もし戦車道の副隊長がドラッカーの『マネジメント』を読んだら (31)

桃「会長!ドラッカーの『マネジメント』ってご存知ですか?」

杏「…まあ知ってるけど、どうしたの藪から棒に」

桃「ご存知なら話は早いです!これって戦車道における戦車の運用や訓練の効率化に
非常に役立つと思うんです!」

杏「河嶋、急にどうしたの、なんかあったの?」

柚子「桃ちゃん、そういえばこのところお昼休みのときとか、熱心に『もしドラ』
読んでたよね?」

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杏「あのさあ、河嶋、ドラッカーの原書のほうならまだしも、今更『もしドラ』はないでしょ。
どうせブックオフで百円だったとかそんな理由なんだろうけど」

桃「会長!なんで知ってるんですか!」

杏「え…、本当にそうなの?」

柚子「桃ちゃん…、あなたって人は…」

桃「と…とにかく協力してください!大洗の戦車道の新たな一歩に
なるかもしれないんです!柚子、頼んだぞ!」

柚子「あ、ちょっと!桃ちゃん!」

杏「小山、悪いけどお目付け役お願い。昔から河嶋がああなると歩きはじめの
乳幼児並みに身が離せなくなるから」

柚子「そうでしたね…、わかりました…」

桃「全員傾聴!これから新たな戦車の運用に関する私の提案を聞いて欲しい!諸君はドラッカーについて
なにか知っていることはあるか?」

桂利奈「えーっと、特撮に出てくる悪の組織?」

梓「違うよ、ほら、会社の経営がどうとかってなんか難しい本を書いた人」

あゆみ「ああ、あれでしょ、『もしドラ』の元ネタになったヤツ」

あや「ああ、あれね、先週『もしドラ』ってケーブルテレビでやってたけど、河嶋先輩も
あれ観たのかな?」

あゆみ「監督役の大泉洋がよかったよね」

あや「あの映画、後半はほとんどドラッカー関係なくなってない?」

優季「私、彼と映画館で観たんだけど、飽きちゃったのか、途中から肩抱いてきて…」

あや「ええっ!そ…、その後どうなったの!?」

桂利奈「うわあ、すごく気になる!どうなったの!どうなったの!」

優季「その…、ここでは言いにくいんだけど、彼、太ももにも手を伸ばしてきて、
私、『他の人にバレちゃうよ…』って言ったんだけど…」

あゆみ「…で、その後は?」

沙織「ちょっと!ママそんなの許しませんよ!」

麻子「いつママになったんだ」

桃「お前らなあ…」

みほ「ちょっとみんな!河嶋先輩の話をちゃんと聞こうよ!」

梓「そうだよ!西住先輩もこう言ってるんだし!」

桃「お前ら西住の言うことなら素直に聞くんだな…」

杏「まあまあ河嶋、静かになったところで続きを頼むよ」

桃「そっ…、そうですね、では続きを…、では手元に配った資料を見てくれ」

優花里「河嶋先輩、今どき手書きの資料って…」

桃「うるさいな!私は文案が専門で普段は校正やプリントは柚子の担当なんだ!」

柚子「桃ちゃん…、いいかげん機械の使い方覚えてよ…」

桃「ドラッカーの『マネジメント』には、『専門家は専門用語を使いがちである。専門用語なしでは話せない。
ところが、彼らは理解してもらってこそ初めて有効な存在になる。彼らは自らの顧客たる組織内の同僚が必要と
するものを供給しなければならない』とある。そこで、戦車道のわかり難い戦術や車輌の専門用語について、
西住や秋山を教官役にして…」

優花里「あ、それ既にやってます」

桃「ええっ!?」

柚子「あのね桃ちゃん、西住さんや秋山さんはいつも練習が終わって片付けも済んだ後で、
みんなのために座学を開いているの。会長が練習終わった後で片付けサボって抜け出すのに
桃ちゃんが付き合っていなくなるから桃ちゃんが知らないだけなの」

桃「そ、そうだったんだ…」

杏「河嶋が思いつくようなことはとっくに西住ちゃんたちがやってるってことなんだね」

梓「西住先輩の戦術講座ってわかるまで丁寧に教えてくれてみんなとても助かってます!」

優季「秋山先輩の戦車講座やエルヴィン先輩の戦史講座もとても面白くて毎回楽しみにしてるし」

柚子「桃ちゃん、会長がサボってるからって桃ちゃんまで付き合うことないと思うの」

桃「いや、いろいろと会長のお世話もあるし…」

柚子「お世話って干し芋買いに行くくらいのもんでしょうが」

華「心理学や精神医学で言うところの共依存というやつでしょうか」

麻子「そんな大層なもんじゃないだろ、ただの怠け者二人組だ」

あや「でも、河嶋先輩はともかく会長だったらそういうの許せるな」

あゆみ「ああ、それわかる、細かいことは私たちに任せてどっしり構えててくださいっていうか」

梓「会長が自ら動くときって本当の非常事態だよね」

優季「普段は封印されてる最終兵器って感じ?」

桂利奈「北斗の拳のデビルリバースみたい」

あや「会長がデビルリバースなら河嶋先輩がジャッカルで西住先輩がケンシロウかな」

杏「ちょっとあんたら、温厚な私もさすがに怒るよ?デビルリバースはないでしょうが。
でも、河嶋がジャッカルってのは合ってるかも」

桂利奈「そうですよねえ!口先キャラっていうか」

桃「うぇぇぇぇぇん!みんなのバカー!」

柚子「あっ!桃ちゃん!」

杏「うーむ、ジャッカルは言い過ぎだったかな、フォックスかホークにしてあげればよかった」

優花里「あの…、それだと余計ダメだと思います」

杏「あー、いたいた。やっぱりここだったか」

桃「失敗してー落ーち込んだー♪…ぐすっ」

みほ「部屋の隅にうずくまって泣きながら鼻歌うたってる…」

優花里「声かけづらいなあ」

柚子「桃ちゃん、これに懲りたらもう思いつきだけで行動するのはやめたほうがいいよ」

桃「いつもそうだよね…、先輩らしいとこ見せようとしていろいろやっても全部空回りで、大失敗して
無様なとこ見せちゃって…、自分でもわかってるんだ…、ポンコツのダメ人間なんだって…」

柚子「桃ちゃん…」

桃「副隊長なんて言っても、戦車に関しては西住どころか武部や秋山にも敵わないし、
生徒会の実務能力も胸の大きさも柚子のほうがずっと上だし…」

柚子「最後のは関係ないんじゃ…」

みほ「待ってください!河嶋先輩はダメ人間なんかじゃありません!」

みほ「そりゃ、初めて会ったときは感じ悪いなって思ったけど、あれは廃校を防ぐために一生懸命
だったからあんな態度になったってわかったらすごく真面目ないい人だってわかったし、なにより
私、隊長としてちょっと頼りないところがあるって自分でもわかってるんですけど、河嶋先輩が協力
してみんなを統率してくれたから、ここまでやってこれたんです!」

みどり子「そうよ!河嶋さんが綱紀粛正に協力してくれたから、私たちも戦車道履修者に対しては
若干名を除いてうるさいこと言わないですんだんだから!」

麻子「それ、私のことか?」

みどり子「他にいないでしょ!」

梓「そうですよ!河嶋先輩のそのキャラは、武部先輩の婚活戦士ゼクシィ武部みたいに
みんなから愛されてるんですから!」

沙織「これが終わった後で1年生は全員集合ね、噂の出所がはっきりするまで帰れないと思って」

柚子「だからね、焦ることないんだよ。みんな桃ちゃんのこと本当は頼りにしてるんだから」

桃「うぇぇぇぇん!柚子ちゃぁぁぁん!」

柚子(かっ…、かわいい!二人っきりだったらギュって抱きしめて『よしよし』してあげるのに!)

みほ(河嶋先輩かわいいなあ…)

優花里(萌えています!副隊長殿が熱く萌えています!)

華(ああっ♡連れて帰って土蔵の二階に監禁したいくらいかわいいです!)

麻子(あざとい可愛さだな…)

沙織(ラブコメの定石、『気の強い少女が泣くとかわいい』をここまで忠実に再現するとは…、
もしここに男がいたらと思うと、河嶋先輩、恐るべし…)

杏「そうだよ、確かに河嶋は頭悪いし口も悪いし、輪をかけて腕も悪いけど、それなりに
役に立ってるんだから」

桃「びぇぇぇぇん!会長のバカー!」

柚子「会長!なんてこと言うんですか!せっかくイイ話で終わりかけてたのに!」

杏「ごめん、今のは失言だった。でもあんまりかわいいからつい意地悪したくなっちゃって…」

みほ「あ、でもそれわかります。私も黒森峰にいたころ、あんまりかわいいものだからお姉ちゃんと
二人して逸見さんを牝犬肉奴隷に…」

優花里「そ…、それは意地悪とはちょっと方向性が違うような…」

華「清掃用具のロッカーの中に入っちゃいましたよ」

麻子「中で泣いてる…」

杏「まいったなあ、河嶋があれ始めるとなかなか出てこないんだよね。前回は4時間近く
立てこもってたし」

沙織「前にもあったんだ…」

杏「前回は小山と二人で応援部から借りてきたチアガールの服着て踊ってたら出てきたんだよね」

みほ「天岩戸ですか」

杏「本当に世話が焼けるなあ、小山、例の全身タイツ用意して。みんなであんこう踊りやろう」

みほ「ええっ!」

沙織「うう…やだなあ…」

数日後…

桃「会長!ドラッカーなんてもう古いです!これからは副島隆彦あたりがくるんじゃないかと思うんですが」

杏「お前いいかげんにしろ」

                    終

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