提督「艦娘の目の前で死んでみる」 不知火「これで最後ですね」 (286)


提督「そういうことだな、おはよう、不知火」

不知火「おはようございます、司令」

提督「寝不足か、目が開いてないぞ」

不知火「朝は弱いもので、すいません」

提督「仮眠が必要なら一時間ほど許可するが」

不知火「大丈夫です、どうせ半時間後には目を見開いています」

提督「今日で三日目だしな、よく理解してるこって」


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提督「艦娘の目の前で死んでみる」 不知火「は?」
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提督「艦娘の目の前で死んでみる」 不知火「またですか」
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の続きですが単体でも楽しんでいただけると思います
今回もよろしくお願いします


提督「さて、昨日の七人の様子はどうだった?」

不知火「朝潮は曙と同じですね、光景を思い出す度に泣いているみたいです」

不知火「責任感の強い子は丁重に扱えと、あれほど言ったのですが」

提督「何事も楽観視してしまうのは悪い癖だな、明日にでも謝りに行くよ」


不知火「青葉さんはカメラを覗きこむのが、少しトラウマになっているようです」

不知火「あれ以降、古鷹さんがずっと慰めていたと聞きます、あの人はさすがですね」

提督「青葉を守ろうとする古鷹の意志は、それこそ半世紀にも渡る鋼の意志だ」

提督「それに青葉はあれが商売道具だからな、直に克服するだろう」

不知火「何事も楽観視するのが悪い癖だと、先程仰られたばかりですよ」

不知火「信頼と無責任は訳が違います、直接慰めてあげてくださいね」

提督「そう言われると心苦しいな、分かった、それについては任せてくれ」


提督「雪風はどうだ」

不知火「雪風は、ああいうことを割り切れる子ですからね」

不知火「笑顔で造花に勤しんでいましたよ、不知火も驚きました」

提督「雪風は、俺らが思ってるより強いのかもしれんな」

不知火「『かも』ではありませんよ、実際に強いんです」

不知火「あの子は、私達の誇りですよ」

提督「お姉さんも鼻が高いな」

不知火「ええ、とっても」


提督「如月と睦月はどうだ、あの後も少し気に掛けていたんだが」

不知火「ご心配なく、仲良く間宮アイスを食べていましたよ」

提督「良かった、なら安心だ」

不知火「強いて言うなら、少し睦月が引き目を感じていたくらいでしょうか」

不知火「事ある毎に謝っていて、如月も全然気にしてはいなかったんですが」


提督「まあ、見ていて気持ちの良い光景ではないな」

不知火「仲の良い姉妹艦に亀裂を生じさせるようなことは、あまり得策ではありませんよ」

提督「予定ではああなる前に秘書艦が止めに入る予定だったんだ、済まない」

不知火「その件は本当に申し訳ありませんでした」

提督「もちろん俺も悪いと思ってる、お互い気を付けよう」

不知火「ええ、そうしましょう」


不知火「さて、摩耶さんですが」

提督「知ってる、俺をスッコスコにしたって吹聴してるんだろ」

不知火「あら、よくご存じで」

提督「雷と電に朝会った時に言われたよ」

不知火「ドッキリを仕掛けてきた相手を懲らしめるわけですから」

不知火「勧善懲悪、肴にならない方がおかしいですよ」


提督「まあな、俺だってそんな美味しい話あれば肴にするさ」

不知火「でも、不知火には後から謝罪に来ましたよ」

提督「あいつも変なところで真面目だな」

不知火「良い人ですね、摩耶さん」

提督「良い奴だよ、摩耶は」


提督「他に変わった様子はなかったか」

不知火「一昨日仕掛けた四人についても一応報告しておきますね」

不知火「響は摩耶さんの話を聞いて笑える程度には回復してます」

不知火「龍驤さんは昨日の休養日でリフレッシュしたと言ってました」

不知火「曙はまだ夜中に目が覚めてしまうらしいです、困り果ててます」


提督「曙がそこまで引きずるとは思ってなかったな」

不知火「昨日、司令が部屋に行って謝ったと聞いていますが」

提督「夜も遅かったし、一言二言しか言葉を交わしてないんだよ」

提督「不知火が今度ご飯にでも連れて話を聞いてやってくれ、お代はツケていい」

不知火「もちろんですよ、曙を不安にさせた代償は安くないので覚悟してくださいね」

提督「ああ、肝に銘じておくよ」


不知火「瑞鳳さんは、昨日と同じような状況ですね」

不知火「きっと、大丈夫ですよ」

提督「瑞鳳に関してはやたらと口を濁すな、本当に大丈夫か」

不知火「異変というか、なんというか、感情が抑えきれないようなんですが」

不知火「そのベクトルが悪影響をもたらすことはないと思うので、心配ご無用です」

提督「そうか、一応昨日は休養日を設けたが、大丈夫そうで何よりだ」


不知火「ええ、ご心配なさらずに」

不知火(とは言っても、一日中部屋で提督を模した人形を抱きながら)

瑞鳳『てぇとく、てぇとくっ』

不知火(と呟いてる状態らしいですからね、そりゃ口濁しますよ)

不知火(どちらかと言うと同室の祥鳳さんの方が大丈夫じゃありません)

不知火(まあ、触らぬ神に祟りなしです、この件は黙っておきましょう)


提督「さて、終わり良ければ総て良し、最終日も頑張ろう」

不知火「そうですね、頑張りましょう」

提督「流れはいつもと同じだ、俺が艦娘の目の前で死んだフリをする」

不知火「その直前に必要な情報があれば、不知火はそれを伝えます」

提督「ドッキリの間、不知火は俺の私用部屋にてモニターでその様子を確認してほしい」

不知火「司令の指が動いたら、不知火が執務室へと行ってネタばらし、ですね」


提督「一応指は動かすが、不知火の来るタイミングは全て任せるよ」

不知火「そこは臨機応変に、その場その場で対処していきます」

提督「どうやら俺は少し行動が遅いようだからな、不知火の勘に頼りたい」

不知火「これで三日目ですからね、信頼してください」

提督「元より信頼してるよ」

提督「それじゃあ今日も、張り切っていこう」

不知火「ええ、頑張りましょう」

【 川内 】

提督「さて、最終日の出だし、誰からいったものか」

不知火「こういうのはテンポが重要ですからね、長考するより先ず決断です」

提督「なるほど」

不知火「どうしますか」

提督「四月馬鹿な艦娘と言えば?」

不知火「また突拍子もない質問ですね、いきなり言われると難しいですよ」


提督「連想ゲームだ、簡単に考えればいい」

不知火「連想ゲームですか、それでは逆に、馬鹿と言えば?」

提督「馬鹿か、馬鹿と言っても色んな種類があるが」

提督「そういや、ウチの鎮守府には夜戦馬鹿が一人いたな」

不知火「決まりですね」


提督「それじゃあ早速いくか、不知火は情報を」

不知火「心得ました、どのような情報を」

提督「俺が悩んでいるとでも伝えておいてくれ」

不知火「二日ぶりですね、素晴らしい演技力をご期待してますよ」

提督「ご期待に沿えるよう善処するさ」

不知火「それでは、また後で、失礼します」

提督「ああ、また後で」


不知火「川内、おはようございます」

川内「うん、おはよう、不知火」

不知火「寝起きですか、目が開いてませんよ」

川内「いつもこの時間は寝てるんだもん、そりゃ眠いよ」

不知火「司令にお呼ばれですか」

川内「そう、前の夜戦についての見解を聞きたいってさ」

川内「私もあの時は失敗しちゃったからね、力にならないと」


不知火「…あれから二週間が経ってるのに、まだ作戦の反省ですか」

川内「仕方ないよ、緒戦で撃墜し損ねた相手が、あれだもん」

不知火「あれは、この鎮守府海域だけでの責任だけではありませんよ」

不知火「まだ、司令は苦悩の中にありますから」

川内「うん、私からも、不知火を困らせんなって言っとくよ」

不知火「ふふっ、それじゃあお願いします」

川内「不知火も、あんまり悩まないでね、それじゃあ」


不知火「ふぅ、夜戦が関わらない川内は純粋に良い人だから困りますね」

不知火「面倒見の良いお姉さんタイプの人を騙すのも、それはそれで心が少し」

不知火「まあ仕方ありません、申し訳ありませんが」

不知火「川内にはタチの悪い目覚ましとでも思ってもらいましょう」

不知火「さて、モニターは、と、真っ暗ですね」

不知火「故障でしょうか、いや、まさかそんなことは」


川内『失礼します、ってあれ?』

不知火「あ、シャッター降ろして部屋の電気消してるんですね、なるほど」

不知火「今、執務室はドアの周辺しか照らされていません」

不知火「夜戦好きな川内の為の状況ですね、ご愁傷様です」

川内『てーとくぅ?寝てんの?電気つけるよー?』


川内『夜目も慣れないと見えないってもんなのになぁ』

川内『スイッチは、確かこの辺に』パチッ

川内『ほら、提督、なに昼寝してん、の』クルッ

提督『』ハラキリ

川内『ひ、ぁっ』


不知火「っ、ぅぷ、あ、朝からキツすぎる光景ですね」

不知火「耐性というか、目の鳴れてない朝にこの光景は、ちょっと」

川内『て、てーとく、なん、で…』ヘナヘナ

川内『うそ、だよね、だって、さっきまで、元気で』

川内『いつも通りで、え、え、え、だって…』ビチャッ

川内『あ、あああぁあぁ、ぅうっ、ぅぷ、おええぇ』エズク


不知火「司令は、執務机の前で、短刀を手に横たわっています」

不知火「腹部から色々出てて、ちょっと直視に耐え難い光景ですね」

不知火「服の上から切っているので、実は腹部には、ということでしょうが」

不知火「服の切れ端から中身が出ていても、普通は違和感なんて出ないでしょう」


川内『おぇ、うぅ、あ、ちが、ちがう、違う、こんなの違う』

川内『あ、ああぁぁ、私が、私が、私の、私のせいで』

川内『でも、そんな、そんなことって、うぅぅ、うぅぅぅっ』

川内『お願い、提督、死なないで、死なないで、お願い、お願いだから』

川内『もう、嫌なの、前にも後ろにもいけない、その場でとどまるような』

川内『そんな、そんな暗闇は、夜戦もできないような暗闇は、もう、嫌だから』

川内『だから、だから、ねえ、お願い、いや、いや、おきて、よ』

川内『ああぁあぁぁぁ、てーとく、ひぁ、あああぁぁ…』


提督『』ピクッ

不知火「司令の指が動きました、ネタ明かしの時間です」

不知火「暗闇、ですか、確かにあの闇を経験するのはもう嫌ですね」

不知火「不知火の目が黒い内はそんなこと、経験させませんよ」

不知火「失礼します、入りますよ」


川内「ひぐっ、うぅぅ、てーとく、うああぁぁ」ポロポロ

不知火「ほら、川内、せっかくの服が汚れますよ、顔を上げてください」

川内「し、しらぬい、ていとくが、ていとくが、うあぁぁぁ」

不知火「ええ、大丈夫、大丈夫ですから、そんなことはありませんよ」

不知火「司令、二人共目覚めたんですから、司令も起きてください」


提督「っと、朝から暗闇で横になったから俺は眠くなっちまったよ」

不知火「全く、珈琲を準備しますので、床の掃除をお願いします」

川内「っぇ、え、あれ、どういう、え」

提督「すまんすまん、川内、ドッキリだよ、ちょっと趣味の悪い」

川内「で、でも、提督、お腹に、お腹から…っ」

提督「仮にも提督たる者が、服の上から切腹なんて不躾なことするわけないだろう」


提督「ほら、全然この通り、傷もなにもない、平気だよ」

川内「…ぅ、ほんと、だ、ぁ、うぅぅぅ」

川内「ああああああぁ!よかっだああぁぁぁl!」

川内「うわああああああああん!」

提督「お前達残して自殺なんてするかよ、な」

川内「てえとくうううう!うわああああん!」


川内「今度絶対に夜戦連れてってもらうから!覚えててよね!」

川内「それじゃあ失礼します!おやすみ!」

提督「もう寝るのかよ、はいはい、おやすみ」

不知火「お疲れ様です、目は覚めましたか」

提督「ああ、朝から何も起こらなくてよかったよ」


不知火「まあ、あの手のものだと、怒りの矛先も何もありませんからね」

提督「強いて言うなら、朝からあの図は少し重かったと思ってる」

不知火「朝も何も、トラウマ一直線ですよ、やはり中身が出ると」

提督「兎にも角にも、適度な滑り出しだ、良い開幕だ」

不知火「ええ、流れを断ち切ること勿れ、次に行きましょう」

一度寝ます、また昼頃来ると思います
素敵で儚い駆逐艦姉妹出てくると思います、いったん失礼します


【 夕立 時雨 】

提督「次はそうだな、これで最終日だ、まだ攻めてないような娘がいい」

不知火「そうですね、それだと、オープンに表現してくるような」

不知火「金剛、鈴谷、雷らと言った部類の艦娘が良いのではないでしょうか」

提督「なるほど、悪くない」

提督「でも、もうちょっと刺激が欲しいのもある」


不知火「司令も変わったお方ですね、知っていましたが」

提督「愛情に黒いものが渦巻いてるような奴、とか」

不知火「あぁ、なるほど、それはそれで面白そうですが」

不知火「どうなってもしりませんよ、本当に」

提督「最終日だ、ちょっとくらい無理してもいいじゃないか」

不知火「ここまで無理しかしてないですよ、司令」


提督「せっかくだ、不知火に脚本はお願いしよう」

不知火「嫌です、何かあるような艦娘を相手に責任取れません」

提督「そう固いことを言うなよ、責任なんて大それたこと背負わなくていい」

提督「それに、不知火にはオオトリで脚本を任せたいからな」

提督「それの予行演習だと思ってくれ、提督命令ということで、な」

不知火「無責任な命令もあったものです、仕方ないですね」


提督「さすが秘書艦、それで、どういったことがしたい」

不知火「どうせするなら、今までにない攻め方をしたいですね」

提督「そこは全て、不知火のしたいようにすればいい」

不知火「…せっかくの一任です、司令を満足させるようなものにしましょう」

不知火「では司令、時雨と、夕立にご連絡お願いします」


提督「時雨と夕立か、素敵なパーティーが見えそうだな」

不知火「不知火は私用部屋でいます、途中で夕立に司令の悩みをお伝えしますので」

不知火「司令はどうぞご自由に、目を輝かせて死んでください」

提督「目を輝かせて俺を殺すのはお前だろう、わかった」


不知火「対象が対象なので、まずいと思ったらすぐ行きます」

不知火「後、絶対に不知火が計画したと伝えるのは止めてくださいね」

提督「もちろんだ、期待しておくぞ、修羅場大好き不知火さんよ」

不知火「ほう、面白いことを司令は仰られますね」


提督「如月と睦月の時、怯えてたのも本当なんだろうけど」

提督「楽しくて仕方ないと言った表情、隠せてなかったからな」

不知火「不知火に何か、落ち度でも?」

提督「いいや、何も、さあ、頑張ろう、悪趣味秘書艦」

不知火「黙って死んでくださいね、悪趣味司令」


夕立「あっ、不知火、お久しぶりっぽい」

不知火「昨日資料を渡した時に会ったばかりですよ、夕立」

夕立「そうだったっぽい、資料、さらっと昨日読んだよ」

不知火「どうでしたか、第一線に立った方の印象としては」

夕立「うん、敵の主力部隊は事前の報告と一緒だったっぽい」

夕立「編成も、作戦も、持ちうる能力を全て出したものだと言えるっぽい」


不知火「それでも、結果がああなってしまったのは」

夕立「提督さんの、みんなを沈ませないという意思、だよ」

不知火「…そう、ですか」

夕立「あたしも、みんなも、提督さんの味方っぽい」

不知火「ええ、もちろんです」


夕立「提督さんには辛い報告になるかもしれないけど」

夕立「これがあたしの役目だから、伝えてくるね」

不知火「前に進むためとはいえ、本当に聞きたくない報告でしょうね」

不知火「不知火も薄々分かってはいたんですが、なかなか言い出せずに、その」

不知火「損な役回りを押し付けて、本当にすいません」


夕立「大丈夫、損な役だなんて思ったことないから、大丈夫っぽい」

夕立「いつも不知火に全てを任せちゃってるんだから」

夕立「だから、こういう仕事くらい、あたし達に任せるっぽい」

不知「...ありがとう、夕立」

夕立「えへへ、それじゃあね、不知火」


不知火「...あぁ、ダメです、不安で心が折れそうです」

不知火「皆さんこんな状況であれを見させられるんですね」

不知火「ようやく理解できました、これは間違いなく心臓に悪いです」

不知火「先にドッキリをすると言ってくれているだけ、気は楽ですが」

不知火「本当に、夕立には損な役を押し付けてしまいました」

不知火「すいません、夕立、申し訳ないと分かってる上で」

不知火「不知火の悪趣味にご協力お願いします」


夕立『提督さん、お呼ばれしたから入るっぽい』

提督『夕立か、入っていいぞ』

夕立『昨日、不知火から渡された報告書のことっぽい?』

提督『そうだな、第一線に立った者としての感想を聞きたい』

夕立『辛い報告になるけど、大丈夫っぽい?』


提督『その事前の確認だけでも十分辛いよ』

提督『そこまで言われると、聞きたくないのが本音だな』

夕立『あたしは、今は無理して聞かなくても大丈夫だと思うっぽい』

夕立『提督さんが落ち着いてからでも、全然遅くないっぽい』

提督『でも、いつかはその現実に向き合わないといけないもんな』


夕立『多分、提督さんの全てを否定するような話になるっぽい』

夕立『少しでも冷静さを欠いた状態でこの話をされると、だから』

夕立『ゆっくりゆっくり、落ち着いてからでいいんだよ』

提督『進むも地獄、逃げるも地獄、酷い二択もあったもんだな』

夕立『ごめんね、提督さん』


提督『何を夕立が謝ることがある、分かってたことさ』

提督『でも、そうだな、少し一人で落ち着きたい、一瞬席を外してもらえるか』

夕立『わかった、提督さん、あんまり思い詰めないでね?』ガチャッ

提督『ふぅ、さてと、不知火、聞こえるか』

不知火「っと、これ会話も可能なんですね、突然で驚きましたよ」


提督『ああ、何かと言って最前線にある鎮守府だからな、ここまで大丈夫か』

不知火「ええ、演技の方は完璧です、不知火の思い描いたもの以上です」

提督『それは何よりだな、次はどうすればいい』

不知火「後少しで合図を出しますので、そのタイミングで死んでください」

不知火「死に方は事前にお伝えした通りで、素晴らしい演技、期待していますよ」

提督『任せとけ』


不知火「そろそろです、血糊を適当に撒いて、血の海に倒れて」

提督『大きな衝撃音を出して、夕立を中に誘い込む、だっけ』

不知火「ええ、傷跡や短刀も忘れずに、それではお願いします」

提督『ああ、後片付けは任したぞ、それじゃあ、っと』ガタンッ

夕立『提督さん!何かあったっぽ、い』ガチャッ

夕立『...ひっ』


不知火「大きな音がして、夕立が入ると」

不知火「そこには短刀を片手に血の海に倒れ込む司令の姿」

不知火「事前にしていた話が話です、怪しい部分もあると言えばそうですが」

不知火「実際のところ、嫌でもそれ以外の結末は思い浮かばないでしょう」

不知火「目論み通りです、ここまでは完璧ですね」


夕立『ひぁ、て、ていとく、さん、あ、ああぁぁ』

夕立『うそ、でしょ、だって、え、うそ、うそっ』

夕立『あ、あ、あ、あぁぁぁぁ...』

夕立『うぅぅ、っあ、どうして、ごめんなさい、てえとくさん、ごめ、ん』

夕立『ああぁぁっ、うぐっ、ごめんなさい、っぁああ、あああああぁ...』


不知火「夕立は倒れ込む司令の横で、押し殺すようにして泣いています」

不知火「ただただ静かに、でも、その顔は絶望に染まっています」

不知火「この現実を受け入れられるだけ、立派なものです」

不知火「...そろそろですね」

時雨『提督、時雨です、入るよ』ガチャッ


時雨『......提督?』

夕立『っぁ、しぐ、れぇ』

夕立『てーとくさんが、てーとくさんがぁぁ...』

時雨『...どうして、だい、夕立』

時雨『ちょっと、ボクに、教えてくれないかな』


夕立『あたしが、ま、前の負けたげんい、ひぐっ、原因はてーとくさんにって』

夕立『そ、そうしたら、てーとくさんひとりにな、なりたい、って、言って』

夕立『それで、それで、音がしたから、中に入ったら、もう、もうっ』

夕立『うぅぅぅ、ごめんなさい、ごめんなさいっ、うあああああああああ!』


時雨『...そっか』

時雨『...夕立は、悪くないよ』

夕立『でも、てーとくさんはっ、あああぁぁぁ...』

時雨『仕方ない、よ、だって、それは、うん、悪くないから』

時雨『うん、悪くない、悪くないからね、大丈夫だよ』


不知火「...なんとか、最大の山場を越しましたね」

不知火「今まで途中で誰かが入ってくるという流れはありませんでしたから」

不知火「見てみたい一方で、想定外のことも起こりうるかと思いましたし、それに」

不知火「時雨は少し司令への想いが深いですからね、万が一もあるかと思いましたが」

不知火「不知火の杞憂だったようですね、時雨は夕立をそっと抱きしめています」

不知火「姉妹と言うより、双子のような関係の二人です、絶望的な光景の中でも輝くような」


司令『』ピクッ

不知火「ん、司令の指が動きましたね、いつもより少し早い気がしますが」

不知火「ご命令とあらば、です、少し名残惜しいですが行きますか」

不知火「不知火です、入ります」 ガチャッ

不知火「改めて見ると凄惨な光景ですね、後片付けが思いやられますよ」


不知火「どうしましたか、時雨、そんな空虚を見つめて」

時雨「......ない、ちがう、でも」ブツブツ

不知火「時雨?」

時雨「悪くない、悪くない、悪くない、夕立は悪くない、悪くない、そうだ、そうだよ」

時雨「夕立は、悪くない、んだよ」

不知火「ひっ」ゾゾッ


時雨「悪くない、そうだ、ちがうんだ、だから、だから、でも、でも」

時雨「じゃあ、ボクは、ボクは、どうすれば、でも、悪くないのに、でも、それじゃあ」

時雨「ボクは、どうすればいいんだい」スッ

夕立「あ、あぁ、ぅうう、うあ、ぇ、しぐ、れ?」

不知火「時雨!落ち着いてください!ドッキリです!嘘ですから!」ガシッ

時雨「ああ、ぁあああ、しら、ぬい」


不知火「ごめんなさい、時雨、あなたを板挟みな状態にしてしまって」

不知火「大丈夫です、これはドッキリですよ、ほら、起きてください、司令」クルッ

時雨「...ああ、そっか、うん、そうだよね、そうだよね」

時雨「そっかぁ」ユラァ

提督「時雨」ガシッ


不知火「...ぇ」

提督「落ち着け、ドッキリだ、誰も悪くない、何も起きてない」

提督「時雨、俺の声が分かるな、大丈夫だから、ほら、顔あげろ」

時雨「......あはっ」

時雨「提督、だ」ニコッ


提督「ああ、夕立も大丈夫か」

夕立「てーとく、さん…」

提督「すまない、少し悪戯欲が出てしまった、もう二度とこんなことはしない」

夕立「…ぅ、うぅぅぅ、よかった、ホントに、よかった」ポロポロ

夕立「あ、ぅ、ぅぅ、てーとくさん、てーとくさん、てーとくさん!」

夕立「てーとくさぁぁぁん!よかったあああああああああ!」

夕立「うわああああぁぁぁぁぁん!」


提督「よしよし、時雨、もう落ち着いたか」

時雨「うん、もう、大丈夫だよ、何も、なかったから」

提督「そうか」

時雨「うん、提督、止めてくれて、ありがとう」

提督「何も感謝されることはやってないぞ」

時雨「嘘つき、知ってるくせに、ねえ、提督」


夕立「提督さん!こんなことは二度としないって約束してほしいっぽい!」

提督「すまんすまん、絶対にしない、もう二度と嘘は吐かないから」

夕立「その言葉覚えてるからね!嘘ついたら針千本飲ますっぽい!」

時雨「でも提督はすぐに嘘を吐く人だからね、針は今晩にも用意しておこうかな」

提督「もう少し信頼されるように頑張るよ、それじゃあお疲れ様」

夕立「うん!お疲れ様!提督さん!」

時雨「じゃあね、提督、失礼します」


提督「さて、不知火監督、脚本を手掛けてみてどうだった」

不知火「鎮守府内の艦娘の性格は把握しているつもりなので」

不知火「よほどのことがない限り想定外は起こらないな、と思いました」

提督「なるほど、何はともあれ、お疲れ様」

不知火「ええ、お疲れ様です、司令」


提督「次に移る前に、俺から一つだけ」

提督「想定外を起こさない為にも、注意を怠ることがないように」

不知火「不知火はいつも注意を怠っていませんよ」

提督「お前は計画に頼りすぎているキライがあるからな」

提督「スムーズに進んで最後を迎えると、どうしてもそこで油断してしまう」

提督「何があっても、簡単に背中を見せることはないように」


提督「お前が背を向けた瞬間、時雨が手を伸ばしてきたの、知ってるか」

不知火「…それは、知りませんでした」

提督「俺の死に対する憎悪と、それを招いた親友への哀れみ」

提督「そんな極限状態の奴の前に、作戦の指揮艦が出てきたらどうなるか」

提督「後はご想像の通りだ、そういうことだ、危なかったぞ」

不知火「それは、はい、肝に銘じておきます」

提督「失敗は次の糧にすればいい、さあ、どんどん次に行こう」

一度抜けます、帰ってくるのは明日の昼前とかになると思います
明日の夜までには終わると思います、お口の悪い子とかお姉ちゃんが出てくると思います
それでは失礼します


【 霞 】

提督「残るは後二人、てっとり早く終わらせよう」

不知火「そうですね、誰にするかはもう決めていらっしゃるので?」

提督「ああ、残り二人共決めてある」

不知火「終わりに向けて準備は万端ですね、今回は誰に」

提督「朝潮型10番艦、霞だ」


不知火「ほう、霞、ですか」

提督「何か言いたそうな顔してるな」

不知火「ええ、霞は浦賀船渠時からの仲ですからね」

提督「十八駆逐隊でも組んでいたな」

不知火「不知火にとって一番楽しかったのは、十八駆でのあの時間でしたね」


提督「良い思い出ばかり、ってわけでもなさそうだけどな」

不知火「はい、最後は彼女を一人ぼっちにしてしまったので」

不知火「最初から最期まで、あの子のことを思わなかった日はありませんね」

提督「重たい話をさせてしまって申し訳ないな」

不知火「いえ、大丈夫ですよ、まあ、そういう訳ですので」

提督「分かってる、穏やかに終わらせるよう善処するよ」


不知火「そういうことですね、お願いしますよ」

提督「死に方もだいたい決めてる、遺恨は残さないつもりだ」

不知火「司令の基準は割とおかしいですからね、本当か疑問です」

提督「そもそもこのドッキリ自体おかしいからな、そこは仕方ない」

不知火「では、如何にして」

提督「不知火が俺を殺す、一番簡単で、一番負の感情を揺さぶらない方法だ」


不知火「まあ確かに、一番トラウマを残さない方法ではありますね」

提督「ドッキリでした、で済ませやすいのもある、それに」

不知火「それに?」

提督「お前ら二人の関わることに自殺を持ち出すほど、俺は無知でも無責任でもねえよ」

不知火「...なるほど、お心遣い、ありがとうございます」

提督「先人方を貶めるようなことはしたくないからな、じゃあ早速準備するか」

不知火「ええ、分かりました」


霞「ったく、これからせっかくの昼休憩だってのに、あのクズ司令官!」

霞「呼び出されるようなこと全く記憶にないのに、いったい何の用よ」

霞「昨日の戦闘の報告も終えたし、問題もなにも無いはずだし」

霞「これで大したことじゃなかったら、ただじゃおかないったら」

霞「霞よ、入るわ」ガチャッ


霞「...なっ!」

不知火「あら、こんにちは」ジャキッ

霞「何やってんのよ!不知火!」

不知火「まさかこんな場面で、あなたと出くわすとは思いませんでしたよ、霞」

霞「さっさとその物騒なものを下ろしなさい!」

不知火「すいません、これだけは譲れないこと、でして」


霞「あんた司令官に何やったのよ!起きなさいよ!クズ司令官!」

不知火「無駄ですよ、少しの間、お休みになっていただいたので」

不知火「何の痛みもなく、安らかに逝っていただけると思いますよ」

霞「させるか!」ダッ

不知火「っと、さすがですね、動きに無駄がありません」ガシッ

不知火「普通の駆逐艦なら、その速さと勢いに大勢を崩されるんでしょう、が」


霞「くっ、かはっ」ドサッ

不知火「お忘れですか、霞、不知火はあなたの指導教艦ですよ」

霞「さすがに、一筋縄ではいかないわね、不知火『さん』」

不知火「あら、懐かしい響き、あの頃に戻ったようね」

霞「ちょっと珈琲でも飲んで、昔話に華でも咲かせたいものだわ」ジリッ


不知火「そうやって喋りつつも隙を狙われては、ゆっくりもできませんよ」

霞「………」ジィッ

不知火「ふぅ、あまり神経をすり減らされるのは得意ではありません」

不知火「こんな茶番、さっさと終わらせましょう」ガチャ


霞「......っ、なんで、なんでよ不知火!」

霞「あれだけ!あいつの、あのクズ司令官のこと慕ってたのに」

霞「どうしてこんな結末になるのよ!ねえ!不知火!ねえったら!」

不知火「...慕ってるからですよ」

霞「それなら!」

不知火「それだからこそ、司令の最期を担うのは、不知火の仕事なのです」


不知火「さようなら、司令、良い夢を」

霞「まっ...!」

ドンッ

霞「て......」

不知火「.........」


提督「」ドクドク

霞「う、そ」ヘタリ

霞「なんで、なんで、なんで、なん、で」

霞「あ、あ、あああ、あぁぁぁぁ…」

霞「うあああああああああああああああああ!」

霞「あああああああああああああああぁぁぁ!」


不知火(霞は頭をかき毟りながら、叫び声を挙げています)

不知火(それは悲鳴と言うよりも、困惑と絶望が入り混じったようなものです)

不知火(不知火に立ち向かっても歯が立たないことは分かっているのでしょう)

不知火(どうしようも出来ない、その悲しみも含めた、そんな叫び声です)

不知火(見ていて心が痛みます、そろそろネタ晴らしの時間ですかね)


霞「うわあああああああああああああああ!」

不知火「司令、ネタ晴らししますね」ボソボソ

提督「」グッ

霞「ああ、ああ、あ、なんで、なんで、どうし、てっ」グスッ


不知火「霞、落ち着いてください、実はこれ、全部どっき」

瑞鳳「てぇとくっ、お昼たべよっ」ガチャッ

不知火「り......」


霞「うぅぅっ、ひぐっ、あぁぁ、ぁ、あぁ...」

提督「」ドクドク

瑞鳳「...てぇ、とく?」

不知火「」

提督「」


瑞鳳「...不知火、その手に持ってるの、なぁに?」

不知火「ひぃっ」ビクッ

瑞鳳「ねえ、教えて、不知火、ねえ、ねえったら」

不知火「ち、違います!いやっ、やめて、こないで、こないでっ!」ズサッ

不知火「いや、いやっ、あっ、あぁぁ...」


瑞鳳「おしえて、はやく、何がちがうの、ねえ」ユラァ

瑞鳳「てぇとくに、なにしたの、きこえないの、こたえれないの?」

瑞鳳「おしえてよ、ねえ、し、ら、ぬ、い?」ジャキッ

不知火「いやっ...!」

提督「ストップ!ストップ!ストォォォォォップ!」ガシッ


瑞鳳「てえとく?」

不知火「し、しれぇ...」ハァァァ

霞「ぐすっ、うぐっ、うぅ、う......へ?」

提督「瑞鳳!すまん!ちょっと演劇をしててな!悪い悪い!」

提督「だから何もないんだ!なあんにもない!な!瑞鳳!」


瑞鳳「演劇ぃ?もう、ビックリさせないでよぉてーとく!」

提督「すまんすまん!そういや瑞鳳!俺飯が食いたくなってきたなぁ!」

瑞鳳「本当!やった!私、卵焼き作ってきたから、それ食べて!」

提督「ああ!出来立てが食べたいなぁ!調理室でゆっくり作ってきてくれ!」

瑞鳳「わかった!それじゃあちょっと待っててね!てえとく!」ガチャッ


提督「はぁぁぁ、今まで一番肝っ玉冷やしたよ、立てるか、不知火」

不知火「あ、ぅ、はい、不知火は、大丈夫です」

提督「あいつは二回目だから、また怒られると思って身構えたらあれだぞ」

提督「あの時の瑞鳳、お前のこと殺る目してたからな、無理やり止めに入って正解だ」

不知火「そう、だったんですか、ありがとうございます」


提督「おいおい、腰が抜けて立てないとか言うんじゃねえだろな」

不知火「……不知火に何か落ち度でも」

提督「いや、あれなら仕方ないさ、ともかく、何もなくて良かった」

不知火「あ、司令、後ろ…」

提督「後ろ?」クルッ


霞「アンタねぇ...よくも騙してくれたわね...」

提督「」

霞「話聞いてりゃドッキリぃ?悪趣味にもほどがあるんじゃないのぉ...?」ピキピキッ

提督「あ、いや、その」

霞「ただじゃおかないわよこんのクズしれいかああああああん!」


不知火「お疲れ様です」

提督「ああ、やはり行き場のない怒りはこうなるもんなんだな」ボッコボコ

不知火「仕様がありませんね、いやぁ、それにしても清々しいほどに殴られましたね」

提督「霞の野郎、躊躇なく殴ってきたからな」

不知火「良い拳でした、指導冥利に尽きましたね」

提督「そりゃよかったな」


不知火「拗ねないでくださいよ、卵焼きのお味はどうでしたか」

提督「普通に上手くて反応に困った、あんな美味しいの初めて食べたわ」

不知火「司令のことを思って一から作ってきたと言ってましたよ」

不知火「既に作ってた卵焼き、司令が熱々の食べたいと言った瞬間に躊躇なくゴミ箱捨てましたからね」ボソッ


提督「ん、どうした」

不知火「いえ、なんでも」

不知火「終わり良ければ総て良し、最後も頑張りましょう」

提督「この皿に収まりきらない卵焼きを食べてからな」

一旦昼餉食べに外出ます、2時半とかには帰ってくると思います、失礼します


【 陽炎 】

提督「最後だ、正真正銘最後の一人だ」

不知火「はい、楽しんでいきましょう」

提督「最初の反応からは考えられない言葉だな」

不知火「慣れとは怖いものですね、大トリを飾る艦娘は誰になさるおつもりで」

提督「お前の姉ちゃんだよ、陽炎だ」


不知火「それは、最後にして最高の人選ですね」

提督「お前の陽炎に対する愛情ってホントに歪んでるよな」

不知火「返す言葉もありません、ご不満ですか」

提督「お前ら二人の仲だ、何の口出しもしないさ」

不知火「ごもっともですね」


提督「それに、そのくらいじゃないと俺の秘書艦は務めれないだろうよ」

不知火「よくご存じで、どれだけ秘書艦を務めているとお思いですか」

提督「俺の後釜を担うのはお前だからな、最高の物語を頼んだぞ」

不知火「最後の脚本は不知火が担当ですか、腕が鳴りますね」

提督「任せたぞ、秘書艦さんよ」

不知火「ええ、任せられました、司令」


陽炎「あっ、不知火!お疲れ様!」

不知火「陽炎、お疲れ様です、司令に何か御用でしょうか」

陽炎「うん、昨日の演習の報告書がまとまってね、この時間なら空いてるって」

不知火「なるほど、演習の報告なら、大丈夫そうですね」

陽炎「どうしたの、そんな浮かない顔して」

不知火「いえ、そんなことは、ありませんよ」


陽炎「ったく、ホント不知火ったら不器用ね、すぐ顔に出るんだから」

陽炎「ほら、私に話してみなさい、私はあなたのお姉さんなんだから」

不知火「...前の戦闘、昨日で一ヶ月ですからね、色々思うところがあるようで」

陽炎「司令、か、まだ落ち込んでるの」

不知火「ええ、あまり気を落とさないよう声を掛けているんですか、あまり効果がないようで」

陽炎「...そっか」


不知火「陽炎の方からも、何か言葉を掛けてくださいませんか」

陽炎「大事な妹のお願いだもの、お安い御用だわ」

不知火「ありがとうございます、陽炎」

陽炎「なんてことないわよ、部屋にお茶があるから、それ飲んでゆっくりしてなさい」

不知火「お言葉に甘えますね、それじゃあ、また」

陽炎「うん、またね」


不知火「不知火は、なんて素晴らしい姉を持ったのでしょう」

不知火「不知火の前では決して弱音を吐かず、凛々しくあり続けようとするその姿」

不知火「さすが、陽炎型のネームシップです、みんなを束ねるお姉さんです」

不知火「不知火にとっても、唯一の姉ですから、天井知らずの安心感があります」

不知火「すいません、こんな姉不幸な妹で、後でうんと慰めてあげますから」

不知火「今日は思う存分、心に素直に、絶望してください、陽炎」


陽炎『陽炎です、入ります』ガチャッ

提督『陽炎、か、お姉さんならさっき出ていったぞ』

陽炎『ええ、さっきすれ違ったわ、今は昨日の演習の報告で来たの』

提督『そうか、すまない、すっかり忘れていた』

陽炎『どうしたのよ、らしくない、ずっと外なんて眺めちゃって』

提督『なに、本当に海が綺麗だなと思ってな』


陽炎『なによそれ、頭でも打っちゃったの』

提督『...ずっと、この海を守りたいと思っていた、国民の為にも、自分の為にも』

提督『そんな海に、自分の部下の血を流させるわけにはいかなかった』

提督『沈むなんて以ての外だ、俺はずっと、それだけを願いに頑張ってきた』

提督『結果として、周辺海域で命を落とす者はいなかった、俺は自分の信念を貫きとおした』

提督『そして、歴史は繰り返した、本土の至る所で血が流れた』


陽炎『司令......』

提督『空襲で確認された敵機は、俺達が仕留めきれなかった敵の艦載機だったらしい』

提督『ずっと、罪の意識に苛まれた、どうしていいかも分からなかったがな』

陽炎『...その、あんまり容易なことは言えないけど、私は、司令が間違ってただなんて』

提督『思えない、か、俺だって作戦中は間違っているなど微塵も思ってなかった』

提督『でも、社会的には間違った作戦だったんだ、何も知らない人達にとっては』


提督『非難は俺の耳にも入ってきた、一か月の間、止むことなくだ』

提督『そうしたら、なんだか本当に自分が間違ってるような気がして来てな、笑えるだろ』

陽炎『そんな、こと』

提督『あるんだよ、もしかしたら、その声はほんの一部の声かもしれない、それでも』

提督『それは、世論全体の意見として、俺を追い詰めていくんだ、自分の正義も分からないくらいに』


提督『なあ、陽炎、俺は今、どうしていいか、分からないんだ』

提督『俺はもう、考えるのに、疲れたよ』ジャキッ

陽炎『司令!それだけはダメ!』

提督『ああ、もう、こんなことになるくらいなら』グッ

陽炎『司令!待って!話を聞いて!司令!司令!』


提督『こんな時代に、生まれなければよかった』

陽炎『しれ...っ』

パンッ

陽炎『い......』

提督『』ガタッ ドサッ

陽炎『......っぁ』


陽炎『あ、ぅああ、なんで、だって、司令...』

陽炎『嘘、嘘、そんな、しれい、まって、よ、あ、あぁぁ』

陽炎『ああぁぁ、あぁぁ、あぁあ、あぁ...』

陽炎『いやああああああああああああああああ!』

陽炎『しれい!しれい!しれえええええ!』

陽炎『ああああああああああああああああ!』


不知火「...陽炎のことは何でも知ってるつもりでしたが、そんなことはありませんでしたね」

不知火「こんな表情、初めて見ました、狂ったように泣き叫ぶ、そんな顔」

不知火「いえ、そういえば、一度だけ見たことありましたね、陽炎の泣き顔」

不知火「不知火が、戦闘で大破して帰投した時も、確かそんな表情だったはずです」

不知火「...そう考えると、とても心が痛いですね」


不知火「最後の一人だからと言って、徒に長引かせるのもあれですね」

不知火「ネタ晴らしの時間です、行きますか」

不知火「失礼します、入りますね」ガチャッ

陽炎「なん、で、しれい、あぁ、ああ、っぁ、しら、ぬい...」

陽炎「っ、うあ、しれいが、しれいが、しれいがぁ...っ」


不知火「陽炎、落ち着いてください」

陽炎「だって、だって、しれ、しれいが、ごめ、ごめん、うぅっ」

不知火「ごめんなさい、陽炎、何も問題はないんです、予定通りなんです」

陽炎「でも、でもっ、目のまえで、しれいはあたまを...っ!」

不知火「大丈夫ですから、もうほら、司令も起きてください」


不知火「ほら、司令、起きましょう、何昼寝してるんですか、司令」ユサユサ

提督「」

不知火「...司令?」

不知火「司令、もうドッキリは終わりですよ、司令、何をなさってるんですか」


陽炎「しら、ぬい、だから、しれいは、もうっ」

陽炎「うっ、ぅぅうぅ、うわあああああああん!」

不知火「ほ、ほら、陽炎もう号泣ですよ、いたずらに長引かせないと言ったじゃないですか!」

不知火「知ってますよ!どうせドッキリなんですよね!司令!司令っ!ねえ!」

不知火「しれ、い...」

提督「」プルプル

不知火「......」


不知火「...あの、すいません、司令」

不知火「笑いこらえるの必死すぎて、肩が震えてますよ」

提督「...だ、だって、お前、あんなに必死になるとは、ふふっ」

陽炎「うああああぁぁ...っえ、あれ、し、れい?」


陽炎「あ、れ、いきて、でも頭を、あれ、え、あれ」

提督「すまんな、陽炎、不知火の言う通りドッキリなんだ、なんでもない」

提督「に、しても少し反応しないだけであそこまで不知火が取り乱すとは」

不知火「...よくも不知火を嵌めてくれましたね」ゴゴゴ

提督「最後くらいこんな逆ドッキリがあってもいいじゃないか、すまんすまん」


不知火「不知火がどれだけ心配したと思ってるんですか!この悪趣味司令!」

提督「まあそう怒らないでくれ、なあ、陽炎」

陽炎「ほん、とに、ドッキリなんだ、死んでない、生きてるん、だよね」

提督「ああ、この通りだ、全然何ともないぞ、っと」ボフッ

陽炎「良かった、なんともないんだね、よかった、よかったよぉ」ダキッ


提督「自殺なんて無責任なことするわけないだろ、なっ、俺は元気だ」

陽炎「そう、だよね、それなら、それなら、心おきなく」

提督「うん」

陽炎「説教出来るわね、司令」

提督「うん?」

陽炎「さぁて、それじゃあ、とりあえず、その場に正座してもらおうかしら」


提督「いや、それは」

陽炎「正座してもらおうかしら」

提督「あ、はい」

陽炎「どうせ不知火もグルなんでしょうけど、あの子も今は被害者だろうし、それは不問にしとくわ」


陽炎「二度とこんなおいたが出来ないようにしてあげる、ねえ、不知火」

不知火「秘書艦の純粋な心を弄んだ代償、見せてあげますね、司令」

提督「ちょっ、ま」

陽炎「さて、司令、心の準備はいいかしら」


陽炎「これに懲りたら、二度とこんなことしないように!分かったわね!」

陽炎「後、これに拗ねて不知火に強く当たったらただじゃおかないから!」

提督「ああ、もう二度としない、針千本かけてもいい」

陽炎「その言葉忘れないでね!それじゃあ!」バタン

提督「ああ、お疲れ様、陽炎、元気にしろよ」


不知火「最後の最後にしっぺ返し、これ以上ない脚本でしたね」

提督「おふくろに怒られてた頃を思い出したよ、とんだ災難だったわ」

不知火「司令が面白がって死んだフリ続けるからですよ、不知火も擁護できません」

提督「まあむしろ説教に参加してたくらいだしな」

不知火「最後に相応しい、かどうかは別として、印象に残るもので良かったですね」

提督「平凡に終わるよりかはな、まあ正直その通りだ」


不知火「素晴らしい三日間でしたよ」

提督「そう言ってもらえて何よりだ」

不知火「不知火も、なんだかんだ息抜きになりました、ありがとうございます」

提督「俺は手伝ってくれただけでも、この上なく感謝してるんだ」

提督「喜んでもらえるなんて思ってもいなかったよ、不知火も、ありがとうな」


不知火「これで楽しい三日間はお終いですね、明日からも頑張りましょう」

提督「その前に、曙たちに謝りに行く予定を立てないとな」

不知火「本来の不知火の仕事はスケジュール管理が主ですから、お任せください」

提督「ああ、何から何まで頼んだぞ」

不知火「それでは早速、溜まった書類を片付けていきましょう」


提督「本当に早速だな、休む暇も無い、不知火も手伝ってくれ」

不知火「お安い御用です、頑張って今日中には終わらせましょう」

提督「もちろんだ、頑張ろう」

不知火「司令、三日間、お疲れ様でした」

提督「ああ、お疲れ様、不知火」


提督「もうこんな時間か」

不知火「まだこんな時間ですよ、夜ご飯の時間にも早いくらいです」

提督「いや、昨日、曙の部屋に行った時に頼み事をしていてな」

不知火「そんなことがあったんですか」

提督「ああ、なんだかんだ言っても前秘書艦だからな、仕事くらい頼むさ」


不知火「なるほど、どんな頼み事を」

提督「色々とな、少し大きな仕事だから、今朝から動いてもらった」

不知火「不知火たちが遊んでた間にですか、曙には申し訳ありませんね」

提督「そろそろ終わりだな、何とか間に合わせた、我ながら完璧だ」


不知火「...あの、何の話でしょうか」

コンコン

不知火「...っ」ビクッ

提督「来客だ、不知火、通してくれ」

不知火「は、はい、分かりました、どうぞ」ガチャッ

不知火「なっ...!」


憲兵「失礼するよ」

提督「久しぶりだな、時間にきっちりなところは相変わらずなこって」

不知火「......」バッ

憲兵「どうしたんだい、嬢ちゃん、これじゃあ中に入れないじゃないか」

提督「...不知火、客人だぞ、失礼なことをなさるな」 


不知火「司令!お分かりでしょう!この人が何をしようとしているのか!」

不知火「この場で不知火が食い止めます!司令はお逃げ下さい!司令!」

提督「下がるんだ、不知火」

不知火「お願いします!司令!どうか諦観なさらずにして!」

提督「不知火」

不知火「っ」ビクッ


提督「.........」

不知火「...は、い」スッ

提督「すまないな、久しぶりの再開に水を差してしまって」

憲兵「良い子じゃないか、こんな美人に慕われていて羨ましいってもんだ」

提督「あのような粗相の後で申し訳ないが、自慢の秘書艦だ、勝手につばつけんじゃねーぞ」

憲兵「まさか、どちらかというと吐かれるくらいじゃないか」

提督「だろうな、よく分かってるこって」


提督「だろうよ、立ち話もなんだし座ったらどうだ」

憲兵「あまり時間もないものでな、自分にも、お前にも」

不知火「...!」ガチャッ

提督「不知火、武器を下ろせ」

不知火「ですが!」

提督「こいつは俺の旧友だ、友人に対して射撃許可など出せるもんか」


提督「それに、こいつを殺したところで、何も知らない奴にトドメを刺されるだけだ」

憲兵「よく知ってるな、逃げ切れると楽観視してる奴が最近増えてきてるってのに」

提督「責任ほったらかして平和なところに逃げだせるって思うほどお花畑じゃねーよ」

不知火「司令、まさか全部最初から知って...」

提督「もちろんだとも、旧友からの死刑宣告は辛かったぞ」

憲兵「命令は命令だからな、自分だって家族が恋しい」


提督「別にお前を責めちゃいねーよ、むしろ、こうして三日間の自由時間をもらったんだ」

提督「自分が死んだらどんな反応をするか、ちょっと気になってな、楽しい三日間だったよ」

憲兵「ホントにお前は変わってんな、本当のことは言わなくていいのか」

提督「今頃、前秘書艦が一人一人に真実を伝えに行ってるさ」


不知火「...さっきの、曙への頼み事とは、そのことですか」

提督「ああ、あいつを説得するのも大変だったけど、最後は泣く泣く聞いてくれたよ」

不知火「当たり前です!曙がどれだけ司令のことを思って...っ!」

提督「知ってる、だからこそだ、だからこそ、あいつは俺の願いを聞いてくれたんだ」

提督「曙は、自分のことしか考えられないような奴じゃない、あいつは、優しい子だ」

提督「文字通り、最後の願いを、自分の気持ちを押し殺してまで叶えようとする優しい子なんだ」


提督「すまないな、不知火も、そんな曙の気持ちを汲み取ってやってくれ」

不知火「...っ、うぐっ、だからって、そんな、ぁ」ポロポロ

不知火「ああぁぁぁぁ...っ」

提督「本当に、すまない」ポンポン

提督「あの子たちのこと、任せても良いんだな」


憲兵「前に話した通りだ、本来提督が死んだ鎮守府には後任が付くんだが」

提督「まあ、次の提督は大本営の息が強くかかった奴だろうよ、修羅場は免れないな」

憲兵「ああ、自分達の慕う上司を暗殺した側の人間だ、憎悪が増すことはあっても減ることはないだろう」

憲兵「提督への反逆行為は、如何なる理由があろうとも強制解体処分だ、言い方を変えれば」

提督「大本営での生体実験に利用され、一生を拘束されるってか、怖いねえ」

憲兵「それか、その場で射殺だ、もしもの時の為に、俺らは艦娘にも有効な弾丸を持ってるからな」


提督「今日持ってきたその弾丸の数は?」

憲兵「本来は鎮守府にいる艦娘の数だけ持っていく規定になってるんだが」

憲兵「今日は寝ぼけてたせいか、人数分の空薬莢しか持って来てないんだ、全く困ったもんだよ」

提督「さすがだな、それじゃあ、この後の段取りについて整理するぞ」

憲兵「まず、俺がお前を射殺する、重要書類等の処分は自分が管理しておこう」

提督「その間、鎮守府のほぼ全員の艦娘を解体する、そして、彼女達をここに縛る艤装を取り外す」


憲兵「彼女たちの新しい生活に関しては、同じような境遇の元艦娘たちが支援してくれるだろう」

憲兵「今日のフタサンマルマルまでに、全ての艦娘たちの解体を終えて、本土に送り返す」

提督「艦娘の時の記憶を残すかどうかは、それぞれの判断に任せている」

憲兵「一部は、その憎悪によって大本営への無謀な敵討ちをする奴もいるんじゃないか」

提督「そういう子には申し訳ないが、無理やり記憶を消去させてもらう、そこは曙の判断だ」


憲兵「なるほどな、遺書はちゃんとしたためたか」

提督「ああ、心置きなく、この鎮守府を焼き尽くしてくれ」

憲兵「『提督の死に気付いた艦娘の暴動によって火災が起きる、艦娘は全員反逆行為により射殺処分』か」

提督「物語を考えるのは好きだからな、上手くやってくれよ」

憲兵「任せろ、あくどいことは得意だ」


提督「さて、そろそろ時間だ、最後に、少しだけ時間をくれないか」

憲兵「もちろんだとも、最後の逢瀬を邪魔するわけにはいかないしな、外で待ってるぞ」

提督「いや、すぐに終わる、そこで待っててくれ」

不知火「し、れぃ...」グスッ

提督「...そういうことだ、不知火、今までありがとう」


不知火「いやです、いやです、いや、いや、いやぁっ!」ガシッ

提督「もう決まってることなんだ、選択肢は無いんだ、分かってくれ」

不知火「そんなことありません!逃げてみないと分かりません!」

提督「逃げても分かってるんだ、そんな簡単な話じゃないのはお前もよく分かるだろ」

不知火「分かりません!分かりません!分かりたくありません!」

不知火「あああぁ、うわああああああああああああん!」


不知火「お願いします、おねがいします、しれい、しれい...っ」

提督「ごめんな、お前と出会えて本当によかった」

提督「これからは、何にも縛られずに、自由に生きてくれ」

不知火「いやです!司令のいない、この先の未来なんていりません!」

提督「そんなことを言うな、お前にはまだまだこれからがある」

提督「辛いことも沢山あるかもしれない、でも、お前にはここで出来た仲間がいる」


提督「曙だっている、霞だっている、お前の姉ちゃんだって、いる、みんなみんないる」

提督「実家に送った遺書には、お前らのことも書いてある、俺の家族がお前らを見守ってくれるさ」

不知火「でも、そんな、の、っ、あぁ、ぅあ、ああぁぁぁぁ...」

提督「みんなのこと、よろしく頼んだぞ、不知火」スッ

憲兵「もう良いのか」

提督「徒に最後の時間を長引かせるのは良くないって、教わったもんでな」


憲兵「本当に、思い残すことはないんだな」

提督「可能なことは全部やり切った、これ以上は何も望まんさ」

憲兵「そうか」

提督「この後、すぐに部屋を出ていってほしい、まだ用事があるんだろ」

憲兵「用事?そんなもんあったか」

提督「ああ、ほら、あれだよ、あれ」チラッ

憲兵「...なるほど、そうだった、用事があったな、すぐ出ていく」


提督「さあ、そろそろお別れの時間だ、頼むぞ」

憲兵「痛みはないようにする、胸元に一発だ、綺麗に遺してやるよ」

提督「ありがたいもんだ、先にあの世で待っとくよ」

憲兵「どうせ、俺もすぐに行くことになる、適当に昼寝して待ってな」カチャッ

提督「お前に俺の最期を託して良かった」

憲兵「最大限の賛辞だな、誇りに思うよ」


提督「それじゃあ、また」

憲兵「ああ、またな」スッ

不知火「いやぁ、おねがい、しますっ、しれい、いかないで...っ」

不知火「まって、しれい、いかないで、まって、まって、まって!」

不知火「しれい!」

提督「...不知火」

パンッ


不知火「ぁ」

提督「っ、ぁ」ガタッ

提督「ぁ...」バタンッ

不知火「あ、あ、あぁ、あぁぁ」

不知火「司令!しっかりしてください!司令!司令!」バッ


提督「...っ......」

不知火「司令!司令!起きてください!司令!しれい!」

提督「...  」

不知火「...し、れぃ?」

提督「」


憲兵「...よい夢を」バタン

不知火「そん、な、うそ、うそ、うそですよね、ねえ、しれい」

不知火「ドッキリって、いってください、おきてください、おきて、ねえ、しれい、おきて」

不知火「いや、そんなこと、って、いや、うそ、ぁ、あぁぁ」

不知火「あ、あ、あぁ、ああぁぁ、あぁぁぁぁ...」

不知火「っぁ」


不知火「ああああああああああああああああああああああああああ!」

不知火「うわああああああああああああああああああああああああ!」

不知火「そんなああああああああ!あああああああああああああああああ!」

不知火「あああああああああああああああああああああああああああ!」

不知火「あああああああああ、ああ、あ、あ、あ、あ、あ、あぁぁ...」


不知火「は、はは、これは、夢なんです、あは、悪い夢、見てるだけ、そう、そう」

不知火「悪い、夢、だから、あは、は、は、うん、そう、あ、なか、み」

不知火「はやく、集めないと、あつめ、て、あつめないと、あ、しれい、が」ビチャッ

不知火「もとに、戻して、悪い、ゆめなんだから、はやく、はやく、さめて、ください」


不知火「ねえ、おねがい、ですから、うそだって、ドッキリだって、ほら、早くいって」

不知火「ドッキリ、ドッキリ、あは、ドッキリ、そうよ、そう、そう、そうなの」

不知火「…あ、あぁぁ、ほら、ほら、ドッキリじゃないですか、ほら、ほら」

不知火「ふふ、おはようございます、しれい、しれい、しれい、しれい、しれい…」ポロポロ


曙「不知火、いるんでしょ、入りたいんだけど」コンコン

曙「一応、ここは、あの、あいつの、部屋だから、許可取りたいんだけど」

曙「ねえ、聞いてる、もう他の子はみんな、船で運ばれてるわ」

曙「残ってるのは、私と不知火の二人だけよ、最後のボートも用意できてる」

曙「もう、火の手が回り始めてるわ、早くしないと、間に合わなくなるわよ」

曙「状況は、説明したからね、私は、あなたのことをよろしく頼むって言われたから」


曙「悲しむのはもう終わりにして、あいつが残してくれた将来に歩きだしましょう」

曙「...ほら、入るね、不知火」ガチャッ

曙「......」

不知火「曙、ですか、入る時はノックしてくださいね」

曙「なに、してるの」


不知火「司令と、お喋りしています、何も考えずに、何も、何も」

不知火「司令、曙が来ましたよ、謝らなくていいんですか、ほら、ほら」

不知火「ほら、司令、不知火を怒らせないでください、はやく、はやく」

不知火「ねえ、しれい」

曙「......」


曙「...いつまで、現実から逃げてるつもりなの」

不知火「なにを、いってるんですか、不知火は、ただ、ただ」

曙「気付いてるくせに、そんなの、あいつも、望んでないわよ」

不知火「なに、言ってるんですか、ちがう、ちがうの、不知火は、不知火、は」

曙「もういいから、ね、不知火」ギュッ


不知火「っ、あけ、ぼの、不知火は、しらぬいは」

曙「知ってる、全部知ってる、本当に、勝手な人、伴侶の目の前で死ぬなんて」

曙「でも、それでも、あいつは、クソ提督は、あなたのいる空間で、最期を迎えたかったんでしょうね」

曙「死ぬ間際に、好きな人と見つめ合えるなんて、幸せな人、本当に」

曙「ねえ、不知火、現実から逃げることは簡単なの、そして、幸せなことなの」

曙「でも、それはあいつが最期に遺した言葉も、無かったものにしないといけないの」


曙「不知火、思い出して、あいつが最後に伝えたかったこと、あるでしょ」

不知火「......ありがとう、って」

不知火「最後に、そう言って、司令、は、司令は、うぅ、ぅあぁぁ...っ」

曙「...そっか」

曙「あいつからの、伝言を預かってるわ」

曙「生きて、って、お前だけでも生きてくれって」


曙「最後の願い、叶えてあげなさいよ、秘書艦さん」

不知火「っぁ、うぅ、あああああぁぁぁ...」

不知火「は、い、はいっ...いきます、不知火は、生き抜いてみせます...っ」

不知火「ぜったいに、ぜったいに、いきて、みせますっ、だから、だからぁぁぁ...」

曙「...うん、あいつも、きっと、喜んでるわよ」

不知火「うぅぅ、っぁ、あああぁぁ...っ」


曙「最後の挨拶、しときなさいよ」

不知火「っ、し、れい、しれい、今まで、今まで、お世話に、なりました...」グスッ

不知火「いつか、不知火が、そちらに行くことになれば」

不知火「また、おねがい、します、ね...っ」

不知火「ああああぁぁぁ...うああぁぁぁぁ...!」


曙「...いこっか、不知火、ほら、肩貸してあげるから」

曙「今だけは、思う存分、泣いていいわよ」

不知火「うああああぁぁ...しれい、しれい、あああぁぁ...」

不知火「また、また、いつか、どこかで、お会いできる日を、信じています、からっ」

不知火「だか、ら、その時まで、さようなら、です」

不知火「ありがとう、ございました...っ!」バタン


不知火「あ、ああぁ、ああ、っう、ううぅ…」

不知火「うあああああああああああああああああああああん!」

曙「よしよし、不知火、よく頑張ったわね」

不知火「うあああああぁぁぁぁ.........!」


【 Bad Epilogue 】


足柄「今日の授業は、反逆行為と処分、その歴史ね」

響「上層司令部に叛逆をすると、どうなるんだい」

足柄「基本的には解体処分として除籍されるわ」

雷「基本的にってことは、例外があったの?」

足柄「ええ、練度の高い艦娘は捕縛が難しいからね、その場での射殺が許可されてるの」

暁「しゃ、射殺ってホント...?」


足柄「安心なさい、よっぽどの例外よ、今までで一例しかないわ」

電「だ、誰がそんなことしたのですか」

足柄「さあ、機密情報だからあまり詳しいことは知らないけれど」

響「知らないけれど...?」

足柄「大本営を襲撃した艦娘がいたそうよ、何を思ってかは知らないけれどね」

足柄「確か、陽炎型の二番艦が、射殺されたと聞いてるわ、さあ、次のページに移って」


【 Epilogue 】

大本営『敵艦接近の報あり、総鑑、全兵力を以て撃つべし』

不知火「...ようやく、ですね」

不知火(あれから二年、歴史は繰り返されることなく、状況は好転しました)

不知火(耐えて、耐えて、耐え抜いて掴んだ、人類の生きる道です)

不知火(数多くの悲しみを乗り越えた先に、ようやく見えた光です)


不知火(最早、深海棲艦は風前の灯火、恐らく、次の戦闘が最後となるでしょう)

不知火(不知火は、艦娘として最前線に立ち続けています)

不知火(他のみんなは、本土で、普通の女の子としての人生を過ごしています)

不知火(あの憲兵の手引きもあって、提督の旧友である方が総司令を担っている鎮守府に移り、そして)

不知火(あの鎮守府最後の艦娘として、この海を守り続けています)


不知火(もちろん、大本営の歯車を構成することに、最初は強く憎悪を覚えました)

不知火(何度、反旗を翻そうかと思ったか数えきれません、もしかしたら、そんな世界もあったかもしれません)

不知火(そんな時、不知火はいつも司令の言葉を思い出していました)

不知火(みんなを頼んだぞと、司令が下した、最後の命令です)

不知火(艦娘から普通の女の子に戻った仲間達も、この戦闘が続く限り、常に危険に晒され続けます)

不知火(不知火は、あの鎮守府の秘書艦として、そして、司令の命令として)

不知火(大事な仲間達を、そして、司令が愛していたこの海を守らなければいけません)


不知火(何度、自殺しようと思ったか、何度、絶望に打ちひしがれたか分かりません)

不知火(そのたびに、不知火を救ってくれた、過去の仲間達)

不知火(今度は、不知火が彼女達を救う番です)

不知火(司令、見ていてください、あなたの愛した海を、艦娘たちを、守ってみせます)


不知火「あちらの世界では、うんと労ってもらいますよ、本当に」

大本営『各員出撃準備よし、抜錨せよ』

不知火「不知火の落ち度ない成長ぶり、ご覧くださいね、司令、では」スゥ

不知火「水雷戦たん、出撃します!」



おしまい

この三日間、そして2カ月間、最後までお付き合いしていただき、本当にありがとうございました
言葉では言い表せないほどの感謝でいっぱいです、また皆様の前に現れることがあれば、よろしくお願いいたします

それでは、お疲れ様です、失礼します

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年05月30日 (月) 09:18:14   ID: -Gww0inw

まさかのオチ…

しかし素晴らしい作品でした

2 :  SS好きの774さん   2016年05月30日 (月) 18:09:21   ID: 2ZjQkd6w

おもしろかった
1日目、曙のドッキリが1番好き

3 :  SS好きの774さん   2016年05月30日 (月) 18:24:20   ID: 8hR4bWJL

最後の突然思いついたようなかんじのオチいる?(笑)

4 :  SS好きの774さん   2016年05月30日 (月) 23:36:58   ID: QZmMz-1W

※3
そのコメントいる?(笑)

5 :  SS好きの774さん   2016年05月31日 (火) 16:46:27   ID: GT8DW5bG

死後の話はよ

ぬいぬいを思いっきり甘えさせてやってください

6 :  SS好きの774さん   2016年05月31日 (火) 21:55:27   ID: gl4ohZnB

面白い作品でした!
ただ内容が良かったために余計にハッピーエンドがあって欲しいと思ったりします...(^^;

7 :  SS好きの774さん   2016年05月31日 (火) 23:29:25   ID: 9oybmlT0

※3
読み返せば伏線だらけで

8 :  SS好きの774さん   2016年08月11日 (木) 00:42:14   ID: hBLm7g-C

素晴らしい……

よいものをありがとうございました

9 :  SS好きの774さん   2016年08月28日 (日) 23:24:53   ID: uu_BoLHI

とてもいい話だったよ
ありがとう

10 :  SS好きの774さん   2017年04月11日 (火) 01:50:09   ID: OW6UId99

ラストで泣いてから、ずっと泣いたまま書き込んでいます。どうせ、ドッキリなんだろ(願望)。提督よ、はよでてきて、ぬいぬいを抱きしめたげて!!!

11 :  SS好きの774さん   2017年04月11日 (火) 01:53:49   ID: OW6UId99

ドッキリだと言ってくれ···。

12 :  SS好きの774さん   2017年08月23日 (水) 02:46:23   ID: XYyb22SF

このイッチの別の作品が非常に読みたくなった。

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