二宮飛鳥「ボクの従姉の」 (34)

※アイドルの血縁関係に独自設定アリ

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飛鳥(1月1日。新たな一年の始まりを告げる、世間一般では特別な日)

飛鳥(その日になると、毎年ボクの家は親戚同士の集まりに顔を出す)


伯父「おお、飛鳥ちゃんか! また背が伸びたんじゃないか?」

従兄「今、何年生? 中学だったことは覚えてるんだけどなあ」

飛鳥「はあ……どうも」ペコリ

祖父「ははは! もっと大きな声でしゃべらんと聞こえんぞーっ!」

飛鳥「………気をつけます」

伯母「狭い家に大勢集まってるけど、ゆっくりしていってね」

飛鳥「……は、はい」


飛鳥(伯母さんはそう言うけれど……親しくない大人の多い空間で安らげというのは、難しい話だ。ボクにとっては)

飛鳥(こちらに無関心ならまだいい。ボクはあちらの邪魔をしないし、向こうもボクの邪魔をしない。それでうまくいく)

飛鳥(ただ……厄介なことに、彼らはボクの話を根掘り葉掘り聞きだそうとしてくる。いわゆる親戚づきあいというヤツに加えて、年頃の少女の生活模様が気になるといったところだろうか)

飛鳥(向こうにとってはそれは自然なのかもしれないけど、勝手にこちらの領域に踏み込まれているような気がして、正直面倒だと感じる)

飛鳥「あの、伯母さん……」

伯母「ああ、あの子なら縁側。こういう時くらいやめなさいって言ってるのにねえ」

飛鳥「……そう」

飛鳥(親戚全員から離れていると、孤立しているボクに余計に注目が集まることになる)

飛鳥(かといって父さんや母さんと一緒にいても、それはそれで親戚同士の会話に巻き込まれることになるのは明白)

飛鳥(だからボクは、この場におけるベストな選択として、ある人のもとへ向かう)



伯父「ああ、そうだ。飛鳥ちゃん、アイドルになったって本当……ん? 飛鳥ちゃんは」

伯母「向こうに行きましたよ」

伯父「向こう……ああ、あいつのところか。本当に仲良しだな、あの二人は」

伯母「ええ。慕ってくれているみたい」

飛鳥「………」


飛鳥「……やあ」

飛鳥(縁側に腰かけている彼女は、ボクより一つ年上で)



飛鳥「あけましておめでとう……は、もうメールで伝えたか。泉さん」

泉「………」パタン

泉「そうね。でも一応、面と向かって言うのもいいんじゃない?」

泉「あけましておめでとう、飛鳥」

飛鳥「あぁ」

泉「……ふふっ」

飛鳥「どうか、したの」

泉「ううん、大したことじゃないんだけど。つい3日前、一緒に新幹線で静岡に帰ってきたばかりなのに……こうして改まった挨拶するの、なんだかおかしいと思って」

飛鳥「それは……言えてるかもしれないな」


飛鳥(ボクと同じ事務所で、同じアイドルという道を歩んでいる……名は、大石泉さん)

飛鳥(ボクの従姉に当たる人だ)

飛鳥「また、プログラミングをしていたのかい」

泉「うん。少しね」

泉「あなたも来たことだし、作業は終わりね」

飛鳥「別に、続けていてもいいのに」

泉「私と話すの、いや?」

飛鳥「そうじゃない。ただ、邪魔になりたいとは思わないだけさ」

泉「気になっていた箇所をちょうどいじり終わったところだから、もともと飛鳥が来なくてもやめるつもりだったの。だから心配しなくて大丈夫」

飛鳥「なら、かまわないけど」

飛鳥(彼女の隣に腰かけて、視線の先に広がる庭木を眺める)

飛鳥(ボク達の祖父母が暮らすこの家は、庭が比較的広いことが特徴だ)


泉「……飛鳥。背、伸びた?」

飛鳥「いきなりだね。いつも会っているだろう」

泉「そうなんだけど……こうして落ち着いて隣に座ってくれること、あまりないから」

泉「事務所だと、プロデューサーや蘭子ちゃんにべったりだし」

飛鳥「……べったりはしていない、と思う」

泉「ふふっ、冗談よ」

飛鳥「テンション、高いね」

泉「そう? 久しぶりに地元に戻れて、開放感を感じているのかも」

泉「お母さんたちとは、もう話した?」

飛鳥「あいさつはした」

泉「そう。ならいいか」

泉「しばらくここで、親戚づきあいから離れた時間でも過ごしますか」

飛鳥「………」

飛鳥「もう何年も前から、これがお決まりのパターンになっているね」

泉「そうだね」

泉「4年……ううん、5年前だったかな。私がパソコンで作業してたら、いつの間にか隣に飛鳥がいてびっくりしたわ」


5年前


飛鳥「………はぁ」

飛鳥(知らない人とおしゃべりするの、苦手だな……逃げてきちゃった)

飛鳥「どうしよう……ん?」


泉「これが、こうなって……」カタカタカタ


飛鳥「………」


泉「こうすれば……よし、できたっ」カタカタ、ターンッ!


飛鳥「………」

飛鳥(あの子、ひとりでパソコンしてる……)

飛鳥(同い年くらいかな……なんだか、かっこいい)

飛鳥「………」ジーー


泉「………ん?」

飛鳥「………」ジーー

泉「……これ、興味あるの?」

飛鳥「えっ?」

泉「ずっと、見ていたみたいだから。私のパソコン」

飛鳥「あ、えっと……」

泉「……違った?」

飛鳥「……ううん。違わない」

飛鳥「なに、していたのかなって」

泉「プログラミング。本当に簡単なものだけど」

飛鳥「………?」

泉「……プログラミング、知らない?」

飛鳥「知らない」

泉「そっか」

泉「………」

泉「やってみる?」

飛鳥「………」コクリ

泉「じゃあ、こっちに来て座って」

飛鳥「うん」トコトコ

30分後


伯母「泉~? ここにいたの……あら、飛鳥ちゃんも一緒?」

飛鳥「ぐぬぬ……」ポチ、ポチ

泉「がんばって」

飛鳥「……難しい」

伯母「ふふ、仲良しさんになった?」

泉「……うーん、どうかな」






飛鳥「あの時初めて、ボクらは互いの存在をはっきりと認識した」

泉「お互い、人付き合いは上手じゃないから。あの日までは、従妹がいるってだけで、関わろうとはしていなかったわ」

飛鳥(あれ以降、親戚同士が集まる際には、ボクは決まって泉の姿を探すようになった)

飛鳥(彼女はいつも、縁側にひとり腰かけていて……ひとりぶんのスペースを、隣に用意しているように見えた)

飛鳥(ボクの気持ちを察してか、常に逃げ場所を用意してくれていたんだ)

飛鳥「悪いね」

泉「どうしたの、急に」

飛鳥「いつも、キミを逃げ場として利用するような形になってしまって……」

泉「………」フフ

飛鳥「なぜ笑うの?」

泉「だって、急にかしこまったことを言うから」

泉「ひとつ教えてあげるけど……そういうの、『利用する』じゃなくて『甘える』って言うんだよ」

飛鳥「あ、甘える……か」

泉「そう。そして、年上には少しくらい甘えたってなんの問題もない……らしいよ。プロデューサーいわく」

飛鳥「Pが……」

泉「そう、プロデューサーが」

飛鳥「………」

泉「昔みたいに、またプログラミングに挑戦してみる?」

飛鳥「……少しだけなら」

泉「そう来なくちゃ」フフ

めだかボックスの過負荷の人ですか貴方…

泉「明日の約束、覚えてる?」

飛鳥「街に出かけるんだろう? 帰る前に何度か言われたから、覚えているよ」

泉「うん。さくらと亜子も来るから、遅れないようにね」

飛鳥「……小学生じゃないんだ。時間にルーズにはならないさ」

泉「それもそうか。ちょっと、お姉ちゃん風を吹かせすぎたかも」

飛鳥「……ボクは、妹?」

泉「従妹だし、似たようなものじゃない?」

飛鳥「………」

泉「いや?」

飛鳥「嫌ではないけれど、あまり子ども扱いはされたくない。思春期のハートは繊細なんだ」

泉「それは知ってる。私だって思春期だから」

泉「年、ひとつしか違わないもんね。これからは気をつける」

飛鳥「あぁ」


飛鳥(決して、はつらつと元気に会話が弾むわけではない。互いにニコニコと笑顔を振りまくわけでもない)

飛鳥(ただ、正月の祖父母の家の喧騒の中。彼女と過ごす時間は、とても落ち着けるものだった)

翌日


亜子「お年玉もらって!」

さくら「はいてんしょーん!」

泉「………」

飛鳥「………」

亜子「ちょっとちょっと、ノリ悪いよ二人とも~」

さくら「はいてんしょーん!」

泉「元気ね、ふたりとも」

亜子「そりゃあもう、金は天下の回り物やからね! まとまった収入がくればテンションもあがるわ!」

さくら「はいてんしょーん!」

泉「さくらは同じ事ばかり言うのやめて」

さくら「はぁい」エヘヘ

飛鳥(相変わらず、このノリには少しついていきづらい……)

亜子「あすかー。あすかはお年玉、なにに使うん?」

さくら「アスカちゃんおしゃれだし、服とかアクセサリーとか買うんじゃない?」

飛鳥「ん……まだ、特には」

亜子「そうか……まあ、もらったからと言って無駄遣いしたら意味ないしね。貯金は大事よ?」

さくら「今日はなにかおいしいもの食べに行こうよ!」

亜子「お、いいね賛成! パーッと豪勢にいこか!」

飛鳥「無駄遣いしないという話はどこにいったんだ」

泉「いいんじゃない? お正月くらいは」

泉「亜子。私スパゲッティが食べたいんだけど、おいしいところ知ってる?」

亜子「スパゲッティかー。よーし、食には関心がある土屋先生に任して!」

さくら「わたしはカレーが食べたいなぁ」

泉「飛鳥は?」

飛鳥「ハンバーグ」

さくら「アコちゃん! カレーとハンバーグも追加っ」

亜子「よーし……って、それ全部叶えるの!? ファミレスか定食屋しか選べんやん!」

泉「お願いね、土屋先生。穴場をよろしく」

亜子「なかなかの無茶ぶり! しかもそういう穴場ってたいてい三が日は休みとってそうやし!」

泉「さあさあ、期待してるわー」ニコニコ

飛鳥「………」ジーー

飛鳥(ボクと二人きりの時とは、やはり泉さんの態度が違うな)

飛鳥(クールな雰囲気が薄れて、年相応にはしゃいでいるように見える)

飛鳥「………」

さくら「………」ジーー

飛鳥「……なに」

さくら「わかるよアスカちゃん。その気持ち」ウンウン

飛鳥「え………」

飛鳥「べつにボクは、なにも」

さくら「イズミンとアコちゃん、ほんとにナイスバディーだもんね! うらやましいのはわたしもよくわかるんだぁ」

飛鳥「……は?」

さくら「一緒におっきくなろうね、アスカちゃん」グッ

飛鳥「………はぁ」

さくら「あれ?」

さくら「あ、ここのビル完成したんだぁ。前に来たときはまだ建設中だったよね」

亜子「久しぶりに地元に帰ってくると、時間の流れみたいなものを感じるね」

飛鳥「セカイの全ては不変ではいられない。絶えず移り変わっていくから、目を離すと置いて行かれそうに感じるね」

さくら「うんうん、わかるわかる」

泉「本当にわかってるの?」

さくら「わかるよぉ! これでももうすぐ高校生なんだから」

亜子「あはは。まあ、要するに、変わっていくものに置いて行かれないよう、アタシらもがんばろーってことやろ?」

飛鳥「そういう前向きな捉え方もできなくはないね」

亜子「ならそれでオッケー。後ろ向くよりは前を向く人間に金運はめぐってくる!」

飛鳥「……本当に前向きだね」

泉「さくらも亜子も、だいぶ飛鳥の言葉に慣れてきたみたいね」

さくら「去年まではほとんど会ったことなかったけど、アスカちゃんが事務所に来てからはたくさんお話ししたもんね」

亜子「もはやいずみよりも好感度ゲットしているまである」

泉「それはない」キッパリ

さくら「わぁ、自信満々」


亜子「ほう~? あすかー、ちょっとアタシの名前呼んでみて」

飛鳥「? ……亜子」

亜子「じゃあ次さくら」

飛鳥「さくら」

さくら「はぁい」

亜子「最後にいずみ」

飛鳥「泉さん」

亜子「ほら」

泉「ほら、って言われても」

さくら「そういえば、イズミンだけさん付けだね。どうして?」

飛鳥「どうして、か……正直、なんとなくなんだけど」

亜子「逆らえん雰囲気があるとか?」

泉「そんな高圧的に接しているつもりはないわ」

飛鳥「………」

泉「……ちょっと、飛鳥」ジト

飛鳥「いや。別に高圧的だなんて思っていないけれど……ただ」

さくら「ただ?」

飛鳥「怒らせると、怖い」

亜子「あー」

さくら「うん」

泉「あなた達ね……!」

さくら「わぁ、イズミンが怒った!」

亜子「逃げろーっ!」タタタッ

さくら「ほら、飛鳥ちゃんもっ」ギュッ

飛鳥「あ……あぁ、うん」タタタッ



泉「待ちなさーいっ!」タタタッ

亜子「待てと言われて待つ奴はおらんって!」

さくら「そのとぉり!」

泉「もうっ……まったく!」プッ

飛鳥「………」

飛鳥「フッ……元気だな、本当に」タタタッ

帰り道


さくら「それじゃぁ、またね!」

亜子「次会うときは、東京行きの新幹線のホームやね」

泉「そうね。二人とも、遅れないようにしなきゃダメだからね」

さくら・亜子「はーい」

泉「それでよし。またね」

さくら「うんっ」

亜子「あすかも、またねー!」フリフリ

飛鳥「あぁ、また」

泉「………」

飛鳥「………」

泉「あの二人とも、すっかり仲良くなったね」

飛鳥「まあ、それなりには」

泉「初めて会った時は素っ気なかったから、心配しちゃった」

飛鳥「アイドルになる前……一度だけ、キミの家で彼女らと会った気がする」

泉「そうそう、その時。3年前だったかな」

泉「さくらと亜子が来るまで普通におしゃべりしていたのに、ふたりが来るなり急に黙っちゃうんだから」

飛鳥「初対面の人間に積極的に話しかける気にはならなかったんだ。キミも理解るだろう」

泉「……まあ、そうね。わかる。私もそういうタイプだし」

泉「あの時は、友達同士が仲良くなってくれたらいいなって思っただけなの。ちょっと考え足らずだったかな、今思うと」

泉「ごめん」

飛鳥「いいよ、今さら。もう過ぎたことだ」

飛鳥「それに。今は彼女らと、普通に接することができているから」

泉「……ふふ、そうね」

泉「みんなして私をからかって、走って逃げちゃうくらいだもんね?」ジトー

飛鳥「………」

飛鳥「妬いてるのかい」

泉「なっ……!? そ、そんなわけないじゃないっ」

飛鳥「冗談だ」フフ

泉「冗談って……もう」

泉「飛鳥、意外と悪戯好きなんだから」

飛鳥「そうでもないさ。相手は選ぶ」

泉「……つまり、私は侮られていると?」

飛鳥「そこは自由に想像してくれ」

泉「明日あなたの宿題を手伝う予定だったけど、キャンセルするわ」

飛鳥「それは困る」

泉「………」

飛鳥「………」

泉「ぷっ」

飛鳥「ふふっ」

泉「真顔で『それは困る』って……飛鳥、時々面白いよね」

飛鳥「困るものは困るからね」

泉「はいはい、わかったわ。ちゃんと教えてあげるから」

飛鳥「……助かるよ」

翌日 泉の家


飛鳥「泉さん。質問してもいいかな」

泉「どれ?」

飛鳥「この問題なんだが、途中の計算式がよく理解できない」

泉「えっと……ああ、これはね――」

泉「という感じなんだけど。わかる?」

飛鳥「あぁ、なるほど。うん、納得した」

泉「よかった。そこから先は似たような問題続きだから、全部解けると思う」

飛鳥「やってみるよ」カキカキ

泉「がんばって」

数時間後


伯母「ふたりとも。ジュースとケーキ、持ってきたわよ」

泉「ありがとう、お母さん。飛鳥、休憩にする?」

飛鳥「ん……もう少しでキリのいいところまで終わるから」

泉「そう。じゃあ、ちょっとだけ待とうかな」




飛鳥「………」

飛鳥「できた」

泉「お疲れさま」ナデナデ

飛鳥「……頭を撫でて褒める癖、治りそうにないね」

泉「あ……ごめん。つい、弟にやるのと同じ感覚で」

泉「前からずっとよね、これ……嫌なら、直すわ」

飛鳥「………」

飛鳥「気にするほどのことじゃないから、無理して直す必要はないよ」

泉「そう?」

飛鳥「あぁ」

泉「なら、もうちょっと続けてもいい?」

飛鳥「……いいけど」

泉「ありがとう」ナデナデ

飛鳥「………」

飛鳥(毎度毎度、不思議だな……なんとなく、ふわふわした感覚だ)

飛鳥「………」モグモグ

泉「どう? ケーキ、おいしい?」

飛鳥「うん。甘くて、ボク好みの味だ」

泉「そう。よかった」

泉「私のモンブランもおいしいけど、一口食べる?」

飛鳥「キミさえよければ」

泉「それじゃあ……はい、どうぞ」

飛鳥「………」ハムッ

泉「おいしい?」

飛鳥「モンブランの味がする」

泉「もう少し中身のあるリポートはできないの?」

飛鳥「なら、キミもボクのいちごショートを食べて感想を言ってみるといい」スッ

泉「はむっ」

泉「………」

泉「イチゴショートの味ね」

飛鳥「………」ジーー

泉「ごめんなさい」

飛鳥「………」モグモグ

泉「………」

泉「飛鳥。ちょっと、聞いてもいい?」

飛鳥「なんだい」

泉「アイドル、楽しい?」

飛鳥「……随分と唐突な質問だね」

泉「せっかく二人きりだし、普段聞けないことを聞こうと思って」

泉「いつもは、周りに必ず誰かがいるもの」

飛鳥「……そうだね。必ず、誰かがいる。久しく、孤独というものを経験していない気がするよ」

泉「いいことね」

飛鳥「いや、どうだろうね。そう簡単に言い切れることじゃないかもしれない。独りだからこそ、見えるモノもあるだろうから」

泉「……ふうん。そういう考え方もある、か」

飛鳥「それで、泉さんの質問に対する答えだけど……結論から言えば、イエスかな」

飛鳥「アイドルになってから、刺激を与えられる日々の連続で。たくさんの経験を重ねるうち、ボクも次第にヨロコビってヤツを感じられるようになった」

飛鳥「あの日、Pの手を取らなければ得ることのできない経験だった。そう思うよ」

泉「本当にびっくりしたわ。プロデューサーが静岡に行ったついでに新しいアイドルをスカウトしてきたって言って、連れてきたのが私の従妹だったんだから」

飛鳥「ボクも、アイドルを目指して上京した従姉と再会するとは想定外だった」

泉「そういう意味では、プロデューサーに感謝しないとね」

泉「よりにもよって親戚同士を同じ事務所に引き入れるなんて、なかなかすごい確率だよ、きっと」

飛鳥「あぁ、まったくだ」

飛鳥「キミはどうだい? アイドル……ニューウェーブとしての活動は、気に入っているの?」

泉「私?」

飛鳥「人に聞いておいて、自分だけ答えないというのはナンセンスだよ」

泉「それもそうか」

泉「うん……私も、楽しい。アイドルの仕事を通して、今まで知らなかったことを知って、味わったことのなかった感覚を味わうことができる。それは、いいことだと思うから」

泉「でも……同時に、不安もたくさんある」

飛鳥「不安?」

泉「何もかもが初めてだから。ダンスは苦手だし、人前で歌うのだって経験不足。表現力なんて言わずもがな」

泉「さくらや亜子、そしてプロデューサー……みんなの期待に応えられるのか、心配になる時は何度もあるわ」

飛鳥「………」

泉「……飛鳥?」

飛鳥「いや……少し、意外だったのかもしれない。ボクにとって、キミは……」

泉「もっと強いと思ってた? そんなことないよ。勉強には自信があるけれど、それ以外は弱点だらけだもの」

泉「……でも、諦めるわけにはいかないし。そもそも、諦めたいなんて思っていないし」

飛鳥「……どうして? どうして、そこまで」

泉「信じているから」

飛鳥「信じて、いる?」

泉「そう」

泉「私、人を信じたり、頼ったりするのはあまり得意じゃないの。でも、さくらと亜子……そして、プロデューサーのことは信じられるから」

泉「あの子達が信じてくれるなら……その期待に応えたいって思う。きっと応えられると思う」

泉「だから、頑張れるんだ」

飛鳥「……泉さん」

泉「正直、こんなのロジックでもなんでもない。でも不思議と、おかしくない。間違ってないって思える」

泉「変かな?」フフッ

飛鳥「……いや。変じゃ、ないさ」

飛鳥「理屈じゃないんだ、きっと」

泉「そう。なら私は、飛鳥のその言葉を信じる」

飛鳥「え?」

泉「私が信じられる人。あなたも入っているから」ニコ

飛鳥「………」ポカン

泉「すごく驚いた顔してる……結構一緒にいた時間長いんだから、予想できなかった?」

飛鳥「……それは、そうかもしれないけど」

泉「けど?」

飛鳥「……ボクだって、自信があるわけじゃない。キミの信頼に応えられるだけの力が、果たしてあるのか」

泉「………」

泉「それは、私だって同じだから」ナデナデ

飛鳥「あ………」

泉「きっと、これから一緒に見つけていくものなんだと思う」

泉「だから、がんばろうか」

飛鳥「………」

飛鳥「あぁ……往ってみるさ。まずは、そこからだ」ニヤリ

泉「あ、そうだ」

泉「飛鳥。勉強教えてあげる代わりに、ひとつお願いしてもいい?」

飛鳥「ん?」

泉「アイドルになってもう結構経つし、そろそろファッションの知識も自主的に深めていかないとって思っているんだけど……先生になってくれる?」

飛鳥「ボクが、かい」

泉「適任じゃない? オシャレだし、バッチリ決まってるし」

泉「服もそうだし、エクステも」

飛鳥「キミの髪の長さだと、エクステは必要ないよ」

泉「あ、そっか」

飛鳥「……ふふっ」

飛鳥「いいよ。頼まれてみるさ。ボクがどこまでできるかは、未知数だけどね」

泉「うん。よろしくお願いします」ニコッ

泉「さ。それじゃあまずは、宿題を終わらせちゃいますか」

飛鳥「そうだね。ケーキも食べ終わったことだし」

飛鳥「早速ひとつ、聞いてもいいかい」

泉「どうぞ」

飛鳥「これなんだけど……っくしゅん」

泉「寒い?」

飛鳥「……少し」

泉「もう、それなら早く言わないと。暖房の温度上げて、あとはカイロ持ってきて……」ドタドタ


飛鳥(……本当に姉みたいだな。この人は)




おしまい

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます

いずみんと飛鳥の組み合わせってよさげだなーと思っただけです。結構似てるところありそう。


関係ない過去作
モバP「なっちゃんという同級生」
モバP「かんきつ系なお隣さん」

よかったらこれらもどうぞ

おつ

そういや飛鳥と泉(さくらと亜子も)出身県が静岡だったな
ぶっちゃけモバマスの出身地設定って殆ど意味を成さないからよく忘れる

乙乙
飛鳥とNWの絡みがもっと見てみたくなった

乙の気持ちになるですよ

まぁまぁ乙どうぞ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年06月14日 (火) 19:10:56   ID: 6Akcm_x3

こんな人間関係もいいなって思います。

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