男「とあるSS書きの日常」 (75)


男 カタカタカタカタ

男「ん……」

男「ん~」

――シーン。

男「……うん」

男 カタカタカタカタ


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1465211547


――ピンポーン。

男 ピタッ

男「…………」

男 カタカタカタカタ

――ピンポーン。ピン……ポーン。

男 カタカタカタカタ

――ピンポーン。ピンポーン。ピンポピンポピンポピンピンピンピンピンピンポーン!

男「あぁもう!」

男 ガバッ スタスタスタ

 
男「今開けますから」

――ガチャッ

女「やほ、ウチやで。起きとったか?」
 

 
男「…………」

女「何そんな顔しとんよ」

男「……ハァ」

女「何でため息つくんよ」

男「女さん……顔真っ赤ですよ」

女「同期とちょっとだけ飲んで来たんよ」

男「そうですか。ところで今何時かお分かりですか?」

女「……23時半やな。日またぐ前に帰ってこれて良かったわ~」

男「いやいや、そうではなくてですね……」
 

 
女「とりあえず上がらせてもらうで」

男「ストーーップ!!」ガシッ

女「何で止めるの」

男「いやいやいや。女さんのお部屋は隣りです、間違えてますよ。では」ガチャッ

女「ちょい待ち、ちょい待ち! そんな寂しいこと言わんとってよ!」ガシッ

男「何ですか?」

女「少しぐらいええやん。別に取って食ったりせんから」

男「えー……」
 

 
男「小生とて一人の男です。こんな時間に男性の家に上がるのは危険ですよ?」

女「何言ってんの、アンタにそんな勇気ないやんか」ケラケラ

男「……おやすみなさい、女さん」ガチャッ

女「あぁ! ゴメン、ゴメンやて! 謝るから入れてぇな!」ガシッ

男「何であなたはお酒飲んでくるといつもうちに入ろうとするんですか」

女「ええやん。ウチ一人暮らしだから寂しいねん」

男「知りませんよ」
 

 
女「そないなこと言わんでよ。ほら、お土産あるんやで。駅前で買った焼き鳥さんよ」

男「……そんなので釣られませんから」

女「そうか。どうせまた夕飯も食べずにパソコンパチパチやって、お腹空いてると思ったんやけどな」

男「うっ、まぁ確かに……空いてますけど」

女「せやろ!? ほらほら! ここに美味しい焼き鳥さんあるで!」

男「…………」
 

 
女「あぁ、ええ匂いやなぁ。早よ食べな冷めてしまうわ~」チラッ チラッ

男「……ハァ」

男「わかりました。焼き鳥に免じて入室を許可しましょう」

女「ホンマか!? 何か無理言ったみたいで悪いなぁ」

男「言ってますよ。自覚してください」

女「ゴメンやって」
 

 
男「脱いだ靴は揃えて置いてくださいね」

女「わかっとるって」

女「いやーしかし、男の部屋ってあれやな、なんか落ち着くわ」

男「隣り部屋なんですから女さんの部屋と何も変わりませんよ」

女「そうやけど、なんか違うのよ。ホンマ落ち着くわ~」

男「そんなこと言って入り浸ろうとしてもダメですからね」

女「チッ」
 

 
女「なんか飲み足りひんわ」

男「え、まだ飲むんですか?」

女「ええやん。今日は無礼講や」

男「無礼講の使い方間違ってますよ」

女「まぁまぁ。で、男んチは何かお酒ある?」

男「ウイスキーか焼酎で良ければそこの棚にあります」

女「……ウチがそういう強いの飲めへんて知ってて言うとるやろ?」

男「あれ? そうでしたっけ?」

女「とぼけおって……もう!」
 

 
男「冗談ですよ。リキュールとジュースがありますから適当にご自分で作ってください」

女「カシオレ飲みたい」

男「カシスは焼酎たちと一緒の棚に、オレンジジュースは冷蔵庫にあります」

女「ホンマか!? どうしたん、ずいぶん用意ええやん!」

男「……あなたが前に持ってきた残り物じゃないですよ」

女「せ、せやったか」アセアセ
 

 
女「なんかホントすまんなぁ」

男「いいから早く作ってきてくださいな。焼き鳥が冷めてしまいますよ?」

女「おっと、そうやな。ウチが戻るまで手ぇつけたらアカンで!?」

男「わかってますよ」
 

 
女「アンタも何か飲むか? 一緒に作って来たるわ」

男「ありがとうございます。ではハイボールで。炭酸は冷蔵庫に入ってます」

女「はいよ! 任しとき! 日本一美味いの持って来るわ」

男「1ミリも期待しないで待ってますね」

女「少しくらい期待しろやアホ!」

男「あははは。失礼しました」

女「まったく……」

女 スタスタスタ

男「…………」
 

 
男 カタカタカタカタ

男 ピタッ

男「んン…………、うん」

男 カタカタカタカタ
 

 
男「…………」

男 カタカタカタカタ

女「お・ま・た・せ」ピトッ

男「うえぁ!?」ガタッ

女「あははは! 変な声出しよったで!」ケラケラ

男「お、驚かさないでくださいよ!」

女「ゴメンゴメンて。お待ちどうさん、ハイボール」

男「ありがとうございます」
 

 
女「焼き鳥さんよし、飲み物よし。準備OKやな」

男「それではカンパイしましょうか」

女「はいよ、カンパーイ!」

男「はい、カンパイ」

女「今日も一日お疲れ様や~!」
 

 
女 パクッ

女「ん~、焼き鳥さん美味しいなぁ!」

女 クピッ

女「あ~、カシオレも美味しいわ~!」

男「飲み過ぎないように気をつけてくださいね」

女「はいよ! 男はどや、食べとるか? 飲んどるか?」

男「頂いてますよ。砂肝が美味しいです」
 

 
女「ハイボールはどうや!? 女さん特製ハイボールの味は!?」

男「とても美味しいです」

女「ホンマか!? 日本一か!?」

男「いえ、世界一美味しいです」

女「世界一かぁ~! そっかそっか~!」ニンマリ

男「嬉しそうですね」

女「当り前やん! でも目指すは宇宙一やな! まずは太陽系一から目指すわ!」

男「頑張ってくださいね。応援してます」

女「よぉし頑張るわ! おかわり欲しくなったら言ってな!」
 

 
男 モグモグ ゴクッ

女 モグモグ クピッ

女「そういやアンタと知り合って明日でちょうど3ヶ月になるなぁ」

男「そうでしたか? よく覚えてますね」

女「ウチそういうのよう覚えてる人間なんよ」

男「へぇ。素晴らしいですね」

女「そう?」

男「出会いを覚えててもらえるのは嬉しいじゃないですか」

女「……ホンマか?」

男「少なくとも小生はそう思います」

女「そ……そっか~。そうなんかぁ~」
 

 
女「ウチ、それだけやないよ。初めて男と話した時の事も覚えてるしな」

男「それは小生だって覚えていますよ。女さんが引っ越しのご挨拶に来た時のでしょう?」

女「違うわ! そういうのは別モンやろ!」

男「いやぁでも、あのご挨拶はなかなかインパクトがありましたね」

男「まさか引っ越し挨拶の手土産にタコ焼き機をもらえるとは思いませんでしたから」

女「それ言わんといてよ! 会社の人にもめっちゃ笑われたんやから!」アセアセ

男「しかも結構立派で大きいヤツを」

女「う、うるさいわ! 一人暮らしするの初めてやから、何あげればいいんか分からんかったんよ!」
 


女「大阪じゃ一家に一台あるのに、こっちは全然無いて聞いたから、もらえたら嬉しいやろ思たんよ……」

男「えぇ、嬉しいですよ。おかげで週に1回はタコ焼きパーティーしてますから。ひとりで」

女「もうええって! ってか話違うやろ! アンタとウチが初めて話した時の話やろ!」
 

 
女「男はホンマ覚えてるんか?」

男「挨拶以外ですよね。もちろん覚えてますよ」

女「ホンマか!?」

男「えぇ、もちろん」

女「そっかぁ。まぁでもあれよ、あの時はビックリしたわ~」

男「本当ですよ。驚き過ぎて心臓が飛び出るかと思いました」

女「そんなにか。でもそっちが燃えるゴミの日に大量の酒瓶捨てようとしとったからやろ。あれウケたわ」ケラケラ

男「え?」

女「は?」
 


男「え……あぁ、なるほどですね」

女「え、えぇ!? 何がなるほどなんよ! アンタは何を覚えてたん!?」

男「女さんが酔っ払ってエントランスの床で寝てた時の事かと」

女「ああああ! また小っ恥ずかしいこと思い出すなや!」


女「ってかそれも違うやろ! ゴミ置き場で『今日はビンの日ちゃいますよ』って話しかけたのが最初やん!」

男「そうでしたっけ?」

女「そうやて! そしたらアンタ、『どおりで置き場が無いはずですね』とか言って酒瓶パンパンのゴミ袋しぶしぶ持って帰ったやんか!」

男「日常のこと過ぎてさすがに覚えてませんよ……」

女「覚えてないんかい! ウチは覚えてたのに!」

男「むしろそんなことよく覚えてますね。軽く引くレベルです」

女「なんでよ! 出会い覚えてると嬉しいんやろ!?」

男「ドン引きするレベルを覚えられてても困ります」

女「だからなんでよ! 嬉しい思えや! 感動しろや!」

男「立派なタコ焼き機を頂けたのは感動しました」

女「ああああ! その話はもうええ! ぶり返すな!」


男「しかし出会いって面白いですよね。あの日酔ってエントランスで寝転んでた女さんを介抱したのが切っ掛けで、よく話すようになりましたからね」

女「うぅ……実はその日のことあまりよく覚えてへんねん……」

男「スーツ姿の女性が大の字でうつ伏せで寝てて、最初は事件かと思いましたよ」

女「そんなことなってたんか……」

男「しかもなぜか満面の笑みでした」

女「ホンマか!?」

男「話し掛けたら何かムニャムニャ言ってましたから、きっといい夢見てたのでしょう」

女「やめてぇな……もう恥ずかし過ぎるわ……」
 

 
男「それからこうして焼き鳥食べ合ってるんですから、縁ってものは分からないものですね」

女「せやな。そこは確かに、そうやね」

男「それにしてもこの焼き鳥、本当に美味しいですね」

女「せやろ? ウチここの焼き鳥さんホンマ好きやねん。男は焼き鳥さんだとどこが好き?」

男「小生は内臓系ですね。砂肝とかハツとか」

女「歯応えあるのが好みなんやな。ほら、ナンコツも買うて来てるで」

男「ありがとうございます。やはり焼き鳥は塩が良いですね」

女「せやろせやろ? わかるわ~、私も焼き鳥さんは塩って決めとんねん」
 

 
男「でもつくねとレバーだけはタレ派です」

女「あっ、それもわかるわ~。ウチもそこだけはタレにする。ってかしてきた。こっちの袋がタレで、つくねとレバーよ」

男「ずいぶん買ってきましたね」

女「酔った勢いで頼み過ぎてしもてな。男が起きとってよかったわ」

男「確かに女性一人でこれは多すぎますね」
 

 
女「その代わり一つ聞かせてくれへん?」

男「何ですか?」

女「男は何で自分の事を俺とか僕じゃなくて小生って言うん?」

男「…………」

女「どしたん?」

男「……これは子供の頃からの癖なんです」

女「なになに、もっと詳しく教えてよ。気になるやん」
 

すみません。寝落ちしてました。
続きはまた今夜あたりに載せます。

続き開始します。
また寝落ちしたらすみません。


男「あれは小生が小学3年生の冬、父から、とある書生が主人公の小説を借りたのです」

女「うんうん。それでそれで?」

男「小説はその主人公の視点で書かれていて、自分のことを小生と呼ぶのです」

男「その言葉の響きと物珍しさが面白くて毎日真似していました」

女「ちょい待ち。まさか……嘘やろ……?」

男「いえ、そのまさかです。1年ほど使い続けてたら元に戻せなくなってしまいました」

女「あはははは! ホンマかいな、アホやん!」ケラケラ

男「変なことするもんじゃないですね」

 
男「気がつけばもう小生という言葉から離れられなくなってしまいました」

女「あははははは! アホやわ!」ケラケラ

男「初めて会う人には驚かれます。そして若干引かれます」

女「当たり前や! 今時小生なんか使う奴おらへんやもん!」ケラケラ

男「いや、小生は小生使ってますよ?」

女「小生小生やかましいわ!」ケラケラ
 

 
女「あー、久々に大声で笑ったわ。涙出る」

男「楽しんで頂けて幸いです」

女「もう一個聞いてええか?」

男「どうぞ」

女「何でいつもそんな口調が丁寧なん?」

男「これは母親からの影響です。母がこういう喋り方でしたので」

女「なんや、案外普通の答えやな」

男「ご期待にお応えできず申し訳ありません」

女「そんなことないよ。逆に小生っぽさを引き立たせてておもろいわ」

男「ありがとうございます」
 

 
女「なあなあ、もう1個! もう1個だけ聞いてええか?」

男「もう3個目ですけど、いいでしょう。どうぞ」

女「男っていつもパソコンパチパチ叩いとるけど、それ何やっとん?」

男「これですか。……それに答えるのはちょっと恥ずかしいですね」

女「何でよ。小生の由来聞いた仲なんやし恥ずかしがらんでええやん」
 

 
男「ん~……笑わないならいいですよ」

女「笑わへんよ」

男「本当ですか?」

女「本当やって」

男「絶対ですか?」

女「絶対やって」

男「天の神様に誓いますか?」

女「しつこいわ! ってか天の神様とか子供か!」
 

 
女「宣誓! ウチは何聞いても笑わへんことを約束します!」

男「……ハァ。まあ良いでしょう。これはSSってやつです」

女「エスエス?」

男「サイドストーリーやショートストーリーの略で、元は二次創作のネット小説のことを言うのですが……」

男「今はもうネットで披露する台本形式の簡易的な小説がそう総称されています」

女「じゃあ男は小説を書いてるんか? すごいやん」

男「いえ、そんなに高尚なものではないですよ。ネット遊びの一種だと思ってください」

女「へぇ~。おもろそうやん」
 

 
女「今ネットでそんなんが流行っとんの?」

男「今はずいぶん下火になってしまいました。何年か前までは一部で流行ってましたが」

女「そうなんか。へぇ~、でも初めて知ったわそんなの」」

女「何か簡単に読めるオススメのものある? 試しにひとつ読んでみたいわ」

男「オススメですか。どんなジャンルがいいですかね……」

女「あっ、ちょい待ち。やっぱあれや、男の書いたやつが読みたい」

男「小生のですか!?」

女「そっ。男の」
 

 
男「いや、それはさすがに……恥ずかしいですよ……」

女「何でよ。ええやん、せっかくやから男の書いたやつが読みたいんよ」

男「申し出はありがたいんですが、知り合いに読まれるのはちょっと……」

女「何よそんなに恥ずかしがって。……あっ! わかった! エッチなやつ書いとるんやろ!? それで見られたないんやろ!?」

男「なっ!?」

女「そら見られたないわなぁ。男の性癖がバレてまうもんなぁ」ニヤニヤ

男「小生はそんなもの書きませんよ!」
 

 
女「ゴメンなぁ、お母さん変なこと聞いてしもて。男ちゃんもオトコの子やもんなぁ」

男「関西人特有のお母さん化やめてください! そもそも書いてませんから!」

女「ホンマかなぁ~。実際に読ませてもらわんとわからへんわなぁ~」

男「……ハァ。わかりました。降参です。お見せしますよ」

女「にひひ。最初から素直にそうすればええのよ」ニカッ
 

 
男「LINEでとあるサイトのURL送りますから、焼き鳥食べながらそれ読んでてください」

女「まさかエッチなサイト?」

男「そんな訳ないでしょう! 見せるのやめますよ!?」

女「じょ、冗談やて。ゴメンゴメンて。堪忍堪忍」ペコペコ

男「もう……。ほら、送りました。静かに読んでてくださいね」

女「はいよ!」
 

 
男 カタカタカタカタ

男 カタ……

男「…………」

男 チラッ


女「…………」モグモグ

女 スッ

女「…………」クピッ

女 スッ

女「…………」


男「…………」

男 カタカタカタカタ
 

 
――1時間後。


男 カタカタカタカタ

――グスッ。

男「?」ピタッ

女「……うぅ」グスッ グスッ

男「女さん?」

女「……読み終わったで」グスッ グスッ

男「どうでした?」

女「アカン……これ泣けるわ……アンタようこんな話思いつくなぁ……うぅ」グスッ グスッ

男「あはは。楽しんでもらえて光栄です。ティッシュです、どうぞ」

女「ありがとな……」グスッ
 

 
女「なんや、遊び言うからちゃっちいもんやと思っとったけど十分おもろいやん。めっちゃ感動したわ」フキフキ

男「どうせ書くなら楽しんでもらいたいですからね。そう言ってもらえると本当に嬉しいです」

女「こんなん書けるんやったら作家でも目指してみたらええのに」

男「……実は昔、作家になるのが夢だったんですよ」

女「そうなんか?」

男「えぇ。先ほどの小生の件で、父の持っている小説を読むようになったのが切っ掛けで」
 

 
男「でも小生には学も経験も、何より情熱が足りませんでした」

男「何かに挑戦したり大きな努力をした訳ではないのですが、小生では無理だと勝手に悟って早々に諦めてしまいました」

男「ですがこのSSというものを知り、作家になりたかった夢が今になっておめおめと思い起こされて……」

女「…………」

男「あっ、いや、今更作家を目指している訳ではないんです。ただ試したいんです」

女「何を?」

男「小生の作った話が面白いと思ってもらえるのかどうかを、です」
 

 
男「SSを書いて多くの方に読んでもらって、それで良い評価を頂けるなら、せめて『面白い話を作る才能だけはあったんだ』と――」

男「――そう自分に言い聞かすことができて、少しは満足できるような気がして……」

男「我ながら女々しいなとは思うのですけどね、あはは」ポリポリ

女「…………」
 

 
女「そうやったんやね」

男「今日は色々話しましたが、とうとう一番恥ずかしいことを知られてしまいましたね」

女「……なぁ、男」

男「なんでしょうか」

女「何をそんなに恥ずかしがるんよ。別にウチはそれが恥ずかしいことだなんて思っとらんよ」

男「え?」

女「アンタが書いた話は面白いよ。他の人もほら、おもろかった、感動したって言うてくれてるやん」

女「少なくともここに一人、アンタの書いた話でめっちゃ感動した人間がおるんよ」

男「…………」
 

 
女「男は夢は諦めてんけど、でもまだ憧れとんのやろ?」

女「なれんかって悔しくて、今更やけど少しだけ挑戦するためにこうして書いとるんやろ?」

女「なら自信持って、誇り持って書けばええやん」

女「だって男は、こんなに素敵な話を書いて、人を感動させることができるんよ!」

男「………」
 

 
女「夢叶わんて悔しいのはわかるけど、敗者みたいな目するのヤメや!」
 
女「満足できんくて自信持てんなら私が何度でも言ったる! アンタの書く話は面白い! 」

女「これだけの話書けるならアンタには才能があったって、ウチが保証したる!」

男「……ありがとうございます。何だか、救われた気分です」

女「アンタの小説読んだ、読者の生の声や。しっかり心に刻んどき」

男「えぇ、確かに刻みました」
 

 
女「ちなみに、他に書き終わってるやつあるんか?」

男「あと2つだけあります」

女「よし、なら紹介してもらおか。読むわ」

男「えぇ!? これから読むんですか!?」

女「ええやん! 今しがた自信持ちって言ったばっかりやんか!」

男「いや、そうじゃなくて、もう夜の1時ですよ。帰って寝られた方が良いのでは……」

女「あら、もうそんな時間かいな」
 

 
男「夜更かしは美容の大敵ですよ。お酒もずいぶん飲んでますし、ね?」

女「……いや、読む!」

男「えぇ!?」

女「男が他にどんなの書いとんのか気になるんやもん!」

男「こんなのいつでも読めますから、ほら、帰りましょう」

女「イヤや! ウチが読むったら読むんや!」
 

 
男「遅いんだからもう帰って寝ましょうよ」

女「イヤや!」

男「お互い明日も仕事ですし」

女「イヤや!」

男「続きはまた今度です」

女「イヤや!」

男「ちょっと聞いてくださいよ」

女「イヤや!」

男「女さん」

女「イヤや!」

男「いい歳した女性が駄々っ子しないでください」

女「う、うるさい!」
 

 
男「そんなにわがままばかり言わないでくださいよ……」

女「だって他のも気になるんやもん! 読みたいんやもん!」

男「まったくもう……、女さん?」

女「なんよ!」

男「あまり夜遅くまで居続けるなら襲ってしまいますよ?」

女「…………」

男「というのは冗談ですけど――」

女「別に男になら襲われてもええよ」ボソッ

男「……え?」
 

 
男「……女さん、酔ってますね?///」

女「……男やって、そうやろ///」

男「…………///」

女「…………///」

女「や、やっぱウチ帰ろかな! 夜更かしはお肌に悪いし!///」アセアセ

男「そ、そうですよ!///」アセアセ
 

 
女「ちゃんと歯磨いて寝るんやで?」

男「こっちの台詞ですよ。お化粧落として、お風呂も入るんですよ?」

女「そうやった……うぅ……今からやるのメンドくさいわぁ……やっぱ帰りたなくなって来た……」

男「女性は大変ですよね。ほら、お部屋まで送りますから一緒に帰りましょう」グイッ

女「うぅ……ありがとな」

男&女 スタスタスタ

――ガチャッ

 
男「おぉ、夜の外はまだ肌寒いですね……。鍵はありますか? 無くしてないですか?」

女「大丈夫やて。お酒は飲んでも飲まれるな、これ鉄則よ」

男「カシオレぐらいで泥酔されても困りますけどね」

女「なんよそれ! 自分が強いの飲めるからって! ウチは女の子なんよ!?」

男「シーッ! もう真夜中ですから!」ヒソヒソ

女「せやった……。ゴメンゴメンて」ヒソヒソ
 

 
――ガチャッ。

男「ほらお姫様、ドアが開きましたよ」

女「おう。苦しゅうないで」

男「それじゃお殿様でしょう」

女「あははは。ええツッコミやな。褒めてつかわすわ」

男「ありがたき幸せ、ってだからそれお殿様ですって」

女「あはははは」ケラケラ
 

 
男「床で寝たりしないよう気をつけてくださいね」

女「男こそ、パソコンパチパチはもうやめて早よ寝るんやで?」

男「わかりました」

女「今書いてるヤツも書き終えたら教えてな。一番に見たるから」

男「えぇ、お約束します」

女「それと最後にもう一度言ったる。アンタの書いたSSっての、本当に面白かったわ」

女「作家になれんかったんは残念やろうけど、ウチはアンタの書く話、好きやで」

男「……ありがとうございます」
 

 
女「それじゃ、おやすみな」

男「はい。おやすみなさい」

女 ノシ

男 ノシ

――ガチャリ

男「…………」

男 クルッ スタスタスタ
 

 
すみません。
あともう少しで終わりなのですが、
キリがいいの所なのでここで中断します。

再開は本日夕方6時~7時ぐらいを予定しています。

読まれている方がいらっしゃいましたら大変恐縮ですが、
それまでお待ちください。
 


[ 翌日の夜 ]


男 カタカタカタカタ

男 カタカタカタカタ

――ピンポーン。

男 ピタッ

――ピンポーン。ピン……ポーン。

男「…………」

――ピンポーン。ピンポーン。ピンポピンポピンポピンピンピンピンピンピンポーン!

男「あぁもう!」

男 ガバッ スタスタスタ


男「今開けまーす」

――ガチャッ

女「やほ。ウチやで」
 


男「……ハァ」

女「なんよ、昨日と同じ顔して同じ溜め息までついて」

男「今日はお早いのですね」

女「お仕事早く終わったんよ」

男「……あれ?」

女「え?」

男「今日は酔ってらっしゃらないのですか?」

女「はぁ!?」


男「いや、素面みたいだなと思いまして」

女「何言っとんよ! 素面っぽいじゃなくて素面やっての!」

男「えぇ!?」

女「なんよ! ひとのこと酒浸り扱いする気か!?」

男「違うんですか?」

女「違うわ!」
 

 
女「なんよなんよ! まだ夜ご飯食べてへんやろうから昨日のお礼と詫びに作ってやろかと思たのに!」

男「そうだったんですか。すみません……」

女「乙女心を踏みにじりおって! この鈍臭男!」

男「ちょ、ちょっと外ではお静かに! 謝りますから!」ヒソヒソ

女「うるさい! 何もわからへんのか、このパソコンパチ男!」

男「わかってますから! ごめんなさい! ですからお静かにお願いします!」ヒソヒソ

女「嘘つき! 何もわかってへん!」
 

 
女「なんよ……また小説読ませてもろて、一緒にお話ししよう思っとったのに……」

女「男と仲良うなれたと思っとったのに……」

女「ウチが酔っ払ってて、仕方なくでないと入れてくれへんてことか……」

男「…………」

女「ごめんな。今日はもう失礼するわ……」

男「……入って良いですよ」

女「え?」

男「晩御飯、作って頂けるんでしょう? 美味しい御飯を条件に入室を許可しましょう」

女「よっしゃ! なら早速上がらせてもらうわ!」バッ

男「切り替え早過ぎて尊敬します」
 

 
女「」

男「女さん、靴は――」

女「揃えて置くんやろ? わかっとるって」

男「……なら良いでしょう。では、晩御飯よろしくお願いします」

女「はいよ! 任しとき! 日本一美味いもの食わしたるわ!」

男「1グラムも期待せずに待ってますね」

女「だから少しくらい期待しろやアホ! もうええわ!」



~終わり~
 

>>69
書き込みミスりました…。
無視して下さい。

 
女「それがウチの取り柄やからな」

男「まったく……。あっ、女さん、靴は――」

女「揃えて置くんやろ? わかっとるって」

男「……なら良いでしょう。では、晩御飯よろしくお願いします」

女「はいよ! 任しとき! 日本一美味いもの食わしたるわ!」

男「1グラムも期待せずに待ってますね」

女「だから少しくらい期待しろやアホ! もうええわ!」



~終わり~
 

以上で終了です。
読んでくださった方いたらありがとうございます。
ラス1でミスって失礼しました。
では。

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