シンジ「え? ぼくに13人の妹?」 (233)

――セカンドインパクトから十六年――

シンジ「そんな、バカな……」


ぼくは、13人の少女たちを前にそうつぶやいた。
一体どうしてこうなったのか?

ここは、第三東京から離れた南の小島。

第三東京でエリートになって父さんに匹敵する人材になるはずだったのに
見知らぬ13人の妹と、これからこの島で暮らすことになるなんて――

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書き貯め無し
直書き


エヴァTV版×シスプリアニメ一期のクロスです

――数日前、第三東京――


シンジ「セカンドインパクトから十五年後、つまり去年、使徒と呼ばれる生命体が日本に侵攻」

シンジ「そのすべてが国連軍とネルフの尽力により撃退された」

シンジ「だがその被害は大きく、日本の復興は他国に比べ大幅に遅れることとなった」

カヲル「さすが、シンジくん。 時事もばっちりだね」

シンジ「うん、取りこぼしはないように勉強したからね」

カヲル「それじゃあ、自己採点は――」

シンジ「もちろん100点さ!」



僕は、数年前に窃盗の濡れ衣を着せられて、親戚の家を追い出された。

そのあとは、父さんがつけてくれた執事と二人暮らし。

それでも今までと比べたら快適だった。

勉強さえしていれば誉めてもらえる、認めてくれる。

塾ではカヲルくんという友人もできた。

そう、僕は勉強をして、うんと勉強をして、ネルフで偉くなった父さんのような
エリートになるんだ。

それが僕のいきる意味だった。

それが――

――名門高校の庭――

シンジ「あれ?」

カヲル「どうしたんだい、シンジ君?」

シンジ「……ない」

カヲル「何が?」

シンジ「僕の……受験番号がない!」

――高校事務所――

シンジ「おかしいですよ! 自己採点では確かに満点だったはずなんだ!」

事務員「あー、そうだね。 マークシートが全部ひとつずれてなきゃ満点だ」

シンジ「え?」

カヲル「ああ、なるほど」

シンジ「そんな、他にどこも受けてないのに……」

カヲル「来年、君が僕の後輩として入学してくれることを期待しているよ」

シンジ「そ、そんな……」

――シンジのマンション――

シンジ「……ただいま」

じいや「シンジ様、わたくしがお仕えするのは中学までとのお約束でした」

シンジ「え?そ、そうだったけど……」

じいや「ですから、わたくしは今をもって失礼いたします」

シンジ「ち……ちょっと待ってよ!いきなりそんなこと言われても……」

じいや「後のことは、こちらの方にお任せを」

グラサン女「おめでとうございます!」

シンジ「えっ!?お姉さん誰?」

グラサン女「星見ヶ丘西高校へのご進学おめでとうございます」

シンジ「そんな高校受けてないよ!うわ、ひっぱらないで!」

グラサン女「ええい、男だったらナヨナヨせずに黙ってついてらっしゃい!」

シンジ「え、ちょ、じいや、助けてよ」

じいや「それでは、シンジ様、ご達者で」

――グラサン女のスポーツカーの中――


グラサン女「見渡す限り海と青空!どう?いい景色でしょ?」

シンジ「はぁ」

グラサン女「気の無い返事ねぇ、ずっと部屋にこもって勉強ばかりしてたらこうなるのかしら?」

シンジ「……学生の本分ですから」

グラサン女「お、言うわね。でも、青春するのも学生の本分だから――」

ガンッ

シンジ「わあっ!」

グラサン女「存分に楽しんでらっしゃい!じゃねー♪」

ブーーン

シンジ「いてて、何も車から蹴り出さなくても」

シンジ(星見ヶ丘西高校……あのお姉さんからパンフレットはもらったけどどうすれば)

渡し守「おう、そこの若いの!島の学校へ行くなら船に乗りな」

シンジ(……他にどうしようもないか)

シンジ「はい」

ギシィ

シンジ(乗客は僕の他に二人か……同じ年頃の男子と女子)

男子「やあ、君も星見ヶ丘西高校へ入学するのかい?」

シンジ「え?ああ、はい……たぶん」

男子「やっぱりそうか、ネルフ直営の学校法人!軍事関係者への近道!」

男子「君もミリタリー好きでこの高校を選んだんだろ?」

シンジ「え?いや、僕はそういうのはあまり……」

男子「そうなんだ?まあ、南のリゾート地で環境がいいのも人気だしね」

シンジ(昨日まで高校の名前も知らなかったんだけどな)

男子「僕は相田ケンスケ」

シンジ「え?」

ケンスケ「ほら、名前だよ。お互いクラスメートになるかもしれないだろ?」

シンジ「ああ、僕はシンジ。碇シンジ」

ケンスケ「うん、よろしく」

ケンスケ「で、君は?」

女子「……」

シンジ「……」

女子「え?わたし?」

ケンスケ「うん、そうだよ」

女子「アスカ。惣流アスカよ」

ケンスケ「よろしくね」

シンジ「その、よろしく」

アスカ(あー、もう、名前言っちゃったじゃない、うっとおしい)

アスカ(だいたい、エリートの私がなんでこんな冴えない奴の監視をしなきゃなんないわけ!)

アスカ(いくら加持さんからの任務だからってワケわかんない!)

ポッポー

ケンスケ「お、島についたみたいだ」

渡し守「着いたぞ、早く降りな」

アスカ「それじゃあね」

スタスタ

ケンスケ「そんな急がずにさ、もうちょっと話そうよ」

スタスタ

シンジ「ちょっと待ってよ、みんな!……あっ」

ボチャンッ


ケンスケ「あ、シンジ君が海に落ちた!どど、どうしよう!?」

アスカ「あー、もう世話の焼ける!浮き輪を投げりゃいいでしょ!」


ビュンッ

ゴンッ

シンジ「ぎゃあっ」

アスカ「あっ」汗

ケンスケ「うっわー、クリティカルヒット。トドメ刺したね」

シンジ(そ……んな、こんなところで……)


???「お兄ちゃん」

――シンジの意識界――

青髪の少女「このまま死んでしまうの?」

シンジ「うん、そうみたい」

青髪の少女「どうして、受け入れられるの?」

シンジ「勉強だけが、ぼくの取り柄だったんだ。それが受験に失敗したら意味ないよ」

青髪の少女「あなたの人生はそれだけの意味しかないの?」

シンジ「仕方ないじゃないか!他に、何をしても誰も認めてくれないんだ!」

青髪の少女「そう。だから、それしかしないのね」

シンジ「ああそうだよ!それの何が悪いのさ」

青髪の少女「バカ」


シンジ「」


青髪の少女「あなたは死なないわ。あなたには他に意味があるから」

シンジ「え?それって――」


ガバッ




眠くなってきたので今日はここまで

エヴァファン多数確認
シスプリファン未確認

シンジ「ん……」

???「大丈夫ですか?」

シンジ「え……あ、ああ」

シンジ(長い黒髪の……女の子?)

女の子「とても心配しちゃいました」

シンジ(これはゴンドラの上? この子が助けてくれたんだ)

女の子「でも、本当によかった」

シンジ「あ、ありがとう」

 ズイッ

女の子「こんなに濡れてしまって……」フキフキ

シンジ「あっ」//////

シンジ(この子、可愛いけど、距離感近いな)///

女の子「あの、このハンカチ使ってください」

シンジ「え? でも?」

女の子「今度、返してくれたらいいですから」タッタッタ

シンジ「あ、走って行っちゃった」

シンジ「今度っていつ?」

シンジ「えーと、服は……あった。 あのお店だ」

--店の中--

シンジ「うーん、どれにすれば……」

???「あのー? ファスナーあげてくださる?」

シンジ(試着室から声が……)キョロキョロ

シンジ(他に誰もいない)

シンジ「え!? ってことは僕?」

???「ええ」

シンジ「こ、こうですか」

シンジ(あ、ちょっとカーテンから見えちゃった)

シンジ(オレンジ色のツインテール? スリムでおしゃれな女の人だ)//////

女「ふふっ、手が止まってるわよ?」

シンジ「あっ、ごめん。 すぐにファスナー上げるから」ギュッ

女「きゃあっ! もう……ありがとう」

女「どう? 似合うかしら」

シンジ「え……う、うん」

シンジ「……ハックションッ!!」

女「どうしたの? ずぶ濡れじゃない?」






シンジ「ええと、その……いろいろあって……」

女「そうだ、わたしがコーディネートしてあげる」

シンジ「え、でも」

女「ほらほら」

----

シンジ「制服ばかり着てたから、こういう服はよく分からなくて……」

女「もっと自信持って。 とっても似合ってるわよ」

シンジ「え、ええと、そうかな」///

女「かっこいいわよ」ギューッ

シンジ(うわっ、腕に抱きついてきた!)

女「また今度、会えるかな?」

女「じゃあね」タッタッタ

シンジ「……今度っていつ?」



シンジ「次は宿を探さないと」

シンジ「不動産屋は遠いなぁ……あ、ワンマンバス!」

 ブゥゥン

シンジ「あ、それ乗ります!」

 タッタッタ

シンジ(ふぅ、間に合った)

シンジ(僕のほかの乗客は、小学生ぐらいの女の子が一人か)

少女「……」キョロキョロ

少女「えーと……」

シンジ「……おりるの?」

少女「あのね、お花屋さんに行きたいの」

シンジ「それなら次の停留所だ」

シンジ「すいません! 次降ります!」

運転手「はい、次止まりまーす」

少女「ありがとう。 かっこよくっていい人ですね」

シンジ「え? 僕が?」

少女「うん」コクリ

シンジ「かっこよくなんか……ないよ」

シンジ「泥簿に間違えられるし、父さんは相手にもしてくれないし……」

少女「……がんばれっ!」

シンジ「え?」

少女「あのね、花穂にはよくわかんないけど――」

少女「花穂はこけたりドジしたりして落ち込んだときは、こうやってがんばれってするの」

シンジ「……そっか、『がんばれっ』か」

少女「うん、お兄ちゃまもがんばって」

シンジ「うん、ありがとう……」

シンジ(小学生になぐさめられるなんて、本当にかっこわるいや)

少女「それじゃあね、バスを止めてくれてありがとう」

シンジ「うん、それじゃあ――」

 ステンッ

少女「てへへ」

シンジ「あ、ほんとにこけた」

--不動産屋--

シンジ「え、これしかないの?」

不動産屋「ええ。 島の中で今開いているのはここだけです」

シンジ(食堂もお風呂もキッチンも共用……共同生活前提の部屋だ)

シンジ(僕が、そんなところでくらせるのかな?)

シンジ(でも、そこしかないんだ)

シンジ「分かりました。 そこで契約します」

不動産屋「まいど、ありがとうございます」

 タッタッタ

シンジ「えーと下宿先はここから――」

幼女「……」ジー

シンジ「ん?」

シンジ(幼稚園ぐらいの子が、なんで一人で?)

シンジ「きみ、お父さんは?」

幼女「……」ブンブンッ

シンジ「お母さんは?」

幼女「……」ブンブンッ

シンジ「じゃあ、迷子なの?」

幼女「ヒナ、まいごじゃないもん」

シンジ(困ったなぁ、どうしよう?)

???「雛子ちゃん!」

シンジ「あっ、きみはさっきの!」

少女「あ、さきほどの」

少女「知ってる子なので、家まで送りますね」

幼女「ばいばーい、またね」

 スタスタ

シンジ「え、ああ。 ……またっていつ?」

シンジ「あ、もうこんな時間! 早く入学手続き済まさないと!」

--夕暮れ時--

シンジ「ふぅ、なんとか入学手続きは終わったし、あとは下宿先に行くだけだ」

シンジ「ネルフ運営の学校って言ってたっけ? お父さんが手を回してくれたのかな?」

シンジ「僕は……必要とされているのかな?」

シンジ「あ、あれが下宿先かぁ……名前も『ウェルカムハウス』なんてのだし」

シンジ「学生向けの下宿じゃなくて、リゾート地のコテージなのかな?」

シンジ「あれ? あそこに入っていくのはさっきの女の子たち……」

--ウェルカムハウス--

 コンッコンッ

シンジ「すみませーん」

シンジ(返事がないや、仕方ない勝手に入ろう)

 ガチャリッ

 パンッ パンッ パンッ パンッ

シンジ「うわああぁっ!? なに!? どうしたの??」

???「おかえりなさい! お兄様」
???「おかえりなさい、お兄ちゃん」
???「お兄ちゃま、おかえりなさい!」
???「おにいたま、おかえり」

シンジ「へ?」







シンジ「きみたちは、今日会った――」

黒髪ロング「ごめんなさい、みんなでお兄ちゃんとの出会いを演出しようって話になって――」

小学生「言わずにお兄ちゃまと会うことにしたの」

幼女「内緒にしとくのって大変」

ツインテ「最初に言い出したの誰だっけ?」

黒髪ロング「もう、咲耶ちゃんじゃない」

幼女「そうだよ」

シンジ「……なにを言ってるの? わけがわかんないよ!」

ツインテ「ふふふ、私たちみんなお兄様の妹なのよ。ちなみに私は咲耶って言うわ、よろしくね」

黒髪ロング「わたしは可憐っていいます。 よろしくね、お兄ちゃん」

小学生「あのね、あたしね、花穂っていうの」

幼女「ヒナだよー」

シンジ「妹? 四人も? そんなの、聞いたことないよ!」ガチテンパリ

咲耶「……いきなりで驚かせすぎちゃったかしら?」

可憐「びっくりさせちゃってごめんなさい、お兄ちゃん。 でも、わたしたち――」

花穂「花穂ね、お兄ちゃまと一緒に暮らすのをずっと楽しみにしてたんだよ」

雛子「おにいたまは、おにいたまなのが嫌なの?」

シンジ「い、いやってわけじゃないけど……」

シンジ「その、どうしていいか、わからなくて……」

可憐「可憐は、お兄ちゃんが一緒に居てくれたらそれでいいです」

シンジ「え? それって」///

花穂「花穂ね、お兄ちゃまと一緒にお散歩したい」

雛子「あ、ヒナも、ヒナも!」

シンジ「え、えと、その……」

咲耶「こらこら、お兄様をあんまり困らせるんじゃないの」

咲耶「ちゃんと準備してるんだから、まずはお兄様の歓迎パーティよ」

シンジ「え、えええ!?」



--ウェルカムハウス付近の木陰--

アスカ「おー、驚いてる驚いてる」

アスカ「まーそりゃ、いきなり妹が四人もできればね」

アスカ「でも、これがもしネルフの碇司令の子どもたちだとすれば大スキャンダルだわ」

アスカ「加持さんがこの私に任せるだけの任務ってわけね」

アスカ「それじゃ、今日はこの辺にして私も宿へ行きますか」

アスカ「えーと、加持さんがとってくれたトコは……」

アスカ「んん?」

アスカ「えーっ!? 『ウェルカムハウス』ってあいつらと一緒じゃない!!」

アスカ「感動の兄妹対面に赤の他人が割り込めってわけ!?」

アスカ「だいたい、監視対象と同居っておかしいでしょ!」

アスカ「もういや、なに考えてるのよ、加持さんは!」

--ネルフ本部--

 ヴィーンッ

髭の男「これはこれは、冬月学園長」

白髪の男「まったく、ずいぶん強引なことをしてくれたな」

髭の男「われわれの計画に必要なことだ」

冬月「碇、お前はそれでいいかもしれんが、学園としてのしめしがつかんよ」

髭の男→ゲンドウ「ずいぶん熱心に学園長をしているな」

冬月「わたしはもともと教育者だからな」

ゲンドウ「あなたが適職だから星見ヶ丘西学園に配置したのは事実だが、あくまで計画のためだ」

冬月「そうか、それではあの島で起こすのかね? ゼーレですら否決したあれを」

ゲンドウ「ああ、そうだ。 すでに新たなシナリオは出来ている」

冬月「そうは上手くはいかんかも知れんぞ」スッ

ゲンドウ「この写真は? 惣流アスカ……誰だ?」

冬月「ゲヒルンの研究者の娘だ。 一時はエヴァのパイロットにも推薦された」

冬月「それがうちの学園に入学してきた」

ゲンドウ「問題ない。そういう人材を育成するのがあの学園の表向きの役割だ」

冬月「すでに大学を卒業している娘が高等部へ入学してきたんだぞ!」

冬月「何か嗅ぎつかれた可能性が高い」

ゲンドウ「計画に支障はない」

冬月「まったく、いちおう私のほうで用心はしておく」

ゲンドウ「ああ、そうしてくれ」









今日はここまで

感想ありがとうございます

読み直してみて、地の文なしで伝えるのは難しいと後悔中



シンジ「知らない天井……当たり前か、この島で知ってるとこなんてどこにも無いもんな……」

シンジ「なんで僕は、ここにいるんだろう?」

 カチャッ

 カタカタカタカタ……

『カヲルへ

 はじめてこの島に来て、いろんなことがありすぎた。

 見たことも聞いたこともなかった女の子たちが僕の妹だって言うんだ。

 しかも、四人も。

 カヲルくん、君ならどうする?』

シンジ「メール送信……っと」

シンジ「……とりあえず朝ご飯でも作ろう」

--キッチン--

 ガチャリッ

シンジ「冷蔵庫の中は……レタスに、キュウリに……」

シンジ「ご飯は今から炊いたら時間がかかるからパンにするかな」

シンジ「…………何人分?」

 ガラッ

可憐「おはようございます、お兄ちゃん」

シンジ「あ、お、おはよう……か、かれんさん?」

可憐「『可憐』でいいです。 それに朝ごはんなら可憐が作ります」

シンジ「え……いや、でも……料理でもしてた方が、落ち着くんだ。 えーと、可憐……ちゃん」

可憐「はい」ニコッ

可憐「それじゃあ、一緒に作りましょう」

シンジ「う、うん。 じゃあ僕はスープを作るから……」

可憐「はい、お兄ちゃん。 可憐はサラダを作りますね






 ガラッ

咲耶「モーニンッ、お兄様、可憐ちゃん」

シンジ「あ、えと、おはよう……さくや……ちゃん?」

可憐「おはよう、咲耶ちゃん」

咲耶「もー、お兄様も可憐ちゃんも早いわね」

咲耶「先に起きて朝ごはん作る予定だったのに」

シンジ「はは……」(どう答えていいか分からないや)

可憐「えーと、あとはパンを焼いてお茶を入れてください」

咲耶「オッケー、任せといて」

シンジ「……」

シンジ(手伝ってくれてるのは分かるけど、落ち着かないな)

 ガラッ

花穂「お兄ちゃま、おはよう」

雛子「おはよう、おにいたま」

咲耶「ちびっ子たちも起きたわね。 それじゃ、食器並べてくれるかしら?」

花穂「うん!」

雛子「はーい」


--食堂--

妹達「「いただきまーす」」

シンジ「……いただきます」ボソッ

 カチャカチャ

花穂「それでね、お庭にお花畑を――

咲耶「テーブルクロスとか、ランチョンマットも買い揃えたいわね――

雛子「ヒナはねぇ、絵本が欲しい!――

可憐「お昼にでも町に買いに出て――

シンジ「……」

シンジ(にぎやかだけど、落ち着かないな。 女の子ってこうなのかな?)

可憐「お兄ちゃん、お兄ちゃんは何か欲しいものがありますか?」

シンジ「……え!? あ、僕?」

咲耶「お兄様、一緒に買い物に行く話よ」

シンジ「えーと、僕は……」

シンジ(僕が、欲しいもの?)

シンジ「……ごめん、わからないや」






妹達(ポカーン)

シンジ「え、えーと、明日から学校だから文房具屋へ行くよ」

花穂「あ、いっけなーい! 花穂もノート買ってなかった」

雛子「ヒナねー、ヒナもクレヨン買うの」

咲耶「うん、それじゃ文房具屋にもみんなで行きましょう」

シンジ(……みんな、か)

----

アスカ「うー、ねむっ」

アスカ「昨日は結局、喫茶店で一晩すごしちゃったわ」

アスカ「あーもう、あたしのバカ。 自分の部屋なんだから堂々と入ればいいじゃない!」

アスカ「あ! おっと」ガサガサ

 咲耶「でねー、お兄様――

 可憐「咲耶ちゃんそれって――

 花穂「あっ――

 シンジ「わぁ、またこける――

 雛子「花穂ちゃんこれで3度め――

アスカ(ちょうどあいつらが出かけたわね)

アスカ(都合がいいわね。 今のうちに自分の部屋に入って)

アスカ(『はじめからここに住んでました』って顔して出て行きゃいいんだわ)

アスカ「……あれ? いまウェルカムハウスの窓に誰か見えたような?」

--町中--

シンジ「ふぅ、疲れた」

可憐「ごめんなさいね、可憐たちの買い物にも付き合わせちゃって」

シンジ「あ、そういう意味じゃ――」

咲耶「お兄様、気を使いすぎよ。 もっと気楽に」スルッ

シンジ(腕をからめてきた!)//////

雛子「あ、咲耶ちゃんずるーい、ヒナも、ヒナも!」

シンジ「あ、あはは……」アセ

花穂「うんしょ、お兄ちゃまに悪いし、花穂の分の荷物は、自分で持つね」

可憐「あ、ちょっと待って、花穂ちゃ――

 バリンッ

咲耶「あちゃー」

雛子「わーい、お花入れわれたー」

シンジ「……み、みんなで、片付けようか」



----

咲耶「――で、お兄様、お昼はいったん戻るわよね?」

シンジ「え、えーと、どうだろう?」

可憐「そうだったの? 可憐はてっきりお店で食べるのかと思ってました」

花穂「花穂はどっちでもいいよ」

雛子「ヒナはねー、ぱふぇが食べたい」

シンジ「パフェだったら、外食かな?」

咲耶「でも、お兄様お昼の作り置きしてたわよね?」

シンジ「え? 朝ごはんしか作ってないよ?」

咲耶「うそ? 赤いグラタンが置いてあったわよ」

咲耶「お兄様か可憐ちゃんが作ったんじゃないの?」

可憐「可憐は作ってないです」

花穂「花穂も」

シンジ(そりゃね……花穂ちゃんが作ったらどうなることか)

シンジ「もしかして、僕たち以外に住人が居るのかな?」

--夕暮れ時、ウェルカムハウス--

 コンッ コンッ

シンジ「すいませーん、誰か居ますか?」

 …………

可憐「返事がありませんね」

花穂「やっぱり他に誰も居ないんじゃ?」

咲耶「じゃあ誰がグラタンを作ったのよ?」

雛子「おばけ?」

シンジ「え、おばっ!? ……はは、まさか」アセ

 アスカ「ぐがー、すぴー」zzz

シンジ「と、とりあえず、中へ入ろうよ」

 スタスタ

可憐「誰もいない……」



 ブワッ

シンジ「え? いきなりスケボーが飛び込んで!?」

 ガーッ キュッ

花穂「すごい、ぴったしお兄ちゃまの前で止まったよ!」

咲耶「男の子? 女の子?」

スケボー少女「やっほー、あにぃ」

シンジ「え? 『あにぃ』」

 ブンッ

可憐「きゃ、停電!?」

 パチッ

咲耶「……あ、直った」

雛子「つくえのうえに、誰かいる!」

机の上の女「やあ、兄くん」

シンジ「い、いつのまに? 『兄くん』?」

 ワンワン! ガウ!

シンジ「うわっ、今度は犬が!」

メガネ少女「こら、ミカエル! 兄上様に飛びかかってはいけません」

ミカエル「バウッ」

シンジ「あ、『兄上様』?」



 タッタッタ

和服少女「兄君様、お怪我はありませんか!?」

可憐「すごい格好!」

シンジ「う、うん……大丈夫だけど……『兄君様』?」

シンジ「君たち、もしかして……」

メガネ少女「はい、兄上様の妹の鞠絵と申します」ペコリ

スケボー少女「ぼくは衛っていうんだ。 あにぃの妹だよ」

和服少女「春歌といいます。 兄君さまにお仕えするために参りました」

机の上の女「千影だ……よろしく……兄くん……」

シンジ「こ、これで、妹が8人」

春歌「上にもう何人かいたようですが?」

シンジ「……行ってみる」





--2階の一室--

???「み、みず……」

???「た、助けて……」

シンジ「四人もいる」orz

シンジ「あ、じゃなくて、みんな息も絶え絶えだ!」

咲耶「とにかく、水を!」

----

チャイナ服少女「プハァ、助かったー、ありがとう、アニキ」

シンジ「『アニキ』ってことはやっぱり……」

チャイナ服少女「鈴凛だよ、アニキ」

リボン少女「姫は、白雪といいますの。 兄さま、よろしくです」

チェック柄少女「兄チャマ、私は四葉っていいます。 イギリスから兄チャマをチェキしにきました」

ゴスロリ幼女「あーりーあーは、にいやのー、いもーとなのー」

シンジ「は、はは……、これで妹が12人……」

可憐「でも、どうしてここで倒れてたの?」



四葉「それはデスねー、四葉たちは早く着いたから兄チャマたちのためにご飯を作ろうとしたのデスが」

白雪「その、姫が味付けに失敗してしまったんですの」

亞里亞「おくちが、ぼーぼーなのー」

鈴凛「っていうわけだから、作り置きしてあるグラタンは食べないでね」

シンジ「……たべなくてよかった」

???「ぎゃーーーーーっ!」

可憐「悲鳴!?」

咲耶「下からよ!」

--遡ること数分--

アスカ「ふあーあ、よく寝た」

アスカ「……なんだか騒がしいわね、あいつらが帰ってきたのかしら」

アスカ「仕方ないわね、監視活動再開っと――」

 グルル……

アスカ「その前に、腹ごしらえも大事よね」

 コソッ

 ガチャリ

アスカ「冷蔵庫の中には……作り置きのグラタンだけ」

アスカ「……残り物なら食べても文句言われないわよね」

アスカ「そもそも、キッチンも冷蔵庫も共用なんだし」

アスカ「チンして……いっただっきまーす――

アスカ「ぎゃーーーーーーーーっ!!」

 ガラッ

鈴凛「あちゃー間に合わなかったか」

可憐「大丈夫ですか?」

シンジ「……妹が13人」orz

アスカ「あ……それ……ちがっ……」

咲耶「無理してしゃべらないでいいわよ。 私たちみんな兄弟なんだからちゃんと介抱するわ」

アスカ「……だから……ちが……」

鞠絵「安静にしてください。 わたくし看護の勉強をしていますから容態は分かります」

アスカ(……もういっか。 この際妹のフリでもしてた方が楽そうだし)


今日はここまで

字だけだと12妹の区別がなおさらむずかしい


アスカ「もー、最悪よー! 辛くてろくにしゃべれなかったんだから」

???『ははは。 やるじゃないか、兄妹の一員として紛れ込むなんて』

アスカ「え? ……えと……あ、あったりまえでしょ! あたしを誰だと思ってんのよ」

???『さすがはアスカだ。 その調子で頼むよ』

アスカ「モチのロンよ! で、加持さん、具体的な目的はまだ言えないの?」

???→加持『ああ。 悪いがこちらとしてもまだ様子をうかがっている段階だ』

加持『今は監視と周囲の情報収集だけが任務だと思って欲しい』

アスカ「情報収集するにしてもさぁ、目的が分からなくっちゃ何を調べて良いやら」

加持『そこはアスカに任せるよ。 大丈夫、俺はアスカの判断を信じている』

アスカ「」//////

アスカ「分かったわ。 まっかせなさい」

加持『それじゃ、また何かあったら連絡してくれよ』

アスカ「うん♪」

 ガチャ

 ツー ツー

『カヲルへ

 今日から学校がはじまる。

 いきなり13人も妹ができて、昨日は何も手につかなかったけど、

 これで少しは落ち着けそうな気がするよ』

シンジ「これで、送信……っと」

 ピロリン

シンジ「あれ、もうカヲルくんから返信が来た」

『誰かに必要とされること、シンジくんはそれを望んでたんじゃないのかい?』

シンジ「え……それは、そうかもしれないけど……」

 ゴンッ ゴンッ

アスカ「あんたバカァ? 長男だったら部屋にこもってないで朝ごはんの手伝いぐらいしなさいよ」

シンジ「あ、うん! すぐ行くよ!」


----

 ゾロ ゾロ

シンジ「あれ、みんな同じ学校に行くんだ?」

可憐「はい、みんな星見ヶ丘西学園ですよ」

アスカ「島に学校はひとつしかないんだから当たり前じゃない」

----

教員A「みなさん、整列してください」

教員B「開校にあたり、冬月コウゾウ学園長よりご挨拶を賜ります」

冬月「コホンッ それでは――

冬月「本校は幼稚園から大学、大学院まで揃えた総合学園として――

冬月「先端科学技術を研究可能とし――

冬月「公立では不可能な飛び級措置も――

冬月「日本復興のキーマンとなる人材を――

四葉(うー、お話長いデス)

亞里亞「」zzz

鞠絵(わたくし、もう、儚くなってしまいそうですわ)バタンッ

生徒A「おい、一人倒れたぞ!」

――教室前――

ケンスケ「いやぁ、学園長の話長かったね」

シンジ「あ、キミはたしか?」

ケンスケ「相田ケンスケだよ。 船で一緒だったろ?」

シンジ「うん……えーと、僕は碇シンジ」

ケンスケ「ああ、覚えてるよ。 座席表に聞いた名前があったから張ってたんだ」

シンジ「そうだったんだ」

シンジ(少しなれなれしいけど、気さくでいいやつだな)

シンジ(学校では上手くやっていけそうな気がする……)

ケンスケ「立ち話もなんだし、教室に入ろうよ?」

シンジ「うん」

 ツカツカ

可憐「あ、お兄ちゃん!」

シンジ「え? か、可憐ちゃん?」

ケンスケ「ん?」





可憐「お家でも一緒で、クラスでも一緒に居られるなんて、可憐うれしいです」

シンジ「同級生なの?」

ケンスケ(おうちで一緒?)

可憐「はい。 可憐、外国で暮らしていたことがあって、そのせいだそうです」

シンジ「飛び級!? さっき学園長が言ってたけど、本当にいてたんだ……」

ケンスケ「あのー、お二人とも、どういう関係?」

可憐「あ、シンジお兄ちゃんの妹の、可憐って言います」

ケンスケ「あ、そうなんだ?」

シンジ「……うん、そうらしい」

ケンスケ(『らしい』?)

 ガラッ

可憐「あ、アスカちゃん」

アスカ「げっ? まさか同級生?」

ケンスケ「……あの子も妹?」

シンジ「えーと、そう……らしい」

 ガラガラ

 バンッ

???「はい、みなさん着席! ホームルームをはじめるわよ!」

ケンスケ「お、先生が来た」

シンジ(ん? あの先生?)

 キュッキュッ キュッ カンッ

『葛城 ミサト』

???→ミサト「はい、先生は葛城ミサトと言います」

ミサト「このクラスのみんなの担任で教科は国語を担当しているわ、よろしくね」

シンジ「先生!」

ミサト「はい、なんで……あっ」アセ

シンジ「先生、僕を連れ去った人ですよね?」

ミサト「え、えーと、何の話かしら?」

シンジ「髪型も服装も変えずにサングラスはずしただけで変装のつもりですか?」

ミサト「人聞きの悪いこと言わないでよ、えーと、あとで説明するから!」

アスカ(さらわれた? あいつも強引に連れてこられたわけね)

--昼休み、校庭--

シンジ(葛城先生、ホームルームが終わったら逃げるように出て行ったな)

シンジ(お父さんに言われてやったのなら詳しい話を聞きたかったのに)

シンジ(いきなり先生を誘拐犯扱いして、さっそくクラスから浮いちゃったな……)

花穂「お兄ちゃま、ファイトー!」

シンジ「あ、花穂ちゃん? その格好は?」

花穂「花穂ね、チア部に入ったんだ。 今みたいにお兄ちゃまが落ち込んでたらすぐに応援するね」

シンジ「は……ははは」

シンジ(そんな傍目にもわかるぐらい落ち込んでたか)

 テクテク

--渡り廊下--

白雪「にいさま、姫、にいさまにランチをお届けに来ましたの!」

シンジ「わっ! え、お昼ご飯?」

白雪「今日のメニューは姫特性、ペンギンの生命のスープ仕立てですの」

シンジ「え?」

シンジ「その、今はいいかな、おなかいっぱいだから……ご馳走様!!」

 ダダッ

シンジ「ふぅ……つかれるなぁ」

 バシュウッ

シンジ「あ、ボールが!」

春歌「兄君様あぶない!」

 ドタンッ バタンッ

シンジ(おおいかぶさってくるなんて、たしかこの子も妹の――)

シンジ「いてて……えーと、はるかちゃん?」

春歌「まあ、兄君様が私の名前を」//////

シンジ「それよりも、どい……」グイッ

 ムニッ

シンジ(あ。 おもいきり、胸をさわっちゃった)//////

春歌「あ、兄君様!? いけませんわ、私たちは兄妹……」

シンジ「わ、わざとじゃないんだ」

春歌「でも兄君様がどうしてもというのなら……ポポポ」//////

シンジ「そ、その、ごめん!!」

 ダダッ

--グランド--

 タッタッタッ

シンジ(はあ、はぁ、もういやだ、誰も来ないで)

衛「あにぃ♪ あにぃもお昼はランニングなの?」

シンジ「え、あ、まもるちゃん?」

衛「一周競争しようよ」

シンジ「いや、その……」

衛「よーい、ドンッ!」

 ダダッ

シンジ「……ごめん」

 ダダッ(逆走)

----

シンジ「はぁ、はぁ、もうダメだ」

 ドサッ

 カシャ

四葉「兄チャマ、チェキです!」

シンジ「え、撮ったの? ……よつば、ちゃん?」

四葉「当然デス! 四葉は兄チャマのすべてをチェキするデス」

 カシャ カシャッカシャ

シンジ「えーと……逃げる!」

 ダダッ

四葉「あー、待つです、兄チャマ!」

--木陰--

シンジ「ふぅ……ここなら少しは落ち着ける……」

ミカエル「ワンッ ワンッ」

シンジ「あれ? この犬は確か……」

鞠絵「兄上様、兄上様から来ていただけるなんて」

シンジ「えーと、まりえ……ちゃん?」

鞠絵「わたくしうれしくて胸が……」

  ドタッ

シンジ「あ、倒れた」

シンジ「保健室まで運ぶの? 僕が?」

シンジ「うんしょ、うんしょ」

シンジ(さんざん走って疲れてるのに、今度は人一人背負って歩くだなんて……)

 ムニッ

シンジ(あ……胸の感覚が)//////

シンジ「ダメだダメだ! ちゃんと運ばないと」

 ウイーン ガチャ

シンジ「うわっなにこの機械!?」

鈴凛「はーい、アニキ。 それに鞠絵ちゃん」

シンジ「りんりん……ちゃん?」

鈴凛「このロボット、あたしの発明品なんだ」

シンジ「すごい……」

鈴凛「鞠絵ちゃんを保健室に運ぶならこのロボットに乗せたらいいよ」

シンジ「あ、うん。 たすかるよ!」

鈴凛「でもさー、最近ちょっと開発費不足なんだよね」

シンジ「えーと、つまり」

鈴凛「資金援助、してくれたらうれしいなー♪」

シンジ「こ、これでいいかな」つ5,000円

鈴凛「ありがとう、アニキ。 愛してるよ」

----

シンジ「ふぅ、鞠絵ちゃんは鈴凛ちゃんが運んでくれたし、一件落着かな」

シンジ(けっきょく、この昼休み全然休めてないや)

 ドサッ

咲耶「お兄様! そんなところに倒れこんで大丈夫?」

 スッ

シンジ「え、ああ。 ありがとう」

 グイッ

咲耶「フフッ」

シンジ「え? なにを?」

シンジ(つかんだ手でそのまま密着してきた)

咲耶「お兄様、他の子を大事にするのも良いけど、私のことも忘れちゃ嫌よ」

シンジ「え、ええ?」

 コソッ

ケンスケ「うわー、すごい家庭だね」

アスカ「あたしに同意を求めないでよ」

ケンスケ「キミも妹でしょ?」

アスカ「えーと、そ、そうだけど……」

アスカ(この冴えない男と変人妹集団と同類ですって、すっごいむかつく)

----

???「葛城先生」

ミサト「あら、りっちゃん」

???→リツコ「生徒の目のあるところでは赤木準教授と呼んでちょうだい、葛城先生」

ミサト「あー、ごめんごめん。 それでなに?」

リツコ「学園長がお呼びよ。 あなたまた何かやらかしたんじゃないの?」

ミサト「う。 もう冬月先生の耳にはいっちゃったか」アセ

--学園長室--

冬月「葛城くん、碇の息子を拉致同然でこの島に連れてきたそうだね」

ミサト「あー、それはそのー、時間に余裕が無かったので仕方なく」アセ

冬月「多少強引にでもとは言ったが、さらって来いとはいっとらんだろう」

ミサト「はい。 すいません、海よりもふかーく、反省しております」

冬月「だいたい、自分のクラスにならなくても教科の授業で顔を合わすんだぞ」

冬月「そのあたりを考えていたのかね?」

ミサト「あー、そのあたりは全く考えていませんでした。 とりあえず連れてくればいいと」

冬月「……ふぅ、そもそも、キミはどうして教員なんぞになってここで働いているのかね?」

冬月「使徒の攻撃から地球を守った英雄が、こんなところでヒラ教員なんぞ」


ミサト「お言葉ですが、学園長。 私は今の仕事に誇りとやりがいを感じています」ピシッ

冬月「ほう? それはネルフ本部の仕事よりもかね?」

ミサト「はい。 先ほど学園長は私なんぞを地球を守った英雄といいましたが――

ミサト「あそこで実際にしていたことはエヴァを動かすためだけに生まれたクローンの子どもたちを

ミサト「戦わせて、犠牲にして、自分たちが生き延びることだけでした。

ミサト「それよりは、ここで子どもたちの成長に関わる方がよほどやりがいを感じます」

冬月「……そうか」

冬月「私にとって、学園長という仕事は望んでいたものだ。 赤木くんも研究のために望んでここにいる」

冬月「キミの今の言葉は本心だろうが、逃避しか存在しない。 教育者でありたいのならもう少し考えなさい」

ミサト「……ハッ」ピシッ

冬月「もういい、行きたまえ」

ミサト「失礼します」

 ガチャリ

冬月「子どもたちを犠牲にするよりはか……ここも、何も変わらんかもしれんな」




今日はここまで

--放課後--

シンジ「はぁ……」

可憐「お兄ちゃん、大丈夫ですか?」

シンジ「……ごめん、一人にして」

可憐「お兄ちゃん、それじゃ可憐、先に帰るね」

シンジ「……うん」

--30分後、校門前--

 トボ トボ

シンジ「はぁ、これじゃ先が思いやられるよ」

雛子「おにいたまー」

亞里亞「にいやー」

シンジ「あっ、ひなこちゃん……と、ありあちゃん?」

亞里亞「あーりーあー、にいやとーかーえーるー」

雛子「ヒナね、おにいたまと帰るためにずーっとまってたんだよ」

シンジ「え、そ、そうなんだ」ヒクヒク

シンジ「それじゃ、い、いっしょに、帰ろうか……ハァ」

雛子「わーい♪」

亞里亞「……」ギュッ

シンジ(誰かに必要とされるって、こんなに重いことなんだ)

--ウェルカムハウス--

鞠絵「――それで兄上様は、おうちへ帰るなりぐったりと」

アスカ「逃げ出さないだけマシじゃないの?」

咲耶「逃げ出す体力も残ってなかったって感じね」

千影「……ああ。 兄くんの顔に、深い死相が出ているよ」

アスカ「し、死相!?」ビクッ

咲耶「ところで小さい子達は?」

鞠絵「もうみんな部屋に戻ったみたいです」

可憐「話を続けると、お兄ちゃんに負担がかかりすぎだと思うの」

春歌「どうにかして兄君を癒して差し上げられないでしょうか?」

鈴凛「ここはひとつ、あたしの発明した全自動歩行マシーンで……」

アスカ「そういうのが重いんじゃないの?」

鈴凛「えっ!?」

春歌「つまり、私たちが兄君様に尽くそうとするのがかえって負担になると?」

咲耶「それは盲点だったわ!」

アスカ「あんたたち、もしかして本物のバカ?」

千影「さすがは長女…… 大した……洞察だよ」

アスカ「え? わたし、長女?」

可憐「可憐は飛び級でお兄ちゃんと同学年だけど、アスカちゃんは年齢どおりですよね?」

アスカ「あ、うん、そうよ」

アスカ(本当だったら飛び級で大卒だし)

咲耶「え、ちょっと待って! それじゃ、アスカちゃんって本当に妹なの?」

可憐「もしかして、お兄ちゃんのお姉ちゃんになっちゃうのかな?」

アスカ「え!? あ……」冷汗

鞠絵「アスカちゃん、お誕生日はいつですか?」

アスカ「じゅ、十二月。 十二月四日」ビクビク

鈴凛「よかった。 アニキの誕生日は六月六日だから、半年分妹だね」

アスカ「あはは、あったりまえでしょ、何言ってんのよ」ホッ

春歌「でもアスカちゃんは兄君様にも堂々としてらして、まるで姉君様のようですね」

千影「ふふ……本当に……頼りにしているよ」

アスカ(何なのこの千影って子? もしかして正体バレてる?)

可憐「……あっ!」

可憐「アスカちゃん、そう言えばお兄ちゃんをなんて呼んでますか?」

アスカ「え?」

咲耶「そういえばアスカちゃんがお兄様をきちんと呼んだとこ見たこと無いわ」

アスカ「」ギクッ

鞠絵「呼び方が他の子とかぶっちゃダメですよ」

アスカ(何その変なルール!?)

アスカ「あ、あんなヤツ……バカシンジで十分よ」

千影「アスカくん……兄くんを……呼び捨ては……許さない」

アスカ「」ゾクッ

アスカ「じゃ、じゃあバカアニキで」

鈴凛「アニキはあたしとかぶるからダメだよ」

可憐「残ってるのは、『兄さん』とか『おにぃ』とか」

アスカ「はぁ!? なんであのバカをそんな呼び方しないといけないわけ!?」

咲耶「それじゃ、なんて呼ぶの?」

アスカ「あ、あいつなんてねー……

アスカ(できるだけ敬意のこもっていない兄の呼び方は……)

アスカ(あ、そうだ! たしか任侠映画であったわね)

アスカ「『あんちゃん』で十分よ!」

鞠絵「まあ、素敵です」

鈴凛(どちらかといえば小さい子が使う言い方だよね)

----

アスカ「ふぅ、なんだかんだでわたしも疲れたわね」

アスカ「でも、この程度で弱音ははかないわよ! 加持さんに報告書送らないと」

 カタカタカタ

『――碇シンジの妹を名乗る12人の少女たちについて、ここ数日生活をともにしたことで分かった情報をまとめて送ります。

 学年別にまとめると、

 高校一年生 シンジ、可憐、そしてわたし

 中学三年生 咲耶、千影

 中学二年生 春歌、鈴凛

 中学一年生 鞠絵

 小学六年生 衛、四葉

 小学五年生 白雪

 小学四年生 花穂

 小学1年生 亞里亞

 幼稚園年長 雛子

 となる。ちなみに、可憐に関しては飛び級であり実年齢は中学1年生相当である』

『このように、年齢分布からして明らかなように、同一の母から生まれた兄弟ではない。

 身長や体格も異なっており、たとえば衛は白雪より10cm以上高い。

 咲耶や春歌はわたしほどではないにしてもなかなかいい体だが、千影や可憐は女性として

 悲しいぐらい平べったい。白雪と花穂はそっち方面の成長がよすぎて腹が立つ。

 苗字もバラバラで、おかげでわたしが妹たちの中に紛れ込めた。

 ちなみに、妹たちのうち4人が日本人と他国人とのハーフであり、春歌はドイツ、鈴凛は中国、

 四葉はイギリス、亞里亞はフランスである。

 ためしに春歌とドイツ語で会話をしてみたら日本語よりもキリッとしていた。

 亞里亞はまだ日本語が苦手なため、ゆっくりとしか話せないらしい。

 四葉は日本語も英語もあやしい。

 また、春歌は日本の稽古事全般が得意で、鈴凛は高い機械工学の技能を持つなど

 彼女たちはさまざまな特技を持っているらしい。

 もう少し調査してから個別の詳細を送る……

 ちなみに公式設定と異なるところもあるので注意されたし』

 カタカタカタ

アスカ「……送信っと」


 カシャッ ウィーウィー カシャッ

???「四葉ちゃんの言ったとおりだね」

???「ふふ、名探偵のカンはあたるのデス。 それに鈴凛ちゃんの発明が加われば無敵デス」

???「はは、最強タッグ完成だね」

???「でも、どうするデスか? アスカちゃんがスパイだなんて」

???「……しばらくは、様子を見ようよ」

???「さっすが、鈴凛ちゃん。 泳がせて尻尾をつかまえるデスね!」

???「それもあるけど、なんか、そんなに悪い子じゃないと思うんだ」

???「……四葉も、そう思いマス」

???「うん。 これは、咲耶ちゃんや可憐ちゃんや……他の子たちには内緒だよ」

???「はい! 任せておくデス!」


今日はここまで

『カヲルへ

 必要とされるのってとてもしんどいや。

 今までは、勉強と自分の生活だけをしていればよかったのに、

 今は何をしたらいいかもよくわからないや』

 ジュー……

白雪「今日も朝食はにいさまが? 言ってくれたら、姫がやりますのに……」

シンジ「……いいんだ、この方が落ち着くから」

白雪「それじゃ、せめてお茶を出しますの♪ 姫特性マムシドクダミ紅茶を――」

 ビシッ

アスカ「やめて。 白雪ちゃんはいい加減味覚を一般人にあわせてよね」

白雪「でも、にいさまにスタミナを……」

シンジ「えーと、ごめん、今はそれいらないかな」

白雪「」orz

アスカ「あんちゃんも、料理ばっかじゃなくて男だったら力仕事しなさいよ」

アスカ「物干し台はけっきょくあたしと衛ちゃんで作ったわよ」

シンジ「ああ、ごめん」

アスカ「ごめんじゃなくて、とっとと行動しろって言ってんのよ」

シンジ「……ごめん」

アスカ「……はぁ」

シスプリとか他の女キャラ見るとアスカがいかに魅力ないかが分かるな

--食堂--

咲耶「あれ、まだみんな揃ってないわね?」

可憐「花穂ちゃんと雛子ちゃんは?」

衛「花穂ちゃんはぼくがランニングに出たときにはもう起きてたはずだけど……」

鞠絵「たしか、花穂ちゃんは雛子ちゃんを起こしに行きましたよ」

千影「……『月』か……不安……だね」

アスカ「タロット占い?」

春歌「わたしが見に行きましょうか?」

 ガラッ

花穂「ごめんなさーい、遅くなっちゃって」

雛子「うー……」

鈴凛「雛子ちゃん、眠そうだね?」

花穂「うん。 最近寝起きが悪いみたいなの」

雛子「くまさん……くまさんがないの」

シンジ「くまさん?」

四葉「雛子ちゃん、それはここに来る前に持っていたものデスか?」

雛子「うん」

シンジ「取り寄せるとか、出来ないのかな?」

可憐「……それは、無理だと思うの」

シンジ「え? そうなの?」

アスカ(ふーん、この子達ここに来る前から何かあったっぽいわね)

シンジ「そ、それじゃ、また買い物に行こう」

シンジ(日曜で学校は休みだって言うのにこれじゃぜんぜん休まらないや)

--午後--

花穂「雛子ちゃん、そろそろお出かけだよ?」

花穂「……あれ? いない?」

 てくてく ドタンッ

花穂「いたた……ここにもいない?」

花穂「あ……れ? まさか?」

----

アスカ「雛子ちゃんがいない? あんなちっちゃな子が一人でどっか言ったっていうの?」

シンジ「それって、大変なんじゃ」

咲耶「手分けして探しましょう!」

可憐「それじゃあ、家の中は鞠絵ちゃんに任せて、外は――」


----

シンジ「はぁ、はぁ……この島、案外広いなぁ。 これじゃキリが無いや」

シンジ「ここは港か。 さすがにこんなところに雛子ちゃん一人じゃ来れるわけが――」

渡し守「よう、にいちゃんどうした?」

シンジ「あの! 幼稚園ぐらいの小さい女の子見ませんでしたか!? 黄色い髪で、背はこのぐらいの」

渡し守「おお、その子ならほれ、そこに」

雛子「……」

シンジ「雛子ちゃん! はぁ、はぁ、よかった。 どうしてこんなとこに?」

雛子「……くまさん」

シンジ「え?」

渡し守「その子がな、海を渡ってくまさんを探すといって聞かなくて困ってたんじゃよ」

渡し守「その子の兄ならどうにかしてくれんか?」

シンジ「雛子ちゃん、くまさんなら一緒に探してあげるから、一人で行っちゃだめだよ」

雛子「くまさん、あるの?」

シンジ「うん、きっとあるよ。 島の中に無かったら海の向こうも探そうね」

雛子「……うん」

シンジ(あれ? もしかして、ここで海を渡れば帰れる?)

シンジ(お金は口座に振り込まれるようになってる)

シンジ(前のマンションには帰れないにしても、一人でくらしていくのは十分にできる)

シンジ(星見ヶ丘西高校を自主退学することになるから浪人にはなるけど――

シンジ(一年待てば志望校に行けるし、大検をとれば余計に待たなくても大学にいける)

シンジ「……」

渡し守「どうする? その子と一緒に海を渡るかい?」

雛子「おにいたま?」

シンジ(僕が島から去ったら、この子たちはどうなる?)

シンジ(……きっと何も変わらないよね。 僕が居なくても自分たちで楽しくやっていくはず)

シンジ(雛子ちゃんをウェルカムハウスに帰してから、抜け出す準備をしよう)

シンジ「なんでもないよ、雛子ちゃん。 さ、くまさんを探しに行こうか」

雛子「おにいたま、なんか変」コワゴワ

----

アスカ「ったく、さすがにあんな小さな子が迷子じゃ任務より優先しないと仕方がないわよね」

アスカ「雛子ちゃーん! どこ行ったのよー?」

 スッ

アスカ「あれ? いま向こうの路地を横切ったのはバカシンジ? あ、じゃなくてあんちゃん」

--喫茶店--

シンジ「とりあえず、甘いものでも食べて休憩しようか」

雛子「わーい、ヒナねー、パフェ食べる♪」

 コソッ

アスカ(あのバカ、雛子ちゃん見つけたなら先に帰って報告しなさいよ)

 パクパク ムシャムシャ

雛子「ごちそーさまー」

シンジ「それじゃ、ウェルカムハウスに帰ろうね」

雛子「……くまさんは?」

シンジ(あ、覚えてた)

シンジ「あ、いや、帰りながら探そうって意味でね」アセ

 コソッ

アスカ(何やってんだか)

----

シンジ「こういう、大きなくまのぬいぐるみを――」

店主「うちにはないね」

----

シンジ「くまのぬいぐるみをさがしてて」

店主「こういうのをお探しですか?」

雛子「……これじゃない」ブンブン

----

シンジ「くまのぬいぐるみを――」

店主「剥製ならおいてあるんだけどね」

雛子「わーん、くまさん怖い!」

----

シンジ「ふぅ……ぜんぜん見つからないや」

雛子「おにいたま……」

 カツカツカツ

アスカ「だーっ! むかつくわ、あんた!」

シンジ「わっ!? なにいきなり?」

雛子「アスカちゃん?」

アスカ「雛子ちゃん見つけても報告しない!」

アスカ「探しものなんてみんなで手分けしたらすぐ見つかるのに一人で探す!」

アスカ「あんたバカ!? まじめにやってんの?」

シンジ「え……えーと」

アスカ「他の子たちがチヤホヤしてくれるからって自分ひとりでなんでもできるとか勘違いしてるの?」

アスカ「それとも、頼りにされたいからってみんなでやればいいことを勝手にひとりでしてるわけ?」

シンジ「ぼ、僕はそんなつもりは……」

アスカ「あー、ちがうわよね。 どうせ周りに流されてるだけで本心じゃ面倒くさいと思ってるんでしょ」

アスカ「だからどうすりゃいいかって簡単な答えも出てこないのよね」

シンジ「そんなんじゃないよ! 僕はただ……」

アスカ「違うならなんでそこでどもるのよ? あんたのそういうとこ、本当に大ッ嫌い!!」

アスカ「雛子ちゃん、こんなバカ放っておいてとっとと帰るわよ」

雛子「でも……」

アスカ「くまさんのぬいぐるみが要るなら明日学校帰りに一緒に探すから、ね」ギュッ

雛子「お、おにいたま……」


シンジ「僕は……」




--ウェルカムハウス--

アスカ「ただいまー」

雛子「……」

鞠絵「雛子ちゃん! 無事だったんですね」

四葉「アスカちゃんが見つけてきたデスか?」

雛子「……おにいたま」

花穂「お兄ちゃまが雛子ちゃんを見つけたの?」

雛子「……」コクッコクッ

亞里亞「にーいーやーはー?」

アスカ「あー、なんかモタモタしてたから置いてきちゃった」

鞠絵「それでは兄上様は今?」

アスカ「さあ? もしかしたら、今頃船に乗って島から出てるかもね」

花穂「え? どうして?」

アスカ「あいつ妹がいきなりたくさんっていうこの非常識な事態にテンパってたじゃない」

アスカ「もともと無理やり連れてこられたらしいし、無理にでもここにいる気ははじめから無いでしょ」

 ツカツカツカ

鞠絵「……」

アスカ「え?」

 パチンッ

鞠絵「どうして、そんなことが言えるんですか!?」

鞠絵「私たち、兄上様と暮らせることをずっと楽しみにしてきたのに!」

鞠絵「それを――あぁ

 クラッ ドタンッ

アスカ「何よもう、一方的にあいつに期待して、一方的に倒れて……」

 グイッ

アスカ「とりあえず、鞠絵ちゃんを部屋に運ぶわよ」

四葉「……でも、兄チャマが」

花穂「お兄ちゃま、かえって来るよね?」

雛子「おにいたま」

アスカ(この子達、なんでここまであいつにこだわるの?)

千影「……」

アスカ「うわっ!? いたの!?」

千影「……『運命の輪』……意味は……転換期・解決」

千影「……大丈夫……兄くんは……帰ってくる」

 カランカラン ガチャリ

シンジ「ただいま、ごめん、遅くなって」

花穂「お兄ちゃま!!」

亞里亞「にーいーやー」

四葉「兄チャマ、その大きな袋は?」

シンジ「ああ、これは――

シンジ「アスカちゃんに言われたとおり、真剣さが足りなかったんだ」

シンジ「本気で探したら、ほら、見つかったよ――はい、雛子ちゃん」

つ『大きなくまのぬいぐるみ』

雛子「お……おにいたまー!!」ダダッ

シンジ「うわっ、飛びついて――って泣いてる?」

雛子「だって、だって、おにいたまが、くまさんが、うわああーん!!」

シンジ「うんうん、大丈夫だよ」

千影「……ふふ……兄くん……わたしたちのきずなは……切れないよ」

シンジ「え? あ、ああ」冷汗

アスカ「……あんちゃん、さっきは言い過ぎて悪かったわね」

シンジ「え!? いや、そんなことは……」

アスカ「だから……鞠絵ちゃん運ぶの手伝って」

シンジ「あ、うん」

シンジ(……逃げ出す準備は、また今度かな)



今日はここまで

亀だけど>>100
このssの立ち位置的な問題もあるけど性格があれだからな
「碇シンジ育成計画」のアスカならツンデレ幼馴染というデンプレな属性持ちだけどシンジと何だかんだ仲良くやっていたと思うよ。嫉妬も多そうだけど……
どちらかとこの世界線は「エヴァンゲリオン」の世界に近いから……

>>117
惣流×
式波◯
ということだな
惣流は(ヤン)デレがくるまでは魅力ないから、このssも後半にならないとアスカの魅力は発揮されないってことか

>>118
いや、一応育成計画の方は「惣流」だけどな
ポジションが幼馴染なのかシンジに対しての好感度と理解度が高いだけ。
あと母親も生きているし、関係も良好という

青い髪の少女「……くん」

シンジ「ここは? 君はいったい?」

青い髪の少女「わたしはすぐ近くにいるわ、お願い、気付いて」

シンジ「何を言っているの? 意味がわからないよ」

青い髪の少女「忘れないで――」

シンジ「ちょっと待ってよ! 置いてかないで――」

 ガバッ

シンジ「……夢?」

----

シンジ「え? 鞠絵ちゃんがしばらく入院?」

可憐「そうなんです」

春歌「入院と言っても、星見ヶ丘学園の大学病院ですからいつでも会いに行けますよ」

アスカ「本当に何でもあるわね、ここのがっこーは」

シンジ「それじゃあ、ミカエルの世話は?」

咲耶「お兄様、ミカエルは介助犬だから鞠絵ちゃんと一緒に大学病院へ行くわ」

鈴凛「鞠絵ちゃん、ここに来る前も入院してたらしいし、きっとここ数日は無理してたんだね」

千影「……『悪魔』か……憎しみ……破滅……」

アスカ「あんちゃん、ちゃんと鞠絵ちゃんのお見舞いにいきなさいよ?」

シンジ「わ、わかってるよ! ……っと」

 ピシッ

シンジ「あ、ご、ごめん、千影ちゃん」

千影「……これは?」

千影「……『悪魔』が……逆位置に……新たな出会い、回復……」

千影「……ふふ……面白いことに……なると……思うよ」

--病院--

 てくてく

鞠絵(ああ、せっかくこの島に来て兄上様と一緒に暮らせるのにわたくしはまた病室――)

ミカエル「……」

看護士「この病室で、相部屋になります」

鞠絵「はい」

 ガラガラ

少女「わあ、おっきな犬!」

看護士「サクラちゃん、ベッドに戻って。 早くよくなりたいなら安静ですよ」

少女→サクラ「でも、今日から相部屋っていうから気になって――」

鞠絵「こんにちは。 今日からお邪魔します、鞠絵といいます」

サクラ「わたしサクラ。 鈴原サクラ!」

--高校--

ミサト「はい、それでは今日のホームルーム終了! みんな気をつけて帰ってね」

ミサト「それじゃ、先生は職員室に――」

 グイッ

シンジ「葛城先生、いい加減逃げないで話してください」

ミサト「えーと、そういってもさぁ、あたしただのヒラ教師だし、ほんと、何もしらないのよ」汗

シンジ「何も知らないのにあんなことしたんですか? それなら立派な犯罪ですよね?」

ミサト「いや、それはお父さんの許可をもらって……っていうか当然、碇司令の命令よ」汗



 ザワザワ

生徒A「碇司令?」

生徒B「あのネルフの?」

生徒C「じゃあ、碇くんって碇司令の……」

生徒D「この学園ってネルフのひも付きだしね」

生徒A「それじゃ、碇くんのお父さんが強引に入学させたってこと?」

 ザワザワ

ミサト「あ、えーと、この話は場所を移しましょうか?」

シンジ「良いですけど、逃げないでくださいよ」

 てくてくてく

???「おい、ケンスケ。 あいつが碇司令の息子ってホンマか?」

ケンスケ「ああ。 そうらしいよ」

???「そうか……」

--面談室--

ミサト「だからー、あたしは碇くんを連れて来いってことしか聞いてなくて――」

シンジ「それじゃ、妹たちのことも何も知らないんですか?」

ミサト「うん。 そりゃそうよ。 なんせ船着場まで運んだらあとはこっちがやるってネルフの人が言うし」

ミサト「シンジくんに妹が12人もいるっていうのも、担任用の資料を見て初めて知ったんだから」

シンジ「え? 13人ですよ?」

ミサト「え、あれ? そうだったの?」

ミサト(おかしいわね。 ネルフの事前資料では確かに12人だったはずだけど……)

シンジ(人数を間違うなんて、この先生は本当にちゃんとした情報をもらっていないのかな?)

シンジ「わかりました。 もっと偉い人に聞いてみることにします」

シンジ「お父さんの命令ってことは、たぶん冬月学園長も知ってますよね?」

ミサト「いや、ちょっとそれは……」

 ガラガラ バタンッ

ミサト(あちゃー、まずいわねぇ、いろいろ)

----

ケンスケ「碇くん、ちょっといいか?」

???「……」

シンジ「いいけど、横にいるのは同じクラスの……鈴原くん……だっけ?」

 てくてくてく

アスカ「ん? あいつら?」

可憐「……」




--屋上--

 バシィ

鈴原「すまんのぉ、ワイはお前をなぐらなあかんのや」

シンジ「……事情は知らないけど、これ以上はやめたほうが良いよ」

鈴原「はぁ!? なんやその態度は! えらそうにしおって!」

ケンスケ「いや、トウジ。 僕も同意見だ」

鈴原→トウジ「は? なんでや」

ケンスケ「それは――」

 ダダダッ

春歌「春歌、参ります!」

 斬ッ!

トウジ「わわっ、なんやいきなりこの女――って、ワイのジャージが!」

ケンスケ「おお、いきなりパンツ一丁にされたか」

 シューッ

トウジ「なな、ミサイルやて!?」

 ドゴーンッ

トウジ「コホッコホッ」

ケンスケ「まるでドリフのコントみたいな焼け方だね」

鈴凛「アニキを殴るなんて許せない!」


トウジ「な、なんなんやコイツラ」

 ダダッ

 ガチャリッ

トウジ「って、手錠!? ヒモ付き!?」

四葉「ちぇーき、ちぇきちぇきちぇき! 兄チャマをいじめる奴は名探偵四葉が決して逃がしまセン」

咲耶「よくやったわ、四葉ちゃん。 ……鈴原とやら、覚悟しなさい!」

 ドガドガドガドガッ

トウジ「あだだあだだっ!」

ケンスケ「うわー、ヒール連打、痛そう」

アスカ「一部の男はかえって喜ぶんじゃないの?」

ケンスケ「……キミは参加しないの?」

アスカ「頼まれてもしないわよ」

千影「……フォルとウォーダン駒にて……バルドルの駒の……骨は骨へ……」

トウジ「な、なんや!? 足元に魔方陣が!?」

千影「兄くんに暴力を振るった罪を永遠に購うがいい。 未来永劫、キミの魂は呪われる」

ケンスケ「うわっ、なんか本当にやばそうなの来た!」

ケンスケ「ほら、トウジ、早く謝って。 そうしないと後7,8発は飛んでくるよ」

トウジ「ひいいぃぃ、スイマセンしたー! もう二度とせーへん、勘弁してくれ」

咲耶「だって、どうする?」

四葉「まだまだ足りない気がしマス」

シンジ「いや、あの、お願いだからこのぐらいでやめてあげて、本当に死んじゃうから」汗

千影「……兄くんが……そう言うなら……魔法陣の……止めよう」

トウジ「は……はは……わぁああああああ!」号泣

ケンスケ「だから言ったのに」

アスカ「それこそ殴ってでも止めるべきだったんじゃない?」

 ツカツカツカ

可憐「それでは鈴原さん、事情をお聞かせ願えますか?」

 キラーンッ

シンジ「って、可憐ちゃん、何を握って!?」

可憐「ただのアイスピックです、お兄ちゃん」ニコッ

トウジ「あ……あああ……あ……」

 カクンッ

アスカ「あ、気絶した」

--病院--

鞠絵「それで、ハックル・ベリーは――」

サクラ「うんうん、それで?」

鞠絵「でね、トム・ソーヤが――」

サクラ「おもしろーい」

看護士A(二人とも仲良くなってよかった)

 ガラッ

看護士B「急患よ! Aさんも手伝って」

看護士A「なにこれひどい! やけどに打撲に……」

トウジ「魔法陣が、アイスピックがぁ!」

看護士B「精神もかなり錯乱しているわ!」

サクラ「あれ? 今の声、お兄ちゃん」

鞠絵「まぁ、サクラちゃんにもお兄さんが?」

--鞠絵とサクラの病室--

鞠絵「コホンッ、みんないくらなんでやりすぎです」

サクラ「お兄ちゃん……」涙

鈴凛「……ごめんなさい」

咲耶「妹を大切にするお兄さんだと知っていればここまでは……」

千影「……精霊たちに……トウジくんの……回復を……」

春歌「私も責任をもってトウジさんが回復するまでの介助をいたします」

可憐「でもどうして、トウジさんはお兄ちゃんを殴ったりしたの?」

鞠絵「それはですね――」

サクラ「うちが言う!」

鞠絵(あ、地は関西弁なのですね)

サクラ「うちな、使徒とネルフの戦いに巻き込まれて大ケガしてもうてん」

サクラ「それでお兄ちゃんネルフのこと恨んでて――」

サクラ「うちがここで治療受けられるのもネルフのおかげや言うても全然きかへん」

 ……

咲耶「うっ、あたしはなんてことをそんなに妹を大切にする人だったなんて!」涙

鈴凛「ごめんなさい、サクラちゃん、本ッ当にごめんなさい」泣

春歌「散りぬべき 時知りてこそ世の中の――」

アスカ「ちょ、春歌ちゃん、それ辞世の句!? いや、ナイフ取り出しちゃダメだから!」汗

千影「春歌くん……介錯しよう……毒薬で……すぐに後を……」

アスカ「切腹に乗っかっちゃダメ!」

可憐「可憐、おまわりさんにすべての罪を告白して来ます」

アスカ「って、火サスじゃないんだから!」

----

シンジ「鈴原くん、大丈夫!?」

ケンスケ「トウジ、無理に起き上がるなよ」

トウジ「……わいはもう大丈夫や」

医者「致命傷ならないように絶妙に手加減されてるね。 安静にすればすぐになおるよ」

シンジ「よかったぁ。 鈴原くん、本当にごめん! 妹たちが暴走して――」

トウジ「あやまらんでええ。 むしろ謝るのはワイの方や」

ケンスケ「ん?」

シンジ「いや、そんなことはないよ」

 ガバァッ

ケンスケ「え? 土下座!? トウジ、どうしちゃったの?」

トウジ「碇さ……いや、センセイと呼ばせてください!」

シンジ「え?」

トウジ「あれだけ妹に愛されとる言うことは間違いなくええ男や」

トウジ「そんな男に直接関係の無いことで勝手にうらんで殴るなんてわいは最低やった」

シンジ「え、そ、そんなことないってば。 僕はただ――」

トウジ「謙遜せんでええ! わいはセンセイを尊敬しとるんや」

ケンスケ「先生、トウジの頭に後遺症無いか、よく確認しましたか?」

医者「うーん、もう一度検査してみるかな」

シンジ「ちょ、相田くん、これどうしたら?」

ケンスケ「ま、ぶん殴られるよりはいいんじゃないの?」

シンジ(まあ、それはそうかな)

トウジ「センセイ、ただしやで。 あの妹たちを一人でも泣かせたら承知せーへんからな」

シンジ「え」(ますます逃げられなくなった?)

医者「うーん、いちおう脳波は正常かなぁ」

シンジ「あ、先生、その机の上の写真は?」

医者「これかい? 古い写真だよ。 十年ぐらい前の患者の家族だ」

シンジ(夢の中で見たのとそっくりな女の子と、僕?)

トウジ「あれ? これセンセイに似とるなぁ」

ケンスケ「でも、こんな妹さんはいなかったよね?」

シンジ「いない……と、思うんだけど……」


今日はここまで

深夜とお酒の勢いでちょっと暴走しちゃいました、てへっ☆

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 てくてくてく

シンジ「……門前払いされちゃった、さすがにいきなり学園長は無理かぁ」

生徒A「お願いしまーす」スッ

シンジ「このプリントは? あ、部活動の勧誘だ」

--教室--

シンジ「へぇ、可憐ちゃんはもう音楽部に入ったんだ?」

可憐「「はい。 お兄ちゃんに可憐のピアノを聞いてもらいたくて」

シンジ「どうしいよう、僕も音楽部にしようかな?」

アスカ「あんた、何か楽器なんてひけたの?」

シンジ「うん。 チェロを少し……あまり上手くないけどね」

可憐「チェロ……お兄ちゃん、オーケストラをやってらしたんですか?」

シンジ「いや、オーケストラはしたことないよ。 ほとんど独奏かピアノ伴奏ぐらいで」

アスカ(オケ部にも入らずチェロなんてマイナー楽器? こいつやっぱどっかおかしいのよね)

アスカ「素養があるのは分かったけど、音楽部はやめた方が良いんじゃない?」

シンジ「え? どうして?」

アスカ「はぁ、本っ当に鈍いあんちゃんね」

アスカ「ただでさえ可憐ちゃんが同じクラスで嫉妬の対象なのに部活動まで一緒とか――

アスカ「せっかく一致団結してくれてる妹たちの輪を乱したいの?」

シンジ「あ、そっか……」

可憐「もし部活動も一緒なら可憐はうれしいけど、アスカちゃんの言ってる通りだと思います」

可憐(でもアスカちゃん、なんで自分は外すんだろう?)

可憐(長女のアスカちゃんがお兄ちゃんを独占しようとしないから、みんなワガママ言わないけど)

可憐(アスカちゃんはそこまで分かって我慢してるのかな? それとも――)

ケンスケ「碇くん、迷ってるならサバゲ部に入ってよ」

シンジ「サバゲ部? そんなのあったの?」

ケンスケ「僕が作った。 まだ正式には認められて無いけど、トウジも部員だろ」

トウジ「おう、センセイもはいってくれや」

シンジ「そういえば、二人とも仲良いみたいだけど――」

ケンスケ「ああ、トウジとは中学も一緒だからね」

トウジ「ま、腐れ縁やな」

シンジ「そうなんだ……サバゲ部はちょっと考えさせて」

ケンスケ「なんで? サバゲってけっこう楽しいよ?」

シンジ「たとえば、部活動で僕がケガしたりしたら――」

トウジ「!?」

トウジ「わ、わかった。 センセイは入らんほうがええわ」

ケンスケ(ばっちりトラウマになってる)

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部長「花穂さん、反省だけならサルでもできてよ! もっと機敏に!」

花穂「はい! こうやって……あっ、また落としちゃった」

部長「……はぁ」

シンジ「花穂ちゃんはすぐにチア部に入ったけど、結構スパルタだなぁ」

花穂「あ、お兄ちゃま! ファイトー!!」

部長「花穂さん! よそ見せずに集中……って、今のファイトはなかなか上手くできてるわね」

シンジ「はは……花穂ちゃんもがんばってね」

シンジ(あれだけ言われてもくじけないなんて、花穂ちゃんはああ見えて強いんだな)

----

生徒B「すごい、衛ちゃん、うちの部はじまって以来の記録だよ!?」

衛「へへ、ぼくは走るのは好きだから」

コーチ「こりゃ、今年は県大会勝てるかもなぁ」

シンジ(衛ちゃんは陸上部か。 すごいな、部の期待の星なんだ)

衛「あ、あにぃ! あにぃも一緒に走ろうよ!」

シンジ「え……いや、僕は走るのはちょっと」

----

春歌「……」スッ

部員「では……けっこうなお手前でございます」

シンジ(春歌ちゃんは茶道部……雰囲気あるなぁ)

春歌「それでは、私は今日はここまでで」

シンジ「ん?」

部員「次はナギナタ部へ行くのよね、がんばってね」

春歌「はい!」

シンジ(掛け持ち!?)

春歌「あ、兄君様! 私の部活動を見ていただいていただなんて――」

シンジ「あ、ごめん、そののぞき見るつもりじゃなかったんだけど」

春歌「とても、うれしゅうございます。 もしよろしければ私と一緒にお茶など……ポポポ」

シンジ「えーと、早く次の部活動に行ったほうが良いんじゃないかな?」

----

生徒C「すごい、ごはん一粒一粒にきちんとタマゴがコーティングされてる……」

顧問「それだけじゃない。 具材の大きさと歯ごたえまで均一にそろえている」

顧問「黄金チャーハンをここまで完璧に作れる料理人は滅多に居ないだろう」

白雪「ふふ……姫の料理はいつだって完璧ですの」

シンジ(白雪ちゃんは料理部。 ……え? 白雪ちゃんってそんなにすごかったの!?)

顧問「ただ……この具材は……」

白雪「はい。 食用ミミズと鯨の胆石ですの!」

生徒C「あの、わたし試食は遠慮します」

顧問「技術はプロ以上なんだけどね、技術は」



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生徒D「きゃあああーっ!!」

部長「も、もうやめてくれ」ガクガクブルブル

千影「……どうしたんだい……この程度は……魔術の……初歩だよ……」

シンジ(えーと、千影ちゃんは予想通りオカルト研究部)

生徒D「もういや、あたしやめます!」

部長「ちょっと待ってくれ、Dくん!」

千影「やれやれ……魔術を……見せてくれといって……この程度で……おどろくとは……」

部長「ひいい! わ、わかった、この部はもうキミのものだ! 今日からキミが部長!」

部長「だから、オレももういやだぁああああーーー!!」

 ダダッ

千影「……おや……兄くん」

シンジ「や、やあ、千影ちゃん」汗

千影「今さっき……部長に就任したが……部員がいなくなってしまった」

千影「兄くん……オカルト研究部に……入らないかい……心地よい闇が……待っているよ」

シンジ「あ、あはは……遠慮します!」クルッ

 ダダダダッ

----

四葉「いいデスか、探偵というのはいつも細かいところに注意を――」

低学年「うんうん!」

四葉「絵があれば裏を調べたり、花瓶の下なんかもよくチェキして――」

低学年「へー、そーなんだ!」

シンジ(四葉ちゃんは、低学年の子を相手に遊んであげてるのかな?)

四葉「それでは、ここに四葉少年探偵団設立デス! 正式に探偵部として申請するデス」

低学年「「おー!!」」

シンジ「……なんか変な部つくってる」

四葉「あ、兄チャマ! 兄チャマも少年探偵団に――」

シンジ「えーと、ごめん。 ちょっと、他も見てからに……」汗

----

咲耶『ハァイ♪ 今日のお昼休みはボサノヴァでムーディにかつリラックスして楽しみましょうね』

部員「はい、オッケー。 機材係、CDまわして!」

咲耶「どうだったかしら、私のアフレコ?」

部員「うん、カツゼツは良いし、明るくてよく通る声だから向いてるね、でももうちょっとノリをソフトに」

咲耶「オーケー、チャレンジ、ネクストタイム!」

部員「お、今のジングルっぽくていいね」

シンジ(咲耶ちゃんは放送部。 なんか、華のある感じだなぁ)

咲耶(あ、お兄様!)

 チュッ

シンジ「わ、投げキッス」//////

--夜、アスカの部屋--

 カタカタカタ

アスカ「……で、鞠絵ちゃんは文芸部だけど今は入院中」

アスカ「亞里亞ちゃんと雛子ちゃんはまだ部活に入る年齢じゃない」

アスカ「今のとこ、何にも入ってないのはあたしとアイツと……あ、あと鈴凛ちゃんね」

 コンコンッ

アスカ(おっと、ノートパソコンを隠して)

アスカ「はぁい、どうぞ。 入って良いわよ」

 ガチャ

鈴凛「ごめんね、アスカちゃん。 こんな夜中に」

アスカ「別にいいわよ。 それで、どうしたの?」

鈴凛「あのさー、アスカちゃん、何か部活とか入った?」

アスカ「ううん。 まだ何にも。 なんか、どこもレベル低いのよねー」

鈴凛「へへ、さっすが。 たしかアスカちゃんはもう大学出てるんだよね?」

アスカ「まあね。 あたしにとっては、そんなの余裕よ」

鈴凛「専攻は?」

アスカ「生物工学。 卒論は、教授に修士論文並みだってほめられたんだから」

鈴凛「生物工学! よかった、ちょうどあたしが知りたかったとこだ」




アスカ「知りたかった?」

鈴凛「うん。 あたしの今作りたいものがね、生物工学必要なんだ」

アスカ「何作る気か知らないけど、さすがに一から教えるなんて無理よ?」

鈴凛「それは分かってるよ。 ……だからさ、今度一緒に大学の研究室に行ってみない?」

アスカ「え?」

鈴凛「星見ヶ丘の大学にすごい先生がいてさ、まだ準教授なんだけど――

鈴凛「情報工学・機械工学・生物工学ぜんぶ出来るって」

アスカ「へぇ……すごいじゃない」

鈴凛「あたしも中学の授業じゃ全然足りないし、アスカちゃんも高校レベル越えてるし――

鈴凛「二人でお願いしてさ、その先生の研究室に入れてもらわない?」

アスカ「うんうん、面白そう! 正直、高校の授業は全っ然物足りなかったのよ!」

鈴凛「それじゃ、明日さっそく行ってみようよ!」

アスカ「うん、おっけ……あ」

アスカ(ついオーケーって言いそうになったけど、あたし任務でここにいるのよ)

アスカ(いくら授業が物足りないからって任務と関係ない研究欲満たしてどうするのよ)

アスカ「えーと、ごめん。 ちょっと考えさせて、明日の朝には返事するから」

鈴凛「……わかった。 また明日ね」

----

アスカ「――と、言うわけで、大学の研究室に言ってみたいんだけど」

加持『良いんじゃないか? せっかくの機会だ。 しっかり勉強もしたらいい』

アスカ「え? でも、任務はいいの?」

加持『監視対象の一人を課外活動でも監視できるわけだ。 何の問題がある?』

アスカ「それじゃあ、ほんとにいいのね!?」

加持『ああ。 しかし、大したはしゃぎようだな』 

加持『姉妹のふりしてるのにこういうのも変だが、その子と友達になったのか?』

アスカ「……友達……そう、なのかな……?」

加持『諜報活動だからって、友達つくるのを遠慮することはないんだぞ』

アスカ「……うん」

加持『ところで、その準教授の名前は?』

アスカ「ええと、赤木準教授。 フルネームは赤木リツコだって」

加持『ふーん、そうか』

加持(まさかとは思ったが、ここでりっちゃんときたか)

--シンジの部屋--

シンジ(みんな、一生懸命何かに向かってがんばってたな)

シンジ(おかしな方向の子もいたけど、それでも何かになりたくて、なろうとして――)

シンジ(僕は、どうしたいんだろう? 何になりたいんだろう?)

シンジ(父さんのように偉くなりたい? ただ父さんに認めてもらいたいだけ?)

シンジ「僕は……」




今日はここまで

シスプリのアニメでは山口勝平も出てたりします


シンジ「葛城先生、もうちょっとちゃんとした話を――」

ミサト「ごめんなさい、碇くん、先生今から会議だから」汗

 ダダッ

シンジ「くそっ、また逃げられた」

----

生徒A「えいっ」

 ビシンッ

シンジ「わっ、とっ……」

 スカッ

トウジ「テニスもあかんなぁ。 センセイ球技自体向いてないんとちゃうか?」

シンジ「……うん」

----

シンジ「……はぁ、最近あまり上手くいかないなぁ」

ケンスケ「そうかい? 妹さんたちに追い回されて他に何も出来ないってこともないみたいだし」

ケンスケ「余裕が出てきたからそう思えるようになっただけじゃないのかな?」

シンジ「そうかも」

亞里亞「にーいーやー」

雛子「おにいたま、いっしょにかえろう」

シンジ「ああ。 そうしようか」

雛子「あのね、帰ったら絵本よんでね」

亞里亞「……」キュッ

シンジ「うんうん」

ケンスケ(小さい子の扱いは慣れてきたみたいだな)

----

鈴凛「お願いします、赤木先生」

アスカ「私も、お願い! 研究室に入れてください!」

リツコ「惣流さんの論文はざっと読んでみたけど、たしかに読み応えがあるわ」

リツコ「それに、鈴凛さんのこのロボット――」

鈴凛「プロトロボって言います」

プロトロボ「……」

リツコ「機械工学的な面に目が行きがちだけど、情報工学的にも価値がありそうね」

リツコ「これだけのAIは大学院生でもなかなか作れないわ」

鈴凛「それじゃあ――」

リツコ「ええ。 二人とも私の研究室に来て良いし、必要なら講義にも出なさい」

アスカ「やったぁ!」

鈴凛「えへへ、やったね!」

リツコ「ただし、高等部や中等部の授業もサボらないこと」

アスカ「えー、なんで? いいじゃない別に」

リツコ「ダメよ、惣流さんだって全教科ずば抜けて良い訳でもないみたいだし――」

リツコ「鈴凛さんの場合は得意分野以外は全然ダメじゃない」

鈴凛「あちゃー、バレてた」

リツコ「今の時代、専門家だって総合力を問われるのよ? 苦手なこともきちんと勉強しなさい」

アスカ&鈴凛「「はーい」」



----

リツコ「……と、いうわけで被検体ナンバー8が自ら私に接触をしてきました」

冬月「しかも、、例の惣流アスカを伴ってか……感づいているのかもしれぬな」

ミサト「碇シンジくんも必死で食らいついてきて、もう逃げるのも限界です」

ミサト「もう少し、本人たちに情報公開した方が良いんじゃないでしょうか?」

リツコ「惣流さんの正体が分からない現状でそれはできないわ」

リツコ「彼女に言った情報がそのまま第3者へ漏れる可能性があるんだから」

ミサト「せめて碇くんだけでもどうにかなんない?」

リツコ「そうね、他の被検体たちは特にこの島での暮らしに大きな不満はない以上――

リツコ「彼さえ抑えておけば計画に支障はないわ」

冬月「……碇の計画に、碇の息子だ。 碇本人にやらせるか」

ミサト「実は冬月学園長も面倒くさがってますよね?」

--シンジたちの教室--

 ピン ポン パーン

トウジ「お、校内放送」

放送『お兄様、大変よ! 学園長がお兄様を呼んでるって!』

可憐「今のは、咲耶ちゃんの声でしたね、お兄ちゃん」

アスカ「なに、思いっきり放送を私物化してんのよ、あの子」

シンジ「あ、あはは……」

ケンスケ「学園長から呼び出しくらうって、何かやったの?」

シンジ「お叱りじゃないとは思うけど……」



--学園長室--

冬月「どうしたんだね? そんなに小さく固まって」

シンジ「……は、はい」

冬月「きみから私に会いたいと言ってきたのではないのかね?」

シンジ「あの……どうして、僕は受験もしていないこの学校に通っているのですか?」

冬月「碇司令の指示だ」

シンジ「父さんは、僕にいったい何をしろと――」

冬月「さあな。 学生なのだから勉強をすればいいのではないのかね?」

シンジ「それじゃあ、あの妹たちは何なんですか!?」

シンジ「今まで15年間、、僕に妹がいるなんて一言も聞いたことが無かったのに!」

シンジ「なんで父さんはそんなことを隠していたんですか!?」

冬月「悪いが、君の家庭の事情までは私には分からない」

冬月「上官の家庭事情でもあるからな、不用意に触れることもできんよ」

シンジ「それじゃ、学園長室にまで呼び出して、何も答えるつもりは無かったんですか?」

冬月「やれやれ……どうしてもというのなら、本人に聞きたまえ」

 スッ

シンジ「……受話器?」

冬月「ネルフ本部、司令官との直通電話だ」

シンジ「まさか、父さんと?」

冬月「ああ、つながっている」

シンジ「……」

 ガチャリッ





シンジ「父さん、父さんなの!?」

ゲンドウ『……そうだ。 何の用だ?』

シンジ「……どうして、僕をここの学校へ入れたの?」

ゲンドウ『お前が志望校に落ちたからだ』

シンジ「それじゃ、高校ならどこでも良かったの?」

ゲンドウ『ああ、そうだ。 たまたまそこがコネを使いやすかっただけだ』

シンジ「それ……だけ?」

ゲンドウ『そうだ。 ネルフ司令の子が高校浪人では私の沽券にかかわるからな』

ゲンドウ『今後はくれぐれも、俺に迷惑をかけるな』

シンジ「そんな、答えになってないよ!」

ゲンドウ『だが、真実だ』

シンジ「それなら、あの妹たちは父さんの子なの? 本当に僕の兄妹なの!?」

ゲンドウ『答える必要は無い』

シンジ「それじゃ、あの――」

ゲンドウ『ここまでだ。 俺には無駄話をしている時間は無い』

シンジ「そんな、でも父さんは――」

ゲンドウ『二度とこんなつまらないことで時間をとらせるな』

 プッ ツー ツー ツー

シンジ「……父さん……」



--ウェルカムハウス--

シンジ「ただいま……」

春歌「お帰りなさいませ、兄君様」

衛「あにぃ……どうしたの、浮かない顔で?」

シンジ「ううん、なんでもないよ」

白雪「兄さま……何があったですの?」

花穂「お兄ちゃま、ガンバ!」

シンジ「何でもないってば! 放っておいてよ!」

白雪「え」ビクッ

花穂「お……お兄ちゃま……」

 ポトッ(ポンポンを落とす)

シンジ「あ、ご、ごめん……」

咲耶(やっぱり学園長にしかられたのかしら?)ヒソヒソ

可憐(でも、お兄ちゃんは学園長さんに叱られるほどのことしてないと思うの)ヒソヒソ

四葉「……四葉のカンでは、きっと兄チャマは寝不足なのデス」

衛「そ、そうかな?」

千影「『月』……欺瞞、幻惑、現実逃避……兄くん、惑わされないでくれ……」

----

シンジ(僕にはやっぱり、勉強しかないんだ)

シンジ(うんと勉強して、父さんを見返すしかないんだ)

シンジ「そうしないと……僕には……価値が無い……」



今日はここまで

アスカ「ふーん、あいつが最近部屋にこもって勉強ばっかりねぇ」

アスカ「別にいいんじゃない? もともと根暗な感じだし、その方が気楽なんじゃないの?」

咲耶「アスカちゃん、目玉焼き焦げてる」

アスカ「あっ、なによこれ! はがれないし! あー、むかつくわね」

春歌「アスカちゃんに朝食係は無理そうですね」

白雪「姫がやりますの!」

咲耶「そうね。 白雪ちゃんと毒見役に誰か組ませるのが無難かしら」

アスカ「あたしも賛成」

春歌(アスカちゃん、あきらめるのは早いんですね)

----

ミサト「はい、ホームルーム終了! みんな気をつけて帰ってね」

生徒一同「はーい」

ケンスケ「よっし、今日はこのあとサバゲー用具の買出しに」

トウジ「あ、わいは妹の見舞いにいくからパスで」

ケンスケ「それでも部員かよ!」

アスカ「あたしも、赤木先生のとこいかないと」

可憐「可憐はピアノの練習に……」

トウジ「センセイはどうや? 鞠絵さんもおるんやし一緒に見舞いに行くか?」

シンジ「……ごめん、やめとくよ。 昨日も行ったところだし」

可憐「お兄ちゃん……」

シンジ「可憐ちゃん、アスカちゃん、先に帰るね」

アスカ(楽で良いけど、監視のしがいはないわね)

----

雛子「おにいたまー、いっしょにかえろう」

シンジ「……ああ」ペラペラ

雛子「おにいたま、おべんきょうの本ばっかり見てる」

シンジ「……ああ」ペラペラ

雛子「むー」

 ペシンッ

シンジ「あっ! ダメだよ、参考書をたたいちゃ! あー、地面に落ちちゃった」

雛子「つまんないー!」

----

花穂「お兄ちゃま、お部屋にこもってばかり」

衛「あにぃ、やっぱりこの間に何かあったのかな?」

アスカ(……この辺でカマかけてみるか)

アスカ「もしかしたら、父親のことで何かあったのかもね」

春歌「兄君様の、父君様!?」

四葉「……って、誰デスか?」

アスカ「え?」

アスカ(もしかしてこいつら自分たちの父親すら知らないの?)

アスカ(じゃあ何をもってきょうだいだって言ってるわけ?)

可憐「碇……ゲンドウさんですよね?」

咲耶「ああ。 新聞やニュースで聞いたことはあるわ」

鈴凛(ふーん、アスカちゃんはそう予測してたんだ)




可憐「せめて、何かお兄ちゃんの気晴らしにでもなるものがあったら良いんだけど」

白雪「兄さまの気晴らしって何デスの?」

衛「ランニングしたらきっとすっきりするよ」

春歌「やはり、生け花で心身をおちつかせて……」

咲耶「何か違う気がするのよねぇ」

千影「……『魔術師』……チャンス、才能……ふふ……」

 ブーンッ コトンッ ブーンッ

四葉「いま何か、郵便受けに入ったデス!」

アスカ「ああ、四葉ちゃんとってきてよ」

四葉「はーい」

 タッタッタ

四葉「……これはっ!?」

衛「四葉ちゃん、ッ大丈夫?」

四葉「星見ヶ丘学園トラ芸際……?」

花穂「とら芸?」

咲耶「……ああ、きっと演芸のことね」

春歌「演芸ならなんでもいいのですか?」

四葉「えーと、とくに制限は書いていないデス」

花穂「それじゃあ、花穂、お兄ちゃまとお芝居とかしてみたいね」

咲耶「うん、いいわね、それ。 きっとお兄様も――」

千影「……チェロ」

可憐「そうか、チェロですよ! お兄ちゃんの気晴らしって音楽です!」

アスカ「ああ。 そういやそんなこと言ってたわね」

鈴凛「それなら、演奏でこの演芸祭に出るって言えばアニキも協力してくれるかもね」

咲耶「それよ! お兄様といっしょにできるはずだわ」

----

可憐「♪ ♪ ♪」

アスカ「ふぅん、可憐ちゃんはピアノね。 楽曲はジムノペディ」

可憐「はい、とっても落ち着いて、可憐の好きな曲です」

 ぺんっ ぺんっ

春歌「♪ ♪ ♪」

アスカ「春歌ちゃんは和琴」

春歌「ええ。 兄君様に恥ずかしくない妹でいられるように、たしなんでおりました」

千影「♪ ♪ ♪」

アスカ「透明のバイオリン!?」

千影「ふふ……ガラス製だよ……兄くんを……安らかに……眠らせるためのね……」

アスカ「え……ええ。 そう」

鈴凛「アンプで音量を調整して、あ、四葉ちゃん、そのスピーカーは向こうに運んで!」

四葉「はい、細かいところまでしっかりチェキです!」

アスカ「鈴凛ちゃんと四葉ちゃんは音響機器やエフェクト担当ね」


アスカ「年少組はカスタネットでもさせるとして……咲耶ちゃんは何すんの?」

咲耶「ふふ、放送部として私は普段からボイストレーニングしてるのよ。 だったら、ひとつしか無いじゃない!」

アスカ「ふーん、ボーカルね」

咲耶「♪ ♪ ♪」

アスカ「ふぅん、まあまあやるじゃない」

亞里亞「あーりーあーもーうーたーうーのー」

アスカ「あんたみたいにゆっくりじゃ、歌ってるうちに日が暮れ――」

亞里亞「♪♪♪Ave Maria, gratia plena♪♪♪」

アスカ「ん?」

咲耶「え?」

亞里亞「♪♪♪et benedictus fructus ventris tui, Jesus♪♪♪」

アスカ「アヴェ・マリアを完璧に……」

咲耶「す、すごい、ただ歌うだけじゃなくて高音域にビブラート利かせてる……」

アスカ「メインボーカルはこの子しかないわね、こりゃ」

 ガラッ

シンジ「今日はさわがしいな……みんな何してるの?」

アスカ「やっと、お出ましになったわね、バカあんちゃん。 天の岩戸じゃないんだから」

シンジ「え、え? なんのこと?」

可憐「お兄ちゃん、可憐たちと一緒に演奏しませんか?」

四葉「ふふ、こういうのがあるデスよ」

 つ『演芸祭のチラシ』

シンジ「演芸祭? 豪華賞品?」

鈴凛「アニキ、やってみたら楽しいと思わない?」

春歌「私も兄君様のチェロと合わせてみたく思います」

シンジ「ピアノに、バイオリンに、和琴……それにこの音響設備」

シンジ「ボーカルもすごいし、こんな構成で僕のチェロなんて……」

咲耶「お兄様なんかじゃないの。 みんな、お兄様としたいのよ」

シンジ「でも……僕は……」

アスカ「あんたまだそんなこと言ってんの? そこまでこの子達の努力を無にしたいわけ?」

アスカ「本っ当にバカなんじゃないの?」

シンジ「そ、そんなことないよ。 やるよ! チェロひくよ!」

シンジ(なんだか変なことになってきたな)









今日はここまで

ttp://www.at-x.com/images/program/f0873e12e34767a8b0eb404448adb275.jpg
シスプリ1期アニメの公式絵をひとつ

アニメ二期の絵


絵のクオリティは二期が上です
ただし、一期のようなにぎやかさはありません

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春歌「ピアノ三重奏を編曲して――」

可憐「それじゃ可憐がメインになっちゃうから、お兄ちゃんにもっと――」

花穂「花穂と衛ちゃんはマーチング風の振り付けを……」

衛「え? ぼくも!?」

咲耶「わたしはアルトまで下げるから、亞里亞ちゃんがソプラノでメインを――」

亞里亞「あーりーあー、にいやにーうたーうーのー」

鞠絵「わたくしが指揮でよろしいのでしょうか?」

千影「むずかしくは……ないよ……鞠絵くんの……感覚で……振ればいい」

白雪「姫と雛子ちゃんはトライアングルを鳴らしますの」

雛子「くしし……たのしみっ」

鈴凛「わたしが上手で操作するから、四葉ちゃんは集音器の移動と角度調整を――」

四葉「了解デス! 」

シンジ「……」

シンジ「なんだかどんどん話が進んでいく――」

アスカ「はい、あんたの楽譜できたわよ」

シンジ「あ、ありがとう……って、なにこれ!?」

アスカ「何か文句あんの?」

シンジ「こんなのおかしいよ、この楽器編成ならチェロはルート音担当じゃないの!?」

シンジ「なんで主旋律なの? それに独奏パートまであるなんてむちゃくちゃだよ!」

アスカ「あんたを立てたいっていうあの子たちの努力の結果でしょ」



アスカ「ルート音含めてコード演奏はピアノ、オブリガートに和琴を使ってオリエンタルな情緒を演出」

アスカ「バイオリンで高音部をフォローする。 で、主旋律は力強いチェロで。 合理的じゃない」

シンジ「……そういうアスカちゃんは何をするの?」

アスカ「事務手続き」

シンジ「そんなのズルイよ!」

アスカ「あんたバカぁ? あんたがボサッとしてた間に、あたしは出場申し込みや楽器の借用――

アスカ「運搬の車の手配、当日のお弁当まで、全部手続きすませたんだからね」

シンジ「え、そうなの?」

アスカ「あたしにここまでさせといてボサッとした演奏したらマジでキレるからね」

シンジ「う、うん……」

可憐(さすがアスカちゃん、お兄ちゃんを納得させちゃった)ヒソヒソ

春歌(あの言い方では「私のために弾きなさい」と言っているのと同じでは――)ヒソヒソ

咲耶(ツンデレキャラってやつね。 見事だわ)ヒソヒソ

鞠絵(本人に自覚はなさそうですけどね)ヒソヒソ

鞠絵「それでは、そろそろ外出許可時間の門限ですので、病院に戻りますね」

可憐「うん。 無理に来てもらってごめんね」

鞠絵「いえ、呼んでいただいてうれしいです。 病院でもしっかり練習しますね」

--演芸祭当日--

司会「それでは、はじめは星見ヶ丘学園サバイバルゲーム部のみなさんです」

シンジ「え」

アスカ「あー、あいつらも出るんだ」

 てくてくてく

サクラ「みなさん、こんにちは!」

観客「おお、かわいい!」

観客「10年後が楽しみだ!」

サクラ「ただいまより、演劇『戦場のメリークリスマスにかける橋』をはじめます」

観客「いよ、いいぞお嬢ちゃん」

 てくてくてく

観客「あれ? 退場した?」

 ざっざっざっ

トウジ「おいっち、に、いっち、に」

ケンスケ「いっち、に、いっち、に」

トウジ「隊員、整列!」

 ザザッ

ケンスケ「隊長、整列完了しました!」

観客「むさい」

観客「あつくるしい」

トウジ「じゃかあしいわ、だまっとれ!」




--中略--

ケンスケ「隊長、死なないでください、隊長!」

トウジ「わ、わいはもうあかん……」

ケンスケ「そんなことを言わずに、ここを突破すれば友軍が――」

トウジ「ええか、お前に最後の任務をくれてやる」

トウジ「生還し、故国におるわいの妹に伝えてくれ――」

ケンスケ「たいちょーーーーーーっ!」

 てくてくてく

サクラ「以上、終劇です」

 パチパチパチ

シンジ「二人とも気合のはいった演技だね」

アスカ「なにのんびり観客になってるの? 次はあたしたちよ!」

咲耶「みんな、いくわよ!」

白雪「おーっ! ですの」

鈴凛「スタッフさん、そっちの機材は上手に、ああ、それは正面でー―」

司会「つづきまして、ウェルカムハウスのみなさんです」


 パチパチパチ

シンジ(わ……舞台から見たらけっこうお客さんが多いや)ドクンッドクンッ

可憐(お兄ちゃんが――)

春歌(明らかにあがってますわ!)

千影(……『力』の逆位置……優柔不断、引っ込み思案)

鞠絵(ど、どうしましょう? 弾き始めは兄上様からなのに……)

咲耶(鞠絵ちゃん、とにかくはじめて!)

鞠絵「……はい」

シンジ(あれ……タクトが動いてるぞ……えーと、この構成の場合は……)

可憐(お兄ちゃん、体が動いてない!)

--裏方--

アスカ「……あのバカ!」

四葉「兄チャマ、やっぱり四葉のチェキしたとおり……」

アスカ「それって、あいつ……もとい、あんちゃんが発表会に出たことないって話?」

四葉「はい、そうデス! って、どうしてアスカちゃんがそれを?」

アスカ「あたしも調べたのよ」

アスカ「そしたら発表会はおろか、ピアノ伴奏以外の編成で弾いたことも無いわ」

アスカ「それがいきなりこの観客……あいつの性格じゃあがって当然じゃないかしら?」

四葉「そ、そんな……」

----

鞠絵(兄上様、どうして弾いてくださらないのですか?)

白雪(兄さま?)

雛子(おにいたま?)

亞里亞「……?」

咲耶(まずいわ、小学生の子たちにも動揺が伝わってきた)

シンジ(にげちゃだめだにげちゃだめだにげちゃだめだ……)ドクンッドクンッ

花穂(お兄ちゃま……)キッ

花穂「お兄ちゃま、ファイトーッ!!」

衛(え、叫んだ!? ……そうか!)

衛「ファイトーッ!! オーッ!!」

妹達(え?)

妹達「おーっ!」

シンジ(逃げちゃダメだ!!)

 キイィィ

 ブォーー

--裏方--

鈴凛「弾き始めたよ!」

四葉「やったデス!」

アスカ「勢いをつけて強引にふんぎらせたわけね……ま、あんたたちらしいわ」



----

 ♪ ♪ ♪

咲耶(花穂ちゃん、ナイスアドリブ)

 ♪ ♪ ♪

春歌(弾きだしたらスムーズに続いてますわ。 さすが兄君様)

 ♪ ♪ ♪

可憐(緊張していても体が覚えているんですね、これなら最後まで――)

 ♪ ♪ ♪

鞠絵(どきどきしましたが、なんとかなりそうですね)

 ♪ ♪ ♪

白雪(雛子ちゃん、こうやって順番にならすのですよ?)

 ♪ ♪ ♪

雛子(くしし……キンカンキンンカンたのしい!)

 ♪ ♪ ♪

衛(あにぃが緊張しなくなったら、いちばんあがってるのはボクかな)///

 ♪ ♪ ♪

花穂(衛ちゃんはその照れてるところがかわいい)

 ♪ ♪ ♪

亞里亞「♪ ♪ ♪ ♪」

 ♪ ♪ ♪

千影(兄くんは……まだ……緊張して……)

 ♪ ♪ ♪

シンジ(パレットをセンターに入れて引く、パレットをセンターに入れて引く――)

 ♪ ♪ ♪

観客「あの子、小さいのに歌うまいな」

観客「和琴が入るのも珍しいけど、チェロメインなのも珍しくないか?」

観客「あのバイオリン、透明?」

観客「踊ってる子たちもかわいらしいな」

--裏方--

アスカ「あい……あんちゃんのあの表情、過集中っていうか心が無い感じよね」

四葉「……ちょっと怖い顔してマス」

鈴凛「それでもこのまま行ってくれたらいいんだけど」

----

鞠絵(上手くいってください、どうか、このまま)ドキドキ

鞠絵(このま――あっ)

 クラッ

可憐(えっ!?)

咲耶(鞠絵ちゃんが指揮台から落ちた!)

白雪(そんな、ここに来て!)

春歌(あとちょっとですのに……)

千影(『塔』……崩壊、風前の灯……いや――)

 ブゥゥーン

可憐(鞠絵ちゃんの動きに合わせて音を伸ばしている!?)

咲耶(誰が!?)

春歌(兄君様が!)

可憐(可憐も、お兄ちゃんに合わせて)

 ♪ ♪ ♪

亞里亞「♪ ♪ ♪」ニコッ

咲耶(そうよ、このまま、問題ないわ!)

 ♪ ♪ ♪

観客「おお、クライマックスに来て曲調が激しくなってきた」

観客「すごい、指揮の無理な動きにちゃんと合わせてるぞ!」

 ♪ ♪ ♪

千影(『運命の輪』……転換期、チャンス)

鞠絵(これは!? 兄上様がわたくしのフォローを?)

鞠絵(それならば、わたくしもここで倒れられません!!)

 ザザッ

咲耶(鞠絵ちゃんが立ち直った!)

春歌(それどころか、動きがはげしくなっていますわ)

可憐(可憐もそれにあわせて弾かないと――)

 ♪ ♪ ♪

花穂(花穂も、負けてらんない!)

衛(恥ずかしいけど、ちゃんと動かないと)

 ♪ ♪ ♪

--裏方--

アスカ「うそ……あいつがリードして持ち直した?」

鈴凛「さっすがアニキ」

四葉「四葉ははじめから兄チャマをしんじてました!」


----

 ♪ ♪ ♪

 ジャン ジャンッ ジャーン

鞠絵「はぁ、はぁ……以上、ウェルカムハウスでした」

 パチパチパチパチパチ

鞠絵「あっ――」クラッ

 ガシッ

シンジ「大丈夫、鞠絵ちゃん?」

鞠絵「あ」///

鞠絵「はい、兄上様!」

----

アスカ「しっかし、あんたたちよく持ち直したもんよね」

咲耶「花穂ちゃんのファイトは良かったわよ」

花穂「えへへ」///

可憐「お兄ちゃん、緊張してらしたのにあれだけのアドリブをよくできましたね」

シンジ「へへ……緊張してたから、かな?」

シンジ「とにかく弾ききることしか考えてなかったから、そのままいっちゃったっていうか――」

雛子「ひなねー、ひなもねー、がんばったよー」

シンジ「うんうん、よくがんばったね」

鈴凛「鞠絵ちゃんは表彰台にあがるまで休んでてね」

鞠絵「はい……すみません……」

春歌「兄君様、みなさん、そろそろ結果発表ですよ」

司会「それでは、結果発表です!」

シンジ「うう、緊張するなぁ」

咲耶「大丈夫よ、きっと上手くいくわ」

司会「優勝は……星見ヶ丘学園サバイバルゲーム部のみなさんです!」

可憐「え?」

アスカ「うそ? まさかあれが?」

ケンスケ「やったぁ!」

トウジ「よっしゃー! やったで!」

サクラ「やったね、お兄ちゃん」

トウジ「サクラ、お前の力や!」

ケンスケ「賞品、賞品♪」

司会「おめでとうございます、記念すべき賞品は、こちらです!」

 ガバッ

シンジ「あれはっ!?」

白雪「おおきいですの」

四葉「チェキ!? なんデスかあの紫は?」

トウジ「……なんや、コレ?」

ケンスケ「これだよこれ! 超豪華賞品っ!!」

トウジ「なんやって聞いとるんや」

ケンスケ「あー、わかんないかなぁ、この一見華奢でありながら力強い人型フォルム!」

ケンスケ「肉感と金属感の交じり合う美しい造形」

ケンスケ「エヴァンゲリオン初号機、50分の1レプリカだよ!!」

トウジ「……こんなもんのために、ワイは」orz


アスカ「あれならいらなかったわね」

鈴凛「いいなぁ、あたしは欲しかったんだけどなぁ」

千影「ふふ……魂を……ひきつけられるね……」

アスカ「うそ? あんたたち本気で?」

司会「なお、努力賞は、ウェルカムハウスのみなさんです」

シンジ「え……?」

衛「やったよあにぃ!」

雛子「やったー!」

亞里亞「あーりーあー、うーれーしーいーのー」

シンジ「まさか……賞をもらえるなんて」

司会「どうぞ、賞品を受け取りに来てください。 一人ひとつずつございます」

可憐「これは……」

春歌「ハート型のペンダントでしょうか?」

四葉「ふむふむ……」ブンブンッ

 シャラララララ

花穂「きれいな音がする!」

千影「……ドルイドベル……ハーモニーボール……オルゴールボール……などと……呼ばれる」

千影「古代の……呪術師の……道具さ……」

シンジ「へぇ、千影ちゃん、物知りなんだね」

千影「……」///

アスカ「……みんな銀なのにあたしだけ金。 なんで?」

白雪「不思議ですの」

----

 カタカタカタ

『カヲルへ

 すごく疲れたし、緊張もしたけど

 みんなで何かをするって、案外、きもちいいかもしれない』


----

リツコ「――今回の件では、シンクロ率にはじめて有意な変化を確認できました」

ゲンドウ『ふむ、上出来だ。 このまま魂を励起させるところにまで持っていく』

リツコ「はい、かしこまりました……」

 プチッ

 ブンッ

リツコ「皮肉なものね……結束を強めることが滅びにつながるなんて」

今日はここまで

すいません、今日はムリポです

アーッ!!

アスカ「……」

 カタカタカタ

『相変わらず騒がしい日々だが、ここのところ大きな問題は起きていない。

あんちゃ……もとい、碇シンジは適度に勉強に集中しながらも妹たちをおろそかにせず

妹たちも過干渉で碇シンジを潰してしまわないように配慮はしている模様。

関係性が安定してきたということだろう。

しかし、初期の妹たちの過干渉や碇シンジのあり方を考えたとき、

彼らが本当に今の状態を望んでいるのか、いささか疑問は残る』

 カタッ

アスカ「――っと、報告終わり」

 コン コンッ

アスカ「はーい」

 ガチャリ

鈴凛「アスカちゃん、今日は土曜だけど赤木先生が研究室開けてくれるって言うから行ってみない?」

アスカ「あ、そうだったわね。 もちろん行くわよ」

--リツコの研究室--

鈴凛「おはようございます」

アスカ「おっはよー」

プロトロボ「……」ペコリッ

リツコ「おはよう、二人とも」

リツコ「うん、やっぱりいつ見てもすごいわね、このプロトロボは」

アスカ「そうなの?」

リツコ「ええ。 PTOに合わせてお辞儀をしたり、人の動作を真似たり、まるで心があるみたい」

鈴凛「ありがとうございます。 人の心を持つロボットが目標で」

リツコ「それじゃ『プロト』タイプではない完成版はもっと人間らしくなるのかしら?」

鈴凛「もちろん!」

リツコ「設計図はもうできた?」

鈴凛「はい。 これです」クイッ

プロトロボ「……」バサッ

アスカ「へぇー、ずいぶん小型になるのね?」

リツコ「機械部分は小さいけど、表面に生態部品をつけるとあるわね?」

鈴凛「そうそう、そこなんです」

 チラッ

鈴凛「実はこの部分をアスカちゃんに手伝ってもらいたくて一緒に来てもらったんだ」







アスカ「あたしが? 生体部品を作るの?」

鈴凛「そう。 できれば本物の細胞を使って本物の人間と同じ外観にしたいんだ」

アスカ「そうなると、培養器に遺伝子解析も必要ね」

鈴凛「……先生!」

アスカ「先生!」

リツコ「……ふぅ、仕方ないわね。 それらの機材も使って良いわわ」

鈴凛「やったぁ!」

リツコ「でも、そこまで人間的にこだわるならいっそ――

リツコ「クローンを作ってから機械部品を取り付けたほうが手っ取り早くないかしら?」

アスカ「先生、人間のクローンは倫理規定上だめでしょ?」

鈴凛「それに、あたしが作りたいのはそれじゃないんです」

リツコ「ふぅん、そこにこだわりがあるのね。 研究にこだわりは必要よ、がんばってね」

リツコ「それじゃ、わたしは用事で出るけど、戸締りはきちんとしなさいよ」

鈴凛&アスカ「「はい」」

--ウェルカムハウス--

咲耶「♪ 今日はいい天気ね、洗濯物がよくかわくわ」

雛子「くしし、おてつだい」

 ブオンッ

咲耶「きゃっ、突風が――」

 バサッ

雛子「わあ、シーツがとんで――」

咲耶「もう、あたまからシーツをかぶっちゃったわ」

雛子「……さくやちゃん、およめさんみたい」

咲耶「え? ちょっと、そこのガラスのとこに……」

 てくてくてく

咲耶「これって――まるで純白のウエディングドレス」――」///

雛子「みんなー、さくやちゃんがー」

 たったったっ

咲耶「あ、ちょっと雛子ちゃん、こんなことでみんなを呼ばなくても――」



今日はここまで

----

花穂「わぁ、咲耶ちゃんきれい!」

咲耶「うふふ、てれるわね」///

可憐「こうやって、頭と胸にお花をかざって――」

春歌「帯を巻けばりっぱなドレスになりますね」

 キュッ キュッ

咲耶「……これが、わたし?」///

 テクテクテク

白雪「あ、あの足音は……」

四葉「兄チャマです!」

 ガラッ

シンジ「みんな、そろそろお昼――え?」

咲耶「お兄様」

シンジ「さ……くや……ちゃん?」///

可憐(お兄ちゃんが見とれてる!)

咲耶「お兄様……どうか、わたしをお嫁にもらってください」

シンジ「は……はい」

四葉「えーっ!?」

春歌「まあまあ」

咲耶「ふふ……お兄様、誓いのキスを」///

白雪「ほ、本気ですの!?」

可憐(お兄ちゃん……咲耶ちゃんを選んじゃうの?)

シンジ「はっ! いや、違う、違うよ! つい勢いではいって言っちゃっただけで」

咲耶「あら? ひどいわ、お兄様。 私と結婚してくれないの?」

シンジ「ひどいも何も、兄弟じゃないか!」

咲耶「そんなの問題じゃないわ。 寄り添う気持ちがあればいいのよ」

 スッ

シンジ(わっ、腕をからめて)///

咲耶「お兄様」///

 ギュッ

シンジ(あ……むねが腕にあたってる)///


咲耶「お兄様、そのまま顔を動かさないで」

シンジ「え……」///

咲耶「お兄様」スッ

シンジ(ほ、本気でキスしにきてる)

 ドクンッ ドックン ドクンッ

シンジ「わ、わああああ!!」

 ダダダダッ

可憐「あ、お兄ちゃんにげちゃった」

春歌「ひさしぶりですよねぇ、こういうの」

四葉「……しかし、このドレスの効果は証明されました!」

花穂「花穂も! 花穂もしてみたい!」

白雪「は! それですの! 姫も兄さまのお嫁さんに――

四葉「よ、四葉も、悩殺される兄チャマをチェキするです!」

可憐(なんだかまた話が大きくなってしまったみたいでっす)

 

 今日はここまで

シンジ「はぁ……逃げてきちゃった」

シンジ「妹だって言っておきながらあれはないよ」

コンッ コンッ

春歌「兄君様、大丈夫ですか?」

シンジ「春歌ちゃん……うん、大丈夫。ちょっと驚いただけだから」

春歌「それなら安心いたしました。兄君様、入ってよろしいですか」

シンジ「うん、いいけど」

ガチャリ


シンジ「……で、その格好はなんのつもり?」

春歌「白無垢を意識してみました」

春歌「兄君様、いかがでしょう?」///

シンジ「そう言われても……」

春歌「いつかこうして兄君様と祝言をあげとうございます……ポポポ」

シンジ「思考パターンが咲耶ちゃんと何も変わらないじゃないか!」

春歌「兄君様は、私では物足りないのですか?」キュッ

シンジ「えっ……!」

シンジ(僕の手を握って、胸に)///

シンジ「物足りないなんてことはないよ!予想以上におおき……いや、違う、何をいってるんだ僕は!」///

春歌「まあ、兄君様!それではわたくしと祝言を!」

シンジ「その『兄君様と祝言』の時点でおかしいの気づこうよ!」

春歌「?……何がおかしいのですか?」

シンジ「」

ガチャリ

花穂「あー、春歌ちゃんズルい!」

花穂「お兄ちゃま、花穂ね、ウエディングドレスをお花いっぱいにしたよ」

シンジ「ああ、うん、かわいいね」

花穂「えへへ」

花穂「衛ちゃんもはやく!」

衛「で、でもはずかしいよ、こんな格好」///モジモジ

シンジ「はは……いつもの元気な衛ちゃんとは違って可愛らしいね」

ガチャリ

雛子「おにいたま、ひなも、ひなも!」

亞里亞「あーりーあーも――」

シンジ「うんうん、かわいいね」汗


ガチャリ

四葉「チェキーッ!兄チャマ、四葉を見るです!」

四葉「この探偵のマントを意識したウエディングドレスを!」

シンジ「……うん、どうしてそっちの方向にいっちゃったんだろうね」

ブワッ

千影「……兄くん」

シンジ「うわっ!?千影ちゃん、いまどこから?」

千影「……ふふ……どうだい?」

シンジ「どうって言われても、真っ黒の服じゃお葬式っぽい」

千影「これは……魔界の……嫁入り衣装……」

千影「さあ……今日こそ……このリンゴを……」

シンジ「こわいよ!どう見ても魔女と毒リンゴじゃないか!」

ガチャリ

可憐「お兄ちゃん」

シンジ「え!?」///

シンジ(か、かわいい)

可憐「可憐のウエディングドレス……変じゃ、ないですか?」

シンジ「ええと、それは、その……」///

ワイワイ ガヤガヤ

――――

咲耶「お兄様……なんで逃げたの?」

咲耶「兄妹だから?それとも――」

――――

シンジ「ふぅ……今日はつかれた」orz

シンジ「せめてお風呂ではひとりでゆっくりと……」

てくてくてく

咲耶「あっ」

シンジ「あ、咲耶ちゃん」

咲耶「お兄様、今日はごめんなさいね、悪ふざけのきっかけを作っちゃって」

シンジ「うん、……もういいよ」

咲耶「おわびに、お兄様の背中を流そっか?」///

シンジ「ぶっ」///

シンジ「だから、そういう冗談は――」

咲耶「ごめんなさい」

咲耶「でもね、わたし、ずっと前からお兄様に会いたくて過ごしてきたの」

咲耶「それでやっと会えたと思ったらもうこの年で、」

咲耶「普通の兄妹みたいに一緒にお風呂に入ったり添い寝したりもできない」

シンジ「咲耶ちゃん――」

咲耶「それどころか、きっとお兄様は別のヒトのものになって遠くへ行っちゃう――」

シンジ「……遠くになんかいかないよ」ギュッ

咲耶「お兄様!?」///

シンジ「だから、色仕掛けなんてしないでいいよ」

咲耶「……うん」///

咲耶「でもね、もし本当の兄妹じゃないとしたら……わたしたち、ひとつになれるのかな?」

シンジ「えっ!?」///

咲耶「……」

ドクン ドクン

シンジ(それってどういう意味?ひとつになるって!?)

シンジ(いや、そうじゃなくて、本当は兄妹じゃない?じゃあなんでみんな妹を名乗ったの?)

シンジ(義理?それだったらこのまま咲耶ちゃんと――そうじゃなくて!)

クスッ

咲耶「お兄様、冗談よ、冗談」

シンジ「え、そ、そうなの?」

咲耶「その焦りよう、お兄様、えっちなこと考えてたわね?」

シンジ「そんなことないよ!ほんとに、ほんとだから!」

咲耶「フフ……そんなところも好きよ、お兄様」
チュッ

シンジ「あ……」///

シンジ(ほっぺに……キス)///

――リツコの研究室――

鈴凛「やっと、これが使えるね」

アスカ「遺伝子解析しないと生体部品なんて作りようがないものねー」

鈴凛「それだけじゃなくて色々調べられるよ」

鈴凛「将来、アスカちゃんの胸がおっきくなるかとか――」

アスカ「そんなの調べないわよ!」

鈴凛「アニキとあたしたちがホントに兄妹か……とかね」

アスカ「ああ、それは知りたかった……って、あんた何を!?」

鈴凛「アスカちゃん、スパイなんでしょ?」

アスカ「げ……バレてたの?」汗

鈴凛「まあね」

鈴凛「あ、でも大丈夫、みんなにバラしたりはしないよ」

アスカ「……条件は?」

鈴凛「あたしたちもさ、自分たちのことよく分かってないんだ」

鈴凛「だから、アスカちゃんが調べて分かったことはあたしにも教えて欲しい」

アスカ「断ったら?」

鈴凛「あんまりしたくないけど、アニキやみんなにバラすかな」

アスカ「ハァ、言う通りにするしかないわけね」
鈴凛「あと『メカ鈴凛』製作にも協力してね」

アスカ「まあ、それはいいけど」

鈴凛「それともうひとつ」

アスカ「まだ条件があるの?」

鈴凛「あのさ、あたしはアスカちゃんの任務が何なのか知らないけど――」

鈴凛「任務が終わって別のとこに行っても……あたしたちとは友達でいて欲しい」///

アスカ「え?」キョトン

アスカ「…………うん、任務に、差し支えなければ」///

鈴凛「約束だよ、ずっとだからね」

アスカ「うん、そうね」

アスカ「ってかぶっちゃけるとあたしの任務はあんたたちの監視だけだから」

アスカ「あたしの情報収集に協力してくれるなら全く任務に差し支えないのよねー」チラッチラッ

鈴凛「えー、なにソレ?そっちからも条件出るの?」

アスカ「あったり前じゃない、友達って対等なもんでしょ?」

鈴凛「調子良いんだから」ww

アスカ「鈴凛ちゃんにいわれたくない」ww

――――

アスカ「――と、いうわけで惣流アスカは現地協力者を獲得しました」

加持『はは、やったじゃないか、アスカ!』

アスカ「この程度、お茶の子さいさいよ!」

加持(この喜びよう、そりゃそうだな。この子にとって初めて対等な友達ができたんだから)

加持(できればこの子たちの関係を守ってやりたいが――)



今日はここまで

可憐「……おいしい。今日の晩御飯はお兄ちゃんが?」

シンジ「いや、違うよ」

花穂「えっ?違ったの?」

咲耶「それじゃ誰が……?」

春歌「白雪ちゃんですよ」

白雪「はい、姫と春歌ちゃんで作りましたの」

衛「そうだったんだ?」

可憐「え?本当に?」

シンジ「朝ごはん作るのも手伝ってくれてるし、助かるなぁ」

白雪「それは姫の修行を兼ねてのことですの」

四葉「白雪ちゃんの料理がおいしくなったのはお兄チャマのおかげデスね」

白雪「もちろんですの」

鈴凛「白雪ちゃん、そこは怒っていいところ」


アスカ(……いえ、元々料理の技術は白雪ちゃんの方が上)

アスカ(ただ、味付けや使う素材が常人離れしていて受け入れられなかった)

アスカ(逆にあんちゃ……いや、バカシンジは技術的には平凡)

アスカ(そのかわりにいつも無難にまとめる。いかにも気を使ってますよと言いたげな料理)

アスカ(自分の料理が受け入れられないと知った白雪ちゃんは――)

アスカ(朝食の手伝いなどで兄の料理を学び、無難におさめる技を身に付けた)


アスカ(そのうえ兄と二人きりの時間を確保……ああ見えて彼女はしたたかね)

――学校――

ケンスケ「……ほら、パス!」

トウジ「センセイ、敵陣はがら空きやで!」

シンジ「うん!」

ダンダンダン

トウジ「よっしゃそこでシュートや!」

シンジ「左手は添えるだけ……うわっ」

ケンスケ「あちゃ、敵防衛部隊のデカブツが戻ってきた!」

敵チーム「……」ドドド

シンジ「えっ、あっ、どうすれば」汗

シンジ(背丈が違いすぎる……これじゃシュートが撃てない!)

シンジ「……パス!」

バシュッ

ダンッ

トウジ「あー、パスも上から叩き落とされおった……」

アスカ「……あんちゃんってさぁ、背低いわよね」

可憐「そうかな?」

アスカ「あたしや咲耶ちゃんと背が同じくらいじゃない」

可憐「そうですね。それに、体格も細くてまるで女の子みたい」

てくてく

白雪「にいさま、可憐ちゃん、アスカちゃん、お昼ご飯を持ってきましたの」

アスカ「うん、ありがと。今日も美味しそうね」

可憐「ありがとう、白雪ちゃん」

アスカ「……でさぁ、話の続きだけど、あいつ栄養足りてないんじゃないの?」

可憐「そうかな?でも確かに少し少食ですね」

白雪「……何の話ですの?」

アスカ「ああ、あいつがちっちゃいから栄養足りてないんじゃないかって話」

白雪「にいさまの……栄養?」

可憐「女の子みたいなところがありますよね」


白雪「……」ゴクリ


半端だけど今日はここまで

えーと、これで酉あってたっけ?

すいません、私的な事情により更新サボってました
いや、スパイ容疑をかけられて監禁されていたんですが、
無事に真犯人が射殺され、つい昨日私の容疑が晴れたところです

――夕食――

花穂「いただきまーす!」

雛子「いっただきます!」

亞里亞「Bon appetit」

シンジ「……い、いただきま……す」ヒクヒク

ドンッ

四葉「す、すごい量デス」

春歌「あらあら、どうしたのでしょうか?」

衛「あにぃ、ウェイトアップしてるの? 重量挙げとか砲丸投げとかするの?」

シンジ「しらない!僕は知らないよ、こんな量」

鈴凛「ってことは、白雪ちゃんかな?」

白雪「はい、ですの!」

白雪「にいさまに立派な男性になって頂きたく、姫が愛情を込めて増量しましたの」

アスカ「なぜに自信満々?」汗

可憐「お昼の話がこんなことになっちゃうなんて……」

千影「……『節制』か。調和、自制、献身……ふふ、兄くんか白雪くんか」

白雪「にいさま」

シンジ「う、うう……」

シンジ(たぶん、食べなかったら白雪ちゃんは悲しむ)

シンジ(逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!)

ガツガツ ムシャムシャ

白雪「さすがはにいさま、素敵なたべっぷりですの!」

咲耶「確かに、豪快に食事する姿って男らしいわよね」

シンジ(逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!)

ゴクゴク バリボリ

アスカ(しょーもないことで無理して、バカな奴)

――翌日――

白雪「お弁当お届けに来ましたの」

シンジ「あ、ああ……ありがとう」ヒクヒク

アスカ「なにこのお重?」

可憐「わたしたち三人分ってわけじゃなくて、お重がお兄ちゃん一人分みたいですね」

シンジ「そ、そんなバカな……」

今日はここまで

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