戦場ヶ原ひたぎ「阿良々木君、お寿司を食べに行きましょう」(10)

暦「そうだな、久々に贅沢するのも悪くないな。何処に行く?くら寿司か?かっぱ寿司か?」

ひたぎ「全国チェーンの回転寿司が贅沢だなんて阿良々木君の贅沢は随分と安上がりなのね。お似合いよ阿良々木君」

暦「すまないな甲斐性が無くて」

ひたぎ「あら、勘違いしないでもらえるかしら?私はカニカマを「カニ」だと自分の舌を誤魔化して美味しそうに食べる阿良々木君が好なだけよ」

暦「奇遇だな。僕もネタが時価の分不相応な店で肝を冷やしながら寿司を食べる自分よりも全国チェーンの回転寿司で皿の数を数えながらみみっちく食べる自分が結構好きなんだ」

ひたぎ「そんな恥ずかしいことを恋人に堂々と言えるなんてカッコイイわ。死ねばいいのに」

暦「えらく辛辣だな。だが、くら寿司の海老マヨを食べるまでは死ぬわけにはいかないな」

ひたぎ「阿良々木君はくら寿司派なのね。私は浜寿司派なのだけれど」

暦「戦場ヶ原の好きな所でいいよ。じゃ、浜寿司にするか!」

ひたぎ「自分の好きなものを貫き通すこともできないのね。プライドのプの字も感じられないわ、そんなことじゃ愛する女性への愛も貫き通すこともできなさそうね。不安だわ」

暦「そこまで言うなら貫いてやるよ!くら寿司に行くぞ!戦場ヶ原!」

ひたぎ「恋人である私の希望は聞き入れてくれないのね、人の意見に左右されるのは時に仕方のないことだけれど。不安だわ」

暦「一体僕にどうしろと!?」

ひたぎ「結局くら寿司にするのね。私は浜寿司が食べたかったのだけれど」

暦「僕にも意地があるからな。この際だからお前をくら寿司派に引き込んでやる」

ひたぎ「そんな事よりも混んでいるわね。自信満々に人を連れてきたのだから当然順番は確保しているものだと思っていたわ」

暦「役に立たない僕を許してくれ」

暦「テーブル席かカウンター席どっちにする?カウンター席だと少し早く順番が回ってくるぞ」

ひたぎ「そうね、テーブル席にしてもらえるかしら?」

暦「オッケー、テーブル席だな……結構待たなきゃいけないな。カウンターじゃダメなのか?」

ひたぎ「カウンター席で流れるお寿司を眺めるのも悪くは無いけれど。私はお寿司よりも阿良々木君の顔を眺めていたいの」

暦「僕は恋人の前だろうが皿の数を数えるのは躊躇するつもりは無いぞ?」

ひたぎ「仮に阿良々木君が親の仇のように無料のガリを貪り食う事があっても私の愛は冷めないわ」

暦「本当か!?良かった。これで心置き無くガリをタッパーに詰めて持って帰れるよ」

ひたぎ「もしも本当に言ってるのなら流石に引くわ。阿良々木君じゃなかったら百年の恋も冷めそうね」

暦「間に受けられた悲しみとそれでも冷めない愛の深さが混ざってガリじゃ味をリセットできないな」

ひたぎ「そうこうしてるうちに順番が回ってきたようね」

暦「長かったような短かったような」


暦「どれにしようかな」(最初は玉子でも…)

ひたぎ「たまに居るわよね?「玉子の味でその店のレベルが解る」とか言う通ぶった人。そういう人に限って矮小な価値観に狭められた貧相な味覚しか持っていなかったりするのよね。そう思わない?阿良々木君?」

暦「あぁ、なんか居るよな。そういうやつ…」

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