少女「海っていいなぁ」カニ「確かに」(30)

少女「……え?」

カニ「確かに」

少女「……カニさんだよね?」

カニ「いかにも」

少女「あの……ね……」

カニ「どうした?」

少女「寒い」

カニ「そっちから指摘してくるか~かにしい~」

少女「それはくるしい」

少女「カニさん、喋れるんだよね?」

カニ「いかにも」

少女「だじゃれはもういいよ」

カニ「……」チャキチャキ

少女「ハサミ、かっこいいね」

カニ「……」グッ

少女「な、なんとなくガッツポーズしてるのは伝わってきたよ……」

少女「カニさん、なんで喋れるの?」

カニ「では逆に聞くが、きみはどうして喋れるんだい?」

少女「それは……ええと……。なんでだろ」

カニ「ぼくも同じようなものだよ。喋れるから喋れる。それだけさ」

少女「うへぇ……アバウトだね……」

カニ「悩みは断ち切ってく主義だからね!」

少女「ハサミがとっても似合うね……」

カニ「ところで平日の昼間にこんな浜辺でどうしたんだ?」

少女「カニさんにも平日の概念があるんだね……」

カニ「まぁぼくはこれでも社交的なカニだからね」

少女「社交的なカニって概念が私の中にはなかったよ」

カニ「……制服は着ているようだし、サボりかな?」

少女「うぇ。……そうだよ、サボり」

カニ「それは……なんというか……」

少女「カニさんも私を怒る?」

カニ「うーむ。……堪忍しておこう」

少女「ちょっと苦しいよ、それ」

カニ「なにか辛いことでもあったのカニ?」

少女「いきなり語尾ですごいキャラ押し出してきたね……そういうわけじゃないんだけど、通学電車に乗ってたらなんとなくふらっと遠いとこに行きたくなっちゃって」

カニ「ということはきみはこのあたりの人間ではないのカニ?」

少女「そうだカニ」

カニ「ださいねその語尾」

少女「今夜のメニューはカニ鍋かな」

カニ「堪忍してくれカニ」

少女「そろそろダジャレのレパートリーの薄さが垣間見えてるよね」

カニ「……まぁ、そうやってふらっと海を訪れる人間は案外多いよ」

少女「へぇ、そうなんだ」

カニ「きみみたいな学生よりは大人の人間の方が多いけどね」

少女「有給とか取りやすいからかな?」

カニ「あそこの崖あるでしょ?あそこから海に飛び込んだりしててね……」

少女「うひぃ」

カニ「嘘カニ」

少女「あそこの売店にクーラーボックス売ってるかな?」

カニ「やめて」

カニ「失恋でしょ」

少女「…………」

カニ「図星カニね」

少女「その語尾ハマったの?」

カニ「恋バナしようよ」

少女「自然にガールズトークしようとしないで」

少女「はぁー……」

カニ「溜め息をすると幸せが逃げるんだよ」

少女「もう逃げ切ってるよ……カニさんは運命の糸って信じる?」

カニ「運命の糸?」

少女「こう、運命の相手とは小指と小指が赤い糸で繋がってるってやつ」

カニ「へぇ……ぼくも誰かと繋がってるのかな」

少女「そもそもカニさん、小指なくない?」

カニ「確かに」

少女「ほんとにあるなら見えてしまえばいいのになぁ」

カニ「……そうかな?」

少女「見えたら失恋して悲しくなったりしなくて済むじゃん?」

カニ「繋がってない人を好きになったときはどうするの?」

少女「確かに!……そっかぁ……だめだなぁ……どこにも逃げ場はないのなぁ……」

カニ「きみは海に逃げてきてるけどね」

カニ「なんというか……ほら、あれやってみたらいいんじゃないか?海になんか叫ぶやつ。ドラマとかでよくあるでしょ」

少女「カニさんドラマとか観るの?」

カニ「たまに」

少女「どこで観れるの……」

カニ「そこの売店が営業中いつもテレビ流してるんだよ。まぁ大体野球だけどね」

少女「なんというか、人生ならぬカニ生をエンジョイしてるね」

カニ「……」カチッカチッ

少女「なんとなくピースしてるのは伝わってきたよ……」

少女「んー、でもいいかもね。叫ぶの。何がいいかな」

カニ「好きだー!とか?」

少女「……昨日フラれたんだよね」

カニ「なんかごめん」

少女「……大丈夫」

カニ「お詫びに左のハサミなら食べていいから」

少女「お詫びが重すぎるよ!」

カニ「これがほんとのカニバリズムだよ」

少女「…………」

カニ「ごめん」

少女「んー……バカヤロー!にする」

カニ「古典的だな」

少女「でもすっきりしそうでしょ?」

カニ「確かに」

少女「立って叫んだ方がそれっぽいよね」

カニ「いっそ海の方まで歩いてって波打ち際で叫ぶくらいがノリノリでいいんじゃない?」

少女「その提案がノリノリだね……じゃあ行こっか!」

トコトk…………

少女「……どうしたの?」

カニ「歩幅が……ね……?」

少女「よく売店に行けるね……掴んでってあげる……」ガシッ

カニ「やんっ」

少女「投げるよ」

…………すぅーっ


「ばぁかぁやぁぁろぉおおおお!!!!!!!!」

バァカァヤァァロォオオオオ…………

バァカァヤァァロォオオオオ……

バァカァヤァァロォオオ…

バァカァヤァ……

バァァ……

カニ「うるさい」

少女「うるさい」

カニ「……すっきりした?」

少女「思ったより楽しい」

カニ「それはよかった」

少女「もう一回やってもいいかな?」

カニ「次からは耳塞いどくしいいよ」

少女「耳あるの?というかハサミでどうやってふさぐの……?」

…………

少女「はぁ……はぁ……」

カニ「全力だね」

少女「やりきった感はすごいよ」

カニ「傍目からみてもすごいね」

少女「……私、やりきれてたかなぁ」

カニ「……」

少女「ちゃんと全力でやりきって、フラれちゃったって言えるのかなぁ……?」

少女「思い返すともっといろいろできたんじゃないかなぁって思っちゃって……恋愛もちゃんと、やりきれてたのかな?」

カニ「……海で叫ぶなんてばかげたことも全力でできるんだから、恋愛もきっと全力で駆け抜けてたんじゃない?」

少女「……ふふっ、そうだね。駆け抜けてるときは全力だったかも」

カニ「……吹っ切れた?」

少女「うーん。ちょびっとだけ!」

カニ「そうか、それはよかった」

少女「カニさんのおかげだね」

カニ「まぁカニだからね。切るのはお得意だよ」

カニ「まぁ、ぼくは諦めないで好きな人を追い続けるのもいいと思うけどね」

少女「もうちょっと悩んでみるよ」

カニ「事を急くと運命の糸まで切っちゃうかもしれないしね」

少女「そこはちゃんと見切りたいとこだね」

カニ「まぁ赤い糸なんてのはおとぎ話のようなものだし切り離して考えた方がいいかもしれないけど」

少女「喋るカニさんがもうこれ以上なくおとぎ話のようなものだよ……」

カニ「切り込んでくるね」

少女「……わたしとカニさんも何かの運命の糸で繋がってるかもしれないね」

カニ「小指がないのに?」

少女「うーん……じゃあ直接繋がっちゃえばいいんじゃない?」ガシッ

カニ「手をつな……ん?これはハサミを繋ぐなのかな?」

少女「すごくどうでもいいね」

カニ「確かに」

少女「赤い糸じゃなくても赤いハサミで繋がっちゃえばいいのですよふふん」

カニ「色しか共通点ないしいまいちうまくないね」

少女「うるさい」

カニ「……でも赤い糸がなくても直接繋がっちゃえって考え方は嫌いじゃないよ」

少女「カニさん、そういうときは"嫌いじゃない"じゃなくて"好き"っていうんだよ」

カニ「好きでもないカニ」

少女「えー、ぶーぶー」

少女「じゃあ私、学校に行ってくるよ!午後からだけどね!」

カニ「うん、いいことだね。いってらっしゃい」

少女「うん!いってきます!……ありがとね!」

カニ「何がだい?」

少女「未練は断ち切れたか微妙だけど、なんとなくくらーい気持ちは断ち切れたよ!立派なハサミだね!誇っていいよ!」

カニ「……そうカニか」

少女「……照れ隠しカニ?赤くなってるカニよ?」

カニ「元々赤いカニ」

聖剣伝説レジェンドオブマナ

カニカニバッシング思い出した

おまけ

少女「ところでカニさん、なんでわたしに話しかけたカニ?」

カニ「ナンパカニ」

少女「…………チャラいカニね」

以上です。読んでいただきありがとうございました。
ぼく自身よくわかりませんが気がついたら深夜のテンションで書いてました。
とりあえずカニが食べたいです。

ゆきの(Twitter:@429_snowdrop)からのお届けでした。

>>22
まったく存じ上げないんですが女の子とカニが話すマジキチな作品もいっぱいあるものなんですね……。みんなカニが大好きなんですね……。カニ、美味しいしかわいいですもんね……。

>>25

女主人公が
蟹を踏み潰す

>>26
蟹愛を……抱いてほしい……

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