エルフ「わたしって意外と義理深いのよ」 (34)

※エルフものです。もう見飽きたわって方には申し訳ない。
※青年=10代後半、エルフ=20代前半くらいのイメージで書いてます。
※まったり書いてまいります。


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エルフ「あなた、その年でエルフを買えるなんて何者なのかしら」


エルフ「わたしたちを買えるのは基本的には王族か貴族くらいなものだって聞いてるけど」


青年「元貴族です。お金は家から持ち逃げしました」


エルフ「あら、そう。おぼっちゃまってわけね」


エルフ「で、持ち逃げしたってことは家出かしら」


青年「そうです。あそこに戻る気はありません」

エルフ「見かけによらず大胆なことをしたものね。で、その家出の軍資金は私を買うためにすべて使ってしまったというわけだけれど」


青年「はい。後先考えずに使ってしまいました」


エルフ「とんだ見切り発車ね。これからどうするつもりなのかしら」


青年「どうしましょう。正直、何も考えてません」


エルフ「とんでもなく間抜けなご主人様にあたってしまったようね」

青年「すいません。どうしたら良いと思いますか」


エルフ「これでは主従関係が逆転しているような気がするけれど」


エルフ「とりあえず、その身に付けている宝石を換金するというのはどうかしら」


青年「これですか?」キラリ


エルフ「ええ、そうよ。宿無しはいやでしょう?」


青年「わかりました。まずはこれを売ってお金を作りますね」

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青年「宿が取れて良かったですね」


エルフ「で、これからどうするつもりなのかしら」


青年「何も考えていません。ただ、あの家にはいたくない。それだけです」


エルフ「まぁ、あなたの過去に興味はないし、詮索するつもりもないけれど」


エルフ「私を買った理由くらいは教えてくれるかしら?」


青年「うーん。誰かにそばにいてほしかったからですかね。」


エルフ「女々しい理由ね。それにその理由だったらわたしである必要はないんじゃないかしら。


    もっと安い・・・人間の奴隷だってよかったはずでしょ?」

青年「それと、あなたがとても綺麗だったから。だから選びました」


エルフ「あらそう。情けない顔してる割に口は達者ね」


エルフ「ところで、私はこれから何をすれば良いのかしら?」


青年「別に特にしてほしいことはないですよ」


エルフ「契約上、あなたは私のご主人様ということになっているのよ。わかってる?」


青年「わかってますよ。でも、別に普通にしててくれれば良いです」


エルフ「私が言うのも変だけれど、本当になにもしなくていいの?」

青年「はい、そばにいてくれればそれでいいです」


エルフ「まぁそれならそれで好きにさせてもらおうかしら」


青年「そうしてください。逆にエルフさんは何をしたいですか?」


エルフ「わたし?・・・まずは、そうね。夕食を食べたいのだけれど」


青年「わかりました。宿の者に手配させます」


エルフ「本当に好きにさせてくれるのね」

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青年「おいしかったですね」


エルフ「奴隷商に飼われていたころではとても味わえない食事だったわ」


青年「それは良かったです」


エルフ「ところで、あなた、奴隷を買うという意味がちゃんと分かっているのかしら?」


青年「はい、おもに労働力の補填としてですよね。僕の家にも何人かいました」


エルフ「そうね。まぁエルフが奴隷として売りに出される場合は愛玩具としての


    意味合いが強いのだけれど」


青年「・・・」

エルフ「もし、そんな辱めを受けるような命令をされてしまったら、舌を噛み切って

    死んでしまいたいところだけれど」


エルフ「契約が結ばれている以上、逆らうことはおろか自ら死ぬこともできない」


エルフ「わたしったら、なんてかわいそうな身の上なのかしら・・・」チラッ


青年「・・・」


エルフ「・・・あなたすごく悲痛な面持ちになってるわよ」


エルフ「とりあえず、今日は疲れたわ。もう寝てもいいのかしらご主人様?」


青年「ど、どうぞ」


エルフ「お休みなさい」


青年「お休みなさい」

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-次の日の朝-


エルフ「おはよう」ファーッ


青年「おはようございます」


エルフ「今日もわたしへの命令はないままかしら」


青年「はい、ないです」


エルフ「そう。ところで、いつまでもこんな生活は続けられないと思うのだけれど」


青年「そうですね。作ったお金もそのうち底を尽きますものね」


エルフ「これからどうやって日銭を稼ぐおつもりかしら」


青年「どうしましょう?」


エルフ「ご主人様の意のままに」

青年「それじゃぁ仕事を探してきます」


エルフ「どんなお仕事をわたしに与えてもらえるのか楽しみでしょうがないわね」


青年「いや、自分の仕事を探してくるつもりです」


エルフ「え、じゃぁわたしは?」


青年「別に何もしなくて良いですよ。部屋で休んでてください」


エルフ「あなた、本当にわたしをどうしたいの?」


青年「別に何も考えていませんけど」


エルフ「あらそう。まぁそれならそれでいいわ。」


エルフ「しっかり頑張ってくださいね。ご主人様」


青年「任せてください」

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-その日の夜-


エルフ(暇だわ)


青年「遅くなりました」


エルフ「あら、お帰りなさいませご主人様。それで、お仕事は見つかったのかしら」


青年「見つかりましたよ。商館でのお仕事なのですが、代書を引き受ける仕事です」


エルフ「代書人ね。かなり実入りの良い仕事だと聞いたことがあるわ」

青年「はい。この町には字の読み書きができる人間は少ないということでしたので、重宝がられました」


青年「それで、早速今日から発注書の代筆を頼まれたので、その分のお給料を頂きました」チャリッ


エルフ「一日でそれだけ稼ぐことが出来れば、このままこの生活を続けることが出来そうね」


青年「よかったです。まさか字を書くだけでお金になるとは知りませんでした」


エルフ「誰しも何か一つくらい取柄はあるものなのね、ちなみにこれはほめ言葉として受け取ってくれて構わないわ」


青年「ありがとうございます」


エルフ「それはそうとご主人様。さすがにこのままだと退屈すぎて死んでしまいそうなのだけれど」

青年「それは困りましたね」


エルフ「ええ、とても困っているの」


青年「僕が出かけている間に町を出歩いてみてはいかがですか?」


エルフ「エルフが独りで歩いてたって何も愉快なことなんてないのよ。


    人間たちから白い目でじろじろ見られるだけでしょうね」


青年「そういうものなんですか」


エルフ「そういうものよ。温室育ちのお坊ちゃまにはわからないかもしれないけれど」


青年「すいません。不勉強なもので」


エルフ「別にあなたの不学を責めているわけではないのだけれど」


青年「どうしたら良いのでしょうか」


エルフ「そうね、あなたの仕事を手伝わされる憐れなエルフとして」


エルフ「明日から、あなたが働く商館に同行させてもらいたいのだけれど。それで良いかしら?」


青年「そんなことは出来ません。僕はあなたに苦労をかけさせたくないのです」


エルフ「あら、でないと暇すぎて舌を噛み切って死んでしまうかもしれないわよ」


青年「契約で結ばれている以上、自殺はできないのですよね?」


エルフ「孤独は死に至る病、という言葉を知っているかしら。このままでは自殺ではなく病死してしまうかもしれないわ」


青年「それは大変です。それでは明日から僕についてきてください」


エルフ「はい喜んで、ご主人様」

今日は終わりかな
乙です

義理深い?

>>15
おつん、続き楽しみにしてる

とりま乙
期待してるで

ふむふむ

ロボットか

義理堅いじゃないのか…(困惑)

ご指摘いただいた通りタイトルの日本語間違えましたぁぁぁ!

せっかく立てたスレなのでとりあえずは進行します!


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-次の日 漁港- 


ガヤガヤ


青年「磯の香りがします」


エルフ「ここも人間だらけね。どうして神様は彼らをもう少し間引いてくれないのかしら」


青年「時々辛辣なことを言いますね」


エルフ「気にしないでちょうだい。あまり深く考えて発言してるわけではないの」


青年「わかりました。あまり気にしないようにします」


エルフ「それはそうと、船から荷揚げをするときってまるでお祭りみたいなのね。騒がしいわ」


ワーワー ソレハコッチダ! コレハソッチダ! ワーワー


青年「とても賑やかですね。僕が以前住んでいた町には港などなかったので新鮮です」


エルフ「エルフであるわたしのことなんか、目に入らないくらいみんな忙しそうね。結構なことだわ」


青年「目立ちたいのですか?」


エルフ「そういうことを言っているのではないのだけれど。むしろ、目立ちたくないのよ。路傍の石と同じ扱いが良いの」


青年「そうなのですか。こんなにきれいな方なのにもったいない気がします」


エルフ「あら、ほめてくれてるの?やさしいご主人様に仕えるわたしは果報者ね。なんて幸せ者なのかしら」


青年「照れてしまいますね」


エルフ「あからさまなリップサービスのつもりだったのだけれど。まぁいいわ。ところで、商館はまだなのかしら」


青年「あの荷馬車がとまっている建物が例の商館です」


エルフ「あら、なかなか立派な建物。さぞ儲けていらっしゃるのでしょうね」


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-商館の中-


ガヤガヤ ガヤガヤ


エルフ「人が入り乱れて活気に溢れているわね。目が回りそうだわ」


青年「この町でも一番大きい商館らしいです」


エルフ「人間の世界ってどうしてこんなにもせわしないのかしら。理解に苦しむわ。まぁ別に理解できなくても良いのだけれど」


商人「お、あなた様は!」スタスタ


商人「今日も一つよろしくお願いします」


青年「こちらこそよろしくお願います」


商人「それで、そこの・・・エルフはあなた様の奴隷で?」


青年「僕のお手伝いとして連れてきました」


エルフ「」ペコッ


商人「左様でございますか・・・もちろん奴隷に対して給与は発生しませんがよろしいですかな?」


エルフ「存じております。ご主人様早速お仕事に取り掛かりましょう」グイグイ


青年「・・・」


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書室


青年「僕は不思議に思いました」


エルフ「世間知らずのあなたにとって世の中には不思議が満ち満ちているのでしょうけれど、今回は何が不思議だったのかしら」


青年「あの商人にとってエルフ=奴隷という図式が成り立っているようだったので」


エルフ「あら、あなた本当に何も知らないの。まさか知らないふりをしてからかっているのかしら」


青年「本当に知らないのです」


エルフ「エルフと人間は昔、互いに忌み嫌い合う存在だった・・・歴史で習わなかったのかしら」


青年「すいません。エルフとの歴史に関しては教わっていないもので」


エルフ「まぁいいわ。良い機会だから教えてあげる。私たちが生まれるはるか前のことになるのだけれど」


エルフ「再三の忠告を無視して自然を汚し続ける人間、エルフたちが一斉に武器をとったことがあったの」


青年「なるほど。過去に戦争があったというわけですね」


エルフ「そう。その戦争に負けたエルフはほとんどが殺されてしまったか、奴隷として人間にこき使われるようになったの。」


エルフ「だから歴史を学んでいる人間にとってエルフは奴隷以外の何ものでもない、というのも無理からぬ話ね」


青年「それはひどい話ですね」


エルフ「ええ、本当にひどいわ。ひどすぎて言葉にならないくらい」


エルフ「まぁ、わたしの祖先のようにその戦争から生き延びたエルフたちもいるのだけれど」

青年「あなたにも家族がいるのですか」


エルフ「ええ、いるわよ。もちろん。ここから遠く離れた森の奥にエルフの集落があってそこにみんないるの」


青年「それならなぜ、あなたは家族とはぐれてしまったのですか?」


エルフ「あれは一生の不覚だったわ」


青年「聞かせてください」


エルフ「あまり面白い話ではないのだけれど」


青年「非常に気になります。」


エルフ「あらそう。いいわ、話してあげる。ある日、薬草を探しに遠出をしたときに運悪く道行く奴隷商に見つかってしまったの」


青年「・・・」


エルフ「想像してみて。無抵抗の可憐な女性が大勢の醜男たちに襲い掛かられる様を」


青年「むごいですね」


エルフ「そう。とてもむごかったわ。多勢に無勢とはあのことかしら」


青年「そして、そのまま奴隷としてさらわれてしまったのですね」


エルフ「ええ。それからあなたに買われて今に至るというわけ。お分かりいただけましたかご主人様」


青年「はい。あの、ご愁傷様です」


エルフ「あなた、もう少しやさしい言葉を選んでくれてもバチはあたらないと思うわよ」


青年「すいません」

エルフ「まぁいいわ。お仕事、さっさと片付けてしまいましょう」


青年「そうですね。ではお手伝いよろしくお願いします。ところでエルフさんは字を読めますか?」


エルフ「それなりに読めるわ。書くことはできないのだけれど」


青年「十分です。それでは、まずは書類の整理からお願いしても良いですか」


エルフ「ご主人様なのだから、ここはお願いではなくて命令ではないのかしら」


青年「そうでした。では改めて。書類の整理をして下さい」


エルフ「はい、ご主人様」


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青年「あらかた今日の作業は終わりましたね」


エルフ「ええ、やはり一人で過ごしているときよりも時間の経過が何倍も速く感じられたわ」


青年「労働とは尊いものであると神もおっしゃっています」


トントン


青年「どうぞ」


キー


商人「失礼します、今日もお疲れ様でした。こちらが本日の給料となります」チャラン


青年「少し多いような気がするのですが」


商人「お連れ様の働きぶりに少しばかり感謝の念を込めさせていただきました。その分、貨幣も重くなったのでしょう」


エルフ「え」キョトン


青年「なるほど。それではありがたく頂戴いたします」


エルフ「あ」ペコッ


商人「それでは、また明日もよろしくお願いします」

商人いい奴だな

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