島村卯月「えへへ……♪」 (39)


第5回シンデレラガール総選挙応援SS その3

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卯月(私、アイドルになりました)


卯月(養成所にやって来たその人は、プロデューサーだって名乗って)

卯月(名刺を貰って、事務所へ行って、書類を埋めて)

卯月(これからよろしくね、って、握手してくれました)


卯月(ずっと憧れだった場所。いつか上がってみたかった舞台)

卯月(迎えに来てくれたのは魔法使いさんで)

卯月(「王子様じゃなくてゴメンね」って笑ってたけど)

卯月(私を迎えに来てくれたあの人は、優しそうで、ちょっと格好良くて)


卯月(……)

卯月(アイドル……私、アイドルになったんだ……)

卯月(……えへへ)



卯月「えへへ……♪」

母「もう、卯月。いつまで朝ご飯食べてるの。遅刻するわよ~?」


卯月「おはようございます♪」

P「うん。おはよう、卯月」

卯月「おはようございます、プロデューサーさんっ」

P「どうだった? 昨日の親睦会。カラオケだっけ」

卯月「はい! 凛ちゃんも未央ちゃんも、とーっても良い人でしたっ♪」

P「凛ちゃん、こわくなかった?」

卯月「ぜんぜん! 犬の……ハナコちゃんて言うんですけど、その子の話をする時、すごく嬉しそうで」

P「はは。言った通りだったでしょ?」

卯月「はい!」

P「良かった良かった。それじゃ、早速だけどお仕事があって――」

卯月「!」

P「来月のミニステージで……ん、どうかした?」

卯月「あ、いえ、あの」

P「?」

卯月「私、本当にアイドルになったんだな、って思って……」

P「うん。卯月はもうアイドルだよ。新人だけどね」

卯月「えへへ……♪」

P「……新人だけど、笑顔だけならもうトップアイドルかな」


卯月「よっ、とっ! ここで、腕を、まっすぐ~……っ!」

凛「……とっ」

未央「どうだぁっ!」

卯月「……よしっ。ビデオで確認してみましょう!」


未央「……おぉ」

凛「……へぇ」

卯月「……何だか」

凛「ダンスっぽくなってきたね」

未央「よぉし、この調子で目指すよてっぺーん!」

凛「気、早くない?」

卯月「えへへ……♪」

未央「お、何だいしまむー。にっこにこで」

卯月「えへ……何だか今の私達、アイドルっぽいなぁ、って……」



凛・未央『……いや、アイドルだからね?』

卯月「……あう」


卯月「えへへ……♪」

P「……」

卯月「ふふっ……」

P「……」

卯月「…………えへっ」

P「卯月」

卯月「……あ、はいっ。何でしょうっ?」

P「写真立て、気に入ってくれた?」

卯月「はい。とっても!」

P「誕生日プレゼント、悩んだ甲斐があって嬉しいよ」

卯月「ありがとうございます、プロデューサーさん♪」

P「ただ、さ」

卯月「?」


P「その、そろそろしまってくれないと、えっと、佐久間さん達の視線が痛い」

まゆ「いえいえお構い無く」

響子「どうぞ、続けてください!」

卯月「…………あっ」


卯月「…………えへへ」

P「……」

卯月「失敗…………しちゃいました」

P「……」

卯月「ダメだな、私って。二人のお姉さんなのに、全然頼りにならなくて」

P「……」

卯月「これなら、二人に任」

P「卯月」

卯月「……」

P「卯月は本気でやっていた。それは認めるね?」

卯月「…………はい。あれが、今の私の……本気です」

P「なら、いいんだ」

卯月「…………え?」

P「あれを本気だと認めなかったら、僕は卯月をそりゃもう怒ってたよ。げんこつだよげんこつ」

卯月「……」

P「早く次へ進みたい。みんなを楽しませたい。だからターンを飛ばしてしまって、二人とズレてしまった」


卯月「……」

P「卯月。シンデレラは一度たりとも失敗をしなかったかな」

卯月「…………いえ」

P「トップアイドルっていうのは、失敗をしないって事じゃないんだよ。分かるかな」

卯月「……」

P「まぁ、分からないならしょうがない。もう卯月には――」

卯月「…………っ!」



凛「涙は要らないって唄ってたのは誰だっけ、卯月?」

未央「もー! リーダーが居ないとしぶりんすっごい拗ねるんだからー」



P「――友達の二人から、きっちり分からせてもらうしか無いね」

卯月「…………未央ちゃん、凛ちゃん」


凛「リーダーだからってちょっと先走り過ぎ。置いてかないでよね」

未央「しまむー、しぶりんってばこんな事言ってるけどさっきま」

凛「未央」

未央「しぶりん大好き! 美人!愛してる!」

凛「そこまで行くとちょっと気持ち悪いかな」

未央「ええー……しぶりん意外に面倒……」



卯月「……えへへ。泣いてばかりじゃ、進めませんよね」

P「うん」

卯月「凛ちゃんっ! 未央ちゃんっ!」

未央「分かってるよっ♪」

凛「ほら、早く」



卯月「――島村卯月、頑張りますっ!」


未央「ほら二人とも、もっと寄って寄って!」

P「……だってさ」

卯月「べ、別にいいですよ! 未央ちゃんっ」

凛「いいじゃん。せっかくの記念だし、ほら、並んで」

卯月「……え、えへへ……じゃあ、お言葉に甘えて」



パシャッ。



P「え」

卯月「えっ?」

凛「ちょっと、早いよ未央」

未央「いや、私シャッター切ってないけど……あっ」

凛「?」

未央「スマイルシャッターだ……」


P「……」

卯月「……」

凛「何気ない卯月のはにかみで反応したって事?」

未央「みたいだね」


P「……」

未央「……」

凛「……」

卯月「……あ、あはは……?」


パシャ。パシャ、パシャッ。


P「……そのカメラ、卯月ファンかな」

凛「遂に機械まで卯月ファンに」

未央「恐るべし、しまむースマイル」

卯月「えへへ……」


卯月「わぁ……良いお店ですね」

P「そう言ってくれると思ったよ。卯月は何にする?」

卯月「えーっと……」

P「凛ちゃんのオススメがココアで、未央ちゃんがブルーベリーパフェだったかな」

卯月「……えっ? 二人と来た事があるんですか?」

P「いや、凛ちゃんと未央ちゃんの二人から話を聞いたんだ。『良い店だったよ』ってね」

卯月「……むー。二人とも、私にナイショでー……」

P「『だからしまむーと二人で行ってきなよ!』って、未央ちゃんが」

卯月「……」

P「僕は桃のコンポートに……卯月?」

卯月「えへへ……なんでしょう?」

P「何か良い事でもあった?」

卯月「いえ……ただ、友情も大切だなって」

P「……? よく分からないけど、まぁ、ライブも成功したし、好きな物頼んでよ」

卯月「はいっ! えへへ……♪」


凛「あ、これ未央に似合いそう」

未央「おおっ? こっちはしまむーにバッチシと見たっ」

卯月「……えへへ」

凛「卯月はこっちの緑とそっちの……卯月?」

卯月「あ、はい。何でしょうっ?」

凛「どうしたの? いつにも増してほわほわしてるけど」

未央「ほわほわのマシマシだねー」



卯月「うーん、何て言えばいいのかな……私、幸せだなぁって」

未央「へ?」

凛「うん?」


卯月「アイドルになって、ライブが出来て、二人とお友達になれて」

凛「……」

卯月「こうしてオフに遊び回って、毎日が楽しくて……私、幸せだなって」

未央「……」

卯月「えっと……それだけ、なんですけど」

凛「……卯月」

卯月「は、はい?」



凛「卯月、おばあちゃんみたい」

卯月「え、えぇ~っ!? ピチピチですよっ!」

未央「それと、聞き捨てならない台詞が一つ!」

卯月「えぇっ!?」

未央「友達以上の、親友でしょ?」

卯月「!!」

凛「全く、クサい台詞をよくもまぁ……」

未央「しぶりんがそれ言う~? ほっぺたも赤い癖にー。うりうり~」

凛「つっつかない」



卯月「……えへへっ♪」


P「卯月」

卯月「……プロデューサー、さん」

P「最高のライブだった。卯月は、最高のアイドルだ」

卯月「……」

P「……卯月」

卯月「わた、しっ、これ、とまらなくてっ……」

P「……」

卯月「うれしいのにっ。うれしいの、にっ、なんで、とまらっ」

P「卯月。今は、今だけは、笑う必要なんて無いんだ」

卯月「…………ひ、くっ」

P「……うん。今までで、最高の表情だ。卯月の担当で、良かったよ」

卯月「プロデュー……サー……」



P「――アイドル卒業おめでとう、卯月」



卯月「……っう、ぇうっ……わぁぁぁぁんっ! うぅぅっ――」


卯月「あ、凛ちゃんっ!」

未央「こっちこっち!」

凛「やほ。卯月も未央も、久しぶり」

未央「うんうん。お久しぶりんだね」

凛「……ホントに変わらないね、二人とも」

卯月「えへへ♪ 凛ちゃんは、前よりもっと綺麗になりましたねっ」

凛「そう? ありがと。それと、えっと」

未央「んー?」



凛「卯月。未央。アイドル卒業、おめでとう」



卯月「はい。ありがとうございますっ!」

未央「いやー、しぶりん無き後もニュージェネは頑張ったよ」

凛「知ってるよ。というか抜けただけで死んでないから」

卯月「約束した夢、ちゃんと叶えましたよ!」

凛「うん。まさか本当に二人がドーム埋めるとはね」

ごめん、注意して書いたけど分かり辛かったか

凛がNG卒業&アイドル卒業→卯月と未央がNG解散&アイドル卒業

って流れです


未央「いやー、やりきりましたなぁ、しまむーや……」

卯月「やりきりましたねー……」

凛「ん。じゃあ二人もそろそろ変わる時かな」

卯月「へ?」

未央「ほ?」

凛「恋愛解禁だし、ちゃっちゃと二人とも担当さんとやる事やったら?」



未央「……い、いやぁ……あはは……」

卯月「え、えーと……」

凛「もう隠す必要も無いし、思う存分イチャつきなよ」

卯月「そ、そうは言ってもですね……」

凛「まぁ、放っといても向こうから来るだろうけど」

未央「そ、そうかなー……?」

凛「うん、経験談。それにけっこう良いものだよ、結婚って…………」



未央(あ、これ長いやつだ)

卯月(愚痴と言い張る凛ちゃんの惚気、長いんですよね……)


P「……っ」

卯月「っ!! ……は、ぅ」

P「…………っ、卯月……」

卯月「……えへへ……P、さん……♪」

P「……痛く……ない?」

卯月「…………少し、だけ。でも」

P「……」

卯月「それ以上に……嬉しくて……」

P「卯月……」

卯月「……ん」

P「……あ、卯月、その、ちょっと」

卯月「……えへへ、Pさん……♪」

P「あの、卯月。待って。そんな笑顔で抱きし、あ」

卯月「あっ」



卯月「えへへ……♪」

P「…………死にたい」



卯月「――独立、ですか?」


P「うん」

卯月「えっと……何か、あったんですか?」

P「ああいや、事務所と折り合いが悪くなったとかじゃないよ」

卯月「なら、どうして」

P「卯月と出逢って、プロデュースしてさ。僕が、本当にやりたい事が見えてきたんだ」

卯月「……」

P「それで、その。僕一人じゃ、まだまだだからさ。事務員さんが一人、欲しいなと」

卯月「……」

P「えーと」

卯月「私、Pさんについていきます」

P「……! ……ありがとう、卯月」

卯月「でも、条件が一つありまして」

P「うん。僕に出来る事なら、何だって言ってくれ」

卯月「…………本当に、何でもですか?」

P「あくまで僕に出来る範囲内でね」


卯月「私の夢、Pさんは知ってました?」

P「うん。トップアイドル、だろう?」

卯月「はい。お花屋さんもケーキ屋さんもいいけど、やっぱりアイドルになりたくて」

P「うんうん」

卯月「だけどもう一つだけ、どうしても諦めきれない夢があるんです」

P「えっ?」

卯月「トップアイドルと同じくらい難しくて、中々叶わなくて、困ってたんです」



P「…………あー、ええと……二つだけ訊いていいかな、卯月」

卯月「はい」

P「それ…………『普通の夢』、かな?」

卯月「はい」

P「それと…………『僕にも叶えられる夢』?」

卯月「ううん。『Pさんにしか叶えられない夢』、ですね」

P「……」

卯月「……」



P「卯月」

卯月「Pさん」




卯月「私、お嫁さんになりたいです」


P「……」

卯月「あ、Pさんっ!」

P「……」

卯月「あの……どうでしょう?」

P「……言葉が見つからないってのは、こういう事かな」

卯月「もう、はっきり言ってくださいっ」



P「うん、似合ってるよ――夢を叶えようか、卯月」

卯月「はいっ♪」



P「……」

卯月「あ、花嫁姿の私に見とれちゃいましたか?」

P「……いや。プロデューサー時代の僕は、てんで半人前だったんだなって」

卯月「えぇっ!? そんな事無いですよっ!! どうしたんですかっ?」

P「うーん…………だってさ」

卯月「?」




 「そんなとびっきりの笑顔。アイドル時代に見せてほしかったなぁ、って」


 「…………えへへ。ごめんなさいっ♪」

 ― = ― ≡ ― = ―

 「――そうそう。こうやって、上の方から埃をはたいていくの」

 「む……む。と、どかない~……っ」

 「はい。そんな時はしっかりとした椅子を使いましょう!」

 「ん~……ママ、やって!」

 「あれ? 幼稚園児にはまだ難しかったかなー……?」

 「む……む……や、やるっ!」

 「はい。じゃあお願いね?」

 「うんっ! まかせて!」



 「……卯月ってさ」

 「はい?」

 「誰にでも優しいけど、あの娘にだけはちょっといじわるだよね」

 「ふふっ! 私の自慢の娘だもんっ♪」

 「……?」

 「将来は、素敵なひとと出逢ってほしいから」

 「……あー。そういう事ね」

 「娘の為なら、頑張っちゃうから!」

 「うん。ところでシンデレラさん、娘に掃除を教えるのはいいんだけどさ」

 「?」




 「……自分の部屋も、少し片付けようよ」


 「…………えへへ」


おしまい。


http://i.imgur.com/pPX6zKr.jpg
http://i.imgur.com/v4wT6rl.jpg

楓さんの話、選挙に間に合わなかった……無念

前作とか
鷹富士茄子のブーケトス ( 鷹富士茄子のブーケトス - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1462010577/) )
藤原肇「しんしんと、あたたかい夜に」 ( 藤原肇「しんしんと、あたたかい夜に」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1461923524/) )
島村卯月「裸足のまま」 ( 島村卯月「裸足のまま」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456568563/) )



  裸足のままのシンデレラへ、どうかガラスの靴を。


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