男「幼馴染が水になった」(48)

男「・・・・・・」ジー

男「・・・一体どういうことなんだ・・・」

幼馴染「男くん?」

男「お前、その体・・・」

幼馴染「私の体がどうかしたの?」

男「自分で分からないのか?」

幼馴染「全然分からないよ」

幼馴染「いつもとなーんにも変わらない私だと思うけどなあ」

男(そんな・・・これは俺だけに見えている映像なのか?)

男「なあ・・・ちょっと鏡を見てみようか」

男「お前の体、水になってるぞ」

幼馴染「え?水になんかなってないよ」

男「じゃあそこで待ってろ。鏡を持ってくるから」タタタ

幼馴染(やっぱりこの体はおかしいのかな・・・)

幼馴染「昨日は体が液体になんてなってなかった」

幼馴染「それなのに今朝起きてみたら・・・」

友「一人で何しゃべってんだよ!」

幼馴染「はっ・・・友くん!おはよう」

友「悩み事?俺に言ってみろよ」

幼馴染「ちょっと私の体を見て・・・」

友「?」

幼馴染「液体になっちゃったの・・・」

友「何言ってんだよ?」

幼馴染「見たら分かるでしょ」

友「いや、俺が見た限りでは固体だな」

友「ほら、こうやって抱くこともできるぞ」ギュッ

幼馴染「何いきなり抱きついてんだ!」バチィィィィン

友「ギャフゥッ!」ドサッ

男「お待たせ!」

男「さあさ、この鏡を見てくれよ」

幼馴染「うん・・・」チラ

男「な?やっぱり水になってるだろ?」

幼馴染「やっぱりだ・・・」

男「お前、病院に行ったほうがいいよ」

幼馴染「でも普通に話せるし歩けるよ?」

男「もし重大な病だったらどうするんだ」

幼馴染「大丈夫だから。私の心配はしないで」

男「俺は心配なんだよ!」

男「もしその体が病気でお前が死んだりしたら、俺、立ち直れない気がするよ」

友「男、心配はいらないよ。幼馴染はいつもと変わらず元気だ」

男「何だと?目がおかしいんじゃないか」

幼馴染「でも、友くんには固体に見えるらしいの」

幼馴染「それにさっき普通に抱きついてきたし」

男「抱きついたって・・・おい!」

友「これはだな・・・その・・・スキンシップだよ。俗に言う」

男「とにかく一度病院に行ったほうがいいぞ」

幼馴染「男くん・・・そこまで私のことを・・・」

男「何言ってんだ。お前は俺の大親友だ。一生見放したりはしない」

友「そう!俺らはいつも幼馴染のことを思っているよ!」

幼馴染「そう・・・分かった。私、病院に行くよ」

幼馴染「今日は早退するね」

男「おう。じゃあな」

友「また明日な」

キーンコンカンコーン

友「やっと一日が終わったぜ」

男「ああ、そうだな。今日はなんだか一日が長く感じられたな」

友「ただ幼馴染がいないだけなのにな」

男「あーあ、今日は俺一人で帰るのか」

幼馴染「男くーん」タタタ

男「!」

幼馴染「病院行ってきたよ!」

男「そ・・・そう。どうだった?」

幼馴染「どこも異常ないってさ」

男「えっ・・・」

友「良かったなー幼馴染」ポン

幼馴染「じゃあ友くん、またねー」

友「じゃあな」

幼馴染「男くん、帰ろう」

男「ああ・・・」

幼馴染「どうしたの?」

男「お前・・・そんな体で本当にいいのか?」

幼馴染「どういう意味?」

男「だから・・・その・・・」

男「俺的には普通の体のほうがいいなって・・・」

幼馴染「液体の私じゃダメ?」

男「ダメって訳じゃないけど・・・触れたほうがいいかなって」

幼馴染「素直にダメだって言えばいい」

男「いや、だから・・・」

幼馴染「今日はもう一人で帰るから。じゃあ」

男「ああ・・・」

男「ああ・・・幼馴染を悲しませてしまった・・・」

男「ちょっと悪いこと言っちゃったな・・・」

男「幼馴染だって別に好きで液体になったわけでもないし・・・」

男「俺って最低な奴だな・・・」

幼馴染「もうっ!何が"触れたほうがいい"なのよ!」

幼馴染「そこは"それでもお前が好きだ"とか言うべき所でしょ!」

幼馴染「それなのに抱き心地がどうとか言い出して・・・見損なった!」

幼馴染「あ、電話だ。男からだ」

男「ゴメン!お前だって好きで液体でいるわけじゃないんだよな!」

男「俺が悪かった!許せ!俺はお前が好きだ!」

幼馴染「ちょっと落ち着いてよ!」

男「俺は触れないのが嫌ではなくて抱き応えがないお刺身馴染が好きで、ではなくて!」

男「でもだからといって嫌いなわけではなくて好きで、好きになりたいと思う!」

幼馴染「・・・騒音」ピッ

男「幼馴染!?幼馴染いいいい!」

男「うわああああああああああ!完全に嫌われたああああ!」

友「何だよ、玄関で騒ぐな。教室まで聞こえてたぞ」

男「友!もう幼馴染はお前にやる!」

友「や、やるってどういう事だよ!」

男「もう俺には彼女を愛する資格などない!」ダッ

友「何があったんだよ!男!」

男「どうぞ二人でお幸せにいいいい!」ピューン

ピンポーン

幼母「あら、友くん。いらっしゃい」

友「お邪魔します」

友「幼馴染は?」

幼母「部屋にいるわ。今呼んでくるわね」

友「あ、いいんです。自分で行きますから」

幼母「おせんべいとか持って行ったほうがいいかしら」

友「自分で持って行きますから」

幼母「どうしたの、友くん」

友「いや、何でも・・・」

友「幼馴染!」ガチャ

幼馴染「ノックぐらいしてよ」

友「ああ、スマン」

幼馴染「友くんが来るなんてめずらしいね」

友「実は男が変なことを言い出してな」

友「幼馴染を捨てて俺にやると言ってきたんだ」

幼馴染「捨てる?」

友「そうなんだよ。一体男と何があったんだ?」

幼馴染「これこれこういう・・・」

友「ふーん・・・そんな事があったのか」

幼馴染「やっぱり抱くことのできない私なんてダメだよね・・・」

友「そんなことはないぞ。男は幼馴染を物、ツールとして見ているのかもしれないし」

友「男にとって幼馴染は見ることはできるけど食えないアイスクリームのような物なんだろう」

幼馴染「そうかな・・・」

幼馴染「男くんは他に何か言ってた?」

友「自分には愛せなくなったとか言ってたな」

幼馴染「愛せなくなったんじゃない、愛されなくなったんだよ」

幼馴染「愛し方を変えてくれればいいだけの問題なの」

友「俺じゃなくて本人に言ったら?」

幼馴染「言われてそれに気付く奴ってどうなの」

友「えっ・・・」

幼馴染「私は気付かれたい。気付いてほしいの」

友「あいつ馬鹿だから気付かないぞ」

幼馴染「それならもう男くんを愛するのはおしまい」

友「そうか・・・まあ、せんべい食おうぜ」

幼馴染「うん。おせんべいにはお茶がほしいところだけど」

友「確かに。じゃあ今、俺が入れてくるよ」

~台所~

友「えーと・・・お茶っ葉はどこにあるんだろう・・・」ガサゴソ

幼母「友くん、何か探し物?」

友「ハッ!いや~、お茶がないかなぁと」

幼母「お茶なら冷蔵庫にあるわよ。ああ、あったかいのがいいの?」

友「冷たいのでいいです・・・」

幼母「そんな遠慮しなくていいのよ。今お湯沸かすからね」チチチ ボッ

友「本当にいいですって」

幼母「紅茶がいい?緑茶がいい?」

友(世話好きなお母さんだな・・・)

幼母「じゃあね・・・」ゴソゴソ

幼母「右手と左手、それぞれに紅茶か緑茶が入ってます。どちらを選びますか?」

友「じゃあ左手で」

幼母「はい。左手は紅茶でした」

幼母「さあ、お湯が沸いたわ。入れるわね」ジョボボボ

幼母「ところで今日は男くんはいないの?」

友「ちょっと体調不良で・・・」

幼母「風邪でも引いたのかしら」

友「つーよりは疲れてるみたいで」

幼母「じゃあ何か悩み事かしらね」

友「まあそうですね・・・」

幼母「悩み事・・・何だろう」

幼母「もしかしてうちの幼馴染と何かあったとか・・・」

友「!」ビクッ

幼母「そうなの?」

友「はい。よく分かりましたね」

幼母「へぇー、男くん、フられちゃったんだ」

友「そうみたいです」

幼母「あ!分かった、幼馴染の相談に乗りに来たのね!」

友「相談っつーかその・・・」

幼母「友くんって優しいのねー」

友「ああ・・・はい」

幼母「お茶が入ったわ」

友「ありがとうございます」

幼母「そうだ友くん」

友「はい?」

幼母「ちょっと友くんにお願いしたいことがあるの」

幼母「そこのスーパーで牛乳と玉ねぎを買ってきてくれる?」

友「別にいいけど、お茶が・・・」

幼母「ラップかけとけば冷めないわよ。これお金ね」

友「は、はああ・・・」

店員「ありがとうございました!」

友「幼馴染・・・お茶待ってるだろうな・・・」

友「なんだあのお母さんは・・・」

友「俺が優しいと分かった瞬間におつかいを頼むなんて・・・」

友「マジで頭イカれてるな・・・」ガチャ

幼母「お帰り!」

友「これ、頼まれた物です。あとお釣り」

幼母「あら?何か怒ってる?」

友「別に怒ってないですよ♪」

幼母「そう、良かった。急にお願いして悪かったわね」

友(だったら最初から行かせなきゃいいんだよ・・・)

幼馴染「友くん遅いな・・・」

友「幼馴染、待たせたな」ガチャ

幼馴染「お帰り」

友「お茶をもらいに行っただけなのに、おつかいを頼まれちゃってさ」コト

幼馴染「いただきます」ズズ

幼馴染「あっそうだった!」バッシャアアン

幼馴染「あつっ!」

友「何やってんだ・・・」つハンカチ

幼馴染「あつ、あつ」フキフキ

幼馴染「気を取り直して・・・実は私、友くんに言いたいことがあって・・・」

友「ほう?俺に言いたいことか?」

幼馴染「友くん・・・私の彼氏になってください!」

友「ブーーッ!」

幼馴染「ダメかな?」

友「何でいきなりそんな事を!」ゲホゲホ

幼馴染「何かさ、友くんって意外と優しいしさ」

友「でも幼馴染には男がいるだろ!」

幼馴染「だってあれのことはもうフったし」

友「本気か?本当に男を捨てて俺に乗り換えるのか?」

幼馴染「本当」

友「いや、でも・・・もう少し冷静に考えてみろよ」

友「男に冷たいこと言われたのは事実だとしても一度きりだろ」

幼馴染「そうだけど・・・」

友「お前、男が大好きだったんだろ?」

幼馴染「それはそうだけど・・・」

友「それならたった一度や二度冷たくされたからってそんなすぐにフれるものなのか?」

友「本当はもっと男のことを愛したいんだろ?」

幼馴染「・・・・・・・・・・うん」

友「だったらそんな安易にフるなよ」

幼馴染「・・・そうだよね・・・」

幼馴染「私、もう一度男と付き合ってみる」

友「いやーびっくりしたよ。まさかお前から告白されるなんて」

幼母「またいつでも来てね」

幼馴染「じゃあね友くん」

友「じゃあな」バタン

幼母「男くんとのことはどうなったの?」

幼馴染「やっぱりもう一回付き合ってみることになった」

幼母「そうなの?」

幼馴染「うん。とりあえず明日、ファミレスで会おうと思う」

幼馴染「それとお母さん、もう友くんにお使いなんてさせないでね」

幼母「だって友くん、優しそうだったから」

幼馴染「一応客なんだから」


男「もう俺・・・二度と振り向いてもらえないのかな・・・」

携帯<メールを受信しました

男「幼馴染からだ・・・」

男「きっと怖いこと書いてあるんだろうな・・・」

<今、友くんと話し合って、また男くんと付き合うって事にした
<明日、ファミレスで会って話そー

男「本当かな・・・」

男「会いに行って殴られたらどうしよう・・・」

男「でも、このまま部屋に閉じこもってても進展はないよな」

<うん。分かった
<ぜひ会おう

男「返信してしまった・・・明日行かなきゃいけないんだ・・・」

男「怖いな・・・」ビクビク

~翌日~

男「やっぱ行くのやめよう・・・」

男「でも自分から断るのは怖いな・・・」

男「友に代わりに断ってもらうか・・・」デンワ

男「頼む・・・居てくれ!」

携帯<ただ今、電話に出ることができません

男「」

携帯<メールです

男「!」ギクッ

男「誰からだろう・・・」

<男くん、起きた?

男「幼馴染からだ・・・」

男「へ、返信っと・・・」

<うん、起きたよ!
<楽しみでよく眠れなか

男「・・・」

男「・・・」ブルブル

男「うわああああ返信できねえええ!」

男「今日は押入れに隠れていよう・・・」

男「早く今日よ終われ・・・」

男「・・・・・・」

男「・・・・・・」スースー

男母「男ー!もう起きたの!」

男「はっ!?」

男「寝てたのか、俺・・・」

男母「幼馴染ちゃんが来てるわよー!」

男「ええっ!?」

男母「部屋入るわよ!」ガチャ

男「お、押入れの戸を開けられたら終わりだ・・・」

男母「あら?どこに行ったのかしら」

男母「トイレにはいなかったし・・・まさか」スタスタ

男母「押入れの中とか・・・」ピタ

男母「男!」ガラッ

男「あわわわっわわわっわああわわわ」

男母「何してるの?」

男「幼馴染・・・帰して・・・」

男母「今日、幼馴染ちゃんとファミレスじゃないの?」

男「いいから!」

男母「よくない!」バシッ

男母「自分で"帰れ"って言いなさいよ!」

男「無理!」

男母「幼馴染ちゃんごめんね。恥ずかしがって押し入れに隠れちゃったの」

男母「どうぞ上がって」

幼馴染「お邪魔します」

男母「散らかってるけど・・・コーヒーでも飲んでいって」

幼馴染「ありがとうございます」

男母「ちょっと待っててね」

幼馴染「男・・・相当私を恐れてるんだろうな」

幼馴染「この間は恐くなりすぎたな」ポリポリ

ザー・・・

幼馴染「あっ、雨降ってきた」ガタ

幼馴染「洗濯物取り込まないと」サッサッ

男母「幼馴染ちゃん!いいのいいの、今やるから」サッ

幼馴染「すいません、いつもの癖で」

男母「幼馴染ちゃん!ヤカン火にかかったままだからちょっと見といて!」

幼馴染「は、はい!」

幼馴染「危ないなー・・・」

男母「あっそうだ!」

男母「男!あんたのとこのベランダに私のパンティ干してあるでしょ!それ取り込んでおいて!」

男「嫌だ・・・外に出たくない・・・」

幼馴染「おお、沸いてる沸いてる」カチ

男母「沸いた?コーヒー、食器棚にあるからそれ入れて」

男母「男は取り込んでくれたのかしら」ダダダ

男母「男!」ガチャ

男「・・・」

男母「何で取り込んでないのよ!」サッ

男「俺は外には出られないんだ!」

男母「いつまでそんな所に隠れてんのよ!出てきなさい!」グイグイ

男「嫌だって!」

男母「出ないとあんたの消しゴムをシャーペンでほじるよ!」

男「うわああ!出るからそれだけはやめてくれ!」バタバタ

男母「ほら、自分で断ってきなさい」

男「ちょっと待ってくれよ!」

男母「何よ!」

男「俺は訳あって、部屋から出られないんだ!」

男「俺は・・・俺は"外に出たら死ぬ病"にかかったんだ!」

男母「そんな病気あるか!」

男「そっちが知らないだけで、あるんだよ!」

男母「それ、どういう病気なの」

男「病名そのまま。外に出たら死ぬ」

男母「ふーん・・・」

男母「その話には納得できないけど、とにかく今日は外に出たくないのね」

男母「そう、じゃあ幼馴染ちゃん連れてくるから」

男「えっ!」

幼馴染「失礼しまーす」ガチャ

男「お、幼馴染・・・」

幼馴染「楽しみにしてたのになあ」

男「俺もだよ・・・でもなぜか今日は外出したくなくなったんだ」

幼馴染「私が怖かったんでしょ?」

幼馴染「大丈夫だよ、殴ったりしないから」

男「ああ・・・」

幼馴染「こんな事もあろうかと寿司の詰め合わせ買っといたの。食べる?」

男「是非・・・」

幼馴染「何でそんなビクビクしてるの?」ポン

ビチャッ

幼馴染「あ・・・そうか。触れないんだったよね」

男「そうだったな・・・」

幼馴染「殴られる心配なんてしなくて良かったんじゃん」

男「む、うまい」バクバク

幼馴染「ねえ、男くん」

男「ンブッ!」

男「な、何でしょうか」ゲホゲホ

幼馴染「昨日、メールしたじゃん?」

幼馴染「それについての返事をまだ貰ってないなあーと思ったの」

男「それで?」

幼馴染「返事がほしいんだけど」

男「その・・・だから、俺は嫌いじゃないよ」

幼馴染「そうじゃなくて返事を」

男「まあ・・・その・・・」バクバク

幼馴染「食べるのやめて」バシャ

男「はわっ!?」

幼馴染「どうなの?答えてよ」

男「別にまた付き合ってやってもいいかな・・・」

幼馴染「本当は嫌なの?」

男「全然嫌ではないよ!」ペッペッペー

幼馴染「汚い・・・」フキフキ

男「ただ・・・お前が本当にいいのかどうか・・・」

幼馴染「私が好きかどうかなんてどうでもいいの」

幼馴染「男くんはどう思ってるのか聞かせて」

男「それは・・・」

幼馴染「好きか嫌いかどっちですか!」

男「・・・・・・好きです」

幼馴染「そうでしょ?よかったー」

男「お、俺も良かったよ・・・」

幼馴染「というわけでこれにサインして」

<二度と幼馴染を捨てませんの書>

男「何だよこれ・・・」

幼馴染「サインしなきゃ私の好きなようにしてあげる」

男「」ガタガタ

幼馴染「ここに名前書けばいいの」

男「はい、分かりました・・・」カキカキ

幼馴染「これで契約成立だね」ニコッ

男「やっぱり恐ろしい・・・」

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