提督「瑞鳳の卵?」 (134)

亀進行
キャラ崩壊注意


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パッパパーラパッパパーラ(起床ラッパ)

瑞鳳「ん……うぅん……」ゴロン

瑞鳳「朝かぁ…」

瑞鳳「…ックシュン!」

瑞鳳「うわぁ…素っ裸じゃん私…」

瑞鳳(昨日は月一の軽空母の会があって)

瑞鳳(隼鷹と千歳に付き合ってものすごく飲んだっけ)

瑞鳳(なんとか寮の部屋に帰り着いて)

瑞鳳(シャワー浴びようとして服ぬいで、そのままベッドに轟沈)

瑞鳳(服も下着も床に脱ぎ散らかしっぱなしだし…女子力ダダ下がりねこれじゃ)

瑞鳳(さて、ラッパ鳴ったし急がない…と?)

瑞鳳(太ももの間になにかある?)ゴソゴソ

瑞鳳(丸くてすべすべしてる…とれた)

瑞鳳(これって…)

瑞鳳「卵?」

瑞鳳(ちょっと待ってちょっと待って、どうして卵があるの?)

瑞鳳(悪戯? 悪戯なの?)

瑞鳳(でも祥鳳は遠征に行ってて、今この部屋に入れるのは私だけ)

瑞鳳(そもそも祥鳳は悪戯をするような人じゃない)

瑞鳳(つまり卵があるのは私のせい)

瑞鳳(酔っ払って卵を持ってた?)

瑞鳳(いや、それはない。あの二人じゃあるまいし分別はついてる)

瑞鳳(ってことは…)

瑞鳳(私卵産んじゃったーーーーーー!?)

一端中断

瑞鳳(いやいやいや、まさか、そんなまさか)ブンブン

瑞鳳(艦娘が卵生なんて聞いたことないし、そもそも子供もできるか不明だし)

瑞鳳(そもそも卵ってどんなのよ)ジー

瑞鳳(うーん、鳥みたいだけどいつも卵焼きに使ってる鶏の卵じゃなさそう。ちょっと大きい?)

瑞鳳(でも、見てるとなんだか守ってあげなきゃって気に…)

瑞鳳(え、本当の本当に…?)タラ

瑞鳳「って、いけない! もうこんな時間!?」

執務室

提督「瑞鳳のやつ遅いな…」

青葉「昨日軽空母の飲み会があったようですし、まだ寝てるんじゃないですかね?」

提督「マルサンマルマルに隼鷹と千歳が押しかけてきたのはそのせいか」ゲッソリ

青葉「ご愁傷さまです。ああ、はやく秘書艦引き継ぎして新聞書きたいのに!」

提督「まーた与太話でも書くつもりか? もうネタ少ないんだろ?」

青葉「うっ。まぁそうなんですけどね…」

青葉「でも今日は何だか特大級のが転がってきそうな予感がするんですよ!」

提督「来ないに間宮券三枚」

青葉「乗った!」

青葉「っとそうしてる間に来たみたいですよ」バタバタバタ

提督「あー、苦手なんだが規則は規則だ、やるしかないか」コンコン

提督「入れ!」

瑞鳳「失礼します! 軽空母瑞鳳、遅参し大変申し訳ありません!」

提督「瑞鳳、貴様ァ! 惰眠を貪り上官より遅れて来るとはどういう了見かァ!?」

瑞鳳「ひぃ!?」

青葉(あー、瑞鳳さん初犯でしたね。怒った提督みるの初めてでしたっけ)

提督「申し開きがあるなら五秒以内に言え! さもなくば海軍精神を注入してやるッ!」

提督「五、四、三、ニ、一!」

瑞鳳「あの、えっと、その、た、卵産んじゃいましたぁ!」アタフタ

提督「ありません以外の答えは聞いてな……え?」

青葉「え?」

瑞鳳「…///」

提督「なにそれこわい」

青葉「青葉、聞いちゃいましたぁ!」サンジュウキラキラ

とり急ぎ
またも中断

提督「あ、成程」ピーン

提督「瑞鳳、おめでとう。今夜はお赤飯炊くか?」

瑞鳳「何の話ですか!? これですよ、これ!」スッ

提督「卵だな」

青葉「まごうことなき卵ですね」

提督「で、それがどうかしたのか?」

瑞鳳「だから…その…産んじゃったみたい…なんです」

提督「…うそ、んなバカな」

青葉「『衝撃! 艦娘は卵生だった!?』…」カキカキ

青葉「いやここはインパクト重視で『提督に隠し子!? 認知を迫る愛人Z』のほうが…」カキカキ

提督「おいまて青葉ァ!?」

カクカクシカジカ

提督「それでいつの間にあったと」

瑞鳳「どうしたらいいんだろう…」

提督「まだ外部犯の仕業かもしれない、憲兵さんに頼んで軽空母寮付近の防犯カメラの映像を見てみるか」

青葉「全裸で寝てる女の子の足の間に卵だけ置いて帰るって、どれだけレベル高いんですかね?」

提督「だよなぁ…」

提督「まあやれるだけはやっていこう。瑞鳳、結果は後で知らせる。お前は休め」

瑞鳳「え、でも秘書艦の業務は」

提督「引き続き青葉にやらせる」

青葉「えー!? せっかく『提督の異常な性癖! ロリっ娘Zと産卵プレイ!?』の記事構想ができましたのにぃ」

提督「お前にそんな記事書かせないよう見張るためだよクソが!」

瑞鳳(提督と青葉さんの喧嘩する声を背に執務室を後にする)

瑞鳳(手の中には卵を抱えたまま、使い慣れた鶏卵とは違う大きさ)

瑞鳳(でもなぜかしっくりとくるような、暖かさを感じる)

瑞鳳「なんなんだろうね、これ?」

瑞鳳(卵は何も答えてくれない)

瑞鳳(人の口に戸は立てられぬとは言ったもので)

瑞鳳(いや、この場合青葉さんの筆に戸は立てられぬと言うべきか)

瑞鳳(謎の卵の存在は鎮守府中に広がったみたい)

瑞鳳(流石に私が産んだかもしれないという事実は伏せられた)

瑞鳳(『怪奇! 軽空母寮に現れた謎の卵』そんな見出しの記事)

瑞鳳(中身は突如として現れた正体不明の卵についてのことと)

瑞鳳(侵入者が入っていたかもしれないと注意喚起を促すもの)

瑞鳳(よくわからないけど、間宮券三枚と新たに一枚で妥協させたらしい)

瑞鳳(侵入者といえばカメラにはそれらしいものは映っていなかったと提督から報告を受けた)

瑞鳳(憲兵さんも怪しい人影は見てないという)

暁「瑞鳳さーん!」

雷「卵見せてー!」

瑞鳳「いいよー!」

瑞鳳(記事を見てからよく駆逐艦の子が声をかけてくるようになった)

瑞鳳(断る理由もないので見せている)

電「温かいのです!」

響「ハラショー」

瑞鳳「あー、あんまりさわらないで欲しいかな…」

暁「何で?」

瑞鳳「何でって…」

瑞鳳「ほら、やっぱり謎の卵だから」

瑞鳳「割れちゃったりしたら困るじゃない?」

暁「そうね、電がうっかり割ったりでもしたらおおごとだものね」

電「そういうことは暁ちゃんがやりそうなことなのです!」

暁「なんですって!?」

雷「まあまあ、落ち着いて。ここは私が一番安全ってことで」

暁電「雷(ちゃん)は黙ってて(なのです)!」

雷「むっかー! なによそれ!?」

響「ブリャーチ! 喧嘩はやめるんだ!」

瑞鳳「あはは…」

瑞鳳(駆逐艦は小さく見えて結構血気盛ん)

瑞鳳(球磨型の三女が苦言を零してた気持ちが分かる気がする)

暁「でも何で瑞鳳さんのところに現れたの?」

電「瑞鳳さんが卵焼き好きだからじゃないのですか?」

雷「安直ねぇ。そんな単純なわけないじゃない」

響「雷はどう考えるんだい?」

雷「う、そ、それは……あれよ!」

雷「司令官と瑞鳳さんの子供とか!」

瑞鳳「」

暁「」

響「」

電「」

暁「ないわ」

響「ないね」

電「ないのです」

瑞鳳「ないない」

雷「~~~っ! じゃあ響はどう考えるのよ!?」

響「そうだね…卵焼き作りすぎた呪い…とか?」

暁「ホラー路線禁止!」

電「た、卵焼きなら電たちもよく作ってるのです!」

雷「そんなことになったら私達にも卵がくるじゃない!」

瑞鳳「呪いかぁ…卵焼き作るのやめようかな」クスッ

六駆「やめないで!?」

雷「他の人の所にも卵はくるのかしら?」

響「加賀さんのところには焼鳥がきそうだね」

瑞鳳「ちょ、なんて恐ろしいことをいうのこの子は」

暁「散々瑞鶴さんが言ってるし、駆逐艦は恐れ知らずなのよ!」

電「加賀さんは出撃中だしまだ大丈夫なのです」

加賀「帰投しましたが?」スッ

六駆「」

加賀「頭にきました」

暁「きゃー!?」バタバタ

響「ダヴァイダヴァーイ!」バタバタ

雷「響のバカぁ!?」バタバタ

電「逃げるが勝ちなのです、なのです!」バタバタ

加賀「まったく…これだから駆逐艦は」

瑞鳳「加賀さんお疲れ様です。随分と早いんですね」

加賀「敵の航空戦力の抵抗を受けなかったの」

加賀「拍子抜けしたけど、赤城さん風に言うなら『上々ね』」

瑞鳳「あはは」

加賀「…それが今話題の卵?」

瑞鳳「ええ。加賀さんも見ます?」

加賀「十分よ。…いつも持ち歩いてるの?」

瑞鳳「えっと…ほら、現れた時みたいにまた消えても困りますし」ギュ

瑞鳳「提督からはこれの管理を任されてますし、ね?」

加賀「消えたほうが悩みの種はなくなるんじゃない?」

瑞鳳「う。言われてみれば確かに」

加賀「…よくわからないけど大切にしてるのね」

加賀「こういってはなんだけど」

加賀「親鳥みたい」

瑞鳳「……」

加賀「…? 気分を害したなら謝るわ」

瑞鳳「あ、いえ、何だか言い得て妙だなって思って」

加賀「そう、ならいいけれど」

瑞鳳「加賀さんはこの後どうするんです?」

加賀「工廠の明石さんのところに補修に行くわ、かすり傷程度だけれども」

瑞鳳「そうですか。お話付きあわせてしまってすみません」

加賀「ええ、また」スタスタ

瑞鳳「……」

瑞鳳(……親鳥、か)

瑞鳳(加賀さんの姿が見えなくなっても)

瑞鳳(加賀さんの言葉はずっと頭の中に残っていた)

執務室

青葉「間宮さん特製宇治抹茶パフェ、おいしかったですねぇ」キラキラ

提督「間宮券四枚分のありがたみが身にしみたか?」

青葉「ええ、バッチリです!」

提督「あれだってタダじゃないんだぞ、ったく」

青葉「おかげさまで今ならどんな記事でもいけそうですよ」

青葉「『戦慄! 鬼畜提督卵計画の全貌』とかいい感じでしょ?」

提督「お前の新聞は一体どの方向に行きたいんだ!?」コンコン

提督「何だ!」

大淀「大淀です。大本営から電報を預かっています」

大淀「お取り込み中でしたか?」

提督「いや、構わんさ。電報は?」

大淀「こちらに、では」スッ

提督「どうも。……む」ペラ

青葉「気難しい顔しちゃってますねぇ。何なんです?」

提督「『太平洋方面 敵空襲ニヨリ 基地航空隊 被害甚大ナリ』」

提督「『貴鎮守府ノ 精鋭航空部隊 貸与サレタシ』」

提督「向こうは相当派手にやりあってるらしいな」

青葉「今までは侵攻中の時は敵の反抗を抑えられていたのに」

青葉「逆に攻撃し返してくる辺り、さすが親玉の中の親玉がいるところって感じですかねぇ」

青葉「で、どうするんです? 受けちゃいます?」

提督「残念ながら俺みたいな木っ端提督が断れる理由がない」

提督「加賀の報告によるとここらの敵航空戦力はないみたいだし」ヘンセイヒョウトリダシ

提督「制空は軽空母と航空戦艦だけでもできるだろう」ヘンセイヒョウカキコミ

提督「正規空母には前線まで目一杯航空機を運んでもらおうか」ソウビカキコミ

提督「っはいおしまい! さー休憩だ休憩だ」ショウニンインカン

青葉「あ、どうせなら瑞鳳さんの様子でも見に行きません?」

提督「ついでだし卵焼き作ってもらおうか」

青葉「えー、お腹いっぱいですよぅ」

提督「誰かさんのパフェ代のせいで俺は何も食ってないんだよ!」

軽空母寮

提督「祥鳳型、祥鳳型の部屋はっと…」

提督「お、ここだ」コンコン

瑞鳳「はーい」ガチャ

瑞鳳「あれ? 提督、それに青葉さんも?」

青葉「ども、恐縮ですぅ」

提督「様子を見に来たついでに卵焼きでも作ってもらおうかと思ってな」

瑞鳳「なーんだ。そんなことならどうぞ」

瑞鳳「甘いのがいい? 甘くないのがいい?」

提督「甘くないのがいいな、昼飯食べてないんだ」

青葉「軽空母寮の部屋にも簡易キッチンってあるんですねぇ」

提督「現状ないのは駆逐寮だけだな、数が多くて予算が…」

青葉「ままならないものですね」

提督「あぁ、忘れるところだった。瑞鳳あれやってくれ」

瑞鳳「えぇー…」

提督「後で間宮券」

瑞鳳「仕方ないわねぇ…」

瑞鳳「……」コホン

瑞鳳「瑞鳳の作った卵焼き…食べるぅ?」

提督「たべりゅううううううううううううううううう!」

青葉「たべりゅううううううううううううううううう!」

提督「お前さっき腹いっぱいって言ってただろうが!?」

青葉「瑞鳳さんのは別腹です別腹!」

提督「卵といえば瑞鳳、例のやつは?」

瑞鳳「そこの藁を敷き詰めた籐かごのなかにー…ッ、あれ?」

提督「どしたー?」

瑞鳳「卵割るときに黄身を破っちゃって…」

提督「目玉焼きじゃないんだ気にすんなー」

瑞鳳「……」

青葉「籐かご籐かご…これですね」

青葉「わ、すごい。鳥の巣みたいです」

数分後

瑞鳳「はい、どうぞ。卵焼き召し上がれ」

提督「酒がほしいところだが…まあ今は我慢するか」

青葉「いただきまーす。…んぅ、塩加減が絶妙です!」パクパク

提督「お、ホントだ。やっぱり瑞鳳の卵焼きは最高だな!」モグモグ

瑞鳳「……」

提督「瑞鳳? 瑞鳳、どうした?」

瑞鳳「あ、いえ、ちょっとボーッとしてて…」

提督「疲れてたのか? すまなかった突然押しかけてきて。片付けくらいはしとくよ」

瑞鳳「疲れてなんかないですって。食器も置いたままで結構です」

提督「そうか…」

提督「じゃあしばらくは執務室にいるから、何かあったら遠慮なく言ってくれ」

瑞鳳「もう、提督は心配症なんだから」

青葉「私もいますので、ネタのタレコミとか大歓迎です!」

瑞鳳「善処しますねー」

青葉「すっごい適当ですね…ではまた~」ガチャン

瑞鳳「……」

瑞鳳「……」スタスタ

瑞鳳「……」カシャン

瑞鳳「……」スタスタ

瑞鳳「……」カシャン

瑞鳳「……」ジャー

瑞鳳「……」ゴシゴシ

瑞鳳(卵を割るとき一瞬ためらった自分がいた)

瑞鳳(普段なら片手で割れるのに黄身を破っちゃった)

瑞鳳(破れた中身を見てあれが割れたらどうしようと思った)

瑞鳳(卵焼きが食べられるのをみて)

瑞鳳(あれが食べられたらどうしようと思った)

瑞鳳(心配しすぎ…だよね?)

数日後 演習海域

瑞鳳「……」ボー

隼鷹「そっちに行ったぞ―!」

瑞鳳「…え? きゃあ!?」ドーン

隼鷹「わーお、クリティカルヒット」

青葉「あれは模擬弾でも痛いですねぇ」

瑞鳳「うぅ…やら…れたぁ」大破判定

隼鷹「今の避けられただろー?」

青葉「隼鷹さんは船速の割によく避けますよね、秘訣をぜひ詳しく!」

隼鷹「そりゃあ、あれだよ~。酒の力ってやつ?」

提督「真面目にやらんかァ!」

演習後

提督「瑞鳳、本当に大丈夫か?」

青葉「心ここにあらずって感じでしたねぇ」

瑞鳳「ごめんなさい、ちょっと考え事をしていて…」

提督「自室に置いてある卵のことか?」

瑞鳳「…はい」

提督「負担になっているんだったら俺が預かっても…」

瑞鳳「…! ダメっ!」

提督「」

青葉「」

瑞鳳「あ…、失礼しました…」

提督「いや、いいんだ…」

提督「…瑞鳳、今の状態ではお前を艦隊に参加させることはできない」

提督「よってお前には自室待機を命ずる」

提督「別命あるまで一切の艦隊行動は許さない、いいな?」

瑞鳳「…かしこまりました」

提督「ん、下がっていい」

瑞鳳「失礼します」

青葉「卵の話になった時の剣幕、凄かったですね」

提督「ああ、何がそんなにさせるのか」

青葉「…本当に自分の子だと思い込んでいるのかも」

提督「まさかとは思いたいがな」

提督「しかしそのために…手配はしてきたか?」

青葉「ええ、明石さんと妖精さん協力の下、小型カメラを設置して頂きました」

青葉「いやー、ネタ探し用に依頼してた物がこんなことに役立つなんてびっくりですねぇ」

提督「お前の報道のモラルを問うのは後にしておく」

提督「祥鳳が帰ってくるまでは……あと三日か」

提督「それ以降の行動は祥鳳に報告させることにしよう」

青葉「それまではカメラによる監視ですかね」

提督「ああ、報告をよろしく頼む」

青葉「司令官は見ないんです?」

提督「流石に私生活を覗き見するのは、な」

青葉「律儀ですねぇ」

軽空母寮

瑞鳳「ただいまー、って誰も居ないか」

瑞鳳(いや…いるじゃない)

瑞鳳(演習の時は流石にもっていけなかった卵)

瑞鳳(戦闘中もずっと卵が気がかりだった)

瑞鳳(自分でも精彩を欠いてしまっていると分かる)

瑞鳳「…今日ね、提督に言われちゃった」

瑞鳳「今のままじゃ私使い物にならないんだって」

瑞鳳「またお休みもらっちゃったの」

瑞鳳「でもその分一緒にいられるね。悲しめばいいのかな、喜べばいいのかな?」

瑞鳳(この卵を最初に見た時に思った、守ってあげなきゃいけないって感情は)

瑞鳳(日を追うごとにますます強まってくる)

瑞鳳「……」ギュ

瑞鳳「……」ゴロン

瑞鳳(卵を抱えてベッドに転がる)

瑞鳳(卵には暖かさが必要)

瑞鳳(一番暖かいのは…お腹かな)

瑞鳳(卵をお腹のところに優しく押し当てる)

瑞鳳(少し機関も動かそう)ゴウン

瑞鳳(燃料を使うけどいいよね?)

明石の工廠 監視モニター室

青葉「なにしてるんですかねアレ」

明石「抱卵?」

青葉「そんな、鳥じゃあるまいし」

明石「だってそうとしか見えないでしょう?」

明石「それにしても、提督の命令でカメラを仕掛けるなんて何をするんだって思ったけど」

明石「まさかこんな面白いことになってるなんて!」

青葉「ですよね! …じゃなくって笑い事じゃないんですってば」

青葉「正規空母の人達が航空部隊の輸送で抜けてるのに」

青葉「さらに軽空母に欠員が出てるのは割りかし深刻な問題でして」

青葉「しかも原因が出所不明の物ともなれば対応はどうすればいいか」

明石「放っておいたほうがいいのでは?」

青葉「なんですと」

明石「だってもう下手に取り上げたら多分大惨事ですよ?」

明石「『私の卵返してぇぇぇぇ!』って鬼気迫る瑞鳳さんになりますよ?」

明石「やいのやいの騒がずにそっとしてあげたほうがいいんじゃないですかね?」

青葉「成程…で、本当の所は?」

明石「何が孵るか見てみたい!」

青葉「同感…! 同感なんですが…!」

青葉「まあとりあえずは祥鳳さんが帰ってくるまでの三日です」

明石「三日に限らず何ヶ月先まででもいいのに」

青葉「それで修理に支障をきたしたら司令官に怒られますよ?」

明石「とは言うもののここら辺りは最近平和でしょう?」

明石「この前加賀さんの補修をやったっきりで暇を持て余してるんですよ」

青葉「ほほう、これは大規模改修計画を司令官に上申するべきですね」

明石「よしきた! ネジよこせ―!」

執務室

提督「抱卵?」

青葉「あの後も全く動かずに卵を暖めてましたねぇ」

青葉「あと、これは明石さん発案の大規模改修計画書です」

提督「それは置いておくとして…思ったより事態は悪いな」

青葉「明石さんは放っておいたらって言ってましたけど」

提督「そういうわけにも行かないだろう」

提督「艦娘をそうまでさせるんだ、同じものが他の艦娘にも現れたらたまったものじゃない」

青葉「卵産む気はしないんですが」

提督「してたら怖い。…卵について調べる必要がある。最初にやるべきだったが」

青葉「見せられた時は本当にタダの卵でしたもんねぇ。つくづく判断ミスには縁があると思いますよ」ハァ

青葉「でも、どうするんです? 明石さんも言ってましたけど取り上げたら悲惨なことになりそうですよ?」

提督「なら取られたことに気づかれなければいい」

青葉「司令官には策がおありの様子。そこのところぜひ!」

提督「擬卵を使う。本物の卵とすり替えるんだ」

提督「無論あまり長い間だとおそらく偽物とバレる。というか多分意識があるときはバレる」

提督「やるとすれば寝ている時だ。ただ卵を抜き取るだけだと違和感で気づかれるかもしれない」

提督「卵を抱いているという感覚だけ与えておく。解析の時間も少ないだろうが中身の写真くらいは取れるはずだ」

青葉「ふむふむ、『寝こみを襲う!? 司令官夜這い宣言』っと」カキカキ

提督「真面目な話をしてるんだよ俺は!」

青葉「肝心の擬卵はどうやって用意するんです?」

提督「明石が暇してるんだろ? 作らせろ、超特急で」

翌日 夜 軽空母寮

提督「病気になってる艦娘に見舞いと食事を届けるという名目で憲兵から寮の鍵を借りたが」

提督「悲鳴が上がったり、争う音が聞こえたらすっ飛んで来るそうだ」

青葉『それはそれで面白いかもしれませんね!』ムセン

提督「冗談じゃない、人生終了はゴメンだ」

明石『でもせっかく作ったのが無駄になるのは嫌ですねー』ムセン

提督「よく出来ている。軽いし温かい」

明石『触った駆逐艦が温かかったと言ってるのを聞いて、温熱機能も付けてるんです』

明石『量産の暁には毎週毎月3-3と3-5海域に出撃させる際に是非持たせて上げてください』

提督「短時間でそんなものを仕上げたのか」

明石『なに、大和型だって8時間ですよ』

提督「…おかしいなー、大和も武蔵もいないんだよなー…」

提督「瑞鳳さん、お届け物ですよっと」ガチャリ

提督「部屋が結構暑いな…」キィィー

明石『機関動かして暖めているみたいです』

青葉『お、司令官がカメラに写りました。よく見えますね―』

提督「どーもー。さて、瑞鳳は…」

瑞鳳「……」スー

提督「うむ、横になってよく寝ている。とりあえず食事を置いてっと」ガチャ

青葉『卵はお腹あたりにあるみたいですよ』

提督「見えない」

明石『服の下、手とお腹の間ですね』

提督「…すりかえるなんて無理ゲー言い出したの誰だ?」

青葉『司令官ですねぇ』

提督「まぁ…やれるだけやってみるさ」

青葉『やだひわい』

提督「青葉よ、なんなんだお前は、欲求不満なのか?」

青葉『提督の緊張をほぐしてるだけですよぅ』

明石『まぁまぁ、今は瑞鳳さんの卵が先です』

明石『さあ提督やっちゃってください、いつも格納庫をまさぐってるように!』

青葉『明石さんその話詳しくお願いします!』

提督「ええい、そんなことやってない! お前ら面白がってるだけだろうが!」

提督「じゃあ行くぞ?」

明石『はいー』

青葉『どうぞ~』

提督「服の中に手を突っ込む…」

提督(かなり暖かいな…)

提督「それで、卵を…」

提督「む…駄目だ、両手でしっかり固定されてる」

青葉『腕を引き出すしかありませんね』

明石『流石に起きません?』

提督「ここまで来たんだ、最後までやるさ」

青葉『最後までヤ…』

提督「言わせねーよ」

提督「まずは重なってる上の方の手を取る…」

提督「指を浮かして俺の手を差し入れて」

提督「ゆっくりと手をとって…」

提督「急な動きをしないように…」

提督「慎重に置く…」

提督「よし…第一関門は突破した」

提督「ふぅ…暑いな…嫌な汗が出てきそうだ」

明石『何だか映画の爆弾解除みたいですね』

青葉『そりゃ司令官の人生かかってますからね』

提督「お前たちは敵なのか、味方なのか、どっちなんだ」

提督「さて問題の卵を持ってる方の手は…」

提督「…固定がしっかりしている。一筋縄ではいかない」

提督「ちょっと力を加える必要がある」

提督「これで…どうだ」ググッ

青葉『行けそうですか?』

提督「ああ、なんとか指が卵と瑞鳳の手の間に入り込んだ」

提督「あとはこうして…よし取れそ…」ガシッ

提督(!? 反対側の手が!?)

瑞鳳「……提督?」

瑞鳳「……」

提督「……」

瑞鳳「……」

提督「……」

瑞鳳「……あの」

提督「……これにはワケが」ダラダラ

明石(提督それ一番ダメなパターンです!)

青葉(決定的証拠映像がよく撮れてます!)

瑞鳳「…提督、気持ちは嬉しいんだけど…」

瑞鳳「こういうのは、その…」モジモジ

提督「」

瑞鳳「…なんてね! この卵を取りに来たんですよね」

提督「…あ、ああ。久しぶりに肝を冷やしたぞ」バッ

提督「回りくどい真似をしなくても良かったんだな」ハァ

提督「単刀直入に言おう。瑞鳳、その卵について調べたい。少しの間だけ渡してくれないか?」

瑞鳳「…ダメです」

提督「…理由を聞かせてくれないか?」

瑞鳳「…私じゃなきゃダメなんです」

瑞鳳「いや、私じゃなくてもいいのかもしれない」

瑞鳳「でもそれは提督や青葉さんじゃない、なんとなくそう感じるんです」

提督「説明になっていないな」

瑞鳳「ですよね、わかってます」

瑞鳳「提督」

瑞鳳「こう言ったらバカバカしいと思われると思いますが」

瑞鳳「今の私はこの卵の親かもしれないって思ってるんです」

瑞鳳「おかしいですよね、卵なんて産むわけがないのに」

瑞鳳「でも、心の奥底から、魂の根底から」

瑞鳳「守ってあげなきゃ、暖めてあげなきゃって気持ちが溢れてくるんです」

瑞鳳「提督や青葉さんじゃダメで」

瑞鳳「私じゃないといけない」

瑞鳳「そんな根拠の無い確信があるんです」

瑞鳳「提督」

瑞鳳「今の私はこの子のためならなんだってやれます」

瑞鳳「なんだってやれるんです…」

提督「……」

提督「…一時的にでもダメなのか?」

瑞鳳「…はい」

提督「例えこれが命令だとしてもか?」

瑞鳳「…ッ、従え…ません」

提督「…そうか」

提督「夜分遅くすまなかったな。メシそこに置いてるぞ」ガチャン

瑞鳳「……」

提督「……」

提督「…青葉、明石、俺にはどうすればいいかわからん」

青葉『正直ちょっと呑気してました。ネタにもできません』

提督「瑞鳳は悪霊にでも取り憑かれたのだろうか…」

明石『悪霊…深海棲艦絡みでしょうか?』

青葉『青葉、他の鎮守府の艦娘に卵のこと聞いてみます』

明石『私はカメラの映像情報から調べられないかやってみます』

提督「そうしてくれ。今は…情報がほしい」

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