ、7時!?)


ゆの(え、えっと、朝食の時間は・・)

入院の説明の本を見てみる。

ゆの(・・・よかった、朝食は8時みたいだ・・っていってもわたしは食べられないんだけどね)


ゆの(あれ?面会時間って何時からだったっけ・・)


ゆの(14時からかぁ・・長いなぁ)


ゆの(えっと、これからの予定は・・まず朝食、そして11時に体拭き、12時に昼食、14時に面会時間・・)


ゆの(・・・・とりあえずテレビでもみてようと)


普段この時間は学校に行く準備してるから、この時間帯のテレビを見るのは久しぶりだ。

ゆの(へぇ、こんなニュースもあるんだ..)

ゆの(・・・・)


ゆの(・・・あっ)

ふと点滴のほうを見ると、もう残りわずかだ..


ゆの(あっ、なくなりそうだ)

と思ったその時・・


看護師「失礼します」

看護師さんがやってきた。


看護師「点滴取り替えます」


ゆの「あっはい」

看護師さんは慣れた手つきで点滴を交換した。
そして、ふと疑問に思ったことを聞いてみた。

ゆの「点滴は何時間おきに交換するのですか?」


看護師「9時間おきです。今は遅く落としていっていますので」


ゆの(へぇ..あっ、確かに前回は昨日の夜11時だ」


看護師「はい、なので夜中も欠かさず時間が来れば交換しています」


ゆの「へぇ・・・」

看護師「あっ、お腹の調子はどうですか?」


ゆの「あっ、だいぶましです」


看護師「それはよかったです。では、11時に体を拭きに来ますので」


ゆの「はい。ありがとうございました」


そして看護師さんは去っていった。

ゆの「ふぁぁ..眠いなぁ」

痛みもだいぶ治まってきて、なんだか眠くなってきちゃった・・

ゆの(入院って1日中ベッドだから、ずっと眠ってられるよ)

そしてわたしは再び眠ろうとした..その時


看護師「ベッドをこっちに!」


ゆの(えっ!?何々!?)


看護師「ここにベッドを置いて!」


ゆの(もしかして患者さん?)


看護師「これでオーケーと」


??「ありがとうございます」ゴホゴホ


ゆの(何なんだろう・・・)

隣に誰か来たみたい。

そしてわたしは、ふと横を見ると、3,40代くらいの女性が「どうも」と言ってきた。

わたしは「こんにちは」と言った。

女性「あの、失礼ですがなにで入院されてるのですか?」


ゆの「盲腸です」


女性「盲腸・・自分も子供のころなったんですよ」


ゆの「そうなんですか・・」


女性「今は薬で治せるのですね」


ゆの「治すというより・・散らしてますけどね」

ゆの「そちらは何で入院ですか?」


女性「喘息です。ちょっと発作が出て」ゴホゴホ


ゆの「喘息で入院ですか・・」


女性「そうなんです...」

隣の人と少し話をした後、わたしはカーテンを閉めた。


ゆの(喘息でも入院するんだ・・)

・・・といっても、入院は病気以外にもいろいろあるけど。


ゆの(よし、今度こそ寝よう!)


そして、私はベッドで眠った。

看護師「・・・さん、ゆのさん!」


ゆの「・・・はっ!」

次に目が覚めた時は、看護師さんが起こしてくれた。


ゆの「うーん・・」


看護師「体をふくので服と下を脱いでください」


ゆの「えっ!?点滴が邪魔で脱げないんですけど」


看護師「脱ぎ掛けで結構です」


ゆの「あっ、そうなんですか」

看護師さんはわたしのお腹や背中、そして手、足、顔などを拭いていった。

看護師「・・・はい、拭き終わりました。お疲れ様です」


ゆの「は、はい、ありがとうございました」

そして、すごく素早くて、気持ちいい体拭きが終わった。


看護師「では、今日の検査をするのでついてきてください」


ゆの「えっ、今からですか!?」


看護師「はい」


ゆの「そ、そうですか・・」


検査って何をするんだろう・・
昨日は「腸を空っぽにする」って言ってたけど・・

そして、点滴を持ちながら向かった場所は...


看護師「はい、到着です」


ゆの「えっ、ここ昨日行ったところじゃないですか!」

連れてこられた場所は、昨日行った超音波検査室。


<ユノサーン、ドウゾー


ゆの「あ、はーい!」

昨日と同じところに寝転んで、検査が始まった。

超音波担当看護師「では、始めます」

そして、昨日の機械でお腹を見た。


超音波担当看護師「・・・・・」


超音波担当看護師「炎症が少し引いてきましたね」


ゆの「あっ、そうですか」


超音波担当看護師「もしかしたらこのままいけば、早くて明日にでも退院ができるかもしれませんね」


ゆの「えっ、それって本当ですか!?」


超音波担当看護師「はい」

突然の朗報にわたしは凄く喜んだ。


ゆの「早く治るといいなぁ・・・」

そして、検査は終わった。

結局、絶食の意味は何だったんだろう・・


看護師「では、戻りましょうか」


ゆの「はい!」


早く退院できるといわれたわたしは、すごく興奮した。

そして、部屋に戻った。


しばらくすると、何かの物音がした。


・・・昼食を運ぶ音だ


ゆの(やっとご飯が・・食べられる!)

そしてついに・・・


看護師「ゆのさん、昼食です」

待ちに待ったご飯だ!


ゆの「ご飯が来た・・」


看護師「では、食べ終わればここの棚に食器を置いてください」


ゆの「わかりました」


看護師「では」

病院食ってどんなのだろう・・


ゆの「いただきます!」

普段何気なく食べているご飯も、絶食してから食べるご飯はすごくおいしい!


ゆの(こんなにおいしいご飯は初めて・・ちょっと味は薄いけど、宮ちゃんならおいしいおいしい言いながら食べるだろうなぁ)


ゆの(というか、テレビつけながらご飯食べるのは久しぶりだなぁ)

そして、御飯の時間はあっという間に過ぎた..


ゆの「あっ、食器を棚に直しておかなきゃ」


食器を棚になおしたとき、看護師さんがやってきた。

看護師「・・・では、回収しますね」


ゆの「はい、お願いします」

食べ終わったけどヒマだ・・・
そうだ、窓から景色を見よう。


ゆの(窓から何が見えるかな...)

窓からの景色を見ると、やまぶき高校ではない学校が見えた。
その近くに通っている道に、人が歩いているのが見えた。

ゆの(いいなぁ・・あの人は・・)


わたしは少しひだまり荘が恋しくなった。


ゆの(わたしも早く退院したいよ・・)グスッ

少しホームシック?みたいな状態になった。

ゆの(お見舞いの時間まであと何時間?)

時計を見ると午後1時半。
面会時間の3時まで1時間半ある。


ゆの(はやく時間にならないかな・・)

そう思いながらずっとぼーっとしていた。


・・・気づくと時間は2時半。あと30分。


ゆの(あと30分だ・・あと30分でお見舞いの時間!)

と思っていたそのとき・・

ガラガラ..

ゆの(あっ、また患者さんかな?)

誰だと思ってみてみると、男性がいた。

ゆの(・・・・・)

男性が来てしばらく経った。
ふと時計を見てみると3時になっていた。

ゆの(あっ、もう3時!早く来ないかな・・・)

早くみんなが来ないかとワクワクしていたら・・


宮子「ゆのっちー!!来たよ!!」


ゆの「しーっ!ほかの人もいるから!」

宮ちゃんがやってきて・・


乃莉「ゆのさん、わたしたちも来ましたよ!」


なずな「わ、わたしも・・」

昨日の予告通り、宮ちゃん、乃莉ちゃん、なずなちゃんがやってきた。

宮子「ゆのっち、ご飯食べられるようになったんでしょ?」


ゆの「うん!お昼ごはん食べたよ!」


乃莉「どうです?おいしかったですか?」


ゆの「うーん・・少し味が薄かったけど、普通においしかったよ」


宮子「病院食っておいしくないイメージだったけど、そうでもないんだね」


ゆの「うん。そうでもないよ」

病院食の話で盛り上がってる中、なずなちゃんが言った。


なずな「あ、あの、お腹の調子はどうですか?」


ゆの「あ、夜中一回すごいおなかが痛くなって・・結構苦しんだけど・・」


宮子「え?どうしたの?なんで苦しんだの?」


ゆの「いやだから・・夜中急におなか痛くなって・・」


なずな「そ、それで・・今はどうなのですか?」


ゆの「今は大丈夫だよ!痛み止め打ってるから」


なずな「そ、それはよかったです・・」

ゆの「そういえばさっき、ひだまり荘が恋しくなって少し泣いちゃったよ・・」


なずな「わかります、ホームシックですよね」


ゆの「たぶんそれ・・」


ゆの「早く帰りたいなぁ」


宮子「ゆのっちが元気になって病気が治れば退院できるよ!」


ゆの(病気が治れば退院できるのは当たり前だけど・・)


ゆの「そ、そうだよね!わたし、頑張るよ!」

宮子「そういえばゆのっち、ずっとベッドにいても暇でしょ?」


ゆの「うん」


宮子「だからこれ」スッ

宮ちゃんが取り出したのは一冊のマンガ本だった。


ゆの「これは?」


宮子「なんか部屋にあったからこれあげるよ」


ゆの「あ、ありがとう・・」

まぁ、暇つぶしにはなるかな?

宮子「あ、そうだ、プリンあったでしょ?」


ゆの「プリン・・?あっ、冷蔵庫に入ってた!」


乃莉「そういえばプリンもありましたね・・」


なずな「プリン・・お腹大丈夫ですか?」


ゆの「多分大丈夫だと思う・・」


ゆの「宮ちゃん、プリンとって」


宮子「あいよ」

ガチャッ

宮子
「はい」スッ


ゆの「ありがとう」

そしてわたしは、プリンのふたを開けた。


ゆの「わぁ、おいしそう・・」


乃莉「いかにも甘そうですね・・」


宮子「ゆのっちー、一口ちょうだーい!」


乃莉「ダメですよ、これはゆのさんのものですから」


宮子「えー、これわたしが買ってきたんだよー」


ゆの「いいよ宮ちゃん、一口あげる」


宮子「え、いいの?ちょうだいちょうだい!」


ゆの「はい、あーん」


宮子「」アーン

パクッ


ゆの「宮ちゃん、おいしい?」


宮子「うん、甘くておいしいー」


ゆの「えへへ」

ゆの「そういえば、お母さんとお父さんは?」


乃莉「それが、急な用事ができたから朝一で帰って行ったんですよ・・」


ゆの「そうなんだ・・」


なずな「ま、まあ大丈夫、ですよ・・」

宮子「・・・あ、そういえば、トランプ持ってきたんだ!みんなでやろうよ」


ゆの「さんせーい!」


乃莉「わたしはいいですよ」


なずな「み、みんなが言うなら・・」


ゆの「でも、何するの?」


宮子「ババ抜きしようよ!」


乃莉「ババ抜きですか・・」


そしてみんなで、ババ抜きをやることになった・・

~~~~~~~

宮子「はい、ゆのっちの番!」


ゆの「うーん・・」


乃莉「ゆのさん、2分の1ですよ!」


ゆの「うーん・・どっちにしよう・・」


ゆの「・・・こっちで!」


宮子「あっ、ジョーカーが・・」


なずな「ゆの先輩の勝ちです!」


ゆの「やった!」


宮子「よし、もう1回!」

~~~~~~~

ゆの「・・・・またわたしが残った・・」


なずな「え、えっと・・2分の1、ですよ」


ゆの「なずなちゃんとわたしが残るなんて・・」


宮子「さっきみたいにいけば勝てるって!」


ゆの「・・・・こっちで!」


なずな「あっ・・」


なずな「ジョーカーが・・わたしに・・」


宮子「ゆのっちすごーい!」


乃莉「また勝っちゃいましたね」


ゆの「わたし・・今日結構ツイてるかも!」


なずな「なんでそう思うのですか?」


ゆの「このババ抜きで連勝したってこともあるけど・・」


ゆの「実は、今日の超音波検査で『だいぶ炎症が収まってきた』って言ってたんだ」


宮子「それで?」


ゆの「『もしかしたら明日退院できるかも』、だって!」


宮子「おー!!」


乃莉「明日には退院ですかー!」


ゆの「まだわからないけどね。もし明日見て治ってたら、だけどね」

・・・そしてみんなで話したりしていたらもう夜。


宮子「あっ、今何時?」


ゆの「6時だね」


宮子「あー、だからさっきから音が・・」



看護師「失礼します、夕食です」スッ


ゆの「ありがとうございます」


看護師「食べ終わりましたらそこの棚に置いておいてください」


ゆの「はい」

宮子「これが病院食か・・」


乃莉「おかずの量がが少ないですね」


ゆの「うん。でもこれも栄養バランスを考えて作っているからね」


ゆの「それじゃあ、いただきます!」


ゆの「」パクッ


ゆの「」モグモグ


ゆの「・・・昼よりおいしくない?」


乃莉「・・・・多分、昼間は久しぶりの食事だからおいしく感じたんじゃないですか?」


ゆの「そうかもしれないけど、おいしくないとか言っちゃダメだよ!」

宮子「見た目は案外普通だね」


ゆの「まあ、おかず自体は普通だしね」


なずな「そ、そのお茶はなんですか・・?」


ゆの「あーこれは・・」ゴクゴク


ゆの「ほうじ茶だね」


宮子「ゆのっちそんなことも知ってるんだー」


ゆの「いや、なんとなくだけどね」

乃莉「病院食、味はどうですか?」


ゆの「味は・・相変わらず薄いね」


ゆの「まあ普段塩分をとりすぎてるのかな?ってところかもしれないけど」


ゆの「それに、正直言えばふりかけが欲しかったね」


なずな「ふりかけ・・ですか」

みんな、わたしが話題を出してもちゃんと話について行ってくれる・・

気づくと、ご飯も食べ終わっていた。


ゆの「ごちそうさまでした」

宮子「あっ、これなに?」

一枚の紙を見つけた宮ちゃん。

ゆの「これ?」


ゆの「夕食のメニューのやつだね」


ゆの「ここに夕食のメニューが載ってるんだ」


宮子「へぇ、そうなんだー」

【1時間半後】


乃莉「もうこんな時間ですか・・・」


宮子「もし明日退院だったらメールしてね?」


ゆの「うん!」


なずな「ゆの先輩が退院することを祈って・・」


ゆの「ありがとう、なずなちゃん」


乃莉「それじゃあ、また明日」


ゆの「ばいばーい」

ゆの(ハァ・・・みんないなくなったし、やっぱり少し寂しいなぁ)


ゆの(・・・・でも、明日になればいつでもみんなに会える・・)


ゆの(それまでガマン・・)


ゆの(・・・・そうだ、マンガがあったはず)


ゆの(それでも読もう・・)

ふと目についた宮ちゃんがくれたマンガを読んだ。
これで暇つぶしにはなる・・・

【30分後】

ゆの(つい全部読んじゃったよ・・)


ゆの(けっこ面白かったなぁ..)


ゆの(今何時・・?)


ゆの(7時半・・)

みんなが帰ってからまだ30分しか経っていない。


ゆの(テレビで見ておこう)

マンガも読み切り、またヒマになったわたしは、テレビを見ることにした。


ゆの(・・・おもしろいのやってないなぁ)


ゆの(まぁ、何もしないよりかはマシか・・)

わたしば、ボーッとしながらテレビを見た。

そして、気づくと1時間半が経った。


ゆの(もう消灯時間か・・)

カチッ、カチッ、と電気を切る音がした。
そして、この病室にも看護師さんがやってきた。


看護師「ここも切りますね」

そう看護師さんが言うと、病室の電気が切れた。


ゆの(あっ、電気が切れた)

電気が切れ、完全にやることがなくなった。

ゆの(・・・寝よう)

【30分後】

ゆの(・・・眠れない)


ゆの(普通に眠れないよ・・)


ゆの(でも、目をつぶっていれば眠れるよね・・)

目を閉じれば眠れる。そう思ったわたしは目を閉じた。

【翌日】

気づくと、病室は明るかった。

わたしは一瞬、『!?』と思ったけど、すぐに何かわかった。
朝になったんだ。


ゆの(もう朝か・・)


ゆの(ということは、今日の検査で治っているのを確認できれば退院できるんだ!!)

今日はもしかしたら退院できる!
わたしは興奮が収まらなかった。

ゆの(早く検査が来ないかな・・そこで感知してると言われたら退院だ・・)

そう思いながらワクワクしていると...


看護師「失礼します。朝食です」


ゆの「あっ、ありがとうございます」

朝食が来た。


ゆの(・・・いただきます)

もしかしたら最後になるかもしれない病院食をじっくりと食べた。

【20分後】

ゆの(ごちそうさまでした)


ゆの(いつもみたいに棚において・・)

いつも通り、食器を棚に直して、ベッドにまた横になろうとしたその時!


看護師「ゆのさん、検査行きますよ」


ゆの(えっ!?)


ゆの(今ってまだ朝の8時半だよね・・?)


ゆの(なんでこんな早くに・・?)


看護師「今日は少し早めにやります」


看護師「早く退院したいですよね?」


ゆの「は、はい!!」


そういうと、看護師さんとわたしは昨日行った超音波検査室に向かった。

【超音波検査室】

看護師「もう準備はできているので、そのまま入ってください」


ゆの「あ、はい」

今日は待たなくてもいいみたい。


超音波担当看護師「では、検査を始めていきますね」


ゆの(治っていますように・・治っていますように・・治っていますように・・)

わたしは検査中、ずっと『治っていますように』と祈り続けた。
治っていてほしい。
退院したい。
そう祈った。

超音波担当看護師「・・・炎症、だいぶ引いてきてるような・・」


ゆの(えっ、それっていいの!?)


超音波担当看護師「少し判断が難しいので、少し見てもらいますね」


ゆの「あ、はい」

そう言うと、何故かすでにいたお医者さんがやってきた。


医者「・・・・」

お願い!大丈夫って言って!

医者「・・・今はおなか痛くない?」


ゆの「痛くないです」


医者「・・・・」


医者「炎症はだいぶ引いていますね・・・」


ゆの「本当ですか!?」

わたしは希望にあふれた気持ちで言った。


医者「今痛くないって言いましたよね?」


ゆの「はい!」


医者「・・・じゃあ、もう大丈夫ですね」


ゆの「ということは?」


医者「炎症もだいぶ引いてきていますので、退院、大丈夫ですよ」


ゆの「・・・・・!」ポロポロ

わたしはその退院できること、そして盲腸が治った嬉しさで涙が出た。


ゆの「ほんとのほんとですか!?」


医者「はい」


ゆの「・・・やった!!」


医者「では、伝えておきますので、一度部屋に戻ってください」


ゆの「わかりました」

わたしは、このときすごくうれしかった。

やっと退院だ!

ゆの(みんなにも伝えなきゃ!)


部屋に戻る前に、みんなに退院のことをメールした。

【2分後】


ゆの(よし、送信っと!)


ゆの(そうだ、部屋に戻らなくちゃ)

【病室】

ゆの(この点滴、どうするんだろう・・)

そう思いながら帰る支度をしていると、看護師さんがやってきた。


看護師「点滴、はずしますね」

そう言い、今までわたしの腕に刺されていた点滴がはずされた。

看護師「・・・はい」


ゆの「あっ、点滴が・・」

わたしは腕が自由になった。
わたしの腕が自由になったのは実に3日ぶりだ。

看護師「では、準備ができ次第受付の機械で会計です」


ゆの「はい」


ゆの「あっ、あの・・」


看護師「どうされましたか?」


ゆの「・・・今まで、お世話になりました!短い間でしたけど・・」


看護師「・・いえいえ」


看護師「お大事に」


ゆの「・・・はい!」

・・・そういえば、入院してからいろいろあったなぁ。
例えば、突然夜中におなかが痛くなってベッドを運んでもらったり。
女性と出会ったり...
絶食明けのご飯はすごくおいしかったなぁ・・

こうやって見ると、2泊3日の入院生活もあっという間だったなぁ。


そうこう入院生活を振り返っていると、いつの間にか帰る準備ができていた。
荷物も全部入れ込んで・・


ゆの(さぁ、帰ろう)

わたしは、最後の忘れ物チェックを済ませた後、帰ろうとした・・が。

ゆの(あっ、一つ忘れてた)

一つ忘れてたことが。
あの時から話していない、女性への退院報告だ!


ゆの「あ、あの」


女性「聞いたわよ。今日で退院だって。おめでとう」

女性は退院のことを知っていた。


ゆの「いっ、いえ・・短い間でしたけれど、ありがとうございました」


女性「いえいえ、これからはお互い、病気にならないように頑張っていきましょうね」


女性「私もはやく喘息を治さないと!」


ゆの「喘息、早く治りますように・・」


ゆの「それでは、さようなら!」

そう言って、わたしは病室を後にした。

【受付】

宮子「あっ、ゆのっちが来た!!」


ゆの「あっ、宮ちゃん!」

一番最初に出迎えてくれたのは宮ちゃんだ。


乃莉「退院、おめでとうございます!」


ゆの「ありがとう、乃莉ちゃん」


なずな「あ、あの、退院、おめでとうございます」


ゆの「ありがとう、なずなちゃん」


沙英「ゆの、昨日はこれなくてゴメン!あと、退院おめでとう」


ゆの「いえいえ・・こちらこそ、お世話になりました」


ヒロ「おめでとう。もうおなか大丈夫なの?」


ゆの「はい。もう大丈夫です」

ゆの「じゃあ、券をとってきますね」


最初に来たとき、沙英さんが使っていた券売機で券を発行する。


ゆの「これで、この番号が前のパネルに表示されたら精算機で精算するんだね」

宮子「そういえば、入院生活はどうだった?」


ゆの「普段は体験できないことや、人との出会いもあったけど・・ヒマだったよ」


宮子「あー・・やっぱりヒマなんだね」


ゆの「うん。入院中は痛くなくなったらヒマになるんだよ・・」


宮子「痛いときは痛みに耐えて、痛くなくなったらヒマに耐えて・・」


ゆの「まさにそんな感じなんだ」


なずな「あ、あの・・パネル・・」


ゆの「あっ、もう順番来た?」


ゆの「行ってきます」

ゆの「機械で精算するんだ」


ゆの「・・・この診察券を通して・・」


ゆの「・・・・・」


ゆの「あっ、請求額が表示された」


ゆの「意外とかかるなぁ・・・」


ゆの「でも保険がなかったらもうちょっと高いんだよね・・・?」


そしてわたしはお金を払い、みんなのところへ戻った。

ゆの「払ってきました」

宮子「どうだった?やっぱり入院って高いの?」


ゆの「高いっていうか・・そこそこかな?まあ保険がなかったらもうちょっと高かったと思うけど」


沙英「保険保険って・・」

ゆの「まあ、これでもう帰っていいんですよね?」


ヒロ「ええ」


宮子「それじゃあゆのっち、帰ろっか」


ゆの「うん!」

そしてわたしたちは、病院を後にした。

おわり

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