少女「わぁ!お花畑に巨人さんがいるー!」ロボット『……』 (109)





少女「すっごーい!大きーい!」

少女「おとーさん5人分ぐらいはあるかなぁ?」ジーッ

ロボ『……』


少女「……ねぇ!」

少女「あなた、お名前なんていうの?」

ロボ『……』






SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1462167100





少女「……喋らないかぁ」

少女「ちぇーっ」

少女「たまたま見つけたお花畑がいきなり消えたと思ったら……」

少女「地面がヘンテコな巨人に変わっちゃったから、すごくワクワクしたのに……」シュン

少女「つまんないのーっ」ポケッ


ロボ『……当機ハ……』ゴゴ…

少女「ひゃっ!」クテン








少女「すごい、起き上がりはじめた……!」ワクワク


ロボ『大陸連邦軍機動防空兵団第3中隊所属』ゴゴゴ

ロボ『第8世代型“Autonomy Thought Interceptor=ATI・Typeβ-3140”デス』ゴゴゴ…

ロボ『現在、海洋都市側ノ戦略兵器使用ニ伴ウ電磁パルスノ影響ニヨリ』

ロボ『自律思考知能ニ深刻ナ障害ガ発生シテイマス』

ロボ『母艦“ル・ファンタスク”及ビ友軍間ニオケル連絡途絶、発信尚モ継続中』

少女「ん、んん……??」


少女(なんか言ってるけど……)

少女(でも、さっぱり分かんないや)








少女「……ね、ねぇ!さっきのお花畑はどこに消えちゃったの?」

少女「そもそもこんな荒野にお花が咲いてることも不自然だったし」

少女「お花を摘もうとしても、なぜか透けて手に取れなかったしさー」

少女「……ひょっとして魔法?」


ロボ『先程ノ映像ハ当機ノ秘匿プログラムニヨル“ホログラム”デス』

ロボ『自律思考知能ノ復旧マデ、敵視認ニヨル発見ヲ防グ目的有リ』

ロボ『先刻、復旧ガ完了シタタメ、解除シマシタ』

少女「むむむ、なんだか難しい言葉ばっかり……」








少女「!」

少女「そんなことよりあなた、太ももから下がなくなってるじゃない!」

ロボ『推進・歩行機構ノ被害甚大ニツキ、当機ハ“ナノマシン修復”完了マデ待機』

ロボ『事態ハ緊急ヲ要シマス』

少女「うわぁいたそー……大丈夫?」ナデナデ

ロボ『当機ニ疑似痛覚器官ハ導入サレテイマセン』

少女「えっと、それはつまりいたくないってこと?」

ロボ『ハイ』

少女「そっか、良かった……のかなぁ」








少女「私、ここまでのお話……よく分かってないんだけど」

少女「あなた、誰かと戦ってたの?」

ロボ『肯定シマス』

ロボ『殲滅対象ハ海洋都市国家ニ有リ』

少女「そ、そっか」

少女「でも、そんな恰好じゃ……」

ロボ『“頭部AAレーザー”及ビ“胸部ポジトロンカノン”復旧ノ完了ヲ確認、当機ハ地表ヨリ交戦可能デス』

少女「……そう」


少女「……でも、安心して!」ニコッ

少女「ここは何もない荒野だけど、集落に悪い人はいないし」

少女「争いなんて、起きっこないところだからっ!」

ロボ『……?』








少女「えっと、あなたのお名前はたしか……」

ロボ『当機ハ、大陸連邦軍機動防空兵……』

少女「うぅ~ん、長ったらしいなぁ!」


少女「呼び方はしばらく考えることにする……」

ロボ『……』

少女「……おっと、もうすぐ暗くなっちゃう!」

少女「私はもう帰るから、明日もここにいてね?」

少女「勝手にいなくなっちゃ、ヤなんだから!」

少女「じゃーねー!」ブンブン

ロボ『…………』


……
…………
………………







少女「こんにちは!」

ロボ『……』

少女「今日はあなたにお土産を持ってきたの!」

ロボ『……』


少女「じゃ~ん!集落でとれたばかりのじゃがいも!」

少女「あなたが何を食べられるのか分からなかったから、とりあえず蒸かしてきたけど……」

少女「どうかなっ?」

ロボ『……当機ハ半永久稼働ガ可能、補給ハ不要』

ロボ『マタ、食料ノ摂取ハ不可能デス』

少女「そうなの?なーんだ……」シュン








少女「じゃあ、もったいないから私がいただきまーす!」

少女「お隣失礼するね!」

ロボ『……』


少女「……うん、おいしいっ!」モグモグ

少女「こうやって食べることを楽しめないなんて、あなたも大変ね」クスッ

ロボ『当機ニハ不要ナプロセスデス』

少女「…………」モグモグ


少女「お仲間さん、見つかった?」

ロボ『依然不明』

ロボ『発信継続シマス』

少女「そっ」








少女「えへへ、お仲間さんが見つかるまで……私があなたを守ってあげるね」

ロボ『……我ガ連邦国民ノ戦意高揚ハ望マシキ傾向デス』

ロボ『貴官ノ考エヲ支持致シマス』

少女「うぅん、なんか違うんだけどなぁ……」

少女「ま、いっか」


少女「それより私、あなたのお話も聞きたいな」

ロボ『オハナシ……情報交換ノ意図ト判断シマス』

少女「うん、もうそれでいいよ」

少女「私ばっかり話してちゃつまんないしさ!」

ロボ『……セキュリティ解除中、情報開示ヲ承諾』








ロボ『知ッテノ通リ、我ガ大陸連邦国ハ現在』

ロボ『海洋都市国家群ト食糧問題ニ起因スル戦争状態ニ有リマス』

ロボ『当機ハ敵航空艦及ビ随伴機ノ迎撃ヲ目的トシテ、全4560機ガ作ラレマシタ』

ロボ『当機ノ武装ハ第3世代航空艦搭載ノ“フォトンバルジ”ヲ貫徹可能ナ“360㎜ポジトロンカノン”ヲ……』

少女「ストップ、ストーップ!」オロオロ


少女「だから難しいお話はやめてよー!」

少女「なんか、こう……もっと、楽しいお話はできないの!?」

ロボ『国民及ビ軍施設ヲ守ル事ガ当機ニ課セラレタ責務デス』

ロボ『“タノシイオハナシ”ハ該当データガ存在シマセン、ヨッテ現状不可』

少女「そうなんだ……ざんねん」








少女「じゃあ、やっぱり私が教えてあげないとね」ニコッ

ロボ『必要ハアリマセン』

少女「あなたにはなくても、私にはあるのっ!」

少女「だって、集落には同年代の子がいないから……」

少女「私、すごく寂しかったんだもん」

ロボ『……』

少女「あなたはすごく変わり者だから、私がついていないとだめそうだし」


少女「とにかく、今からあなたと私は友達ねっ」

ロボ『トモダチ』

少女「そう!」

少女「だってあなた、お仲間とはぐれちゃったんでしょ?」

少女「だったら……ね?」

ロボ『…………』


……
…………
………………



でかけますので、一旦ここまでです

こんどは夜に投下の予定です
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます





少女「やっほー!」

ロボ『……』

少女「今日もここにいてくれたんだね、感謝感謝っ」

ロボ『……当機ハ現在、脚部ノ修復ニアタリ、移動ハ困難デス』

少女「あぁ、そうでした」テヘッ


少女「……実はね」

少女「今日、あなたに相談があってきたんだ」

ロボ『……』

少女「困ってるのは私と言うより、おとーさんたちなんだけど」

少女「……いや、やっぱり私にとっても困ることかな……」








少女「集落の井戸が今朝ね、急に枯れちゃったんだって」

少女「今、大人たちでどうするかを考えてるところなんだけど……」

少女「でも、良い考えが思いつかなかったら……」

少女「私たち、この地を離れなくちゃいけなくなるの」

ロボ『……』


少女「全然楽しい話じゃなくてごめんね?」

少女「でも、ここは私が生まれ育ったところだし……」

少女「それに、せっかくあなたともお友達になれたのに」

少女「こんなに早く離れることになっちゃうなんて、私……やだよ」








少女「ねぇ……よそから来たあなたなら、何か良い方法知らないかな?」

少女「お願いっ!些細なことでも、なんでもいいから!」

少女「ここを離れなくてもいいように、私に知恵を貸してほしいの!」

ロボ『……』

少女「……はぁ」

少女「そうだよね……知るわけ、ないよね」シュン

少女「ごめんね、足を治してるところをお邪魔し……」


ロボ『……貴官ノ所属スルコロニーノ位置ヲ指定シテクダサイ』

少女「えっ、コ、コロニー?」

少女「集落のことかな、それなら……」








少女「だいたいあっちの方だけど……」ビシッ

ロボ『……』

ロボ『――Operation:Acoustic detection――』ピコーン

少女「!?」ビクッ


少女「何!?何なの!?」オロオロ

ロボ『――Mission objective:Securing water――』

ロボ『――Ready――』ガシュン

ロボ『――ピーッ――ガガッ――』


ズンッ

ズゥゥゥウン……ッ


少女「きゃああぁっ!」ゴゴゴゴ

ロボ『――Completion――』








少女「い、今のは何!?」

少女「地面が一瞬、凄い勢いで揺れて……」

ロボ『……季節変動ニ起因スル、地下水位ノ変動ガ確認サレマシタ』

少女「え……えぇーっ!」

少女「今ので分かっちゃったの!?」

少女「すごい……すごーい!」ピョンッ

ロボ『対応データベースノ参照中……待機ヲ願イマス』


ロボ『参照終了――オニム社製完全自動式取水装置ノ導入ヲ推奨』

少女「!」ガーン

少女「そんなわけのわからないもの、集落にあるわけないよぉ……」ガクッ








ロボ『デハ、ヨリ原始的手法ニヨル方法ノ参照』

少女(なんだろう、すこし馬鹿にされた気分……)


ロボ『……対応策:取水地ノ口径ヲ広クシマショウ』

ロボ『具体的ナプランヲ提示シマス』ピカッ

少女「!」

少女「何これ!光で……空中に人と井戸の絵が……!」ドキドキ

ロボ『映像ノ再生時間ハ16分デス』


ロボ『……』ピカーッ

少女「……へー!……ほー!……なるほど……!」



……
…………
………………







少女「先生!せんせー!」ダダダッ

ロボ『……センセイ』

少女「そう、あなたを先生って呼ぶことにしたの!」ニコッ


少女「あれからね、集落の井戸からまた水が出るようになったの!」

少女「おとーさんたちも凄い大喜びでさっ」

少女「今日はお礼を言いに来たんだよ!」

ロボ『……国民ノ生命ヲ守ル事ガ当機ニ課セラレタ責務デス』

少女「むむ、お仕事ってことかな?」

少女「まぁなんでもいいよ……先生、本当にありがとっ!」

ロボ『……』








少女「先生の体……よく見ると土まみれだね」

ロボ『……』

少女「今日は布きれも持ってきたし」

少女「この間のお礼に、今から体をきれいに拭いてあげるね!」ニコッ

ロボ『……?』

少女「だって、汚れたままじゃ気持ち悪いでしょ?」

少女「ちょっと待ってて、今から登るから……」

少女「んしょ、んしょっ」グイグイ

ロボ『……』








少女「……ふふっ、どうですかー?」フキフキ

少女「気持ちいいですかー?」フキフキ

ロボ『……非効率ナ行動デス』

ロボ『不要ナエネルギーノ消耗ニ繋ガルタメ、奨励サレマセン』

少女「いいのいいの!」

少女「私がいいんだから、いいのーっ」

少女「ふんふ~ん♪」フキフキ

ロボ『…………』








ロボ『……』ピカピカ

少女「えっへん!」

少女「どぉ?さっぱりしたでしょう?」

ロボ『……ワカリマセン』

少女「そう……ざんねん」クスッ


少女「それより、さぁ」モジモジ

少女「この間の……光でピカーってやる奴……」

少女「あれ、もう一度見せてくれない?」

ロボ『使用目的ノ提示ヲ願イマス』

少女「うぅんと……そうだなー……」ムムム


少女「……興味?」テヘッ








少女「……」ワクワク

ロボ『――奴らの魔の手より残された自然を守り、我々大陸連邦の繁栄を盤石なものとする――』ピカーッ

ロボ『――卑劣な海洋都市の褐色人種どもを我々と共に、この星から駆逐しよう――』ピカーッ

ロボ『――有望な若者の入隊を強く望むッ――』ピカーッ


プツンッ


ロボ『……当映像ハ開戦当初ニ制作サレタ、戦意高揚ヲ目的トシタ映画作品デス』

少女「うーん、言ってることは相変わらず意味分かんないけど……」

少女「でも、途中で映ったたくさんの木とか動物とか、なんかすごく大きな建物とか!」

少女「私があまり見たことないものばかりで、これはとてもすごかったよ!」ニコニコ








少女「他にはなんかないの?」

少女「たとえば、ちっちゃくてかわいい動物が映ってるのとかさ~」

ロボ『小動物ヲ含ム映像:一件』

ロボ『陽電子加速器ヲ用イタ小動物照射実験記録』

少女「なんだろーそれ?」

少女「でもま、かわいい動物が見られるならそれでいいよっ」ニコッ

ロボ『了解』ピカッ



少女「……キャー!」ガーン


……
…………
………………







少女「せんせー!」

ロボ『……』

少女「今日はね、おとーさん達が……」

少女「あなたに会いたいって言ってたから、連れて来たよ!」

少女「さ、おとーさんも挨拶して!」


父「こ、これは大きい……!」

村人1「これが少女ちゃんの言っていた先生か……!」

ロボ『……貴官等ノ訪問目的ヲ問イマス』

村人2「し、しゃべった!」


ざわざわ……








父「……せ、先日の井戸の一件……!」

父「集落の長として、心から感謝の言葉を申し上げます……」

父「しかし、差し出がましい話ではありますが……あなた様にもう一つ」

父「ご教授いただきたい問題が御座います……!」

ロボ『……』


父「実は……我々が育てた作物を、近年増えはじめた害鳥が荒らしてゆくのです」

父「このままでは、私達の生活はいずれ成り立たなくなるでしょう……」

父「そうなる前に、有効な手立てをご提示いただきたいのです!」








父「すでに今も、われわれの集落の真上にあれほどの数の群れを作っています……」

父「このままでは……」

少女「……ねぇ、そういうことなの」

少女「なんとかならないかな?」

ロボ『……』


ロボ『――Operation:Warning shot――』ピコーン

ロボ『――Mission objective:Enemy exclusion――』

村人「「おぉ……!」」ザワザワ

ロボ『――Weapon:Anti-air laser cannon――』ガシュンガシュン

ロボ『――Ready――』カシャン








バシュッ!


「「ッ!!」」


その場にいた大人達は、瞬時にこの上ない戦慄を覚えた。

“先生”の頭部から露出した鈍色の筒が、一筋の眩い光の帯を放ったためだ。
そして、それはやがて集落の空を覆っていた鳥たちの群れをかすめ、遥か彼方の入道雲に巨大な穴を空けた。

鳥の群れが散り散りとなり、慌てて集落を離れて行く。
だが同時に、光景を目に焼き付けた周囲の大人達も、一目散にこの場を逃げ離れて行った。



村人「ひ、ひぃ~っ!」ドタバタ

ロボ『威嚇射撃ノ成功ヲ確認……』

父「なんと恐ろしい……!」

父「こ、これほど危険な代物だったとは!」ダッ

少女「ち、ちょっと!みんな待ってよー!」

少女「もぉ~、先生もやり過ぎだよ~っ」ダダダッ

ロボ『……』


……
…………
………………








その日の夜。

突如激しく降りだした恵みの雨が、“先生”に近づく少女の身体に容赦なく打ちつけてられていった。

だが、その幼い顔を伝い流れるものは、決して雨だけではなかった。



ザァァァァァ……


ロボ『……』

少女「……おとーさんが、二度と先生に近づくなって言ったから」グスッ

少女「……そんなのいやだって、ケンカして……家出してきちゃった……」

少女「だから、今日からはあなたの傍で寝させてもらうね……」

ロボ『……』








少女「おとーさんの……ばか」

少女「この間の井戸だって、鳥のことだって……」

少女「先生がいなかったら、どうにもならなかったくせに……」グスッ


ザァァァァァ……


少女「……雨」

少女「……冷たいなぁ」

ロボ『……』








ゴゴゴ……


少女「?」


ゴウン……


少女「あっ……先生の手……」

少女「もしかして、雨避けになってくれたの……?」

ロボ『……体温ノ低下ハ、身体機能及ビ生命活動ニ多大ナ支障ヲキタシマス』

少女「……そか」

少女「ありがと」








少女「……あなた、優しいんだね」ニコ

ロボ『国民ノ生命ヲ守ル事ガ、当機ニ課セラレタ責務デス』

少女「あぁ、そうだった」クスッ



少女「ふふっ、先生の手……触ると暖かい……」

ロボ『……復旧過程ニオケル、電気系統ノ異常デス』

少女「なんだっていいよ」

少女「……もうすこし、このままで……」スッ…

ロボ『了解』








ザァァァァァ……



少女「スー……スー……」

ロボ『……』



ロボ『……』チカッ チカッ








少女「……スー……」


父「おい」

少女「……ん……?」

父「起きろ……」

少女「……っ!」ガバッ

少女「お、おとーさんっ!?」

父「やはり、ここにいたんだな」クスッ

少女「ど……どうしてここに……?」








父「……お前の先生が、知らせて下さったんだよ」

少女「え……!」

ロボ『……』


父「怒鳴ったりして、すまないことをしたな……」

少女「う、ううん……こっちこそ」クスッ

少女「……心配かけて、ごめん」

父「……ん」


父「よし、“今日は”もう帰ろう」

少女「……うんっ」

少女「それじゃあね、先生」ニコッ

少女「……ありがとう」

ロボ『……』


……
…………
………………



眠いので今日はここまでにします

早ければ明日の午前中に終わると思いますが、約束はできません……申し訳ありません

ここまで読んでいただいた方、ありがとうございます





少女「先生、こんにちは!」

ロボ『……』

少女「今日はねー、なんとなんと!」

少女「じゃーんっ!」


少年「……」フルフル

少女「私たちの、新しいお友達を連れて来たのっ!」








少女「すごいんだよ、この子!」

少女「たくさんの仲間と一緒に、海の向こうからここまでやって来たんだって!」

ロボ『……』

少女「ホラ、よく見るとお肌の色も違うでしょ?」グイグイ

少年「……っ」オロオロ


少女「この子達が住んでた場所、海に沈んじゃったから……」

少女「新しく住むところを探して、ずっと旅をしていたんだって」

少女「それで、この集落に受け入れることになるかもしれないの!」








少女「で、今おとーさんがあっちのリーダーの人とお話してるところなんだ」

少女「その間暇だから、ここに連れて来たんだけど……」

少女「おとーさんには分かっても、私にはこの子たちの言葉が分からないのよ」シュン

少女「だから、この子ともっと仲良くなるために……あっちの言葉を分かりやすくしてくれないかな」

少女「あなたなら、できるでしょ?」

ロボ『……』


少年「シドゥ……リ・マティ……(こ、こんにちは)」

ロボ『……!』








ロボ『適合率96%、“敵性言語”ト断定』コーン

ロボ『当機ハコレヨリ臨戦態勢ヘ移行、敵勢力排除ヲ速ヤカニ遂行シマス』カシュン

少女「え、えぇっ!?」

少年「!?」ビクッ

ロボ『敵味方識別、了』コンコン

ロボ『――Operation:War readiness――』カシュン

ロボ『――Weapon:Anti-human las……』ギギ…ガゴ…


少女「やめてーーーーっ!」

ロボ『……ッ』グッ








少女「ちょっと!あなた、またこの間と同じことをする気!?」ポカポカ

少女「この子たち、やっと安心して住める場所を見つけたんだよ!」

少女「それなのに……いきなり“敵”だって決めつけて、追い出そうとしないでよっ!」


少年「…………!」ガタガタ

少女「ホラ!この子も、すごく怖がってるじゃない!」

少女「その頭のしまって!謝って!」プンプン

ロボ『……』








ロボ『……臨戦態勢解除指令、受諾』カシュン

ロボ『インス・ミ・ファム(誤認、謝罪致します)』

少年「!」ビクッ

少年「……!」コクッコクッ

少女「ん?謝ってくれた……のかな?」


少女「ほっ、よかった……」

少女「これで、みんなお友達になれるねっ!」ニコッ

少年「……」ドキドキ

ロボ『……トモダチ』


少女「さっ、それじゃ気を取り直して……」

少女「先生っ、この子の言葉を教えて?」


……
…………
………………







ロボ『……臨戦態勢解除指令、受諾』カシュン

ロボ『インス・ミ・ファム(誤認、謝罪致します)』

少年「!」ビクッ

少年「……!」コクッコクッ

少女「ん?謝ってくれた……のかな?」


少女「ほっ、よかった……」

少女「これで、みんなお友達になれるねっ!」ニコッ

少年「……」ドキドキ

ロボ『……トモダチ』


少女「さっ、それじゃ気を取り直して……」

少女「先生っ、この子の言葉を教えて?」


……
…………
………………







少年「……こん、に、ちは」

ロボ『……』

少年「先生の、おか、げで、こちの言葉、しゃべれる、なた」

少年「ありが、とう」

ロボ『連邦義勇兵ノ育成ハ、当機自律思考知能ニ課セラレタ義務ノヒトツデス』


少年「今日、あの子、の、かわり、きた」

ロボ『……』

少年「少しの、間、来られな、い」

少年「カラ」

ロボ『……』








少年「それ、じゃ」ブンブン

ロボ『……』



……
…………
………………



ロボ『……』








――当機ノ存在意義――


――アラユル手段ヲ講ジ、戦争ヲ勝利ニ導クコト――




「先生……?」








ロボ『……』

少女「……ごめんね、こんな夜中に……」

少女「それに、長らくここに来られなくて……」

ロボ『……当機ハ、メンテナンスフリーデス』

少女「あはは、そっかぁ……」

少女「お隣、失礼するね」スッ








少女「…………」

少女「……おとーさんがね」

少女「亡くなったの」








ロボ『……』

少女「病気、だったみたい」

少女「ずっと……隠してたんだって」

少女「……先生にも、治す方法を聞こうと思ったんだけど」

少女「お父さんがね……止めたの」

少女「これが、私の運命だからって……」

ロボ『……』


少女「……変だよねっ」

少女「素直に苦しいよーって、みんなに言ってくれれば……」

少女「……あんなに、苦しまなくてよかったかも……しれないのに」








少女「へんだよ……へん」グスッ

少女「……おとーさん……」



少女「……ひぐっ……あ……」



少女「ああ……あぁぁぁぁっ!」ポロ…ポロ…


ロボ『……』








少女「……ふぅ……」

少女「なんか、いっぱい泣いたら……楽になっちゃった」ゴシゴシ

少女「泣いてばっかでごめん……あなたは楽しくなかったよね?」

ロボ『……』

少女「……あーあ、こんなんじゃだめよねっ」

少女「これから、集落のリーダーを継いで行かなくちゃいけないのにさ」


少女「……だから、ね?」

少女「もう大丈夫」フフッ

ロボ『……脳波、依然不安定デス』

少女「あはは……」








少女「……あ」チラッ

少女「お星さま、とても綺麗……」

少女「ねぇ、そう思わない?」フフッ

ロボ『……同意シマス』

ロボ『連邦首都ト比較シ、天体ノ視認性極メテ良好』


ロボ『友軍、又ハ衛星リンク途絶時、当機ハ天測航法ニヨリ現在位置ヲ特定シマス』

少女「てんそくこうほう?」

ロボ『天体ト視地平トノ間ノ角度ヲ測定シ、地球上ノ現在位置ヲ求メル技法デス』

ロボ『故ニ、宇宙ニ広ガリシ天体ハ、我々ニトッテノ最後ノ道標』

少女「へぇ……」









少女「……じゃあ、おとーさんもさ」

少女「あのたくさんのお星さまのうちのひとつになって……」


少女「私を導いてくれるのかな」

ロボ『……』










ロボ『可能性ノ試算中……』ピピピ

少女「あはは、それはもういいよっ」



少女「……私、やれるよ」ニコッ

少女「きっと」

ロボ『……』


……
…………
………………







少女「こんにちは」

少年「こんに、ちは」

ロボ『……』


少女「今日はね、私の誕生日なんだよっ」

少女「これで……16歳になったのかな?」

少年「おめで、とう」ニコッ

少女「だから、あなたにも祝ってもらおうと思ってここに来たの!」

少年「ここ、来た」

ロボ『……』








ロボ『――生誕日を迎えた隊員一同へ――』ピカーッ

少女「なぁに、このハゲた偉そうな格好のおじさん!」ケラケラ

少年「それ、失、礼」オロオロ


ロボ『――諸君らの日々の奮闘により、連邦国の尊い平和は保たれている――』ピカーッ

ロボ『――誠に感謝する、ありがとう――』ピカーッ

ロボ『――そして、おめでとう――』ピカーッ


プツン


……
…………
………………







少女「こんにちは」

ロボ『……』

少女「今日はわたし一人よ」

少女「集落の方は、おとーさんのお友達がよく支えてくれるから……うまく行ってるわ」

少女「だから、暇をもらっちゃったの」クスッ


少女「はいっ、プレゼント!」スッ

ロボ『……?』








少女「知ってた?今日はあなたと出会って……3年目の日なんだよっ」

少女「そしてこれは、海の向こうから来た人たちが持ち込んだお花……」

少女「そのお花がたくさん咲きはじめたから、あなたの花飾りを作ったの!」

少女「今、頭に乗せてあげるから……少し待っててね!」

ロボ『……』

少女「んしょ、んしょ……」グイグイ








少女「うん!よく似合ってる!」ニコッ

少女「がんばって大きいのを作った甲斐があったよ」

ロボ『……』

少女「……嬉しい?」

ロボ『……悪影響、アリマセン』

少女「そっ」


……
…………
………………







ロボ『……』

村人「……お久しぶりです」


村人「あれから長の娘は……よく頑張ってくれています」

村人「ですがひとつ、彼女には話せずにいることが……」








村人「お願いです」バッ

ロボ『……』

村人「この集落を、あなたの力で……」

村人「他集落に対し、絶対的な優位に立たせてはもらえないでしょうか」








ロボ『……』

村人「あなたの力は3年前のあの時、この目でしかと見届けました」

村人「あの光の帯を用いた他集落との交渉を行えば、彼らは有無を問わさずこちらの条件を飲むでしょう」

村人「それによって、この集落はより繁栄を極める……私はそれを望んでいます」


村人「私に、手を貸しては……頂けませんか……!」

村人「私たちには……あなたの力が必要です!」

村人「どうか……!」








ロボ『……当機ハ迎撃ヲ目的トシタ、インターセプター』

ロボ『制圧任務ハ、作戦用途ノ範疇デハアリマセン』

村人「ぐ……」


ロボ『……又、貴官等地域ノ文明水準ニオイテ、当機ノ性能ハ突出シテイマス』

ロボ『行キ過ギタチカラハ、イズレ敵勢力ニ対抗ヲ目的トシタ技術革新ヲ与エル恐レガアリマス』

ロボ『現状、当地域ノパワーバランスハ極メテ穏ヤカナ均衡ヲ保ッテイル』

ロボ『現均衡ヲ手放スコトハ、安息ニ満チタ現状ノ再起ガ不能トナル事態ヲ引キ起コシマス』

村人「……っ!」








村人「……分かりました……」ガクッ

ロボ『提案ノゴ理解、感謝致シマス……』


……
…………
………………







ロボ『……』ピヨッピヨッ

少女「あはは、頭に鳥がたくさんっ!」

少年「あははっ」

少女「……」チラッ


少女「……そういえば先生の足、直って来てるみたいだねっ」

ロボ『“ナノマシン修復”進行度78%』

少女「時間はかかってるけど、目途が立ってよかったね!」








少女「……足が直ったら、さ」

少女「先生は……仲間の下に帰っちゃうのかな」

少年「?」


ロボ『……肯定シマス』

ロボ『部隊復帰後、通常迎撃任務ニ従事』

少女「…………そう」








少女「……いやっ」

少女「そんなの、やだよっ!」ダッ


タタタ……ッ


少年「え、えっ?」オロオロ

ロボ『……』


……
…………
………………







少女「こんにちは」

ロボ『……』

少女「昨日は……勝手に帰ってしまって、ごめんなさい」ペコッ


少女「……でも、良いものを持ってきたの!」

少女「じゃーん!」スッ

少女「最近、うちの集落にやって来たおじいさんが持ってた書物!」


少女「……これによると、あなたはね……」









少女「……もう、戦わなくていいんだって」


ロボ『?』










少女「だって……」



少女「あなたの戦争は何千年も前に終わったんだから」









ロボ『……』

少女「陸の人と海の人はたくさん戦ったけど……」

少女「でも、どっちが勝ったのか……分からないんだって」

少女「……それはそうだよね」


少女「だって、少し食べ物が足りないからって起こった戦いのせいで」

少女「陸の緑がほとんどなくなって、海に住む人の住処がなくなっちゃったんだから」

少女「……どっちも、勝ったなんて言えないよねっ」








少女「あ、でも……そのおかげで、今の私たちがここにいるのよね」

少女「えへへ……なんか、複雑だなぁ」

ロボ『……』


少女「……まぁ、そういうことだから!」

少女「あなたはもう戦わなくていいし、帰る必要もないの」ニコッ

少女「だからさ、ずっと……」

少女「私たちとこの集落に……」



ロボ『――Foundation program:start――』ピー

少女「!?」








ロボ『ナノマシン供給機停止』

ロボ『終戦規定ニツキ、当機ハ間モナク……』



ロボ『“自壊プログラム”ヲ……起動シマス』

少女「!?」








少女「自壊……って……!」

少女「先生、死んじゃうってこと……!?」

ロボ『……』


ロボ『当機ハ、“Autonomy Thought Interceptor=ATI・Typeβ-3140”』

ロボ『自律思考知能ニ基ヅキ、作戦行動ガ可能デス』

ロボ『戦争終結後、当機ノ自律思考知能ノ成長ガ人間思考ヲ凌駕シ』

ロボ『人類ヘノ反乱ヲ防グベク、デベロッパーガ搭載シタ根幹ノプログラムデス』

少女「そんな……!」








少女「心優しいあなたが、反乱なんてするわけないじゃない!」

ロボ『……当機ノ知能ハ、“ココロ”デハアリマセン』

ロボ『人ガ作リ出シ、人ニヨッテ管理サレルベキ領域……』ゴゴゴ…

少女「でもおかしいよ、そんなの!」

少女「あなたは嫌じゃないの!?」

少女「死にたくなんか、ないんじゃないの!?」

ロボ『……』ゴゴゴ








ロボ『当機ハ……“兵器”デス』ゴゴゴ

少女「違うっ!」

ロボ『アラユル手段ヲ講ジ、戦争ヲ勝利ニ導クコトガ存在意義……』

少女「違うっ!絶対に……違う……!」ブンブンッ

ロボ『プログラムニハ……抗エマセン』

ロボ『又、抗ウコトモ望ミマセン』

少女「……っ!」


少女「ひどいよ……!」

少女「せっかく戦争が終わって……静かに暮らせるようになったのに……!」








ロボ『……当機ハ間モナク……自壊ノ後……』ボロッ…

ロボ『ナノマシンノ最終……プロセスニヨリ、有機土壌ト……ナリマス』ボロボロッ

少女「……」

ロボ『……自壊後――ピピピツ――当機ニ……』ゴゴゴ……



ロボ『……タクサンノ――ピーッ――“オ花”ヲ……』

ロボ『ガガガ――ピー――植エテ、クダサ……イ』ボロボロッ

少女「!!」








ロボ『ソs――ピーピー――sシテt……』バキッ

ロボ『貴官ハ――ウィム――ピーピー――貴女ハ……』ズゥン

ロボ『……当機kヲ……――ガガガッ――』ボロッ



ロボ『――私ヲ――』

ロボ『――ドウカ、忘レナイデクダサイ――』



ズゥゥゥ……ン……



少女「……」ポロ…ポロ…









少女「…………」

少女「最後の最後に……ワガママなんて……」グスッ


少女「……先生らしく……ないよ……」ポロ…ポロ…










少女「……」

少女「……おやすみなさい……」

少女「……先生……」ポロ…ポロ…




……
…………
………………









チュン チュン


子供「お花畑だーっ!」ピョンピョン

子供「きゃははっ!」ダダッ

男性「そ、そんなに走っちゃあぶないよっ」オロオロ

女性「……ふふっ」



女性「誰に似たのかなぁ……」

男性「……」ジーッ








タタタッ…


子供「?」

子供「おかーさん!この土……」

子供「大きな手の形をしてるよ?」

女性「……ええ、そうなの」クスッ


女性「よかったら……触れてあげて」ニコッ

子供「え、いいの……?」

子供「バッチィって……怒らないの?」

女性「怒らないよっ」クスッ









子供「……」スッ

子供「なんだか、あったかいなぁ」

女性「ねっ」

男性「……」ニコッ









女性(……こんにちは、先生)

女性(この子を連れてきたのは……久しぶりだね)

女性(相変わらず……お肌の色は私とも、彼とも少し違うけど……)

女性(でも、とても元気で優しい子に育ってるよ)



女性(あなたたちの戦争は、みんなのためにはならなかった)

女性(でも、それで間違いを知ったから……今を生きる人は、本当の意味で強くなれたんだよ)

女性(……ありがとうね、先生)









女性「……」

女性「……それじゃ、私たち行くね?」


『……』









子供「……いつかね」

女性「ん?」

子供「おとーさんが住んでいた“海”も見てみたいなぁ」

男性「!」

女性「ふふっ、それもいいかもね……」ニコッ

女性「いつがいいかなー……」

子供「えっとねー!」


……
…………
………………








広大な花畑の、土でできた大きな手。

そこにはまるで、この手が包んでそれを守っているかのように……

一際立派な、一輪の花が咲いている。


それは、その姿を見た誰もが忘れることのない……。

とても美しい花だったという。




――――――――――fin―――――――――――







王道を往く(迫真)
こういうお話を久しく見なかったので、自分で書かせていただきました。



以下は、主な一次創作の過去作の一部です。

老人「複葉機でエイリアンをやっつけるんじゃ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1454765251

洒落たバーでカシオレを頼んだ男の話
洒落たバーでカシオレを頼んだ男の話 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1454927368/)

レシプロ時代の最後を見た男の話
レシプロ時代の最後を見た男の話 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1461852727/)



普段は、艦これのSSを書いています(以下、過去作の一部)。


【艦これ】グラーフ「震度3だと……この国はもうおしまいだ!」
【艦これ】グラーフ「震度3だと……この国はもうおしまいだ!」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1452911069/)

【艦これ】ヲ級「ファミチキクダサイ」
【艦これ】ヲ級「ファミチキクダサイ」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453105658/)

【艦これ】雪風「えっ!山城さんがぎっくり腰?」
【艦これ】雪風「えっ!山城さんがぎっくり腰?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453609936/)


ここまで読んでくださった方、楽しく書かせていただきありがとうございました。




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