敦「そう云えばなんですけど…」 太宰「探偵社七不思議」 (7)

嗚呼
平和だなあ…。



こんなに平和なのは孤児院を追い出されてから…
いや、生まれて初めてかもしれない。



?武装探偵社?

僕の名前は中島敦。
訳あって此処 横浜に流れつき、この探偵社で厄介に成っている新人社員だ。



先日勃発した武装探偵社、ポートマフィア、組合による三社異能戦争は一先ず終止符が打たれ…
マフィアの人達も傷ついた街の復興に尽力している様で、今の処 探偵社とは停戦中という事らしい。
街で一生懸命働く黒蜥蜴の人達を見ている限り 当分は大丈夫そうだ。



と云うことで…



敦「平和だなあ…」



『中島敦・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・絶賛平和ボケ中』

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1462078760

谷崎さんはナオミちゃんに誘われ(云いくるめられ?)温泉旅行に。
…前から思ってたけどナオミちゃんはちゃんと学校に通っているんだろうか?



乱歩さんは警察から事件解決の依頼が有って出かけた。
今回の付き添いは国木田さんだ。
国木田さんに任せておけば流石に大丈夫だろう。…多分、きっと、うん。



太宰さんは与謝野さん…否、与謝野先生の『手術道具』の買い出しに付き合わされている。
…僕も探偵社で働くように為ったからか、所謂『危機察知能力」』とやらが身に付いたらしい。



社長は今回の件の報告であちこちに飛び回っている。
鏡花ちゃんを連れて。
お役人さんとも交流のある社長は便宜を図ってもらう為、敢えて新たに社員に為った鏡花ちゃん本人を連れて行った。
…あれでなかなか社長も鏡花ちゃんには甘い処があると皆気付いてるがそれを云う人は誰一人としていない。
一度皆に鏡花ちゃんを甘やかしすぎではないかと指摘したが、国木田さんに『敦、お前が其れを云うか…』と云われてしまった。

そんなこんなで今日の探偵社は僕と数人の事務員さんしかいない。

流石は『普段から襲撃されなれている』と云った処だろうか、戦争直後にも関わらずオフィスの片付け諸々はとうの昔に済んでいる。



…その為 本当にすることがない。
暇だ。



《プルルルルルルルルルルルル》



「はいいぃっ!?出ます、出ます、今出ますぅっ!!」



『中島敦、戦争を戦い抜いても・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ビビリは変わらず』



我ながら情けない反応だ。

向こうの事務員さん達がクスクス笑いを堪えているのが聞こえてくる。

…と云うか電話応対は事務員さんの仕事ではないのだろうか?

まあいい、電話の受話器を取る。



「はい、武装探偵社です。どのような御用件でしょうか…?
え?…はい、了解しました、直ぐに向かいます。はい、失礼します」



…どうやら平和というものは束の間しか訪れないらしい。

ー横浜市街地ー

敦「太宰さん、与謝野先生と買い出しに行かれたのでは…?」



太宰「それがねぇ敦くん、与謝野先生御所望の『手術道具』は生憎売り切れててね」



太宰「そこで私は何を見たと思う?」



敦「…何を見たんですか?」



太宰「風船だよ。よく街中で子供に配ってたりするだろう?」



敦「はあ…」



成程、『今の太宰さんの姿』を見て何が起こったのか大体見当が付いた。



太宰「そこで私はピンときたのだよ!」



太宰「大量の風船を身体に括り付けて空に浮かび上がったらどんなに気持ちがいいだろう、ってね」



そこまでは子供の頃に誰もが思い浮かべそうなことだ、僕にも理解できる。

しかし太宰さんのことだ、その次には…。



太宰「そして『そこから落下したら気持ちよく自殺できるんじゃないか』と!!」



矢っ張り…



『ある意味期待を裏切らない男・・・
・・・・・・・・・・自殺嗜好、太宰』

太宰「しかし大量に風船を買い込んで括りつけたはいいが、いっこうに浮く気配がない」



太宰「と云うか括り付けた紐が徐々に身体に食い込んできて痛い」



太宰「しかもこの通り両腕に付けた風船が木に引っ掛かってしまい身動きが全く 取れない」



太宰「このままでは死んでしまいそうだ」



敦「…じゃあそのまま放っておけばよいのでは?自殺なんですし」



太宰「私は自殺は好きだが痛いのや苦しいのは嫌いなのだ!前にも云っただろう」



『最早・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・様式美?』



敦「…それで?」



太宰「助けて?」

ー商店街ー

太宰「いや~助かったよ敦くん。お礼に昼御飯くらい奢ってあげたい処だけど…」



太宰「生憎 先刻風船を買うのに有り金を使い果たしてしまってね」



太宰「国木田くんでも居れば彼に奢らせられるんだけど」



『太宰の脳内・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・国木田=金蔓?』

敦「全く…感謝なら通報してくれた人にしてください」



太宰「そこなのだよ!」



敦「え?何がですか?」



太宰「そもそもその『電話をかけてきた人物』は困っている私の姿を視認している筈なのだ」



太宰「ならば一言『大丈夫ですか?』と優しく声をかけてくれれば万事解決、敦くんの手を煩わせることもなかった」



太宰「しかも探偵社に連絡したということは私の所属を知っているし」



太宰「探偵社の連作先まで知っていると為れば尚更だ!」



敦「そう云われてみれば…確かに」



太宰さんに関わると碌なことにならないと知っている関係者なら、確かに直接関わらずに他の人に任せようと思うのは当然かもしれない。

僕は電話をかけてきた人の声を思い出してみる。



敦「でも聞き覚えのある声ではなかったと思います」



太宰「そうだろうね」



敦「えっ、太宰さん心当たりがあるんですか?」



太宰「まあね。ああ、敦くんはまだ知らないんだっけ、双黒(小)」



敦「(小)?」



ーそこから数百米先ー

中也「クシュッ」


中也「…風邪か?」←(小)

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