事務所



卯月「春です！」

凛「…………」

卯月「春が来ました！！」

凛「…………」

未央「しまむー、どうしてしぶりん抱きしめてるの？」

卯月「春だからです！！」ｷﾞｭｰ

未央「そっか、なら仕方ないね。」

凛「未央、見捨てないで、なんとかして」

未央「何とかしてって言われてもなぁ……」

卯月「島村卯月！　頑張ります！」ｷﾞｭｰ

未央「しぶりんを離すことを？」

卯月「それは頑張りません！」

未央「離さないことは」

卯月「頑張ります！」

未央「そっか、頑張ってね」

卯月「はい！」

凛「未央、諦めないで、もうちょっと頑張って」

未央「頑張るって言ってもな……ずっと左から抱き着いてるよね、右からは抱き着かないの？」

卯月「はい！　絶対左からです！」

未央「そっか、譲れないポリシーがあるんだね」

卯月「はい！　ここは譲れません」

未央「うんうん、そっか。じゃあ私はこれで」

凛「未央、待って」

未央「……じゃあ正直に聞くけど、しぶりんここで本当にしまむー引きはがしていいの？」

凛「そ、それは……」

未央「…………」

凛「……も、もうちょっとだけ……」

未央「そっか。じゃ、私帰るね」

凛「ダメ、それはダメ。未央、帰るのはいけない」ｷﾞｭｯ

卯月「えへへ、凛ちゃんがもうちょっとだけって言ってくれました」ﾃﾚﾃﾚ

未央「もういいじゃん、二人で四月バカりなよ。私帰って録画した鋼鉄城のカバネリ見たいんだよ」

卯月「？　カバネリ？　アニメか何かですか？」

未央「うん、弟が見ててさ。後ろからちょっと見てたんだけど、それが結構面白くて、こう、ゾンビがわー！と出てきて少し怖いんだけど……」

凛「！　それだ！　未央、今すぐ未央の家に行こう、みんなで！」

未央「ええー……別に、構わないけどさ、どうしたの急に」

凛「怖いアニメを見れば、卯月なら私から離れるはず！」

未央「えー、そうかな、その逆だと思うんだけどな……」

凛「大丈夫、さぁ行こう未央！卯月！」

卯月「はい！　未央ちゃんのおうち楽しみです！」ｷﾞｭｰ

未央「……あ、移動中も抱きついたままなんだね……しかもやっぱり左側で……」

ー未央宅ー



島村「うう、怖いです……！」ｷﾞｭｳｩｩｩ

凛「駄目だ、未央。これは悪手だ。予想より凄い力で抱き着かれてる。まずい、止めて、とめていますぐ」

未央「あはは、この際予想って言葉は聞き流してあげる。でもそんな必死に言わなくても。しぶりんもほんとは怖いんでしょー？」

凛「違う、このままじゃ、息が、私が、絞め落される前に、早く、はや……残して逝こうか、私たちの足跡」ｷﾘｯ

未央「あ、これほんとにやばい奴だね。止めよう止めよう」ﾋﾟｯ



卯月「うう、怖かったです……」

凛「うん、怖かったね……ほんとに……」

未央「かみ合ってない気もするけど……うーん、しまむー、そろそろしぶりんを離してあげたら？　正直私の家に来るまでもずっと二人くっついてて私どんな表情で一緒に歩けばいいかわからなかったし……」

卯月「え……離さないと駄目ですか？」ｳﾙｳﾙ

未央「正直別にどっちでもいいんだけど、いや、ここに来るまでは正直やめてほしかったんだけど……そろそろ理由が知りたいなと思って」

卯月「理由……ですか？　理由は、未央ちゃんがこうすると凛ちゃんが喜ぶって言ったからですけど……」

未央「……ん？」

凛「卯月、その話詳しく」

卯月「は、はい！　えーと、その……」

回想


未央「春と言えば新生活、陽気に誘われて眠くなるこの季節だけどね……実はこの季節は、ひと肌が恋しくなる季節でもあるんだよしまむー！」

卯月「ひと肌が恋しくなるんですか！」

未央「そうだよー、しかも恋しくなるのは決まって、冬を思わせるようなすこしばかりクールな人と相場は決まっている……そう、つまりしぶりんのような！」

卯月「つまり、凛ちゃんはこの季節、ひと肌が恋しい、そういうことですか！！」

未央「ざっつらいと！　きっとしまむーがしぶりんに抱き着いたらしぶりん超喜ぶと思うよー！」ｸﾞｯ

卯月「凛ちゃんが喜んでくれるなら……島村卯月、頑張ります！」ﾌﾝｽ

未央「うんうん、あ、三分たった。べヤングのお湯捨ててこなきゃ」ｽﾁｬ


回想終了

卯月「って！　島村卯月、頑張りました！」ﾀﾞﾌﾞﾙﾋﾟｰｽ

未央「やっばいすっごい適当に言ってたことだから正直全然覚えてない」

凛「…………」

未央「…………」

凛「未央」

未央「謝る！　謝るけど！　私言わなかったけど今日一日しぶりんの表情めっちゃにやけてたからね！？　超笑顔だったから！だから、ここはなにとぞ穏便に」

凛「正直ありがとう」

未央「あー！　そっちかぁ！　ありがとうかー！　うんうん！　そういってもらえてみおちゃんも嬉しいなー！」

卯月「未央ちゃん、とっても元気いっぱいです！」

未央「うん、もう、なんか元気いっぱいにならざるを得ないからね……諦めというか、なんというか……」

凛「……その、それでさ、未央」

未央「？　どったのしぶりん」

凛「……つまり、今の私は、ひと肌が恋しい、未央的にはそういうことなんだよね？」

未央「……正直、かなーり適当だったけど、まぁ今回の発端はそういうことだったね。うん」

凛「……じゃあ、もしさ。もし私がまだ人恋しいなーって言ったら、未央はどうしてくれる？」

未央「へ？　どうって……」

凛「卯月は左から抱きしめてくれるけど、右からは絶対抱き着いてくれなくて、なんだか右側が寂しいなーって……なーんていったら、未央は何してくれるのかな？」

未央「……あーもう、しょうがないなー。そこまでいうなら、このちゃん未央もひと肌脱ぎますか、行くぞしぶりん！　私の抱き着くスペースは十分かー！」ﾀﾞｷｯ

凛「ちょ、未央、激しく来すぎ……っ」

卯月「えへへ、ニュージェネレーションはずっとずっと仲良しです！」