いろは「メデューサになってしまいました」 (20)

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いろは「はぁ」

八幡「……」ペラッ

いろは「はぁ」

八幡「……」ペラッ

いろは「あの、なんで溜息ついてるんだ?とか聞いてもいいんですよ」

八幡「やっぱり、ルイズは最高だな」

いろは「きけ」

八幡「なんで溜息をついてるんだ」

いろは「窓にうつる私を見てたら、憂鬱になってしまいました」

八幡「ルイズはそんなこと言わないんだよなぁ」

いろは「だって私って控えめに言ってもキュートじゃないですか。

学校の大半の男が貢いでく……いえ仲良くしてますし」

八幡「アイドルかなにかかお前」

いろは「美は罪ですよね」

八幡「はぁ。己惚れるのもいいが、あんまり周りには言うなよ」

いろは「分かってますよ。だから先輩だけにぼやいてるんです」

八幡「超迷惑なんだが」

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いろは「色んな神様がいるこの学校で、調子に乗ったら嫉妬されますし。息をつける場所がここしかないんです」ウルウル

八幡「そうだな。俺も平塚先生が結婚・母性の女神だと知ったときは驚いたもんだ」

いろは「結婚の象徴である神がいつまでも独身なのはまずいと思うんですよ」

八幡「それなんだが、いつも結婚の話をしているから象徴になったらしいぞ」

いろは「ひっ、ちょっと笑わせようとするの止めて下さいよ!」

八幡「けけっ。罰当たれ」

ピカー

結婚神・平塚先生「比企谷、歯を食いしばれ」

八幡「え、え?」

平塚先生「撃滅のセカンドブリットォ!!」

グシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

八幡「」

平塚先生「ちなみに今度こそまともな彼氏ができたからな。

わたしの銀行のお金もちゃんと管理して、マイホームを建てる為に増やしてくれるそうだ。

一戸建てで結婚できる日はそう遠くない、皆に伝えておくように」

いろは「あっ……はい」

ピカー

いろは「結婚前に相手のお金を管理しはじめる男の人ってどうなんですかねー。ちょっぴり怪しいと思うんですけど」

いろは「それにあれがうわさに聞く撃滅のセカンドブリッド……先輩のお腹に風穴を開けるなんてとんでもない威力みたいですねぇ」

八幡「そんなことより、保健室の先生を、呼べ」ガクッ

いろは「はーい♪それまで頑張ってくださいねー」

テンテンテロリー

八幡「また三途の川を渡りきるところだった」

いろは「神様をだしに使うからこうなるんですよ」

八幡「というか、平塚先生どこで聞いてたんだろうな。ネットみたいに特定のワードが出たらそれを記録するようになっているのだろうか」

いろは「普通にこわいんですけど」

八幡「お前も気をつけたほうがいいぞ。美を司る神はたしか雪ノ下さんだ」

いろは「OBであるはるさん先輩……。やばいです、たすけて下さい」ムニュ

八幡「む、胸が当たって」

いろは「せんぱい……私を見捨てないでくださいよぉ」ムニムニ

八幡「分かった、分かったから離せ!これ以上はやばいから!」

いろは「先輩なら私、なにをされてもいいです……」スリスリ

八幡「」ボキーン

ピカー

八幡「あぁ来てしまった」

処女神・由比ヶ浜「やっはろー!いろはちゃん。あと…ヒッキー」

いろは「あ、結衣先輩、こんにちはでーす」

八幡「俺は呼んでないから」

由比ヶ浜「私も呼ばれたくなかったよ。

でも約束を破ったからには罰を与えないと。一応神の末席だし」

八幡「ちょっと待て、ビッチ神。俺はまだなにもしてないだろ」

由比ヶ浜「ビッチ神って言うなし!処女神だもん!」

八幡「全裸で現れておいてなにを言うんだ、この娘は」

由比ヶ浜「これは、その芸術的な意味で、仕方なくだもん……全部エッチな人間たちがわるいんだもん……」ギロッ

八幡(しまった。話をそらすどころか、地雷を踏みぬいたまである)

いろは「あー結衣先輩、罰を与えなくても大丈夫ですよ。先輩がそんなリスクを冒すとは思えないので」

由比ヶ浜「ううんだめだよ。これはヒッキーとの約束だから。処女に手をだそうとしたら死ぬしかないの」

いろは「はー。大体なんでそんな約束しちゃったんですか先輩……」

八幡「実は幼い頃、周りに処女厨と煽られてな、ノリでしてしまった。今は後悔している」

いろは「あほでしょ」

由比ヶ浜「さぁ、祈ってよ。来世の自分がもっとましな人間になれるように」

八幡「今の俺が最高だと思ってるが」

由比ヶ浜「なんでこういうときにカッコいいのかな。あーあ、私が神様になるまえに会いたかった……」バチバチ

八幡「そうだな。死んだらまた会うかもな、そのときは神様なんてやめとけよ」

由比ヶ浜「……うん!」ニコ

いろは(え、なんですかこの真面目にやばめな空気。冗談で先輩をしなせちゃった~なんて笑えないんですけど)

いろは「ちょっとストップ!」

由比ヶ浜「どうしたの」

いろは「聞きたいことがあるんですけど。どうやって先輩が約束を破ったって分かったんですか」

由比ヶ浜「そ、それはヒッキーの、あれがああなったら反応するようにしてあって。かつ近くに女子がいるときに召喚される仕組みだよ」

いろは「あえてぼかすところがえっちぃですねぇ」ニヤニヤ

由比ヶ浜「うわぁぁん!ひどいよ!ちょっと気にしてたのに!」

いろは「まぁ、それなら先輩は無罪ですよ」

由比ヶ浜「ほぇ?」

いろは「私、処女じゃないです」

由比ヶ浜「え、ええええぇっ!いろはちゃんってまだ高校生1年だよね。なのに……」

いろは「フツーだと思います。結衣先輩は処女神だからしかたないかもしれませんが、皆は卒業してますよ」

由比ヶ浜「」

八幡「世の中糞だな」

由比ヶ浜「ご迷惑をおかけしました……」

ピカー

いろは「どうですか、私って役に立ちますよね♪」

八幡「世の中糞だな」

いろは「うわ……この人、筋金入りの処女厨なんですね。ドンビキです」

八幡「うるせえ。ルイズしかやっぱだめだ」

いろは「いちおう言っておくと彼女、処女じゃないですよ」

八幡「」









八幡「やっぱ由比ヶ浜しかいねえな」

いろは「そのうち処女神の天罰が下りますよ、先輩」

ここまで

いろは「それにしてもいつも独りですよね」

八幡「一人のほうが気楽なんだよ」

いろは「いえそうではなくて、雪ノ下先輩と結衣先輩も奉仕部なのに来てないじゃないですか」

八幡「まぁな。でもあいつらだって仕事はちゃんとしてる」

いろは「たとえば?」

八幡「主に貢物を食べたり、信者に恩恵を与えたり、色々だ」

いろは「まさかの奉仕される側ですか」

八幡「あいつら神だからな」

いろは「なんだかこの部活の目的を改めて問いたくなりますね」

八幡「怠惰に暮らす神も多いなか、模範すべき姿勢を示そうというのが基本方針らしいぞ」

いろは「それでは人である先輩の役割は?」

八幡「模範的信者に叩き上げる気らしい」

いろは「あの、こんなことを言ったら気を悪くするかもしれませんけど。部活、辞めたほうがよくないですか」

八幡「何を言ってるんだ。こんな良い部活他にないぞ。

なにせ神の恩恵で定期的に金貨の入った小袋が道端に落ちるようになったからな。一生奉仕部に属していたいぐらいだ」

いろは「先輩どぶどぶに嵌ってますね。完全にあの二人の思惑通りじゃないですか」

八幡「なら一色の方はどうなんだ。アイドルが生徒会なんて入ったら、それこそいざこざがありそうだが」

いろは「大変ですよ。かっこつけたい勘違い男が仕切り初めて、それを良く思わない連中が陰口をたらたら垂れ流します。

それに女子は私のせいでこうなったと思っているので、目の敵のように扱ってきます。結局、生徒会で私に期待している人なんて、いないでしょう」

八幡「それこそ辞めないのか?」

いろは「ですけど、生徒会に入ってすぐ抜けるのは印象が悪くなるから嫌です」

八幡「……」

いろは「……幻滅しましたか」

八幡「今更幻滅するほど夢見てねえよ。猫をかぶって、いつの間にか脱げなくなった、いつも通りの一色だろ」

いろは「あはは、なるほどです」

いろは(先輩の言葉はどこか暖かく感じられた。まるで、存在することを許されたような気さえした)

いろは(同時に私はなぜここにきたのか思い出した。私は、先輩と話したくてここに来たのだ)

いろは「いつか生徒会を辞めたら、奉仕部に入りたいですねー」

いろは(それは、本心からの言葉だった)

先輩は金貨の分け前が減るのは困るから、その分怠けず働けと言った。

それから、結衣先輩も雪ノ下先輩も、優秀な後輩が来たら歓迎するだろ、と付け加えた。

思わず赤面してしまったくらい、嬉しかった。

そのときから、私には願いができた。

恥ずかしくて誰にも言えない、秘密の願い。

それを叶えるためには、先輩たちに頼ってはいけない。

そんな気がしてならなかった。

だから、私は宣言する。

いろは「生徒会……ちょっとだけ、頑張ってみます。今回は、先輩に頼りません」

八幡「いいのか。今日、ここに来たのはそれが目的だったんだろ」

いろは「ふふっ、少し思うところがありまして。予定変更です」

八幡「……」

いろは「それでは、先輩。私はそろそろお暇させて頂きます」

八幡「あぁ」

いろは「さよなら」

八幡「さよなら」


八幡「頼らない、か」

八幡「なら、俺たちは手を出すべきじゃないのか」

コンコン

八幡「誰だ」

雪乃「私よ。一色さんが帰ったみたいだから、入るわね」



八幡「そうしてくれ。話したいことがある」

雪乃「……」ガラッ

八幡「瞬間移動しないとは、さすがだな」

雪乃「これは人間にあわせた礼儀作法だから。他の神とちがうことは承知してるわ」

八幡「アイツらピカーっと光ったとたんに現れるからな。光る前にノックをしろ、ノックを」

雪乃「現れる前にまず後光で演出する、それも礼儀作法の一つよ」

八幡「そんな演出要らないから。全校集会のときなんか、眩しくて目も開けられないんだぞ」

雪乃「比企谷君の言う通りよ。それにアイマスクをして、そのままずうっと眠ってしまったおバカさんがでてきたのも問題だわ」

八幡「……そんな気にするとか、お前俺を好きなの?意識しちゃう感じなの?」

雪乃「自意識過剰よ。私が気付いたのはクラス毎で解散するとき、比企谷君だけ動かなくて目立っていたから。後半貴方たった一人で座っていたのよ」

八幡「皆俺を嫌いすぎだろ。誰も起こさないってどんないじめだよ。教育委員会を訴えてやるからな。あと雪ノ下、気づいていながらスルーしたお前もだ」

雪乃「万が一にも勝てるとは思えないのだけれど、もし本当にするなら平塚先生は除いておきなさい。先生は貴方を担いで、保健室へ運ぶと提案したの」

八幡「さすが平塚先生だな」

雪乃「でも、比企谷君を触る手つきがいやらしいと周りから指摘されて、すごすごと立ち去ったわ」

八幡「おいやめろ。いくら平塚先生でもそこまで焦ってないだろ!」

雪乃「結婚願望で神にまで上り詰めた彼女が、ベッドで無防備に眠った教え子に手を出さないと言い切れるのかしら?」

八幡「俺の周りは敵しかいないのな、知ってた」

雪乃「もう、比企谷君と話すといつも脱線してしまうわ。ともかく一色さんの話を聞かせて」

八幡「おう」

雪乃「一色さんは、比企谷君の力を借りない。そう言ったのね」

八幡「結構なことだとは思うぞ。それに俺は働くのが嫌いだからな、出動しないで済むならそれが一番いい」

雪乃「そういう態度が一色さんを遠慮させた可能性は、ないのね」

八幡「ねーよ。アイツがそんなことを恐れるタマだと思うか」

雪乃「確かに今までの一色さんならそれを踏まえた上で、比企谷君にお願いしたでしょう」

八幡「だろ。だから今回は…」

雪乃「残念だけれど、比企谷君抜きで今回の依頼は完遂することになるわ」

八幡「なんでそうなるんだよ。一色に任せとけって」

雪乃「ふぅ、比企谷君。今回私たちに持ち込まれた依頼はなんだったかしら」

八幡「生徒会が機能していないから、その原因を外部から取り除いてほしい。だろ」

雪乃「そう、生徒会のメンバーの一人が、恥も外聞もかなぐり捨ててやってきたわ」

八幡「そこまでか」

雪乃「そうよ。本来は自分たちの中で解決すべき問題だもの。

部をまとめる役割を担う生徒会が、奉仕部という1部活に頼るということがどれほど切迫した状況か想像つくかしら」

八幡「指揮系統が崩壊して、まともな議事を行えていないという話も聞いた。だけど、それは一色のせいだけじゃないだろう」

雪乃「そうね、でも一色さんなしでは起こりえなかった問題でもある。欲は人から能力を奪い去り、感情を与える。愚かしいことだけど、事実だわ」

八幡「なら、なおさら一色に責任感のある行動をとらせる必要があるだろう」

雪乃「残念だけど、もうその段階は過ぎているわ」

八幡「はっ?」

雪乃「もう、綺麗ごとでは済まされないということよ。一色さんは自分の評判を下げないように、穏便に終わらせようとするのでしょうけど。

そんな時間をとってられないわ」

八幡「生徒会にはそんな仕事があるのか?」

雪乃「仕事自体はたいしたことないわ。幸いなことに、行事がない空白の期間だったから」

八幡「じゃあ、なにが問題なんだ」

雪乃「これを読めば分かるわ」

雪ノ下がポケットから一枚のA4のレポート用紙をこちらへ手渡した。

八幡「なになに『一色いろはは不純異性交遊をしている。

金品を受け取って、10人以上と…』ってなんだこれ」

雪乃「おととい、生徒会の投書箱に入れられていたらしいわ。渡してくれたのは、依頼をくれた子。

彼女が投書箱のチェックしたときに発見して、そのまま隠し持ってくれたそうよ」

八幡「控えめに言って、できすぎだな。気味が悪い」

雪乃「その通りね。一見、彼女が犯人に思えるけれど、彼女がそんな危険を冒してまで得られるメリットはすくない。

せいぜい、私たちの行動が一色さんに多少不利になる程度。彼女はそこまで一色さんを嫌っていたのかしら」

八幡「……それは分からないが、問題はこの内容なんだろう」

雪乃「そう、一番の問題はこれが事実らしいということよ」

八幡「ひょっとすると、もしかすると、一色はいわゆるファッションビッチではないと?」

雪乃「その紙片に書かれた相手と連絡をとって、確かめたの」

八幡「え」

真実神・雪乃「真実を司る神の名をもって断言する。彼女は、複数の肉体関係を結んでいたわ」

八幡「」

八幡「……どうせなら一色に頼んで、俺も関係を結んでもらうか」

雪乃「クズ谷君?」

八幡「一色!一色!一色!いろはすぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!

あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!一色一色ぅううぁわぁああああ!!!

あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん

んはぁっ!一色の亜麻色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!

間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!

小説10.5巻の一色かわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!

最新刊延期が決まって良かったね一色!あぁあああああ!かわいい!一色!かわいい!あっああぁああ!

短編も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!

ぐあああああああああああ!!!コミックなんて現実じゃない!!!!あ…小説もアニメもよく考えたら…

い っ し き ち ゃ ん は 処女 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!

そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ちばぁああああ!!

この!ちきしょー!やめてやる!!SSなんかやめ…て…え!?見…てる?処女の雪ノ下が僕を見てる?

処女の雪ノ下が俺を見てるぞ!雪ノ下が俺を見てるぞ!訝しげな表情の雪ノ下が僕を見てるぞ!!

よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!

いやっほぉおおおおおおお!!!俺には雪ノ下がいる!!やったよ陽乃さん!!ひとりでできるもん!!!

あ、コミックの小町ちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!

あっあんああっああんあ由比ヶ浜様ぁあ!!と、とつかー!!なんとかさぁああああああん!!!

ううっうぅうう!!俺の想いよ雪ノ下へ届け!!目の前の雪ノ下へ届け!」

雪ノ下「比企谷君、さっきから急にぶつぶつ呟かれても聞こえないのだけれど」

比企谷「心の叫びが届くか試してみたんだ。聞こえないならそれでいい」

雪ノ下「そう」

これからシリアスだけ
待ってくれた人ありがとうごめんなさい

雪乃「ともかく、比企谷君が出る幕はないし裏方にさせるつもりもないわ。ただの観客になってなさい」

八幡「見世物が悪かったら、観客だって文句を言うぞ。一色をどうするつもりなんだ」

雪乃「一色さんにそれとなく話すわ。もし彼女が生徒会を辞めるならそれまで。

辞めないなら、痛い目に遭うかもしれないわ」

八幡「お前、ほんと冷徹だな……」

雪乃「勘違いをしているようだけれど、私が一色さんをどうにかするつもりはないの。

ただ、これを送った相手がさらに一色さんを貶めようとするでしょうね。

そして、私たちにそれを止める手立てはないわ、残念なことに」

八幡「神様でもか」

雪乃「私は神であって、探偵ではない。猫に空を飛べと言っているようなものよ」

八幡「探偵になるのはそんなにハードなの」

雪乃「実のところ、私もその真似事をして、レポート用紙の指紋、筆跡を調べたのだけれど、この学校の生徒と誰とも一致しなかったのよ。故意に癖のある字

を書いてたのと、指紋はほとんど消されていたところを見ると、相当な手練れよ」

八幡「犯人には脅迫文を何度か書いた経験があるのかもな。

しかし、この学校の生徒全員を調べたって……探偵でもしねぇよ、そんな手間のかかること」

雪乃「比企谷君」

八幡「?」

雪乃「実は、全生徒の半数を終えたときに、私もそう思ったわ。でも止まれなかったのよ…」

八幡(雪ノ下は暗い笑みをつくった。

雪ノ下なりに一色を守るために最善を尽くしただろう、結果は空振りだったみたいだが。それでも尊敬に値する行為だとおもう)

八幡「そのお疲れ、だった」

雪ノ下「ええ、有難う。…もう一度言うけれど、今回比企谷君の出番はないわ。

一色さんも男である貴方にこのことは触れられたくないでしょうし、彼女を想うならなにもしないで」

八幡「分かってる」

雪ノ下「貴方の場合、相手の気持ちを分かっていながらするから、性質が悪いのよ」

雪ノ下はふっと息をついて、窓の方へ向いた。

先ほどまで思わず目を背けるぐらいに燃えていた夕陽が、静かに死んでいく。

俺たちは、それを何も言わずに観察していた。

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