桐生一馬「その幻想をブチ殺す」 (30)

注意
・龍が如く×とあるシリーズ(禁書とレールガン)のクロス
・桐生さんは20代(龍が如く0終了後)。ゆえに性格が1~5の桐生さんより荒い
・時代設定は『とあるシリーズ』に合わせます
・稚拙な文章

※オリジナルの展開あり

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【7月20日・学生寮】

ゴシャッ

「ぐあぁぁぁ!!」

ドサッ!!

桐生「……」

[元東城会構成員・高校1年生・桐生一馬(21才)]ドンドン

死闘の末、短髪の男は頭部にキズを負っていた
頭部の傷から流れでる血を垂らしながら、殴り倒した赤い髪の男を見下ろす

ステイル「ぐぅ…ぅぅ…」

[必要悪の教会(ネセサリウス)・魔術師・ステイル=マグヌス]ドンドン

ステイル「灰は灰に…塵は塵に…」

桐生「ウラァァ!!」

ドゴォォ

ステイル「ぐぅぅ…!!」

桐生は倒れているステイルの顔面を、靴底から踏みつけるように蹴り飛ばす
返り血が桐生の頬に飛び散る

桐生「……」

顔面は自分の出血と、ステイルの返り血で混ざり合って血まみれになっている
額から流れる血を垂らしながら、鋭い眼光でステイルを睨みつける

ステイル「きゅ、吸血殺しの…」

桐生「まだ意識があったか。やっぱ手加減するモンじゃねぇな」

桐生「本気でシメねぇと駄目だ…灰にも塵にもなるのは、テメェだゴラァァ!」

ゴスッ!

ステイル「ぐはぁ…!」

勢いよく倒れているステイルの腹部を蹴り上げる
やがてステイルの意識は途切れていく

ステイル「」

桐生「……」

桐生「この街で喧嘩売んなら、ちゃんと相手を選べ」

スプリンクラーが発動しビシャビシャに濡れた通路で行われていた命がけのタイマン
その勝敗がいま決した

桐生「……」ゴソゴソ

桐生「ん、結構入ってるな」

倒れて気絶しているステイルの懐を探る
やがて桐生は手にした財布の中身を確認する

桐生「この金は傷ついたインデックスへの慰謝料として貰う」

桐生「テメェから売った喧嘩だ…悪く思うなよ。負けたケジメだと思え」

桐生「実際に襲ったのはテメェではないらしいが、パートナーの管理くらいちゃんとしろ」

そういって桐生は5千円札だけ引き抜いて、財布をステイルの胸元へ捨てるように財布を返す

桐生「財布の中身全額を取らなかっただけでもありがたく思え」

コツコツコツ…

濡れた通路は歩き、倒れている修道服を着た少女を抱える

桐生「……」グッ

禁書(インデックス)「」

桐生「学生服が水と血で汚れちまった…いつものスーツに着替えるか」

桐生「……厄介なことに巻き込まれたな」

桐生「ん…くそ…なかなか開かねぇな…」ググッ

ガチャッ

溶けて変形し黒焦げたドアノブを回し部屋に入っていく

桐生「チッ、めんどくせ」

【道中】

スーツに着替えたあと、少女を両手でお姫様抱っこをして外へ出かける

禁書「」

桐生「……」コツコツ

桐生(やはりあの時、一緒にいるべきだった。俺は補習なんか行ってる場合じゃなかった)

桐生「……」

桐生「ん?」

不良1「ねぇねぇ、これから俺らと一緒に遊ばない?」

不良2「朝まで楽しもうぜ、な?」

御坂(はぁぁ、面倒)

桐生「……」

ドンッ!

不良1「痛ぇ!」ドサッ

少女をお姫様だっこをしたまま桐生は、ナンパをしている柄の悪い男にワザと近づいて、力強く肩からぶつかる

不良1「いてて、おい!なによそ見してんだよ!」

不良2「待てこら!シカトこいてんじゃねぇぞ!」

不良達の声を無視し前を歩いて行く

御坂(あ!アイツ…やっと見つけた!)

バチバチ…バチバチ…

御坂「ちょっと待ちなさいあんた!!」

バチバチバチ!!

不良1・2「ぎゃあああぁぁ!?」

少女が桐生に声をかけると同時に、電撃が辺りにほとばしり、先ほどまで少女をナンパしていた不良達をいとも簡単に一掃する

御坂「今度こそ私と勝負しなさい!」

桐生「……」コツコツ

御坂「無視すんなやゴラァァァ!!」

桐生「……」クルッ

御坂「っ!?あんた顔面が血まみれじゃない!!」

桐生「傷口はもう塞いである。問題ない」

御坂「そういう問題じゃないでしょ!大体、その両手で支えてる女の子は何なのよ!?」

桐生「……俺はいま虫の居所が悪い。それと急いでる。話しかけんじゃねぇ」

桐生は前を振り向きなおして、後ろにいる少女に言葉をかける

御坂「はぁぁ!?なによそれ…もうこのさい勝負は良いから状況を説明しなさいよ!」

桐生「……」ギロッ

御坂「いっ…」ビクッ

無言の威圧とばかりに振り返る桐生

喧嘩腰の彼女の目に映るの桐生の姿は、血塗れた顔面と鋭い眼光だった

その尋常じゃない姿に恐怖して、思わず言葉を失い後退りをする

桐生「……」

コツコツコツ…

ひと睨みしたあと桐生は再び前を振り向き歩いて行く

御坂「な、何なのよもう…!」

しばらくして、気絶していた少女は意識が戻り、今後の事に付いて話し合った

禁書「む、無理しなくて良いんだよ…これ以上、かずまを巻き込むわけには」

桐生「いいから黙ってろ」

桐生「……」

少女を両手で支えながら、歩いている最中に聞かされた事実を頭の中で整理していた

桐生(十万三千冊とやらの中にある回復魔法は、オレには扱えない…能力カリキュラムを受けているから…)

桐生(病院に行きたくても、学園都市のIDを持ってなさそうだ。仮に入院できてもその情報が洩れてやっかいな事になるかもしれない)

桐生(……治療費を貰うつもりで魔術師から5千円引き抜いたんだがな。これじゃケジメ取らせた意味がねぇな)

桐生「チッ、この右手で修道服に触れなきゃこんな事に」

桐生「ならば、いくべき所は…」

桐生「……」

桐生(差し入れ位、買っておくか)

桐生「すまんインデックス、ちょっとだけコンビニに立ち寄るからな」

禁書「え?」

~~~~

【とあるアパートの前にて】

ピンポーン、ピンポーン

小萌「はいはーい…って、桐生ちゃん!?」

[高校教師・月詠小萌]ドンドン

桐生「夜分遅くに悪いな、先生」

小萌「な、なんですかその格好!?グレーのスーツに赤いYシャツなんか着て…」

桐生「私服代わりに着ているだけです」

小萌「何で顔面が血まみれ何ですか!それとその怪我してる女の子は!?」

桐生「一辺に質問しないでくれ」

桐生「俺の怪我は、学生寮の7階から地上に落下した時に…ちょっと頭から打っちまって」

小萌「」

小萌(なんで生きてるのこの子)

桐生「だがタイマンしているウチに傷口が塞がったみたいです」

桐生「それよりも頼みが」

小萌「え?」

桐生「失礼します」

小萌「え、ちょ、ま、待ってください!部屋の中が汚れてるんで…その…」

桐生(……缶ビールに灰皿、か)チラッ

小萌「あ、あ、あいや、その…えと…げ、幻滅しました?こんな汚い部屋で」

桐生「……」

小萌「こんな状況で聞くのも何ですけど…煙草を吸う女の人は嫌い何ですぅ…?」オロオロ

桐生「これ、セブンスターです」スッ

小萌「ふぇ?」

桐生「ビールと乾き物も買ってあります」

小萌「あーえっと…ありがとうございます」

桐生「ほら」スッ

懐からオイルライターを取り出しチャキンと音を立てて、小萌が加えている煙草の火をつける

小萌「プハァー……って桐生ちゃん!未成年がお酒買ったり煙草は吸っちゃいけません!」

桐生「スー…ハァァ、俺は21です」

小萌「あ、そうでしたね…学校の教員達しか知らない事実ですけど」

桐生「青髪や土御門も知ってるし、もうバラされてるかも知れませんね」

小萌「一服終えたら額に包帯を巻いてあげますからね。傷口が塞がってても治療しないと」

桐生「すまない」

小萌「で、何なんですか?そのシスターちゃんは」チラッ

桐生「話すと長くなるんですが…」

パァァァ…

小萌・桐生「!?」

困惑する小萌に説明をしようとした瞬間、畳で横になっていたインデックスが突如、青白く発光する

禁書「警告。第二章第六節、出血による生命力の流出が一定量を超えた為、強制的にヨハネのペンで目覚めます」

その後、まるで感情がない声で淡々と機械的に、状況説明と今後対処すべき事を説く

――次の日、小萌に治療を協力してもらったインデックスは横になっていた
養生するインデックスを桐生は隣で見守っている

すると買い物から帰ってきた小萌が食事を作る

桐生「先生、恩に着る。色々と協力してもらって、しかも飯まで作ってくれて」

小萌「桐生ちゃんの方こそ。5千円はいらないって言ってるのに…私、大人ですよ?」

桐生「そういう訳にはいかねぇ。それに俺も大人です」

桐生(慰謝料5千円取っておいてよかったぜ。インデックスの奴すげぇ食欲だ)ゴソッ

チャキン…シュボッ

桐生はオイルライターのフタを開けると小萌も顔を近づけて、二人は同時に煙草の火をつける

小萌・桐生「スー…ハァァ」

禁書「ねぇ、そんなに煙草って良い物なの?」

桐生「お前はやめておけ」

小萌「あんまり良い物じゃないですよ?」

禁書「ふーん。所でかずま」

桐生「なんだ」

禁書「本当に高校生なの?なんか老けてるかも」

桐生「……おれはまだ21だ」

禁書「え、高校生なのに20歳超えてるの!?」

桐生「去年、ちょっと色々あってな」

桐生「俺は中卒で、そのあとは極d…いや、その、んー…義理父の家業を継いで…」

小萌「隠さなくても良いですよ。ヤクザさんだったんですよね?」

桐生「」

桐生(なぜバレている…校長と理事長しかしらないはずなのに)

小萌「他の先生達もとっくに知ってますよ?」

禁書「ヤクザって確か、海外で言うところのマフィアの」

桐生「ああそうだ」

禁書「そっか、かずまはスジモンだったんだね!」

桐生「元な」

小萌「あの、私は気にしないから大丈夫ですよ?でも何で二十歳こえてから高校に」

桐生「……まあなんだ。俺の大切な人にだな」

桐生「ちゃんと高校を卒業すれば、極道に戻っていいと言われてな」

第一章・学園都市

(回想・東城会本部)

世良「桐生…改めて聞く。復帰先の希望は堂島組で良いんだな?」

桐生「はい」

世良「……理由はどうあれ、あれだけ堂島組を引っ掻き回したんだ。覚悟はあるのか?」

桐生「それが、俺なりのケジメですから」

世良「わかった…ただし、条件がある」

桐生「条件…ですか」

世良「実は昨日、俺も風間さんの面会にいったんだ」

世良「最後まで東城会復帰には反対されていたようだな」

桐生「ええ」

世良「その面会の時に風間さんからの伝言で、桐生がある条件をクリアしたら東城会復帰を認めてやると言われた」

桐生「……その条件とは」

世良「カタギとして高校に通え…だそうだ」

桐生「なに?」

世良「もし高校を卒業すれば今後、二度とカタギに戻れと絶対言わないと言っていた」

桐生「……」

世良「聞けば中学の時、成績は良かったらしいじゃないか」

桐生(喧嘩も沢山してたけどな…)

世良「あれほどの成績なら、進学校にも通えただろうに」

桐生「俺は孤児院育ちの人間です。それにハナっから進学するつもりもなかった」

世良「まあ風間さんとしては、お前にはどうしてもカタギとしての道を選んで欲しいのだろう」

世良「極道の道を歩む以上、危ない橋を渡るのは事実だ。風間さんはお前を心配している」

世良「高校三年間まじめに平穏に過ごし、それでも尚、極道の道を諦める気になれないのなら、卒業後にまた東城会に戻ればいい…あの人はそう言っていた」

桐生「……」

世良「裏を返せばカタギとしての道を歩むラストチャンスって訳だ」

桐生「俺の気持ちは変わりません」

世良「そうか…とにかく桐生、高校に通え」

世良「俺もあの人の意思を無視する事は出来ない」

世良「学費や生活費はオレが払ってやる」

桐生「……なぜ会長が」

世良「初めは風間さんが工面すると言ったんだがな。俺は風間さんに多大な恩がある。それに風間さんはまだ服役中だ。稼ぐ事もできない」

世良「おまえ自身も例の一件で、結果的に風間さんやその取り巻く連中を救った」

世良「学費と生活費は俺からの恩返しだと思ってくれ…まあもっとも入学が決まれば、学園都市からの金銭的に援助も来るかもしれないが」

桐生「三代目…俺のようなはみ出しモンに、いまさら通える高校なんて」

世良「そうだな。カラの1坪の1件以来、お前は伝説の存在になった。カタギの間でも知られてるかもしれない。少なくとも神室町付近で通える高校などない」

世良「だがそんな特殊な経歴を持つお前でも通えるかもしれない高校がある」

桐生「なに?」

世良「学園都市だ」

桐生「学園都市…?たしか能力開発をやってるとかの」

世良「そうだ。あそこなら特殊な経歴のお前でもきっと受け入れてくれるハズだ」

世良「まあ筆記だけでなく、能力カリキュラムをうけたりするがな」

世良「ただやはり経歴が経歴だ。念のため受験資格を確実にするべく、学園都市と学校側に裏金を払っておく」

桐生「……俺もアンタや渋澤のように、インテリヤクザになれって事ですか?」

世良「お前じゃ一生かかっても俺や渋澤のような計算高い生き方は出来ない。だが学問を学んで損はない」

世良「今の世の中、腕っ節だけじゃ極道は上に上がれやしない」

桐生「……」

世良「三年だ。三年間我慢すればいいだけだ。大学まで行けとは言ってない」

桐生「三年…ですか」

世良「それにもし超能力も身に付ければ、お前は文字通り無敵の存在になる」

世良「将来、東城会の役に立つ為だと思えば決して無駄ではないぞ?」

桐生「……」

桐生「分かりました。親っさんとアンタからの頼みだ、引き受けます」

桐生「俺は高校に進学する」

(しばらくして・セレナ)

麗奈「それでは桐生ちゃん!」

由美「高校受験合格!」

錦山「おめでとう!!」

パンパーン!!

貸しきり状態のセレナにて4人が集う
クラッカーの弾ける音が響き、三人から温かい拍手が送られる

パチパチパチ…

桐生「……ありがとう」

錦山「ぷっ…ははははは!!」

桐生「おい。なんだいきなり笑い出して」

錦山「だってよぉ、こんな厳つい高校生がドコにいるんだよ!ぷっ、あっはははは!!」

麗奈「錦山くん、失礼よ?」

由美「そうよ、せっかく一馬が頑張るって言ってるのに」

錦山「…………はぁぁ」

麗奈・由美「……?」

桐生「どうしたさっきから、笑ったりため息ついたり」

錦山「いや…ずっと一緒にいた兄弟がいなくなるのは、寂しいもんだな」

桐生「錦…」

錦山「この間、親っさんの面会にいったらよ『お前も一馬と一緒に高校行ったらどうだ』って言われたよ」

錦山「心の中を見透かされたみたいで、ドキッとしちまったよ」

桐生「え」

麗奈「錦山くんも考えてたの!?」

由美「へー!一馬と一緒に進学すれば良かったのに」

錦山「……そうも行かねぇよ。俺も桐生も親っさんの大反対を押し切って極道になったんだ」

錦山「桐生はカラの一坪の一件でトラブルに巻き込まれ、一応カタギに戻っている。少なくともカタギとして生きるのに筋は通る」

錦山「だが俺はそうはいかねぇよ」

桐生「……」

錦山「お前と一緒なら地獄でもドコでも喜んでいくが…筋、通さねぇとよ」

錦山「ちゃんと連絡はよこせよ?」

桐生「ああ、わかってる」

麗奈「桐生ちゃん、たまには遊びに来てよね?」

由美「そのうちまた三人でヒマワリに帰ろう?」

桐生「ああ」

麗奈「でも良かったわね。しばらくは平穏に暮らせそうで」

桐生「え?」

麗奈「能力レベルが低い人が通う学校って言ったって、不良高校とかではないんでしょ?」

桐生「ああ、見学した限りでは真面目な生徒ばかりだった。普通の高校と大差はねぇ」

桐生「三年間は平穏に暮らせそうだ」

錦山「ぷっ、はははは!おいおい、それジョークで言ってんのか?」

桐生「人を危ない奴みたいに言うんじゃねぇ」

錦山「東城会の組長を二人もぶっ飛ばした男がよく言うぜ」

桐生「……」

錦山「ま、なんだ。あっちでもし困った事があったら俺に相談しろ。場合によっては学園都市まで駆けつけるからよ」

桐生「ああ、頼りにしてるぜ兄弟」

(次の日・神室町にて)

桐生(さて今日は引越しの手続きと、入学する為の手続きをしにいくか)

桐生(あと歌彫の所にいって刺青に色も入れてもらわないとな)

マック「チョット、待ッテそこのアナタ!」

桐生「あ?」

声をかけられ後ろを振り返るとそこには黒人が立っていた

マック「アナタイイネ!その身から出るオーラ…まさに最高ノ一枚ネ!」

桐生(なんだこいつは)

マック「私はマック・シノヅカと言いマース。世界中を回っている写真家デース」

桐生「写真家?」

――その後、桐生は写真家マックの勧めで携帯カメラで写真を撮り、ブログを始める事にした。曰く、人の心を揺さぶる写真を取る為には『天啓』を得る必要があるとの事

その最高の一枚、天啓を得ることで桐生は新たなる必殺技を独自に覚える事にした

桐生「……天啓か」

桐生「手続き済ませるついでに、ブログ更新も並行してやっていくか」

~数時間後~

桐生「今日は色々と天啓を得ることが出来たな」

桐生「ティッシュ配りの女…運の悪いおっさん…そしてポールダンス演じる酔っ払いのオヤジ…」

桐生「彼らのおかげで俺は最高の一枚を、そして色んな技を習得できた」

桐生「ま、学園都市に行ったらあんなハデな技を使用する機会も無いか。しばらくは平穏な生活が待ってる事だし」

桐生「……」

桐生「……しまった。天啓を得るためのブログ更新に夢中で手続きするの忘れてた」

桐生「今日はもう遅いし諦めるか。だがせめて歌彫の所にはいこう」

(龍神会館)

歌彫「いよいよ色を入れるときが来たか」

桐生「ええ」

歌彫「……ところでお前、高校に行くだって?」

桐生「はい。親っさんと三代目からの命令で」

歌彫「そうか。だけどまだカタギなんだろ?いいのか色入れしちまって」

桐生「本来ならすぐに堂島組に復帰するハズでした。ましてカラの一坪の件が無けりゃ、破門を願い出る事も無かった」

歌彫「……」

桐生「親っさんとしては俺を高校に通わせる事で、カタギとして生きる最後のチャンスを与えてるんだと思いますが」

桐生「俺の考えは変わらねぇ。卒業後はカタギとしての道でなく、また極道の道を歩むつもりです」

歌彫「この色入れはその覚悟って訳か」

桐生「ええ」

歌彫「だがもし背中見られたらマズイじゃないか?」

桐生「すでに筋彫りはとっくの昔に終えている。いまさらそれを言うのは遅いですよ」

歌彫「それもそうだな…じゃ、始めるぞ」

(数日後の引越しの当日・カラの一坪にて)

桐生「……安らかにな」

桐生は花束をそっとおいて目を瞑る
その心の中には一時共闘した、今は亡き不動産会社の社長を想い浮かべる

桐生「……」

「あ、あれ?誰かいる…」

桐生「ん?」

(お兄ちゃんの知り合いかな?)

桐生「アンタは…マキムラマコトか!?」

マコト「え?その声…桐生さん?」

桐生「…目が見えるようになったらしいな」

マコト「はい。前にお兄ちゃんに触れた時に少しずつ光を感じ取れる様になって…いまはちゃんと人の顔も分かるくらいに」

桐生「……そうか。それはよかった」

マコト「あの一件、本当にありがとう桐生さん。いくら感謝しても足りないくらい…」

桐生「気にするな」

マコトは桐生が供えた花束と並べるように地に花束を供える
そのタイミングと同時に桐生は後ろを振り向いてゆっくりと歩き始める

桐生「アンタも…アンタの兄も、安らかで平穏な日々をかみしめているようだな」

マコト「ええ…私が平穏でいられるのは、桐生さんや色んな人達のおかげです」

桐生「俺もしばらくは平穏な日々を送る」

マコト「え」

桐生「実は高校に通うことになってな」

マコト「え…??」

桐生「俺は神室町から3年ほど離れる」

マコト「そうですか…」

桐生「じゃあ、元気でな」

マコト「ええ、お元気で」

互いに挨拶を交わし歩き始める桐生

路地裏から出ると後ろから、オルゴールのような音が聞こえてきた

その音が少し気になった桐生だが振り返らず、目の前にあるバイクにまたがる

桐生「……三代目から支給されたバイク。これもなかなかの乗り心地だ」

桐生「久瀬の兄貴が乗ってたバイクに似てる気もするが…まあいい」

チャキンッ

ライターで煙草に火をつけて一服し、夕焼けに染まった空を眺める

桐生「せっかく買ったこのグレーのスーツも、赤いシャツも…あまり着れないのか。勿体ないし私服として着るか」

桐生「明日からは高校生だ。進学先も不良校じゃない。しばらくは平和な日々を送れそうだな」

ブルゥゥン!

ヘルメットを被り、バイクのカギを回しエンジンを付け、煙草をくわえたまま前へ進みだす

ブロロロロロ…!!

今日はここまで
半年以上前から考えてた話だったけどやっと投下できた

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