モバP「君のことだよ」 (26)

「おい、機材そっちだ!」

「早くしろ、全員集まったのか!?」


バタバタ……――


亜里沙「……」


「だから~、コメントは最初から取っておけって……!」

「あ、入りまーす」

ドタドタ……――


亜里沙「……」

ちひろ「あら、持田……亜里沙さん?」

亜里沙「あ、ちひろさん」

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ちひろ「ごめんなさい、慌ただしくて」

亜里沙「いえ、お忙しい時に」

ちひろ「亜里沙さんの担当まで借りだしちゃって……」

亜里沙「大丈夫ですよ、それがお仕事ですから」

亜里沙「それより、むしろ、私は手伝わなくっていいんですか?」

ちひろ「えっ?」

亜里沙「なんだかこう、力仕事を見てるとウズウズしちゃって!」

ちひろ「いえいえ、そんな。総選挙はみなさん主役ですから」

亜里沙「でも、投票はもう終わったんですから、お茶くみでもなんでも」

ちひろ「う、うーん」

ちひろ「それじゃ、ペットボトルの箱があるので、それを2階に……」

亜里沙「はい、分かりました」

ちひろ「あのですね、こんなこと、本当に」

亜里沙「でも、Pくんも頑張っているでしょ?」

亜里沙「私も、少しでも力になりたいんですっ」

ちひろ「……」

ちひろ「分かりました。じゃ、一応スタッフ用のプレートとジャンパーありますんで」

亜里沙「任せるウサ!」


――

スタッフ「突然のバイトさんに色々頼んですみません」

亜里沙「大丈夫ですよ、こういうの得意だし」

スタッフ「それで、そのぉ~」

亜里沙「え、ここテレビ見ていいんですか?」

スタッフ「もう、ここまで来たら待機なんで」

亜里沙「そっか」

スタッフ「待機も仕事ですよ、あなたも声がかかるかもしれないし、休んでいかれたら?」

亜里沙「それなら……」

ちひろ『さあ、第5回シンデレラガールズ総選挙……』

ちひろ『いよいよ結果発表です』

亜里沙「おお~」パチパチパチ

スタッフ「緊張しますね~」

スタッフ「アイドルの人って、こういう時どんな気持ちなんでしょうね~」

亜里沙「そりゃやっぱり、ドキドキ、ワクワクって感じじゃないですか?」

スタッフ「そうかぁ」


亜里沙「……」

亜里沙(近くで見られて、良かった)


――

…ヶ月前。

P「これから、プロダクション全体が総選挙期間に入ります」

P「そういうわけで、ロングのイベント、フェスティバル、ツアーを行った上で」

P「投票券の配布と握手会が随時ということになっていまして……」

亜里沙「Pくんもイベントでしょ?」

P「……すみません」

亜里沙「大丈夫、一人でできるもん」

P「そうじゃなくて」

P「イベントが中心で、付きっきりには動けない、というか……」

亜里沙「……大丈夫」

亜里沙「だって、みんなのプロデューサーさんでしょ?」

P「……」

亜里沙「お姉さんに任せて!」ドン

亜里沙「ちょっと今回は、ウサコちゃんに頼りすぎないように、両手フリーで行こうと思う

の」

P「……」

亜里沙「それでね、Pくん?」

P「あ、ああ、はい」

P「いいかもしれませんね。やはり握手の基本ですし」

亜里沙「そうでしょう? ウサコちゃんも喜ばれるんだけどやっぱり……」

P「もっと親しみやすさというか」

P「ただ疲れるでしょう」

亜里沙「大丈夫、体力には自信がありますから」

亜里沙「だから、むしろ時間帯と会場を拡大して」

P「他の子との調整もありますし……あとでちひろさんに……」

亜里沙「じゃあ先生が、あとで付きあわせてみます」

P「えっ、いやそれは、俺の仕事ですよ」

亜里沙「大丈夫! ここはPくんに思い切り走り回ってもらう方が大事だから」

P「それは、でも……」

亜里沙「だって、時間ないでしょう?」

P「……はい」

亜里沙「だったら、二人で分けあって頑張ったほうがいいもの」

P「了解です。気を使わせて申し訳ない」

亜里沙「気なんか使ってないわ」

亜里沙「だって、ここまで連れて来てもらったんだから、次は先生が頑張らないと」

P「そう、ですかね」

亜里沙「そうよ、お互い、頑張りましょ」

P「……できるだけチャンスを増やせるように、がんばってきます!」

亜里沙「はぁい!」


――

亜里沙「投票、ありがとうー!」

「先生の手、はじめてみました」

亜里沙「そうなの? うふふ、いっぱい触って覚えてね」

「こ、これからもがんばってください」

亜里沙「はい、先生、がんばりますっ」

「ウサコちゃんも、も、もももっと出番があると……」

亜里沙「あっ、はい。もっと、ウサコちゃんもキレイにしてがんばるわっ」

……――

亜里沙「ふう……」

亜里沙「……」

亜里沙(他の子、まだ列が続いてる)

亜里沙(もっと、何かアピール出来ないかしら)

亜里沙(ううん、Pくんが考えてくれてるし)

亜里沙(下手に動くよりも、一人ひとりにもっと、丁寧に……)


ピリリリ


亜里沙「!」



『すみません、時間が取れません』

亜里沙「……」

亜里沙「……」ぺしっ

亜里沙「よしっ」

亜里沙「休憩終わりまーす!」

「はーい!」


――

ちひろ「プロデューサーさん、次のフェスなんですが……」

P「はい」

ちひろ「ロングなので、企画書以上のことをやろうと」

ちひろ「ボリューム感を重視したいということで」

P「まず単純に人と日数増やしていくのじゃダメですか?」

ちひろ「結構キツくないですかね?」

P「なんとも……僕自身はできるならやれますとしか」

P「ボリュームということなら、全員出すくらいの意気込みがないと」

P「日数を増やせば1日ごとでも後半の展開があがるでしょ」

ちひろ「分かりました、聞いてみます」

ちひろ「あ、それと……」

P「はい?」

ちひろ「担当さんは、その」

ちひろ「難しいかもしれません」

P「知ってます」

P「とりあえず時間作りましょう」

ちひろ「……会われてますか?」

P「今は『走り回ってる方が大事』ですから」

ちひろ「あー、えっと」

P「ちひろさん、前に言ってたでしょ」

P「みんな、あなたを待ってますよって」

P「俺は、まあ、みんなどころか、一人にだって応えられてないわけですから」

ちひろ「それは、そういう意味じゃありませんよ」

P「同じことです」

ちひろ「義務じゃなくって、仕事なんですよ」

P「……同じことじゃないですかね?」

――

ちひろ『それではいよいよ上位5名の発表で……』


亜里沙「……」


卯月『本当に……本当に、夢みたいです……』


亜里沙(泣いてる……)

亜里沙「……いいな」

スタッフ「ううっ、良かったですねぇ、ホント」

亜里沙「ええ、これで、CDとラジオデビューもでしょ?」

亜里沙「良かったぁ……」

スタッフ「応援してるファンの声が、無駄にならなくて」

亜里沙「うん……」


ピリリリ

亜里沙「!」

亜里沙「ごめんなさい、ちょっと……」

スタッフ「あ、大丈夫ですよ」

亜里沙「すぐ戻ります……はい、もしもし」タタッ

P『……すみません、時間、作れませんで』

亜里沙「いいのよ、大丈夫!」

P『……』

亜里沙「すごく、熱気があったわ。大盛り上がりって感じで」

亜里沙「お姉さん、ちゃんと当日の会場までは来たことなくって」

P『もっと早く、連れてくればよかったですね』

亜里沙「あ、そーゆーんじゃないの」

亜里沙「みんな、喜んでたわ」

P『……』

亜里沙「それに、泣いてた」

亜里沙「知ってる? 泣くのってね、大事なのよ」

亜里沙「笑うのは、痛いのを我慢してもできるでしょ?」

亜里沙「頑張ってきて良かったって、思うから、泣けるんですよ」

P『そうですか』

亜里沙「えへへ……私も、もらい泣きしちゃった」ズビッ

P『……はい』

亜里沙「プロデューサーさん」

P『はい』

亜里沙「ありがとう。ここまで、連れて来てくれて」

P『……』

亜里沙「私、なれるかしら」

亜里沙「アイドルに」

P『――』


ちひろ『それでは5人の入場です!――』


――

P「亜里沙さん!」ガシッ

亜里沙「えっ、あっ……Pくん、近くにいたのね」

P「スタッフに混じっているってちひろさんから聞いたんで」

亜里沙「えへへ……」

P「このあと、撤収作業があるんですけど」

亜里沙「お仕事あるなら、やっていきたいな」

P「……」

P「僕が連れてきたんじゃなくって、一人で来たんじゃないですか」

亜里沙「え?」

P「お礼なんて、言わないでください」

亜里沙「うん……」

P「会えて良かったのはね、僕の方なんです」

亜里沙「て、照れるウサー」

P「アイドルにできなくて、ごめんなさい」

亜里沙「……」

P「でもね、アイドルなのは――」

スタッフ「集合でーす!」

P「……」

亜里沙「……」

P「行きましょっか」

亜里沙「うん」

亜里沙「あ、卯月ちゃんたちのお祝いしましょうよ」

P「もう決まってますよ」

亜里沙「そうじゃなくって、私たちでってことです」

P「あ、ああ……でも、あまりお祝いしてると太っちゃうんじゃないかな」

亜里沙「大丈夫ですよ、みんなアイドルなんですから」

P「……うん。いいですね、それ」

亜里沙「ウサコちゃんでお出迎えして~……」

P「そしたら、せっかくだし、お祝いツアー的に……」

選挙お疲れ様ウサー!

個人的には卯月ちゃんと関ちゃん…良かったよね
再登場待ってるぞちひろォ!

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