比企谷八幡は褒められる…? (272)




『チクショウ!間に合え――――――ッ!!』



それは今まさに轢かれようとする一匹の犬を、

とある高校生の少年が助けた動画に映っている場面だ。

数日前、誰かが動画サイトに投稿したものだ。

この犬の生命を守るために、

身を呈して守り抜いた少年に動画を見た人々は賞賛を贈った。

けれどこの動画をめぐってこれよりある出来事が起きることになる。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1464173054



結衣「ゆきのん、ヒッキー、やっはろー!」


雪乃「おはよう由比ヶ浜さん。それに……某谷くん…?」


八幡「比企谷だよ。つーかわかってて言ってんじゃねーよ…傷つくだろ…」


いつもと変わらぬ朝。

登校中、私は同じ奉仕部の部員である由比ヶ浜さん、それに比企谷くんと出会した。

けれど…



結衣「もう!ヒッキーは朝から元気ないよね。もっと元気出さなきゃダメだし!」


八幡「うるせえ、俺は目立つのが嫌いなんだ。それと部室以外であまり俺に話しかけるな。」


結衣「え…何で…?」


比企谷くんの言葉に思わず首を傾げる由比ヶ浜さん。

その理由を私たちは知っている。

そんな時、私の耳に誰かがヒソヒソと呟く声が聞こえてきた。



『おい、雪ノ下さんと由比ヶ浜さんに話しかけてるあの目つきの危ないヤツは誰だ?』


『あれは確か…ヒキタニってヤツじゃないの?』


『あいつって文化祭や修学旅行で悪い噂が絶えないからな。』


『そんなヤツが雪ノ下さんたちに話しかけるんじゃねえよ。』


それは彼を蔑む声だ。

比企谷くんが案じるのはこうした声のせいだ。

私たち奉仕部はこれまで数々の依頼をこなしてきた。

けれどそれは決して褒められた解決方法ではない場合もあった。

そうした犠牲になるのは決まって比企谷くんだ。

だから学校での彼の悪評は絶えることはなかった。

それに彼自身、この悪評を否定しないから広がる一方だ。

比企谷くんはこんなこと気にもしていない。

けど…少なくとも…私と由比ヶ浜さんはちがう。

彼の悪評を耳にすればそれがまるで自分のことのように不快に思えてならない。



結衣「ヒッキーはもう…気にすることないよ。ヒッキーはヒッキーなんだし!」


八幡「お前が気にしなくても俺が気にするんだよ。
せっかくトップカーストにいるのに、
俺のせいでその座を追放されましたなんて言われても責任取れないからな。」


結衣「うわっ!せっかく心配してるのにヒッキーたら酷い!?」


雪乃「まったく、相変わらず捻くれたことしか言わないのね。」


そんな変わらぬいつもの光景。

彼がどれだけ言われようと私たちさえ本当の彼を知っていればいい。

そう思っていた。



平塚「やあ比企谷。少し話があるのだがいいかね。」


雪乃「あら、比企谷くん。あなたまた何か仕出かしたの?」


八幡「おいやめろ…俺が何かやったという前提で話を進めるんじゃねえ…」


結衣「それで先生。何かあったの?」


平塚「ああ…実は…その…」


学校に着くなりそこでは平塚先生が待ち構えていた。

先生は何か気まずそうにしている。

けれど先生は意を決して私たちの前に自らのスマートフォンを見せた。

それには冒頭で語られた犬を助ける男子生徒の動画が出ていたのだけど…



平塚「問題はこれなんだよ。」


八幡「なんすかこれ…?」


雪乃「この動画…まさか…」


結衣「これってもしかして…ヒッキーがサブレを助けた時の動画じゃないの!?」


やはりこの動画は、

去年の4月に比企谷くんが由比ヶ浜さんの愛犬であるサブレを助けた時の映像だ。

ちなみに去年何があったか説明すると…



今から1年前、4月の入学式。


由比ヶ浜さんは早朝から愛犬のサブレと散歩に出ていた。


けれどサブレを引っ張っていたリードが取れてしまいサブレは道路に飛び出てしまう。


さらに運の悪いことに車がサブレの前にやってきて轢かれそうになる。


まさにその寸前、偶然にも登校中だった比企谷が身を呈してサブレを守ってみせた。


それが事故の詳細だ。



平塚「やはりキミだったか。まあこのアホ毛と腐った目を見れば一目瞭然だが。」


八幡「そこまで貶さないでください…それでこの動画がどうかしたんすか…?」


平塚「うむ、ここからが問題なんだ。実は…今日…ある人が見えてるんだよ…」


雪乃「ある人…?」


すると平塚先生の後ろから待ち構えていたかのようにある人物が現れた。

その人は教職員にしては身奇麗なスーツを着込んだ中年の男性だ。

由比ヶ浜さんはその人物を見ても誰なのかわからないようだ。

けれど…私はこの人に見覚えがある。

この人は千葉県の県知事だ。



知事「初めまして。
随分探したが総武高校の生徒さんだったか。制服を見てもしやと思っていたからね。」


八幡「ど…どうも…それで知事ともあろう人が俺なんかに何の用があるんですか?」


結衣「そうだよね。しかもこんな朝から何でヒッキーに会いに来たんですか?」


確かに現職の千葉県知事がたかが一人の高校生に…

それもこのぼっちの比企谷くんに会おうだなんて疑問を抱いて当然だ。



知事「その前にまずひとつ言わせてほしい。キミの行いは立派だった!」


八幡「いきなり何すか…?」


知事「比企谷くん、キミの行動は素晴らしいものだ。
小さな命を守るために自分の身を犠牲にして守り抜いた。
これはまさに賞賛に値する行為だと私は思うよ。」


八幡「ハ…ハァ…」


珍しく褒められて狼狽える比企谷くん。

彼は迷惑がっていたけど由比ヶ浜さんはそうでもなかった。



結衣「ヒッキースゴイじゃん!初めて褒められたんだよ!」


八幡「初めてとか言うなよ…俺だって褒められることくらい…いや…やっぱないか…」


雪乃「それでこの男にどんなお話があるのですか?」


私がそう尋ねたところ、どうやら知事は私のことに気づいたようだ。


知事「キミは…ひょっとして雪ノ下議員の娘さんかね?」


雪乃「はい、娘の雪ノ下雪乃です。」


知事「そうか、お父さんとはこれから色々とあるからよろしく頼むよ。」


含みのある言い方だ。

私はその意味をよく知っている。

その理由は今言うべきではないのだけど…



八幡「それでまさかこんなことだけを言いに来たんすか?」


結衣「ちょっとヒッキー!そんな言い方は失礼だよ!」


知事「いいや、実は私がここに来た理由だが…
明後日、今回のキミの活躍を讃えて全校生徒の前で表彰を行いたいと思う!」


結衣「ヒッキーが表彰…えぇ―――――っ!?」


彼が…表彰される…?

その言葉に私たちは思わず驚いた。

けど私よりも比企谷くんの方がさぞ驚いている。

こんなこと言いたくはなくはないが彼は今まで表彰なんてされたことはないのだろう。

そしてこの出来事は瞬く間に学校中に知れ渡ることになった。



戸塚「八幡、由比ヶ浜さんから聞いたけど明後日表彰されるんだよね!」


材木座「ぼっちである主がよもやそんな讃えられるとは!盟友である我は嬉しいぞ!」


八幡「戸塚に材木座…お前たちもう聞いたのかよ…」


休み時間になると

私は2-Fのクラスに行ってみると戸塚くんと材木?くんが表彰式について話題にしていた。

けどそれだけでなく…



三浦「ヒキオ!アンタ大したヤツだし!」


戸部「ヒキタニくん!マジヒーローじゃん!」


海老名「しかもそのワンちゃんは結衣のペットなんだよね!」


結衣「そうだよ。ヒッキーはスゴいんだから!」


八幡「三浦に戸部、それに海老名まで…」


まさか葉山くんのグループである三浦さんたちまで絡んでくるとは…

けど彼らは意外にも比企谷くんの行いに好意的だ。

まあ同じグループにいる由比ヶ浜さんのサブレを守ったのだ。

責められる道理なんてないはずだ。



八幡「あ~話題にしてるところ悪いが…俺は今回の表彰は辞退するつもりだぞ。」


戸塚「え…何で…?」


八幡「そりゃ…アレだ…考えてもみろよ…
俺だぞ俺。学校で悪い噂が流れている俺が表彰なんてされてみろ。
それこそ学校の恥だろうが。」


結衣「そんなことないし!ヒッキーが正しいことしたのは本当のことじゃん!」


表彰式を辞退するという比企谷くんに対して由比ヶ浜さんは怒った顔を見せている。

そんな由比ヶ浜さんに一度は怖気づく比企谷くんだが理由はそれだけではなかった。



八幡「まあ理由は他にもある。
たぶんあの知事さんは俺を利用して票稼ぎでもしたいんだろうな。」


結衣「へ?票稼ぎって…?」


八幡「由比ヶ浜…お前は本当に千葉県民か…?5日後に知事選が控えているだろうが…」


戸塚「あ、そういえばそうだね。それじゃあ知事さんが来た理由って…」


八幡「間違いなく票稼ぎの一環だろ。そういう魂胆なんだよ。」


比企谷くんが説明したようにまもなくこの千葉では知事選が行われる。

先ほど現れた知事は二期も続けようとその票稼ぎに必死らしい。

だからあの動画にあった比企谷くんを利用して注目を集めようとしているのだろう。

そんな知事の行動に利用されたくはないというのが彼の意思だった。



沙希「それでもいいんじゃないの。アンタが正しいことをしたのは事実なんだから。」


八幡「か…川崎…お前まで聞きつけたのかよ…?」


沙希「大体その知事がアンタを利用してるならアンタもそれを利用すればいいんだよ。」


海老名「サキサキの言う通りだよ。ほらヒキタニくんって誤解されやすいんだし。」


三浦「汚名返上するにはいい機会なんじゃない。」


八幡「いや…それは…」


確かに現在彼の悪評は最悪だ。

けれど今回は彼の汚名返上が出来るいい機会なのかもしれない。

川崎さんの意見に三浦さんたちも珍しく賛同している。



結衣「それにヒッキーは悪いことしたわけじゃないんだよ!胸を張りなよ!」


沙希「由比ヶ浜の言う通りだよ。
事情はどうあれアンタは正しい行いをした。
だからアンタは正々堂々と胸を張っていればいいんだからね。」


八幡「だ…だけどなぁ…」


比企谷くんは困った顔をしてそう言った。

何はともあれ彼が周りから認められる。

それは彼を知る人たちにしてみれば実によいことなのかもしれない。

けどこの時、私は気づくべきだった。

本来この場において真っ先にいるべき人が不在だということに。

そしてそれが後に大きな波紋を生み出すことを…



放課後―――


結衣「う~ん!今日も無事に部活終わったね~!」


八幡「まあいつも通り依頼なんてなかったがな…」


雪乃「そう頻繁に依頼がある方が問題だと思うのだけど。」


今日の奉仕部の活動も終えて私たちは下校中だ。

それから由比ヶ浜さんは三浦さんと待ち合わせているということで一足先に帰り、

私は途中まで比企谷くんと同行した。



雪乃「その…比企谷くん…表彰についてなのだけど…」


八幡「あ…あぁ…俺思うんだが…やっぱり出る気は…」


雪乃「何を言っているの。ちゃんと出なさい。これは部長命令よ。」


八幡「はあ?何でだよ!お前には関係ないだろ!?」


雪乃「あら、関係はあるわよ。
どうせ滅多に晴れ舞台に出れやしないのだからこんな時くらいは出ておきなさい。」


私も川崎さんや由比ヶ浜さんと同意見だ。

比企谷くんが表彰されることについて不満などない。

むしろこれは喜ぶべきことのはずなのだから。



八幡「ちがう!俺が言いたいのは…あの事故は…」


雪乃「何…どうかしたの…?」


八幡「いや…なんでもねえよ…」


彼は私に対して何かを言おうとした。

けど気まずくなりそれ以後は口篭ったままだ。

それから私のマンションまで近づき比企谷くんともここで別れることになるのだが…



八幡「なあ…雪ノ下…」


雪乃「あら、ようやく話し出して今度は何を言いたいの?」


八幡「もし…もしかしたらだが…何かあったらその時は…」


彼は何かを告げようとした時だった。


「雪乃お嬢さまですね。お待ちしていました。」


マンションの前に一台の車が止まっていた。

そこから出てきたのは…たまに見かけるが母の秘書らしき人だった。

結局比企谷くんとの話は中断されてしまい、

私は半ば強制的に車に乗せられて実家に赴くことになった。

去り際、何故か比企谷くんが物言いたげな顔が何故か印象に残ったけど…



雪乃「あの…いつもの運転手の都築さんは…?」


「彼は暫く休暇とのことです。その間は私が彼に代わって運転手を担当します。」


雪乃「そうですか…それで私が呼ばれる理由はご存知ですか…?」


「いいえ、私は何も知らされていません。奥さまから直接お聞きください。」


どうやら私を呼び出したのは母らしい。

あの苦手な母を相手にしなければならないなんて…

その前に一体どんな用事で私は呼び出されるのか疑問を抱いていた。

そんなことを思っているうちに実家に着いた。

けれど久しぶりに訪れた実家は騒然としていた。



「それでは明日の議員の挨拶回りは…」


「婦人会の方は奥さまが担当を…」


「陽乃お嬢さまにも応援演説を…」


私が帰宅したというのに誰もがそんな私を無視して作業に取り掛かっていた。

何故こんなことになっているのか説明すると私の父が知事選に出馬するからだ。

現在、父は県会議員だ。

そんな父がいよいよ知事選に出るので、

周りは父を当選させるために血眼になって票集めに追われている。

そんな最中、私はあるやり取りを目にした。



「この車です。すぐに引き取ってください。」


「わかりました。それではこちらにサインをお願いします。」


それはある一台の車が業者に引き取られていく光景だ。

普通なら得に気にすることはないのだけど…

けれどその車は普段我が家が使用するハイヤーだ。

動かなくなったわけでもないのに何で引き取られていくのか…?

この光景を見た時に母から呼び出された理由を私は察するべきだった。



雪ノ下母「雪乃さん。遅かったですね。」


葉山「やあ、雪乃ちゃん。」


雪乃「母さん…それに葉山くんまで…?」


母が待っている部屋に着くとそこには葉山くんがいた。

何故葉山くんが母と一緒にいるのか?

そんな疑問を思う前に葉山くんはタブレットを取り出してある動画を母さんに見せた。

それは…比企谷くんがサブレを助けたあの動画だ。



葉山「この動画を見てください。やはりこれは…」


雪ノ下母「ええ、間違いありません。この車は我が家のハイヤーですね。」


雪乃「あ…」


先ほどの騒ぎに葉山くんの姿がなかったことをすぐに怪しむべきだった。

恐らくこの動画を見た彼は気づいてしまったのだろう。

それに私も比企谷くんの表彰で浮かれていたけれど今頃になってようやく気付いた。

比企谷くんを轢いたこの車…

これが我が家のハイヤーであることに…



葉山「戸部たちが騒いでいたので聞いてみたらこの動画のことだったので、
すぐに学校を早退しておばさんに知らせることができて正解でした。
もしも後手に回っていたらどうなっていたことか…」


雪ノ下母「そうですね。
すぐに手を打てて幸いでした。
この動画にある車は早々に処分出来てそれに都築に休暇を与えることも出来ました。」


葉山「幸い雪乃ちゃんは、
後部座席に居たから画面には映っていないのでこれで問題は解決です。」


そう、彼を轢いた時に私もその場に居た。

この動画を見る限りでは私は映ってはいないようだけど…

そしてこの時、運転手の都築さんが突然休暇を与えられたこと、

それに車が処分された理由を私は察することができた。

母は証拠隠滅を図っている。

世間では今回の知事選について初の立候補者である父と現知事の一騎打ちだと言われてる。

今のところ統計では父が当選する確率は五分、従って楽観視することなどできない。

そんな最中に比企谷くんの事故の件が、

あろうことか表彰されることになったのだから母としては心中穏やかではないはずだ。

あんなことが表沙汰になればこの選挙は父が不利になる。

だから母はこうして必死になって証拠隠滅を行っているのだろう。

けれどこれだけやっても母はまだ満足した様子を見せてはいなかった。



雪ノ下母「いいえ、まだ肝心な問題が残っています。」


葉山「肝心な問題とは…?」


雪ノ下母「比企谷くんです。
この問題をこれ以上公にしないためにも彼に表彰を辞退してもらう必要があります。」


母は悪びれる様子を見せずに私の前でそう言ってみせた。

そんな…彼に表彰を辞退させろだなんて…私はそんな母に意見しようとしたのだけど…


雪乃「あの…」


雪ノ下母「黙りなさい。今はあなたの意見を聞いている場合ではありません。」


問答無用で足蹴にされた。

やはり私はこの人のことが苦手だ。

あの姉よりも恐ろしい存在。それが母だ。

雪ノ下家の女帝とすら呼ばれる存在。そんな母がこの問題に絡むなんて…

間違いなく嫌な展開が待ち受けていることは容易に想像できた。



葉山「辞退してもらうにしてもどうするおつもりですか?
意外なことですがうちのクラスでは比企谷の表彰はみんなが歓迎しています。
それに比企谷自身もまんざらではない様子でした。」


雪ノ下母「それは厄介ですね。
それならば致し方ありません。比企谷くんにお金を与えて辞退させましょう。
それなら彼も納得してくれるかもしれません。」


買収…なんてことを…

私はすぐさま異論を唱えた。


雪乃「待ってください!今は選挙期間中です。買収なんかしたら選挙法違反になります!」


お金なんて渡せばこの件は選挙法違反に抵触してしまう。

今の時代、ジュース缶ひとつ差し入れするだけで買収に繋がるといわれている。

私はこのことをすぐに指摘したのだけど…



雪ノ下母「それは有権者に買収した時の場合でしょう。
比企谷くんは17歳の未成年。つまり彼は有権者ではない。
そんな彼にお金を与えたところで何の問題もありません。」


さすがは母というべきか…

その問題はすぐに一蹴されてしまった。

けれどここでさらなる問題が出てくる。


葉山「ですが…誰が比企谷を説得するんですか…?
学校での比企谷は注目の的になっています。
それに今は選挙期間中です。
そんな大切な時に雪ノ下家の人間が比企谷に接触することは、
この件を取り上げられてしまう可能性がありますよ。」


葉山くんの言う通りだ。

この時期に雪ノ下家の人間が比企谷くんと接触することはかなりリスクがある。

下手をすればこの問題が浮き彫りになる可能性だって…

普段ならこういった問題は、

葉山くんの父親で我が家の顧問弁護士でもある葉山先生にお願いしてもらっている。

けれど今回に限ってそれは期待できない。

何故なら選挙期間中、葉山先生は立候補する父に付きっきりでサポートしている。

それに葉山先生が比企谷くんに接触すること自体かなりリスクがあるはずだ。

何故なら…これは聞いた話だが…

あの事故の時も葉山先生は比企谷くんの家と示談を成立させたらしい。

その葉山先生が再び彼の家に赴けば周囲が勘繰るはずだ。



葉山「今回の件は陽乃さんに頼みましょうか?」


雪ノ下母「それはいけません。あの子はこの家の跡継ぎです。
次の選挙ではあの子を立候補させるために今回は夫と一緒に駆け回ってもらっています。
その陽乃さんにこの件をやらせては後々の問題になるはず。
ですからこの件は私たちでのみ内々に処理を行います。」


どうやら母は今回の件を父と姉に伝えていないようだ。

晴れやかな表舞台は父と姉にまかせて母は裏で手引きをする。

この母の行動は他人が見れば涙ぐましいものだと言うのだろう。

けれどそれは嘘と欺瞞に満ちた行い、だから私はそんな母が苦手だ。

そんなことを思いながら私は母を恨めしい目で睨んだ。

けどこれがいけなかったのか…母は私に目をつけた。



雪ノ下母「雪乃さん。比企谷くんを説得する役はあなたに任せたいと思います。」


雪乃「そんな…何故…私なのですか…?」


雪ノ下母「それはこの件はあなたが一番適任だからですよ。
あなたは比企谷くんと同じ部活メイト。ですから怪しまれることなく彼と接触できますね。」


どうやら母が私を呼び出したのはこの件で比企谷くんとの交渉役をやらせるためのようだ。

確かに母にしてみれば私ほど適役はいないはずだ。

私も比企谷くんと同じく未成年だ。

それに私たちとの間で金銭のやり取りがあってもそれは選挙法違反にはならない。

だから罰せられることはない。母はそこまで見越しているのだろう。

それから母はある封筒を私に手渡した。

大松「示談が成立してるなら、ヒキガヤ本人がそう言えば選挙で攻められる訳ねーだろ」



雪乃「この封筒は…?」


雪ノ下母「それには10万円の現金が入っています。
そのお金を比企谷くんに渡して今回の表彰を辞退してもらいなさい。」


雪乃「なっ…そんな…」


なんと母は比企谷くんを買収する役をあろうことか私に押し付けた。

そんな…どうして…

突然のことに私は狼狽えるばかりだ。



雪ノ下母「雪乃さんも比企谷くんと同じく未成年です。
あなたから彼にお金のやり取りを行ってもそれを罰せられることはないはずです。
それにお金さえ渡してしまえば彼も後ろめたさが出て表彰を辞退してくれるでしょう。」


雪乃「け…けど…何故私が…」


雪ノ下母「そもそもあなたが原因ではありませんか。
あなたが乗った車が事故を起こさなければこんなことにはならなかったのです。
雪乃さん、これはあなたの不始末ですよ。
それに良い機会です。将来のためにもこの家に少しは貢献してみせなさい。」


『比企谷くんを買収して今回の表彰を辞退させろ!』


そんな馬鹿げた申付けを母から命じられた。

母は私を鋭く威圧し、傍に居る葉山くんはそんな私を見て不憫な目で哀れんでいた。

嫌だ…こんなこと…やりたくない…

けれど母に逆らうことなどできない。

雪ノ下家の総てを司る母に逆らうことなんて父や姉ですらできないことなのに。

でもこのまま母の命令を聞けば比企谷くんは…

彼の表彰を喜ぶ人は由比ヶ浜さんをはじめ、

お世辞でも大勢とは言えないけどそれでも掛け替えのない人たちがいる。

誰もが彼が褒められることを喜んでいた。

私だってその中の一人だ。それなのに私は…私は…







比企谷くんを取るか、それとも母の命令を取るか、私は二つに一つの選択を迫られた。




ここまで

>>35
示談は成立してますよ
けどこのssでは選挙中に事故の件が取り上げられたらゆきのんパパが不利になるからっていう話なのです
だからゆきのんママはゆきのんにヒッキーの買収というお使いをさせるのです

八幡厨テンプレ

Q.八幡厨って何?

A.八幡に自己投影して(八幡=自分)を神としている人達の事。葉山アンチ、渋のキッズ(精神年齢的な意味でキッズ)とも呼ばれる。
 主な生息地は渋で大量発生しよくSS速報にも来て暴れだす困った人達。
 渋とはピクシブの事。

Q.この人達毎回話題になるけど何をしたの?

A.NTRや葉雪要素がある作品にて作者へ[ピーーー]などの暴言
 八幡age他のキャラsageが大好きで葉山が出てない作品や葉山が出てるだけで過度の葉山叩きコメント
 コピペ連投荒らしをしてスレを落とす(禁止行為)
 勝手に作品を乗っ取り自分の妄言を垂れ流す(禁止行為)


Q.自分も葉山嫌いなんだけど…

A.好き嫌いは人それぞれなので嫌いでおk。過度の叩きや荒らしをしなけりゃ問題無いよ。


Q.ここは葉山信者が多いって聞いたけど?

A.勝手に八幡厨が決めつけてるだけ。
 八幡厨は自分達が嫌われてる自覚が無く自分達が叩かれると叩いてくる人達全員が敵で葉山信者に見える病気なのでスルーが安定。
 むしろ葉山信者が多いなら何故ここに来るのだろうか?


Q.他のスレ、例えば原作の本スレとかでの反応はどうなの?

A.嫌われてます。八幡厨だけではなく他のキャラのアンチ、厨でさえスレが荒れやすくなるので嫌われてる。
 

Q.最近よく聞く量産型アンチ作品って何?

A.修学旅行の告白から八幡と陽乃が協力して雪乃結衣葉山グループを潰して(八幡=自分)を神にする作品の事。
 八幡厨の大好物。とりあえず葉山を叩けば彼らの精神は安定する。
 量産型アンチ作品の見分け方としては出だしが
 結衣「人の気持ち、もっと考えてよ……」
 雪乃「あなたのやり方嫌いだわ…」
 この場合は量産型アンチ作品の可能性が高い。
 ピクシブにてこの作品を投稿すると無名の書き手でもブクマ50とか入る為、大量に増えた。
 八幡厨以外の読者達にはほとんど飽きられている。
 ちなみにブクマ数=作品のおもしろさではないので注意。
 元ネタは量産型いろはから。


Q.八幡厨の見分け方とかってあるの?

A.八幡厨のキーワード「屑山」「制裁」の言葉を好んでよく使う。
 後は葉雪とか言ってると簡単に釣れ暴れまわる。(煽り目的で言うと荒れやすく他のスレ住民が迷惑するので注意。)


Q.NTR要素や葉雪要素がある作品を書きたいんだけど…、または書いたら葉雪はありえないとか暴言言われたんだけど…

A.二次創作なんだから好きに書け。
 実際ありえない内容の量産型アンチ作品があるのだからどんどん書くべし。
 ただ、煽り目的で書くと荒れる要素になるのでそこだけは注意。
 暴言は渋なら通報安定。ここならスルー安定。
 ここでのコピペ連投、乗っ取りは通報対象なのでしっかり通報する事。



<翌日>


葉山「おはよう雪乃ちゃん。昨日は大変だったね。」


雪乃「………葉山くん…馴れ馴れしいのはやめなさい…」


葉山「すまない。けど…顔色が優れないけど大丈夫かい…?」


ただでさえ昨日のことがあったというのに登校中にこの男と出会すなんて…

そもそもあなたが母にあんなことを告げ口しなければこんなことにはならなかった。

それだけじゃない。

現状、今回の件について私は誰にも相談をすることができない。

由比ヶ浜さんや…それに比企谷くんにも…

唯一相談できるとすればこの男だけなんて冗談じゃない。



葉山「ところで昨日の件だけど…」


雪乃「ええ、嫌というほど母から言い聞かされたわ。」


葉山「おばさんも大変なんだよ。今回は知事選だからね。」


昨日、母は念入りに私へ言い聞かせていた。

この渡すお金はあくまで私と比企谷くんの個人的なやり取りであること。

その際にこのお金が選挙に関わることについては絶対に言うなと…

つまり母はこう言いたいのだろう。

このお金のやり取りは選挙とは何の関係もないと彼に思わせろと…



葉山「雪乃ちゃ…いや…雪ノ下さんがつらい立場なのはわかるよ。
でも今回はみんな必死なんだ。
おばさんだってこれが選挙法違反な行いだってわかっているが、
それでもキミにやってもらうために敢えてあんなことを言ったんだよ。」


雪乃「そう…でも何で…」


葉山「ああ見えておばさんは必死だ。
いや、正直に言えば冷静さを失っていると言ってもいいくらいだ。
けどこんな反則紛いな行いも全ては雪ノ下のおじさんを助けるためなんだ。
確かに比企谷はいいヤツだ。それは認める。
事情を話せばおばさんだって比企谷のことをわかってくれるかもしれない。
だが時期が悪かった。
今までまともに話したことのない比企谷をおばさんが信じるには時間が足りなさ過ぎる。
だからこそ、そのお金を渡して比企谷と利害関係を結ばなきゃならない必要がある。」


葉山くんの言い分は理解出来る。

確かにあの冷徹な母に比企谷くんのことを理解してもらうには時間が足りない。

選挙まであと4日、しかも問題の表彰は明日に迫っている。

わずか一日足らずであの母に、

比企谷くんが信頼のおける人物であると理解させる方法なんて不可能だ。



葉山「雪ノ下さん、難しく考える必要はない。
要はお金を渡して比企谷に表彰を辞退してもらえばいいんだよ。
それも誰にも知られずにね。」


雪乃「けど…この行いは法律違反で…
それに比企谷くんだって受け取ってくれるかどうか…」


葉山「お金のことは俺たちだけの秘密にすればいい。
比企谷だって口の堅いヤツだ。この秘密を必ず守ってくれるはずだよ。」


雪乃「それでも…」


私は鞄の中に入っているお金の入った封筒を握り締めていた。

たった10万円を比企谷くんに渡してこの事態を解決してみせろなんて…

あまり金額が大きすぎると誰かが不審に思うからこの程度の額になったのだろう。

母にしてみれば普通の男子高校生なんて、

その程度のお金でも与えておけば大人しく従うとでも思っているのだろう。

けれど…わずか10万円なんて…

つまりこういうことだ。

あの母にとって、

比企谷くんなど10万円程度で黙らせることができる安い人間としか見ていないわけだ。

この程度のお金を渡して比企谷くんを従わせろだなんて…

こんなのは比企谷くんに対する侮辱でしかない。

あの母からの言いつけでなければこんなこと誰がやるものか…



葉山「それじゃあ俺はもう行くよ。俺の方でも出来る限りサポートするから。」


雪乃「そう…わかったわ…」


葉山くんの申し出に私は力なく返事をした。

それから葉山くんと別れてクラスへ向かい授業を受けた。

けれど頭の中は比企谷くんにどうやってこのことを伝えるべきかの悩みで、

授業に集中することなんて出来るはずもなかった。



平塚「雪ノ下、話があるのだが…」


雪乃「平塚先生…?」


休み時間になり、私は平塚先生に呼ばれて生徒指導室へと趣いた。


雪乃「それで…どんな要件でしょうか?」


平塚「あ…その…まず聞きたいんだが…キミは…
いや、回りくどいことはよそう。ハッキリ言うぞ。
雪ノ下、今回の比企谷の表彰の件だが親御さんは何か言ってこなかったか?」


平塚先生の質問に私は思わず身震いがした。

恐らく先生はあの事故の事情を知っているのだろう。

だから私にこんな話をしてきたのだ。



雪乃「先生は…あの事故の件をご存知なのですか…?」


平塚「まあな、入学式の日に警察から連絡があってそれでな…
ほら、私って若手だからそういう連絡役もやらされてるから!若手だし!」


何故か平塚先生は若手という単語を強調してくるけどそんなことはどうでもいい。

問題は事故の件についてだ。

私は先生に対して率直に聞いてみた。


雪乃「先生は…今回の比企谷くんの表彰についてどうお考えなのですか…?」


平塚「そうだな。
確かにあの知事は人気取りのために比企谷を利用しているのは否めない。
だが比企谷はアレでも私の一生徒だ。生徒が褒められることは悪いことじゃない。
むしろ誇りを持ってもいいとすら思えるぞ。」


やはり平塚先生も由比ヶ浜さんたちと同じく比企谷くんの表彰については賛同している。

確かに自分が受け持つ生徒が表彰されるのだからそれを悪く思う教師はいないだろう。

けれど…

平塚先生は何故か急に憂鬱な表情を見せた。



平塚「だがな、そのせいで他の生徒が不幸になるというのなら話はちがってくるな。」


雪乃「それは…どういう意味ですか…?」


それから平塚先生はあることを語りだした。

それは去年の私たちの入学式での出来事だ。


平塚「去年、比企谷の事故の知らせを受けてちょっとした話し合いが行われた。
その内容は比企谷の事故を全校生徒に知らせるかどうかというものだったのだが…」


雪乃「それで…その話し合いの結果は…?」


平塚「………比企谷の事故に関しては内密に処理。それが学校側の下した決定だ。」


何故そんな決定が下されたのか…?

本来ならその時点で彼の行いは認められるべきなのに…



雪乃「何故彼の行いが認められなかったのですか!教えてください!?」


平塚「それは………雪ノ下、キミが原因だからだよ。」


雪乃「私が…?」


平塚「そうだ、キミはこの学校の学年1位だ。
それに入学式の日には新入生代表の挨拶を行った生徒でもある。
そんな模範的な生徒が実は入学式の朝に、
事故とは言え同じく新入生を事故とはいえ轢いたと知られたらどうなっていたと思う?
恐らくキミはバッシングを受けていたはずだぞ。」


平塚先生からの返答を聞き私は思わず愕然とした。

つまりこういうことだ。

去年、学校側は私と比企谷くんのどちらを配慮すべきか迫られていた。

サブレの生命を救った比企谷くんと新入生代表であるこの私…

勿論比企谷くんの行いは立派なものだ。今回みたく表彰に値することだ。

けれどその行為を称えるということは新入生代表であった私が貶められることにも繋がる。

だから学校側は比企谷くんの行いを内々に処理せざるを得なかった。



雪乃「つまり…今まで彼の行いが公表されなかったのは私のせいだと…」


平塚「まあそういうことになるな。
比企谷の行いは立派ではある。だがその行為がキミを傷つけることに繋がる。
だから…」


平塚先生は申し訳なさそうにその事実を語った。

本来なら去年の時点で今回の件は明らかにされなければならなかったのに…

けれど私はこのことについて文句を言える立場ではない。

そもそも私のせいでこんな事態に陥ってしまったのだから。



平塚「それで話を戻すが親御さんからこの件について何か言われなかったか?」


雪乃「………いいえ、特には…」


平塚「本当か?何か厄介な問題を抱えているんじゃないのか?」


雪乃「大丈夫です。仮にそんな問題があったとしても一人で解決出来ますので。」


そんな返事を出して私は生徒指導室を去った。

厄介な問題…それは確かに抱えている。

けれど…この件について平塚先生に相談することはできない。

平塚先生は信頼できる。けど先生は雪ノ下家とは関係のない人だ。

その先生の口から今回の件を誰かに知られたら…選挙は…

結局、誰に相談することも出来ず時間だけが経過した。

ここまで



放課後―――


いろは「先輩~!こっちですよ~!」


八幡「一色、いきなり呼び出してどんな要件だよ?」


いろは「どんな要件って決まってるじゃないですか。
明日行われる先輩の表彰式の準備をするからみなさんに手伝ってもらおうと思いまして。」


結衣「やっぱりいろはちゃんもヒッキーの表彰の件知ってるんだ!」


いろは「当然ですよ。これでも私は生徒会長ですからね!」


放課後、部室にいた私たちを生徒会長である一色さんが講堂に呼び出した。

その要件は明日行われる比企谷くんの表彰式の準備を手伝うためだ。

今回は生徒会でも急な要件だったらしく人手が集まらなかったために、

私たち奉仕部までもがその設営に駆り出されたようだけど。



八幡「つーか何で俺が自分の表彰式を自分で準備しなきゃならんのだ?意味わからん…」


いろは「文句言わないでくださいよ。
生徒会だって突然のことで準備に追われて大忙しなんですから!」


結衣「まあまあ、私たちも手伝うから…」


どうやら生徒会の方でも比企谷くんの表彰の準備に取り掛かっているようだ。

それに一色さんも今回の件を快く思っているみたいだ。



八幡「あぁ…面倒だ…一色だって面倒だと思うだろ?
そうだ!俺明日学校休むからこれで表彰式は中止。
一色や他の生徒会メンバーも手伝わなくて済むし誰もが苦労せずに済む。
これでみんなが楽出来て解決だろ。」


いろは「何言ってるんですか?そんなのダメです!
先輩には明日の表彰式に意地でも出てもらいますからね!何が何でも絶対です!!」


八幡「何が何でもってどうしてだよ?」


いろは「何でって…先輩みんなから誤解されてるし…
こんな機会でもないと…みんなにわかってもらえないじゃないですか…」


一色さんも由比ヶ浜さんや川崎さんたちと同じ気持ちのようだ。

比企谷くんと関わった人たちは彼の本質を理解している。

だからこそこの機会に彼の悪評を解消させようと必死なのだろう。

するとそこへ新たに助っ人がやってきた。



結衣「いろはちゃん!優美子たちが手伝いにきてくれたよ!」


三浦「ヒキオ感謝しろし。あーしらが手伝ってあげるんだからね。」


海老名「オォッ!講堂使って表彰式なんて学校も太っ腹だね!」


戸部「よっしゃ!さっそこ取り掛かるんべ!」


大和「だな。」


大岡「それな。」


三浦さんが葉山くんのグループメンバーを連れて設営の手伝いに来てくれた。

こういう時に協力を申し出てくれるなんて…

本来ならその善意はありがたく思わなければいけないのかもしれない。

けれど今回に限っては…



沙希「比企谷、手伝いに来たよ。」


戸塚「八幡!テニス部のみんなにも声をかけたんだ!」


材木座「盟友の晴れ舞台だ。我も力を貸すぞ!」


八幡「お前らまで…」


さらには川崎さん、戸塚くん、あと財津くん…?までもが助っ人に来てくれた。

みんな比企谷くんのために善意で参加してくれている。

比企谷くんのためにこんなにも集まってくれた。



それに勿論…この男も…


葉山「やあ雪乃ちゃん。俺も手伝いに来たよ。」


雪乃「葉山くん、あなたも来たのね。」


葉山「まあみんな参加してるからね。ところで比企谷に例のことを伝えてあるのかい?」


雪乃「いいえ…まだよ…この状況で言えるわけないでしょ…」


こんな状況で私にストレスを与えるなんて…

やはりこの男は母や姉さんの次に苦手だ。

腹立だしい私は言い寄ってきた葉山くんを押しのけて一人で作業に取り掛かった。

今この状況で比企谷くんにそんなことが言えるわけがない。

明日、全校生徒の前で比企谷くんは表彰される。

それをなんとしても止めなくてはならないだなんて…誰かに知られれば私は…

そんな時だ。一人で設営準備をしている時に三浦さんたちのある会話が聞こえてきた。



三浦「そういえばさ、ヒキオを轢いた犯人ってどうなったし?」


海老名「たぶんだけど示談で、まあつまりお金払って解決したんじゃないの?」


沙希「そうだろうね。
比企谷もああしてピンピンしてるからそれほど大事じゃなかったようだし。」


三浦「でもさぁムカつくわ!お金だけ払って終わりじゃ誠意がないし!」


何気ない三浦さんたちの会話だ。

確かに何も知らない彼女たちにしてみれば事故の加害者は悪く思われても仕方がない。

けれど…

その加害者とはこの私自身だ。

その私がこれから恥知らずにも比企谷くんに今回の表彰を辞退させなければならない。

もし彼女たちがそんな事情を知れば必ずや軽蔑するだろう。

私がこれから行うことはそれほどまでに最低なことなのだから。



そんな一人で黙々と作業をしていると由比ヶ浜さんと一色さんが話しかけてきた。


いろは「結衣先輩、雪ノ下先輩!みんな集まってくれてよかったですね!」


結衣「うん!みんなヒッキーのために来てくれたんだよね!」


雪乃「そうね…」


由比ヶ浜さんや一色さんもこのことを喜んでいる。

当然だ、二人は彼の理解者なのだから。


結衣「ゆきのん!私ね、今回ヒッキーが表彰されるって聞いてすっごい嬉しいんだよ。」


雪乃「そう…」


結衣「今までヒッキーはみんなに誤解されてばかりだったじゃん。
ヒッキー頑張っていたのに周りはちっともわかってくれなかったのがつらくて…
だからね、今回の表彰は絶対成功させたいと思ってるの!」


いろは「普段は頼りにならない先輩ですけどいざという時は役に立ちますからね。
まあこういう時でもないとみんなに知ってもらえませんよね。
でもだからと言って私に惚れるのは無しですから!」


彼女たちの善意が私には異常なくらい眩しく思えた。

たとえるなら彼女たちは神さまのご加護を受けた天使、

私は陽の光を浴びることを許されない悪魔とそのくらいの落差を感じてならない。

私だって…

母から命じられていなければ彼女たちと一緒に比企谷くんの表彰を喜んであげたのに。



結衣「だからゆきのんもヒッキーのこと応援してあげてね!」


いろは「何言ってるんですか。雪ノ下先輩ならとっくに応援してくれていますよ!」


雪乃「そうね…たまには彼にもこういう機会があってもいいと思うわ…」


私は由比ヶ浜さんの言葉に思わず曖昧な返事を出した。

けれど…ふと思った…

楽観的な考えではあるけれど比企谷くんの行いを表彰するのはこの学校内だけだ。

当然だけどこの学校の生徒は全員が投票権を持たない高校生だ。

比企谷くんが表彰されようと知事選にそれほど大きな影響は及ぼさないのかも…

そうと決まればあとはあの母を説得すればいい。

そもそも比企谷くんを買収するなんてリスクの高い行いだ。

そのリスクを考えれば校内のみで行われる比企谷くんの表彰を母は目を瞑ってくれるはず。

そう思っていた。次の瞬間までは…



めぐり「お~い~!比企谷く~ん!」


八幡「うぉっ!城廻先輩まできたんですか?」


めぐり「うん、先輩として後輩の晴れ舞台は頑張ってあげなきゃいけないからね。」


そこに現れたのは前生徒会長の城廻めぐり先輩だった。

城廻先輩もまた今回の比企谷くんの表彰を心から喜んでいる一人だ。

そんな城廻先輩だけど実はある報せを届けに来たようだ。



めぐり「比企谷くんに朗報だよ!なんと今回の表彰式がテレビで生中継されるの!」


八幡「て…テレビで…」


結衣「生中継!?」


いろは「先輩すっごいじゃないですか!!」


めぐり「まあ…と言っても千葉県限定のローカル局でなんだけど…
知事さんの御厚意でテレビ局の中継が入るから当日はかなりバタバタするからね。」


テレビ局で中継…?

今の報せを聞いて私は思わず目眩がした。

けどすぐに正気を取り戻して周りを見てみた。



沙希「まあ…よかったんじゃないの…?」


戸塚「うん!これはすごいことだよ八幡!」


材木座「フハハハハ!お主に運が回ってきたようだな!」


三浦「ヒキオ!やったじゃん!これでアンタ隼人みたくみんなのヒーローになれるよ!」


海老名「そうそう!みんながヒキタニくんを認めてくれるんだから!」


戸部「ヒキタニくんマジやっべーわ!」


大和「だな。」


大岡「それな。」


みんながこのことを喜んだ。

今回の比企谷くんの表彰式が、

千葉県に知れ渡るというのだからこの場にいる誰もがそれを祝うだろう。



結衣「ヒッキー!よかったね。これでみんなにわかってもらえるんだよ!」


八幡「由比ヶ浜…けど…俺は…」


いろは「もう先輩はまだ何か言う気ですか?人の善意は黙って受け取るべきですよ!」


そうだ…この場にいる誰もが善意で駆けつけている…

だからこそ彼の表彰をみんなが心から喜んでいる。

けれど…私だけは…ちがう…

テレビの中継が入れば千葉県に住む誰もが今回の表彰式を知ることになる。

そうなれば…あの事故の車が我が家のものだと千葉県中に知れ渡ることにも繋がる…

今にして思えばあの知事は、

最初からテレビ局の中継が入ることを折込済みだったのかもしれない。

今回の件がメディアに注目されるほど投票率は上がる。

だからこそわざわざ自ら出向いて比企谷くんに今回の表彰式を伝えたにちがいない。

けど…それを咎めることはできない。

我が家の事情を知る者でもなければ誰がこんなことを咎めるというの…?



それにもう一人、この事態に比企谷くんを睨む者がいた。

葉山くんだ。


葉山「比企谷…」


既に葉山くんにこのことを知られてしまった。

こうなれば葉山くんはあの母にこのことを知らせるはずだ。

最早、母を説得するという手段は使えない。

結局…私が比企谷くんを買収するということは…避けられないようだ…

ここまで

結局言えないまま、それとなく八幡が察して休もうとする
→小町が当日無理矢理連れてくる
→結局母親怖くて板挟みで間際まで言えない
→葉山がバラす、葉山「雪乃ちゃんが言わないからやで。こっちのせいにしないで」
→八幡表彰式めちゃくちゃにする
→雪ノ下当選、八幡ヒロイン家族に全員に見捨てられて総武退学比企谷家勘当
→雪乃助けようとするも母親に怒られるの嫌だから見捨てる
→数年後陽乃が後継雪乃が秘書で選挙当選
→私は幸せになってはいけないから仕事に生きるのとか悲劇のヒロインぶって車運転してたら家族轢く
→それが八幡と八幡の奥さんだった
→奥さん即死八幡も死亡
→八幡の遺言が子供頼むだけど、雪ノ下家のために八幡が飛び出してきたことにするやで~
→記者会見するも途中で八幡の子供の叫びで雪乃発狂で全部バレる
→世間はテノヒラクル-、雪ノ下家と葉山は雪乃切り捨てて八幡買収や過去のことも全部バラす
→雪乃「過去のことは別にもう良いけど子供をどうにかしたい」
→小町に頼み込むも、血縁あっても引き取るのとか無理。そもそもお前のせいやんけ!(ジブンノコトタナアゲー)
→ガハマはじめ他の人もそんな感じ
→結局どうにも出来ないから子供を八幡と再会させる自分も報いを受けるという名目で
一番最初八幡がサブレ助けたところに葉山と雪ノ下母呼び出して一緒に轢き殺してもらう

こんな感じ
ちなみに八幡の奥さんは後書き曰くこの世界線の少女Aらしい

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年05月31日 (火) 16:54:33   ID: LD53VYFh

ハチマ○コ先生じゃないすか
この人の書くssのゆきのんって大抵クズキャラだけどこのssではどうだろう

2 :  SS好きの774さん   2016年05月31日 (火) 20:02:35   ID: 9KoYtecV

渋キッズって連呼してる輩はヒロインの扱いが不当過ぎる騒ぐヒロイン厨だよな?
本当の八幡厨は色んな作品とクロスさせながらチーレムする作品だけに湧くやつらだよ ホントうんざり
大勢はSS何だから面白ければ好きに書いていいじゃんで嫌いな話はスルーしてるよ

3 :  SS好きの774さん   2016年05月31日 (火) 22:07:40   ID: uuLw7Hxo

取り敢えず楽しみにしてまっすよ

4 :  SS好きの774さん   2016年06月01日 (水) 02:10:05   ID: OS3Zg7ms

文章がいろいろおかしくて読みづらい…

5 :  SS好きの774さん   2016年06月01日 (水) 03:14:08   ID: 9q-P0EGC

10万とか小遣いかよ器の小せえババァだな…100万もありゃ黙って言うとおりにするやろ。自転車事故ですらもっと示談金貰えるっつーの

6 :  SS好きの774さん   2016年06月01日 (水) 22:17:08   ID: oKFLqh3h

母ノ下「10万じゃ足りないって言うのね?そうですか残りは私の体で払いましょう」
八幡「チェンジで(ガハママ カモ~ンヌ!)」

7 :  SS好きの774さん   2016年06月02日 (木) 03:09:23   ID: 1pTBJbKd

ぼくは姉ノ下さんがイイです(イイです)

8 :  SS好きの774さん   2016年06月09日 (木) 04:15:46   ID: KoH_xIHO

本物って何かな?葉山グループを偽物って言ってたりする原作だけどさ、お互いに離れたくないって気持ちが少しでもあって、必要悪性もあるのなら偽物呼ばわりは断言しすぎな希ガス

9 :  SS好きの774さん   2016年06月10日 (金) 17:00:31   ID: 8oXRu_x-

葉山が八幡を闇討ちしそう

10 :  SS好きの774さん   2016年07月02日 (土) 13:47:08   ID: jWzpNeE-

とりあえずゆきのんは普通に悪くないし落ち度もないよね

まぁ二次創作だから設定ガバるのは仕方ないけど

11 :  SS好きの774さん   2016年07月29日 (金) 22:50:11   ID: GiUDsAAd

戸塚「ちゅ、中途半端過ぎるよ...」

12 :  SS好きの774さん   2016年08月15日 (月) 07:38:04   ID: arGopa4-

アンチ系で姉のんが空気なのは稀だよな。オイシイ所全取りですやん

13 :  SS好きの774さん   2016年10月31日 (月) 02:50:24   ID: k6imfBVJ

つーか、あれは八幡が飛び出したんだからあまり責められないと思うんだけど…入院するような人身だから多分警察も呼んでると思うからネタとしては弱いでしょ?
それより示談がすんでるのに金を渡すとかそんな一発でネタになるような事するとか何のコント?

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