二宮飛鳥「コンビニは強い」 ライラ「なるほどですねー」 (25)

ある日の事務所


ライラ「ふむふむ……ほうほう」カキカキ

心「はろはろー☆ お、ライラちゃんなにしてるの?」

ライラ「字を書く練習でございますよー。日本語、少しずつ書けるようになっていきますですねー」

心「どれどれ? おお、ちゃんと書けてんじゃん! ところどころ怪しい字があるけど」

心「ライラちゃん、やるぅ~♪ はぁとは外国語全然ダメだぞ☆」

ライラ「てれり、です」



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心「書くのも上手だけど、ライラちゃんはホントに日本語たくさん知ってるよねー。ペラペラしゃべるし」

ライラ「そうですか? でも、まだまだわからない日本語もたくさんありますですよ」

ライラ「もっといろんな言葉を知りたいですねー」

心「ふうん……知りたいかい? 新たな日本語を」ニヤリ

ライラ「こくこく」

心「ならばこのしゅがーはぁとが教えてやろう! ふはは☆」

ライラ「おおー、本当でございますか?」

心「もちのロン☆」

ライラ「もち……? おもちのお話ですか?」キョトン

心「あちゃー♪ 海外出身の子には伝わらないかー!」テヘペロ

ライラ「?」



飛鳥(日本育ちの子にも伝わるのだろうか……)←読書中

ライラ「ハート先生に日本語を教えてもらうでございますよー」

心「よし♪ じゃあはじめに教えるのは、とっても大事で刺激的な言葉だぞ☆」

ライラ「刺激……ドキドキしてきましたです」

ライラ「その言葉とは」

心「その言葉とは!」

ライラ「とはっ」

心「とは!」



心「スウィーティー☆だぞ☆」

飛鳥(日本語じゃない)

ライラ「スウィーティーとはどういう意味でございますか?」

心「なんか無敵でなんかいい☆」

ライラ「ほうほう……ほうほう?」

心「とりあえずよさそうなものを見つけたら、スウィーティーって言えばいいよ?」

ライラ「ん~……ライラさんには難しいですねー」

心「一度感覚をつかめば、あとは簡単だから。今年の流行語大賞候補だからちゃんと覚えるんだぞー?」

ライラ「おお、それは本当でございますか?」キラキラ

心「お、おうっ」

ライラ「本当に、流行語大賞なのですね?」キラキラ(曇りなき瞳)

心「う……」

心「やっぱ今年じゃなくて三年後くらいかなあ、あはは」


飛鳥(日和ったな……)

心「次の日本語は……」

ライラ「わくわく」

心「………」


心「なんにしよっか?」

飛鳥(ネタ切れが早い)


ライラ「もうおしまいの時間でございますです?」

心「ううん。あっちで何か言いたげな飛鳥ちゃんに引き継がせるから大丈夫♪」

飛鳥「えっ」

心「飛鳥ちゃんは博識だからきっとたくさん教えてくれるぞー♪」

ライラ「おおー」

ライラ「ワクワクしますですねー」

心「つーことで、二宮先生ヨロシク☆」

飛鳥「いや、ボクは」

ライラ「アスカ先生。よろしくお願いしますです」ペコリ

飛鳥「………」

ライラ「………」←穢れなき期待の視線

飛鳥「………」

ライラ「………」キラキラキラ

飛鳥「………」




飛鳥「……世紀末」

ライラ「おおー。どういう意味でございますか?」

飛鳥「ワールド・エンド」

ライラ「ふむふむ」

心「微妙に違くね?」

飛鳥「偶像」

ライラ「意味は」

飛鳥「アイドル」

ライラ「なんと! アイドルという言葉に、違う言い方があったのですねー」




その後


P「ただいまー。ライラ、もうすぐレッスンだけど準備はできてるか」

ライラ「P殿。偶像世界へ続く道は常に開かれていますです」

P「飛鳥」

飛鳥「少し指導方法を間違えたのは認めよう」

心「ノリで押しつけちゃってごめんね☆」

ライラ「わたくし、すでに鎖に縛られるような存在ではないのです」キリッ

別の日


ライラ「事務所のみなさんのためにアイスとお菓子を買いに行きますです」

飛鳥「暇そうにしているからと、Pに使い走りを頼まれてしまったね」

ライラ「ライラさんの最近のお気に入りはチョコミントですねー」ニコニコ

飛鳥「……雑用の自覚なしか。あるいは、それを何一つ問題にしていないか……」

ライラ「あ、見てください。公園にハトさんがいますです」トコトコ

飛鳥「あ、ちょっと……やれやれ」

クルックー

ライラ「こんにちはですよー……あっ」

飛鳥「どうかしたかい」

ライラ「今日はハトさんにあげるエサを持ってきていませんでしたねー……うっかりです」

飛鳥「いつも餌をやっているのかい?」

ライラ「そうしたいのはヤマヤマなのですが、あまりあげすぎると公園にハトさんが増えすぎてよくないそうでございます。P殿にそう言われましたです」

飛鳥「確かに、ハトが多すぎると周囲の住民に迷惑か」

ライラ「迷惑ですか? こんなにかわいらしいのに……」

飛鳥「ボクらも彼らも、ただそこに生きているだけ……だからこそ、重ならない道もあるのさ」

ライラ「………?」

飛鳥「……コホン。なんにせよ、これから買い物に行くんだ。パンのひとつでも買って、帰りにエサやりすればいいだろう」

ライラ「おお、それは名案ですねー。ライラさん、今から楽しみです」

飛鳥「さて。ここで食料を調達しようか」

ライラ「………」

飛鳥「ライラ? どうかしたかい」

ライラ「アスカさん……ここは、ここはコンビニですよ」

飛鳥「そうだね」

ライラ「アイスを買うなら、近くのスーパーのほうが安いでございます」ズイズイッ

飛鳥「あ、あぁ……そうだが。なぜ距離を詰めて」

ライラ「節約は大切です。無駄遣いは『めっ』ですよ」ジーー

飛鳥「ん………」

ライラ「アイスとお菓子を買うなら、スーパーでございます」ジーー

飛鳥「………」


飛鳥「………ふっ」

飛鳥「ライラ。キミはどうやら知らないようだな」

ライラ「? 知らない、でございますか?」

飛鳥「そう」

飛鳥「コンビニで商品を買うと、その数に応じてシールがもらえる」

ライラ「ふむふむ」

飛鳥「そのシールを一定数集めると……そこに飾ってある皿などと交換できる」

ライラ「なんとっ」

飛鳥「ひとりで集めるのは少々手間がかかるが……今日のように、大人数のために買い物をする場合にまとめてシールをもらってしまえば、意外と簡単に皿まで届く」

飛鳥「手に入った皿は、事務所や寮の備品となる。見た目が良いからなかなかに好評だ」

ライラ「おー……つまり、ここのコンビニで買い物をすることは」

飛鳥「決して無駄遣いじゃない。Pにも許可をもらっていることだ」

飛鳥「そもそも、うちのアイドルがここの皿を欲しいとねだったことがきっかけだしね」

ライラ「まさかそんな理由があったとは……わたくし、勘違いしていましたです」

飛鳥「ふっ、理解ればいいさ」

飛鳥「キミも覚えておくといい。コンビニは……強い」キリッ

ライラ「コンビニは強いでございますね」

飛鳥「そう。コンビニは強い」

ライラ「コンビニは強い」

飛鳥「強い」

ライラ「強い」

飛鳥「ふっ」

ライラ「うふふ」


店員(なんだあの子達)

帰り道


ライラ「ごはんでございますよー、ハトさんたちー」ニコニコ

ライラ「アイスが溶けてしまうので、すぐに帰らないといけないのが残念でございます」

飛鳥「よほどエサやりが楽しみだったようだね」

ライラ「ハトさんが喜んでくれるので、ライラさんもうれしいですねー」

ライラ「誰かに優しくしてもらえること。その優しさを、他の誰かにおすそ分けできること……とてもよいこと、でございます」

飛鳥「……なるほど。己の欲するところを人に施せ、か」

ライラ「誰かを喜ばせる力……P殿からいただいたものです」

飛鳥「誰かを喜ばせる力……」

ライラ「アスカさんは、違いますです?」

飛鳥「ボクかい? そう、だな……」

飛鳥「………」

飛鳥「多少は、あるんじゃないかな」

飛鳥「もちろん、ボクが一番喜ばせているのはボク自身だけどね」

ライラ「おお、深いでございますねー」パチパチ

飛鳥「ふっ、よさないか」

事務所に帰還


ライラ「アイス、おいしいですねー」ハムハム

飛鳥「………」ジーー

ライラ「? わたくしの顔、なにかついていますです?」

飛鳥「いや、そうじゃない」

飛鳥「ただ、幸せそうに食べるな、と。そう思っただけさ」

ライラ「それは、しあわせだからでございますよ」

飛鳥「アイスひとつで?」

ライラ「む……アスカさんはアイスをナめていますねー」ムゥ

ライラ「この小さな棒に、しあわせがぎゅっと詰まっていますですよー」

ライラ「どこにでもあるものではございませんです」

飛鳥「……なるほど。確かに、小さな幸せも、いつでも自由に手に入るわけじゃない」

飛鳥「当たり前にそれを享受できることの意味……たまには考えてもいいのかもしれない」

ライラ「覚えておくといいでございます。アイスは、強い」

飛鳥「はは……うん、アイスは強い」

飛鳥「ボクも今は、この一杯のコーヒーにささやかな幸せを感じるとしよう」

ライラ「いいですねー」

飛鳥「砂糖、砂糖っと」

心「呼んだ?」ニュッ

飛鳥「呼んでない」


飛鳥「よし、あった」ドババババ

ライラ「………」

ライラ「……砂糖、たくさん入れましたですね」

飛鳥「キミも飲む?」

ライラ「……一口だけ」

ライラ「………」ズズッ

ライラ「………」

ライラ「これは……コーヒーの意味、ございますです?」

飛鳥「そこまでかな……」

ライラ「P殿が淹れてくれるコーヒーは、もっと苦い感じがおいしくて……」

心「飛鳥ちゃんはスウィーティーだからな♪ はぁとと同じだぞ☆」

ライラ「ということは……アスカさんもしゅがしゅがすうぃーとしますです?」

心「するする、そのうち☆」

飛鳥「一生しないぞ、ボクは」

ライラ「ライラさんもしゅがしゅがすうぃーとしたいですねー」

心「お、じゃあやるか☆」

心「せーのっ!」

心・ライラ「スウィーティー☆」

ライラ「で、ございます」

飛鳥「………」


心「じーー」

ライラ「じーーっと見ますです」

飛鳥「……やらないぞ」

心「わくわく」

ライラ「ワクワク」

飛鳥「ワクワクしながら徐々に近づいてくるのはやめてくれないか」


心「ね、ね! 一回だけっ!」

ライラ「見たいですよー」

飛鳥「………」

飛鳥「はぁ。仕方ないな……ライラの曇りなき瞳に免じて、今回だけ」



飛鳥「す、すうぃーてぃー……?」←手でハートを作る


パシャッ


飛鳥「撮ったなっ!」

心「はぁとの写メ速度はJK並だぞ☆」

心「現役時代についた異名は『神速のインパルス』! これは永久保存させてもらっちゃおうかなあ」

飛鳥「どうでもいいから消去しろ、いますぐっ!」

心「わかってるわかってる♪ さすがにジョーダンだって☆」アハハ

心「でもめっちゃかわいかったからもっとやればいいのに。衣装作ってあげるから」

飛鳥「や・ら・な・い!」



ライラ「………」ズズズーッ

ライラ「たまには、スウィーティーなコーヒーも乙?でございますねー」ホカホカ



おしまい

おまけ


ライラ「………」

ライラ「あの、アスカさん。これはいったい……」

飛鳥「いや……キミの名前についてなんだが」

ライラ「わたくしの名前……ライラさんでございますよ?」

飛鳥「うん。それでだな、ライラという名は、アラブ語だと『夜』、北欧系だと『聖』を表すと言ったら」



蘭子「………!!」キラキラキラキラ

飛鳥「見ての通り食いついた」

ライラ「はあ……名前を好きになってもらえるのは、よいことでございます?」

おまけその2


ライラ「ライラさん、気づいてしまいましたです」

ライラ「ハートさんの本名は、サトウ……だからスウィーティーなのでございますねー」

心「よく気がついた! そう、まさしく佐藤の姓を受けたものは砂糖の化身なのだ♪」

心「もうね、この名字の時点でスウィーティーになるのは確定っていうかー☆」

飛鳥「全国70万人の佐藤さんが全員スウィーティーだったら、セカイはきっとカオスを極めるだろうね」

おまけその3


ライラ「アスカさんの名前は、飛ぶ鳥と書くのでございますねー」

飛鳥「あぁ、そうだね」

ライラ「ハトさんのように飛べますです?」

飛鳥「翼は……まだ未熟なままかな。最近、ようやく少し飛べるようになったところか」

ライラ「おおー」

ライラ「………」ジーー

飛鳥「?」

ライラ「どこに羽が生えているのです?」

飛鳥「あぁ、えっと……目には見えないものだから」

ライラ「なるほどですねー」

飛鳥「比喩表現も使いどころが難しいな……」

ライラ「みなさんの名前、いろんな漢字が使われていておもしろいですよー」

飛鳥「漢字一文字に様々な意味が込められているからね。名付けた者の意志が、そこに確かに存在するのさ」

ライラ「うらやましいので、ライラさんも名前に漢字を使ってみますです」

飛鳥「ほう。どんな?」

ライラ「螺威羅はどうです?」

飛鳥「世紀末だね」

ライラ「ワールド・エンドでございますかー」



おまけおわり

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます

齢16にして誰かに幸せや喜びを与えられることに幸せを感じられるライラさんはえらい子
ライラさんの衣装わりとジャララってしてるからロックだと思う


シリーズ前作:二宮飛鳥「………」 佐城雪美「………」

その他過去作もよければどうぞ

武内P「緒方さんと飲むことに」 智絵里「甘いジュースが好きです」
渋谷凛「アイドルの可能性」 水本ゆかり「新しい自分を見つけましょう」

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