みほ「優花里さんは犬、かな」優花里「……!?」 (55)

優花里「ゆきーのしんぐん、こーりをふんでー」

優花里(次は待ちに待った戦車道の授業です。西住殿たちを誘いにいきましょう)

優花里「まだ教室にいるでしょうか……」


沙織「なら、ゆかりんはどう?」

みほ「優花里さんは……」


優花里(私のことを話している……。一体、なんでしょうか……)


みほ「――優花里さんは犬、かな?」


優花里「……!?」

優花里(犬……!? イヌ……いぬ……!?)

優花里(私は……西住殿にとって……犬……!? 犬なのですか……!?)

優花里「うわぁぁぁ!!」ダダダダッ


みほ(今、優花里さんの声がしたような。気の所為……?)

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杏「にしずみちゃーん、やっほー」

みほ「会長」

沙織「どうしたんですか?」

桃「例の件はどうなっている」

みほ「今、考えているところなんですけど、中々難しくて」

柚子「ごめんね。こんなこと頼んで」

桃「だが、適任はお前しかいない。頼むぞ、西住」

みほ「は、はい。できるだけのことはやろうと思います」

杏「そろそろ移動しないと、そど子が怒るな」

みほ「そうだった! 次、戦車道だ」

沙織「おぉ! はやくいこっ!」

杏「で、西住ちゃんは何を考えてるのかねぇ」

桃「まだ人選も決まってはいないようです」

柚子「やはり、ある程度は私たちで決めたほうが西住さんもやりやすかったのでは?」

杏「この手はいつだって貸すつもりだよー」

―戦車倉庫―

優花里「犬……犬ですか……」

優花里(確かに私は西住殿のことを心から尊敬し、敬愛し、お慕いしています)

優花里(西住殿の命令はどんなことでも従う覚悟は常に持ち合わせています)

優花里(できることならずっと西住殿のお傍にいたいと思ってもいます)

優花里(でも、だからって、犬だなんて……西住殿……)

優花里「……」

優花里「イヌ……」


みほ『ゆかり、お散歩行こっか?』

ゆかり『ワンワン!』


優花里「……」

優花里「はっ! 私は何を考えているのですか!!! ここは怒らなければならないところです!! いくら! いくら西住殿の言うことでも、聞き流せないことがあります!!」

優花里「私のことをイヌ、だなんて……イヌ……イヌかぁ……」


梓(秋山先輩、さっきからニヤニヤしてるけど、いいことあったのかな……?)

あや「また西住先輩のこと考えてそう」

優季「秋山先輩ってホント西住先輩のこと好きだよねぇ」

あゆみ「うん。きっと戦車道メンバーの中で西住先輩のこと一番愛してるよね」

桂利奈「秋山先輩は危険なことでも命令されたらためらいなく実行するもんね! かっこいいよねー」

梓「私も西住先輩のことは大好きだけど、秋山先輩には負けちゃうかも」

優季「そんなことないってぇ。梓もまけてないってぇ」

梓「いや、プラウダ戦のときみたいに走ってる戦車から飛び出せないって」


優花里「よし!! 決めました!!」


桂利奈「なんだろう?」

あゆみ「なんか決めたっぽくない?」

優季「きめたっていったもんねぇ」


優花里「やはり私は西住殿の犬ではありません!!!」


優季「自分は犬かどうかでなやんでたのかなぁ?」

カエサル「やはり若草物語がよかったのだろう」

左衛門佐「ならば次は、小公子だな」

おりょう「それぜよ」


優花里「やはり私は西住殿の犬ではありません!!!」


エルヴィン「グデーリアン? どうしたんだ、いきなり」

優花里「あ、エルヴィン殿。申し訳ありません。今、決意したのです。私は決して従順な犬なんかではない、と」

カエサル「どういうことだ」

優花里「こんなことを言ってもいいのかはわかりませんが、先ほど西住殿が私のことを犬だと……」

おりょう「ツン、か」

左衛門佐「確かにメス犬ではあるが」

優花里「やめてください!! 私は怒っているのです!!」

エルヴィン「本当に西住隊長がグデーリアンに対して犬と言ったのか?」

優花里「残念なことですが、間違いありません。この耳で確かに聞きました」

カエサル「真実であるなら酷い話だ。西住隊長に誰よりも身を捧げていたのはグデーリアンだというのに」

優花里「分かってくれますか、カエサル殿!」

カエサル「動物に喩えられていい気はしないからな」

優花里「まさしくその通りです!!」

おりょう「グデーリアンがここまで怒るとは珍しいぜよ」

左衛門佐「しかし、犬はないな」

エルヴィン「西住隊長にはなんと言った?」

優花里「いえ、まだ何も。あまりのショックで思わず逃げ出してしまって」

カエサル「言いにくいなら私から言っておこう」

優花里「いえ! 結構です。これは私から言わなくてはいけないと思うので」

エルヴィン「そうだな。グデーリアンが西住隊長と盟友関係を維持したいというのであれば、そうするべきだ」

おりょう「えらいぜよ」

左衛門佐「拙者たちも応援するでござる」

カエサル「グデーリアン。私たちはお前の味方だ」

優花里「みなさん……! ありがとうございます!!」

エルヴィン「西住隊長もそろそろ来る頃だろう。気を引き締めていけ」

梓「……」

優季「今の話、きいたぁ?」

あや「うん。きいちゃった」

桂利奈「西住先輩、そんなこといっちゃったんだぁ」

あゆみ「秋山先輩も怒るよね」

あや「ひっどい!! 西住先輩!! 優しい人だって思ってたのに!!」

桂利奈「あいぃ……」

優季「梓はどうおもう?」

梓「え?」

あや「西住先輩のこと酷いって思うでしょ!?」

桂利奈「秋山先輩がかわいそう……」

梓「あ、ああ。うん。でも、ほら、秋山先輩の勘違いってこともあるかもしれないし」

あゆみ「本当だったら?」

梓「うっ……」

あゆみ「そのときも梓は西住隊長のことを庇うの?」

みほ「みなさん、準備はいいですか?」

梓「あ……」

典子「アヒルさんチーム、いつでも行けます!!!」

カエサル「……」

優花里「はい!! バッチリでぇす!! 西住殿!!」

エルヴィン「グデーリン!!」

おりょう「おぬしは怒っていたはずぜよ」

優花里「あぁ、そうでした」

みほ「それでは戦車道の授業を――」

カエサル「待ってくれ!」

みほ「は、はい?」

カエサル「グデーリアン、いや、秋山さんから西住さんに言いたいことがあるそうだ」

みほ「え?」

優花里「カエサル殿!」

カエサル「こういうことは早めに言っておくべきだ」

みほ「なにかな、優花里さん」

優花里「……」

忍「なんか、変な雰囲気……」

妙子「トイレ、行きたいのかも」

あけび「絶対に違う」

ねこにゃー「秋山さんの様子が……」

ももがー「進化のときなり」

ぴよたん「Bボタンでキャンセルしたほうがいいぞな」

みどり子「なによ、ケンカなんかしないでよね」

希美「いつでも止める準備を」

モヨ子「救急箱の用意はできてるのよ」

ナカジマ「嫌な感じだね」

ホシノ「でも、古くなったオイルは交換したほうがいい」

ツチヤ「ホシノのいうこともわかるけど、みんなの前で交換しなくても」

スズキ「とにかく見てよう。事故になりそうなら、私たちが割って入ればいいんだし」

優花里「あ、あの、西住殿」

みほ「はい?」

優花里「私が犬とはどういうことですか」

みほ「え……優花里さん、話を……」

沙織「聞いてたんだ……」

優花里「私、犬になった覚えはありません!!!」

みほ「あ、えっと、それじゃあ、サルはどうかな?」

優花里「さ……!?」

カエサル「サルだと!?」

エルヴィン「西住隊長!! 尊厳を汚す発言は控えてくれ!!!」

おりょう「親しき仲にも礼儀は必要ぜよ!!」

優花里「うぅぅ……」

優花里「うわぁぁ!! 犬がよかったぁぁぁ!!!」ダダダッ

左衛門佐「グデーリアン!!!」

みほ「優花里さん!?」

あや「西住先輩!! サイテーです!!」

みほ「え? え?」

桂利奈「私、秋山先輩追っかける!!」

あゆみ「私も!!」

優季「私もいくぅ」

みほ「あの、どういう……」

梓「西住先輩……」

みほ「澤さん?」

梓「ごめんなさい」

みほ「澤さん! ちょっと待って!!」

カエサル「待て! 西住さん!!」

みほ「でも……」

カエサル「秋山さんはウサギさんチームに任せ、貴方はここで私たちに説明をしてもらう」

ナカジマ「まぁまぁ、落ち着いて。そんなケンカ腰で話し合いなんてできるわけないですから」

カエサル「どいてくれ!! いくらナカジマ先輩だろうと、こればかりは擁護はさせない!!」

ホシノ「だから、そんなに頭に血が上ってたら、相手の言い分が伝わらないかもしれない」

エルヴィン「しかしだな!!」

ツチヤ「なんの理由もなく西住さんが犬だの猿だの友達にいうと思う?」

おりょう「思っていなかったからこそ、憤慨しているぜよ」

左衛門佐「我が将を討ち取る覚悟もあるでござる」

スズキ「物騒な発言は禁止」

麻子「なんの騒ぎだ」

華「授業はまだ始めないのですか?」

沙織「もー、ふたりともなにしてたのよー、こんなときにー」

麻子「何かあったのか」

ねこにゃー「それが西住さんが秋山さんに犬とか猿って……」

華「まぁ……」

麻子「秋山さんが犬か……。まぁ、連想できなくもないが」

ねこにゃー「冷泉さん……それでカメさんチームは激おこなんだけど……」

麻子「そうなのか」

>>13
ねこにゃー「冷泉さん……それでカメさんチームは激おこなんだけど……」

ねこにゃー「冷泉さん……それでカバさんチームは激おこなんだけど……」

グラウンド

優花里「うぐっ……うぅぅ……」

優花里「サルだなんて……サルだなんて……そう言われるぐらいならイヌのほうがよかった……」

優花里「いえ、イヌとまではいいません……サルと言われるぐらいなら……」


みほ『散歩の時間だよ、メス豚』

ゆかり『ぶっひぃ!! さいこーだぜぇ!!』


優花里「はっ!! 違う!! 違う!! そうではありません!!! そうではなくて……!!」


みほ『ほら、ここがゆかりのトイレだよ』

ゆかり『わんっ』

みほ『ほら、早く臭いをつけて。じゃないと、トイレの場所、覚えられないよ?』

ゆかり『くぅーん……』


優花里「そうでもないんですぅ……うぅぅ……ちがうんですぅ……私はメス犬なんかじゃ……なんかじゃ……うぅぅ……」

あや「いたぁ! 秋山せんぱーい!! 大丈夫ですかー!!」

優花里「みんな……」

あゆみ「先輩、戻りましょう。戻って、西住先輩にガツンといいましょう!」

桂利奈「そうですよぉ!! ガツーンといっちゃえばいいんです!!」

優花里「でも、あれだけはっきり言われてしまうと、どういえばいいのか……」

あや「だ、だったら、先輩も西住先輩を何かの動物にたとえて呼んじゃえばいいんです!」

優花里「えぇ!? そんな、恐れ多いことできるわけが……!!」

優季「それぐらい言っても、誰も怒らないとおもいますよぉ」

あゆみ「怒ったら、私たちも怒ってやりますよ!!」

桂利奈「がおー!!」

優花里「ありがとう……。けど、やられたことをそのままやり返すのは、意味のないだから。歴史がそれを示してる」

紗希「戦争になる」

優花里「そう。泥沼になれば、もう元の関係には戻れない。それが一番怖いんです」

あや「だったら、これから秋山先輩はどう付き合うつもりなんですか。同じ戦車道受講者ってだけじゃなくて、あんこうチームの一員なのに」

優花里「それは……」

梓「あの、秋山先輩。ちょっといいですか?」

優花里「いいけど……」

あや「どこいくのー?」

梓「ごめん。先輩と二人きりで話したいの」

あゆみ「うん。わかった」

梓「こっちに行きましょう」

優花里「それで、話って?」

梓「……秋山先輩」

優花里「なに?」

梓「本当は嬉しいんじゃないですか」

優花里「な……」

梓「西住先輩に犬だって言われて、喜んでいませんか?」

優花里「な、なにを!! 可愛い後輩だろうと怒るときは……!!」

梓「どうなんですか」

優花里「そ、れは……あの……」

梓「やっぱり、嬉しいんですね……そうですよね……西住先輩に言われたら……」

優花里「いや!! 西住殿にはパートナーとして、いえ、一チームメイトとして見てほしい!! 犬なんて……イヌ……」

梓「確かに直接言われたら混乱もするし、怒るかもしれません。けど、もし、秋山先輩が心のどこかで望んでいたことだったら……」

優花里「だったら……?」

梓「それを受け入れたら、全ては丸く収まると思います」

優花里「受け入れる……!?」

梓「西住先輩の犬になることを、です」

優花里「い、いぬに……!?」


みほ『ゆかりー、こっちにおいでー』

ゆかり『にしずみどのー』

みほ『首輪、してあげるねっ』

ゆかり『ひゃっほー!!』


優花里「や、やめて!! そんなこと!! そんなこと思っては……!!」

梓「本当に、思っていないんですか」

優花里「うぅぅ……わ、わたしは……西住殿に……どうされたいんだろう……」

―倉庫―

典子「つまり、今度の文化祭でやる劇の内容を決めていたわけですね」

妙子「そういえば、戦車道受講者がでるって噂で聞きました」

おりょう「私たちも聞いたぜよ」

カエサル「それを西住さんが?」

みほ「うん。一応、受講者代表だから会長からお願いされちゃって」

エルヴィン「それはいつ?」

沙織「今日のお昼休み。ホントにいきなりだったからみぽりんも近くにいた私にしか相談できなくってさぁ」

華「そうだったのですか」

麻子「で、何をするつもりなんだ」

みほ「も、桃太郎……をやろうかな……なんて……」

ナカジマ「王道ですね」

ホシノ「高校生がやる劇かな」

ツチヤ「逆に新鮮だって」

みどり子「それで秋山に犬か猿の役を任せたかったわけ?」

>>19
みどり子「それで秋山に犬か猿の役を任せたかったわけ?」

みどり子「それで秋山さんに犬か猿の役を任せたかったわけ?」

みほ「はい。優花里さんは身体能力も高いので、そういう役がいいかなって……。もちろん、断られたら別の人に頼もうって思っていました」

忍「私ははまり役だと思います」

あけび「わたしもぉ」

左衛門佐「てっきり、私たちの若草物語が受けたから、カバさんチームで劇をやるとばかり思っていたが、西住隊長へ話が流れていたとは」

おりょう「残念ぜよ」

エルヴィン「我らの西住隊長に向かって、謝りなさい!!」

左衛門佐・おりょう・エルヴィン「「すみません!!」」

カエサル「すまない、西住さん。思い違いをしていたようだ」

みほ「いえ、私のほうこそ勘違いさせてしまって、すみません」

典子「では、みんなで秋山さんを探しにいきましょう!!」

ねこにゃー「うん。そのほうがいい」

沙織「そうだね。ゆかりんの誤解もとかないと」

華「ウサギさんチームのみなさんも飛び出していきましたからね」

麻子「やれやれ。メンドーだな」

ぴよたん「ミッション・スタートだっちゃ」

グラウンド

典子「桃太郎は誰がやるんですか」

みほ「主役だから、セリフも多いし、その、やりたい人がいれば……」

沙織「私はみぽりんがいいとおもうけどなぁー」

カエサル「同感だ」

みほ「わたしなんてムリムリ!!」

華「そんなことはないと思いますが」

麻子「かといって、会長が横やりを入れてくる可能性もある」

みどり子「主役じゃないと気が済まない人だからね」

ナカジマ「あははは。確かに、前みたいに鬼が桃太郎を倒す展開になるよりは、初めから桃太郎にしておいたほうがいいですね」

みほ「うん。けど、まだ何も決まってないも同然で……」

華「居ましたわ」

あや「みんな来ちゃった!!」

優季「秋山先輩に謝ってくれるんですか」

沙織「みんな! 話をきいて!! 実は――」

梓「みんなが迎えに来てくれたみたいですよ」

優花里「ホントだ……」

梓「どうしますか」

優花里「……」

梓「先輩。もし、ここで否定してしまったら、もう巡ってはこないと思います」

優花里「これが最初で最後ってこと……?」

梓「そうです」

優花里「西住殿の犬になる……最初で最後の……機会……」

梓「西住先輩がみんなに説得されて先輩に謝罪したら、この話は終わってしまいます」

優花里「うぅぅ……」

梓「先輩!!」

優花里「うわぁぁぁ!!」

みほ「優花里さん!?」

沙織「よかった。ゆかりん、あのね――」

優花里「西住殿!! 私を、私を、犬にしてください!! お願いします!!」

みほ「え!?」

みどり子「秋山さん? それって話を理解してるってことなの?」

優花里「はい。犬でいいんです。むしろ、その、イヌになりたいと、思っていたんです!!」

みほ「え、えっと、優花里さんは教室で私と沙織さんが話しているのを全部きいてたってことでいいのかな」

優花里「はい。だから、最初はショックでした。でも、自分の中で抑えられない感情といいますか、そういうのもが頭を擡げて……」

優花里「私はどうやら犬になりたかったのだと、先ほど自覚しました!!」

カエサル「グデーリアン。つまり、わたしたちに話してくれたときも、事情は知っていたというのか」

エルヴィン「説明するときは詳細に頼む。おかげで私たちも恥をかいてしまったぞ」

優花里「申し訳ありません」

おりょう「別にいいぜよ。二人がまた同じ杯を交わせるというのなら」

左衛門佐「大団円でござるな」

あゆみ「だよねー、西住先輩がそんな酷いこというわけないもんねー」

あや「手のひらかえさないでよー!」

優季「よかったよね、桂利奈ちゃん」

桂利奈「あい!」

梓「これでよかった……」

優季「雰囲気が悪いと、戦車にも楽しく乗れないもんねぇ」

梓「うん……秋山先輩は西住先輩に選ばれた……だから……これで……」

優季「梓ぁ?」

桃「お前たち、何をしている!! 授業はどうした!!」

杏「みんなでサボれば、サボりじゃなくて自習だな」

柚子「そんなことにはなりません!!」

みほ「すみません。ちょっと、色々あって」

桃「何があった」

みほ「もう解決しました」

桃「そんなことは聞いていない。何が色々あったのかを報告しろと言っている」

杏「まぁまぁ、河嶋。解決したっていってるんだからいいじゃん。解決したことを追及しても仕方ないしな」

桃「会長がそういうのでしたら」

みほ「そ、それじゃあ、すぐに授業を始めましょう。みなさん、戦車に乗ってください」

「「はーい!!」」

―Ⅳ号戦車内―

みほ「みなさん、準備はいいですか」

典子『いつでもいけます!!』

エルヴィン『問題なし!!』

杏『おっけぇだよぉ』

みどり子『カモさんチーム、準備整いました!』

梓『ウサギチーム、準備完了しています』

ねこにゃー『コマンドは入力済み。あとは実行するだけ』

ナカジマ『レオポンも調子良さそうです』

麻子「こちらもいける」

華「みほさん、号令を」

沙織「いつもの、お願い」

みほ「はい。――パンツァー・フォー!!!」

優花里「ワン!!」

みほ「……え?」

―倉庫―

みほ「本日はここまでにします」

「「ありがとうございました!!」」

杏「ありがと、西住ちゃん」

みほ「いえ」

柚子「号令係は桃ちゃんの仕事だったのに、いつの間にか取られちゃったね」

桃「私たちはもう授業を受けなくてもいい立場だ。これからは西住が試合以外でも皆を引っ張っていかなくてはならない」

杏「いうねぇ」

沙織「かえろ、みっぽりん」

華「お風呂に入っていきましょうよ」

麻子「それがいい」

優花里「あの」

沙織「ゆかりんも、ね」

優花里「はい!!」

みほ(気のせいだったのかな……?)

―通学路―

麻子「それじゃあ」

沙織「バイバーイ!!」

華「また明日」

みほ「うん」

優花里「……」

みほ「あれ? 優花里さんはこっちの道じゃないの」

優花里「西住殿の寮はペットは……?」

みほ「え? あ、ああ、えっと、小型犬ならよかったと思うけど」

優花里「小型……。では、その……」

みほ「もしかして、捨て犬を拾ったの?」

優花里「いえ。でも、よろしければ飼って欲しいです」

みほ「飼うって犬を?」

優花里「ちゃんとトイレの場所も覚えます。普通の犬よりは賢いと思っています」

みほ「う、うん? と、とりあえず、寮に来る?」

―みほの部屋―

みほ「入って、優花里さん」

優花里「お邪魔します」

みほ「それで犬のことなんだけど、犬種はなにかな?」

優花里「西住殿」

みほ「はい?」

優花里「私に首輪をつけてはもらえないでしょうか」

みほ「……どうして?」

優花里「私は犬になることを決めたからです」

みほ「あ、ああ……。何もそこまで真剣に役作りをしなくても……」

優花里「違うんです!!!」

みほ「……!?」ビクッ

優花里「それではだめなんですぅ!! 私がそうしたいんです!!」

みほ「そ、そうなんだ……」

優花里「だから、私に首輪をつけてください。お願いします」

みほ「でも、首輪なんてもってないけど……」

優花里「あれはどうですか?」

みほ「あれって、ベルト?」

優花里「はい! あれを少し改造すれば首輪になるのではないでしょうか!?」

みほ「そ、そうだね。やってみよっか」

優花里「あ、すみません。私が家から持ってきたらいいですよね。西住殿のベルトを使うなんてことはできませんし」

みほ「いいから。このベルト、普段から使ってなかったし」

優花里「なんて心の広い……だから私は犬になろうと思えたんです……」

みほ「これくらいの長さでいいのかな……?」

優花里「装着してみます!!」カチッ

みほ「どう?」

優花里「ぴったりです!! ありがとうございます!! 西住殿!!」

みほ(優花里さん、演劇に興味あったんだ……)

優花里「これで私は正式に犬になった気がします」

みほ「う、うん。耳とか尻尾はないから、そこまで犬って感じでもないけど」

優花里「それは確かに大事な要素ですね」

みほ「そうだね。本番ではそういう衣装も用意しなきゃいけないかも……」

優花里「耳は猫田殿のようなカチューシャタイプのもので代用ができそうですが、尻尾はどうしたらいいでしょう」

みほ「え? 犬の着ぐるみを着ればいいだけじゃ……」

優花里「それは違います!!」

みほ「違うの?」

優花里「私は秋山優花里という犬なのです。着ぐるみを着てしまったら、誰が犬なのかわかりません」

みほ「そういうものなんだね」

優花里「できるだけ原型をとどめて、犬になりたいんです」

みほ「だったら、そのあたりのことも猫田さんに聞いてみたほうがよさそうだね。何か知ってるかもしれないし」

優花里「是非、お願いします!!」

みほ「電話してみる」

優花里「はいっ!」

みほ(だったら、サルやキジ役の人も、必要最低限の小道具で成りきってもらうほうがよさそう……)

優花里「身も心も犬になります。西住殿のために」

ねこにゃー『はい、もしもし、ボク、ねこにゃーです』

みほ「あ、猫田さん? 今、大丈夫?」

ねこにゃー『うん。ネトゲしてただけだから』

みほ「よかったぁ。あのね、犬の耳や尻尾のアクセサリーってどこかで買えるの?」

ねこにゃー『アクセサリー? キーホルダーとか?』

みほ「ううん。コスチュームとしてなんだけど」

ねこにゃー『に、西住さんが……イヌ耳にイヌ尻尾……も、もえるぅ……』

みほ「もえるの?」

ねこにゃー『う、うん、い、いいと思う』

みほ「それで、買えるのかな?」

ねこにゃー『あ、それなら、ボクが持ってるから、あ、あげる、けど……。もらいものだけど、ねこわんになるつもりはないから』

みほ「貰っても、いいの?」

ねこにゃー『も、もちろん。けど、尻尾のほうは二種類あって、腰の少し下あたりにつけるのと……その……に……入れるタイプが……」

みほ「あ、えっと、よく聞こえなかったけど、腰につけるほうでいいよ」

ねこにゃー『あ、そっちですか、はい。それじゃあ、それ、用意するね』

みほ「猫田さんが用意してくれるって」

優花里「では、早速行きましょう!!」

みほ「明日でもいいんじゃないかな」

優花里「それでは遅いです!! 私は今、この瞬間にイヌになりたいんですぅ!!」

みほ「どうして、そこまで……」

優花里「私は気づいてしまったのです」

みほ「何に?」

優花里「ずっと、犬になりたかったということを」

みほ「なりたかったんだ……」

優花里「はい!!」

みほ「でも、一度は嫌だって……」

優花里「あのときはまだ自身の気持ちに気が付いていなかったので」

みほ「ついさっきのことなんだ」

優花里「混乱させてしまい、申し訳ありません」

みほ「気にしないで。……優花里さんがここまで真剣なら、私も真剣に向き合わないと。行こう、優花里さん。犬の耳と尻尾を受け取りに」

街中

みほ「優花里さん、ベルトは外しても……」

優花里「これは犬である証です。簡単には外せません」

みほ「そっか」

優花里「ここですね。猫田殿の寮は」

みほ「そうみたい」

優花里「では、お呼びしましょう」ピンポーン

ねこにゃー「あ、はい」

みほ「急にごめんね」

ねこにゃー「全然、いいから。あ、これがイヌセット」

みほ「わぁ……。ありがとう、猫田さん!」

優花里「感謝します!!」

ねこにゃー「あれ? 秋山さん、その首輪……」

優花里「猫田殿のおかげで不肖、秋山優花里は犬になることができます!!」

ねこにゃー「お、おぉぉ……そういうことだったんですか……」

みほ「うん、優花里さん、本気みたいで」

ねこにゃー「あ、あ、それじゃあ、これも、持って行って」

みほ「これって……」

ねこにゃー「リードも、犬には必要になるから。犬の気持ちを理解しやすくなるかも」

みほ「さ、流石にここまではしなくても……」

優花里「よろしいのですか!?」

みほ「優花里さん!?」

ねこにゃー「が、がんばって、秋山さん!」

優花里「がんばります!!」

みほ「あの……」

優花里「――西住殿。耳と尻尾を装着しました」

みほ「あ、かわいい」

優花里「では、最後に西住殿が私の首にリードをつけてください」

みほ「私が?」

優花里「飼い主と飼い犬の関係をはっきりさせるためには必要なことだと、考えます」

みほ「そこまで言うなら……。じっと、しててね」

優花里「はい」

みほ「……」カチンッ

優花里「西住殿……」

ねこにゃー「に、西住さん、リードを握ってあげて……」

みほ「こ、こう?」

優花里「これで、私は犬になれました……!!」

ねこにゃー「おめでとう、秋山さん」

優花里「猫田殿のおかげです!! ありがとうございました!!」

ねこにゃー「ボ、ボクは大したこと、してないから」

優花里「そんなことはありません!! 立派な耳と尾とリード、そして畜生魂を与えてくれたのは、猫田殿なのですから!!」

みほ「畜生魂なんだ」

優花里「それでは寮まで帰りましょう」スッ

みほ「優花里さん? どうして四つん這いになったの?」

優花里「犬ですから!」

―通学路―

みどり子「今日も学園艦の風紀を乱す人はいなかったわね」

モヨ子「居たら大変だもんね」

希美「それじゃあ、ここで解散に――」


優花里「わんっ、わんっ」

みほ「優花里さん、あの、やっぱりこれはいくらなんでもやりすぎだと思うんだけど……。せめて、部屋の中だけにしておかないと」

優花里「妥協はしません!!」

みほ「妥協とかの問題じゃないような」

優花里「くぅーん」

みほ「と、とにかく急いで、帰ろう。誰かに見られたらきっと噂になる」

優花里「りょうかいでぇす!!」


みどり子「……見た?」

モヨ子「あれは初めて見る風紀の乱れなのよ、そど子」

希美「どう対処したらいいのか分からない」

典子「最後はいつものようにランニングだー!!」

妙子・あけび・忍「「おぉー」」

典子「戦車道の授業で遅くなっても!! バレーボールだけは忘れるな!!!」

妙子・あけび・忍「「こんじょー!!」」

典子「いくぞー!!」

あけび「ま、待ってください!! キャプテン!!」

典子「どうした、佐々木!! これからってときに!!」

あけび「あ、あそこに西住隊長と秋山先輩が……」

典子「え?」


優花里「西住殿、この辺りで……マーキングを……」モジモジ

みほ「戻ってからにしましょう!! お願いだから!!」

優花里「わかりました……」モジモジ


典子「あれは桃太郎の役作りだな。秋山さんは勤勉だから」

妙子「なるほどっ」

―みほの部屋―

みほ「なんとか戻ってこれた……。誰にも見られてはないと思うけど……」

優花里「西住殿、私のトイレはどこでしょうか」

みほ「私と同じところを使って」

優花里「しかし、私は今、犬ですから……」

みほ「私、テレビで見たことあるんだ。ペットのネコが人間のトイレで用を足すところ。だから、優花里さんが今、犬だとしても普通のトイレでしてもいいじゃないかな」

優花里「そうですか?」

みほ「それに、犬用のトイレもまだ買ってないから」

優花里「それもそうですね。では、トイレをお借りします」

みほ「う、うん」

みほ(ここまで本格的な役作りをするとは思ってもなかった。優花里さんは戦車以外に、役者にも興味があったんだ……)

みほ(戦車のこともそうだけど、優花里さんは好きなことには人一倍熱心になるし、こうなるのもわかるけど……)

みほ(今の状態だととてもじゃないけど、家に帰らせることができない。きっと首輪も耳も尻尾も優花里さんは取ろうとしないだろうし)

みほ(とりあえず今日は泊まってもらって、明日にでもみんなに相談してみよう)

優花里「西住殿!! 秋山優花里!! ちゃんとトイレができました!!」

みほ「えっと、ごはんにしない?」

優花里「はい!!」

みほ「それじゃあ、簡単なものになっちゃうけど、用意するね」

優花里「私もお手伝いします!」

みほ「いいよ、優花里さんはお客さま、じゃなくて犬だし」

優花里「そうでした!! では、待ちます!!」

みほ「何が残ってたかな……」ゴソゴソ

優花里「……」

みほ「あ、これがあった。だったら、ごはんと一緒に温めて」

優花里「うぅぅ……」

みほ「それから、お味噌汁も作らないと」

優花里「くぅーん」

みほ「ど、どうしたの?」

優花里「私にも何か、お手伝いをさせてください……」

みほ「優花里さんはそこで待ってていいから」

みほ「はい、どうぞ」

優花里「申し訳ありません。ここまでしていただいて」

みほ「ううん。ほら、犬ってごはんになるとただ待ってるだけのことが多いし、普通だと思う」

優花里「確かに。言われてみればそうですね」

みほ「空のお皿を見つめたり、時にはそのお皿を銜えて飼い主のところへ持ってきたりするよね」

優花里「まだまだ犬になりきれていないということですか……。不覚です」

みほ「あはは……」

優花里「それでは、このあとの食事の片付けも全て西住殿にお任せしなければならない」

みほ「そうなるね」

優花里「お風呂はどうなるのでしょう」

みほ「普通に入ればいいんじゃないかな」

優花里「ですが、犬だけでお風呂にははいれません」

みほ「……」

優花里「……」

みほ「あ、一緒に入る?」

―浴室―

みほ「それじゃあ、洗うね」

優花里「は、はい」

みほ「……」ゴシゴシゴシ

優花里「うぅぅ……」

みほ「かゆいところはない?」

優花里「ありませぇん……」

みほ「なら、よかった」

優花里「西住殿に髪を洗ってもらえるなんて……もらえるなんて……」

みほ(優花里さんの髪、見た目以上にかたい)

優花里「こんなに幸せなことがあって、いいのでしょうか……犬とはなんと幸せな生き物なんでしょうか……」

みほ「そこまで感動するんだ」

優花里「しますよぉ!! ここまでしていただいて、何も思わないなんて人ではありません!!」

みほ「ただ、洗ってるだけなんだけど」

優花里「西住殿が私を洗っているということが重要なんです!!」

―みほの部屋―

みほ「お風呂上りなんだし、首輪と耳は外してもいいんじゃないかな……」

優花里「いえ、犬ですから」

みほ「そ、そう」

優花里「わんっ」

みほ「あの、優花里さん。文化祭が終わるまで、犬に成りきるつもりなの? こういった時間も授業中も」

優花里「勿論、永続させます」

みほ「永続?」

優花里「私は西住殿に捨てられるまで犬でいるつもりですから!!」

みほ「……」

みほ(優花里さんの言っていること、何かがおかしい……)

みほ「あの、優花里さんって演技に興味ある?」

優花里「え? いえ、別に」

みほ「今でも戦車だけ?」

優花里「はい! でも、犬に目覚めてしまっているので、犬の生態についても学んでいこうかと思ってはいますけど」

みほ「……なるほど」

優花里「くぅーん」

みほ「それじゃあ、明日もこの格好で登校するんだね」

優花里「します」

みほ「私がリードを握って、優花里さんは四つん這いで」

優花里「それが理想です!」

みほ「優花里さん……」

優花里「ダメでしょうか?」

みほ(どうして優花里さんは急にこんなことを……)

みほ(私と沙織さんの話を聞いていただけなら、こんな反応はしないだろうし、なにより犬になりたいだなんて思うはずが……)

優花里「わんっ!」

みほ(けど、きっかけになりそうなのは沙織さんとの会話ぐらいだし……)

みほ「とりあえず、一緒に寝る?」

優花里「いいのですか!?」

みほ「犬と一緒に寝る飼い主も多いってきいたことあるよ」

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