モバP「孫子兵法?」 (59)

・アイドルマスターシンデレラガールズのSSです。
・三点リーダーが多い気がします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1461913238

鷺沼文香「兵者國之大事、死生之地、存亡之道、不可不察也……」

モバP「文香のやつ、今日は随分薄い本を読んでるな」

大西由里子「な、なんだってー!?」

P「そういう意味じゃない。だいいちどこから見ても文庫本だ」

由里子「ルビー文庫? ラピス文庫?」ワクワク

P「岩波がBLレーベル出したら世も末だよ」

由里子「期待して損したじぇ……」

P「秒速で撤収しやがった。それはそうと、何読んでるんだ?」

文香「『孫子』……です……」

P「ああ『敵を知り己を知れば百戦危うからず』で有名なアレか」

文香「さすがPさん……他には……お好きな言葉は……?」オメメキラキラ

P「以上です!」ドゲザー

文香「いい機会です……私と一緒に……中国最古の兵法書に触れませんか……」ニコッ

鷺沼→鷺沢

序:孫子って何?

P「そもそも『孫子』を書いたのは孫ナントカさんなんだろ?」

文香「はい……中国は春秋時代……呉という国に仕えた孫武という兵法家が……おおもとの著者です……」

P「おおもと?」

文香「現在のテキストになるまでには……多くの人々の手が加わってます……有名なところでは曹操とか……」

P「三国志の曹操か」

文香「孫武については……こんなエピソードが有名です……」

呉王「孫武よ、実際に軍隊を指揮してみせてくれるか」

孫武P「お安いご用です」

王「ではアイドル180人でデモンストレーションをしてくれ」

ワラワラ

孫武P「リア充爆発しろよ……」

王「何か言ったか?」

孫武P「はい皆さん集合ー。あなたとあなたをリーダーにします。こう合図をしたら、こう動くように」

カクカクシカジカ

孫武P「それでは始めましょう」オーネガイシンデレラ

キャハハハハ

孫武P「これはいけません、私の不徳のいたすところ」

カクカクシカジカシカクイムーブ

孫武P「ではもう一度」オーネガイシンデレラ

キャハハハハ

孫武P「ホーッホッホッホ、ここまで私をコケにしたお馬鹿さんは初めてですよ……」スチャ

王「待て待て、殺さなくてもいいだろう。飯も食えなくなる」

孫武P「将軍たるもの。一度指揮権を委ねられたら、王の命令といえども聞けないことがあるのです」

しばらくお待ちください

王「」

アイドルたち「」

孫武P「それではあなた方をリーダーにしましょう。分かっていますね?」

オーネガイシンデレラ

孫武P「王様、彼女たちは命令されれば何でもできるようになりました。たとえ火の中水の中」マジキチスマイル

王「……今日はもう帰ってくれ」

孫武P「ハッ? このヘチマ野郎は兵法を語るだけで実行できない、と」

こうして王は孫武の才を認め、孫武は呉を強国にしたのでした。めでたしめでたし

P「鬼! 悪魔! ちひr」

千川ちひろ「素晴らしい!」

P「ヒイイッ!」

ちひろ「大事なのは善悪ではなく勝敗ッ!

『兵士を愛するのは大事だが、危険な場所に連れて行き、言うことを聞かせなければ意味がない』とも書いています。

綺麗事じゃないんですよねぇ」ニッコリ

P「アッハイ」

文香(私も……プロデューサーさんの言うことなら……)

P「その孫武が書いた兵法書を元にして、いろんな人の注釈が加わったのが『孫子』ってわけだ」

文香「戦いというものについて……総論から各論へと……とても具体的・論理的に筆を進めています……

多くの軍人が、参考にしてきたといいます……」

P「けど、今さら大昔の兵法を、21世紀の仕事に活かせるの? しかも俺、軍人じゃないけど」

文香「確かに……細かい部分は……たとえば『車』とは『四頭立ての馬車』のことです……」

P「ほら。文香だって、俺が四頭立ての馬車で仕事の送り迎えしたら困るだろ」

文香(馬車に乗って、私を迎えに来るプロデューサーさん……)ポッ

文香「でも……人間の本質は2500年たっても……あまり変わらないと思います……

戦いだけでなく……人間にとって何が大切か、ということも……」

P「『孫子』からは、今でもその本質的なことを読み取れるってことか」

文香「ただの戦闘マニュアルでは……ありません……

自分の頭の中で……言葉を置き換えて読むことで……立派に通用すると思いますよ……」

P「わかった。文香がそう言うなら、意味のあることなんだろう」

文香(そして……恋愛においても……)クスッ

1.戦う前に

文香「それでは本題に入りましょう……孫子は全部で13篇から成り立っていますが……必要に応じて、前後を入れ替えることもあります……」

P「さっき『すごく論理的だ』って言ってなかった?」

文香「孫子も完璧では……ありません……文章の順序がおかしいところも……あるのです……」

P「そこらへんの進行は文香に任せよう」

文香「また……このプロダクションのアイドルも……生きた教材と言えますね……」

P「確かにな。よーし、勉強するぞ(仕事のため)」

文香「はい……学んでいきましょう(恋のため)」

『戦いとは一大事で、組織の存亡に直結するから、よく考えないといけない』

P「ライバルプロダクションに、負けるわけにはいかないもんな」

文香「孫子は……自分の置かれた状況を考え……相手と具体的に比べることが重要だと……」

P「アイドルはどちらが魅力的か、プロデューサーはどちらが有能か、資金はどちらが多いのか、人脈はどちらが豊富か。うーん」

ちひろ「魅力的なアイドルを手に入れるには、ガチャを引くのが一番!」

P「ちょっと黙っててください」

文香(プロデューサーさんをめぐる戦いと……考えることもできます……負けるわけにはいかない……)

文香(顔……スタイル……料理の腕……そして、彼と会う機会はどちらが多いか……)

P「何だ? 文香も難しい顔してるな。まあ何とかなるって」ポンポン

『勝つ組織はまず勝てる態勢を整えてから戦い、負ける組織は戦い始めてから勝とうとする』

P「」チーン

文香「戦う前に勝算の有無を考えることは大事です……そして、正しい予測は……正確な情報から得られます……」

『少しの手間暇を惜しんで情報収集しない者は、勝負に負けて当然である』

佐久間まゆ「うふふ。やっぱり(プロデューサーのプライベートな)情報は大切ですよぉ」←GPSセット中

『思慮深さと仁慈・正義、細心の注意がなければ、情報網を使いこなすことはできない』

P「何この邪悪な気配」キュピーン

『戦い始める前に情報を集め、比較検討する。そこで勝ち目が多ければ勝てるし、少なければ勝てないだろう。

勝ち目がないのに戦うなんてのは論外である』

P「しかしさあ、成功率99%でも失敗するときはするだろ」

三好紗南「あー! 敵の必殺確率1%なら大丈夫だと思ったのにー! さすが手強いシミュレーション」

『そのうえで、実戦では相手の実情に応じて、その裏をかくことである』

P「おお、これはわかるぞ。意表をついた売り出し方をしろってことだろ」

P「料理番組で、拓海にたくみんスマイルさせたりー」

P「正月早々、拓海に羊のコスプレさせたりー」

P「拓海と三船さんを『セクシーでかわいい動物コスプレショー』に電撃出演させたりー」

向井拓海「いつか[ピーーー]!」

『正攻法で相手と対峙しつつ、奇策を出して勝利するのである』

P「はっはっは、もちろんウケ狙いばっかりやりませんよ。正統派なアイドルのお仕事も……って」

ゼクシィィィ

P「書類にまぎれた婚姻届に、うっかりハンコ押すところだったよ!?

これはどういうことですか、妻のところに名前が載ってる和久井さーん!!」

和久井留美「あら私としたことが。書類の整理がなってなかったわね」ニヤリ

文香「『恋は詭道なり』……皆さん、やりますね……私も、彼の意表をつけるでしょうか……」

2.戦いにかかるコスト

『戦いには、金や資源を大量に必要とする。そして戦いが長引けば、さらに消耗することになる』

P「そうなんだよ。イベント1回にどれだけつぎ込むか、考えるだけで頭が痛い。気がつけば、最終日までいつも泥沼だし」

ちひろ(戦え……多々買え……)

P「何か言いました?」

ちひろ「いえいえ」

文香「『多少まずくとも、早めに切り上げる方が良い。長引いてもいい結果は出ない』……

私も体力に自信はないので……長丁場のコンサートはは苦手です……」

P「あーアレだ、適材適所ってやつだ。無理はしなくていいんだぞ」

文香(体力がないと……夜の営みも苦手に……?)

『だから、頭のいい人は、できるだけ食料を敵から奪い、自軍の兵を養うのである』

P「これは、今の世の中で、どう解釈すればいいんだ?」

文香「これは私の勝手な解釈ですが……なんでも自分だけで成し遂げようとせず……

人の力を借りることも大切……ということでは……?」

P「そうしないと、アイドルの仕事はいつまでたっても完成しないもんな」

双葉杏「いい言葉だねー。杏もできるだけ他人様に食べさせてもらうとするよー」

P「こういう風に解釈する奴もいるけどな!」

文香(恋のライバルを利用する……何だか、悪女になった気分です……)ドキドキ

『勝ち取ったもので、さらに組織の強さを増すのだ』

P「文香もアイドルとして成長してくれ。そしてこのプロダクションを、一緒に育てていこう」

文香「はい……私も強くなります……女として……」

『恋は詭道なり』補足

恋とは駆け引きである。

時には意中の人でも気のない素振りをし、

近くにいたくてもあえて遠ざかる。

相手を巧みに誘い、気持ちをかき乱し、強気に出たらはぐらかし、

時にはおだて、安心していれば焦らせる。

ほかに親しい女がいれば、その仲を引き離す。

心の無防備を攻め、意表を突く。

これはアドリブで行うもので、台本通りに行うものではない。


文香(でも……駆け引きだけの恋愛は……虚しいだけかもしれませんね……)

風(ダブルアーム)
林(ローリングクレイドル)
火(パイルドライバー)
山(ロメロスペシャル)
をする文香か

3.戦わずして勝つ

『百戦百勝がベストではない。戦わずに相手を屈服させることこそが最上である』

P「小さな争い(ビジネス的な意味で)ばかりで消耗していたら、大きな目標は達成できない。

相手を取り込む、器の大きさも大切なのか」

凛「……」バチバチ

まゆ「……」バチバチ

文香「……事務所中で、見えない火花が散っています……

日々の争い(正妻戦争的な意味で)にとらわれすぎず、もっと大局的に物事を見なければ……」

『相手の計画を未然に潰すのが一番よい方法であり、直接戦闘はそれには劣り、ましてや多大な犠牲を払う城攻めは、ほかに方法がない場合にやむを得ず行うのである』

P「他のプロダクションのプロジェクトを未然に潰せ……ということじゃないよな」

櫻井桃華「うふふPちゃま。ナポレオンと櫻井家の辞書に、不可能という文字はありませんわ。お望みなら」

???(文香じゃない)「……要件を……聞こうか……」

P「ハハハナイスジョーク」ガクブル

文香「……犯罪はいけませんが……ライバルのプロジェクトに対しノーマークでは……慌てて対抗ユニットをぶつけたとしても……勝てないということでしょう……」

文香(他の女がPさんの外堀を埋めてからでは……堅固な城を攻めるようなものですね……

今のうちから一緒に本を読んだりしようかな……)

『自分と相手の戦力が10対1なら包囲し、5対1なら攻撃し、2対1なら相手を分散させ、互角なら奮戦し、少なければ退却し、勝ち目がなければ隠れる。

戦力が少ないのに強気に出れば、大軍に捕らわれるのがオチである』

P「あれ? 10対1の時に攻めろとは言わないのな」

文香「……敵が死に物狂いになり……こちらにも……少なからぬ被害が出るかもしれません……」

P「あくまでも、次の戦いに備えるというスタンスか」

文香(……アイドル10人に迫られたら……Pさんは理性を保てるのでしょうか……

そのまま……一夫多妻……?)ポッ

P「この考え、個人レベルでも応用がきくな。人手が足りないときに、全部の仕事を一人で抱え込みがちだからなー、俺」

『君主と将軍(現場の指揮官)は親密であることが求められる。

しかし、戦いに際して君主が将軍の仕事に口出しすれば現場は混乱し、勝てる戦も負けてしまうだろう』

P「俺が、ライブ中のアイドルの、歌やダンスに口出しするようなものか」

文香「……応援は嬉しいですが……私たちを信じて、見守ってくださいね……」

『というわけで、成功には以下の5点が必要である。

戦うべき時とそうでない時を知っていること。

戦力が多い時も少ない時も、どうすればよいか知っていること。

上司と部下で、心を一つにしていること。

よく準備して、相手の隙を見つけて突くこと。

指揮官が有能で、君主が無用な口出しをしないこと』

文香「……ここで……かの有名な一文が出てくるのです……」

『彼を知り己を知れば、百戦殆うからず』

P「そういう文脈だったのか。度々戦うことを、勧めているわけではないんだな」

文香(……彼……Pさんのこと……もっと知りたい……

でも……私の知らない私のこと……どうやって知るのでしょう?)

4.勝つための態勢作り

文香「……ここまでが、いわば総論です……

ここからは、いかに態勢を整え、勢いを生み、主導権を握るか……という内容です」

『まず自分が負けないような態勢を整え、相手に付け入る隙を見逃さない。

その際、自分が負けないようにすることはできても、相手を無理に動かすことはできない。

攻撃は、戦力に十分な余裕がなくてはならない』

P「うーん?」

文香「……納得、いきませんか……?」

P「準備をしっかりするのは当然として、相手もガッチリ守ってたら? むやみに動くなと言われても……」

日野茜「ボンバ――!!! 当たってみれば、何とかなります!!!」ドゴォ

諸星きらり「きらりんぱわーで、何でもスッキリさせちゃうよ! せーの、きらりぃぃぃん☆」ドゴォ

P「いやキミたちは例外、ウボアー」

文香「……そのあたりは、後でいろいろと出てきます……」

文香(……無理やり、人に自分を好きになってもらうことはできない……

まず、好かれるような自分に、ならなければ……)

『周囲から凄いと思われているようでは、本当に優秀な人間ではない。

目立つような手柄もなく、すでに勝っている戦いに間違いなく勝つのが、本当に優秀な人間である』

P「プロデューサーがアイドルより目立ってもしょうがないしな。裏方裏方。

とはいえ、時には成果をアピールしないといけないのが、辛いところだけど」

文香「……アイドルも……レッスンを積み重ね、本番を『すでに勝っている戦い』にするものです……」

マストレ「そのために鷺沢は、ダンスのレッスンが急務だな。本番でコケないように」ニヤリ

文香「うう……」

『故に勝兵は先ず勝ちてしかる後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いてしかる後に勝ちを求む』

文香(……先ほども出ましたが、身にしみる文章です……私も日頃から『準備』しているんですよ、プロデューサーさん)

『ポリシーをしっかり持ち、ルールをしっかり守る人は、勝利を手にできる』

前川みく「みくは自分を曲げないよ! アイドルとして勝つために!」

P「ほほう、よかろう」ニヤニヤ

文香(……プロデューサーさん、悪い顔してますね)


『戦う前に、様々な事柄を数字で把握し、それをもとに彼我を比較し、優劣を考えるべきである』

及川雫「今日も頑張っていきましょうー! もー!」ドタプーン

高森藍子「……」

P「神よ、何故世界をかくも残酷に作ったのか」ホロリ

『勝敗は、天秤に重い乳、じゃなくておもりと軽い乳、じゃなくておもりを乗せた時のように明らかである』

文香(……『兵は多きを益ありとするに非ざるなり』……と思いたいですが……)モミモミ

『戦闘が始まれば勢いが重要になるが、その勢いを生むためには、事前に態勢を整えることが不可欠なのである』

文香「……その場の機転を活かすのも……事前の準備あってこそ……ちなみに原文ではこうです」

『勝者の戦、積水の千仭の谷に決するが如き者は、形なり』

P「この『積水』ってもしかして?」

文香「……はい。某有名企業の社名の由来ですね」

5.実戦における勢い

『戦に長けた者は、ごく短時間に、激しい勢いを生み出すことができる』

文香「……今、話しに出た……勢いについて述べた章です」

P「勢いといっても『黙って俺について来い、そのうち何とかなるだろう』的な意味じゃないんだろう?」

文香「……それでは、戦い始めてから……慌てて勝とうとするものです……」

『部隊の編成、指令の設備、正攻法と奇策の使い分け、敵の虚を討つやりかた。これらが重要である』

文香「……ひとつずつ、見ていきましょう」

『個人に過剰な努力を求めるのではなく、適材適所を心がける。

そうすれば、状況に柔軟に対応してくれる』

P「いるよねー、部下に過剰な努力を求める人」

一ノ瀬志希「そういう時は、三十六計逃げるに如かず! にゃはは」ダッ

文香「……追わないんですか?」

P「いーのいーの。戻ってきたら、アイツの3分間の集中力を最大限に発揮してもらう」

『太鼓や旗などの目印で、人々の意識をひとつにすれば、激戦でも混乱することはない』

文香「……ファンの皆さんのこと、でしょうか」

P「彼らもひとつになってるけど、違う意味だな。ステージで整然と踊るにも、目印が必要だろ。

そうしてユニットがひとつにまとまれば、観客が何万人でも怖くない!」

『正攻法で相手と対峙しつつ、奇策を出して勝利するのである。

しかし、何が正攻法で何が奇策か、は常に変化するものである』

小関麗奈「アーッハッハッハ! 奇策だったらレイナサマにお任せよ」

P「と言ってしょうもないイタズラをして、反省させられるところまでが麗奈の様式美です。

ほらステージで正座」

文香「……そして、たまには殊勝なところを見せるわけですね……

まさに『奇正はめぐりて相生ずる』……」ウンウン

『巧みに敵を誘い出し、裏をかいて事にあたらねばならない』

P「お客さんの予想を、いい意味で裏切るってことだな。

たとえば、どこから切っても大和撫子な彼女を期待してきたお客さんに」

水野翠「この美食を味わい尽くした、わらわの舌に挑むというのですね」

ドッワハハ

安部菜々「翠ちゃん、口からビームを吐きそうですね!」

P「『ミスター味っ子』のアニメ版は1987年放映開始なんだよなぁ」トオイメ

『勢いをうまくつけることができれば、山頂から岩を転がした時のように、誰にも止められなくなる』

P「ステージが俺たちの想像を超えて盛り上がったときほど、嬉しい物はないな」

文香(……デートが予想以上に盛り上がってしまったら……理性では止められなくなるのでしょうか)

6.実をもって虚を討つ

『相手を思うままにして、相手の思い通りにされないのが、上手い戦い方である』

文香「……これを成し遂げるために、相手の隙をつく重要性について、述べています」

P「さっき『無理に相手を動かそうとしてはならない』と言ってたのは、この章のためか」

『利益をちらつかせれば、それが欲しくてたまらなくなり、落ち着いていた敵も動かざるをえない』

P「期間限定、上位報酬、文香の水着SR……うっ頭が」

文香「……だ、大丈夫ですか」

ちひろ「あなたも原因のひとつだったりするんですよ、ふふふ」

『敵が守っていないところを攻めるから、被害もなく奪い取れる。

相手が救援せざるを得ない状況にすれば、出てきたところを容易に叩ける。

また、騙して攻めてこさせないようにするから、安全に守れる』

ちひろ「予想外のタイミングでSRを出したり、上位報酬のハードルを日ごとに上げたりすれば、諭吉を奪い取るなど簡単なこと」クックック

P「O・A・C(鬼・悪魔・ちひろ)! O・A・C!」

文香(……想いをギリギリまで秘めておけば、強敵との正妻戦争に巻き込まれない……?)

凛「新たな」キュピーン

まゆ「ライバルの」キュピーン

留美「予感」キュピーン

『素早く行動すれば、攻撃も退却も、敵の対応が間に合わなくなる』

P「スピード感を持った仕事は大事だな」

文香「……相手が落ち着いてしまったら、主導権を奪えませんから」

『というわけで、備えができていない相手に対し、こちらの実態を隠し、時期や場所も察知させずに攻めれば、

相手は戦力を分散せざるを得なくなり、小勢を大勢で相手にできる』

P「大手プロダクションと正面衝突しても、玉砕するだけだもんなあ。

得意分野を絞り込み、電撃的に売り出すことも考えないと」

多田李衣菜「渋谷の109前でゲリラライブしようよ、プロデューサー!

私のストラディバリウスが、ライトハンド奏法で唸りを上げちゃうよー」

P「ごめんペンディングで」

『まんべんなく備えようとすると、どこもかしこも手薄になる』

文香「……この一文は、備える側への警告でもありますね」

P「弱小なのに『うちのプロダクションは実力派からカワイイ系、バラドル路線まで取り揃えております』なんてのは」

椎名法子「種類だけ多い、ドーナツ屋みたいなものだね」モグモグ

『このような敵の損得を知るには事前に情報を集め、敵の要所急所を知るには小競り合いをしてみることである』

P「アイドルで言えば、アンケートや人気投票でお客さんの動向を調べろってことね」

文香「……プロデューサーさんは、最近はどんな本が……面白かったですか」

P「どうしたいきなり。そうだなー」

ちひろ(ちょろすぎる)

『最も望ましいのは、自分が決まりきった型、勝ちパターンにはまらないことである。

型にはまると、それに乗じて攻められてしまうからだ』

姫川友紀「『勝利の方程式』が崩れた試合ほど、見てて惨めなものはないんだよ。

翌年も同じ選手が、同じような結果を残すとは限らないしね」ホロリ

P「ああ……『こうすればお客さんが喜ぶ』と決めつけないほうがいいってことか」

『相手によって自在に変化し、勝利を勝ち取ることこそ、用兵の神髄である』

文香(……プロデューサーさんに会ってから、私も変わりました。

自分からではなく、貴方が変えただけかもしれませんが……)

木村夏樹「だりー、ストラディバリウスはバカ高いバイオリンだぞ。ギターならストラトキャスターだろ」

李衣菜「あ……ストラトなんちゃらの方は、その、まだ持ってないんだ……」

夏樹「えっ」

P「衝撃の事実発覚」

7.敵に先んじる――風林火山

『先に戦場に着いた方は楽であり、遅れた方は苦労する。

戦いの機先を制することほど、大切で、難しいことはない』

P「といっても今の御時世、足の速さで仕事が決まる状況はそうそうないだろ」

ドドドドド

茜「プロデューサーさん! 今から走りこんでおかないと、東京オリンピックに間に合いませんよ――!!!」

P「ちょ、引っ張るな、力強っ!?」ウワアアア

しばらくお待ちください

P「か、勘弁してくれ……」ゼエゼエ

文香「……ここでは『目標に早く到達する』という意味で、考えていきましょう……」

P「『兵は拙速なるを聞くも、未だ巧久なるを見ざるなり』だったな」

文香「……いえ」フルフル

P「あれ?」

文香「……文脈からすると……あれは『長期戦を避け、早く切り上げよう』と言っているのであって……

『とにかく早く行動しよう』という意味ではないと思います……」

『時には急ぐためにあえて遠回りをし、災いを利益に変える。

時には敵を騙し、敵の後から動き出しても、結果として、敵に先んじる。

そういった技術が求められる』

文香「……これを『迂直の計』と呼びます」

P「騙すのはともかく、急がば回れ、災い転じて福となせ、ってことね」

三村かな子「ちょっと食べ過ぎても、ライブを乗り切る体力がついたと思えば、結果オーライです!」ムシャムシャ

P「腹の出具合がアウトなんだよなあ」

文香(……彼へのアプローチも、当たって砕けるだけが能ではありませんね。

他の人の積極攻勢に疲れたところを……)

『機先を制すれば利益の源となるが、危険もはらんでいる。

全軍では間に合わないし、かといって一部が独走すれば、全体がバラバラになって大敗を喫するからだ』

P「たとえば軍曹の身体能力を基準として、みんなにレッスンさせようものなら」

ワンモアセッ

森久保乃々「むーりぃー」

大和亜季「脱走兵が出たであります!」

P「ライブという目標に、間に合わなくなってしまう!」

文香「……私も……本の中でしか読んだことのない、天国が……」フラフラ

P「目標が高すぎたり、スケジュールに余裕がなさすぎれば、本末転倒というわけだ」

『だから相手の裏をかき、利益を考えて動き、適宜部隊を分散・集合させること』

文香「……メリットも考えず……急ぐこと自体が、目的になっては……本末転倒です……」

P「ユニット編成も、メンバーの長所や相性を計算に入れてフレキシブルに」

上条春菜「メガネが似合うかどうかで、柔軟にユニットを決めるんですね、わかります」

P「全否定できないのが恐ろしい」

文香「……そして、日本人にとって非常に有名な一節が、これです……」

『疾きこと風の如く、静かなること林の如し。

侵掠すること火の如く、動かざること山の如し。

知り難きこと陰の如く、動くこと雷霆の如し』

持田亜里沙「武田騎馬軍団、出陣ー!」

P「よっ! ミニスカ信玄」

亜里沙「でも、見たことのない文章が入ってるわね」

P「林と陰、火と雷で意味がかぶっているので、省いたのかも」

文香「……いわゆる『風林火山』の主眼は『火の如く激しく攻める』ということではなく……

『状況に適した行動を取り、敵を翻弄し、主導権を握る』ということになります……」

速水奏「キスもね、情熱的なディープキスだけじゃないのよ。

状況に合わせないと、ね」

P「おい、俺を翻弄しても仕方ないだろ」

文香「…………」ムスー

『何事も、よく考えてから行動すること。そして、迂直の計を常に頭に置いて、主導権を握る。

これが戦いの大原則である』

文香「……ということで、事前によく準備し、事後には柔軟に対応し、主体的に行動すること……」

P「言われれば当たり前のことだけど、実行するのは難しいよな」

文香「……実行できた者だけが……勝者となるのです……」

P「ああ、実行に移さないとな!」

文香(……私も、勝者になりたい……)

以前「モバマス中国古典シリーズ」を
展開してた人がいたが……同じ人かな?

>>44
あのシリーズの作者の方ではありません。
あれは素晴らしい。

P「まあ、あまり手強い相手が来なければ、それに越したことはないんだけどな」ハハハ

文香「……そのお考えは、改めたほうが」

『相手が来なければいいなと期待するのではなく、いつ来てもいいように備えをしておくのは基本中の基本である』

P「仰せごもっともです」ドゲザー

文香(……恋敵がシンデレラガールであろうと、超天才の帰国子女であろうと……)

『恋の風林火山』補足

疾く接近すること、風の如し。

一見穏やかな雰囲気を作り出すこと、林の如し。

彼の心を一瞬で燃え上がらせること、火の如し。

正妻として動じないこと、山の如し。

交際を察知されないこと、陰の如し。

夜の営みの激しさ、雷の如し。

8.臨機応変の構え

『今まで述べてきた、兵法の基本を知っていても、これから述べる臨機応変の処置を知らなくては、戦果を得ることができない』

文香「……ここから、実戦的な各論に入るのです……が」

P「何か問題でもあるのか?」

文香「……2500年前は役に立った部分も……今は過去の遺物であることが多く……」

P「とりあえず、読んでみよう」

『高い丘にいる敵を攻めてはならない。丘を背にした敵を迎え撃ってはならない。険しい地形に長居は無用である』

P「うーむ。参考にできそうなのは、サバゲーやってる軍曹くらいか」

文香「……でも、この後の文章は……良いことを言っています」

『気合が入っている兵は攻撃してはならない』

P「お客さんにしろ取引先にしろ、強気に出てくる相手と正面衝突は避ける……言ってることはわかるけど、どうすりゃいいんだ」

文香「……正解は後ほど」

『偽って退却する兵は追ってはならない。囮の兵には食いついてはならない』

文香「……餌に釣られるな、ということです」

P「招待SR……無課金のつもりが重課金……うっ頭があああ!」

文香「……だ、大丈夫ですか、プロデューサーさん」

P「くっそー、あの緑の悪魔に、何度してやられたことか」

『自国に帰ろうとしている兵は、引き止めてはならない』

P「仕事帰りに、飲みに付き合わされる俺のこと? しかも酔いつぶれた挙句、介抱まで……」ブツブツ

文香「……そして朝は?」

P「見覚えのない部屋に乱れまくったベッド、隣に全裸のアラサーアイドルが」

文香「…………」ハイライトオフ

P「ジョーク、アメリカンジョーク! 乗り気じゃない取引先に食い下がっても、相手の心象を悪くするだけってことかな!」

『包囲した兵には必ず逃げ道を開けておく。

進退に窮した兵を必要以上に追い詰めてはならない』

文香「……完全に包囲してしまうと、相手が必死になり……予期せぬ被害が出ます」

P「優しさで言ってるんじゃないのね」

文香「……プロデューサーさんも」

P「ん?」

文香「……あまりご自分を、追いつめないように」

P「ははは。こうして文香と、誰もいない古書店で静かに読書するのが、極上の息抜きだよ」


文香(……仕事に追われ、アイドル達に迫られる、プロデューサーさん。

……私は、彼のために逃げ場所を作ってあげました。

……彼は……仕事の後、この古書店に足繁く通うようになったのです。

……二人きりの、穏やかな時間……ふふ)


P「ん? 文香も楽しそうで何よりだ」

『常識的に考えると攻撃しても良さそうな標的も、このように、実は攻めてはならない場面がある。

たとえ上司の指示であっても』

P「とは言うものの、怖い上司に反論するって勇気がいるらしいよ。

他の事務所の奴に聞いたけど」

文香「……プロデューサーさんは?」

P「うちの上司は優しいな。

しいて言えば、文香との楽しい毎日が怖い」

文香「……私はまんじゅうですか」


『たとえば気合の入った敵は、だれたところを狙い撃つ。

このように、気力を削いだり、判断力を失わせたりすることで勝つ』

文香「……『鋭卒には攻むるなかれ』の答え、ですね」

P「24時間戦える人間はいないってことだな」

文香「……他のシチュエーションでも……油断や混乱を誘うことで……事態は打開できます」

P「あーでも、のあさんあたりは例外か?」

『常に、メリットとデメリットをあわせて考えるようにする』

P「これができないと、詐欺みたいな話に引っかかるんだろうな。

文香も気をつけるように」

文香「……私もアイドルになってから、いろんなデメリットに気付きました……体力面など」

P「あー何と言うか、すまん。騙したつもりはなかったんだが」

文香「……でも、それを上回るメリットがあったから……今は良かったと思ってます」ポッ


『逆に、人をコントロールするには、メリットかデメリットの片面を、意図的に強調するとよい』

P「さすが兵法書えげつない。まあ俺も結城にやった手だけど」

文香「……本当ですか」

P「最初アイツは、アイドルになるのを渋ってた。

そこで、格好いいアイドルを何人か見せた。メリットの強調というやつだな」

文香「……木場さんや東郷さん、ですね」

P「後はこっちのもんよ。あれよあれよという間に、フレッシュアイドルはるるんのできあがり」

『戦闘中、次のような感情に振り回されるのは危険である』

文香「……戦場で相まみえるのは、兵法書ではなく人ですから……」

P「臨機応変の対応も、メンタル次第ってわけね」


『必死で駆け引きも知らなければ、本当に殺される。

臆病で生き延びることばかり考えていると、敵の捕虜になる』

P「強気すぎても弱気すぎても、失敗することには変わりない、か」

文香「……私も臆病すぎて……プロデューサーさんに捕まってしまいました」クスッ


『短気で怒りっぽいと、挑発されて罠にはまる。

清廉潔白も度が過ぎると、些細な侮辱で罠にはまる』

P「アハハ、いるいる、すぐ真っ赤になる真面目君! 学校でのお勉強はできたんだろうけどねー」

文香「……人間はそんなに綺麗な生き物ではない……私も小説から教わりました……」

P「名作ほど、とんでもない人格の登場人物が出てくるよな」

『部下に愛情を持ちすぎると、その扱いに苦労する』

P「こんちくしょう、図星だよ。厳密には、アイドルは部下じゃないけど」

文香「……プロデューサーさん……」

P「『こんな仕事させて大丈夫か』って、時々思うんだよ。

そこに私情が絶対ないとは言えない」

文香「……ありがとうございます……でも……

プロデューサーさんはアイドルを『使う』のが仕事なんですよ……」スッ

P「おいおい。自分で自分を、俺の踏み台みたいに言わないの」

文香「……日頃大切にしていただければ……私は何でもできますから……」ジッ

P「ちょっ近い近い! 『窮寇には迫るなかれ』! 次章をお楽しみに!」

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