ある日の保健室のできごと (65)

設定適当オリジナルです
試験的なもの

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保健教師「ほーい、窓開けんぞ」スパー

男子生徒「何やってんすか。寒いんすけど」

保健教師「あ、何?起きてたの?」

男子生徒「ええ。今の冷気で」

保健教師「それはおはよう。もう昼休み終わるぞ」スパー

男子生徒「そんなですか。てか煙草吸うのやめません?」

保健教師「いいだろ。さっきやっと職員会議終わったんだから」

男子生徒「良くないですよ。ただでさえ保健教師なのに……」

保健教師「個人の趣味は許せよ。男は懐でかくないとダメだぞ」スパー

男子生徒「ダメです。他の生徒来たらどうするんですか」

保健教師「大丈夫」

男子生徒「何が?」

保健教師「他の生徒も知ってる」

男子生徒「全くダメダメじゃないですか」

保健教師「さっきそれで校長から叱られたわ」スパー

男子生徒「ダメこのヤニカス……」

保健教師「まぁ、どうせ公立校の教師なんざ数年でいろんな所飛ばされんだから大丈夫だろ」

男子生徒「……」

コン…コン
保健教師「あー、ちょっと待ってな」グリグリ

男子生徒「ほら罰が当たった」

保健教師「うるさい。お前は課題でもやっとけ」バサッ

男子生徒「ハイハイ」

保健教師「んでー、どなたー入っていいよ」

女子生徒「……」

保健教師「ああ、アンタか。ほれ、どこだ痛むの」

女子生徒「すいません。湿布だけで良いので」

保健教師「……良くない。こりゃ酷い突き指だ、内出血も起こしてる。固定しないとダメだ」

女子生徒「そこまで痛く--」

保健教師「本当か?」

女子生徒「……痛いです。お願いします」

保健教師「最初からそう言え」

女子生徒「すいません」

保健教師「謝るのはお前じゃないだろ。言うな」

女子生徒「はい」

保健教師「……ほい。このまま動かないようにな。利き手じゃないからって注意を怠るなよ。本当なら病院送りだ」

女子生徒「ありがとうございます」

保健教師「ほいよ。あぁ、そうそう」

女子生徒「はい?」

保健教師「やるよ。煙草の事言うなよ」

女子生徒「……ふふ、ありがとうございます。それじゃあ」ガラガラ

保健教師「……ったく、面倒臭い奴だなメスガキ共は」

男子生徒「先生もそんな過去があったのに何を」

保健教師「お前起きてたのかよ」

男子生徒「先生の言う通り課題やりましたよ」

保健教師「ほんと、お前頭だけは良いのな」

男子生徒「じゃなきゃ入院してますよ」

保健教師「入院してろ。こちらと毎日居られると困る」

男子生徒「毎日じゃないですよ。それに俺いなかったらここの煙草臭さはもっと酷くなりますよ」

保健教師「ははっ、そりゃそうだろ」

男子生徒「笑い話じゃないですよ、それ」

保健教師「……アイツのこと知ってんのか?」

男子生徒「ええ」

保健教師「そうか。何時からか知ってるか?」

男子生徒「多分2年に上がるくらいですかね」

保健教師「……そうか。ふーん」

男子生徒「興味無さそうっすね」

保健教師「そらガキに興味はねーよ。お前らの担任みたいにな」

男子生徒「あの人は……まぁ悪く言えばお節介ですよ」

保健教師「良く言えば?」

男子生徒「偽善者」

保健教師「バサッと言うねぇ」

男子生徒「まぁ、その通りなはずなんで」

保健教師「そんくらい悪口言えれば今日は平気だろ。教室戻れ」

男子生徒「はい」

保健教師「……何やってんだよ、早く行け」

男子生徒「永久に右手をポケットから出さない限り行きませんよ」

保健教師「おっけーおっけー。んじゃな」

男子生徒「左手で押さないでくださいよ。どうせ吸う気でしょうに」

保健教師「だから押し出してんだよ!早く行け!ヤニが切れる!」

男子生徒「はぁ、全く。不健康の保健教師なんて笑えませんよ」

保健教師「良いんだよ。そんくらい笑って済ませろ」

男子生徒「……大人ってずるいですね」

保健教師「……ずるい奴が大人になるんだよ。逆だ」

男子生徒「そうですか」

保健教師「そうだよ……マジで早く行け。煙吹き付けるぞ」

男子生徒「わかりましたよ……」

教室

担任「ですから、ここの方程式は……」

男子生徒「……」ガラッ

生徒達「……」

担任「あら、〇〇君。もう大丈夫? 今ね64ページのやり方をね--」

男子生徒「終わりました。課題も」

担任「あ、あらそう。す、凄いわね!優秀優秀」

男子生徒「……気にしないで次やって下さい」

担任「あ、そうね。それでは皆さん。いいですか--」

男子生徒「……」チラッ

生徒「……死ね」ボソッ

男子生徒「……」

またいつかの日

保健教師「起きろー。もう放課後だぞ」スパー

男子生徒「……くさっ」

保健教師「当然だろ。煙草吸ってんのに臭くねえ奴は人間じゃねぇ」

男子生徒「……だったら窓開けて下さい」

保健教師「わぁってるよ、ちとまて」スパー

男子生徒「時に、放課後ってマジですか?」

保健教師「本当だよ。お前何しに来たんだよほんと」

男子生徒「……学業?」

保健教師「朝死にそうな顔で来たと思ったらそのままベッドに潜り込みやがって、挙げ句の果てには一回も目覚めず6時間目終了」スパー

男子生徒「」

保健教師「さらには心配して置いておいた水でさえ枕元に溢す始末。お前、明日から出禁な」

男子生徒「えっ、そんなことしたんですか?」

保健教師「ほれ」ユビサシー

男子生徒「……本当だ」ビショー

保健教師「どうしてくれんだよ。リネン出すの面倒なんだぞ」

男子生徒「地下のリネン室に持ってくだけじゃないですか」

保健教師「自分のせいなら分かるが他人のしたことは他人が始末しやがれガキ」

男子生徒「なんでそんなイラついてんですか」

保健教師「うるせぇ!……早くシーツ取って来い。じゃねーと出禁。マジで」

男子生徒「あーもう、わかりましたよ。鍵下さい」ガラガラ

保健教師「ほれっ」

男子生徒「だぁー!寝起きなんですから鍵を外にぶん投げないでください!」

保健教師「はっはっは!……んで、お前は何をやってんだ」スパー

女子生徒「ごめんなさい。彼に水持ってこうかなって思ったんですけど……」

保健教師「あいつが起きそうになった途端慌てて自分のベッドに戻ろうとして、コップを落とすと」

女子生徒「その、わざとじゃ……」

保健教師「んなことわかってるよ。しかし、また何であんなやつに水なんか」スパー

女子生徒「その、魘されてたので、ちょっと心配になって」

保健教師「魘されてた? あのガキは他人に迷惑かけてでも保健室登校したいのか。今度しばいておく」

女子生徒「いえ、その、気にしてませんから大丈夫です」

保健教師「本当か?」スパー

女子生徒「本当です」

保健教師「……そうか。で、そういうオマエさんも貧血治ったか?」

女子生徒「あ、はい。お陰様でもう平気です。ありがとうございました」

保健教師「お礼は空いてたベッドによろしく」スパー

女子生徒「は、はぁ」

保健教師「んじゃ、私は会議行ってくるから帰るんなら忘れもんするなよ」

女子生徒「はい。ありがとうございます」

保健教師「はいよ」ガラガラ

少しして

男子生徒「なんか『勝手に持ってくな!』みたいな張り紙あったけど、いいのかなぁ……」ガラガラ

女子生徒「あ」

男子生徒「あれ? ××さん? いたんだ。先生は?」

女子生徒「えーと、その、会議があるからって……」

男子生徒「そうなんだ。あの人酷いなぁ、これから濡れてる方を、持ってかなきゃいけないのか……」

女子生徒「……手伝うよ」

男子生徒「え、でも僕がやらかした事だし。大丈夫だよ。××さん帰るとこでしょ?」

女子生徒「ううん。まだ教室に忘れ物あるから、その、ついで」

男子生徒「いいよ。一人で行けるし」

女子生徒「でも、シーツだけじゃなくてマットも染みちゃってるよ?」

男子生徒「え、本当に?……うわ本当だ……」

女子生徒「ね……」

男子生徒「……じゃあ、ごめん。シーツお願いしても良いかな? 僕がマットレス持っていくから」

女子生徒「うん。いいよ。……ごめんね」

男子生徒「何言ってんのさ。謝るのは僕の方だよ。ありがとう」

女子生徒「じゃあ、どういたしまして」フフツ

男子生徒「じゃあ、行きますかー」

女子生徒「うん」

またいつのかの日
陽射しが暗い1階の保健室の前

男子生徒「先生」

保健教師「帰れ」

男子生徒「え?」

保健教師「今日はあと5限だけだろ帰れ」

男子生徒「いや、あの、その……でも許可書担任の先生に出さないと」

保健教師「ほれ。書いてある。帰れ」ペラー

男子生徒「そんな保健室の前に仁王立ちしてまで……出禁ですか?」

保健教師「そんだけ口が聞けりゃ充分に元気だ。帰れ。早く」

男子生徒「……はい。わかりました」

保健教師「……代わりに担任に出しといてやるからそのまま帰っていいぞ」

男子生徒「……わかりました。ありがとうございます」

保健教師「礼ならecohカートンで」

男子生徒「買えませんよ……未成年なんですから」

保健教師「そりゃそうだろ、お前なんざガキだ。クソガキだ。他の奴らも全員クソガキだ。ったく、うざってえ」

男子生徒「クソガキなのは僕だけですよ。みんなはーー」

保健教師「じゃあ働け。それで解決。お前は他の奴より偉くなれる。クソガキがクソになれる」

男子生徒「クソには変わらないでんすね」

保健教師「責任持てる立場にいるだけガキよりマシだよ」

男子生徒「そんなもんですか……」

保健教師「そんなもんだよ」

男子生徒「……じゃあ、さようなら」

保健教師「早く帰れガキ」

男子生徒「……はい」

保健教師「あー、うざってえなあいつ。やっと帰りやがった」ガラガラ

女子生徒「私もクソガキですか?」

保健教師「お前も面倒だな。お前は……何にも言えねー」

女子生徒「そうですか。クソにもなれませんか」フフツ

保健教師「……やっと落ち着いたか。また変な薬貰ってきたんじゃねーだろな」

女子生徒「そんな事ないですよ。ふつーの精神安定剤ですって。先生言ってましたよ」

保健教師「……見せてみろ」

女子生徒「これです」

(酉間違えましたがスルーで)

……

保健教師「……お前、あそこの病院やめろ。早く紹介したとこ行け」

女子生徒「でも、ちゃんと落ち着いてますよ?」

保健教師「鞄も持たずに登校してきたかと思ったら、いきなり泣きくずれる奴のどこがちゃんとしてんだよ」

女子生徒「あの時はまだお薬飲んでなかったんで」

保健教師「あれは確かに効くけど依存性あるからダメだ。これ出す精神科医なんてゴミクズしかいねーよ」

女子生徒「なんで先生はそんなに詳しいんですか? ピルとか生理痛の薬とか、全部先生の言った通りに効きますよ?」

保健教師「そりゃ、保健教師だからだろうな」

女子生徒「ほんとですか?」

保健教師「……ほんとだよ」スッ

女子生徒「窓開けますね」

保健教師「おー、さんきゅー。……っはー、やっぱりお前はできる奴だな」

女子生徒「ありがとうございます」

保健教師「その媚びた声音さえ無ければな」

女子生徒「言われちゃいました」

保健教師「……いい加減やめとけよ、あんな仕事。いや仕事じゃねーか」スパー

女子生徒「そうですよ。ボランティアですよ。楽ですよ?」

保健教師「身体壊しながらか? 精神壊しながらか? それが本当にボランティアだと思ってんならお前狂ってるよ」

女子生徒「まぁ、親が親ですから、間違ってないです」

保健教師「……クソッタレだな」

女子生徒「ええ、クソッタレですよ」

保健教師「言ってくれりゃ、ぶん殴りに行くぞ?」スパー

女子生徒「それはちゃんとした母親がいれば既に終わってます」

保健教師「そりゃそうか。……クソが」グリグリ

女子生徒「はい。あ、タバコ下さい」

保健教師「あげるわけねーだろ。ここどこだと思ってんだよ。お前の店じゃねーんだぞ」トントン

女子生徒「違いますよ。はい、こっち向いてください」

保健教師「ふぁんふぁお(なんだよ)」

女子生徒「……はい」カチッ

保健教師「……っはー、さんきゅー。って、だからお前の店じゃねーっての」

女子生徒「でも、今の近寄り方ドキドキしませんでした?」

保健教師「しねーよ。私は女だ」スパー

女子生徒「カッコイイのにー」

保健教師「口が悪いだけだろ。乗せらんねーぞお前にゃ」

女子生徒「そんなことないですよ。ハードボイルドってやつですかね?」

保健教師「……お前、素はやっぱりバカだな」

女子生徒「酷い。先生に酷いこと言われました。これは学校辞めますよ。飛び降りますよ」

保健教師「おー、やれやれー。窓はとっくに開いてるぞー」スパー

女子生徒「一階ですけどね、ここ」

保健教師「まじかー。つまんねー」

女子生徒「……ありがとうございました。今日は、もう帰りますね」

保健教師「……知ってると思うけど、お前あと4日で留年だぞ」

女子生徒「逆に言えば3日と2回は遅刻しても良いんですよね」

保健教師「ちげーよ。夜はちゃんと寝て、毎日来いって言ってんだよ」スパー

女子生徒「それは、難しいですかねー」

保健教師「……ったくよ、お前の推薦誰が認めさせたと思ってるんだよ」

女子生徒「欠席見なきゃ成績は充分だと思いますよ」

保健教師「あほかよ。お前の担任すらせめて他のやつにって言ってたんだぞ?」

女子生徒「あの人は来年からいじめられそーですね」

保健教師「……そうなりゃあいつ辞めんだろな。アタシみたいに教頭どついときゃなんとかなるけどよ」

女子生徒「……別に良いんじゃないですか? 私には殆ど関係ない人ですから」

保健教師「まあ、アタシにもカンケーないけどな」

女子生徒「それよりも彼の進学先先生知りませんか?」

保健教師「あ? あー、あいつか。知らね。どーでもいいわ」

女子生徒「でも化学と生物教えてましたよね。公立ですか?」

保健教師「だから知らねーって。てかお前やっぱりここに来ても寝てねーだろ」

女子生徒「そんな事ないですよ? 彼が来てないときはそれはもう爆睡ってレベルじゃないですよ?」

保健教師「本当かよ。それより窓閉めてくれ。さみい」

女子生徒「はーい。……それで? どこなんですか?」

保健教師「……言わねえ。私は生徒の秘密は守るいい教師だからな」

女子生徒「もー、なんで言ってくれないんですか。意地悪ですよ、本当に」

保健教師「いいか、はっきり言うが、お前がどうこうとか知らない。奴の行くとこ知りたきゃお前さん自身が聞け。面倒なんだよ」

女子生徒「……わかりました。しつこく聞いてごめんなさい。帰りますね」

保健教師「いいよ。まぁ、とりあえず出席はしてた事にしといてやるよ。あいつど突くけば言う事聞くし」

女子生徒「いじめよくないです」

保健教師「お前のクラス全員に言ってから私に意見しろ」

女子生徒「……」

保健教師「……ったく、なんでこんなに羊の丸焼きばっかりなんだろうな。世の中は」

女子生徒「……じゃあ、帰ります。さようなら」ガラガラ

保健教師「おー。じゃーな」

男子生徒「……そりゃ、ロビンソンクルーソーがお金持ちではお金が意味を成さないように、その意味を作るために生贄をつくるんですよ。豚かどうかはわかんないですけど」

保健教師「……現代はシャイロックが正義なんだよ。帰れって言っただろクソガキ」

男子生徒「今じゃ顔真っ赤にみんな否定して無視して生きてますけど、本当は彼ららの為に必要を担う事は難しいんですよ」

保健教師「……」

男子生徒「ガラス瓶の如く割れやすくって、でもそいつが汚いが為に、綺麗だから、そいつを割っては作り直して壊しては焼き直して処理していくんですよ」

保健教師「時代はポストストラクチャリズムだぞ」

男子生徒「そんなことは欧州の一部が話しあっとけば良いんですよ。黄色い猿なんてまだまだ村社会から抜け出せないんですから」

保健教師「お前は色々感化されすぎだ。そんな手前味噌なお勉強知識を持ったまま成人するとちっせぇ可哀想な人間になる」

男子生徒「じゃあ、どうしろと? 僕だって彼女だってどうにかして生贄から抜けようとして、替わりを見つけようとするほど切羽詰っているのに、思想に耽ることも許されないんですか?」

保健教師「だめだよ。そんなの許されねぇ」

男子生徒「……先生は、なんとなく分かってくれてる人だと思ってたんですけどね。やっぱり大人はずるいですね」

保健教師「あんなぁ、ちげーんだよ。お前が学びたいことなんて大学いきゃ幾らでもできる。はっきり言えば知識つけるんだけなら大学行かなくたって自分でできる」

男子生徒「勉強も否定ですか?なんなんですか?そうやって子供を虐めて何が楽しいんですか?訳がわからないですよ。いい加減にして下さいよ!なんで、なんで僕だけみんなと同じように楽しい世界にいちゃいけないんですか!?ふざけんなよ!」

保健教師「……それだけか?」

男子生徒「それだけか?だって?なに上から目線で喋ってんだよ!お前だってどうせグレて結局まともなとこにも取ってもらないで泣きで公務員試験通ったくせにふざけやがって!見下してんのもいい加減にしろよ!」

保健教師「……で? つまり、何が言いたいんだ? アタシへの当てつけで満足か?」

男子生徒「ーークソがぁ!死んでしまえよ全員!俺を認めろよ死んで詫びろよゴミ野郎!」

保健教師「威勢のいいこった。とりあえず涙拭けよ。男の子がしちゃいけない顔になってんぞ」ポイッ

男子生徒「……ありがとう、ございます」

保健教師「終わりか。じゃあ窓開けんぞ」

男子生徒「……先生はやっぱり他の大人と同じなんですか?」

保健教師「そりゃ、どの点で同じか、を教えてくれなきゃ答えられないな」シュボッ

男子生徒「それは……先生も見て見ぬ振りで済ます人なのかってとこですかね」

保健教師「そうだな、答えはちょっと違うがアタシはお前を助けられる人間じゃねーって点は同じかね」スパー

男子生徒「ケホッケホッ……ちょっと、外に向かって吐いて下さいよ」

保健教師「おお、すまんすまん。なんだ、お前、助けて欲しいのか?」

男子生徒「……いや、多分違うと思います」

保健教師「他の奴らを黙らす方法なら教えられるけどよ」スパー

男子生徒「……多分それも違うと思います」

保健教師「じゃあ、何がお望みだ? こんなヤニカスで良ければ可能なことだけは叶えてやる手引きくらいはチラ見させてやるよ」

男子生徒「……大人になる方法を教えて下さい」

保健教師「……ぷっ、だははははは!!!アホだこいつ!やーいバーカ!バカがいるぜおいおい!」スパー

男子生徒「言う相手が間違ってました。二度と聞きません」

保健教師「そりゃそうだ。お前、聞く相手間違えすぎだよ。それこそ大人になりたいんだったら担任の奴に聞いてみろ。ちゃーんと大人とはなんぞやから子供から大人への成長過程が知識として塗りこませてくれるぞ」

男子生徒「そんなのエミールの復唱で理解なんて可能じゃないですか」

保健教師「それが現代日本に通用するかは知らんがな」スパー

男子生徒「分かって言ってますよね?」

保健教師「いんや。エミールってなんだかすら知らん。覚えてねーよんな古典の文章なんてよ」

男子生徒「分かってるじゃないですか。次は何を読めばいいですか?」

保健教師「橋爪も今村もどうせ読んでんだろうから、ここはどうだ? あんな堅っ苦しい文章より、文学の世界に飛んでみるのはどうよ」

男子生徒「ヘッセや有島やモームとかは読みましたよ」

保健教師「んな死にそうな顔してる文学読んでどうすんだよ。もっとこう、頭の転換が楽しい……アシモフとかマープルとかどうよ。なんなら貸してやるぞ」

男子生徒「……? それって推理小説ですか? 先生が推理小説読むなんて意外ですね」

保健教師「あ? お前人の趣味にケチつける気か?」

男子生徒「そんな事ないですよ。ちょっと、なんかかわいいなって思って」

保健教師「……」カチッ

男子生徒「……?」

保健教師「スー…っと」フーッ

男子生徒「うわぁ!な、ケホッなに、ケホッゲホッ、何すんですかタバコ臭い!」

保健教師「色気づいてんじゃねーぞクソガキ」スパー

男子生徒「そんなことしてないですよ……」

保健教師「ほれ、もういいだろう。もう他の奴らも帰ったし、平和に帰れんぞ」

男子生徒「あ、いつの間にか5限も終わってる……」

保健教師「だからお前らは何しに学校来てんだよ……全く」スパー

男子生徒「ら?」

保健教師「なんでもねーよ。あと、お前はあと5日しかないからな留年まで」

男子生徒「えっ、僕ほぼ毎日来てるはずなんですけど……」

保健教師「お前どんだけ遅刻と早退してるか分かってねーのかよ。もういっそ退学しろ退学」スパー

男子生徒「そりゃ、無理ですね。親はどうしても大学行かせたいみたいですし」

保健教師「お前は?」

男子生徒「どういう意味ですか?」

保健教師「お前は大学行きたくねーのかって聞いてんだ」

男子生徒「どうでしょうね。あんまり行っても良いことなさそうですし」

保健教師「そうでもないぞ。人生の中の夏休みだありゃ。一人でいても楽しいことありゃしない。ダチが居ればより楽しい」スパー

男子生徒「友達は……出来なさそうですけどね」

保健教師「んなことねーよ。お前さんは気の利くやつだ。今の奴らには手も及ばないとこ行くんだ。1からスタート切りゃ良いんだよ」

男子生徒「簡単に言いますね……」

保健教師「そりゃ他人事だからな」スパー

男子生徒「やっぱり先生は狡い大人ですね。……それじゃあ帰ります」

保健教師「おう。帰れ帰れ……そういや」

男子生徒「はい?」

保健教師「あいつもお前と志望校同じだよ。まぁ、あいつはもう決まってるからあとはお前さん次第だが」

男子生徒「あいつ?」

保健教師「……お前はダメな男だな。まあいいや、じゃあな」

男子生徒「なんでそうなるんですか……まぁ、ありがとうございました。それでは」

保健教師「ほいさ」スパー

いつの間にか、桜のつぼみも膨れてきて

女子生徒「先生○○君に勝手に私の学校教えましたね」

保健教師「おうよ」スパー

女子生徒「それに、先生かわいいって言われたらしいじゃないですか」

保健教師「おうよ」スパー

女子生徒「……否定しないんですね。ずるいですよ」

保健教師「なんでアタシが嫉妬されなきゃならんのさ。それこそずるいぞお前」

女子生徒「だって彼、私にすらかわいいって言ってくれないんですよ?」

保健教師「はぁ? それこそ知らねーよ。てかお前くらいなら普通言われんだろ。ましてやあの野郎だぞ」スパー

女子生徒「あの野郎じゃないです。○○君です。私には……綺麗としか言ってくれません」

保健教師「良いことじゃねーか? それはよ」

女子生徒「良くないですよ。女の子はかわいいって言われたいものなんですよ」

保健教師「そうかいそうかい。アタシは綺麗って言われた方が嬉しいけどね」グリグリ

女子生徒「嘘ですね。絶対」

保健教師「嘘じゃねーよ。かわいいなんて言い慣れたこと言われて大人が喜ぶと思ってんのかよ」

女子生徒「うわ、この人今さり気なく自慢しましたよ。自分がかわいいって、ドン引きですよ」

保健教師「嫉妬乙。じゃあ聞くけど、お前は客からかわいいって言われて嬉しいか?」

女子生徒「……さあ? もうあのお店辞めたんで分かんないです」

保健教師「じゃあ経験談でいいよ。どうせバイトはしてんだろ?」

女子生徒「まぁ、今はコンビニのバイトですけど、この前告白されましたけど断りましたよ」

保健教師「お前こそ自慢話じゃねーか。アタシはここ50年は告白されてねーぞ」

女子生徒「……先生30いってないですよね?」

保健教師「さあね。女性に年齢を聞くなボケ」

女子生徒「ピチピチ度では完勝ですかね」フンッ

保健教師「何ドヤ顔してんだよ。マセガキが」

女子生徒「勝った暁として彼のヒミツを教えて下さい」

保健教師「火くれたらいいぜ。どうせお前ライターもう持ってないだろうし」トントン

女子生徒「はい、どうぞ?」カチッ

保健教師「……なんでだよ」スパー

女子生徒「まぁ、その、なんででしょうか。仕事で吸ってたら止められなくなったってとこですかね?」

保健教師「バカ野郎。野郎じゃねーけどよ、お前もうすぐで卒業なんだから退学になるようなことだけは止めてくれよ。バレたらどうすんだよ」

女子生徒「そしたら○○君に養ってもらいます」

保健教師「……あいつまだ合格も決まってねーぞ」スパー

女子生徒「大丈夫ですよ。先生がちゃんと教えていたじゃないですか。多分今頃したり顔で帰ってきてるんじゃないですか?」

保健教師「そういや今日か、試験日。まさかあいつもお前もアタシと同じとこに行くとは思いもしなかったよ」スパー

女子生徒「ああ、だから私も彼も面倒見てくれたんですね」

保健教師「別に他意はねーよ。ただ推薦の面接官や出題傾向知ってるだけだ」

女子生徒「それだけでも、とってもありがたいですよ。……先生が居なかったらどうなってたことか」

保健教師「おお、お前にゃ珍しく感謝の言葉が出るとはな」スパー

女子生徒「いつも言ってますよ?」

保健教師「口だけでな」

女子生徒「バレてましたか」

保健教師「大人にゃなんでもお見通しだよ。……さて、今期最後の会議でも行ってきますかね」グリグリ

女子生徒「まだ子供ですか? 私達。というか会議ってありましたっけ?今日来てない先生の方が多い……」ピローン

保健教師「子供だよ。子供も子供。ケツは青いは拭けねーわで手間が掛かって仕方ねー」ッポイ

女子生徒「……もう結婚だって出来るんですよ? 江戸時代前ならもう既に行き遅れのババアですよ?」

保健教師「うるせー。ここは現代21世紀のJapanだよ。最後の鍵閉めだけ宜しくな」

女子生徒「んー……納得いきませんけど、わかりました。締めときます」

保健教師「……今日はこの一階の教室誰もいねーし、少しぐらい誤魔化してやるからな。最後だぞ」

女子生徒「……」

保健教師「本当はホテルだの家だのでやって欲しいけどよ。んなこと出来ねーだろあいつは」

女子生徒「……はて。なんのはなしやら」

保健教師「あいつはなんにも手ぇ出してこねぇぞ。めんどい男だ。お前からいけ。あとは知らん」

女子生徒「……ありがとうございます」

保健教師「……おう」

女子生徒「……本気ですよ?」

保健教師「わかってるよ。じゃあな。お幸せに」

女子生徒「ーーありがとう、ごさいます」

保健教師「……」ガラガラ

保健教師「……」ピシャリ

男子生徒「……あ、先生」

保健教師「……その顔なら大丈夫だ。ちょっと不安ぐらいが1番結果が良いんだ。今日はたっぷり休んでいけ」

男子生徒「……なんか優しいですね」

保健教師「言う相手が毎回違うんだよ。……最後だからな、保健室登校は」

男子生徒「ーーはい。ありがとうごさいます。……あのっ」

保健教師「知ってっか? オンナは優しくして欲しい時より求めて欲しい時があんだ。腹決めろよ。……じゃあな、ガキ」トコトコ

男子生徒「? どういうことですかって……結局ガキから抜け出せなかったか」

男子生徒「まぁ、いいや。失礼しまーす」ガラガラ

女子生徒「……試験お疲れ様。○○君」

男子生徒「あれ? ××さん? 今日って登校日じゃないはずだけど……」

女子生徒「うん。知ってる。でも、来るって思ったから」

男子生徒「それはどういう……」

女子生徒「えへへ。やっぱりあの人の言う通りだ」

男子生徒「ごめん。全然わからない」

女子生徒「ねぇ、○○君は私のこと、どう思ってる?」

男子生徒「え!? いや、あのその、綺麗だと思うよ。他の子達よりも」

女子生徒「……むー」

男子生徒「え、ごめん。なんか変なこと言った?」

女子生徒「違う」

男子生徒「何が?」

女子生徒「……もう、こっち来て」

男子生徒「え、うん」

女子生徒「……」

男子生徒「……えー、と?」

女子生徒「……えへっ」ギュッ

男子生徒「えっ、ちょ、ちょっと○○さん?」ドサッ

女子生徒「ーーーー」

男子生徒「ーーーーっぷは。な、な何を」

女子生徒「ねぇ、私のこと、どう思う?」

男子生徒「……かわいい、と思う、よ」

女子生徒「……ありがとう。でも押し倒されちゃった」

男子生徒「それは○○さんが……○○さん」

女子生徒「なーに?」

男子生徒「……好きだよ」

女子生徒「……私も」

男子生徒「……愛してる」

女子生徒「……私もだよ」

男子生徒「……痛かったらごめんね」

女子生徒「……だいじょーぶ。好きだから。愛してるから」

男子生徒「ありがとう」

女子生徒「どういたしまして」

ーー時を同じくして2階の職員室

教頭「……という事で、来年は違う学校に異動に決まったからな」

保健教師「うぃーっす」

教頭「君もいい加減にしないか。教員として不真面目すぎるよ。タバコを吸うなとは言わないが、学校で吸うなんてなんども言うが言語道断だぞ!」

保健教師「しゃーないっす。ヤニカスなんでーす」

教頭「いい加減にしろ!お前はもう子供じゃないんだ!決められたことくらい守れなくて何が教員だ!ふざけるのもいい加減にしろ!何回教育委員会からお叱りを受けたと思ってるんだ!」

保健教師「んなの無視すりゃいーじゃないすかー」

教頭「だから真面目に話を聞け!いいか、お前が教職としてやっていけるのは誰のおかげだと思ってるんだ!」

保健教師「アタシのおかげでーす」

他の教師「……なぁ、あんた、さっきからちゃんと反省しろよ。こっちもうざったいんだよテメーみたいなゴミカスが同じ部屋にいると吐き気がするんだよ」

保健教師「……あぁ? なんだとテメーおい、ツラ貸しやがれよ。二度と援交出来ねーようにタマ潰すぞこのハゲ猿がよ」

他の教師「ざけてんじゃねーぞ! テメーのせいでいらねーイライラまで背負ってるこっちの身にもなってみろこのクソビッチが」

保健教師「拳一個も敵に当てらんねーお猿さんのわめき声を聞いてもなんにも理解出来ねーんだけどなぁ?」

他の教師「ざけんな!ぶん殴るぞ!」

保健教師「殴ってみろよ。おめーもアタシと共に教員生活終了だ。おらやってみろよタマなし野郎」

他の教師「……このブス野郎が!ぶっ殺してやる!」

保健教師「……」ドカッ バキッ メキャッ

教頭「やめろ!お前らやめてくれ!」

保健教師「(あいつら早く帰んねーかな。おかわりとかしてねーでピロトも無しで宜しく頼むわーそろそろ殴んのも面倒だわ)」

保健教師「(……まぁ、いいっか。こんなような大人っぽく振舞ってるだけの奴らにだけはなんなよ。命令だ。届かんけど)」

桜の花が散る頃、春の終わりの長い夕陽がまた保健室に射し込んでくる。

オレンジ色の時計が掛けられた壁が、いつの日か、また、白から薄茶色に変化してしまうのはまだまだ先のお話。

終わり

終わりです
割と短かった
何かあれば答えます

保健教師強い........強くない?

>>59
ニコチン切れると女々しくなります

読んでくれてありがとう

保健教師の言いたいこともわかるけど、最低限の規則を守れないのは人としてどうかと思うな
タバコの煙とか子供には最悪だし、教頭は正論だと思う

>>62
仰る通りです。
タバコは吸わないことに越したことはないです。自分も他人にも迷惑ですからね。
敢えての表現ですのでどうかご了承下さい。

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