兄「若返ってしまい妹と同じ高校に通わなくてはいけなくなった件」(33)



助手「ハカセハカセ!」

兄「ハカセです」

助手「ついに完成しましたね!」

兄「そうですね」

助手「それではこれを持って早速!」

兄「わかってますよ」





助手「お邪魔します」

兄「ただいま」

母「あらあら、おかえりなさい。どうしたのかしら?2人して」

助手「お母様に伝えたい事がありまして!」

母「結婚かしらぁ?」

助手「はわっ!?それはまたの機会に!」

兄「違いますよ。明日は母さんの誕生日ですよね?」


母「やだもう、覚えててくれたの?」

兄「母さん、いつも韓流ドラマを見ながら『私も若ければこんな子達に持て囃されたのに・・・』って呟いていましたよね?」

母「そうね・・・恥ずかしいわぁ」

助手「お母様・・・出来ましたよ」

母「何が出来たの?ドラマのヒロインになれるスイッチとかかしらぁ?」

助手「世界はそんなに甘くないですよ。目の前の現実を見てください」

母「あらあら、一発ぶん殴ってもいいかしらぁ」


兄「若返りの薬ですよ」

母「さっきの助手ちゃんの言葉をもう一回聞きたいわぁ」

助手「細胞、骨、筋肉・・・あらゆる点で科学的にアレがこうなってああなる為、若返ってしまうとても理にかなった科学薬品です」

母「今の説明の何処が理にかなっていたのかしらぁ」

兄「大丈夫です。モルモットでは成功しましたから」

母「私はモルモットじゃないわよ?」

助手「お母様の昔の写真はモルモットそっくりだったじゃないですか」

母「あなたには絶対に兄をあげないわぁ」

助手「なんでですか!?」


兄「母さんへの誕生日プレゼントは僕と助手さんで作ったこの努力の結晶です」

母「ありがたいけど本当に大丈夫なのかしらぁ」

兄「不安なら僕が一口飲みますよ」




妹「ただいまー」


・・・・・・・・・ギャーギャー


妹「・・・ん?やけにうるさいな。靴も2組あるし・・・お客さんかな」


妹「おかあさーん、誰か来てるの?」





助手「キャー!ハカセかわいいー!」ギュー

兄「ね、若返りましたよね?」

母「ほんとだったのね」

妹「あ、お兄ちゃんの職場の人の・・・」

助手「あ、妹さんじゃないですかー!」

母「あらおかえりなさい」


妹「ただいま」

兄「妹じゃないですか。早い帰宅ですね」

妹「・・・誰?」

兄「お兄ちゃんの事を忘れてしまったのですか?」

妹「いや、お兄ちゃんに似てるけど・・・お兄ちゃんもう24だし」

助手「ハカセは薬で若返ったんですよ」ナデナデ

妹「へぇー・・・・・・は?・・・まじ?」

兄「飲んだ量からして、妹とちょうど同じ歳ですね」


妹「いやいや、お母さん。これなんの冗談?」

母「冗談じゃないわよ。今、目の前で若返ったもの」

兄「これが若返りの薬です」

妹「そんな・・・・・・で、でもなんでそんなの突然」

母「明日の私の誕生日プレゼントなのよぉ」

妹「お母さんいつも体重計に乗っては『私がもう少し若ければ・・・』って呟いてるもんね」

母「平然と家族以外の人の前で恥ずかしい事言わないで欲しいわぁ」

妹「でもお母さんの若い頃の写真ってモルモットそっくりだったから意味無いと思うけど」

母「あらあら、高校三年間お小遣い無しって辛いわねぇ」

妹「ちょっ、なんで!?」


助手「ハカセかわいいよぉ・・・」ナデナデ

妹「というか、お兄ちゃんから離れてくださいよ!」

助手「嫌ですよぉ・・・」スリスリ

妹「くっ・・・そもそもこれ元に戻れるんだよね?」

助手「え?戻れますよね?」

妹「なんで疑問形なんですか!?」

兄「戻れないよ?」

妹「はぁ!?」


母「あらあら・・・」

助手「どぅえ!?な、なんでそんなものを!?」

妹「あなたは兄と職場で何をしているんですか!?」

兄「若返れば元に戻る必要がないじゃないですか。当たり前でしょう?」

妹「い、いや、そうだけれども」

兄「妹が飲んで幼児になってしまうような話ではないんです。母さんに43歳から32歳くらいになってもらいたくて作ったんです」

母「親孝行ねぇ」

助手「はぁはぁ・・・」クンクン


妹「でも、そんなの・・・」

兄「僕はもう社会人ですし、ある程度自由度のある職場なので、どうなろうと知ったこっちゃないんですよ」グイグイ

助手「ハカセハカセぇ・・・」ギュー

妹(逃げようとしてるけど逃げれてないじゃん・・・いきなり障害発生してるじゃん)

母「でも戻れないってなったら色々面倒ねぇ・・・」

兄「えっ!?」

助手「ハカセの驚いた顔かわいいですぅ・・・」スリスリ

母「この歳になると親戚やら近所付き合いやらPTAやら人間関係が色々あるのよ。そんな中で若返った姿現しても・・・簡単に信じてもらえないし受け入れてもらえないわぁ」

兄「あ、そ、そう、ですよね・・・ははは、実験は失敗でしたか」

母「見れば見るほど懐かしいわ。本当にあの頃の兄になったのね・・・生意気だった頃が懐かしいわぁ」




ぽわんぽわんぽわん



高校時代の兄「母さん、新しいシャーペンが欲しいです」

あの頃の母「拾ってきなさい」


高校時代の兄「靴がボロボロなので」

あの頃の母「今ので我慢しなさい」


高校時代の兄「ノートがきれてしまい」

あの頃の母「消してリサイクルよ」



ぽわんぽわんぽわん




母「なんでもかんでも欲しがる子だったわぁ」

妹「鬼かっ!?」

母「私のエステでいつもうちは火の車だったのよ・・・」

妹「最低だなっ!?」

母「そんな卑しい子がこんな成長して嬉しいわぁ」

妹「卑しいって、おま・・・」

助手「お母様!いえ、お義母さん!それは違いますよ!」

妹「なんで言い換えたんですか?私はあなたを姉にした覚えはないけど」

助手「ハカセはあの頃からお母様に認められたかったんですよ」

兄「助手さん・・・」

助手「ハカセ・・・兄先輩はあの頃、ずっと悩んでいました・・・冷たくされてる好かれてないと」

妹「なんで急にシリアスになるの?これ、私がおかしいの?というか、この人お兄ちゃんの学校の後輩かよ」




ぽわんぽわんぽわん



母(37歳)「あー、少女漫画の主人公になりたいわぁ」ゴロゴロ

母(37歳)「私も若ければこんな子達に持て囃されたのに・・・」バリボリ

母(37歳)「あの頃の私はあんなにモテてたのに時間とは残酷ねぇ・・・」ゲフッ

母(37歳)「あら、そろそろエステの時間ね。へそくりへそくりっと・・・」ゴソゴソ



兄(18歳)「これだ・・・これで母さんを!」



ぽわんぽわんぽわん




助手「それから大学入って、お義母さんのずっと言っていた願望を叶えてあげようと必死で勉強したんですよ・・・」

妹「37歳で少女漫画の主人公になりたいとか・・・てか、こんなどうでもいい日常の愚痴でお兄ちゃんの人生が変わったのかよ!」

母「だから恥ずかしい話だから、そんな掘り下げないで欲しいわぁ」

助手「6年間家にも帰らず勉強研究勉強研究・・・その結果がこれですか・・・・・・お義母さんには程々残念です」ハァ

妹「そろそろお義母さんと呼ぶの辞めてくれませんか?」

兄「・・・っ」ポロッ

妹「お、お兄ちゃんっ!?」


母「兄・・・」

兄「つ、づぎ・・・がらは・・・・・・母さんにぃ・・・ぐず、認めってっ!もらえるっ・・・よ、うに・・・がんばる・・・がらぁ・・・・・・」ポロポロ

助手「・・・もういいです。ラボへ戻りましょう」ナデナデ

兄「うくっ・・・ぐず」

助手「・・・・・・ゥェヘヘ」ギュー

妹「お前、ほんといい加減にしろよ」

母「待ちなさい!!」

妹「うおっ!?いきなり大声出さないでよ!?びっくりしたじゃん!」


助手「お義母さんにはもう話すことはありません」

母「兄・・・こっちおいで」

助手「兄先輩・・・そんな奴の言葉なんて聞かなくて」

兄「お母さぁぁぁあん!!!」ギュゥ

妹「おい!お兄ちゃんしっかりしろよ!おい!!」

母「ごめんねぇ・・・本当にごめんねぇ・・・」ギュ

兄「うぅん・・・いいんです!僕が悪かったから!ぐずっ」ギュー

助手「・・・・・・・・・っふ・・・」

妹「お前、何をしたり顔でやってやったみたいな雰囲気にしてるんだよ。意味わかんねえよ!説明しろよ!」

助手「説明なんていりませんよ。・・・これが家族愛です」






そう言って、助手さんは眼鏡をクイっとあげた





おわり

ちょうどで20でキリが良いですね!
ありがとうございました
良いお年を!

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