【モバマスSS】「靴擦れ」 (21)


ガラスの靴はとても硬くて、ピタリと嵌まったはずの足がなかなか動かなかった。


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・アイドルマスターシンデレラガールズ 渋谷凛のSS
・バッドエンド:ルートB


ーーー

彼が灰になった日の夜。
大事にしまっておいた2つの箱を引っ張り出してきて、1人きりの練習室でそれを開けた。


右の靴は、彼と一緒に手に入れたいつかの栄光。
左の靴は、あの日彼が私にくれたプレゼント。

世界にたった1組だけの靴。


ガラスの靴って言っても、ポリカーボネートだかなんだかでできているらしくて。
だから、こうやって歩けてしまう。踊れてしまう。

体重がかかるたび、少しずつ罅がいっているようにも感じるけれど。


ううん、”踊れる”っていうのは本当はごまかしで。
もがく、というか、のたうち回るかのような惨めなダンス。


靴底が滑りやすくて何度もこける。足の可動域が絞られて、ターンが足りずに詰まる。
片翼がもがれた鳥のような、不完全な羽ばたき。


……どれくらいもがいただろう。


大きくターンを決めた瞬間、右足のヒールがパキリ、と嫌な音をたてて折れた。
重心を崩して大きくぐらついて、……そのまま、床に倒れ伏す。疲れのままに。

なにをやっているんだろう、私。


横たわっているうちに身体は冷めて。
気付かなかった鈍い痛みが戻ってくる。

酷使した足首は靴の硬さに耐えきれなくて、べろんと皮が剥けて、透明な靴は赤黒く染まっていた。


苦労して靴を脱ぐ。

ぬるりと血の感触がして、私はまだ生きている、と思う。
彼はもういないけど。

まだ、そっちには行けない。


裸足のまま、もう一度踊る。
二度三度と、踊り続ける。


どうして、
私は足を止められないのだろう。


解けない魔法は無いはずなのに。
……だから、これはきっと、呪いなんだ。


ーーー

目が覚めても世界はそこにあって。

午後からのダンスレッスン。
明日のTV出演。来月末に迫ったコンサートツアー。


ベッドから降りて、目元を拭って。
最初の一歩を踏み出す。

左足の踵に、赤い痕をのこしたまま。


彼がいなくなって、それでも世界は回っていて、
私もただ、ここに残っている。

彼のいない世界でも、私はアイドルを続けている。


道を示す指先は途切れたのに、私の足はまだ、前を向いて、ずっと、前に向かって。


今日も私は踊る、歌う。
痛みの残る足を引きずりながら。

彼の残してくれた呪いを、感じながら。



〈fin〉


バッドエンドルートB、達成条件:


・the 3rd Anniversary 終了後、渋谷凛に《ガラスの靴(左足)》を渡すことで、ガラスの靴が左右揃う

・スタドリ、エナドリの服用量が規定値を超えている状態で、警告を無視して何度も残業フェイズに入る

・「たまにはゆっくりしたらどう?」等の〈心配〉に対して肯定的な答えを一度も選ばない

・以上を満たした上で、疲労度が100に達した状態で営業フェイズに入る


以下既作

バッドエンドルートA
・cast a (curse)/spell



グッドエンドルートA
・モバP「こーひーふーふ」

グッドエンドルートB
・【モバマスSS】「餞」

etc…

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