ミノタウロス「あなたの息子にして下さい」王「え!?」 (29)

<城>

王「おぬしをワシの息子に……!?」

ミノタウロス「はい、養子にして下さい」

王「なぜだ? まさか、将来的には王位を継ぎたいとか……」

ミノタウロス「いえ、そういった野心はございません」

ミノタウロス「王様の息子にしていただければ、私は満足なのでございます」

王「ふぅ~む」

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ミノタウロス「もちろん、なんの見返りもなく息子になろうとは思いません」

ミノタウロス「力仕事はもちろん、城の警備や掃除、雑用もなんだってやります!」

ミノタウロス「――ぜひともあなたの養子に!」

王「えぇと、召使いではダメなのか? 働き次第では給金は弾むが」

ミノタウロス「ダメなのです!」

王「ふぅ~む」

王「どうだ、息子よ、娘よ」



王子「ハッ、冗談じゃない。牛の魔物が義弟になるだなんてゴメンだよ」

王女「まったくですわ」



王(まあ……二人の気持ちも分かる)

王「う~む、今の段階ではおぬしを息子にするのは厳しいのう」

王「他になにか特技はないのか?」

ミノタウロス「ございます」

王「ほう」

ミノタウロス「私は卓越したギャグセンスを持っております」

ミノタウロス「ギャグのためならば、どんな努力も惜しみません!」

王「ほう……ギャグセンス。ならば、一つ披露してはもらえんか?」

ミノタウロス「はいっ! 喜んで!」

ミノタウロス「牛がウシシと笑った!」





どっ!

王「ぷっ、クククッ……ヒヒヒッ……なんたる面白さ……! 革命的ユーモア……!」

王子「アハハハハハッ! アーッハッハッハッハッハ!」

王女「は、はらいたい……」ヒーヒー



王「……コホン」

王「なるほど、いうだけのことはあるようだ」

ミノタウロス「ありがとうございます」

王「しかし、一国の王が養子を迎えるなど、一大事中の一大事」

王「今のギャグだけは決められぬ……が、おぬしの才能は惜しい」

王「そこでどうだろう?」

王「しばし、おぬしにこの城で働いてもらい、その仕事ぶりによって養子にするかを決めたいと思う」

王「それでよいか?」

ミノタウロス「はいっ!」

――

――



ミノタウロス「ふんふ~ん」キュッキュッ

メイド「ミノさんは背が高いから、あたしが届かないところまで掃除してくれて助かりますよ」

ミノタウロス「いえいえ、私は狭い場所は掃除できませんから、お互い様ですよ」

盗賊「い、いでえ……」ピクピク

ミノタウロス「城に忍び込んでいた盗賊をやっつけました!」



近衛兵「おおっ、かたじけない! ありがとう、ミノタウロス殿!」

ミノタウロス「この木を引っこ抜いて、そちらに植えればいいんですね?」

ミノタウロス「ふんっ!」ズボッ

ミノタウロス「よっ!」ボズッ

庭師「いよっ、さすが! 力持ちだねぇ~」

ミノタウロス「お役に立てて嬉しいです!」

ミノタウロス「本日は狂牛病について、講義いたしましょう」



王子「ミノの授業って、普通の家庭教師よりもずっと分かりやすいし、面白いな!」

王女「ホントですわね、お兄様!」

ミノタウロス「これは……亡き王妃様の写真ですか」

王「うむ、美しい妃だった」

ミノタウロス「……」ホロッ

王「おお、泣いてくれるのか……ミノタウロス……」



――

――

半年後――



王「ミノタウロスよ、おぬしの精力的な働きぶりは、今や城中の人間が認めるところである」

王「よって、ワシの養子になることを正式に認めよう!」

ミノタウロス「ありがとうございますっ!」

ミノタウロス「ではさっそく、私が王様の息子になったことを国中に伝えるべく」

ミノタウロス「城下町にて市民に向けて挨拶をしたいのですが、よろしいでしょうか?」

王「もちろんだとも」

王「さっそく、兵士達に命じて、会場をセッティングさせよう」



ミノタウロス(やっと……やっとこの時がきた!)

<城下町>

ザワザワ… ガヤガヤ…



市民A「王様がミノタウロスを養子にするんだってさ」

市民B「すでに実の息子がいるのに、いったいなにを考えてるんだ、王様は?」

市民C「だけどそのミノタウロス、かなり優秀らしいぞ」

市民D「な~んか裏があるんじゃねえか? 国を乗っ取るつもりだとかさ」

市民E「みんな、静かにしろ。ミノタウロスのお出ましだ!」

ミノタウロス「市民の皆さま、私はミノタウロスと申します」

ミノタウロス「今回は私の口から皆さまにぜひ伝えたいことがあり、このような機会を頂きました」

ミノタウロス「えぇ、私はこのたび王様から、正式に養子になることを認められました」

ミノタウロス「すなわち、王子になりました」

ミノタウロス「つまり――」

ミノタウロス「これがホントの……オージービーフ」




どっ!!!







<おわり>

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