結衣「おはようございます、御主人様」 八幡「!?」 (116)

結衣「奥様もお呼びになっておられますよ」

八幡「は、え...何だって?」

結衣「ふふ、寝ぼけてらっしゃるんですか? もう朝ですよ?」

八幡「...」

辺りを見渡す。
広々とした空間に、大理石らしきもので作られたテーブルや、いかにも高級そうな革張り(?)のソファー...。
由比ヶ浜の向こうには、部屋の掃除をしている執事さん(?)...。
さらには、壁にはよく分からん絵画まで掛けられている。

結衣「御主人様、奥様に怒られてしまいますよ?」

...そしてコイツ。
同級生の由比ヶ浜が、何故かメイドの格好をして、俺を起こそうとしている。
黒を基調としたドレスに、白いカチューシャらしきものを頭につけて...いわゆる、ゴスロリメイドというやつなのだろうか。

だいたい、俺はいつも通り自分の部屋で一人で寝た。
こんな所に移動した覚えはないし、まして由比ヶ浜がいた覚えもない。

八幡「...よく分からんが、分かった」スクッ

色々と疑問は尽きないが、由比ヶ浜が困った顔をしていたので、とりあえず促された通りに動く。
由比ヶ浜の後について部屋を出ると、廊下もまた凄かった。
なんかシャンデリアとかあるんだけど...。

コンコン

由比ヶ浜「奥様、若様を連れてまいりました」

由比ヶ浜が凄い扉をノックして...っていや、おいおい。
若様って何だよ、若様って。

?「はーい。どうぞー」

扉の向こうから、気さくな声で返答が返ってくる。
毎日聞いている、聞き覚えのある声だった。

小町「はちまーん、遅いよー。小町、お腹ペコペコだよー」

結衣「すみません、奥様。私の手際がもう少し良ければ...」

小町「結衣ちゃんのせいじゃないよ。八幡の寝起きが悪いのがいけないんだもん」

...予想通り小町だった。
何故か、奥様と呼ばれている。
と言うことは、もしかして俺の母親が小町ということになるのだろうか?

小町「八幡、結衣ちゃんにごめんなさいは?」

...小さい子ども相手に話すような言い方なのは何故だ。
小町の方が明らかに年下だろ。

小町「ほら、はちまーん」

結衣「お、奥様、そんな滅相もございません!」

...なんかもうめんどくさい。
ちゃちゃっと言って終わりにしよう。

八幡「由比ヶ浜...すまん」

結衣「ご、御主人様も! おやめになってください!」

何なんだ、この茶番は。
って言うか、由比ヶ浜が敬語を使えていることが一番の驚きだわ。

小町「はい、よろしい。じゃ、ご飯にしましょー。結衣ちゃん、今日のご飯は?」

結衣「あ、はい...。本日の朝食は---」

糞みたいな茶番の後、これまた豪勢な朝食が出てきた。
朝からメロンとか出てきたし...。
いや、コイツの身体の話じゃないからね。

結衣「御主人様、朝食がお済みになられたら、一先ずお部屋に戻りましょう」

八幡「あ...おう」

小町「結衣ちゃーん、今日も八幡のことよろしくねー」

結衣「はい、承知しました」

ガチャ バタン

行きと同じように、帰りも由比ヶ浜の後ろに付いて歩く。

結衣「御主人様、本日はいつもの様に、10時から家庭教師の方がいらっしゃいます。お昼まで勉強した後、一時半から再開です」

え、家庭教師とか来るの?
って言うか、学校とか無いの?

ガチャ

とか何とか考えてたら、俺の部屋(?)に戻って来た。
改めて見ても、無茶苦茶広い。

パタン

結衣「...えへへ」

由比ヶ浜が突然笑い出した。
言っちゃあ悪いけど、少し不気味だ。
まあ、可愛いけど。

結衣「うーん、やっと空き時間だね、ヒッキー」ダキッ

八幡「!?」

そして、これまた突然抱きつかれた。
メロンが非常に主張してきて、色々とヤバイ。
あ、今度は身体に付いてる方。

八幡「ちょ、ちょっと待ってくれ! 由比ヶ浜!」

結衣「も~、今は二人っきりなんだから、ちゃんと『結衣』って呼んでよ~」

八幡「は、え、は!?」

こ、これはヤバイ...。
とりあえず、事情を話して分かってもらおう...。

八幡「...由比ヶ浜、じ---」

結衣「結衣」

八幡「...結衣、実はな---」

俺は元々、普通(だったはず)の男子高校生だったこと、由比ヶ浜が同級生であること、小町が妹であること...。
とにかく、現状の全てが分からないことを話した。
初めは訝しげに聞いていた由比ヶ浜だったが、徐々に俺の話を信用してくれたのか、本気で聞いてくれた。

結衣「じゃあ...ヒッキーは、私のことも覚えてないの?」

八幡「...そうだな。この世界のお前に関しては、何も...」

結衣「そう...なんだ」ジワ

事を理解した由比ヶ浜は、同時に、目尻に涙を溜めてしまった。
俺自身、訳が分からないながら、申し訳なくなってしまう。
だから、罪を償うため...いや、もしかしたら興味本位なのかもしれないが、彼女に問おうと思った。

八幡「もし良かったら...聞かせてくれないか?」

結衣「グスッ...何を?」

八幡「この家の...それと、俺とお前の状況を」

結衣「...うん」

結衣「何から話したら良いんだろ...」

うーん、と唸りながら、由比ヶ浜は宙を見つめる。
こういう何気ない仕草は、俺の見覚えのある由比ヶ浜そのものだった。

結衣「えっと...まず、ここは比企谷家のお屋敷」

八幡「ちょっと待て」

結衣「え、何?」

八幡「お屋敷ってどういうことだよ。俺ん家って金持ちなのか?」

結衣「あ~...そこからか。えっとね、比企谷家の始まりは、大政奉還の動乱に乗じて、ヒッキーのお父様が---」

八幡「ちょっと待て」

結衣「も~、今度は何?」

ヤバイ、頭が痛くなってきた...。
大政奉還?
親父がナンタラ?

八幡「あー...えっと、何時代? いや、年号は?」

結衣「時代は分かんないけど...年号は大正」

八幡「...」

昭和ですら無いのかよ!
いや、でも、大正って15年で終わるはずだし、もうすぐ昭和なのか...。
っつっても、どっちにしろ戦前...。
...戦前でも、日本にメロンってあったんだ。

結衣「えっと、説明続けるよ?」

そう言って、由比ヶ浜は説明を再開した。

結衣「その時に、旦那様...つまり、ヒッキーのお父様が事業を開始なさって、あれよあれよと言う間に大成長。今じゃ、日本屈指の大財閥だよ」

財閥...比企谷財閥か...。
なんじゃそりゃ...。

結衣「で、その旦那様がお建てになったのが、このお屋敷」

八幡「...なるほど」

そう言われてから改めて部屋を見回すと、どことなく大正ロマンっぽい気がしないでもない。
...すみません、なんとなく知ってる単語を使いました。

結衣「それで、私は比企谷家で奉公させてもらってるの」

八幡「女の子一人で?」

結衣「うん。でもね、普通こういう場合は...その、え、エッチなことされることも覚悟しとかないといけないんだけど、旦那様も奥様もお優しくって、全然そんなことなくて...」

八幡「そう、なのか...」

コイツも、結構な覚悟をして生きてるんだな...。
時代が違うと、ここまで違うもんなのか...。

結衣「あ、でも言っとくけど、ここで奉公させてもらうまでは実家で家業を手伝ってたから、そんな経験一度もないからね!」///

八幡「...何を突然言い訳始めてんだよ」

結衣「え...だって、私達、こ...恋人、なんだよ...?」

八幡「...え、マジ?」

結衣「...マジ」

...今気づいた。
これは絶対に夢だ、うん。
じゃないと、由比ヶ浜が俺の彼女なんてありえない。
だいたい設定がありえない。
とりあえず、定番のアレ...頬を抓ってみよう。

八幡「...」ギチチチチ

...痛い。
はい、夢じゃない。
じゃあなんだよこれ?

結衣「...ヒッキー、何してるの?」

八幡「いや、夢かどうかの確認...」ヒリヒリ

結衣「なんで?」

八幡「だって、お前みたいな可愛い娘が彼女とか、俺の妄想だとしか思えねえからな」

結衣「か、かわっ...!? もう、ヒッキーったら...」プイッ

そう言いつつも、赤面しつつニヤケるコイツの表情の破壊力は半端じゃない。
でも、それはすぐに消えてしまった。

結衣「でもさ...ヒッキー、私に関する記憶持ってないんだよね?」

八幡「...ああ」

結衣「じゃあ...私のこと、好きでもなんでも無いんだよね?」

そう問いかけてくる彼女の表情は、哀しみに満ち溢れていた。
由比ヶ浜のこんな顔は、向こうの世界でも見たことがない。
俺は、どう答えるべきなのだろうか?

そんなことを考えても、答えなど出るはずもない。
だから、今の気持ちをありのままに話した。

八幡「実は...向こうの世界でも、同じような状況だったんだ」

結衣「へ...?」

八幡「あっちでもな、お前は俺に好意を向けてくれていた...。でも、いろんな事情があって、俺はそれに応えるべきか否かを迷ってたんだ」

結衣「いろんな事情...っていうのは、こっちの世界でも続いてるの?」

いろんな事情...。
誤魔化したが、要は俺がカースト最底辺であるということ。
それと、人の好意を信じられないということだ...。
後者はともかく、前者は完全に消滅したと言っても過言ではない。

八幡「---って感じだ。半分消えて、半分残っている...ってところか」

結衣「なるほど...」

...そうだ。
俺はまだ、コイツを信用できない。
コイツは、向こうの由比ヶ浜と完全に同一人物であるという訳ではない。
もし仮にそうでも、周りの状況によって、人の取る行動は変わってくる。

結衣「...ヒッキーが何で悩んでるのかは分かんない。無理に聞こうとも思わない。でも...ヒッキーに認めてもらえるように、私...頑張るから」

そう言って、由比ヶ浜は笑った。
ただ、その笑顔が無理に作られたものであるのは容易に分かった。

結衣「それとさ」

八幡「ん?」

今度は、先程と打って変わっていたずらっぽい笑みを浮かべている。
表情の豊かさも相変わらずだ。

結衣「ヒッキーは、『事情があるから』私の好意に応えるべきか否かを迷ってるんでしょ?」

八幡「...」

結衣「ってことは...むふふ」

なるほど、言いたいことは分かった。
それと、コイツの言いたいことだけでなく、コイツ自身が厄介で、なかなか切れ者であることも...。
向こうの由比ヶ浜と違って、こっちの由比ヶ浜は鋭い。

結衣「...っと、もうそんなに時間がないね」

由比ヶ浜が見ている方向を俺も見る。
そこには、大きな時計が掛かっていた。
俺からしたらレトロなデザインで、振り子がゆらゆらと揺れていた。

結衣「あと20分くらいで先生がいらっしゃるから、そろそろ切り上げないと...」

『先生』と、彼女はそう言った。
さっき言っていた、家庭教師というやつだろう。
ふと、気になったことがある。

八幡「なあ、由比ヶ浜」

結衣「...」

八幡「...あれ、どうした?」

結衣「ヒッキーが今までのヒッキーとは違うっていうのは分かってるけど...でも、結衣って呼んでくれない?」

八幡「え...」

結衣「ワガママだって分かってるけど...ダメ、かな?」

そう言いながら、上目遣いでこちらを見てくる。
俺じゃなければ、速攻で落ちているだろう。
しかし...。

八幡「...ダメだ」

結衣「あはは...だよね」

八幡「俺は...こんな中途半端な気持ちのまま、お前に『こっち側の俺』を思い出させるような真似はしたくない」

結衣「へ...?」

八幡「だから...俺の気持ちにちゃんと整理がついてから、呼び方を変えるかどうか、改めて決める」

結衣「ヒッキー...。へへ、やっぱり、ヒッキーはヒッキーだよ」

ふと、彼女がそんなことを言い出した。
ぶっちゃけ、意味が分からない。

結衣「そうやって、真摯に私の気持ちに向き合ってくれる...そんなところに、私は惹かれたの」

そう言いながら、彼女は頬を紅に染める。
俺も、おそらくそうなっているだろう。

結衣「だから...待ってるね」

八幡「...おう」

リンゴーン

結衣「わっ、マズイマズイ...先生がいらっしゃった...。私、これからお迎えに上がるけど、その時に時間稼ぐから、その間にヒッキーは着替えてて!」

八幡「ちょ、ちょっと待て!」

慌てて部屋から飛び出ていこうとする彼女に、既のところで声をかける。
二人とも慌ててあたふたしてしまっている。

八幡「ふ、服ってどこだよ!?」

結衣「あわわ、えっと...そこ! 向こうの大きいクローゼットの中! それじゃ、行ってくるね~!」

ガチャ バタン

大きな音を立てて、由比ヶ浜はすっ飛んで行った。
俺もわちゃわちゃと服を選んでいるとき、ふと思った。
クローゼットって、この時代から既に日本にあったんだな。

八幡「...なんとか着替えられた」

クローゼットの中には、ものすごい量の服が入っていた。
種類は様々で、洋服も和服もあった。
しかも、どの服も高価そうで、肌触りも凄かった。
...その分、と言って正しいのだろうか?
無茶苦茶着こなしが大変だった。

コンコン

軽快に二度、扉がノックされた。
これはアレか?
俺が何か言うべきなのだろうか?

八幡「...はい?」

思わず疑問系になってしまった。
まあ、問題はないだろう。

結衣「由比ヶ浜です。先生がいらっしゃったのですが、入ってもよろしいでしょうか?」

予想通り由比ヶ浜だ。
先程とは異なり、堅苦しく敬語をバリバリ使っている。

八幡「ああ...どうぞ」

ガチャ

結衣「失礼します。先生、どうぞ」

八幡「...は?」

思わず、素っ頓狂な声を出してしまった。
由比ヶ浜が連れてきたのは、よく見知った人物であり、まさしく俺とその人の間柄そのものだったからだ。

静「いやあ、久しぶりだな比企谷。と言っても、たった3日ぶりだがな」

SS速報VIPで書いていた作品ですが、エロを入れることが決定したため、こちらで建て直しました。
今夜、引き続き投稿しますが、都合上説明ばっかりになってしまうので、最後にまとめを載せるので、そちらをご覧ください。

移転しても見てる

支援
頑張って

>>13 >>14
ありがとうございます
めっちゃ嬉しいです

では、続きを投下します

静「さあ、授業を始めるぞ。今日は確か蘭学からかな。...あれ、教科書が無い」

八幡「...」

...静ちゃんか~。
ここで静ちゃん来るか~。
ってか、蘭学ってなんだよ。
いや、オランダ語でしょ?
それは分かるけどさ...。

静「すまん、比企谷。君の教科書を見せてもらいながら授業を進める」

八幡「は、はあ...」

静「む、どうした? また彼女と喧嘩でもしたか?」

八幡「え...」

この人は俺たちが付き合ってることを知ってるのか...。
なんで教えちゃったの、この時代の俺...。

静「まったく、若いな...。君は時々、女心を完全に無視するような言動を取るからな。だが、それで彼女を怒らせてしまうと、君は女々しく落ち込む」

...あれ?
静ちゃんが普通に恋愛について話してる...ってことは?
...既婚、なのか?
明るい表情で、彼女は語っていた。
...が。

静「...羨ましいよ」

八幡「...へ?」

静「私なんか、子供の時から可愛かったから、たくさん男が寄って来てな...。完全に体目当てな奴もいたし...その時、既に私のスルースキルは完成されつつあった」

ヤバイ。
これ、俺がいた世界と一緒な奴だ。
先程とは一変して、哀しみ、憎しみ、恨み...。
様々な負の感情が、彼女の顔を歪ませているのがハッキリと分かる。

静「そうやってスルーし続けていたら、いつの間にか女学校を卒業していた...。私の代では私ただ一人が、だ!」

語調が次第に強くなっていく。
そう言えば、前に何かで読んだことがある。
明治やら大正の頃、女学生たちは、在学中に結婚して中退するのが普通で、卒業するのは恥ずかしいことだったらしい。

静「まあ、そのおかげで、男尊女卑のこの御時世には珍しく、女が家庭教師なんてできているわけだが...辛いよ」

これまた一変し、先程の禍々しさや力強さは消え失せて、落胆の色が浮かぶ。
お願い、早く誰かこの人を貰ってあげて!

とりあえず、この世界(?)に来て気づいたことがある。
それは、俺が元々いた時代と、人々の喋り方や性格がほとんど同じである、ということだ。
...まあ、まだ3人しか会ってないけど

静「比企谷、どうかしたか?」

俺は今、迷っている。
静ちゃんに、俺が未来から来たことを打ち明けるかどうか...。
元の時代の静ちゃんなら、きっと親身になってくれるだろう。
しかし...本当に信じても良いのだろうか?

八幡「あの...先生」

静「ん? 何だ?」

...試してみるか。
命懸けの賭けだ。

八幡「彼氏もいないんで---」

ドゴッ!!!

八幡「」

静「おおっと...すまん比企谷。体が勝手にな...。椅子が壊れてしまったな。後で弁償しよう」

八幡「は、はは...」

静「私の聞き間違いでなかったらな」

あ、これ本物だ。
うん、信じていいな。
いいけど...命が危うい。

八幡「あの...」

静「何かね?」

八幡「俺の話を...聞いてもらえますか?」

基準はともかく、この時代の静ちゃんも信用できると踏んだ俺は、由比ヶ浜に話したのと同じことを、彼女にも話した。
初めは怪訝そうに聞いていたが、話を進めるうちに静ちゃんの表情は真剣味を増していった。

静「なるほどな...君の話は分かった。にわかには信じ難いが...ふむ」

右手を顎に添えて唸る彼女の仕草は、凛々しささえ感じさせた。
...男の俺なんかより、よっぽど男らしい。

静「...比企谷、何か変なことを考えてないか?」

八幡「あ、いえ、何も」

ふえぇ...。
静ちゃん怖いよぉ...。

静「ふむ...つまり、君は未来から来たと?」

八幡「そう...なんですかね? 正直、よく分かりません」

静「...いくつか質問をする」

八幡「はい」

静「大正は何年間続く?」

八幡「15年です」

静「現時点で、日本が関わった最も大きな戦争は?」

八幡「今、西暦何年か分かりませんが...第一次世界大戦ですかね。まだ起こってなかったら日露戦争です。『大きい』の定義にもよりますが」

静「...生き物の細胞の構成物質をいくつか上げてくれ」

八幡「構成物質...。細胞壁や細胞液、あとは...核やミトコンドリアとか...ですか?」

静「ほう...よし、いいだろう。君の言う事を信じよう」

八幡「ほっ...」

静「ただし」

八幡「はい...?」

静「厳密に言えば、君は未来から来たわけではないようだ」

八幡「...どういうことですか?」

静「君は...そうだな。言わば、異世界から来たようだ」

八幡「異世界...」

静「ああ、そうだ。まず、今は1928年...大正17年の10月だ」

八幡「...なるほど」

俺の記憶している限り、大正は1912年から1926年までの15年間だけだ。
これだけでも、俺が元々いた時代...いや、世界とは違うことが分かった。

静「あと、日清戦争以来、日本は戦争に関わっていない...というより、世界大戦なんて起こってない」

八幡「...ロシアは?」

静「できてすぐに、何百もの少数国家に分裂した。おそらく、私のように教師をやっている者以外、一般人は覚えてすらないだろうな」

...習った歴史と違いすぎて、頭がこんがらがってきた。
それと、気になることが一つ。

八幡「俺がこれだけデタラメ言っているのに、なぜ信じてくれたんですか?」

静「お前が、細胞について...すなわち、不変の真理の一つを知っていたからだよ」

不変の真理って...。
やたらカッコイイ言い方するな、この人...。

静「歴史というのは、人の行動で簡単に変わりうるものだ。しかし、自然の摂理というものはそう簡単には変わらない」

八幡「...なるほど」

静「君にはまだ生物に関することは詳しく教えていない。君が率先して図書館などで調べた可能性も無くは無いが...君は数学系、理科系のことは全く興味を示さないからな」

俺が文系ってことは、世界が変わろうとも変わらないのか...。
それはそれで少しショックだ。

静「とりあえず、君は何処か別の世界から来た。ということは、君は大きな問題を抱えたわけだ」

八幡「と言うと...?」

静「もしこのことが世間にバレてでもしてみろ。君は拘束され、尋問され、様々な情報を吐かされるだろう」

八幡「うわっ...」

静「バレないように、君はこっちの世界の常識を身に付けなければならない」

八幡「...みたいですね」

静「まあ、君の素性がバレる云々が無くとも、君は比企谷家の御曹司だ。主として身につけるべきものはたくさんある」

八幡「...善処します」

静「うむ。...それでだな、比企谷」

八幡「何ですか?」

静「結局、君はさっき何て言ったんだ?」

八幡「」

以上です

まとめ
・八幡はタイムスリップした訳では無い
・この世界では、あまり戦争の無い平和な社会が築かれる
・静ちゃんは独身
・八幡は文系

静「よし、午前の授業はここまで」

八幡「お...お疲れ様でした」

静「うむ、お疲れ」

無茶苦茶ハードだった...。
恐らく、さっきの彼氏発言を根に持たれたのだろう...。
進むスピードは早いわ、内容は濃いわでギッチギチに詰め込まれた。

静「それにしても...やはり、君が最初『未来から来た』みたいなことを言っていたが、確かに文明はそちらの方が発達しているようだな」

八幡「まあ...多少ですけど、こっちの方が勉強の中身は簡単ですね」

静「そうだろう。その分、午後の授業からはもっと厳しく行くからな」

八幡「げ...」

静「午後の授業は2時から開始する。しっかり休んでおけよ」

そう言い残して、静ちゃんは部屋を後にする。
やはり、静ちゃんはどこの世界でもカッコイイ先生なのだろう。
ここまで後ろ姿が様になる人はそういないと思う。

八幡「...さて」

何をすればいいんだろうか...?
これまでは、学校が終わったら奉仕部に行くか、本読むか、寝るか...。
そんなボッチライフだったからなあ...。

コンコン

色々と考えていると、ノックの音が響いた。
誰だろうか?

八幡「はい」

ガチャ

結衣「失礼します。部屋のお掃除に参りました」

先程と同じ服装の由比ヶ浜だった。
後ろには、執事さんと思しき人もいる。

八幡「ああ...由比ヶ浜か。いいよ、自分でやっとくから」

結衣「え...!?」

執事「わ、若様...? ここは我々にお任せ下さい」

八幡「え、あ...そっか。...分かった」

咄嗟に『自分でやる』と言ってしまったが、よく考えれば俺は今は、所謂坊ちゃんなのだ。
普通に考えれば、楽だから良いのだが...いざこんな立場になると、何というか罪悪感がある。
それに俺はこの間、一体何をすればいいんだ...?

執事「若様、私共のことはお気にせず、いつもの様に勉学に励んでください」

おおう...そういうパターンですね、休めないんですね。
...とは言え、静ちゃんに絞られた後に習ったオランダ語は、かなり難易度が高かった。
所々英語と似通った部分があるものの、やはり本質的には全く違うものだと感じた。
あと、蘭和辞書の名前が奇妙な感じだった。
ハマルとか何とか...。

結衣「...御主人様、掃除が終わりました」

八幡「え、ああ...ありがとう」

結衣「はい。それでは失礼します」

執事「失礼します」

ガチャ パタン

...やっぱり、由比ヶ浜が敬語なんて似合わんな。
しかも何だよ、『御主人様』って。
男子高校生だったらエロい妄想しちゃうよ?

八幡「...いや、待てよ?」

俺達はこの世界では恋人だったわけだ。
ということは...もしかしたらもしかする?
...いやいや。
あいつは、そんな経験は一度も無いと言っていた。
まだそこまでは至ってないのだ。

それに、流石にそんなことで由比ヶ浜と付き合うか否かを決めるわけにはいかない。
...とはいえ、こんなことを考えられるようになったのも、少しは冷静になった証拠だろう。
如何せん、現状を全く把握出来てないからな。

コンコン

思案に耽っていると、部屋の扉がノックされた。
そういえば、自室の扉がノックされること自体、俺にとっては珍しいことだった。

八幡「どうぞ」

結衣「由比ヶ浜です。失礼します」

ガチャ パタン

八幡「え、お前だけで来たのに敬語使うのか?」

結衣「だって、廊下から声掛けてたからさ。ドア締めてたら大丈夫なんだけど、ここの廊下って結構声が響くんだよね」

八幡「ふーん、そうなのか」

結衣「...ヒッキー、疲れた顔してるよ? 大丈夫?」

八幡「え、そうか?」

結衣「うん。いつもよりも雰囲気が暗いよ?」

八幡「そう、なのか...」

結衣「あはは、ヒッキーは昔からそうだもんね」

八幡「...昔から?」

結衣「あ、そっか。ヒッキー知らないんだったね。私、11歳の頃からここで奉公させてもらってるんだ」

八幡「え、じゃあ...7年間も一緒にいるのか?」

結衣「そうだよ」

11歳というと、小学5年生か...。
その頃から働いていたなんて...。

結衣「でも最初の一年ちょっとは、ここのお家に慣れるように、ヒッキーと遊んでるばっかりだったんだ」

八幡「あ、そうなのか」

結衣「うん。その次の年からは、徐々に仕事始めたけどね」

八幡「...スゲエな」

結衣「へ?」

八幡「そんな小さい頃から働いてるなんてスゲエって言ったんだよ」

素直にそう思った。
俺は昔から、如何に楽するかばかりを考えてきた。
目標も専業主夫だ。
年をとろうがとるまいが、仕事をするなんてまっぴらなのだ。

結衣「あはは、このくらい普通だよ。それに、私からしたら勉強してるヒッキーの方が凄いし」

八幡「んなこたねえよ。俺は周りに流されてやってきただけだから」

結衣「ん? なんかよく分かんないけど...でも、ありがとね」

八幡「何がだ?」

結衣「褒めてくれたこと。なんだかんだ言っても、そうやって気遣ってくれるヒッキーだから、私は好きなんだ」

...そんなことは無い。
いつも気遣ってくれるのは、由比ヶ浜...お前だ。
前の世界でも、雪ノ下や俺のことを気にかけてくれていた。

結衣「ヒッキー、どうかした?」

八幡「...何でもねえよ」

少し、胸が傷んだ。

結衣「もう...また暗くなっちゃってる」

八幡「だから何でもねえって...気にすんな」

結衣「...うん、分かった。じゃあ、私は戻るね」

八幡「ああ。...由比ヶ浜」

結衣「うん?」

八幡「ありがとな」

結衣「...うん! また後でね、ヒッキー」

カチャ バタン

由比ヶ浜が部屋から出ていくと、一気に静寂が訪れた。
アイツはどこの世界にいても、ああやって騒ぎまくって、周りを明るくしてくれるのだろう。

ガチャ

結衣「忘れてた!」

...ここまでの頻度だと、流石に鬱陶しくなるけど。
まあ、ここでは言及しないでおこう。

八幡「...どうした?」

結衣「あのね、ヒッキーにお屋敷の案内をしてあげようと思って」

八幡「あ~...なるほどな」

よく考えると、俺は寝惚けた状態でリビング(?)に一度行っただけで、それ以外は自室から出ていなかった。
住人がその家のことを全く知らないとなると不便だし、周りの人に奇妙に思われるに違いない。

八幡「なら頼むわ」

結衣「うん、任せてよ!」

『フンスッ!』という効果音が目に見えるようだ。
彼女は胸を張ってそう言った。
双丘が激しく主張しているのはここだけの話...。

八幡「あ、でもその前に...」

結衣「うん?」

八幡「トイレ行かせてくれ」

以上です
たくさんのコメント嬉しいです!
ただ、更新は週1くらいになりそうです...
それと、申し訳ないのですが、来週はお休みさせていただきます

エロにはいつ行けるんだろう...

その後、家を案内してもらったり、飯を食べたり、また勉強したり...それはまあ忙しかった。
学校だったら、それなりに休憩があったり、居眠りできたりするんだけどなあ...。

結衣「---ッキー。ねえ、ヒッキー」

八幡「あ、おお...どうした?」

結衣「どうしたっていうか...なんだかボーッとしてたみたいだから」

八幡「いや...ちょっと疲れちまってな。何でもねえよ」

結衣「...なら、いいんだけど」

...由比ヶ浜の対応に違和感を感じる。
彼女からは、いつもの快活さは感じられなかった。
...これは、俺から質問してもいいのだろうか?

八幡「...なあ」 結衣「ヒッキー」

八幡「あ、な、何だ?」

結衣「あ、ううん、ヒッキーから...」

八幡「...やっぱお前から言ってくれ」

結衣「えっと、じゃあ...」

...今のは、決してビビった訳では無い。
そう自分に言い聞かせても、引き締まった由比ヶ浜の顔を見ると、心が揺らいでしまう。

結衣「私...ちょっと分からなくなっちゃったんだ」

八幡「...何がだ?」

結衣「...ヒッキーのことも、ちょっとよく分かんなくなっちゃって」

八幡「...そうか」

何とも言い難い告白だった。
いや、これは告白...というより、振られたのだろうか?
うん...振られたんだな。

結衣「私の中で勝手に比べちゃってるだけなんだけど...前のヒッキーと今のヒッキーじゃ、少し違うんだ」

当然だ。
見た目や名前は同じだが、生まれも育ちも違うのだ。
そして...そんな2人を同じように慕うことなど、不可能だ。

結衣「私の知ってるヒッキーはね、いつも暗いんだけど、いつも私のことを引っ張ってってくれて...」

えぇ...俺、そんなオラオラ系じゃないからなあ...。
そりゃあ愛想つかせても仕方ない。

結衣「...私の勝手な像を押し付けちゃって、ごめん」

八幡「良いんだよ。それが普通だ」

結衣「...うん」

この後、夕食の時間になるまで、俺と由比ヶ浜の間の空気は淀んだままだった。

昼食の時もそうだったが、夕食時にも静ちゃんは同席していた。
どうやら、授業がある日はいつもこうらしい。

静「んん...このシチュー、とても良い味ですね」

小町「そう言ってもらえると嬉しいです!」

あちらの2人は楽しげに談笑しながら食べているが、俺は心にモヤがかかったままだった。
そんな心境を見透かされていたのだろう、静ちゃんから時折、怪訝そうな視線が飛んでくるのが分かった。

小町「あ、そういえば八幡。今日は何習ったの?」

八幡「...え?」

突然話を振られた。
ボーッとしていたので、ちゃんと聞いてなかった。

小町「抜き打ちチェックだよ。もし分かってなかったら、次回からは授業をもっと厳しく---」

八幡「歴史を習った。つっても、江戸時代末期あたり」

静「...お母さん、最近の比企谷の伸びは目覚しいものがあるので、心配しなくて大丈夫ですよ」

小町「う~ん、なら安心ですね!」

受験意識で叩き込んでいる最中のところだったが、正直余裕だった。
時代が近いとはいえ、この時代だと情報を整備する環境が整って無いのかもしれない。

結衣「熱っ...!?」

そんな時、厨房の方から由比ヶ浜の声が聞こえた。

小町「結衣ちゃん、どうかした?」

結衣「あ、いえ...大丈夫です、奥様」

執事「...火傷したみたいだな」

結衣「すみません...シチューを零してしまいました」

小町「え、大変! すぐに油塗らなきゃ!」

...油?
油ってどういうことだ?
アロエとかなら聞いたことあるけど...。
普通は流水で2,3分冷やすだろ。

執事「...火傷用の油が切れております」

小町「えぇっ、どうしよどうしよ...」

結衣「奥様、このくらい大丈夫ですので...」

...手際の悪さに、少し苛立ってしまった。
そのせいで、語調が強くなってしまったかもしれない。

八幡「そういう時には流水で冷やした方がいいぞ」

結衣「え...?」

そのことに気づき、少し呼吸を整えた。
厨房に向かって蛇口を捻る。

八幡「ほら、手ぇ出せ。このほうが治りが早いから」

結衣「っ...。 い、いや、水がもったいないよ」

八幡「多少関係ねえよ。何なら食器洗いながら冷やせ」

結衣「...分かった」

そう言うと、由比ヶ浜は渋々と自らの手を冷やし始めた。
なぜそうも頑なになるのかは分からなかった。

小町「先生、もしかして医学も教えてくださってるんですか?」

静「え、ええ...。とは言っても、本格的には教えてません。実生活で役に立つレベルのことだけです」

静ちゃんは、先ほどとは打って変わって厳しい視線を送ってきた。
少し口を出しすぎたかもしれない。

結衣「...このくらいじゃ、別に」/// ブツブツ

夕食の後、出された課題を済ませてベッドに飛び込む。
本当に今日は色々あった。
気付いたら訳の分からない状況になっていた。
由比ヶ浜に好きと言われ、その後振られて...。
上げて落とされるとは、まさにこのこと...。

コンコン

そんな落ち込んでいる俺の部屋の扉が、軽快に二度鳴った。
こういう時、普通の小町が来てくれたらな~。

八幡「はい」

結衣「ヒッキー、さっきはありがとね。それでさ、お茶にしようよ!」

八幡「...え?」

結衣「うん? どうしたの?」

八幡「いや、なんか...」

あれ?
さっき俺は振られたはず...。
一体どうなっているんだ?

結衣「ああ、手ならもう大丈夫だよ。ちょっとスースーするけど」

八幡「あ、ああ、なら良かった。---じゃなくてだな」

由比ヶ浜は首を傾げる。
本気で分かっていないようだった。

八幡「いや、だってお前な...」

結衣「あ、さっき暗くなってたのなら、もう大丈夫だよ」

八幡「はあ? 大丈夫ったって...お前、さっき俺のこと振ったのに」

結衣「...え、振ったって、私が!? ヒッキーのことを!?」

八幡「ち...違うのか?」

結衣「違う違う! 私、一言もそんなこと言ってないし、っていうかどっちかと言うと振られたの私だし!」

言ってなかったか...?
そう言われれば、直接的な表現は用いていなかったような...。

結衣「もう、ヒッキー早とちりしすぎ」

八幡「そ、そうか...。いや、そういう状況だと思ってたのにお前が明るい感じで入ってきたから、ちょっと驚いたわ」

結衣「ふふ、ちょっとね~」

そう呟く由比ヶ浜の頬は、だらしなく緩んでいる。
それが不快に感じない...それどころか可愛いとさえ思ってしまうのだから、美人というのは狡い。

結衣「さっきのヒッキー、今のヒッキーじゃないみたいに頼りがいがあったから、ちょっとね」

八幡「...頼りがいが無くて悪かったな」

結衣「ふふ、良いんだよ」

八幡「何が良いんだよ?」

結衣「前のヒッキーももちろん好きだったんだけどね、こんな感じでたまに頼れて、いつもは私にも隙を見せてくれる...。そんなヒッキーもアリかなって」

八幡「...何だそれ」

正直、由比ヶ浜の言っていることはよく分からなかった。
しかし、行為を改めて向けられたことは容易に分かった。
頬が緩むのを感じる。
きっと、先ほどの由比ヶ浜とは違って、それはそれは醜いものであろう。

結衣「ちょ、ヒッキー笑い方キモイ...」

ほらな。

結衣「...にしてもさ」

八幡「ん?」

結衣「さっき落ち込んでたのは、私に振られたと思ってたからだよね? ってことは、やっぱり...」

...やはりこっちの由比ヶ浜は鋭い。
今朝はそのことを厄介だと感じたが、今は不思議と嬉しく感じた。
ただ、それを認めるのは少々悔しさもあった。

八幡「...どうかな」

以上です。
結局ほぼ3週間開けてしまった...。
テスト勉強辛いです...。


俺は明日で開放される

>>45
自分も明日で終わりです。
情報とかいう何が出るか分からんテスト

更新が進まず申し訳ありません...
土日には必ず更新します

こちらに来てから数日経った。
今日は初の日曜日だ。
やっとまともに休むことができる...と思っていたのに。

結衣「ヒッキー、朝だよ~」

八幡「...」

由比ヶ浜が俺のことを起こしに来た。
チラッと時計を見ると、短針は7と8の間を指していた。
これまでは休みの日は昼前まで寝ていたんだから、せめてあと一時間は眠りたい。

結衣「ねえ、ヒッキー」

依然として、由比ヶ浜は呼びかけを続ける。
しかし、人間の根源的な欲求である睡眠欲に抗う手段を、俺は持ち合わせていない。

結衣「...むう」

観念したのか、由比ヶ浜がようやく静かになった。
これで惰眠を貪ることができる...。
...なんて考えていた時期が僕にもありました。

ゴソゴソ

なにやら掛け布団が動いている。
その動きが、俺の安眠を妨げる。

八幡「んん~...」

由比ヶ浜「...ヒッキー」ボソッ

突如、耳元から由比ヶ浜の声が聞こえた。
驚いた俺は、反射的に声が聞こえた方へ視線を向けた。
するとそこには案の定、由比ヶ浜の顔が至近距離にあった。

由比ヶ浜「えへへ...起きないんなら、私も一緒に寝ちゃおうかな」

八幡「...目が覚めたから、起きるわ」

由比ヶ浜「えぇ~、そんな~...」

そう言いながら、彼女は布団から出ていく。
先ほど目の前にあったぱっちりとした目や、湿度を保った綺麗な唇は、残念さを表すように歪んでいた。

由比ヶ浜「まあでも、あんまり長い間一緒に寝てると、赤ちゃんできちゃうかもしれないもんね~」

八幡「いや、おま...流石にそこまではしねえよ」

由比ヶ浜「あはは、そりゃそうだよね。だって6時間以上は寝てなきゃいけないもんね~」

八幡「6時間って、そんなに長いことできるわけねえだろ。ってか時間関係無いし」

由比ヶ浜「へ...?」

由比ヶ浜が小首を傾げる。
何故だろう...由比ヶ浜と会話が噛み合っていない気がする。
それに、普段のコイツの性格からして、朝っぱらから下ネタについて話すような奴じゃない。

由比ヶ浜「だって、一晩と同じくらいの時間って言ったら、6~7時間でしょ?」

八幡「...まあ、そうだけど」

由比ヶ浜「あれ? もしかしてヒッキー、昔私に教えてくれたこと忘れちゃったの?」

八幡「俺が教えた...?」

それとも奥様が教えてくださったんだっけ、と由比ヶ浜は付け加えた。
一先ず、俺(もしくは小町)がコイツに何かしらのことを吹き込んだらしい。

由比ヶ浜「あのね、両思いの男女が一晩一緒に寝ると、女の人は赤ちゃんを授かるんだよ」

八幡「...」

...一言で言うと、ヤバイ。
思いの外、由比ヶ浜は重症なのかもしれない。
...いや、情報がそれほど拡散されないこの時代、性に疎い人がいても仕方が無いのかもしれない。
しかしながら、俺も由比ヶ浜も18歳だ。
この時代なら、既に結婚して子供がいても十分不思議じゃない年齢のはずだ。

結衣「ちょっとヒッキー、聞いてる?」

八幡「え、あ、ああ...」

由比ヶ浜「まったく...。無いとは思うけど、これで妊娠してたら責任取ってね?」

字面だけ見たらあざとく見えるこの台詞も、今のコイツが言うと全くドキドキしない。
寧ろ危機感を抱くまである...。

八幡「あ、ああ...」

結衣「む~...なんか空返事だし」

八幡「や、そんなことは...」

結衣「...不安になるじゃん。もしヒッキーとの赤ちゃんができても...その後、私一人で面倒見なくちゃいけなくなったらって考えたら」

八幡「いや...だからな、子供はできねえんだって」

結衣「なんでそう言えるの?」

八幡「することしてねえからだよ」

結衣「え?」

八幡「あ」

結衣「することって?」

ああ...しくじった。
この流れは最悪だ...。

結衣「ねえ、一緒に一晩寝たら赤ちゃんできるんじゃないの?」

八幡「いや、そうなんだけど...」

結衣「だけど...?」

えぇ...?
これ、言ってもいいのか...?
でも、コイツが変なヤツに襲われたらマズいし...。

八幡「...分かった。この前『エッチなこともされる覚悟でここに来た』って、お前は言ってたよな?」

結衣「え? うん...」

八幡「その『エッチなこと』って何だ?」

結衣「えぇ!? そ、それは...」

彼女は頬を赤らめながら逡巡している。
この光景を見ていると、何かに目覚めてしまいそうだ...。

結衣「キ、キスされたり...おっぱい触られたりとか」///

八幡「...その先があるってことだよ」

結衣「? その先って...?」

少し潤んだひとみをこちらに向けながら、彼女は問いかけてくる。
...これ以上コイツと向かい合うことは、今の俺にはできなかった。

八幡「細かいことは...また追い追いな」///

結衣「ちょ、そんなあ!? 酷いし!?」

由比ヶ浜は食い下がって来るが、流石にこれ以上は言えなかった。
俺は彼女に背を向けて、部屋をあとにしようとする。

八幡「ちょっと顔洗って来るわ」

クイッ

しかし、そんな俺の腕が引っ張られた。
当然ながら、引っ張ったのは由比ヶ浜だった。

結衣「...ここまで来て、お預けは無いじゃん」

八幡「いや、でもな...」

結衣「...どうしてもダメ?」

八幡「...ああ」

俺がそう答えると、由比ヶ浜の目力が少し強くなったような気がした。
...俺には、覚悟を決めた顔にも見えた。

結衣「それなら...大声でヒッキーに酷いことされたって言いながら、奥様のとこに行くから」

八幡「なっ...!?」

結衣「他の家なら取るに足りないことだったりするらしいけど...ここだったら、奥様がお許しにならないと思うよ?」

彼女の目は本気だった。
もう、俺にはコイツを止められない...直感で分かった。

八幡「...由比ヶ浜」

結衣「うん...?」

八幡「目、閉じろ」

更新頻度クソで申し訳無いです...
お詫びにメイド服(&下着姿)ガハマさんのエロ画像貼っときます
http://i.imgur.com/zIH40PK.jpg
http://i.imgur.com/LeZPuKi.jpg
http://i.imgur.com/ZMFLHIp.jpg
http://i.imgur.com/TJewS2n.jpg
http://i.imgur.com/YDjtHQl.jpg
http://i.imgur.com/JHrRF0H.jpg
http://i.imgur.com/2HXrkBh.jpg
http://i.imgur.com/6duRHoa.jpg
http://i.imgur.com/ZkYnBTI.jpg
ss書いてるのに画像に頼ってしまった...

結衣「えへへ...うん」

そう呟くと、由比ヶ浜はそっと目を閉じた。
その光景に思わず息を呑み、喉がコキュっと鳴る。
ここまで来たら、後には引けない。
自らの顔を、由比ヶ浜の方へと寄せていく。

八幡「...由比ヶ浜、好きだ」

結衣「へ? んっ...」

俺と由比ヶ浜の唇が互いに重なり合う。
その直前にコイツが咄嗟に口を開いたせいで、しっとりとした唇が、俺の下唇を挟み込む。
暖かくて柔らかい、初めて味わう感触を数秒味わった後、静かに彼女から離れた。

結衣「あ、う...」///

彼女の顔を見ると、既に朱に染まりきっていた。
そんな表情をされると、こちらまで恥ずかしくなる。

結衣「突然言うなんて...狡いよ」

八幡「...悪い」

お互いにカタコトの言葉を投げかける。
何となくバツが悪くなり、由比ヶ浜から目を逸らす。
すると、不意に手を握られる。

結衣「ねえ...もう一回」

その言葉に俺は頷く。
自然と俺の意識は、彼女の唇に吸い寄せられていった。

再び二人の唇が重なる。
由比ヶ浜の肩を抱いて引き寄せると、彼女は俺に重心を預けてきた。
数歩下がって壁を背にして、由比ヶ浜が俺に迫っているような構図になってしまった。

結衣「んん...」

由比ヶ浜の湿った声に反応し、鼓動が少し早くなった。
そして、さっきと同じ感覚を求めて唇が自然と開く。
お互いがお互いを挟み合うが、あくまでも優しく啄んでいく。
まるでチョコレートの様に蕩ける甘さを感じた。

結衣「...ぷはっ」

不意に由比ヶ浜が離れた。
少し湿った口元が、空気に触れてひんやりと冷たさを感じる。

結衣「これで終わりじゃ無いんだよね? ...どうしたら赤ちゃんできるの?」

台詞自体は幼く、可愛らしいものだった。
しかしながら、その言葉を発する由比ヶ浜の姿は妖艶さを放ち、俺の心を鷲掴みにする。
俺は無意識に、由比ヶ浜を抱きしめていた。

八幡「...本当に、いいのか?」

結衣「うん...ヒッキーなら、いいよ」

由比ヶ浜の言葉が、再び俺の気持ちを締め付ける。
俺は由比ヶ浜の手を引っ張ってベッドまで連れていき、少し強引に押し倒す。

結衣「きゃっ...」

彼女の小さな悲鳴が聞こえる。
胴体にくっついている双丘が微かに揺れた気がした。

結衣「ま、待ってヒッキー!」

八幡「あ...わ、悪い」

結衣「ううん、謝らなくてもいいんだけど...その、何するのか分からないから、ちょっと怖いな~、なんて...」

よくよく考えてみればその通りだった。
今の由比ヶ浜は冗談抜きで、この手の話を全く知らないのだ。
普通の男女のノリで行っても恐ろしいだけだろう。

八幡「じゃ、じゃあ...まず結論から言うぞ?」

結衣「え? う、うん...」

八幡「あ、赤ちゃんを作るにはだな---」

俺は、由比ヶ浜に真実を告げた。
それを聞いたコイツは、顔を真っ赤にして、口をパクパクさせている。

結衣「...ほ、本当に? 嘘とかじゃなくて?」

八幡「...おう」

結衣「う、嘘だし!? だって、ヒッキーのアレを私のアソコにって---」

八幡「ちょ、声! 声デカイから...!」

結衣「あ、あう...。 ごめん」

そう言うと彼女は、深呼吸しながらクールダウンし始めた。
俺も初めて知った時は、何を言っているのかよく分かってなかった節があった...ような気がする。
だから、こいつの今のパニックも分かるような気はする。

結衣「そんなの、なんかエグいし...それに痛そうだし...」

八幡「確かにそうだな...。個人差はあるけど、女性の初体験は痛いらしいし...」

結衣「あのさ、ってことは...最初さえ乗り切れば、痛くならないってこと?」

八幡「あぁ~...そこが難しいところだな。俺は男だから知らんけど、人によっては痛かったり、何も感じなくなったり、気持ちよくなったりするらしい」

なんか俺、さっきから『らしい』ばっか言ってて説得力無いなあ...。
体験無いからどうしようもないんですけどね...。

結衣「そういえば、男の人は?」

八幡「男は初めてとか関係なく気持ちいい...らしい」

結衣「...分かった。やっぱり私、痛くてもいいからヒッキーに教えて欲しい」

由比ヶ浜は、平静を装って言葉を発していた。
しかし、それでも彼女の目からは恐怖の色が読み取れた。

八幡「...ああ。でも、俺も経験ねえから上手くできるか分からん。だから...お前も、怖かったそう言っていいから」

そう言いながら、俺は彼女を抱きしめた。
俺にできることといえば、このくらいしかなかった。

結衣「今日のヒッキー...ちょっと狡いよ」

そう漏らすと、彼女も俺の背中に腕を回してきた。
男なら、誰でも一度は夢に見るシチュエーションのはずだが、俺は不思議と落ち着いていた。
そして、再び口付けを交わした。

以上です
感覚空いた割に全然書き溜め無くて申し訳ない...

テストがあって更新かなり遅れそうです...
申し訳ありません...

次回予告(今回の担当は小町!)

いぇーい!小町だよ!
お兄ちゃんの復讐が段々はげしくなってるねぇ~。でも、小町はお兄ちゃんを応援するのです!あ、今の小町的にポイントたかーい!
そんな事より次回予告!
お兄ちゃんの噂を聞きつけ、ついに動こうとした結衣さん!
彼女の口から出たのは謝罪では無く糾弾だった!
お兄ちゃんはそれに対して声を荒らげる!
次回!『断罪するバハムート』

お兄ちゃん、きっとお兄ちゃんを理解してくれる人は現れるよ!あ、いまの小町的にポイントたかーい!

あとがき

遂に文化祭実行委員会からのヘイトが霧散し始めました。そして、葉山を停学にしたのは、ご都合主義ということで理解してください。

あと、R-18にはしません。

書けないし。

ということで今回も読んでくださりありがとうございました!

荒らしの直後に申し訳ありません。
本日、もしくは明日には更新いたします。
ひと月以上あけて申し訳ない...

少しの躊躇とともに、由比ヶ浜の唇から一度離れる。
時間はまだまだ朝方ではあるものの、部屋のカーテンは閉まっており、電気もついていないため薄暗くなっている。
そんな中でもキラキラと光るほど、由比ヶ浜の瞳は潤んでいた。

結衣「あ...あんまり見られると、恥ずかしいよ」

そう呟く彼女が余りにも愛らしく、身体中が熱くなっていく。
不意に、俺は少し強引にキスをしてから、由比ヶ浜の首元にも口付けをする。

結衣「ひゃ、うう...なんで首なの...? ひっ...!」

俺も正直、そういうビデオなどで女性が首筋や耳元を責められるシーンを見た時、あまり必要だとは思わなかった。
しかし実際やってみると、感じてくれているかどうかはともかく、これだけ反応を示してくれたら止められないことも確かだった。

八幡「...」

そして、こうしている間にも由比ヶ浜の双丘が強く主張してくる。
これ以上我慢するのは、男として無理だった。
...ただ、俺はまだするべきことを済ませていない。

八幡「由比ヶは、あ...ゆ、結衣...」

結衣「...へ?」

八幡「その、あのな...好きだ。だから...付き合ってくれ」

俺は、俺の想いを伝えた。

結衣「...ってことは、その...恋人に戻れるの?」

八幡「お前的にはそうだな。でも...当然だけど、俺としては一から始めたい」

結衣「...うん。私もヒッキーと...私の知らない、でも根っこは同じヒッキーと、もう一度始めたい」

...生まれて初めて、告白が成功した。
もちろん、向こうからの好意は感じていた。
なんとなく上手くいくことも分かっていた。
それでも...俺は彼女のことが信じられなかった。

もう1人の俺のことを引きずっているのではないか。
一時の気の迷いではないか。
比企谷家が金持ちだから利用するつもりではないか。
理由はいくらでも並べることができる。
これらはいずれも完全に否定することなんてできない。

しかし...この世界に来て、俺は一人だった。
以前から自他ともに認めるぼっちではあったものの、周りにはいつも俺を気にかけてくれる誰かがいた。
しかし今は、ただ仕事として一緒にいてくれる人しかいない。
本当に向き合ってくれているのは、彼女だけだった。

結衣「もう...突然黙っちゃって、どうしたの?」

俺はこいつに依存しているだけなのかもしれない。
元来、俺はこういう関係を虚構と見なして嫌ってきた。
でも今の俺は、こういうのも有りかと思っている。

結衣「む~。無視するんだ...それなら、こうだからっ!」ギュッ

八幡「ちょ、っ...」

結衣「...」

由比ヶ...結衣は、俺を抱き寄せて口づけを交わした。
重力に負けた俺の腕は、支えきれなくなり敢無く曲がる。
不意を取られた俺は、思わず目を見開いてしまっていた。

八幡「...突然すぎるだろ」

結衣「へへ、やっと喋ってくれた」

そう言う彼女の笑顔を見ると、先程までの思考がどうでもよくなってくるのだから凄まじい。

結衣「今は、その...私に教えてくれるんでしょ?」

俺はその一言に苦笑いしながら、そうだなと呟いた。
再び、結衣の唇に自分の唇を合わせる。
先ほどの欲求を思い出し、俺の右手は彼女の乳房へと伸びていた。

結衣「あっ...」

軽く触れた瞬間、結衣の口から息が漏れる。
指は彼女の左胸の形を歪にし、それに反発して押し返してくる。
いわゆる理想的な張りであることは、実物を見ずとも分かった。

結衣「ひ、ヒッキーだって突然じゃん...」

八幡「でもお前、触っていいか確認とるのか?」

結衣「それはちょっと...」

八幡「じゃあどうすんだよ...」

結衣「...じゃあ、このまま続けて...いいから」///

照れながら発されたその言葉は、俺の理性をショート寸前まで追い込んだ。
右手にさらに力を加えながら、結衣の首筋に唇を落とす。
服の下には、下着と思しき感触があった。
見てみたい...その欲求に駆られて、俺は結衣のメイド服をまさぐった。

結衣「う、あ、うぅ...」

彼女は少しだけ抵抗を見せたが、ほぼされるがままといった様相だ。
まず、真っ白ですべすべな腹部が目に入る。
これだけでも、まともな男なら目が釘付けになるほどの美しさだ。
しかし、これだけでは終わらない。
もう一段階、ぐいっと服を捲る。
そこには質素な、しかし気品溢れる肌色のブラジャーに包まれた双丘があった。

結衣「恥ずかしいよ...じっと見られたら」

八幡「わ、悪い...」

注意されて少し気恥ずかしくなり、目線を逸らす。
しかし、こればかりは男の性なのだろうか...。
どうしてもチラチラと視線を送ってしまう。

結衣「み、見ちゃダメとかは言ってないんだから...ちょっとだけなら、いいよ」

そう言う結衣も、俺からは目線を逸らしていた。
言葉の内容だけでなく、言い方までこれだけの愛らしさを醸し出しているのだ。
俺の右手が再び動くのは、時間の問題だった。
人差し指と中指が、ブラの端にかかる。

結衣「...っ!」

かかった指を少し下げると、おそらく小さめであろう桃色の突起が姿を現した。

八幡「...綺麗、だな」

結衣「ば...馬鹿」

思わず漏れた言葉に、彼女は照れながら答えた。
ブラに引っ掛けていた人差し指を、魅惑的な蕾へと向かわせる。

結衣「ひぅ...」

結衣の口から声が漏れると同時に、乳頭はクニュリと形を変えた。
一度では飽き足らず、何度もつついたり、優しく擦ったりした。
すると、徐々に硬さを帯びてきた。

八幡「...」ゴクリ

舐めたい。
何故だろう、この状況を認識した途端、衝動が駆け抜けた。
ずいっと顔を胸部へと近づける。

結衣「ひゃ、ちょ! 舐めちゃ、やぁ...!」

口ではそう言っているものの、コイツは全く抵抗してこない。
しゃぶりついている間に、左手でもう一方の乳房も揉んでいく。

八幡「痛かったりするか...?」

結衣「う、ううん。痛くないよ。むしろ...や、やっぱり何でもない」///

むしろ、の後に何が続くのか気になるところではあるが、とりあえず大丈夫そうなので愛撫を再開する。
男なら誰しもが夢に見るであろう大きさの胸を好きなままに出来るのだ。
かなりの時間、俺は夢中になっていた。

しばらくすると、結衣が足をモゾモゾと動かし始めた。
...あちらの方も準備が整ってきたのだろうか。
俺は何も言わずに、右胸を這わせていた左手を下腹部へとやった。

結衣「あっ、そこは...!」

八幡「っ...!?」

スカートの下にあるショーツは、既に水浸しになってしまっていた。
それどころか、太股やスカートの内側までもが濡れてしまっている。

八幡「...こんなにか」

結衣「へ? こんなにって...ひゃ! も、もしかして私、お漏らしを---」

八幡「ち、違うから! お前は漏らしてねえから!」

結衣「だ、だってこんなにビショビショで...」

八幡「な、なんて言えばいいのか...。 えっと、さっき子供を作るためにしなきゃいけないこと説明したろ?」

結衣「う、うん...」

八幡「そんとき、そのままじゃ摩擦で痛くなるから、女の人の体はこうやって自分で濡らしていく...らしい」

結衣「な、なるほど...。ってことは、もう私の身体はエッチなことをしちゃうつもりってこと...?」

八幡「...まあ、そうなるか」

結衣は困惑の色を浮かべて少しの間、黙っていた。
再び俺の方を向いた時、彼女は覚悟を決めたようだった。

結衣「じゃあ...お願い。ヒッキー」

八幡「...ああ」

彼女の足からショーツを抜き取って、俺も続けて寝間着とパンツを脱いだ。
結衣の足を少し開き、自身のモノを彼女の秘部へあてがう。

八幡「...行くぞ」

結衣「...うん」

彼女の返事を聞くと、俺は腰をゆっくりと沈めていった。

結衣「ひ、う...うぅ...」

結衣の顔は、痛みですっかり歪になってしまっていた。
それでも、俺はまだ完全には挿入しきっていない。
ほんの少しでも、彼女の痛みを抑えてやりたい。

八幡「...結衣」

結衣「ん、んむっ...ちゅ、はむ」

八幡「チュプ、んむ...レロ、ちゅ...」

俺は、中途半端な体勢で彼女と濃厚なキスを交わした。
結衣も俺の行動にしっかりと答えてきてくれる。
互いの身体が少しでも動く度に、結合部からはクチュクチュと卑猥な音が漏れ、未だに蜜が出続けていることを示していた。

結衣「はむ、んっ...ちゅ、んんっ!?」

不意に、俺の腰が深く沈んでしまった。
おそらく完全に入っただろう。

八幡「だ、大丈夫か!?」

結衣「は、入った瞬間は痛かったけど...もう平気だよ。えへへ」

なんとか笑おうとしているものの、彼女の頬は痛みによって引き攣ってしまっている。
愛おしさと申し訳なさが込み上げてきて、俺は結衣を抱擁するしかなかった。

結衣「もう...ヒッキー、動いてもいいよ」

...本当に良いのだろうか?
医療環境もしっかり整ってないこの時代、膣なんて繊細な場所をこれ以上傷つけてしまうと、きっと不味いのではないだろうか。
...現在コンドームも無しに挿入している俺が言えたことではないが。

結衣「...ヒッキー?」

八幡「...今日はここまでにしよう」

結衣「...え? いや、でも、私は大じょ---」

八幡「今しなきゃいけないわけじゃないんだ。ゆっくり慣らしていこう」

結衣の言葉を遮って、彼女を説得する。

結衣「でも、赤ちゃんが...」

八幡「俺達もう恋人なんだ。いつだってできるさ」

結衣「...ヒッキーは、気持ち良かった?」

八幡「そういえば...正直緊張してて、何が何やら...」

結衣「私は、その...ヒッキーに触られて、えっと...き、きも...ち...よかった、よ?」///

顔を赤くしながら、彼女は俺に訴えてくる。
未だに繋がっている俺の息子は、結の中でむくりと大きくなった。

結衣「だから私は...ヒッキーにも気持ちよくなってもらいたい」

その気持ちはとても嬉しい。
しかし、このまま行為を続けるわけにはいかない。

八幡「じゃあ...手でしてもらえるか?」

結衣「...手?」

今回は以上です。
夏休みになったし、もうちょい頻繁に更新できる...はず。

Bofors_junkie2016年8月19日 03:11
正直に言いたまえ、嘘でも依頼でも告白を聞いて気分を害したと…。由比ヶ浜は堪え性無さ過ぎる。良く言えば感受性豊かだが言い換えればタダの子供。フツーここで告白なんてする訳ない…とくに八幡ならね。少しは思考しろと言いたいシーンだよな。
返信する

DESU002016年8月19日 02:40
(´・ω・`)これはこれで悪くないな…戸部よ、屑山の顔パンしとけよ
返信する

EMNEM最高!2016年8月19日 02:23
がハマバイバイして欲しいですね(⌒▽⌒)
返信する

dujmw'tkm2016年8月19日 02:10
由比ヶ浜なんか見限れよ
返信する

おやじ2016年8月19日 02:09
「軽薄」?「軽卒」?
てか、掌返しはえ~なビチケ浜(笑)
返信する

一度行為を終えた俺達は、向かい合って座っていた。
俺は下半身が裸、結衣は衣服が乱れているという、かなりイケナイ状況である。

結衣「え、えっと...手でするって...ど、どうするの? っていうか、それで気持ちいいの?」

八幡「...口で説明するのは恥ずいから、手ぇ貸してくれ」

結衣「う、うん...」

半信半疑といった様子で彼女は手を差し出した。
彼女の手首を掴み、申し訳無さ半分、期待半分...自分の下半身へと誘導する。
結衣の腔内に溢れていた液体で濡れた俺の性器を、彼女の手が優しく包んだ。

結衣「う、あ...固い」

その一言に興奮し、体中の血液が下半身へと更に集まっていく。
まだ触れているだけなのに、既に俺は射精したいという欲求に駆られていた。

八幡「で、その手を...こう、上下させる」

彼女の手に俺の手を添え、軽くピストン運動させる。
まだまだぎこちない動きではあるが、彼女の恥ずかしながらも一生懸命にしてくれる表情を見ると、そんなことはどうでもよく感じた。
いや、むしろそれさえもが気分を昂揚させた。

結衣「ほ...本当にこれでいいの?」

八幡「ああ...気持ちいいぞ」

欲を言えば、先端部を触って欲しかったりもするが、いきなりは少しハードだろう。
これだけでも十二分に気持ちいいのだから、贅沢は言わないことにした。

結衣「こうすると...男の人って気持ちいいんだ」

そう呟きながらも、結衣の右手はピストン運動を続ける。

八幡「ああ、そうだな」

結衣「ってことは、もしあのまま続けてたら...私の中でも動いた、ってことだよね?」

八幡「...そうだな」

結衣「な、なんかちょっとグロイかも...」

確かに、入れるだけでも痛いという状況で摩擦を繰り返してしまうと、腔内はかなり炎症を起こしてしまうだろう。
ある程度、結衣の身体にも行為に慣れてもらわなくては、快楽を味わうことは出来ない。

八幡「...じゃあ、俺もお前のをしてもいいか?」

結衣「...ん? どういうこと?」

アニメならば、きょとんという効果音が付きそうな表情で彼女は言った。
そこまで素っ頓狂な声を出されると、現在の状況を忘れそうになる。

八幡「いや、だから...お前も、そういうことをした時に痛くないように、少しずつ慣らしていかなくちゃいけないじゃん?」

結衣「...え!? もしかして、その...私が今ヒッキーにしてるのみたいなことを...ヒッキーも私にするの?」

日が登ってかなり明るくなった室内で、彼女の頬が赤く染まっていく様子を鮮明に見ることが出来る。
俺は小さく頷いた。

結衣「ちょ、ちょっと恥ずかしいし...。でも...こういうことをしていったら、少しずつだけど、痛くなくなっていくんだよね?」

八幡「たぶん...そうだな」

結衣「じゃあ...いいよ」

そう言って、結衣は女の子座りをしている両足を少しだけ広げた。
その隙間に、ゆっくりと右手を伸ばす。
薄らと湿った茂みに、指先が接触した。

指がさらに進行して本格的に秘部に触れると、そこは粘り気を帯びた液体で覆われていた。
先程は太股に垂れたものだったり、ショーツからシミ出たものしか触ってなかったために気づかなかったが、その液体の粘り気は想像以上で、オクラスープに匹敵するものがある。

結衣「な、なんか...くすぐったい? かも...」

結衣の発した台詞はどこか可愛らしさを含んでいた。
しかしこの時の結衣の動きは、太腿を擦り付けながら腰を浮かせるという、非常に艶かしいものだった。
しかも、依然として彼女の手は、俺の息子を弄り続けている。
俺も、彼女に快楽を与えたいという欲求がさらに昂まった。
手を動かして入口を探すものの、焦っているためかなかなか見つからない。

結衣「ちょ、ヒッキー急に動かしす---」

その時、指がするっと暖かい肉壁に包まれた。

結衣「ひぁっ!」

そして同時に、結衣の口が止まり、肩が跳ね上がった。
腔内はウネウネと動いており、挿入された指を離すまいとしている。

結衣「あ、う...あ...」

八幡「...スゲェ」

思わずそう呟いた。
そして、ほんの少しだけ...指を曲げてみた。

結衣「あぁ...うぅ...」

結衣はキュッと目を瞑り、身体を震わせている。
既に結衣の右手が止まっていることなど気にもせず、彼女の反応を伺いながら、指を屈折させ続けた。

結衣「あ、あぁ...ヒッキー...ダメぇ...」

結衣の姿はとても扇情的で、俺の理性をジリジリと焼いていく。
無意識のうちに、彼女の腔内を責める手の動きが少しずつ速くなっていく。
結衣の嬌声と共に、淫猥な水音が室内に響いていた。

結衣「あっ、あっ...ヒッキー...き、キス...んっ、して...?」

俺は彼女の求めるままに口づけを交わした。
お互いに、自然と相手の唇を自らの唇で挟み、軽く吸ったり、時には舌で舐めたりした。
バードキスと呼ぶには少し濃密で、ディープキスと呼ぶには少し軽い...そんな口づけだった。
彼女の口から漏れる喘ぎ声が、次第に大きくなっていく。
絶頂が近いのかもしれない。

結衣「ひ、ヒッキー...あっ、私、おもっ...お漏らししちゃいそうだから、んっ...一回...」

ヒッキー「大丈夫だ。気にすんな」

結衣「あっ...いや、でも、ホントに...」

彼女の抵抗は無視して、右手を動かし続ける。
彼女の両手は俺の腕を掴み、全身に力を入れて耐えているが、時間の問題だろう。

結衣「あっ、あっ、もう...ダメ、あ、ああぁ、んんっ!」

彼女の身体が大きく震えて、一気に脱力した。

バイト入りすぎでワロタ...
夏休みなんて無かった

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年05月18日 (水) 08:43:43   ID: d3NIS_lc

期待待機

2 :  SS好きの774さん   2016年06月01日 (水) 21:51:41   ID: tt3QbZsh

由比ヶ浜の行動が違和感しかない。
長い時を一緒に過ごした自分の好きな人が変わったと知ったら
元に戻そうと懸命になると思う・・・。
魂が替わったのか、記憶を失ったのか上書きされたのかと
死に物狂いで何とかしようと調べて奔走するならまだしも、
直前まで恋人だった男を簡単に見切りをつけ、あっさりと
変化後の人物を受け入れてしまうのはどうかと。

3 :  SS好きの774さん   2016年06月06日 (月) 02:36:19   ID: FjMvFkph

>2
別世界の八幡も全部含めて好きとかなんじゃない?
別世界の同一人物を同じ人とするか違う人とするかは個人によって違うだろうけど

4 :  SS好きの774さん   2016年07月12日 (火) 04:36:33   ID: Kq149JPc

楽しく読ませてもらってます!

5 :  SS好きの774さん   2017年05月15日 (月) 16:32:52   ID: pI8PV3Wa

ヒッキーならその好意は俺への
好意じゃないただの勘違いだ
くらい言いそう

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