高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「写真の話でもしながら」 (37)

――おしゃれなカフェ――

北条加蓮「…………♪」モグモグ

高森藍子「~~~♪」

藍子「あっ、そうだ!」

加蓮「?」モグモグ

藍子「加蓮ちゃんっ、ちょっとこっち向いてください」

加蓮「ん?」チラッ

藍子「えいっ」パシャッ

加蓮「…………」モグ...

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――まえがき――

レンアイカフェテラスシリーズ第22話です。
以下の作品の続編です。こちらを読んでいただけると、さらに楽しんでいただける……筈です。

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」

~中略~

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「膝の上で さんかいめ」(投下時の表記は「膝のうえで」)
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「今年初のカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「晴れた日のカフェで」

藍子「えへへ。ぽかんとした顔、撮っちゃいました!」

加蓮「…………」モグモグゴクン

加蓮「不意打ちー」

藍子「不意打ちですっ」

加蓮「絶対変な顔してたでしょ私。撮らないでよー」

藍子「だって加蓮ちゃん、写真を撮るよ~って言ったら素敵な笑顔を見せてくれるじゃないですか」

加蓮「……まぁアイドルだし」

藍子「そういう加蓮ちゃんを撮るのも楽しいですけれど……自然体の加蓮ちゃんも、写真に収めたくなっちゃって」

加蓮「最初のうちは意識してたけど、もう条件反射になっちゃったね」

藍子「撮られることをですか?」

加蓮「うん。最初の頃は……どうだっただろ。変な顔っていうか、明らかに不慣れって感じの顔、してたかも」

藍子「……あ!」

加蓮「今度は何を思い出したの?」

藍子「私、モバP(以下「P」)さんに頼んで、昔の加蓮ちゃんの写真を見せてもらおうって思ってたのに……すっかり忘れちゃってました……!」

加蓮「え」

藍子「事務所に入った頃の加蓮ちゃんって、どんな表情をしてるのかなって。昨日、写真の整理をしていたらどうしても気になっちゃって! 明日、絶対に見せてもらいますっ」

加蓮「ん、んー……複雑だけど……」

藍子「複雑だけど?」

加蓮「……自分でも気になるかなぁ。アイドルになりたてだった私が、どんなアホな顔してるか――やめ! やっぱりやめ! どーせロクでもない顔してるし!」

藍子「え~。私は見てみたいなぁ。……それに加蓮ちゃん。そんな風に自分のこと言っちゃ駄目ですよ、もう」

加蓮「だったら藍子は平気なの? 初めて撮ってもらった宣材とか」

藍子「はいっ」

加蓮「即答……」

藍子「写真をアルバムに収めていて、つい、昔の写真を見たくなっちゃって。いろんなアルバムを探していたら、初めての宣材写真を見つけちゃったんです」

藍子「Pさんから、記念に1枚、ってもらってて。Pさんに、こういうのはとっておくものだ! って教えてもらったことを思い出しちゃいました」

加蓮「……ご感想は」

藍子「やっぱり不格好でした……。ぜんぜんアイドルらしくなくて、すっごく不慣れって感じがして。い、今もかもしれませんけれど……!」

加蓮「でしょー?」

藍子「でも、その時はその時だって思ったら、なんだかいい思い出みたいになっちゃって」

藍子「それと、アルバムを見ていたら、最近、加蓮ちゃんの写真をあまり撮ってなかったなぁって思いついて……カフェで話すようになったばかりの頃の写真はいっぱいあるのに、って」

藍子「目を瞑ったら、加蓮ちゃんの顔は浮かびますけれど……それは、"今"の加蓮ちゃんですから」

藍子「それに、ほらっ! 加蓮ちゃん、いっつも昔の自分はーって言っちゃうから、加蓮ちゃんの代わりに私が記録しておくんです。ふふっ♪」

加蓮「それで不意打ちなんだね」

藍子「はいっ。ばっちり撮れてますよ、ほら!」スマフォミセル

加蓮「…………うぬー。やっぱりアイドルの顔じゃない……」

藍子「いいじゃないですか。今の加蓮ちゃんは、加蓮ちゃんなんですから」

加蓮「加蓮ちゃんはいつでもアイドルなんですー」

藍子「加蓮ちゃんは加蓮ちゃんです」

加蓮「加蓮ちゃんイコールアイドル。アイドルじゃない加蓮ちゃんは加蓮ちゃんじゃないの」

藍子「なんと言っても、絶対に消しませんからね」

加蓮「じゃあせめてあんまり見せびらかさないでよ? ――言った矢先からメールを送ろうとしない!」ガバッ

藍子「ひゃあっ」

加蓮「やっぱ宛先がPさんになってるし……」ポチポチ

加蓮「抜け目ないなぁ。はい」カエス

藍子「はーい。それなら、私の思い出ってことにしておきますね。今日も、いい思い出ができました♪」

加蓮「相変わらずいつも幸せそーにしてるね、藍子は」

藍子「えへへ。あっ、それなら、加蓮ちゃんにも幸せのお裾分けです」ポチポチ

>ブルルルルル

加蓮「…………」チラッ

藍子「ねっ?」

加蓮「……私の写真を幸せのお裾分けだって言われてもなぁ」

藍子「あ、それなら!」

加蓮「今日はよく閃くね。調子よさげ?」

藍子「えへへ」

加蓮「で、なになに?」

藍子「今日の帰りに、いつもの写真屋さんで現像してもらいます。さっきの写真。こう、額縁に……ううん、メッセージカード風にして、タイトルは『いつもの加蓮ちゃん』で!」

藍子「ううん、"いつも"じゃないかな……? それなら『夏のはじまりの加蓮ちゃん』! これなら、加蓮ちゃんがいつか見つけた時に、今日のことを思い出してくれるかなぁ」

藍子「どう……ですか?」

加蓮「き、今日の藍子はいつもにもまして手強いね……? なんかあったの?」

藍子「ふふっ、なんだかそういう気分なんです。それで、写真……今なら写真立てもつけちゃいますっ」

加蓮「お値段なんと」

藍子「ぷらいすれす!」

加蓮「……。ファンに幾らで売れるかな?」

藍子「売らないでください」

加蓮「あははっ。ありがと、藍子。でも急にどうしたの? 余命3ヶ月でも宣告されて死ぬ間際の思い出でも遺したくなっちゃった?」

藍子「…………やっぱり、今日の加蓮ちゃんもいつもの加蓮ちゃんですね」ジトー

加蓮「藍子に褒められた~♪」

藍子「…………」ポチポチ

加蓮「はいPさんに写真を送ろうとしない」ガシ

藍子「ぶー」

加蓮「藍子、そこは『余命3ヶ月なのは加蓮ちゃんの方じゃないんですか?』って返すところだよ」

藍子「無理です」

加蓮「ふふっ。それより、藍子ちゃんのマジな話が聞きたいなー?」

藍子「真面目な話って言われても……。ただなんとなく、写真に撮りたいな、加蓮ちゃんにも覚えていてほしいな、って思っただけですから」

加蓮「そっか」

藍子「……加蓮ちゃんと、お話にするようになってから」

加蓮「んー?」

藍子「1日の大切さが、分かるようになった気がしたんです」

加蓮「んー」

藍子「ううん。分かってないのかも……加蓮ちゃんの方が、よく分かってるのかもしれません。でも、それでも、今日を大切にしていきたいなって」

藍子「そう思ったら、今日の加蓮ちゃんを撮りたくなったんです。……そう思えるようになったのも、加蓮ちゃんのおかげなのかな?」

加蓮「藍子さー」

藍子「はい」

加蓮「取捨選択が苦手だってよく言われない? ほら、物を捨てられないとかってさ」

藍子「わ、分かっちゃいます? 実は、写真を整理していた時、お母さんにちょっとだけ呆れられちゃって……何枚撮ってるんだっ、って」

加蓮「でしょー?」

藍子「べちっ、ってされちゃいました」

加蓮「てい」ベチ

藍子「いたいっ」

藍子「……い、いいんです! 加蓮ちゃんが捨てちゃう分、私が拾って持っておくんですから!」

加蓮「"捨てる神あれば拾う神あり"」

藍子「え?」

加蓮「今、ちょっとパッと頭に浮かんできたんだ」

藍子「ええと、確か……。見捨てちゃう人もいるけれど、助けてくれる人もいる、って意味だったと思います」

加蓮「あ、そうそうそういう意味。お母さんがよく私に教えてくれたんだ。だから前を向きなさい、ってよく言われてた」

藍子「よく言われてたのに、意味を忘れちゃってたんですか?」

加蓮「親の話は基本的に捨てる」

藍子「えー」

加蓮「うるさいだけだし。私が捨てる方で、藍子が拾う方かな?」

藍子「ふふっ。私たち、神様になっちゃうんですか?」

加蓮「藍子が神様だったらよかったのになぁ。そしたら私だってもっと――あ、いや駄目だ。そしたらこうして藍子とグダれなくなる」

藍子「神様だって、カフェでお話するかもしれませんね」

加蓮「カフェの神様?」

藍子「はいっ。カフェの神様です!」

加蓮「…………」

藍子「ですっ」

加蓮「……カフェの神様って、何?」

藍子「……さあ?」アハハ




藍子「前に雑貨屋さんに行った時、つい買っちゃったんです」ガサゴソ

加蓮「お?」

藍子「じゃんっ。自撮り棒~♪」

加蓮「おー」

藍子「でもこれ、2週間前に買ったんですけれど、使う機会がなかなかなくて」

加蓮「……なんで買ったの?」

藍子「ちょっと前に、事務所でPさんとテレビを一緒に見ていて……その時に、自撮り棒で写真を撮っている人たちの特集をやっていたんですよ」

加蓮「ふんふん」

藍子「こういうのは使わないのか? ってPさんに聞かれたんです。それで、別の買い物で雑貨屋さんに行った時、Pさんの言葉を思い出して、つい買っちゃいました」

加蓮「でも使わないんだ……」

藍子「……よく考えたら私、周りのものを撮るのが好きなので……自分を撮ることって、あんまりないんですよね」

加蓮「あ、確かに」

藍子「自分を撮ってもらうのは、アイドルの時ってことで。いつもは、綺麗な景色とか、楽しそうな笑顔とか……ってことでこれっ、加蓮ちゃんにプレゼントしちゃいます!」ズイ

加蓮「…………」ウケトリ

藍子「いっぱい使ってあげてくださいっ」

加蓮「…………」マジマジ

加蓮「……や、まず私、そんなに写真を撮らないし……藍子みたいにアルバムをたくさん持ってる訳じゃないし」

藍子「じゃあ、これを機会にっ」

加蓮「うーん……」

藍子「加蓮ちゃんは――」ウーン

加蓮「……?」

藍子「あ、いえっ。なんでもないです、なんでもないんですっ」

加蓮「いやそれ何かあるって言ってるようなモンじゃん……よし、じゃあ今、藍子ちゃんが企んだことを言い当ててみせよう」

藍子「企んではないです~~~っ」

加蓮「ふふっ。さて、と……」スワリナオス

加蓮「藍子はカメラの話から自撮り棒の話になって、私にプレゼントって言った。で、私はそんなに写真を撮らないって言った。その直後に言い詰まったよね?」

藍子「なんだか、探偵さんみたい……」

加蓮「うーん」ジー

藍子「……あ、あんまり見られると照れちゃいます、よ?」

加蓮「今日の藍子はガンガン来るからなぁ。それで言い淀むってことは……テンションが上がりすぎてつい行き過ぎてしまった、言っちゃいけないことを言いそうになった、ってところかな?」

加蓮「ってことは何か私の地雷でも踏みつけようとしたか、それか踏んでしまって気付いたから退いたか」

藍子「あ、あはは」メソラシ

加蓮「うん、目を逸らした。言っちゃいけないことかぁ……写真、自撮り……いや、うーん……」

加蓮「ねえ藍子。それは"アルバム"に関係してる?」

藍子「…………」メソラシ

加蓮「分かりやすっ。そんなんじゃアドリブとかに困るよ?」

藍子「台本通りでトラブルがないのが一番です……」

加蓮「よし、帰ったらPさんに相談してみよっと。藍子のやってるラジオにゲストで出られないかって」

藍子「何をするつもりですか!?」

加蓮「まずは偽者の台本を丹精込めて作り上げます」

藍子「もっと別のことに全力になってください!」

加蓮「……ととっ、話が逸れてる。もー、藍子と話すと5分どころか1分で脱線しちゃうよ」

加蓮「すみませーん。んー、抹茶ラテ1つ。藍子は何か飲む?」

藍子「それなら……レモンティーでっ。あっ、暖かいレモンティーでお願いします」

加蓮「お願いね。……え、今日ってけっこう暖かくない?」

藍子「身体をちょっと暖めたくなっちゃって。か、加蓮ちゃんにさっきじーって見られちゃったからかも」

加蓮「あ、そうだった。藍子の企みを見抜かないといけないのに」

藍子「まだやるんですか!?」

加蓮「んー……いや、いいや。メンタリズムごっこはやーめた。やっぱり私には向いてないみたい」

藍子「ふうっ……。なんだか、見られるだけでぜんぶ見透かされちゃうって感じで……カッコ良かったけど、ちょっと怖かったです」

藍子「きっと、加蓮ちゃんには向いていますよ……あ、でも、あんまりやらないでくださいね?」

加蓮「怖がらせちゃったかー。じゃあお詫びに……」

加蓮「この自撮り棒をあげよう」

藍子「それ私がさっきプレゼントしたやつです」

加蓮「せっかくお下がりをくれるなら、もっとこう……藍子っぽいのが欲しいなぁ」

藍子「おさがりってことは、服とか?」

加蓮「帽子にスカート、あとは靴……靴って言えば、前にまた履きつぶしちゃったって言ってたけど、あれ結局どうなったの?」

藍子「雑貨屋さんに行ったついでに、靴屋さんにも行きました。でも、可愛くて履きやすそうなのがなくて……これだ! っていうのがあったら、よかったんですけれど」

加蓮「じゃ今度、一緒に探しにいこっか」

藍子「はいっ♪ 今度、一緒に行きましょう!」

加蓮「そのついでに藍子の夏服でも見に行こっかなぁ」

藍子「私の分より、加蓮ちゃんの分を……」

加蓮「……私の分を買いに行くと言って実は藍子へのプレゼントでした~ってアレを」

藍子「あの、そういうサプライズって、私が聞いちゃったら意味がないんじゃ……」

加蓮「嘘をつくのは嫌いだから」キリッ

藍子「……そういう問題なのかな?」




加蓮「店員さん、抹茶ラテありがと~♪」

藍子「レモンティーも、ありがとうございます」

加蓮「ずず……」

藍子「ごくごく……」

加蓮「…………」

藍子「…………」ソロォ

加蓮「加蓮ちゃんの写真は1日1枚までとなっております」

藍子「ぎくっ」

加蓮「またのご来店をー」

藍子「そこをなんとかっ」

加蓮「ここからは追加料金だよ」

藍子「……今日のカフェ代は私が出します!」

加蓮「おお、躊躇いなくいったね。しょうがないなー、そこまで言うなら、加蓮ちゃんを撮る権利を差し上げよう」

藍子「はいっ」スマフォカマエ

加蓮「にこっ」

藍子「ぱしゃっ。ふふっ、さっきとは違う顔……」ポチポチ

藍子「どっちも加蓮ちゃんなんですよね。なんだか、不思議な感じです」

加蓮「そんなに違いある?」ドレドレ

藍子「ほらっ、さっきの加蓮ちゃんがこっちで、今の加蓮ちゃんが、こっち」

加蓮「……私には藍子の言う"違い"が分からない……!」

藍子「加蓮ちゃんはまだまだ写真初心者ですね!」ドヤッ

加蓮「…………」

藍子「…………」ド,ドヤッ

加蓮「…………」

藍子「……ご、ごめんなさい」

加蓮「あはは、5秒ももたない」

藍子「加蓮ちゃんはよく、自信を持っていい、って言ってくれますけれど……私には、やっぱり難しいです……」

藍子「あと、加蓮ちゃんのプレッシャーが……あはは…………」メソラシ

加蓮「私? 別に、ぼーっと見てただけだよ?」

藍子「それでも加蓮ちゃんは、なんだか……存在感が、大きいんです」

藍子「お話していなくても、何もしていなくても、ちゃんとそこにいるって感じで」

加蓮「……そういえばさー、怖がられたんだよね。新人に」

藍子「へ?」

加蓮「前にトーク番組に出た時にさ。打ち合わせの時とか待機してる時とか、なんか怖がられたっていうか、遠ざけられたっていうか……新人のアイドルが来てたんだけど、ほとんど話しかけられなくて」

藍子「ふんふん」

加蓮「そういう子なのかな? って思ったら、他の人とは普通に喋ってるし。別にいいんだけどね。その時にもPさんが、」

加蓮「『それだけ威厳のあるアイドルってことだな!』」ヒクイコエ

加蓮「って、冗談っぽく言ってたし」

藍子「ふふっ。加蓮ちゃんのものまね、なんだかそれっぽいですっ」

加蓮「えー? 気にするところそこー?」

藍子「ううん。それもきっと、同じことなんですよ。加蓮ちゃんは、格好いいアイドルなんです」

加蓮「むー……」ジー

加蓮「……藍子め」

藍子「私?」

加蓮「八方美人め」

藍子「……けなされちゃってます?」

加蓮「貶しちゃってます」

藍子「えー」

加蓮「存在感のあるアイドルと、誰にでも好かれるアイドル。どっちがいいのかな?」

藍子「優劣をつけなくても……加蓮ちゃんは加蓮ちゃんでいいじゃないですか」

加蓮「よくなーい」

藍子「それなら、存在感があって、誰にでも好かれるアイドルっていうのはどうですか?」

加蓮「取捨選択が苦手だってよく言われるでしょ」

藍子「それ、1時間くらい前に聞きました」

加蓮「要らない物はぽいぽい捨てなきゃ。迷走系アイドルはあんまりなりたくないなぁ。ほら、バラエティとかでよくいるじゃん。アホっぽい演技してるアイドルとか。ああいうのはちょっとなりたくないよ」

藍子「……うーん」

加蓮「ん?」

藍子「加蓮ちゃんって……」

藍子「あの……どうやったらこう、胸を張って自信を持つことができるんでしょうか?」

加蓮「だから私は普通にしてるだけだよ。まっ、あれじゃない? 目標というか……信念? あ、駄目だ信念って言うと急にガチっぽくなる」

藍子「真面目な加蓮ちゃんのお話が聞きたいです。さっきのお返しっ」

加蓮「ふふふー、それならばもっと有り難みを持ちなさい」

藍子「きゃー加蓮さまー」

加蓮「あ、これちょっと楽し……ごほんっ。有り難みを持って、今日のカフェ代を奢るのだー」

藍子「もしかして、お財布がピンチなんですか?」

加蓮「夏物を揃えるのも大変なんだよねー」

藍子「タンスの中、すごいことになっていましたよね」

加蓮「藍子ー、シャツとかあるけどいる? いい感じに汗を吸うから運動に向いてるんだ。ランニングの時とかにどう?」

藍子「それなら……是非っ」

加蓮「よーし。藍子の家のタンスをギチギチにしちゃる。藍子の家でもファッションショーごっこができるようにしちゃる」

藍子「…………あはは」

加蓮「ん? 今なんか目を逸らした?」

藍子「き、気のせいですよ、気のせい」

加蓮「そっかそっか、そんなに名探偵加蓮ちゃんが見たいんだね。それならそうと早く言ってくれればいいのに」

藍子「そんなんじゃないですっ。あ、あんな風にじーって見られたら、その――」

加蓮「名探偵ならぬ眼探偵。じっと見つめるだけで犯人にゲロらせる」

藍子「実は……私がやっちゃったんです! ごめんなさい!」

加蓮「そっか、まさか藍子がね……。ねえ、どうしてこんなことをしちゃったの?」

藍子「私、実は昔から、ずっと……今まで、ずっと我慢していたのに、あの時……あの時っ、加蓮ちゃんに唆されちゃって――!」

加蓮「……さくっと私を悪者にしやがったな?」

藍子「えへっ」

加蓮「アドリブ得意じゃん」

藍子「加蓮ちゃんに鍛えられましたから」

加蓮「じゃあもっと鍛えるべくこれからももっと藍子にビックリドッキリを」

藍子「加蓮ちゃんに鍛えられちゃいましたから」

加蓮「不本意ながら」

藍子「でも、こうして知らないことを知っていくのって楽しいですよね。アイドルになって、新しい世界が次々に現れて……加蓮ちゃんは、そういうのってありませんか?」

加蓮「そだね。カフェの単品メニュー1つに1時間半もかける女の子がいるなんて初めて知ったよ」

藍子「……お財布がピンチだからって……えーと、いろいろな手を使って、おごってもらおうとする女の子がいるなんて初めて知りました」

加蓮「お、初めて同士だ」

藍子「ですねっ」

藍子「……皮肉がぜんぜん通じない……」

加蓮「さっき言いかけたけど私は普通にしてるだけだよ? 普通にしながら見せたくないところを隠してるだけ。皮肉なら皮肉を言うんだって開き直ってやらないと意味がないの」

加蓮「そうだ、ちょっと練習してみよっか。ダメ出ししてあげるから、ほら、さんはいっ」

藍子「え? え? え、えっと、ええと…………」ジー

加蓮「ほらほらっ」

藍子「……か、加蓮ちゃんの――」

加蓮「加蓮ちゃんの?」

藍子「…………ばかー」

加蓮「それじゃただの悪口だって」

藍子「ば、ばかー!」

加蓮「気合を入れて頑張れば大丈夫みたいな顔されても……。根本的に違うからね? それ」

藍子「…………」

加蓮「…………」

藍子「…………ば、ばかぁ」

加蓮「……その顔、Pさんにでも見せてあげればいいよ。何か欲しい物を買ってもらえるだろうから」

藍子「え?」

加蓮「なんでもない」




藍子「うーん……加蓮ちゃんは、何が食べたいですか?」

加蓮「晩ご飯かー。今日、お母さんが帰るの遅くなるって言ってたんだ。コンビニでテキトーに済ませるか、いっそ事務所にでも行こっかなーって思ってて」

藍子「事務所にいろいろ置いていますよね。食べる物。1週間くらいなら、生活もできちゃいそう」

加蓮「際限なく増えていくからずっとでも生活できるよ。クビにならない限り」

藍子「加蓮ちゃんをクビにしちゃう事務所なんて、きっとすぐに倒産しちゃいますね」

加蓮「さらっと凄いことを言う」

藍子「ご飯を食べ続ける為にアイドルを頑張る、っていうのも、面白いかもしれませんね」

加蓮「っていうかリアル家出組とかはそうでしょ……いや女子寮があるか」

藍子「食堂に新メニューがいっぱい増えたって、とっても楽しみなんですっ」

加蓮「今から行っちゃう?」

藍子「ううん。今日は、加蓮ちゃんとここで晩ご飯っ」

加蓮「はーい。何にしよっかなー……藍子は何が食べたい?」

藍子「それ、私がさっき加蓮ちゃんに聞いたことですよ~」

加蓮「あ。……いやいや、こういうのって藍子が譲ってばっかりなんだし、たまには藍子が主張してよ。これが食べたい! だから一緒に注文しよう! ってさ」

藍子「私ですか? じゃあ、ちょっとメニューを貸してください」パラ

藍子「うーん……どれがいいかなぁ」パラパラチラッ

加蓮「…………♪」ワクワク

藍子「ふむふむ……」チラッパラパラ

加蓮「こっちはスイーツのメニューかな。お、6月限定のが出てる。えっと、『紫陽花傘のお団子』――」

藍子「ううん……」チラッパラパラ

加蓮「紫陽花傘? ……紫陽花傘? あ、写真がついてる。なるほどー、紫陽花色を傘っぽく……へー、可愛いー」

藍子「こっちかな、それともこっちかあ……」パラパラチラッ

加蓮「ねえ藍子、これ――、……ねえ、藍子」

藍子「は、はいっ」

加蓮「アンタ、"加蓮ちゃんが食べたがってる物ってなんだろ?"って感じでメニュー選んでたでしょ」

藍子「あうっ……うう~っ。いつになったら探偵モードは終わってくれるんですかぁ……」

加蓮「いや友達ってだけで分かるから。別に探偵いらないから」

藍子「友だち……」

加蓮「藍子。主張してって言ったでしょ? 藍子の食べたい物が食べたいの、私は。私が食べたい物を探すんじゃなくて、藍子が食べたい物を探してよ」

藍子「はいっ。……でも、ちょっと意外です。加蓮ちゃん、そういうの嫌がりそうなのに」

加蓮「そういうの?」

藍子「ほら、私の食べたい物を……って」

加蓮「私だってそーいう気分の時はあります。それとも何? 協調性皆無で自分勝手な暴走機関車な加蓮ちゃんが周囲に合わせてるなんて気持ち悪いっ、とでも言いたいの?」

藍子「そんなこと思ってませんっ。……よく一瞬でそこまで思いつきますね」

加蓮「慣れてる」

藍子「……加蓮ちゃん、ちょっと顔を出して」

加蓮「そう言って右手をほっぺた抓る形にしないでよ!? ……こっち来ようとすんなっ」

藍子「加蓮ちゃん」

加蓮「そ、それより藍子、こっちのメニュー見てよっ今月の限定スイー」

藍子「分かりました。じゃあ、加蓮ちゃん。今、加蓮ちゃんが自分を貶したのと同じ数だけ……3つ、かな? 同じ数だけ、自分を褒めてみてください」

加蓮「ツ……へ?」

藍子「はいっ、どうぞ!」

加蓮「…………」

藍子「…………」ニコニコ

加蓮「……藍子は笑顔が怖い時があるのと変に強引な時があるのとその癖に変なところで相手に譲る悪い癖があ――」

藍子「…………」ブチッ

加蓮「あっちょっなんか今切れた音がしたっ何今の音ちょっと待っ」

藍子「……」

藍子「…………」

藍子「……………………」

加蓮「っ」ビクッ

藍子「……ばかー」

加蓮「え?」

藍子「だって、思いつかなくて……」

加蓮「あ、あぁそうなんだ。そうなんだ……助かった」

藍子「…………」ジトー

加蓮「……ごめん」

藍子「はい」

加蓮「…………そういうのは、藍子がやってくれればいいじゃん」

藍子「私がですか?」

加蓮「うん。藍子が飴で私が鞭。藍子が優しくて私が厳しい。あとは……藍子が盾で私が矛?」

加蓮「得意不得意ってあると思うし……それじゃだめ?」

藍子「……はーい。今は、そうしましょうか。でも加蓮ちゃん。ずっとそのままじゃ、駄目なんですから」

加蓮「はーい」

加蓮「そんな訳で今日の晩ご飯も藍子に任せちゃう」

藍子「もー、加蓮ちゃんはしょうがないですねっ♪」

藍子「本当に、ややこしくて、ひねくれてて、負けず嫌いなのにたまに諦めちゃってて」

藍子「でも、それが加蓮ちゃんですよね。そういうところがあっても、加蓮ちゃんは加蓮ちゃん」

藍子「私が知っている、加蓮ちゃんですっ」

加蓮「うん、そうだね。……これ褒められてるの? 貶されてるの?」

藍子「お返しっ。今日は何を食べよっかなー♪」パラパラ

加蓮「……あははっ」




加蓮「……頑張って結果を出してる所、夢を叶えた事、あとは……鞭に"なれる"事」ボソッ

藍子「え?」

加蓮「…………」

藍子「…………」

加蓮「…………もう自画自賛なんてやんないからね。気持ち悪い」

藍子「……………………なんだ、やっぱり加蓮ちゃんなんですね。できないままには、やっぱりしないんですね」

加蓮「それよりメニュー手にとってどんだけ経過してんのよ。食べるのに1時間半なら選ぶのに2時間? 相変わらずのろまだね、藍子は」

藍子「ご、ごめんなさいっ。じゃあ、この定食にしましょう!」

加蓮「うん、そうしよっか」

<すみませーん
<野菜定食、2人分でっ



おしまい。
読んでいただき、ありがとうございました。

前回に引き続き投下が大幅に遅れてしまって申し訳ない……。

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