モバP「星とキノコで輝く子」 (52)

独自の設定と独自の登場人物ありです

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いつも一人ぼっちだった。

小学校中学校と人の友達はいなかった。

淋しいといえば淋しい。淋しくないといえば強がりだ。

いつも一人ぼっちなのは環境のせいだ。そう思っていた時期もあった。

だから地元を離れてもっと都会の学校に通ったら変わると思った。

だが現実はそれほど甘くない。結局変わらなければならないのは自分だった。

いつも一人。他人の談笑が気になってしまう。二人組の合図は自分にとっては一人組。

それどころか。都会に出てから一人暮らしを始めたので家族すらいない。

一人で読書をしているやつを見るとシンパシーを感じ、家に帰れば一人ぼっちと自覚する。

変わりたい。だけど自分から何かをする勇気なんかない。

もし誰かが手を伸ばしてくれるなら迷わず取ろう。

そんな甘い考えは起こるはずもないだろう。

そう思っていた。

P「すみません。ちょっと話を聞いてもらていいですか? まずは本題から。アイドル、やってみませんか?」

輝子「………フヒ?」

輝子「アイドル…アイドルって…あの、アイドル?」

P「そうです。なんかこう、君から何か魅力的な物を感じて、ついプロデューサーとして声をかけさせてもらいました」

輝子「アイドル…私が…何かの、間違い…じゃないですか?」

P「そんなことはありません。見る目には自信がありますから」

輝子「そう…なんだ。で、でもわ、私に目をつけるとはいいセンスですよー…」

P「その図々しさもアイドルとしてグゥッド」

輝子「あ、はい。でも…怪しい」

P「まあそう思われても仕方がない職業ですから。そうですね。じゃあこれ。僕の名刺だけでも受け取ってもらえますか。もしアイドルをしたいと思ったなら連絡をください」

輝子「あ…うん…連絡、します」

P「よろしくお願いしますね。それでは」

輝子「アイドル…」

輝子「皆。ただいまー」

キノコ1『お帰りなさい』

キノコ2『遅かったじゃーん』

輝子「聞いてよ皆。わ、私。アイドルにならないかって、スカウトされたんだ! す、すごいでしょ」

キノコ2『マジかよ!』

キノコ3『もしかしてビクトリーロード?』

キノコ2『どーすんだよ輝子』

輝子「調べたら、結構有名な子も多くて…せ、せっかくだし…もらった名刺の事務所に行ってみる…もしかしたら…アイドルとして輝いて…フヒ…ヒャァッハー!!」

キノコ3『地が出てる!』

キノコ1『落ち着きなさい輝子!』

輝子「あ、はいごめん。とりあえず…行ってみる…変わるきっかけに…なるかも」

キノコ4『その調子だ』

輝子「さすが…親友たち……が、頑張る」

輝子「ここ、らしい…けど」

キノ子『結構大きい…のか?』

輝子「じゃあ、失礼…しまーす…結構忙しいのかな?」

P「ん? お! 来てくれたんですね」

輝子「あ、はい…来ました」

P「じゃあ奥で話を。ちひろさーん。言ってた子が来ましたー」

ちひろ「言ってた子って…この子。ふむふむ」

輝子「フ…フヒ」

キノ子『凄い見てる…吟味されてる』

ちひろ「良さげですね」

P「でしょう。この子はなんかとてつもない物を秘めている気がしてならないんですよ」

ちひろ「じゃあ、もうこれで合格と言うことで」

P「鶴の一声と言うことで」

輝子「あ、あの…話…」

P「ん? アイドルしてくれんじゃないのか?」

輝子「そ、それは…」

キノ子『変わりたいんだろ? 答えは…Yes!』

輝子「わ、わかってる…い、Yes…」

P「Yes…ハイってことか。じゃあこれからよろしく」

輝子「こ、これが第一歩…」

P「ようし。今日から星もアイドルとして活動を始めるけど…まあ最初はレッスンばっかしだけどな」

輝子「レッスン…き、きついの?」

キノ子『輝子は…運動はそんなに得意じゃないからなぁ』

輝子「う、うるさいよ…」

P「…なぁ星。思うけど。そのキノコのキーホルダーにしゃべりかけてるのは何なんだ?」

輝子「お、プロデューサーも、いいところに目を…つけたね。この子…私の親友」

P「キノコが親友?」

輝子「そ、そう…私はボッチだから…キノコが親友…フフ」

P「キノコが……ハハーン。じゃあそのキノコ。俺のことなんか言ってる?」

輝子「き、聞いてみる…」

キノ子『これは…私のことを知りたいってことか。でも私と話したいなら友達になってもらわないと。ついでに輝子も友達になろうって言うんだ』

輝子「と、友達になりたいって…」

P「友達かぁ。なら今から友達だ」

輝子「つ、つまりプロデューサーは私の親友の…と、友達だから…わ、私とも友達…!」

P「ん? まぁそうなるのかな」

輝子「と、友達…私たちは友達…フヒ。なら、他人行儀は良く、ないな。友達なら、呼び捨てじゃないとな…P」

P「じゃあ俺も輝子と呼ぼうかな」

輝子「こ、れで…友達…」

P「よし。これで俺と輝子とキノコの三人で親友だ」

輝子「こんにちは…今日も、来ました…ん?」

加蓮「ん?」

輝子「…」

キノ子『もしかして…怖気ついてる? 二人きりだから、気になるよね』

輝子「違う…あの人…ウチの学校の人…しかも、同級生。活発なグループの」

キノ子『知り合いなの? あ、ごめん。知り合い、学校にいなかったよね』

輝子「うん…」

加蓮「ねぇ」

輝子「え、あ、何?」

加蓮「さっきからじろじろこっち見てるけど、何か変?」

輝子「べ、別にそう言う…ことじゃ、ないっていうか…違う」

キノ子『向こうから話しかけてきた…これはチャンスなのでは? 仲良くなるべき!』

輝子「…」

キノ子『ダンマリかよぉ』

加蓮「…これ、食べる?」

輝子「え、あ、これ…! きのこのチョコレート…!」

加蓮「すっごいがっついてきた。もしかして、好物?」

輝子「うん…超好き……!」

加蓮「そう…じゃあ全部あげるね」

輝子「あ、ありがと…!」

P「加蓮。輝子。今からレッスンだから準備しろー」

加蓮「うん分かったー」

輝子「い、いい人、だねあの人」

キノ子『現金だなぁ』

輝子「ゼヒュー。ゼヒュー。し、死ぬ…」

幸子「どうしたんですか輝子さん! こんなのでへばってちゃカワイくなれませんよ! ボクはレッスンする前からカワイイですけどね!」

マストレ「輿水! もう少し周りとテンポを合わせることを覚えろ」

幸子「な、何を言ってるんですか! まあボクがカワイ過ぎて皆さんとは時間間隔が違うかもしれませんけど」

マストレ「ほう…」

輝子「すごいこと言ってるよこの子…ん?」

加蓮「カァ、カハッ! ハァ…!」

輝子「す、すっごいつらそう…なんだけど、だ、大丈夫?」

加蓮「大丈夫…だよ…!」

輝子「あ、うん…ごめん」

マストレ「北条…あまり無茶をするな。まだ体調は良くないのだろう? 倒れては元も子もない。皆にも迷惑をかけるぞ」

加蓮「でも…頑張らないと…アタシにはもう後がない…から」ズルゥ

輝子「ちょ、倒れ、」

マストレ「北条! 星! プロデューサーを呼んできてくれ!」

輝子「あ、はい……わかり、ました…行くよ親友」

キノ子『あの子…体が弱かったの?』

輝子「わかんないけど…Pは、どこだ?」

加蓮「ん…んん。あ、アタシ…」

P「起きたか加蓮。全く。人騒がせなやつだな」

加蓮「プロデューサー…アタシ。倒れたの?」

P「その通りだ。頑張るのはいいけど、少しは自分の体のことを考えるんだ」

加蓮「…」

P「お前が頑張る理由も理解してるつもりだ。だけど倒れちゃ意味がない。こんなことが続くんなら本当にアイドルを続けられなくなるぞ」

加蓮「ごめんなさい」

P「謝る必要はない。けど、すぐそこでグースカいびきをかいてるやつには礼を言っておくんだ」

加蓮「いびき? ってこの子」

P「輝子が俺を呼びに来て、宿直室で寝てるお前を看るとか言ってな。なんかキノコの恩があるとか何とか」

加蓮「キノコ…あ」

P「覚えがあるのか? まあ礼は言っとけよ。職務放棄で寝てるけど」

加蓮「この子にも布団が掛けてある…プロデューサーが掛けたの?」

P「疲れていたみたいだからな。お前たち二人の様子もちょくちょく見には来ていた」

加蓮「そう、何だ…じゃあプロデューサーにもお礼を言わなきゃね。ありが」

輝子「ヒヤァッハー!! キノコは親友だから…やめ、て」

加蓮「えぇ……」

P「なんつー寝言だ。おい輝子! 起きろ!」

輝子「ひゃ? あ、あれ? ね、寝てた?」

キノ子『それはもうグッスリと』

輝子「う、うわ…! あ、北条さん…だ、大丈夫?」

加蓮「…フゥ。ねぇ」

輝子「な、何ですか?」

加蓮「看病してくれてありがとう」

輝子「え、あ…別に…気にすることじゃあ」

キノ子『まあ寝てたしね』

輝子「う」

キノ子『しかし珍しくお礼言われて赤くなって…初々しいなぁ』

輝子「う、違、う」

加蓮「違う?」

輝子「今日も一人のボッチノコ~」

キノ子『学校で歌うの、やめたら』

輝子「いーじゃん。ど、どうせ誰も聞いてない、し。誰も、私のことなんて、見てないし…」

『あ、加蓮じゃん。このクラスに来るなんて珍しー』

輝子「ん?」

加蓮「まあねぇ」

キノ子『あの子…本当に同じ学校だったんだ』

加蓮「あ、いたいた。輝子ー」

輝子「え? わ、私に…用?」

加蓮「あったりまえ。そのつもりで呼んだんだし。ねぇ。もうご飯食べた?」

輝子「え、ま、まだ…」

加蓮「なら一緒に食べない。ほら。アタシのとっておきの場所、教えてあげるからさ」

輝子「え、え…」

キノ子『何やってんのさ! お誘いだよ! せっかく誘われてるんだから行かないと!』

輝子「うん。えっと、そ、そっちがいいなら。いってあげても、いいよ」

キノ子『その言い方は…誘われ慣れてないから…』

輝子「…」

加蓮「ん。じゃあ決まり。ほら、行こう」

輝子「あ、はい」

キノ子『やっぱり慣れてない』

輝子「み、みんな物珍しい、目だった」

加蓮「そお?」

輝子「だ、だって…北条さん…有名人だし。美人で、私なんかと、一緒だから」

加蓮「私なんかって、そんな風に考えるのは良くないんじゃない。アタシと輝子は友達なんだから一緒にといたっていいじゃない」

輝子「と、友達…! と、友達…エヘ」

キノ子『口元ゆるんでるねぇ』

加蓮「ここだよ。とっておきの場所」

輝子「ここって…屋上の、扉…とっておきの場所、としては…ベタベタ…でも、鍵」

加蓮「実はアタシも最近気づいたんだけど…ふん!」

輝子「!?」

加蓮「こうすれば鍵が開くのよ。そしてなぜか勝手に閉まる。学校の七不思議の1つかもね」

輝子「へ、へぇ…」

キノ子『怪奇現象だぁ』

加蓮「よーし。じゃあ食べよ。輝子は昼食パン?」

輝子「きょ、今日はきのこ弁当…作って、来た」

加蓮「へぇー料理できるんだ凄いじゃん」

輝子「き、きのこ料理だけ。えっと、北条さん、は何?」

加蓮「加蓮でいいよ」

輝子「う、うん…そうする。か、加蓮ちゃんは何?」

加蓮「バーガー買ってきたんだ。できたてであったかいよ」

輝子「あれ? 確か敷地内、から出ちゃダメ…だって」

加蓮「人は言いました。ばれなきゃいいって」

輝子「お、おぉ…」

キノ子『しかもお転婆かよぉ』

加蓮「うぅーん。やっぱお昼はハンバーガーだね。輝子は何のハンバーガー好き?」

輝子「わ、私はあんまり食べた、ことなくて…一緒に食べる人が…いなかったし」

加蓮「じゃあ今度一緒に行かない? 学校の帰りに適当に寄り道してもいいし」

輝子「よ、寄り道…!」

キノ子『いっつも直帰だったから未知の体験だよね』

輝子「も、もしかして人生…ベリーイージーモードに入った…! この調子で…友達がどんどん」

加蓮「じゃあ今日、レッスンの帰りにいこっか」

輝子「う、うん」

キノ子『やったね。脱ボッチへの第一歩。初友ってやつだぁ』

輝子「た、ただいま!」

キノコ1『お帰りなさい。機嫌いいみたいですね』

キノコ3『何かいいことでもあった?』

輝子「きょ、今日レッスンの帰りに……バーガーショップに寄ったんだ!」

キノコ2『マジかよ!』

キノコ3『輝子が……一人でバーガーショップに!?』

輝子「違う……と、友達と一緒に」

キノコ2『友達ィ!?」

キノコ1『それは赤飯物ですねぇ』

輝子「このまま人生の転換期を、迎えて……フヒヒ」

キノコ2『気持ち悪いな!』

P「さぁてそろそろ。輝子の宣材写真も撮ったけど、アイドルの衣装。どうしたものかなぁ」

輝子「何か、大変そう、だな」

P「そりゃあ大変さ。輝子の売り出し方をどうしようか考えてんだ。一目見た時、こう、びびっと来るもんがあったんだけど。ただのアイドル衣装のイメージじゃないんだよなぁ」

キノ子『いくつか衣装の資料があるね』

輝子「み、見せてもらっていい?」

P「ああいいぞ。いいのがあったら言ってくれ」

輝子「フンフン……ん?」

キノ子『げぇ。これは……』

P「あん? どったの? で。何かの間違いか? 変なものが紛れ込んでる。悪い。これは無しだ」

輝子「それ……いいかも」

P「これが? 棘チックなこれがいいのか?」

輝子「うん」

P「うーん……輝子がそう言うなら、着てみる?」

輝子「着て…みる」

キノ子『あぁ……毘沙門』

ちひろ「あれ本当に着せたんですか?」

P「本人が着たい着たいと聞かなくて。でも案外いいかもしれませんよ」

ちひろ「そうですかねぇ。一応メイクもしてもらいましたし。輝子ちゃーん」

輝子「ゴートゥヘーーールッ!!! フヒヒヒヒフハハッアッハッハ!!! これだよ! これ! こういうの! そう! も、求めてた! 私! アッハッハッハ! シイタケ! エリンギ! ブナシメジ! キノコ! ……どう?」

ちひろ「えぇ……何かすごいことになってますけど……プロデューサーさん? すんごい満面の笑みですけど」

P「面白い。実に良い。インスピレーションが働いた。いいじゃないか輝子ぉ!」

輝子「Pも乗りに乗ったっか! イヤッハァ!」

P「ちひろさん。今度出すウチのプロダクションの写真集。まだ空きありましたよね?」

ちひろ「え、あ、はい。ありますけど」

P「無くても無理やりねじ込みますよ。輝子ぉ。初仕事だ。また追って話す。楽しみにしているんだな」

輝子「え、ほんと? 初……仕事?」

キノ子『この恰好を見て?』

P「よっしゃーい。写真とんぞー! 準備万端か輝子?」

輝子「ちょ、ちょっとだけ……緊張、フヒッ」

P「結構! 初仕事だ。堂々と斜に構えられても困る。大丈夫だ。今回はそんなにたくさん撮るわけじゃない。今度出す人気アイドルたちの写真集に何人か売り出そうとしている新人アイドルを載せる。その一人がお前ってわけだ」

輝子「お、大御所たちに囲まれ……るのか?」

キノ子『完全にあがってるねぇ』

P「緊張もよし。だけど緊張しすぎるのは良くない。大丈夫だ。ちょっとした緩和剤を持ってきた」

輝子「緩和剤?」

P「加蓮。入ってきてくれ」

加蓮「人を緩和剤呼ばわりって。輝子。やっほー」

輝子「か、加蓮ちゃん?」

P「お前ら仲いいみたいだし、加蓮もできるだけ場数を踏んでもらいたくてな。ちなみに加蓮の写真集に載るんだぞ。アニバーサーリーゴシックのページ。加蓮はこの仕事でランクSRの10に昇格した」

輝子「お、おめでとう」

加蓮「ありがとう。大丈夫だよ。輝子もランクSRになれるよ」

輝子「う、うん」

P「今回の写真集は四季のイメージでいくつか分けられてる。輝子は加連と同じ冬をイメージした写真。クリスマスパーティだ」

輝子「だから、こんなにも……時季外れな恰好なんだ」

P「まあそう言うことだ。今回の仕事をこなせばランクNの11からランクRの11に昇格だ。しっかりやれよ」

輝子「う、うん。やる」

加蓮「じゃあ私はカメラの後ろで見てるからね」

輝子「うん、うん」

キノ子『ちょっとずつ、ほぐれてきたかな?』

加蓮「ねぇ……輝子」

輝子「はむはふ……ん? あ…あに?」

キノ子『口に入れながらしゃべらない』

加蓮「プロデューサーってさ。恋人とか、いると思う?」

輝子「……へ? 濃い人?」

キノ子『恋人だよ。まさかこの子……』

加蓮「なんとなくなんだけどねなんとなく。輝子にだけ話すけど、プロデューサーってちょっといいかなーって」

輝子「……ど、どう返せばいいんだろう」

キノ子『とりあえずわけを聞いてみたらどう?』

輝子「う、うん。な、何でいいと……お、思ったんだ?」

加蓮「そうね……ちょっと、背中がいいなって」

輝子「背中……背中……!? ??!?」

キノ子『輝子にはちょっと理解しがたい返答だね』

加蓮「それにあの人には返しきれない恩もあるし」

輝子「お、恩?」

加蓮「うん。あ、チャイムなった早く戻らないと。輝子も午後の授業遅れちゃうよ」

輝子「あ、ま、って」

加蓮「いいんだけどさ。でもちょっと物足りない気もするのよね」

輝子「物足りないって、Pに何か不満でもあるの?」

キノ子『事務所に向かう時まで恋バナ……成長したねぇ輝子ぉ』

輝子「う、うるさいよ」

加蓮「? まあ不満はないんだけど、完璧すぎるのが玉に瑕と言うか」

キノ子『完璧なのに玉に瑕とはこれいかに』

輝子「完璧、過ぎるのか?」

加蓮「なんでもそつなくこなしちゃうし、結構ガード硬いところがあるのよ。もうちょっと人に見られたくない所をぽろっと見せちゃう所があればなぁ」

輝子「まああのPに限って…そ、そんなところはないと思…うな。事務所に、ついたよ。おはようございまーす」

P「だぁああ! 出ろ! 出ろ! みくにゃんのSSR出ろぉおおおおおおおおおおおおおお! ハァァン! クッソでねぇ! こんなことならスペシャルガチャを回すんだった! 知らなかったんだ! 仕事が忙しくてしばらくログインしてなくて! 毎日ログインしておくべきだったぁああああ! あ」

輝子「……」

加蓮「……」

P「……よお二人とも。随分と早いな。今日は大事な話がある」ポイッ

キノ子『スマホ捨てた』

輝子「Pも、あのゲームやってたん、だ……加蓮ちゃん?」

加蓮「もう虜……」

輝子「えぇ……」

P「ゴホン。二人とも聞いてくれ。二人に大きな仕事を取り付けた。まずは輝子」

輝子「う、うん」

P「お前は某製菓のチョコレート企画のタイアップ。この前の写真集の仕事で輝子のイメージとお菓子のマーケティングに合致したハードでメタルなチョコレートらしい。企画名はブラックバレンタイン」

加蓮「時季外れだね。つまり、かなりビターってこと」

P「その通りだ。このタイアップは全国ネットのCMで流される予定だ。輝子。いきなり大幅ランクアップ。ランクSRの19だ」

輝子「ら、ランク? 何それ?」

加蓮「すごいじゃん輝子! いきなりランクSRの19なんて!」

キノ子「それって、すごいことなの?」

輝子「さ、さあ?」

P「輝子。この業界にはわかり易く自分の立ち位置がわかるようにランク付けされている。ランクは分けて四つ。N、R、SR、SSRの四段階。SSR以外は数字でもランク付けされていて最高で22まで振られている」

加蓮「SSRは文句なしのトップアイドル。指標的に言えばランクSRの21以上がトップアイドルの一員って思ってもいいかもね」

P「こんなにトントン拍子に事が運ぶとは思わなかった。輝子。この短期間でランクSRの19。俺の眼に狂いはなかった」

輝子「あ、ありがとう。Pの、おかげ」

加蓮「あーあぁ。こんなにあっさり追い抜かされるなんてなぁ」

P「何言ってんだ。まだお前の仕事の話もあるぞ」

加蓮「私の?」

P「加蓮。お前はいろいろ苦労してきたけど、それ以上に努力した。そりゃ最初の方は持病を盾にしたサボり癖もあった。だけど一歩一歩進んでいる。この前のアニバーサーリーゴシックでランクSRの10に昇格。本当に頑張ったと思ってるよ」

加蓮「うん。実際すっごい大変だったもんね」

輝子「大変だっ、た?」

加蓮「うん。本当に大変だった。でも、プロデューサーが変わりたい私に手を差し伸べてくれた。とても大きな恩」

輝子「恩……?」

キノ子『輝子と一緒だね』

P「加蓮。話していいのか?」

加蓮「うん。別に隠してるわけでもないし。輝子が聞きたいならね」

輝子「少し、気になる…かな」

P「……加蓮は体が弱いんだ。輝子も見ただろ。レッスンの途中で休んでるのも、倒れたのも」

輝子「あ」

加蓮「入院生活も多かった。でも夢はあった。それがアイドル。でも」

キノ子『でも?』

P「虚弱がたかって入る他のプロダクションで何回も倒れて、たらい回しにされたんだ。ウチじゃあ手に負えないって。いくつもな」

輝子「……そこで手を差し伸べたのが、P?」

加蓮「そう言うこと。プロデューサーには色々手を回してもらったし活動しやすい環境も創ってくれた。本当に、感謝してもしきれないよ」

P「俺の眼から見て上物のダイヤの原石だったからな。ただし容赦もしないけどな。努力を怠るようなら容赦なく切り捨てる。ただし無理だけはするなと伝えた。いいか二人とも。お前たちのすべきことは二つ。ファンを喜ばせることと俺を信じることだ。そして俺はその信頼に応える。俺が請け負うからには絶対にトップアイドルに導く。それだけは分かってくれ」

キノ子『言い切ったよこの人』

輝子「ビッグマウスには…ならない、よね」

加蓮「それについては大丈夫。プロデューサーには実績がある。輿水幸子と白坂小梅の二人をランクSSRにまで導いた実績がね。まあ実績がなくったってアタシはプロデューサーについてくけどね」

P「ついてくるなら任せとけ。お前たちを頂に居座らせるのが仕事だ。ダイヤの原石を磨く仕事は口角が吊り上がるもんだ」

加蓮「何言ってんだか」

キノ子『何か、加蓮ちゃんがプロデューサーさんに惹かれるのがわかった気がする』

輝子「う、うん…Pは絶対に見捨てたりはしない…そんな安心感がある」

P「でだ加蓮! お前の仕事は同じランクSRの18。ブライダルのモデルの仕事だ。時期的にもそろそろジューンブライド。お前には純白の花嫁になってもらう」

加蓮「お、お嫁さんの仕事?」

輝子「ブライダル……ん? ??!?」

キノ子『想像力の限界だねぇ』

P「前回とは逆に加蓮の仕事に輝子が同席する。また細かいことは追々話す。さぁ今日もレッスンだ。気合入れろよ」

輝子・加蓮「はい!」

輝子「まあ、チョコレートのタイアップらしいけど……本当に、時期的にバレンタインとは無縁だよねぇ」

キノ子『バレンタインまで半年どころの話じゃないからねぇ』

輝子「これ、ただの板チョコ。もらってみたけど…けっこう苦くて美味しい」

キノ子『輝子嫌いなものないもんねぇ』

P「おう、どうだ輝子。今回の商品を食べてみて感想は」

輝子「すごく…苦い、かな…ねぇ。Pはチョコとかもらったこと、ある?」

P「あーんまりないなぁ。てか何でだ」

輝子「ば、バレンタインが入ってるし、親友だから、友チョコを、あげよう」

キノ子『お、珍しいことも言うもんだねぇ』

P「ありがたい申し出だな。そのチョコでもくれるのか」

輝子「うん…あ、待ってて」パクッ

P「ん!?」

輝子「ん…あれ? ん」モグパキ

P「あのー……輝子?」

輝子「ご、ごめん。ただの板チョコじゃ芸が無いからハート形にしようと思ったけど、難しかった」

キノ子『食いかけー!? しかもかなり歪』

輝子「い、いらないなら、食べなくて…いいから」

P「……いただくさ。うん。苦い。大人の味だ」

輝子「あ、うん。苦いね。んぐっ」

P「輝子もしっかり食べろよ。これのタイアップなんだ。しっかり味わって理解するんだ」

輝子「…うん。すごく苦い」

P「はい次の仕事-! まあ加蓮の撮影なんだけど」

輝子「か、加蓮ちゃん…き、綺麗だね」

加蓮「ありがとう輝子。まさかこんなドレスが着れるなんて。ねぇプロデューサー。似合う、かな?」

P「とってもきれいだ。きちんとメイクもしてもらって。宝石にさらに磨きをかけた感じだな」

加蓮「本当に、今日が人生最高の日って思えるよ。全部、プロデューサーのおかげだよ」

P「ありがたい言葉だ。プロデューサー冥利に尽きる」

加蓮「それに輝子も、大切な友達も一緒だし、本当に毎日が最高の日だよ」

輝子「そ、そお? て、照れるな」

加蓮「本当に、プロデューサーに拾ってもらうまで人生あきらめてた私だし、本当に……」

P「泣くな加蓮。ここがゴールみたいな言い方をするなよ」

加蓮「うん。わかってる。ここはゴールじゃない。スタートだよ。もっと頑張らなくちゃね」

P「ああ」

キノ子『何か……いい雰囲気だね』

輝子「う、うん」

キノ子「輝子~二人のキューピットになれば~?」

輝子「む、無理無理」

キノ子『う~ん』

輝子「仕事も済んで、きょ、今日はオフ……! DVDを見よう。久しぶりにマタンゴでも……ん?」

小梅「あ…アナタは…輝子ちゃん」

輝子「こ、小梅ちゃん」

キノ子『誰?』

輝子「じ、事務所の先輩。ど、どもっす先輩」

小梅「小梅で…いいよ。輝子ちゃんも…借りに来たの?」

輝子「う、うん。久しぶりに、マタンゴでもって、な」

小梅「それ…知ってる…! 傑作…だね」

輝子「う、うん。キノコだし、な」

キノ子『キノコ関係あるの?』

小梅「ねぇ。今から…一緒に見ない? 女子寮で…一緒に」

輝子「い、一緒に?」

キノ子『行きなよ輝子』

輝子「う、うん。じゃあ一緒させてもらおう、かな」

小梅「じゃあ…待って…て。もう少し…面白いの厳選して…一緒に見よ」

輝子「い、いいね」

キノ子『輝子にお誘い。いいことだぁ』

小梅「どうぞ…入って」

輝子「お、お邪魔します」

小梅「女子寮だから…そんなに長々見られない…から。多くて…二本。一本はマタンゴで…もう一本は…私の…おすすめ…!」

輝子「い、いいねぇ」

小梅「あの子も…喜んでる。お客さんと…一緒にホラー見れて…嬉しいって」

輝子「あの子? キ、キノコも一緒に見るの、う、うれしいって…!」

小梅「皆…ハッピー」

輝子「うん、うん」

キノ子『何かおかしくないかな今の会話』

小梅「そうだ…同じ寮生の…あの子も呼ぼう。もしもし」

輝子「あの子?」

幸子「カワイイボクが参上です! 何ですか小梅さん!? カワイイボクに用事とはって、あれ? 輝子さん?」

輝子「幸子ちゃん、ども」

小梅「幸子ちゃん…一緒にホラーを見よ? 幸子ちゃんの怖がり方…とってもカワイイし」

幸子「ホ、ホラーですか!? へ、へうっ! それはもちろん、怖がる姿もカワイイのは当然ですけど」

輝子「一緒に、マタンゴを見よう、ぜ」

幸子「な、何ですかそれ!? キノコですか!? あんまりカワイくないですね!」

あの子『一緒に見よ』

幸子「何か聞こえたんですけどぉ!?」

キノ子『濃いなこの空間』

輝子「た、ただいま…!」

キノコ1『おかえりなさい。遅かったですね』

キノコ2『さては悪い子になったな! ガハハハハ!』

輝子「ち、違う…! 今日は、事務所の子たちと映画を見て、た、楽しかった…!」

キノコ2『マージーかーよー! 最近の輝子ちょーぜっこーちょーじゃーん!』

輝子「じ、人生に光が差してきた感じかな…! ところで、他の皆は? 静かだね」

キノコ2『やすんでんじゃねーの』

キノコ1『今日のことは皆に伝えておくから、輝子はゆっくりと休んでください』

輝子「う、うん。お、お休み」

加蓮「輝子。私、プロデューサーにお弁当作ろうかなーって思ってるんだ」

輝子「フヒ? お、お弁当を作るの?」

キノ子『と言うか作れるの加蓮は?」

輝子「えっと、加蓮ちゃんは、料理できるの?」

加蓮「こ、これからできるようになるの! そんなことはどうでもイイ! 大事なのは何を作るかよ!」

キノ子『作れるかが最大の焦点じゃないだろうか』

輝子「まあ、いいじゃん。で、その、何を作るの?」

加蓮「そう、それが問題なのよ。作るならプロデューサーの好きな物を作ってあげたいじゃん」

輝子「そ、そうだね」

加蓮「そこで相談なんだけど、輝子って結構プロデューサーと一緒にいるよね。さりげなーく好きなものをリサーチしてくれない」

輝子「わ、私が?」

加蓮「お願い! 一生のお願い! 私から聞くわけにもいかないし、こういうこと頼めるの輝子しかいないから。後生!」

輝子「私しかいない?」

加蓮「うん。輝子しかいないの」

輝子「しょ、しょうがないな。私しか、いない、なら、しょうがない」

キノ子『のせられ易いな』

輝子「うるさいよ」

加蓮「ありがとう輝子! 今度好きなハンバーガー奢るね!」

輝子「キ、キノコバーガー…!」

加蓮「奢る奢る!」

輝子「んー。安請け合いしちゃったけど、どうやって聞き出そう。Pは今資料とにらめっこしてるし」

加蓮「頑張って輝子。応援してるから」

輝子「まるで他人事…まあ、行くけど。ゴホン。あーP。今日はいい天気だね」

P「スッゲー土砂降りだぞ」

輝子「えっと、こんないい天気にPは好きなものが食べたいなーなんて思わない、か?」

P「好きなものは毎日食べたいな」

輝子「えっと、その好きなものって、例えば、何?」

P「そうだな…やっぱ毎日食べるものとして米に関心があるな」

輝子「お、米?」

P「俺の昼飯は基本的におにぎりだ。おにぎりはいいぞ。片手で食べられるから仕事も同時進行だ。ただ最近。おにぎりにも良し悪しってのがあるのがわかってきたんだ」

輝子「そ、そんなのがあるんだ?」

P「そうそう。ただぎゅーっと握られたおにぎりは硬すぎる。具が何か以前におにぎりの握り方ってのがある。口に含んだ時に塊を食べるのではなくてこう、ほろりと解けるイメージ。わかるか? ふわっとした握り方。本当に美味しい握り方だと具がない、それこそ塩で味付けしただけのおにぎりが至高だと思えてくる。いや、塩だけだからこそ米の味が鮮明に引き立つと言ってもいいかもしれない。それにだな」

キノ子『おにぎりについて語りだしたよこの人』

P「個性を出すのは具かもしれないけど……ん? 加蓮。何やってんだそんな隅っこで。覗き見みたいになってんぞ」

加蓮「あ、バレた。別に覗き見してたわけじゃないんだけど……あ、輝子。ありがとう」グッ

キノ子『親指立てた』

輝子「キノコ、バーガー」グッ

P「え、何なんだよお前ら。まあいいや。二人とも来たな。仕事の話がある」

加蓮「お、次の仕事?」

P「その前に、ちょっと話がある。お前たちのアイドルとしての売り出し方だ」

輝子「えぇ、い、今更じゃない?」

P「まあ聞け。アイドルの売り出し方も多種多様だ。輝子のようにとんがった個性を武器に戦うアイドル」

加蓮「確かにすんごい尖ってるよね」

P「逆に加蓮のように王道を行くアイドル像。正直言おう。どれだけ個性を尖らせようとやはり王道が必要になってくる」

輝子「じゃあ、私は、もうダメってこと?」

P「違う。個性を売りにするのは悪い子ではない。実際個性全振りでトップまで駆け上がったみくにゃんなんて存在もある。だけど王道を突き詰めた島村卯月や本田未央と言う存在も無視できない。俺が求めるのは後者。ストレートなカワイさだ」

幸子「僕の話ですね!」

P「今回は違う。だけど王道は最も困難な道だ。尖った個性も、王道もただ進んでいるだけでは必ず壁にぶつかる。だから今回の仕事は革命だ。今までのイメージを覆すLIVEを行う。まず輝子!」

輝子「あ、はい」

P「今回はランクSRの18。まずは今までのハードなイメージを壊さない、別の一面を見せる『あやしい少女』をコンセプトにしたLIVE。LIVE名は『インディヴィジュアルズ』だ。詳細は追って話す。そして加蓮」

加蓮「はい」

P「加蓮は俺の求める王道に合致している。ただしさっき言ったように壁がある。それを乗り越えるには仲間だ必要だ」

加蓮「仲間?」

P「加連の仕事はランクSRの19。他のプロデューサーと掛け合い、インディヴィジュアルズと同じ日に同じ会場でLIVEを行う。加連のコンセプトは『白芙蓉』をイメージした衣装。LIVE名は『夜宴』で行く。これは長期的なプロジェクト。企画名『プロジェクト・トライアド』。お前たち二人とも同時に同じレッスンに入る。準備をするんだ!」

輝子・加蓮「はい!」

キノ子『……』

輝子「お、おぉう……」

P「頑張ったな輝子。一緒に踊った二人との息もぴったりだったぞ」

輝子「美玲さんと、ボノノさん。レッスンでいろいろ迷惑、かけたから。LIVEが成功して、よかった」

P「ああ、大成功だ。ファンのみんなも驚いていたけど。それでも大成功だ」

輝子「本当に、いつもと違う……いつもなら…フハハハー!!! ゴートゥヘールゥ! テメェら全員叩き落としてやるぜぇ! フヒヒャハハハハ!」

P「輝子! 落ち着け」

輝子「まあ、こんな感じなのに、違う……カワイイ感じ?」

P「輝子は素材はいいんだ。可愛く着飾れば魅力的になるのは当然だ」

輝子「は、恥ずかしいこと言うね。ところで、加蓮ちゃんは」

P「ああ、今からまた行くつもりだ。一緒に来るか?」

輝子「う、うん」

P「加蓮。大丈夫か?」

輝子「加蓮、ちゃん? お見舞い、に来たよ」

加蓮「……」

P「加蓮」

加蓮「ごめんなさい。本当に」

輝子「あ、やまる必要はないって。ねぇP」

P「俺に謝る必要はない。他に謝る人がいるってだけだ」

加蓮「……ごめんなさい」

輝子「で、でもいきなり体調不良で倒れるのは仕方ないよ! えっと、貧血だっけ? 今日のLIVEはちゃんとできるん、だよね?」

P「できるさ。リスケして後の方にしてもらったから余裕はある。もう少し休んでていい」

加蓮「……」

P「俺は幸子と小梅の所に行く。いいか加蓮。謝る必要はないんだ。でも皆お前のことを心配してる。特に輝子がな」

輝子「……」

P「俺は行くから、また出番の時には呼びに来る」

輝子「P、行っちゃった」

加蓮「本当に、心配かけてごめん」

輝子「別に、私は気にして、ない…! ただ、心配しただけで」

加蓮「最低だね。私って。こんな大事な時に限って倒れて。ほんと、何してるんだか」

輝子「加蓮ちゃん」

加蓮「本当に、もう、布団にくるまってる自分が情けなくて。涙があふれてしょうがない」

輝子「えっと、えっと……よしよし」

加蓮「輝子?」

輝子「大丈夫。大丈夫だよ加蓮ちゃん。誰も、加蓮ちゃんを責めてなんかいないから」

加蓮「でも、でも」

輝子「私たちは、ほら。アイドルなんだから、笑顔じゃないと、な。ほら、指を口にして、イ~ッ」

加蓮「……プッ。輝子。その笑顔。すごい引き攣ってるよ」

輝子「そ、そうかな。でも、泣くよりはいい。泣くのは、LIVEが終わってからがいい。ファンのみんなは、加蓮ちゃんを待ってるんだよ。泣き顔なんて、似合わないよ」

加蓮「……うん。輝子の言う通りだね。本当に、泣くのは全部が終わってからでいいよね」

P「加蓮。もうそろそろ準備をした方がいい。いけるか?」

加蓮「行けるよ。準備万端。それと」

P「ん?」

加蓮「私はまだ泣かない。ファンのみんなのために。だから頑張るよ。Pさん」

P「……ああ。いい心構えだ」

加蓮「それに輝子」

輝子「何?」

加蓮「ありがとう。行ってくるね」

加蓮「輝子~! 今日も一緒にご飯食べよ」

『お、今日もアイドル二人でお食事会? いいねぇ』

加蓮「うん。ちょっと秘密の会合。いこ」

輝子「ちょっと待って」

加蓮「そして屋上に……ふんッ!」

輝子「今日は晴天だぁ。うわぁまぶしぃ」

加蓮「今日のお弁当は……おにぎり。結構上手く出来てると思わない?」

輝子「そう言えばPに…渡せたのか?」

加蓮「渡せたよ。美味しかったって言ってくれたよ」

輝子「そ、それは何より」

加蓮「いやぁ順調だねぇアイドル生活も。お互いランクSRの19でトップアイドルも目の前。なかなかいいんじゃない」

輝子「そそうだね」

加蓮「それでさ。そろそろだと思うんだよね」

輝子「そろそろって…何が」

加蓮「色んな仕事をPさんとこなしてきたし、お弁当も渡したし、そろそろ私の気持ちを伝える頃合なんじゃないかなーって」

輝子「ぶぇ。ま、マジすか?」

加蓮『このままズルズル気持ちを引きずってるのも嫌だし。どうせならガツーンって行くよ。だから今日は先に行くね』

輝子「なんて言っててけど…正直まだ早すぎる気がする」

キノ子『輝子はあんまり乗り気じゃなかったね』

輝子「正直、Pは堅物だし告白しても玉砕がオチだと思うんだ。事務所についた。おはようございまーす わっ」

加蓮「ッ! 輝子」

輝子「加蓮ちゃん。涙?」

加蓮「あ、うっ!」

輝子「加蓮ちゃん! P!」

P「……輝子か」

輝子「加蓮ちゃんに、なんて、言った?

P「……輝子には関係ないことだ」

輝子「泣くほど、酷い突っぱね方をしたのか?」

P「……お前。一枚噛んでたか」

輝子「答え、て! 加蓮ちゃん、泣いてたんだよ!」

P「泣いてたか。クソッ。俺は加連の接し方を間違えたのか? 俺は保護者として接してきたつもりだったのに」

輝子「…言えることは一つ。加蓮ちゃんの前でそんなこと、絶対に言うな。これだけは言う。Pは間違ったことなんてしてない」

P「……」

輝子「加蓮ちゃんを…探してくる」

P「…何だってんだよ。クソ」

輝子「どこに行ったんだろ」

キノ子『あの流れからして人のいるところには居ないよねぇ』

輝子「でもほとんど見て回って…」

キノ子『どうしたの?』

輝子「一部屋だけ。普段は入ることのないけど、隠れるにはうってつけの場所…衣裳部屋。行ってみよう」

キノ子『ついたね』

輝子「結構、人目につかないんだけど…あ」

加蓮「あ、輝子。みっともない所見せちゃったね」

輝子「Pになんて言われたの?」

加蓮「別に。好きだって言って、お前はアイドルで俺はプロデューサーだー。応えることはできんーって」

輝子「それだけ?」

加蓮「それだけだよ。でも後悔なんてしてない。この気持ちを内に秘めたまま何もしないなんて私らしくないし。Pさんは困惑してるだろうなー。今度からどう接したらいいかって悩んでそう」

輝子「うん。まさにそれ。でも、別に無理しなくていいよ。私だって、関係、ないわけじゃないし」

加蓮「別に無理なんて、してないこともないけど。辛くないって言えばウソになるけど」

輝子「隣、座るね」

加蓮「……」

輝子「辛い時は…一緒にいる。一応、加蓮ちゃんの親友のつもり…ですから」

キノ子『輝子…』

輝子「加蓮さんがわたしをどう思っているかはわからないけど…私は親友のつもりでしてわっ」

加蓮「ごめん輝子。少しだけ肩貸して」

輝子「加蓮ちゃん…」

加蓮「大丈夫。一人で立ち上がれるから」

輝子「…」

輝子「た、ただいま」

P「輝子か」

輝子「P。悩んでる?」

P「…」

輝子「大丈夫、だと思う。Pのしてきたことは間違いじゃなかったと…思うし。加蓮ちゃんは、強い子…だから」

P「そう言ってくれると、少し気が楽になるな」

加蓮「ただいまー」

P「か、加蓮…」

加蓮「何さPさん。さっきのこと気にしてるの? 大丈夫だって。今まで通りにしてくれればいいから」

P「そ、そうか」

加蓮「それに私。あきらめたわけじゃないから」

P「は?」

加蓮「Pさんはあくまでアイドルとプロデューサーだからダメだ―って言うんだったら、むしろPさんからアプローチされるほどに魅力的なアイドルになるだけだから。ね」

P「……そりゃあ、ずいぶんな目標だな」

加蓮「それに私もまだトップアイドルじゃないんだし、トップのトップになって、本当の頂点に立った時に言うべきだったって思ったから。覚悟してねPさん。貴方が育てたアイドルは貴方をどんどん魅了していくつもりだから」

P「……トップアイドルにするのは俺の仕事だ。そう言うことはトップアイドルになってから言うんだな」

加蓮「そのつもりだよ。Pさん」

輝子「とりあえず、一件落着かな」

キノ子『……』

輝子「今日も今日とて大変な一日でしたなー。ただいまー」

キノコ1『おかえりなさい輝子。今日も大変でしたか?』

輝子「大変だったよー。でも、充実はしてるって言うか、いろんな人を見て、いろんな悩みや考えがあって大変だなーって」

キノコ1『アナタもあるでしょう悩みの一つや二つ』

輝子「まああるけど…ねぇ。他の皆は? 最近、声を聞かないなって思うんだけど」

キノ子『そんなの最初からいないよ』

輝子「え?」

キノコ1『今までの声は全部、アナタが創り上げていた幻想にすぎないんです』

輝子「何…言ってるの?」

キノ子『一人ぼっちだった輝子が創り上げた幻想。一人は嫌だと考える輝子が創り上げた偶像なんだよ』

キノコ1『でも今では学校でも、事務所でもたくさんの友達ができた。アナタはもう、一人じゃなくなったんです』

輝子「な、何言ってるのさ。ずっと一緒だったのにいきなりいなくなるなんておかしくないか?」

キノ子『ずっと一緒だったから、突然いなくなるんだよ』

キノコ1『もう私たちは必要なくなったから、いなくなるんです』

輝子「何言ってんのさ! わ、私たちは…親友だろ! 何で…! 何で」



輝子「ねぇ…ねぇ! 何で何にも聞こえないの? 皆! ただいま! 帰って、来たんだよ…!」





輝子「何で…きこえないの…き こ え な い」

加蓮「Pさん! 輝子のこと何か聞いてない?」

P「加連こそ、学校はどうだ?」

加蓮「それが輝子。ぱったり学校に来なくなって」

P「一応輝子の家の住所は分かってる。今から行くつもりだ」

加蓮「待って。私も行く。輝子が心配だもん」

P「じゃあ一緒に行こう。車に乗るんだ」

加蓮「輝子…」

P「ついたぞ。輝子! いないのか!? 鍵が開いてる」

加蓮「入った方が、いいと思う」

P「そうだな。入るぞ輝子!」

加蓮「うっ。埃っぽい。なんか、キノコがいっぱいある」

P「あいつはキノコを育ててるからな。輝子ー!」

加蓮「輝子ー!」

輝子「…」ブツブツ

P「輝子! よかった! 心配したんだぞ」

輝子「…えない」

加蓮「輝子?」

輝子「聞こえない……聞こえない……」

P「おい、大丈夫か? 俺がわかるか?」

輝子「あ、P。聞こえない…きこえない」

加蓮「聞こえないって、何が?」

輝子「親友たちの声…ほら、そこのキノコは世話好きでいつもお小言を言ってくる…そこのキノコはかなりやんちゃ盛りで口も悪くて…そこのキノコは」

P「オイオイ輝子。キノコが喋るわけないだろう。みんな心配してたんだぞ。一回外に出て」

輝子「行かない…行かない…! 親友たちから…離れない。親友たちに淋しい思いは…させない」

P「行かないって。ずっと引きこもってるわけにもいかないだろ。出るぞ」

輝子「いやだ…! 間違いだった。私には親友がたくさんいたのに、ないがしろにして…別の友達を作った。加蓮ちゃんとPを親友だと思って、淋しい思いをさせたから、みんないなくなった。もう、どこにも行きたくない」

P「しょ、輝子! 何馬鹿なこと言ってんだ、キノコが親友って、しゃべるわけ」

加蓮「待ってPさん。少し落ち着いて」

P「ッ…」

加蓮「ここは私に任せてくれない。Pさん相手に話しにくいこともあるだろうし」

P「…わかった。少しだけ席を外す。アパートの前にいるからな」

加蓮「ありがとう…輝子」

輝子「…」

加蓮「隣、座るね」

輝子「…」

加蓮「友達の声、聞こえなくなったの?」

輝子「…」

加蓮「わかるよ。その気持ち。友達って唐突にいなくなっちゃうよね。私もそうだった」

輝子「…」チラッ

加蓮「前に言ったよね。昔は病弱だったって。今もだけどさ。友達ができてもすぐ入院して、いつの間にか疎遠になって。本当に、高校に上がるまでは生きる希望もなかったんだ。でもアイドルの夢だけはあきらめきれなくて、それこそ色々なところを転々としてPさんの所にたどり着いた」

輝子「…」

加蓮「最初こそはレッスンをサボりがちだったよ。でもPさんの後押しのおかげで昔に比べて体力は格段についたし、ずっと入院とは無縁の生活も送れてる。だから高校に入って初めてまともな友達ができた」

輝子「…」

加蓮「でもやっぱりアイドルだから胸の内を明かすことのできる友達ってなかなかできなくて、そんなときに出会ったのが輝子だったんだ」

輝子「…」

加蓮「ねぇ輝子。これを言ったら怒るかもしれないけど、私は輝子の、キノコの友達が消えたのは悪いことじゃないと思うんだ」

輝子「ッ!」

加蓮「だってそれってさ。輝子が私のことを親友だって思ってくれてるからいなくなったんでしょ。私はうれしかったよ。輝子にそこまで想ってくれてるって知れて」

輝子「…」

加蓮「輝子」ギュ

輝子「あ」

加蓮「私は輝子を一番の親友だと思ってる。輝子にもそう思ってほしい。でも友達を失う気持ちを否定するつもりはない。辛いときは一緒にいるよ。だって私は輝子の親友だから」

輝子「…本当はウソなんだ。全部私の幻想だったんだ」

加蓮「輝子」

輝子「キノコが親友なのは本当…でも声は全部私だけにしか聞こえない…イマジナリーフレンドだった。皆は私にこう伝えたんだ。卒業だって」

加蓮「辛かったでしょ。一緒に居てあげる。アナタが私にしてくれたみたいに一緒に、ね」

輝子「フ、フグゥ。ウウゥウ…」

P「…」

輝子「P」

P「輝子! 大丈夫か? 何か苦しこととかあるか?」

輝子「ううん。大丈夫。もう、大丈夫だから」

P「輝子。辛いことがあるならいつでも相談してくれ。俺はお前のプロデューサーだ。辛い時はいつだって相談に乗る」

輝子「うん。ありがとう親友」

加蓮「フフッ」

P「さぁて、今日のLIVEはランクSRの20の足掛かりだ。新ユニット。輝子×加蓮による『スカーネーション』。スカーレットの髪の加連とスカー(傷)だらけの輝子。この二人による初LIVEだ」

加蓮「というより、前のハードな衣装に戻っちゃったね」

P「まあそうだな。輝子がかわいい服よりこっちがいいって聞かなくってな」

輝子「げ、原点回帰ってことで」

P「まあいいさ。そう言う衣装を着たってファンは喜んでくれる。よし、行って来い」

輝子「うん。頑張る」チャリ

加蓮「そのキーホルダー」

輝子「お守り。いつもLIVE中でも身に着けてたけど、今回は…置いてく。本当の意味で…卒業」

加蓮「…じゃあいこっか」ギュ

輝子「うん。一杯驚かせよう」

キノ子『頑張ったね。輝子』

輝子「ん?」

加蓮「どうしたの?」

輝子「…ううん。何でもない」

そうこれは卒業だ。そして卒業は新たな始まりでもある。
まだまだやるべきことはある。私は加蓮ちゃんと一緒に昇り続ける。
まだ見えないトップアイドルの頂に。

輝子「じゃあ加蓮ちゃんに歌ってもらいます。『毒茸伝説』」

加蓮「え!?」

終わり

輝子×加蓮と言う可能性。それを一番伝えたかった

基本短編ばかり書いているのですけど久しぶりに込み入った話をかきました。
呼んでくれた方々ありがとうございました。

みくにゃんの話題も出せたのでノルマクリア


過去作
モバP「杏のために飴はある」
モバP「杏のために飴はある」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396293230/)

おつ
前のも面白かったぞ、他に過去作はないのだろうか

>>49
過去作に続編でありす編と城ヶ崎姉妹編があるけどタイトルを完全に忘れてしまった
短編はアホほどあるからシリーズものとして『ニュージェネレーションズ・ハイ』と『凛で始まり幸子で終わる短編集』辺り

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