提督(うんこがしたい) (47)

提督(便意とは突然、訪れるものだ)

提督(入れたものは出す。排泄とは生物としての摂理)

提督(それは分かってはいるが、ヤツはいつも予告なしに現われる)

提督(食事中だろうが、仕事中だろうが、こちらの都合などおかまいなしだ)

提督(早く出せと言わんばかりに、私の括約筋を悩ませる……)

提督(つまり、何が言いたいかと言うと)

提督(うんこがしたい)

提督(この一言に集約される)

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大淀「……督? 提督? 聞いていましたか?」

大淀「今期の大規模作戦についてですが……」

提督「ああ、聞いていたよ」キリッ

提督「航空基地設立は、今後を見据えての重要な任務だ」

提督「是非ともやり遂げたい……が、そのためには陸戦隊との連携が必要だ」

提督「駆逐艦を中心に、近海で再演習しておこう」

提督「こればかりは、やり過ぎるということはないだろう」

提督(うんこがしたい)

長門「しかし、提督よ」

長門「敵の大規模艦隊も発見されている」

長門「そちらを無視するわけにもいくまい」

提督「大本営からは、航空基地設立が先だと言われているが……」

提督「当然、そちらも叩く」

提督「これには戦艦、空母を中心とした艦隊を当てる」

提督「貴様らの力、頼りにしているぞ、長門」キリッ

長門「ああ!」

提督(うんこがしたい)

曙「待ちなさいよ、クソ提督!」

曙「あれもする、これもする、どっちも上手くしてみせる、ですって?」

曙「そんなに私たちを使ったら、資源が足りなくなるでしょ!」

曙「そんなことも分からないの!?」

提督「いや、問題ない」

提督「資料の21ページ目を見てくれ……そうだ、そのページだ」

提督「我が鎮守府にも、駆逐艦戦力が充実してきた」

提督「こちらを遠征に回せば、十分、資源はまかなえる」

提督(うんこがしたい)

提督「お前たちには苦労をかけるが……」

提督「これも日本、ひいては世界のためだ」

提督「ひとつ、よろしく頼む」ペコリ

曙「……!」

曙「ふっ、ふんっ! だらしないんだから!」

曙「いいわよ、やってあげるわよ! これでいいんでしょ!」プイッ

提督「ああ、助かる」ニコッ

曙「……!」ドキッ

提督(うんこがしたい)

大淀「さて、それでは、今後の目処も立ちましたね」

大淀「それぞれの隊は、大規模作戦に向けての再演習を……」

大淀「提督。提督は、付随する書類に認可をお願いいたします」

提督「ああ、分かった」

大淀「それでは、今回の会議はここまでとします」

大淀「皆様、お疲れ様でした」

提督(うんこができる……?)

金剛「テートクゥ! お疲れデース!」ダキッ

時雨「今回も僕たち駆逐艦の出番だね。頑張るよ」ギュッ

提督「こらこら、よしなさい」

響「特に、大発が積める艦が必要みたいだね」

皐月「まっかせてよ! 司令官のために頑張るよ!」

ワイワイ キャッキャッ

提督(うんこがしたい)

提督(……まずいな)

提督(これ以上、我慢をしてしまえば、深刻な事態に陥りそうだ)

提督(しかし、私にも帝国海軍士官としての矜持がある)

提督(間違っても、婦女子の手前、厠に行くなどと口に出すわけにはいかんのだ)

提督(ここは我慢……我慢だ……)

提督(忍耐力が試されるときだ、提督)

提督(ああ……だが……)

提督(うんこがしたい)

~十分後~

金剛「それじゃ、提督ぅ。また後でネー」ヒラヒラ

提督「ああ、夕食の席で会おう」

バタン

提督「……」

提督(よし、行ったか)

提督(これで厠に行ける……便意を解消できるのだ)

提督(後は刺激を与えず、なるべく早く厠へ……)

提督(そして、うんこを出すのだ)

提督(さて、廊下に出たが……)

提督(ここからが正念場だ)

提督(廊下の角を曲がって、突き当りの右にある厠へ)

提督(寄り道をするわけにはいかない。羅針盤を逸らせるのは以ての外だ)

提督(可及的速やかに、出来るだけ目立たないように……)ソソクサ

加賀「あら、提督」バッタリ

提督(うんこがしたい)

提督「加賀か」

提督「どうした、会議室に忘れ物か?」

加賀「いえ、あなたを探していたの」

提督「私を? どうして?」

加賀「……航空基地のことなのだけど」

加賀「海軍は今後、空母戦力を縮小するつもりなのかしら?」

提督「なんだ、そんなことか」

提督「それはない。あり得ないぞ、加賀」

提督(うんこがしたい)

提督「航空機の行動範囲も、日増しに拡大してはいるが……」

提督「それでもなお、空母の機動性、即応性には敵わない」

提督「航空基地は、あくまで補助的な役割しかなく……」

提督「航空戦の華は、やはり、加賀」

提督「貴様ら空母なのだよ」ニコッ

加賀「提督……」

提督(うんこがしたい)

提督「不安は解消できたか?」

加賀「ええ。煩わせてごめんなさい」

提督「いいんだ。艦娘の不安を解消するのも、提督の役目だからな」

加賀「……それだけ?」ポツリ

提督「ん? 何か言ったか?」

加賀「い、いえ、何でもないわ」カーッ

タタタッ……

提督「行ってしまった……」

提督(うんこがしたい)

提督(これで何の問題もなくなった)

提督(厠はもはや目前だ。後は入って出すだけだ)

提督(ああ、タイルの湿った香りまで届いてきたぞ……)

提督(うんこがしたい)

提督(ははは、そう急くな。今、存分に解き放って……)




空襲警報、発令!!!!



提督「なにぃぃぃぃぃっ!?!?!?」

大淀『提督、この放送が聞こえていますか!?』

大淀『至急、執務室までお越しください!』

大淀『そして、艦隊の指揮を!!』

提督「あ、あああ……!?」

提督「い、いや、しかし、うんこ、うんこが……」

提督「だが、今は数分の遅れが致命的に……」

提督「だが、だが、厠はもう目の前に……」

提督「……くそっ!!」ダッ!

~執務室~

提督「すまない、遅くなった!」

大淀「いえ、大丈夫です!」

大淀「しかし、予断は許されません」

大淀「敵は戦艦棲姫率いる艦隊です」

大淀「ただちに出撃命令を!」

提督「ああ!」

提督(うんこがしたい)

提督「まずは空母を出撃させ、制空権の確保を!」

提督(うんこ)

提督「続いて、大和を中心とした主力艦隊を編成!」

提督(うんこが)

提督「軽巡、駆逐艦は、潜水艦、PTの警戒を!」

提督(うんこがしたい!!!!)

提督(これで目下の危機は凌げるはずだ)

提督(だが、私の方は……)

提督(もう駄目だ、限界だ)

提督(厠へ行くまでの猶予は……)

提督(もう、私には残されていない……)

提督(だが、手はある)

提督(大淀の意識が通信に向けられている今)

提督(こっそりと、湯飲みに便を排出するのだ)スルスル

提督(苦渋の決断とは、まさにこのこと)

提督(しかし、私にはもう、この道しかないのだ……)

提督「……」

提督「……いざっ!!」カッ!

――その時だった。

二体目の戦艦棲姫が、警戒網を潜り抜け、執務室を強襲したのは。

戦艦「ハハハ! ハハハッ!」

戦艦「コレデ、オワリヨォ!」グワッ!

振り上げられる巨腕。

執務室に響く、大淀の悲鳴。

しかし、提督の心に恐怖はなかった。

あるのはただ、闖入者への苛立ちだけ。

自分はこんなにもうんこがしたいのに、なぜ、それを邪魔するのか――。

苛立ちは怒りへと代わり、怒りは心を濁らせて。

絶体絶命の窮地に立った提督は。

通常ならば、あり得ない行動に出た。

戦艦「ハハハ……ンムゥ!?」

戦艦棲姫の笑い声を塞いだのは、提督の引き締まった臀部だった。

うんこをしようとしていたのだ。すでにズボンは脱いである。

その露わになったケツで、提督は砲弾のように戦艦棲姫の口に飛びついた。

戦艦「貴様、何ヲ……!?」

目を白黒させる戦艦棲姫。

提督を殺すことも忘れ、彼女はただ、うろたえている。

――だが。

彼女の常識を超える惨劇は、今、ここから始まるのだ。



――ボッ!!!!


果たして、執務室に響いたのは、爆撃の音でもなく、砲撃の音でもなかった。

それは、溜まりに溜まったガスが、栓のように詰まった便を、爆発的にひり出す音。

当然の帰結として、便器代わりの戦艦棲姫の口には、便とガスとがたちまち溢れた。

だが、事態はこれで終わらなかった。終わるわけがなかった。



ブリブリブリブリブリ――ぶぼおっ!!


そう、主力艦隊の砲撃が始まったのだ。

帝国海軍、健康的な提督の食事量は、常人の倍量を上回る。

それに比例し、便の量も倍々に増えていくのが道理だ。

戦艦「~~~~~~~~~~っ!?!?!?」

今や床に倒れ、口で、いや、顔中で提督の便を受け止めるだけの便器になった戦艦棲姫。

彼女はしばらくの間、手足をばたつかせていたが――。

頭部が糞便で埋め尽くされる頃、ゆっくりとその動きを止めた。

金剛「テートクゥ!」

長門「無事かっ!?」

事が済んだと同時に、艦娘たちが執務室に雪崩れ込んできた。

――そして、彼女らは見た。

血の気の失せた顔で、腰を抜かした大淀。

その視線の先にいる、床に横たわった戦艦棲姫。

そして、その顔に跨って、最後のふんばりをしている提督――。

語らずとも分かる、明確な真実。

それはあまりに残酷な光景だった――。

~一週間後~

提督(あれから一週間が経ち)

提督(破壊された施設も、すっかり元通りとなった)

提督(戦艦棲姫も泣きながら逃げ帰り)

提督(あれ以来、姿を見せる気配さえなかった)

提督(天下泰平、事もなし)

提督(航空基地の設立も順調で)

提督(近々、私が昇進することも決まった)

提督(………………)

提督(だが、失ったものは大きかった)

提督(あれ以来、みんな、私を労わるようになった)

提督(たかが一時間の会議で、何度も用足しを勧められるようになった)

提督(明石は携帯便器を開発してくれて、長門は士官用トイレの増設を上申してくれた)

提督(そして曙は、私のことをクソ提督とは呼ばなくなった――)

提督(………………)

提督(……誰も私を貶さないが)

提督(それがかえって、虚しかった)

提督(胸に開いた穴を、どうやって塞いだものか)

シタイ……

シタイ……

うんこが、したい……

提督(ああ、今日もまた、あの声が聞こえる)

提督(そうだ、いくら疎ましく思おうとも)

提督(人と便意とは、決して切り離せない。我慢など、できようはずもない)

提督(これもまた、人間の業なのだ……)

~完~

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年05月27日 (金) 08:17:49   ID: SYByPHtu

なんだこれ・・・なんだこれ・・・

2 :  SS好きの774さん   2016年05月27日 (金) 11:46:03   ID: mYciDdJr

これが星4つ評価という事実

3 :  SS好きの774さん   2016年05月27日 (金) 16:37:53   ID: Ce7zXxHy

疾走感のあるssほんとすこ

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