貴方は知っているかしら



私の胸を衝く想いがこんなにも強いことを



ただ胸の奥から湧き出て私を苛み



こんなにも苦しいことを






貴方は知っているかしら



私がいつも心躍らせていることを



いつだって貴方の一挙手一投足が私を惑わせて



深く深く貴方へと沈み込ませることを

貴方は知っているかしら



身を灼くこの熱は貴方への想いだということを



約四十度のこの体温は



全て貴方に貰ったということを






貴方は知っているかしら



貴方の苦しみは私のものだということを



貴方が傷みを受け容れる度



私もその傷みを愛することを

貴方は知っているかしら



慢心の生む恐ろしい結末を



上空に舞う戦闘機が嗤う時の



後悔と苦しみを






貴方は知っているかしら



心を殺す容易さを



恐怖絶望憎しみが



心を固めて逃さないことを

貴方は知っているかしら



心を喪う感覚を



氷より冷たく炎より激しい恐怖が



心を塗りつぶし消していくことを






貴方は知っているかしら



春の雪解けのような感覚を



積もった闇を振り払い



私が少しずつ描き変えられてゆく感覚を

貴方は知っているかしら



抱き竦められる切なさを



隠した心をぶつけても



それを受け容れてくれる嬉しさを






貴方は知っているかしら



心を奪われた事に気づいた時の衝撃を



貴方が取り戻してくれた心



……皮肉なものね提督、貴方が奪ったのよ。

貴方は知っているかしら



憧れが愛へと変わる瞬間を



私も知りはしないけれど



気づけばもう愛していたことを






貴方は知っているかしら



日々想いを伝えたがる心の騒がしさを



どうせ伝えることなんて出来ないくせに



今度こそと一人悶々とすることの煩わしさを

貴方は知っているかしら



宙に浮かぶような感覚を



酩酊状態のようなそうでないような



けれど温かいこの気持ちを






貴方は知っているかしら



私の瞳に映る貴方の姿を



優しく微笑み私に指輪を差し出して



照れて顔を赤くする貴方の素敵な姿を

貴方は知っているかしら



私が今にも崩れ落ちてしまいそうなことを



それなのに嬉し涙も衝動も内にしまい込んで



素っ気ない返事しかできないもどかしさを






貴方に知って欲しいから



私はどうにかして言葉を紡ぐ




できるだけ素直に。
できるだけ感情を込めて





｢私、これでも今……とても幸せなのですけれど｣