アズミ「隊長の満足するハンバーグを作るには……」エリカ「話は聞かせてもらったわ」 (37)

アズミ「だ、誰!?」

メグミ「どこから入ったの!?」

エリカ「どうしたの? 付け合わせのミックスベジタブルを見るような目で見て。忘れちゃったの?」

エリカ「私よ私……ハンバー (パチン)

ルミ「ああ! あたしをやっつけたティーガーⅡの車長の子ね! あれは見事な連携だったねー!」

エリカ「最後まで言わせなさいよ! でもありがとう」

――――――――――

※ハンバーグに命を懸ける者達のガルパンSS

※料理描写はテキトーなので温かい目でよろしくお願いします。

※キャラ崩壊・ネタ被り上等

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1465124833

アズミ「ティーガーⅡってことは黒森峰の?」

エリカ「そう……仕方ないから名乗ってあげる。刻みなさい、貴女を屠った者の名を!」

エリカ「私は高校戦車道の頂点、黒森峰女学園の副隊長・逸見エ(ゲシッ)いてっ!」

メグミ「何を偉そうに。敬語を使いなさい敬語を」

ルミ「それに今の頂点は大洗女子でしょうが」

エリカ「ぐっ……来年はうちが返り咲くからいいのよ……それよりも! 私はあなた達を助けてあげようと思ってここに来たのよ」

アズミ「どういうこと?」

エリカ「あなた達、隊長の島田愛里寿の大好物である、目玉焼きの乗った美味しいハンバーグが作れるようになりたいんでしょう? 彼女と一緒にお料理して、ご馳走するために」

メグミ「ど、どこでそれを……?」

エリカ「全国のアニメショップなどで定価3000円(税抜)で大好評発売中の『ガールズ&パンツァー ドラマCD5 新しい友達が出来ました!』を聴いたのよ!」

アズミ「なるほど……劇場版で新たに登場した継続高校や知波単学園、プラウダのクラーラや聖グロのローズヒップなどの楽しい日常が覗けるあの名作を……」

ルミ「そしてもちろん我らが隊長、劇場版ではセンチュリオン無双の時の凛々しい姿が印象的な島田愛里寿の、普通の女の子としての可愛らしい一面も味わえるあの名盤を……」

メグミ「各店舗ごとに付いてくる特典のイラストに描かれた隊長が可愛すぎてつい全部揃えたくなるあの必携アイテムを……」

エリカ「ええ、特典の隊長とみほも最高過ぎて部屋中にげふんげふん! こ、ここに来たのはステマのためじゃないの!」

エリカ「後発キャラクターの先輩方は知らないかもしれないけれど、ガルパンでハンバーグといえばこの私、逸見エリカと決まっているのよ!」

ルミ「なんだぁ……? あんたは隊長にいちゃもん付けに来たってこと?」

メグミ「ハンバーグはあなたの専売特許じゃないわ!」

エリカ「チッチッチ……まさか、そんなことするわけないじゃない。ハンバーグ好きに悪い人はいない。ハンバーグ好きは皆姉妹! ハンバーグ・イズ・ジャスティス!」

アズミ「じゃあ何しに来たのよ」

エリカ「もちろん、あなた達がハンバーグの作り方をマスターする為の手助けに来たのよ」

ミミミ「ほんと!?」

エリカ「ええ……ヒロインのみほさえ虜にする私の至高の逸見流ハンバーグ道、あなた達に余すところなく伝授するわ!」

アズミ「レトルトカレーしか作れない女子力ゴミカスな私にも出来る……?」

エリカ「もちろんよ。私に任せなさい。あなた達をどこに出しても恥ずかしくないハンバーグ女子に育て上げてあげるわ」

ミミミ「逸見さん……!」

エリカ「私のことは師匠と……ハンバーグ師匠と呼びなさい!」

ミミミ「はい! ハンバーグ師匠!」

エリカ「よろしい! ではさっそくレクチャーを始めるわよ! せーの!」

全員「ハンバァァァァァァァァァグ!!!」

エリカ「アハトゥンク(傾聴)! では早速、ハンバーグ学の講義から始めるわよ」

メグミ「し、師匠! キッチンで作り方を教えていただければそれで十分なのでは……?」

エリカ「バッドハンバーグ!」ビシッ

メグミ「えっ……!?」

エリカ「甘い! 確かに私のレシピさえ覚えれば誰でも美味しいハンバーグが作れるかもしれないけど……それじゃあ私のハンバーグのコピー品でしかない! それはあなた達のハンバーグではないわ!」

エリカ「ハンバーグと一口に言っても、世界には様々なハンバーグが……それこそ作った人間の数だけ存在する。全ての人間の顔かたちがそれぞれ違うように、ハンバーグもまた同じものは2つと無い。それがハンバーグ多様性……!」

エリカ「それこそが正しい姿! ハンバーグも人間も、互いの違いを認め合い、理解し合い、その関係性の中で切磋琢磨し合い、一段、また一段とそのレベルを上げていくことが必要!」

エリカ「これこそが、かの哲学者ヘーゲルの提唱したハンバーグ・アウフヘーベン……ッ!」

ミミミ「おお……ッ!」メモメモ

エリカ「それを成し遂げる為には、変化を受け入れつつも、決してぶれることのない確固たるハンバーグの本質というものを自分の中に持たねばならない!」

エリカ「それ無くして、半端な心持ちのまま調理場で挽き肉に向かえば……あなた達、逆にハンバーグに食われることになるわよ……!」

ルミ「そんな……っ」

アズミ「なんと恐ろしい……!」

メグミ「師匠! 私が愚かでした……どうか私達に、ハンバーグの本質というものをお教えください!」

エリカ「グッドハンバーグ……!」グッ b

エリカ「しかしハンバーグの本質とは誰かに教えられるものに非ず。自ら各々の心に産み出すもの也。でもその手伝いならば、私がしてあげることもできる!」

エリカ「あなた達には、私に作らされた模造品などではなく、自らの内なるハンバーグスピリッツから湧き出たあなた達自身の作り出したハンバーグで大切な人を喜ばせてあげてほしい」

エリカ「というわけで、まずはハンバーグの起源……ハンバーグ・ビッグバンについて説明するわ」

ミミミ「はい!」

エリカ「そもそもハンバーグの元となったのは『タルタルステーキ』という料理と言われ、この『タルタル』はモンゴル帝国のタタール人に由来し――」

(中略)

エリカ「――そしてドイツ系移民によって伝えられたその料理が、アメリカで『ハンブルク風ステーキ』=『ハンバーグステーキ』と呼ばれるようになったのです」

ミミミ「ふむふむ」メモメモ

エリカ「……しかし、覚えておきなさい。これから己のハンバーグを作ろうというあなた達にとって、以上のような古典ハンバーグ史学の内容は時に枷となりうるということを」

アズミ「なっ……!? それは一体なぜなのですか師匠!」

エリカ「――あれは、私がまだ駆け出しハンバーグ野郎だった頃のこと。生まれた頃の姿を今に残す、生きたハンバーグ化石とも言えるハンバーグ・ジ・オリジンを味わいに、私は本場ドイツへ飛んだ」

エリカ「そこでワクワクしながら食べたハンバーグが……私の口には合わなかった!!」クワッ

ルミ「な、なぜっ!?」

エリカ「向こうのハンバーグはほぼ牛肉100%……つなぎがほとんど入っていないから、パサパサして舌触りも悪く、肉汁も流れきってしまいジューシーさも無かった!」
(筆者が実際にベルリンで食ってきた感想)

エリカ「ドイツ人は良くも悪くも規律と伝統を重視する国民性。ビールの原料を水と麦芽とホップと酵母のみとする1516年に制定された『ビール純粋令』を現在でも愚直に守り通しているように。だから多少味が悪かろうが『これはこういうものだ。栄養分が取れればいいのだ』と考えて変容を拒絶する!」

エリカ「一方、私達が普段食べているハンバーグは、明治に海外から持ち込まれ、大正デモクラシーの頃に大衆に広まり、その過程で日本人の舌に合うように幾度も幾度も、各時代の料理人――ハンバーグアーチスト達の手によって進化を繰り返してきた!」

ルミ「相手の戦法に対応して変幻自在に変化する忍者戦術……!」

アズミ「ハンバーグと島田流戦車道は……同じということ……!?」

エリカ「グッドハンバーグ……!」グッ b

メグミ「つまり隊長に作るべき私達のハンバーグは、ハンバーグ・ジ・オリジンの源流を継ぎつつも、ある意味では否定し、独自の道を――オリジナルハンバーグロードを歩み続けてきた、ジャパニーズハンバーグこそが適切ということ……!」

エリカ「グレイトフルハンバーグ……!」グッグッ b b

エリカ「あなた達も到達出来たようね……ハンバーグ・アウフヘーベンの高みへ!」

ミミミ「師匠……!」

エリカ「ふふっ……教え甲斐のある弟子達で嬉しいわ。それじゃあ、いよいよジャパニーズベーシックハンバーグの作り方の基本を――」

スマホ<オウ! デンワダゼ! ハヤクデナイトボコボコニシテヤルゼ!

エリカ「こ、こんな時に……ちょっと失礼」ピッ

エリカ「もしもし……えっ!? そんな……いつの間に……はい……はい……今すぐですか!? そんな……彼女達にはまだ早いと……しかし……くっ……分かりました」ピッ

メグミ「師匠……?」

エリカ「……ごめんなさい。私の修業はここでおしまいよ」

ルミ「そんな! 師匠!」

アズミ「私達、まだ師匠から何も!」

エリカ「本当に申し訳ないと思っているわ……でも、私にはどうしようもない」

メグミ「でも……私達だけじゃ、師匠がいなかったら何も出来ません!」

エリカ「バッドハンバーグ!!」クワッ

ミミミ「っ!?」

エリカ「……人は、いつまでも子供ではいられない。いつか大人になって、独り立ちしなければならない時が来るもの。それが少し早まっただけ」

エリカ「今日、あなた達は逸見流ハンバーグ道の基礎の基礎を学んだ。その上にどんなものを作り上げるかは、あなた達の自由よ」

エリカ「自分の中のハンバーグスピリッツを信じなさい。そして、自分だけのハンバーグ道を見つけなさい」

ミミミ「師匠……っ!」

エリカ「それじゃ。May the Hamburg Spirits be with you.(ハンバーグスピリッツと共にあらんことを)……!」シュン!

ミミミ「師匠ォーーーーーーッ!!」

~数日後・メグミの部屋~

ルミ「もぐもぐ……これも駄目だ!!」ガシャーン

アズミ「あれから大学にも行かずに私達だけで試行錯誤を繰り返してきたけど……」

メグミ「未だに満足のいくオリジナルハンバーグにたどり着けない……」

ルミ「まるで出口の見えないハンバーグラビリンス……!」

アズミ「ハンバーグ……バンデンハーク……ハンバーグとは……一体何なの……? 私は一体誰バーグ……?」クラクラ

メグミ「アズミしっかり! HICを起こしてるわよ!」ユサユサ
(※HIC……ハンバーグ・アイデンティティ・クライシス)

コンコン ガチャ

亜美「お邪魔します」

メグミ「蝶野教官! どうしてここに……」

亜美「お三方に、これを渡しに来たの」つ【手紙】

アズミ「手紙……? ってこれ、西住流と島田流の連名で!?」

ルミ「な、何事だ!?」

メグミ「とにかく読んでみましょう!」ガサガサ

【召集令状】

平成2X年○月△日、戦車道連盟富士演習場にて、西住流・島田流両派対抗の料理対決を執り行う。
尚、これは最終決定であり、いかなる理由があろうとも試合を放棄した流派は未来永劫に戦車ではなくプリウスにしか乗れない刑に処される。

《代表料理人》
西住流……逸見エリカ
島田流……メグミ・アズミ・ルミ

《調理メニュー》
ハ ン バ ー グ

《審査員》
島田愛里寿

平成2X年 ○月×日
西住流家元 西住しほ 印
島田流家元 島田千代 印

メグミ「な、なんですかこれは!?」

アズミ「師匠が姿を眩ましたのはこのせいだったのね……」

亜美「ここだけの話、両家元が一緒に飲んでる間にヒートアップして、その場の勢いで誓約書を交わしてしまい引っ込みがつかなくなったとかなんとか……」

ルミ「なにやってんだよ子供か」

亜美「とにかく、確かに渡しましたからね。私はただのメッセンジャー。この件には一切無関係。知らぬ存ぜぬ……グッバイ!」シュタタッ

アズミ「……どうする?」

メグミ「どうするもなにも……出るしかないじゃない。今度から戦車相手にプリウスで戦う気?」

ルミ「死んだ方がマシだなそりゃ……」

アズミ「でも……師匠相手にハンバーグで戦うなんて……」

ルミ「しかも審査員が隊長……」

メグミ「今の私達のハンバーグ力ではとても勝負にならないわ……!」

アズミ「(クンクン)……あら? なんか、肉汁の薫りが……」

ルミ「そりゃするでしょ。散々試作品ハンバーグを作り散らしてるんだから」

アズミ「いいえ、私達の作ったものより、ずっと芳しく、調和の取れた肉汁の薫り……一体どこから……」

メグミ「(スンスン)……もしかして、ここから……?」つ【手紙】

アズミ「……本当だわ! 確かにこの手紙から……ということは! ルミ、ライター貸して!」

ルミ「……そ、そうか!(パチン) そういうことか!」つ【ライター】シュボッ

アズミ「この手紙を、ライターの火にかざすと……」

メグミ「文字が浮かび上がってきた!」


 あなた達のハンバーグスピリッツを信じて


アズミ「この上品な肉汁の薫り……肉汁で書かれた炙り出しのメッセージ!」

ルミ「師匠……っ! 師匠は今でも私達のことを忘れずにいてくれてたんだ!」

メグミ「私達のハンバーグスピリッツ……ねぇ、そもそも私達がハンバーグを作ろうとした理由は――」

アズミ「ええ、勝負に勝つ為なんかじゃない――」

ルミ「私達のハンバーグスピリッツは、そこにある……!」

~料理対決当日・富士演習場特設コロシアム~

エリカ「……」

ミミミ「……」

しほ「……」

千代「……」

愛里寿「……」

まほ「……関係者、全員揃いました。プリウスが無くなって本当に安心しました。ではこれより、西住流対島田流の、料理対決を行います!」

まほ「本日、進行役を務めさせていただきます、西住まほです。よろしくお願いいたします」

まほ「では対決を始めるに当たり、両家元から一言ずつお願いいたします」

しほ「…………なぜこんなことになったのかしら。ちよきち覚えてる?」ズーン

千代「…………5軒目のお店で、しぽりんが『上の娘に浮いた話が無さすぎて逆に不安で不安で』とかなんとか愚痴り始めた辺りから記憶がありません」ズーン

まほ「えっ」

しほ「…………私も6軒目でちよきちが『そろそろ私も2人目が欲しいのに旦那が全然相手してくれない』とかなんとかうわ言のように呟き始めた辺りで記憶が途絶えてるわ」

愛里寿「……お父様が相手してくれないってどういう意味?」キョトン

まほ「ゴホンゴホン!! えー、両家元ありがとうございました。では、今度は両流派を代表して戦う料理人から一言ずつ」

エリカ「……私は、私の作れる最高のベストオブベストハンバーグを披露する。それだけです」

メグミ「……私達は、ただ自分達のハンバーグスピリッツを信じて戦うのみです」

エリカ「……」ニヤッ

ミミミ「……」ニヤッ

まほ(なんだこいつら)

まほ「では、ルールを説明いたします。時間は無制限。各自、自分の持ち込んだ材料を使用。完成した方から随時実食を行う。両者のハンバーグを食べ終わった時点で、審査員の愛里寿が判定を下す。以上、皆様よろしいですね」

一同「異議無しッ!」

まほ「それでは、Allez cuisine!(アッレ・キュイジーヌ:調理開始)!」

エミミミ「!」スタタタッ

愛里寿「なぜそこはフランス語……?」

しほ「懐かしいわね」

千代「鹿賀丈史かっこよかったわ」

~調理風景カット~

エリカ「完成よ!」

まほ「逸見シェフ、一足先にハンバーグを完成させました!」

しほ「大がかりにやったとはいえ、作ってるのは普通のハンバーグだから料理風景は特に描写するほどのものは無かったわね」

千代「しかしとても美味しそうですわ」

エリカ「合挽き肉の配合割合につなぎの量、焼き具合はもちろん、ソースも最高品質の素材を使用した特製よ。お召し上がりください」スッ

まほ「まずは逸見シェフのハンバーグの実食です」

愛里寿「いただきます」ペコッ

シャク…ジュワァ

愛里寿「表面はしっかり焼かれて固め……だけどナイフを入れると、ふんわりと柔らかな肉の中からたちまち透き通った美しい肉汁が泉のように湧き出てくる……!」ジュルリ

まほ「なんて芳しい薫りだ……強火で表面を焼き固め、後からじっくり内側に熱を通すことによって、綿密に編み込まれたスパイスが引き出した肉の旨味が閉じ込められ、ナイフを入れた瞬間ビックリ箱のように迸り出すのか!」

愛里寿「はぁはぁ……だめ、もう我慢出来ない! あーん、もぐ……んんっ!?」ビビクン♡

愛里寿(すごい! 口に入れても旨味の奔流が止まらない! 噛み締める度に、後から後から――まるで強固な装甲と強力な攻撃力を持つドイツ戦車みたいっ!)プルプル♡


♪Ob's stürmt oder schneit, Ob die Sonne uns lacht, Der Tag glühend heiß Oder eiskalt die Nacht.
(嵐の日も雪の日も 太陽燦々たる灼熱の日も 身を切る極寒の夜も)


愛里寿(ああ、聞こえる! 高らかに歌いながら、戦意揚々と進撃するティーガー部隊の駆動音が!)ビクッビクッ♡


♪Bestaubt sind die Gesichter, Doch froh ist unser Sinn, Ist unser Sinn;
(顔が埃に塗れようとも我らが心は快活ぞ 然り、我らが心は快活ぞ)


愛里寿(それ以上進撃されたら……私、私っ……!)キュンキュン♡


♪Es braust unser Panzer Im Sturmwind dahin.
(驀進するは我等が戦車 暴風の只中を)


愛里寿(てぃ……てぃ……てぃーがーしょっくぅ~~んっ!!)ビクビクッ♡ビクビクッ♡

愛里寿「はぁ……はぁ……凄かった……♡」トローン

まほ「この愛里寿の反応……逸見シェフのハンバーグは相当な代物だった様子! 一方のメグミ・アズミ・ルミのチームは……?」

メグミ「完成しました!」スッ

まほ「おおっと! こ、これはぁー!?」

愛里寿「これ……!」

エリカ「……」

まほ「愛里寿の好物、目玉焼きの乗ったハンバーグですが……いささか焼きすぎて焦げているようにも見受けられますが……?」

ルミ「大丈夫、食べたら分かりますよ」

愛里寿「うん……いただきます」ペコッ

ザクッザクッ

まほ「断面を見ると、内側は逆に火の通りが甘く、半生状態のようですね」

しほ「強火で調理をしすぎて、外は焦げているのに中はまだ火が通らず生……典型的な失敗例ね」

千代「……」

まほ「これはもう勝負が決まったか……?」

愛里寿「もぐもぐもぐ…………グスッ……ううっ……!」ポロ…ポロ…

エリカ「……!」

まほ「こ、これは……泣いています! 愛里寿が涙を流している! これはどういうことだ……!?」

愛里寿「これ……この濃すぎる味……焼きすぎて焦げてるのに中が生……このハンバーグは……!」グスッ


 ――お母様ただいま!

 ――おかえりなさい愛里寿。今日も鍛練お疲れ様。

 ――うん。お母様、愛里寿お腹ペコペコです。

 ――はいはい、まず手を洗ってらっしゃい。

 ――はーい!

 ――洗ってきました! お母様、今日の晩ごはんは?

 ――今日は、愛里寿の大好きな……

 ――わーい! 目玉焼きハンバーグ!

 ――愛里寿は本当にハンバーグが大好きね。

 ――はい! 愛里寿はお母様の作ってくれるハンバーグが大好きです!


愛里寿「間違いない……お母様の味……! 私の大好きな、お母様のハンバーグだ……っ!」ポロポロ…ポロ…

愛里寿「今は寮暮らしだから……ずっと食べたかったお母様の……!」モグモグ ガツガツ

千代「愛里寿……!」ブワッ

エリカ「これは……そういうことね、あなた達」

アズミ「ええ、家元にお願いして、ハンバーグの作り方を教えていただいたんです」

エリカ「……でもこれは――」

メグミ「確かに、これは師匠の言う『私達だけのオリジナルハンバーグ』ではないかもしれません」

ルミ「でもあたし達が最も望んだのは、ハンバーグで隊長を幸せにすること! あたし達はそんな自分のハンバーグスピリッツに素直に従っただけ」

アズミ「これが私達の答え……私達のハンバーグ道です!」

エリカ「なるほど……私は、素晴らしい弟子を持ったわ。グッジョブ・ベリーナイスハンバーグよ!」グッ グッ グッ b b b

まほ「……私も、久しぶりにお母様の水っぽいカレーが食べたくなったよ」フフッ

しほ「まほ……」クスッ

まほ「――では! 判定に移らせていただきます! お願いします!」

愛里寿「……エリカさんのハンバーグは本当に美味しかった。まさに一種の芸術品と言える。でも――」

愛里寿「料理は愛情。いかに食べる人の幸せを願って作るか。食べる人を喜ばせられるか。それが料理の真髄だと私は考える」

愛里寿「彼女達のハンバーグには、確かにそれを感じた。舌ではなく、心でそれを理解した!」

愛里寿「勝者、島田流!」

まほ「決まったあああ! 西住流と島田流、両家の意地とプライドを賭けた料理対決の勝者は、島田流のメグミ・アズミ・ルミチームだあああ!」

ミミミ「やった~!!」

エリカ「弟子に追い抜かされる……師匠にとってこれ程喜ばしいことはないわ……!」ウルッ

しほ「ふぅ……完敗ですね」

千代「次の飲み会では節度を持って楽しみましょうね」

しほ「まったくです」

千代「それと……今度、愛里寿にハンバーグを作ってあげようかしら」

しほ「……私もまほとみほに、カレーを作ってあげますか」

千代「……ふふっ」

しほ「うふふっ」

まほ「それはそうと、私も一度エリカの作った至高のハンバーグを食べてみたいな」

ルミ「あ、あたし達もぜひー!」

エリカ「もちろん隊長達の分も用意してますよ! えーっと……って、な、無い!」コツゼン!

メグミ「そんな! どうして!」

ポロロン…

ミカ「ハンバーグがね、語りかけてきたんだよ……『私をどうぞ』ってね……ゲェップ」ポロン…

エリカ「あ! あなたどこから!?」

ミカ「おや風が……では私はこれで……」スタコラサッサ

エリカ「待ちなさいこの盗人めぇ!」ドドドドッ

まほ「やれやれ」フゥ

~おしまい~




エリカ「――っていうのが今度のイベントで出す新刊よ」

みほ「とっても面白そう! 完成したら読みたいな」

愛里寿「私も」

エリカ「分かってるわよ。さて、おまちどおさま。エリカ特製ハンバーグの出来上がり」コトン

みほ「わぁ! やっぱり美味しそう! 沙織さんのも美味しいけど、エリカさんのハンバーグが食べたくてつい帰ってきちゃうんだよね♪」

エリカ「私の前で他の女のハンバーグの話しないでくれる?」ギロリ

みほ「あ、ごめん……」テヘヘ

愛里寿「エリカさん、私のハンバーグに、ちゃんと……」

エリカ「もちろん、目玉焼き乗っけてあるわよ」コトン

愛里寿「わぁ……お花の形だ……!」キラキラ

エリカ「ま、マンガみたく特別なものじゃないけどね」

みほ「そんなことないよ。私にとっては、エリカさんのハンバーグは特別だから♪」

エリカ「う、うるさいわね! そんなお喋りはいいから、さっさと食べちゃいなさいよ! 冷めるでしょ!」

みほ「う、うん……じゃあ愛里寿ちゃん、手を合わせて」

愛里寿「うん。一緒に。せーの――」

みほ愛里「いただきまーす!」

エリカ「……ふふっ」ニコッ

♡おしまい♡

読んでくださった方ありがとうございました。
今回のSSの焼き加減はいかがだったでしょうか。テーマは「愛」です。


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アリスインボコランドのボコハンバーグ本読みたい

日付変わって秋山殿お誕生日おめでとうございます。

>>33
逸見が一生ハンバーグ食えなくなるので駄目です。

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