エトペン「男と打ちたいって?」 (23)

清澄高校麻雀部 部室

須賀京太郎と(何故か)内木副会長は自動卓の掃除をしていた。



京太郎「そりゃあ俺は麻雀弱いんですけどね? でもね、毎度毎度相手は女子5人ないし卓の上じゃ3人なわけですよ」

京太郎「部室には美人さんがいっぱいてね。そんな中男一人でね?打たにゃならんわけですよ。もう、気が滅入ってしょうがないんですよ」

内木「うんうん」


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京太郎「分かってくれますか?!」

京太郎「俺だってね!男相手に!伸び伸びと!打ちたいんですよ!ネトマじゃなくてリアルで!」

内木「分かる。分かるから大声は出すなって…。もし会長に聞かれでもしたら」

京太郎「副会長ォ!」

内木「そうは言っても二人じゃなぁ。三麻もできないし」

内木「雀荘は行かないの?最近だと学割がきくところもあるらしいけど」

京太郎「いやー高校生の小遣いじゃ厳しいですよ。それにおっさんと打ちたいわけじゃないし…」

内木「同世代…か。でも俺と君だけじゃ卓は立たないからな」

内木「大人しく新入部員を待つしかないだろうね。幸い清澄は全国大会でも活躍できたから、期待できるって」

京太郎「そういう結論になっちゃいますよね…」

京太郎「ところで副会長って打てる方なんですか?」

内木「どうかなぁ大会なんて出たこと無いからなんともいえない。でもあの会長と二年以上一緒にいて何度か付き合わされたし、全く打てないつもりはないよ」

内木「染谷さんとも打ったけど…彼女強かったなぁ」

京太郎(とりあえず俺よりかは強いっぽいな…)

内木「それにしても女子は遅いな。新年の大掃除っていうから手伝いに来(させられ)たのに」

京太郎「いつものことっス」

???「ククク…」



内木「ん?なんか言った?」

京太郎「いえ…なにも」


確かに声は聞こえた。二人は息を呑んであたりを見回す。


???「ククク…」


声の主は自動卓の椅子に置いてあったエトペンだった。


京太郎「エトペン?…い、いやまさか」


エトペンの周囲から引力の渦が迸る。

そのエネルギーの本流に思わず目をつむり、歯を食いしばる。

腰に力を入れて踏ん張るも、抗うことができず『渦』に吸い込まれる。


それから、どれくらいの時間が経過しただろうか、

気づくと二人は全く異なる空間にいた。

和室、目の前に雀卓がひとつ置いてある。



エトペン「ほれ、座りな」

内木「…マジ?」

京太郎「どこすかここ」




エトペン「てめえの弱さを嘆くだけなら気にも留めなかったが」

エトペン「女相手じゃ伸び伸びと打てないだの、男と打とうにも金が無いから雀荘にいけないだの、」

エトペン「聞いててしんみりしちまうようなことばっかほざいてたもんでな…」

エトペン「こうして卓を立ててやったってわけよ」

京太郎「灰色の…エトペン?!」

エトペン(灰)「そうだな…このぬいぐるみ…エトペンに宿りし亡霊のようなものか」

内木「ゆ、幽霊と麻雀かよ」

エトペン「文句あるか? ま、せっかくだから打って帰れや」


こうして三人麻雀が始まった。

東一局、ドラは7筒。


エトペン「ハンデとしてお前らだけ北キタアリにするか」


 19m2569s14999p發東  ツモ2p


――打、發


内木「發、ポンです」


 12347s23赤56p東東    (←發發發)


内木(牌譜絶好。恐らく一番早い。東の重なりに期待して役役で和了ってしまおう)


内木(それにしてもやけに早く喰わせてくれたな。三麻で字牌は絞るもんだけど?)


――打、7索


京太郎(俺、三麻ほとんど打ったことないんだよなー)

 
 2455778s11p西西北南  ツモ3p


――打、北

エトペン「む?キタキタ知らないのかい」


京太郎「すいません。三麻の経験あまりなくて」


内木「北は抜きドラっていって卓に晒すことでドラ1扱いになる。しかも嶺上牌から一枚ツモれるんだよ」


京太郎「良いこと尽くめじゃん!すんません抜いていいですか?」


エトペン「駄目だ。一度河に捨てたならそいつはもう抜きドラではない」


京太郎「うぐっ…エトペンのくせに意外と厳しい」

五巡目


エトペン(メガネの坊主はテンパったかね)


■■■■■■■■■■■■■  ■


――打、北


内木(よし聴牌。しかも三面張だ。が、ここは東が出たら鳴いてノベタン移行かな?)


 1234s23赤56p東東  ツモ4p  (←發發發)


――打、1索


京太郎(うーん。なんかすげー手になってるけどテンパれねぇ)


 455777s111p西西南 ツモ9s


――打、9索


エトペン(突っ張るねぇ)

十二巡目


京太郎(うぐぐ…来ねぇ!)


――打、9萬


エトペン「ロン。3900」


 99m22255599p  (←南南南)  


京太郎「かぁ~!振っちまった」


内木(うっ…こっちの和了牌が止められてる!?)


エトペン「どうせノベタンにする気だったなら…その一筒は引っ張らないほうがよかったよ」


内木(4つ下の一筒を引っ張っただけで赤5を透視?このぬいぐるみ強いぞ)

エトペン「あと…須賀京太郎な。三麻であのタイミングのリーチはダメ…まったくダメ…!」


エトペン「三麻は5巡目あたりには他家が聴牌してるくらいに思って打ったほうがいい」


エトペン「リーチは先制してこそ。全員張ってる状態でのリーチは無防備宣言とさして変わらん」


エトペン「カギのかかってない家…当然、忍び込まれ…盗まれる…!大事な…点棒を…!」


京太郎「ぐぐ…」


京太郎「で、でもまだ東一局目ですから!説教は早いですよ!」


エトペン「ククク…」

エトペン「ロン。3900」


エトペン「ツモ。2000、4000」


エトペン「ツモ。4000、7000」


エトペン「ロン。18000」


エトペン「ツモ。8000、16000」



―――

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東南戦×20戦後


内木&京太郎「」


エトペン「楽しめたかい?」

京太郎「ま、まぁ(ボッコボコだったけど……)」

京太郎(…でも)

京太郎「女子相手とは違う緊張感があって楽しかったっすね」

内木(ぬいぐるみ相手だしね)

エトペン「そりゃよかった」

京太郎「ほんと…ノビノビ打てたって感じです。いっぱいアドバイスもらえたし俺強くなれたかもしれないっす!」

内木「久々に麻雀打てました…楽しかったです」

エトペン「いや…まだだ」

内木&京太郎「?」

エトペン「男四人で麻雀したい。それがお前の望みだったんだろ?」


エトペン(灰)「…卓も暖まったところで…真打ち御登場だ」


エトペン(灰)はふすまに目を向ける。










   ガラッ





エトペン(黒)「打てますか?」





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―――

清澄高校麻雀部部室では異様な光景があった。

ぬいぐるみと卓を囲む内木一太と須賀京太郎。

二人は微動だにせず、目を半開きにしたまま虚ろな表情で雀卓を見つめていた。


久「ど…どうなってるのこれ」チョンチョン


肩を軽く突っついてみると堰を切ったように大量の汗が吹き出てきた。


恐ろしい悪夢でも見ているのか二人は苦悶の表情を浮かべ始める。


久「息、してなくない?」

優希「やばすぎるじぇ。犬のストレスが頂点に達して…」

まこ「か、傀奇現象じゃ。悪霊の仕業じゃ」

和「そんなオカルトありえません。すぐに救急車を」


咲(…なんだろ?エトペンから黒色のオーラと灰色のオーラが流れ出てる…?)



DEAD END

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