(デレマスSS)モバP「魔王とメドゥーサ」 (15)


デレマスSSです。
注意点は、地の文だと言うくらいのはずです。


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 「瞳を持つ者よ!我を黄泉の泉へ誘え!」

いつもの通り、私はプロデューサーさんに声を掛ける。

お出かけした次の日やお仕事の後に、

一緒にお話しをするのが、すっごく楽しくて、

今日も楽しかったおでかけの話がしたくてウキウキしている。

午前のレッスンからウキウキしていたけど、

そこはちゃんとレッスンしたし、大丈夫……なはず。

プロデューサーさんは、そんな私を見て、

キーボードに置いていた手を放して立ち上がると、

「じゃあ、魔王様の喉を痛めぬように、供物の紅茶とお菓子を準備しようか」

と優しく受け入れてくれて、

いつもおしゃべりをするソファーに目を向けました。


 「フフフ、流石は瞳を持つ者!その姿勢に免じ、我が自ら振る舞ってみせよう!」

プロデューサーさんが時間を作ってくれる。

それが嬉しくて、そして、その優しく受け入れてくれる笑顔がもっと嬉しくて

私は自分から紅茶を淹れる準備をする。

うん。きっと今日も楽しい時間になる。

トレーの上で並べるカップもカタカタって、笑ってる。

ケトルが沸騰を告げる時間、あと、これから茶葉を蒸らす時間……

待ち遠しいようで、でも、このふわふわした嬉しさを噛み締めたいようで……

私は、そんな気分でちょっと茶葉を多く入れそうになったりしながら、

おしゃべりの準備を進めている。


 「我が隠遁の姿が見たい!?い、いかに同胞と言えど、ふ、不埒であるぞ!」

昨日は、お休みだった。

私は、まだアイドルとしてデビューしたばかりだし、

いろいろ慣れないことばっかりだったけど、

ちょっと欲しい物があったからお出かけした。

お出かけをしようと思ったとき、

前にプロデューサーさんから「変装をするように」って言われていたのを思い出して、

髪型やアイテムに気を付けて身支度を済ませたんだけど……

プロデューサーさんは、その変装をした姿が見てみたいと言ってきた。

そ、その、そういうのは、恥ずかしいからダメです!

そんな感じで怒ったんだけど……伝わった……かなぁ?


あ、苦笑いしてる……


 「我が書庫が枯渇し、知識の渦に支障が生じる懸念があったのだ……」

変装の話題がやっと終わって、お出かけの目的の話になった。

熊本から、こっちの寮に引っ越すにあたって、

今まで読んできた本はあまり持ってくることが出来なかった。

その本たちは、私が私らしく振る舞うのに必要な知識の種……

それが足りなくなるのは、ちょっと不安

だから、近くに図書館か本屋さんが無いか探しに行きたくなった。

それが、昨日の目的

それを聞いたプロデューサーさんから、

言ってくれれば案内くらい……と言われたけど、

やっぱり、お休みの時くらいは、私だけで何とかしないと……ね。


 「黒き宝石の誘惑……我が精神に幾度の試練を……はい。買っちゃいました……」

お散歩の途中で、お菓子屋さんを見つけたんです!

そこで、今日から発売の新作だって、チョコレートがたっぷりかかったお菓子があって、

欲しいけど……でも、本を買うならお金も必要だし……って悩んだんです。

そこまで言うと、プロデューサーさんは、

「まぁ、買ったんでしょ?」と一言だけ笑顔で訊いてきました。

……はい、私は誘惑に負けちゃいました……。

うぅ、綺麗に図星を突かれてしまって、そのまま答えちゃった……。

でも、負けて正解でしたよ!

すっごく美味しかったんです!

って言うと甘い物が好きなのかな?

プロデューサーさんがちょっとだけいいなぁって顔をした気がする。

次のおしゃべりの時間のお菓子に買ってこよう……かな。

でも、そのまま買ってくるよりも……そうだ!


 「同胞が黒き宝石を望むのであれば、その願い叶えてみせよう!」

なんて、ちょっとイジワルなことを言ってみる。

プロデューサーさん……即答で「食べたい」って言うなんて……ずるいよぉ

でも、そんな素直なプロデューサーさんだから、

その……好きなんだけど……


って、あぁ!違う!お出かけの話をしないと!


 「その黒き宝石を携え、知識の貯蔵庫へ向かったが……」

私は、気持ちを切り替えてお出かけの話に戻す。

お菓子を買った後、図書館に向かおうとしたんです。

でも、私は図書館にたどり着く前に、

もっと気になる場所を見つけたんです。

それはさながら

『深淵の古き貯蔵庫』

……はい。プロデューサーさんの言うとおり、古本屋さんです。

その佇まいに惹かれた私は、そのお店に入ることにしたんです。

そこには……


 「しじまを纏う者が……」

とても物静かなお姉さんが1人で居ました。

私が入ったことも最初は気付かなかったみたいで……

何度か声を掛けて、気付いてもらえました。

え?それはどう声を掛けたのか?

……うぅぅ……ひ、秘密です。

そういうイジワルな質問はダメです!

お姉さんも本を読むのが大好きみたいで、

座っている椅子の近くにたくさんの本が積まれていました。

だから、私が読みたい本も分かるかなって思って話をして、

参考になりそうな本を選んでもらったんです。

お姉さん、前髪が長めでお顔がよく見えなかったんですけど……

ちょっと高い場所にある本を取ろうとしたときに、

お姉さんが脚立に乗ったんです。

その時、見上げたらお姉さんのお顔がちゃんと見えて……

瞳がとても綺麗で、私は石化したみたいに見惚れてしまったんです。

だから、きっと……


 「彼の者は、まさしく、古き書庫を守る麗しきメドゥーサ……」

そういうとプロデューサーさんの顔が、少し真剣になった。

……何だろう……あの人は綺麗だし、いろいろ教えてもらって、

昨日だけで本当に大好きになったんだけど……

今、この瞬間だけ……ちょっとだけ……心がシュンとしそうになってしまう。

……そんな私を見たからか、プロデューサーさんはすぐにいつもの笑顔に戻る。

少し、心が落ち着いた気がする。

それから、買った本とお菓子を抱えて寮に帰って、

その本とお菓子を堪能した。

あ、買った中の1冊は、そのお姉さんが読みたかった本だったから、

読み終わったら、お姉さんにも読んでもらって、

感想を言い合おうって話したんですよ。

今、それがすっごく楽しみなんです!


 「同胞よ、約束の時間に支障は無いか?」

一通り話終わった私の視界に、ふと時計が映る。

……いつもより長く話してしまったみたいで、

プロデューサーさんのお仕事の邪魔になっていないか急に心配になる。

プロデューサーさんは、

「心配しなくていいよ。それに魔王の言葉を拝聴するのは大切なことだからね」

と少しくくすぐったいような言葉で気になくていいと教えてくれた。

今日は、午前にレッスンしたし、もうお仕事も無いから、

私はこれで終わり。

だけど、プロデューサーさんはいつも遅くまで頑張っている。

そんなことを考えていると……

「大丈夫」

と、優しい声が聞こえ、頭に温かい感触が伝わる。

それが嬉しくて、ちょっとだけ、身を委ねてしまう。

確か明日は、たしかロケのお仕事だから、

朝から忙しいって言われていた気がする。


 「我が魔力はまだまだこんなものではない!新たなる目覚めに備え、同胞にも休息を与えん!」

私は、明日も頑張ろう。

プロデューサーさんと一緒に頑張ろう。

そんな気持ちを込めて、宣言する。

プロデューサーさんはしっかり頷いた。

うん。今日もいい日だった。

だから、明日も一緒にいい日に出来るはず!

私は、ソファーから立ち上がると、右手をプロデューサーにかざして告げた。


「闇に飲まれよ!」


以上です。

蘭子ちゃんと、アイドルになる前の子
ちょっと後に事務所で再開するのは、また別のお話……かな?

そんな感じで今回は締めます。
願わくば誰かの暇つぶしになりますように……

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