オーク「勇者が…女…?」(59)

オーク「とんだ秘密を握っちまったぜ、グヘヘ…」

・ ・ ・ ・ ・

それは偶然であった。
公衆トイレ近くで見慣れた友人
勇者を見かけた。

オークは違和感を覚えた。
勇者が女子トイレから出てきたからだ。

オーク「何故だ…何故奴は女子トイレから…まさか…」

何故勇者が女子トイレから出てきたのかを知るために
オークは探偵を雇った。

探偵は優秀だった。
三秒で真実を見抜いた。

――探偵「勇者は、女でゲス」――

その時のオークの下品な顔を
探偵はこう語る。

――探偵「まるで生ゴミを一週間煮詰めて塩酸をブチまけたような顔だったでゲス」――

かくしてオークは勇者の秘密を知ってしまった。
陰湿で屑のオークの事だ
何かよからぬ事を考えているに

違いないんだ!

・ ・ ・ ・ ・

~とある公園~

勇者「…」

キョロキョロ

勇者「よし、周りに人は居ないな…今のうちに公衆トイレへ…」

ザザッ

?「待ちねィ」

勇者「!?」

?「あンた…どっちのトイレに入るつもりなんで?」

勇者「お前は…オーク…!」

オーク「もう一度言う。どっちのトイレに入るつもりなんで?」

勇者「どっちって…そ、そりゃあ男子トイレだ」

勇者(何故そんな事を…まさかこいつ、私が女だと気付いて…?)

オーク「へぇ、男子トイレで間違いないんですかい?」

ニヤニヤ

勇者(くっ…やはり気付いている…いつバレたんだ…いや、今はそれよりも…)

ブルッ

勇者(やばいな…尿意の波は…もう…来ている)

ブルッ

オーク「おやぁ、なんだか辛そうですねェ…まるで…まるで何かを我慢してるような顔だァ…」

ニヤニヤ

勇者(くっ、こいつ…分かって言っているんだ…外道だ…外道戦記だ!)

オーク「ンフフフフ…」

勇者(仕方がないな…このまま漏らすくらいなら…禁断の尿魔法を発動させて…オークをブッ殺してやる!)

キッ

オーク「?」

勇者「オーク…後悔するなよ…私を呼び止めた事を…こうかい…する、なよ…!」

ザワザワ

オーク「風が騒ぎ始めた…一体何が…」

勇者「…」

――それは、ほぼ水分でできていた――

――匂いは強烈、色は黄色――

――チョコラBBの影響で黄色――

――ほぼジンジャエール――

――きっとそれは――

――アンモニアで出来ていた――

ザワザワ

オーク「詠唱…だと…?」

勇者「彼方より来たりて、悪しき緑の魔物を射殺す神の槍よ!」

グワァァァ

勇者「我が体液を供物として捧げる!ならば応えよ!汝は…!」



『グング尿ル』

チョロロロロ…

勇者「んっ、くっ…」

チョロロロロ…

オーク「勇者の股から液体が…ジンジャエールか…いや、違う…」

チョロロロロ…
チュミンチュミンチュミン
プワァ

オーク「液体が…浮いて…形を…」

グニュグニュグニュ
ジャキィィィン

オーク「え、液体の槍…?」

勇者「そう、これがグング尿ル…お前を射殺す神の槍だ!」

オーク「グング尿ル…」

勇者「13キロだ」

オーク「?」

勇者「グング尿ルの重さだ…13キロある」

オーク「へぇ」

勇者「その13キロの槍で…お前をゲロカスみてぇにブッ殺してやるよぉぉぉん!」

ガシッ

勇者「んほぉぉぉ!見た目の割に軽いよぉぉぉ!」

ブンブン

勇者「にゃぁ、軽くて容易に振り回せるよぉぉぉ!」

ブンブン

オーク「うぉっ、あぶね」

ブンブン
ブンシャカ ブーン
ブンシャカ ブーン

オーク「あぶね、あぶね、あぶね、ウィー」

勇者「んほぉ、なんでよけるのぉぉぉ!」

ブンシャカ ブーン

オーク「だって尿の槍だろ…当たったら臭いじゃん」

勇者「!」

ブ…
ガクリ

勇者「うぅ…ひざまずく私…」

オーク「どうしたんだよ一体…」

勇者「臭いって言われた…ショックだ…私だって女なんだ…臭いなんて言われたら…傷つくよ…傷、つくんだよ…」

ウルウル
ドキッ

オーク(うっ…可愛いじゃねぇかチクショー)

勇者「うぅっ…ひぐっ…」

オーク「勇者…まさか泣いている、のか…?」

勇者「なんでもない!」

ポロッ…

勇者「なんでもない…」

勇者「恋の魔法で」

オーク「あっという間に」

勇者「ほら」

ダダッ
クルクルッ シュパッシュパッ
タンタターン

「「みちがえる」」

勇者「あぁ…」

ズキッ

チャァァァン…

オーク「なんだ…この胸のときめき…いや、胸のトキメキは…」

勇者「私もだ…胸が張り裂けそうに…苦しい…息もできないくらい…オークに夢中…」

ドキドキ
ドキドキ
土器土器

オーク「まさかこれは…」

勇者「まさかこれが…」



「「恋…?」」

勇者「…」

オーク「…」

見つめ合うと素直になれない。
震える。
体が、心が、震える。
話したいのだ
触れたいのだ
知ってほしいのだ
なのに
それができない。
まるで魔法をかけられたみたいに
体が動かない
声が出ない
ただ震えて
見つめる事しか、できないのだ。

勇者「わた…し、は…はぁっ…」

ンクッ

オーク「ゆ、勇者…」

一歩か二歩、踏み出せば
近づけば
今よりもっとお互いに
分かり会えるのだろうか。
なら歩み出せばいい。
ただ、それだけの事が
できないから、人は
悩み、思い煩い、涙する。
恋とはこんなに苦しいものか?
恋とはこんなに切ないものか?

漫画やドラマのように
明るく楽しいものなんかじゃない
本当にこれは
恋と呼べるものなのか?

勇者「…」

ポロポロ

涙が、流れていた。
まるでそれが当たり前のように
自然と流れていた。

オーク「勇者…」

勇者「んぐっ…んん…」

その涙を止めることができるのは
勇者自身ではない。
断じて、ない。
なら
自分でさえ止める事ができない涙を
果たして誰が止められると?

その答えは誰もが知っている。
誰もが知っていて、なかなかできない。
世界で一番簡単で一番難しい知恵の輪。

オーク「…」

オーク(俺は…俺がしなきゃいけない事は…!)

バサァッ
ヌギッ

オーク「俺ァ馬鹿だからよ…こんな事しかできない…」

ゼンラッ

オーク「でも…馬鹿なりによ…考えた俺の答えが…これだ!」

ワンツッ スリー

ビンッ

オーク「俺の全力全開…これが俺の…俺の精一杯だ!」

ビンッ ビンッ ビィィィン

オーク「もっと、もっとだ!」

ビギギギギ

オーク「ふくらみ、いのり…はじけて、ふきだせ!」

ムクムクムク
ビグンビグンビグロ

オーク「無限の彼方へ…さぁ、行くぞ!」

サァ!
スイコンデクレェイ!

オーク「だらぁぁぁぁぁ!」

ドビュルルル
ドビュッシー

フワフワ
キラキラ

勇者「白濁液が…空気を含んで…まるで…まるで雪だ…」

それは
季節はずれの雪であった。

オーク「へへっ…」

勇者「ふふ…」

やがて二人はゆっくりと
そう、ゆっくりと
歩み寄り
手が触れ、視線がぶつかり
抱き合った。

そしてなんやかんやで
二人は混ざり合い
熱を帯びた肉体を重ね

なんやかんやで
愛が生まれた。

勇者「この瞬間(とき)…」

オーク「真実は…ひとつだけ…」

永遠が
始まった…

だがその様子を
一人の女が物陰から見ていた。

女騎士である。

女騎士「ぐぬぬ…私というものがありながら…オークの奴…」

女騎士「ゆ る さ ん」

ガサゴソ

女騎士「…」

ナイフ…

女騎士「ナイフ…ナイフで刺す…オークを刺す…浮気者め…!」

フラ~
テクテク

女騎士「私のスキル…感づかれる事なく近づく、音無の暗殺者…それが!」

『サイレント・アサシン』

フラ~
テクテク

女騎士「オークまでの距離、3メートル…」

テクテク

女騎士「よし、この距離なら…確実に喉仏を!」

グワッ

女騎士「だらぁぁぁ!死にさらせ!」

グワッ

勇者「…何やら殺気!?」

女騎士「!?」

勇者「セイッ」

ガキィン

女騎士「ナイフを弾いた…だと!?」

勇者「お、お前は女騎士…い、いつのまにこんな近くまで…!」

女騎士「ちぃっ、ばれたか」

オーク「あ、女騎士。こんちは」

勇者「なに普通に挨拶しとんねん、おまはん今殺されかけたんやぞ!」

オーク「なにぃ」

女騎士「そうよ、私はオークを刺し殺すつもりだったのyo!」

オーク「say hoo!」

女騎士「私というものがありながら勇者に色目を使うから…悪いのよ!」

ナイフ

オーク「う、うわぁぁぁぁぁぁぁナイフだぁぁぁぁぁ怖いよほぉぉぉぉんほぉぉぉ!」

ジョバジョバジョバ!

勇者「うわ、こいつ漏らしよった!ばっちいなぁ」

ツゥン

勇者「アンモニアくっせぇぇぇ!」

ズキッ

勇者「あ、あ…頭が…頭が割れるかもしれないし、割れないかもしれない…それくらい頭が痛い!」

ズキッ グガガカッ

勇者「あ…視界が揺らぐ…意識が…溶けて…い、く…」

バタリ

勇者「…」

シーーン…

オーク「…」

女騎士「…」

ザザッ

?「また、駄目だったようね」

オーク「!」

テクテクテク

?「これで何回目かしら…今回の『エデン』も失敗だわ」

女騎士「お前は…エルフ…」

エルフ「公衆トイレ型遠隔電脳改ざん装置…略してエデン。楽園の名を冠するには至らなかったようね」

オーク「あぁ、見てのとおりさ。また俺達は…失敗した」

女騎士「なぁ…もうやめにしないか…これ以上は…勇者が…可哀想だ…」

エルフ「っ!」

テクテクテク
ドンッ

エルフ「可哀想、ですって!?今更、貴方は!」

オーク「よせ、エルフ…女騎士を責めても解決しないだろ」

エルフ「くっ…」

女騎士「…」

ガクリ

女騎士「どうしてこんな事になったんだ…勇者は…こんな目にあうために…戦ったんじゃない…」

エルフ「そうやって嘆いて、立ち止まる気?私達がすべき事はそんな事じゃないはずよ?」

オーク「あぁ…そうさ…やろう、女騎士…俺達にしか…できない事だ」

女騎士「…あぁ」

エルフ「勇者が起きない内に早くログアウトしましょう。次のエデンを試すのよ」

オーク「あぁ」

ブゥン
ブツン

―――log out―――

・ ・ ・ ・ ・

そこは研究所であった。
電子画面に難解な数式が浮かび
見慣れぬ機械がキリキリとした音を立てていた。

そこにはフルフェイスのヘルメットのようなものを被った
沢山の人間がいた。

彼らは仮想電脳空間
『サイバーアース』
に暮らす者である。

プシュウー

空気が抜ける音と共に
いくつかのヘルメットが縦に割れた。
サイバーアースからログアウトしたのである。

ログアウトしたのは三人。
女騎士、オーク、エルフである。

女騎士「現実世界は何日ぶりだろうか…やはり空気が悪いな」

エルフ「この研究所も長くはないわね」

オーク「それより、勇者の所へ急ごう」

ダダダッ

オーク「勇者…」

その部屋には
培養液に浸かった裸体の男がいた。
彼が勇者なのである。

女騎士「いつみてもたくましいな…」

エルフ「お前チンポしか見とらんやないけ!」

ちなみに培養液といったが
実はファンタである。

コポポ…

エルフ「どうやらまだ寝ているようね…培養液の中で目覚められたら面倒だから」

女騎士「うむ。さっそく作業に取りかかろう」

エルフ「とは言っても、既に私がやったんだけどね。もうサイバーアース内に次のエデンのプログラムを構築済みよ」

オーク「ナイスだね!」

オーク「では俺は勇者のデータを再編成してサイバーアースにアクセスするんだぜ」

パソコン タタタタタ ターン
ピッ ポッ パッ

オーク「よし、データ編成完了!」

エルフ「ってオォイ!また女データで編成しやがったなテメェ!」

オーク「だって、かわいいじゃん」

エルフ「勇者は男だろぅが!ネカマみてーな事させてんじゃねぇ!」

オーク 「だがそれがいい」

女騎士「私はどちらでもいい。バイセクシャルだから」

エルフ「どうでもいいからはよ」

オーク「うむ」

女騎士「ではパソコンを適当に操作して…わたぁ!」

ピッ ポッ パッ
ヴィーン

エルフ「よし、勇者はログイン完了だ。私達もいくぞ」

女騎士「うみ」

ダダダッ

ガチャガチャ

エルフ「みんな、ヘルメットを被れ!」

カポッ

オーク「ヌッシャ!」

カポッ

女騎士「では」

カポッ

オーク「アヒィ」

エルフ「カポッてフェラの音かい!ふざけてないで早くヘルメット被れや!」

女騎士「ふぁいふぁい」

カポッ

エルフ「よし、ではパソコンを適当に操作して…全員ログイン衝撃に備えろ!」

オーク「ヌッシャ!」

ヴィンヴィン…
パラピレピッ
パラパーン

オーク「ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!ログイン気持ちいいにょるぉぉぉ!」

ドピュドピュドピュドピュ

ヴゥン…
ブツン

――log in――

・ ・ ・ ・ ・

~サイバーアース内、サイバージャパンサーバー~

オーク「ふぅ…」

エルフ「なんて清々しい顔をしている…ログインの衝撃を性的興奮に変換できるのなんてお前くらいのもんだよ」

オーク「いやぁ、それほどでも」

女騎士「誉めてない!」

エルフ「さて、さっそくだが勇者を探さないとな」

オーク「毎度の事とはいえ面倒なこって…あいつのログイン先がランダムなんてのはよ」

女騎士「もともと現実世界からの逃避が目的だったんだ、そういう心境が影響しているんだろう」

エルフ「だいたいの目星はついている、行くぞ」

オーク「ウッス」

それからなんやかんやで
三人は勇者の居場所を突き止めた。

~サイバーアメリカ、酒場にて~

エルフ「今回はアメリカまで来ていたか」

オーク「この酒場の二階か…」

女騎士「とりあえず段取りの確認だ」

オーク「今回使うのは?」

エルフ「鼻孔吸引型遠隔電脳改ざん装置…略してエデンだ」

女騎士「ガラス管…まるで麻薬を吸うときのヤツみたいだな」

エルフ(なぜ詳しい)

エルフ「これを勇者の鼻に突っ込む。するとガラス管内の成分が電脳に侵入し、脳内情報を改ざんするという仕組みだ」

女騎士「今度こそ…上手くいくか…勇者の記憶を…辛い記憶を…無かった事に、できるか…?」

オーク「女騎士…」

エルフ「無かった事にはできないわ…いえ、無かった事にしてはいけない…それは私達の罪だから…でもせめて勇者は…勇者だけは…苦しみの輪廻から…解放してあげたい…それだけよ」

オーク「そう…だな…」

女騎士「やろう…今度こそ…」

エルフ「あぁ、私達にしかできない事だ」

テクテクテク
ドンッ

店員「山盛りフライドチキンお待たせしやしたー」

オーク「あ、ども」

ムシャムシャ

オーク「うまうま」

ガツガツ

女騎士「本場のフライドチキンは一味違うな!」

ムッシャー

エルフ「豪快に、下品に食べるのがこんなに気持ちいいなんて!」

オーク「山盛りフライドチキン追加お願いしまーす!」

店員「はい喜んでチンポロリーン!」

ガツ!
ガツガツ!
ガツガツ!

オーク「食えば食う程…パワーが溢れる!」

女騎士「感謝込めて…いただくんだ!」

ムッシャー

エルフ「わ、私の細胞が…活性化して…聞き分けの無い…細胞が活性化して!」

ブワブワブワ

エルフ「肉体が弾けるゥゥゥ!」

パァァァァン!



――エルフは――

――細胞が弾けてしんだ――



オーク「うわぁぁぁ、エルフが無数の肉片に!」

女騎士「電脳空間での死は、そのまま現実世界の死に繋がる…このままでは大変な事になるに違いない!」

オーク「ちくしょう、きっとこのフライドチキンに何か危険な成分が入っていたに違いないぜ!」

パチパチパチ←拍手

?「はっはっは、ご名答」

オーク「だ、誰だおまえは!」

?「この酒場の調理担当…料理人です」

ヒゲ サワサワ

女騎士「おまはんが…おまはんがフライドチキンに何か危険な成分を入れたのか!?」

料理人「いかにも。私がやったのですよ、はっはっは」

ヒゲ サワサワ

オーク「くそっ、いちいち髭を触りやがって…」

ヒゲ サワサワ
ヒゲ サワサワ

女騎士「いちいち癇にさわるヤローだ!!!」

チャキッ

女騎士「その自慢の髭ごと斬り刻んでやる!」

料理人「ほぅ…できますかね、貴方ごときに?」

女騎士「なめやがって~!」

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