生徒会長「男」男「は、はいっ」(43)

会長「このあと残れ、少し話がある」

男(話ってなんだろう)

男友「鬼会長から直々のお呼び出しとはご愁傷様だな」

男友「おまえ、今日ひどいミスやらかしたろ。大方それについての説教だぜ」

男「俺どうなるのかな」

男友「さあな。ウワサでは、正座で説教聞かされたあと素振り千回やらされるって聞いたけど」

男「絶対デマだろそのウワサ。野球部かよ」

男友「わからんぞー。なんせあの鬼会長だからな」

男「…………」

男友「ま、せいぜい死なないように頑張れや」

会長「…………」

男「…………」

シーーーン

男(沈黙が重い。生きて帰れるかな俺)

男「か、会長、俺に話って一体?」

会長「ああ、わかっている。わかっているとも」

会長「……ゴホン」

男「会長?」

男(なんだろう。いつもとちがって会長に落ち着きがないな)

会長「きみを呼びだしたのは他でもない。昨日のことについて話がある」

男「え? 昨日って日曜日ですよね。それがなにか」

会長「忘れたのか」

男「…………」

男「……あっ!」

男(おもいだした! 俺は昨日TSUT○YAで!)


~~回想~~

男「うしし、どれにしよっかなー」

男(兄貴から借りたTカードでエロDVD借り放題だぜ!)

会長「男?」

男「か、会長ォッ!?」

男(会長がどうしてこんなところに!?)

~~回想おわり~~

男(会長はあのときのことを怒ってるんだ)

男(18歳未満のくせにエロDVDを借りようとした俺に怒ってるんだ)

男「ごめんなさい」

会長「なにを謝っている」

男「俺エロDVDは18歳になるまで我慢します」

会長「…………」

男(あれ? 会長がなんか呆れたような顔してる)

会長「きみは謝らなくていい。謝らないといけないのはわたしのほうだ」

会長「わたしは生徒の模範となるべき生徒会長だ」

会長「それなのにあんな破廉恥きわまるDVDを物色していたんだからな」

会長「これでは生徒会長失格だ……」

男「…………」

会長「だがわたしはこの環境を失いたくない。生徒会長をやめたくない」

会長「恥知らずなのは自覚している。だが恥を承知できみに頼みがある」

会長「昨日のことは黙っていてくれないか。そのかわりなんでもしよう」

男「ちょちょちょちょっと! ストップ!」

男「ダメですよ! 女の子がなんでもするなんて言ったりしちゃ!」

会長「しかし……」

男「それに勝手にやめてもらっても困ります」

会長「え?」

男「会長がいなくなったらだれが生徒会をまとめるんですか?」

男「会長が一人で夜遅くまで残って仕事したり、俺たちがミスしてもあとで尻拭いしてくれること、みんな知ってます」

男「会長がいるから今の生徒会が成り立ってるんです」

男「会長は生徒会に必要なんです。だからいてください」

男「俺、今日のことは絶対に言いふらしませんから」

会長「…………」

男「じゃそういうことで、俺帰ります」

会長「まってくれ」

会長「わたしの部屋にきてくれ」

男「へ?」

会長「大事な話がある。今からわたしの部屋にきてくれ」

男「…………」

男(ええええぇぇぇぇええええええ!?)

ミス

>>6
×男「俺、今日のことは絶対に言いふらしませんから」

○男「俺、昨日のことは絶対に言いふらしませんから」

~会長の部屋~

男「もぐもぐ」

会長「…………」ジーーー

男「もぐもぐ」

男(なんというかその……)

会長「…………」ジーーー

男(そんなに見つめられるとすごく食べづらい)

男(目の前にはエプロン姿の会長)

男(俺はなんでカレーをごちそうになってるんだろう)

会長「男」

男「はい?」

会長「カレーはどうだ。まずくないだろうか?」

男「味ですか? 普通においしいですけど」

会長「料理というものをはじめて作ってみたんだが……」

男「え? 手作りなんですかこれ。しかもはじめてって」

会長「ああ、おかしなところはないだろうか」

男「おいしいですよ。適度にスパイスもきいてて俺好みの味だし」

会長「そ、そうか///」

男(赤くなってる。ひょっとして照れてるのかな)

男(いや、あの鬼会長に限ってそんなことありえないか)

会長「食べながらでいい。聞いてくれ」

会長「話を始める前に一つ確認しておきたいことがある」

会長「きみに彼女はいるのか」

男「彼女? いませんけど」

会長「そうなのか」

男「はい。というか女の子の部屋に入るのはこれが初めてです」

会長「それにしてはやけに落ち着いているじゃないか」

男「気のせいですよ」

男(会長の部屋はシンプルすぎて女の子の部屋って感じがしないからなぁ)

男(――なんてことは口が裂けても言えない)

会長「それを聞いて安心した」

男「もぐもぐ」

男(安心?)

会長「男。きみに折り入って頼みがある」

会長「わたしと性行為してくれ」

男「ぶぼっ!!」

男「げほげほげほっ!」

会長「だいじょうぶか」

男「ご、ごめんなさい。会長の口からあり得ないワードが飛び出してきたのでつい」

男「聞き間違いですよね」

会長「…………」

男「会長?」

会長「何度も言わせるな。わたしだって恥ずかしいんだ」

会長「わたしと性行為をしてくれといっている」

男「…………」

男(聞き間違いじゃなかった……)

男(俺、夢でも見てるのかな)

シュル……パサッ

男「!」

会長「男」ズイッ

男「かかか会長ォ!? しししし下着ぎぎぎぎぎぃ……ッ!!」

会長「わたしのはじめてをもらってくれ」

会長「男性はこのように言われたら興奮するのだろう。DVDでもいっていた」

男「それ間違った知識ですって!」

会長「嬉しくないのか?」

男(嬉しいけども!)

男「やめてください! よくないですよこんなの!」

会長「わたしじゃダメなのか?」

男「そういう問題じゃなくて。こういう行為はふつう、恋人どうしでやるものでしょ」

男「こんな流されるような形でやるものじゃ……」

会長「わたしだってだれかれ構わず頼んでいるわけじゃない」

会長「男。きみだからお願いしているんだ」

会長「理由は三つある」

会長「一つ目はわたしの秘密を知っていること」

会長「わたしが破廉恥なDVDを見ていることを知っても、きみはいつもと変わらず接してくれた」

会長「二つ目は性行為に関してはきみも未経験なこと」

会長「たとえ失敗しても、お互い初めてなのだから恥をかかなくてすむ」

会長「三つ目。これがいちばん重要だ。きみは真面目だ」

会長「一年間きみを見てきたうえで評価する。ミスは多いがきみが仕事に向き合う姿勢はいつも真剣だ」

男「会長……」

会長「きみは信頼に値する」

会長「わたしに魅力がないのか?」

男「会長は魅力的ですよ。俺なんかにはもったいないぐらい」

会長「なら行動で示してみろ。さぁ」タユン

男「うっ」

ドクンドクンドクンドクン

男(どうしよう。今、理性と欲望の間で揺れ動いてる)

男(さっきの会長の言葉嬉しかったしなぁ。ちょっと感動しちゃったし)

男(でも一時の感情に流されちゃまずいよなぁ)

ドクンドクンドクンドクン

男(いやいやいや! 会長みたいにきれいな人とできるなんて、考えてみればものすごいチャンスだよな)

男(こんなチャンス、俺みたいな冴えないやつには二度とまわってこない)

男(会長、おっぱいおおきいし)

ドクンドクンドクンドクン

男(いやいやいや! でもなぁ……)

会長「男」

会長「キスしてほしい」

男「」プツッ

男(あ、今頭の中でなにかきれた)

ドクンドクンドクンドクン

男(あーーー! ごちゃごちゃと考えるのめんどくせぇ!)

男(理性とか道徳とかもうどうでもいい。ここで据え膳をくわないやつは男じゃねえ)

男(父さん、母さん、兄貴、男友)

男(今から俺、漢(おとこ)になってくる)

漢(俺は)

漢(俺は……)

漢(欲望に生きるんだあああああぁぁぁぁああああああッッッ!!)

漢「ふしゅるるるるる」ギラギラ

会長「男」

会長「きてくれ」

漢「ふしゅるるるるる」ギラギラ

漢(いくぞおおおおおおぉぉぉぉおおうおおおおおおッッッ!!)

ピンポーン

<郵便でーす

会長「郵便? こんな時間にか」

シュル

会長「はーい」パタパタパタ

漢「ふしゅるるるるる」ギラギラ

漢「るるる……」ギラギラ

漢「…………」

シナシナシナ

男「…………」

男「――はっ!」

男(俺は一体なにを……?)

男(今、会長になにをしようとしていた?)

会長「遅くなってすまなかった」パタパタパタ

会長「実家からでな。毎月ダンボールひと箱分みかんが送られてくるんだ」

会長「わたし一人では食べきれなくて困っていた。あとで何個か持って帰ってくれ」

会長「さ、続きをしよう」

男「…………」

会長「男?」

男「帰ります」

会長「なに? どういう心境の変化だ」

会長「さっきまではやる気十分だったじゃないか」

会長「みかんが気にくわないのか」

男「…………」

会長「男!」

男「ごめんなさい!」

タッタッタッ

会長「…………」ポツーン

~男の部屋~

男「ああああああああああああああああ」

男「最低だ最低だ最低だ! ゲスの極みだ! 最低のヘタレ野郎だ!」

男「うぅ、死にてぇ……」

男(さんざん盛り上がった挙句、一人で勝手にやる気なくして。なにやってんだろうな俺)

男(会長傷ついたよな)

男(最初からきっぱりと断っておくべきだったんだ。一時の感情に流されるからこんなことになる)

男「学校行きたくねーなぁ」

男(明日から会長とどんな顔して会えばいいんだろう)

男(かといってサボるわけにもいかないし)

男「はぁ……」

数日後……

~生徒会室~

男(あの日から俺は会長と顔を会わせづらくなり、会長を避けるようになっていた)

男(まともに会話しなくなって何日がたっただろう)

男(それが原因かどうかはわからないけど、最近の会長は機嫌が悪いような気がする)

鬼会長「なめてるのかキサマーーーっ!」

生徒会役員「ひいいっ、ごめんなさいっ!」

鬼会長「謝ってすむ問題かー! やる気がないのならやめてしまえーっ!」

ピシャーン

男友「いやー、ここ一週間の鬼会長すげーな」

男友「言葉の切れ味が普段の百倍だぞ。カミソリから一気にチェーンソーレベルまで進化してるぜ」

男友「俺的には今世紀最大の怒りっぷりだと思うんだが。どう思う?」

男「…………」

男友「男? 聞いてんのかよおい」

男「え、なに?」

男友「え、なに?じゃねーだろ。ったく、ちゃんと俺の話聞いてたのか?」

男「えっと……チェーンソーの怒りっぷりが普段の百倍って話だっけ」

男友「どんなチェーンソーだよ。なんかもう、いろいろ混ざってわけわかんなくなってるじゃねーか」

男友「どうしたんだよ、ぼーっとして。最近のおまえ、なんかヘンだぞ」

男「ちょっと考え事してて」

男友「ったく、しっかりしろよな」

男「ごめん」

<そこー! 私語は慎め―っ!

男友「おっと、どうやら矛先がこっちに向いたらしい。あとはまかせた」

男「え? ちょ、まっ……!」

鬼会長「さっきからなにをぺちゃくちゃとしゃべっている」

男「か、会長。どうも」

鬼会長「…………」ギロッ

男「ひっ……!」

鬼会長「このあと例の場所で待ってる」

鬼会長「来なかったらどうなるか……わかってるだろうな?」

男「命にかえても行きます!」

鬼会長「必ずだぞ」

スタスタスタ

男「…………」

男(例の場所っていったらあそこしかないよな)

男(俺に拒否権は……ないんだろうなぁ)

~会長の部屋~

鬼会長「…………」ジーーー

男「…………」

鬼会長「食べないのか?」

男「食べてますよ」

鬼会長「それにしてはさっきから手がとまってるじゃないか」

男「よ、よく味わって食べてるんですよ」

鬼会長「そうか」

男「はい……」

男(前回と同じく会長は俺のためにカレーを作ってくれた)

男(でも大きな問題点が一つある)

男(それはカレーの中にみかんがまるごと入ってること)

男(これってなにかの罰ゲームなのかな……)

鬼会長「味のほうはどうだろう?」

男「おいしいですよ。みかんの甘酸っぱさとカレーの辛さがとてもマッチしてます」

男(半分はお世辞だけど。会長の怒りをしずめるためだ。しかたない)

鬼会長「…………」

男「会長?」

男(まずい。ちょっとおおげさに言い過ぎたか)

会長「…………」

男「会長?」

会長「おいしいんだな?」

男「はい」

会長「そうか、おいしいのか。ふふふ///」

会長「まだおかわりはたくさんあるからな」

男「はい……」

男(会長の機嫌はよくなったみたいだけど……)

男(これ以上食べたら胃もたれ起こしそうだよ)

会長「この前はどうして途中で帰ったんだ?」

会長「きみのせいでわたしは女としての自信を失った。どうしてくれる」

男「ほんとごめんなさい、俺どうすればいいでしょうか」

会長「責任をとれ」

男「責任?」

会長「性行為だ」

男「せ、性行為以外でお願いします!」

男「なんで性行為にこだわるんですか?」

会長「話してもいいが……笑わないか?」

男「命にかえても!」

会長「今日で二回目。ずいぶん軽いんだな、きみの命は」

男「そんなことないですよ!」

会長「まぁいい。理由は単純だ」

会長「この歳で処女は困る」

会長「わたし個人はもちろん、ひいては生徒会の業務にも支障が出る」

男「え? 生徒会と性行為ってあんまり関係ないような……」

会長「一見関係がないように見えるが、実はその二つは密接につながっている」

会長「きみも知ってのとおり、我が校の生徒会は悩み相談も受け付けている」

会長「相談の内容は多種多様だが、中には恋愛に関するものが含まれている」

会長「いや、多数を占めているといった方が正しいだろう」

会長「恋愛の相談を受けるたび、毎回わたしは明確な回答を提示できずにいる」

会長「性行為に関して尋ねられたときはなにも答えることができなかった」

会長「わたしに恋愛の経験が欠如しているという、ただそれだけのために!」

会長「悔しかった……! 自分の無能さを痛感したよ」

会長「これでは生徒会長として立つ瀬がない」

会長「DVDを鑑賞して学ぼうとしたが、それもあまり効果がなかった」

会長「それで気づいたんだ。やはり実践あるのみだと」

会長「前置きはもういいだろう。性行為を始めよう」シュル

男「ふ、服を着てくださいっ!」

男「会長が本気なことはよーーーくわかりました」

男「でもやり方が間違ってます」

男「恋愛というのはもっとこう……段階を踏まないとダメなんです」

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