男「俺の艦これがおかしい」 (189)

初投稿です

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男「…はぁ」ガチャン

男「ただいまーって…今日から誰も居ないんだったな」

男(ま、俺は一人暮らしでも全然平気だけどねぇ)カシュッ

男「んぐっんぐっ…ふぅ」グデー

男(明日から二連休か、本当に久々だな…とりあえず布団干して、洗濯物をクリーニングに出して…)カチッ


男「それ終わったらどうするかなぁ」チビチビ

男「にっこにこ動画♪っと…」カチカチ

男(お、好きなアニメのMADがランキングにあるな、艦これ?)


ニ時間後

男「このアニメつまんね」チビチビ

男(これならさっき見たやつの方が百倍は面白かったな。キャラ殆ど知らなかったけど)

男「ふあぁ…」

男(んー艦これかぁ、知ってはいるけど何となく旬逃した感じがして手を付けなかったんだよね)


男「今更初めてみよっかな、艦これ」カタカタ


男「DMMから、これか、ポチっとな」カチッ


カ・ン・コ・レ ハジマルヨ

男「はいはい、始まりますよっと」カチッ

男「…」

男「…」



男「これは…ロード画面だよな、長いな」

男(やっとロードが終わったか)

男(提督の名前を決めて下さい、ね。じゃあ『提督』で)

?「…」

男(始まった、これ良く見るやつだな。ホーム画面)

男(このキャラって、吹雪ちゃんだよな。名前は知ってるんだよ俺)

吹雪「…」

男「…チュートリアルとかないのか?このゲーム」

吹雪「誰!?」

男「!?」ビクッ

男「お、音量デカすg「誰かそこに居るんですか!?」

吹雪「お願いがあるんです!そこに居るあなたへ!!…ゲホッゴホッ」

男(うわぁ…なんだよこのゲーム、こんな鬼気迫る世界観なの?…っていうかミュートにしても音量変わんねぇ!)

吹雪「私は――――――」プツンッ

男(…声はブラウザを閉じたら収まった)

男「ビックリ系のフラッシュかよ…なんでこんなのが流行ってるんだか…シャワー浴びて寝よ」




翌日


ピピピピピピ

男「…っ」カチッ

男「…一時か」

男(あれから何となく寝付けなかった俺は、艦これについて調べた。だがしかし、ウイルス紛いの挙動や、あの悲痛なセリフにはどこも言及していなかったし、見つける事も出来なかった)

男(そして何より艦これは今、新 規 登 録 が 出 来 な い 状況だった。つまりあの時見たものは…夢か幻だったってことだろう)

男「…」ボーッ

男「…お願い、ねぇ」



カンコレ ハジマリマス

男「…」カチッ

吹雪「…」

男「…あのー」

吹雪「…っ!!」


男(息を飲む音が聞こえた、それもなんだか物凄く生々しい。気のせいかも知れないけど…)

男「もしかして俺の声、聞こえてたりする?」

男「やー、昨日はごめんね。あんまり大きい声だったからビックリしちゃって」

男「…」

男(なんだ、やっぱり聞こえてないじゃないか。何やってんだろ俺、二次元と会話出来るわけ無いだろ)

男(精神状態相当悪いぞ、カウンセリングでも行くか…?)

ジジ・・・・ジ

吹雪「いえ…こちらこそごめんなさい、もう誰も来ないんだなって思ってたから、興奮しちゃって、つい」

男「…ぇ」

男「…喋った、喋った!!?」

吹雪「?ああ、そうですよね。画面のキャラが喋ってるんですから…驚くのも当然です」

男「…」

男「…」

吹雪「えっと、どうしました?」

男「いや…本当に驚いたよ、そっちから俺は見えるの?」

吹雪「いえ、見えません。そうですね…空?から声が聞こえてくる感じです」

吹雪「申し遅れました、私は……吹雪。吹雪型、特型駆逐艦の一番艦、吹雪です」

男「俺は男っていうんだ。このゲームでは、提督って名前にしたけど」

吹雪「提督…?って提督提督ってことですか!?…変なの」

男(柔らかい口調、さっきまでの空気が少しはマシになったか)

男「そういえば吹雪…さんは確か昨日お願いがあるって言ってたけど」

吹雪「…そうなんです。申し訳無いんですけど、すぐ済みますので、お願いできますか?」

男「いいよ、何?」

吹雪「左真ん中にある出撃ボタンから、私を外に出して下さい」

男「えーっと、鎮守府正面海域?」

吹雪「はい!」

男「出したよ」

吹雪「じゃあ、一、二分行ってきますね。待っていて下さい」



男「おお、戦ってる戦ってる」

ボガァン

男「大破…?HPが危ないってことなのかな」


吹雪「…戻りました、次に編成ボタンを押して下さい。編成にさっき来てくれた敷波ちゃんを入れて下さいますか?」

男「えっと…回復は?」

吹雪「後でしますよ、大丈夫です」

男「っと…分かった、変更って所から選ぶんだよね?」

吹雪「編成出来ました?そうしたら敷波ちゃんを私の所にドラッグして入れ替えて下さい」

男(吹雪の声は出撃前と変わらない、どうやらHPが減っても辛くはないみたいだ)

吹雪「男さん?」

男「ああ入れ替えたよ。しかし、この敷波って子は喋らないの?」

吹雪「んーっと、今はまだ無理みたいですね」

男「よく分からないな、そっちの仕組みは…」

吹雪「次で最後です。こんな事に時間を割かせてしまって本当にごめんなさい!」

男「いや、今日は暇だったから問題ないよ」

吹雪「…ありがとうございます、では」




吹雪「このままもう一度出撃して下さい」

男「あれ、回復は?」

吹雪「…大丈夫ですよ。回復は」

男「でもさっき回復するって…」

吹雪「出撃中に回復する仕様なんですよ。変わってますから、変に思うのも仕方ないですよね」

男「ふーん、そういうものなのか…分かった、出撃ね。押したよ」カチッ

吹雪「はい!では、行ってきますね」

男「うん」

吹雪「ああ、そうだ。これでお別れですね」

男「これで全部?」

吹雪「はい!本当にありがとうございました!」

男「礼には及ばないよ、ちょっと俺も席外すね」

吹雪「了解です」

男(そう言った後、モニターは出撃画面に切り替わった。それを確認し、俺は用を足すため席を外す)

男「トイレトイレっと…ああ、そうだ。飯食べてなかったな」ボリボリ

男(外で何か食べてくるかなぁ、服は…このままでいいか)


ロビー

男(何か入ってたけど…全部どうでもいい広告か)カパッ

男「何食べるかなぁ」ツカツカ

?「あら、男君。おはよう」

男「ああ、大家さん。おはようございます」

大家「凹んでると思ってたけど案外平気そうね、お出かけ?」

男「少し飯を食べに…凹んでる?」

大家「昨日一階にまで聞こえてたわよ、昨日の朝。喧嘩別れしたんでしょ?」

男(昨日の大喧嘩はどうやらこのマンション中に響き渡っていたらしい、最悪だ。どんだけ薄い壁で出来てるんだよ…ここ)

大家「で、どうなの?よりは戻せそう?」

男(こ、このババァ…!!)

男「いやぁ…はっはっは、どうなんでしょう。じゃあ俺はこれでっ」ダッダッダ

大家「あら、亀裂は思ったより深そうね…」


外 某牛丼チェーン

ツーツーツー

男「…着拒か、そりゃそうだよな」

男(女と別れた原因は、色々ある。中々二人の時間が作れなかったのが最大の理由だろうけど、積もり積もった二人の不満が遂に昨日爆発したってところだ)

男「はぁぁぁ…なに未練たらしく電話してんだよ、俺」ボソッ

男(もう引っ越そうかな…しかし、駅に近いし、中々無い物件なんだよなぁあそこは)ボリボリ

男「…」ムシャ

男(どうせ外に出たんだし、クリーニングも序に出しておけば良かったか)

男「…」ズズ…

男「…七味七味」パッパッ

男(こうして店内を見てると、さっきまでの事が嘘のように感じるな)

男「…ふぅ」カタッ

男(そういえば、あの子…吹雪は何がしたかったんだろうなぁ。出撃して、それだけで終わりって…)ムシャムシャ

男(あそこのボス?を倒すことに何か意味でもあったのかな、まぁ良いけど)ズズズ・・・カタッ

男「しかし、画面のキャラが喋るとはなぁ」ボソッ

男(まぁいいや、コンビニで飲み物買って帰るか?)ガタッ

アリアトッシター

?「…」

ガー

男「…はぁ」テクテク

男(折角の一人の休みなのに、普段とやることが変わらないな、俺も…そうだ、BDでも借りて…)


自宅

ガチャッ

男(…大家には遭遇せずにすんだか)コソッ

男(そうだ、PC付けたままだった。映画見るし電源落とすか)テクテク


男「…」

男(PCの画面には艦これのホーム画面が写っており、そこには出撃前に吹雪と入れ替えた敷波が居た)

男「…もうブラウザ閉じていいのか?」

男(返事は無い、ここで俺はさっきの吹雪が言っていた「お別れです」というセリフを思い出す)

男「そっか、お別れか。…じゃあ達者でな」

男(聞こえていないであろう言葉をモニターに投げかけ、俺はブラウザを閉じようと――――――)


?「誰!どこに居るの!?」

男「っ…うるさっ」ガタッ

男(そうだった、ミュート出来ないんだった!!なんだよこの仕様は!)

男「お、落ち着け!大きな声を上げないでくれよ!」ヒソヒソ

?「これが落ち着いて居られるかっ!アンタが男だろ!?」

男「君は敷波、だよな。吹雪から聞いたのか?」

敷波「そう、吹雪からだよ。ずっとうわ言のようにアンタの名前を言ってたからね!!」

男「うわ言…?何があったんだよ?」

敷波「何を抜け抜けと…アンタが殺そうとしたんだろうが…」

男「ちょ、ちょっと待ってくれ、殺すって…俺が?」

敷波「ここには吹雪とアンタ以外居ないだろ…他に誰が指示するっていうんだ…!」

男(慌てて俺は記憶を辿る。大破、出撃、不可解な仕様…そう、原因は明白だった)

男「だって…吹雪は回復するって…大丈夫だって…言ってたぞ」

男「それに、そう、この手のゲームなんて、HPが無くなっても…すぐ復活を」

敷波「…ゲーム?…ゲームだって…?」

男「そうだ、それより吹雪は無事なのか!?今、どうしてる!」

敷波「…っ寝てるよ、私のすぐ近くで。艤装のお陰で傷は無いから」

男「ぎそう…?」

敷波「知らないの?フンッ、私達が身につけてる装備のこと」

男「…」ブツブツ

敷波「とにかく!吹雪の艤装を入渠してよ、早く!治して!」

男「にゅうきょ?ああ、もう、なんだよそれ!」

敷波「はぁ逆ギレ!?とっとと姿現して入渠ドッグにこれ運べって言ってんの!!」

男(…訳が分からない、にゅうきょって「入渠」、これか?)カチッ

敷波「なにこれ、艤装が…消えちゃった?」

男「入渠?ってこれで良いんだろ?五分で治るのか?」

敷波「…ひょっとして、アンタって透明人間?」

男「え?」



敷波「艦これ、ねぇ」

男「それがこのゲームの名前だ」

男(調べて見たところこのゲームでは、キャラが大破状態にも関わらず出撃したり、進撃したりするとロスト、つまり死んでしまうらしい。なんで知らなかったんだ?俺は)

男(吹雪は大破の状態で出撃し、轟沈するところだったという)

敷波「うん、状況がよくわかった。わからないけど」

男「そっちは…どんな所なんだ?」

敷波「…広い鎮守府だよ、部屋がいっぱいある、それくらいかな、私も来たばっかりだから。吹雪はここに一人で居たみたい」

男「今いる所は?」

敷波「執務室、ダンボールばっかりだけど、ここだけ暖房が入ってたから」

男(じゃあこの画面もその執務室なのか…?)

敷波「そうそう、ひとつ言っておきたいんだけど」

男「なんだ?」

敷波「ゲーム?ってね、言うのやめてくれないかな、本当に」

男「分かった」

敷波「なんだよ…分かってる?本当に?遊び半分で操作しないで欲しいって言ってるんだけど」

男「本当に済まなかった…意図してなかったとはいえ、人一人を殺すところだったんだ。反省してるよ」

敷波「人?…違う、"ゲームのキャラ"でしょ?」

男「…そう捉えていたことは否定出来ない、だけど、もうそんなことは――――」

敷波「もういいよ、帰って。もう来なくてもあたしは構わないから。どうせ面倒臭い奴と思ってるんでしょ?」

男「そんなこと…俺は…」

敷波「…っ!!!画面を消せって言ってんのっ!!」

男「…っすまない」カチッ

男(ブラウザを閉じた画面には、俺と女が写っているデスクトップがただ表示されていた)

男「…あああ!!!クソッ!!!」

男「…」

男(人の気持ちが分からない、か。そのとおりだな…俺はまた人を傷つけた)

敷波の口調が「私」に所々なっていますが
私➡あたし でお願いします


男「…」

シャアァァァァ

男(敷波は、あの中には吹雪しか居なかったと言っていた)ゴシゴシ

男(広い建物…ひとりぼっちでそんな所にずっと…)

男「…重いな、重すぎる」

男(そんな気持ち、分かんねぇよ…)

男「でも、だけど、こんな俺にだって何か出来ることが…」

男「…」

男「…」ポタ・・・ポタ・・・

男(…本当になにやってんだろう、俺)ポタ・・・ポタ・・・


男(土曜日、夕飯はコンビニで買っておいたつまみと冷蔵庫に残っていた惣菜で済ました。PCの電源はあれから付けれずにいる)

男(あの二人は何を食べているのだろうか)

TV『アハハハハハ ソレデ…』

男「…もう寝るか」ピッ

男「今日は寒いな…」

男「…」

パサッ

男「はぁあー…」ドサッ

男(PCに毛布を被せても、きっと意味は無い…だろうな…)

男(…このモニターの…中に…は)ペタッ

男「…」クークー





男「…」

男「…っ?」ブルッ

男「さ、さっむっ…!!なんだ…ここ、草むら?」

男(地面に手をついて撫でると確かに草のようだった。風が強く、暗すぎて目が殆ど見えない。屋外に居るみたいだ)

男「…部屋で寝てたんだけど」

男(辺りを見回すと巨大な建物のような物がすぐ近くにある事が分かった、見たことの無い所だが、俺は多分ここを知っている)

男「…行くしかないよな」ザッ

男(磯の香りがする、やっぱりここは…)



男(建物の前に到着した訳だけど、入口が分からない。そもそも鍵が掛かって入れないかもしれない事を俺は忘れていた)

男「…困ったな」

男(歩いている途中、整備した道にテーブルや椅子、また井戸や畑などがあり多くの人間がここに暮らしているかのような痕跡ががある。もしここがあの場所じゃあなければ俺は確実に捕まるだろう)

男「暗くて何も見えないな…窓から入るか?」キョロキョロ

男「手頃な窓は…っと」テクテク



男(ここなんか入れそうだな、石でガラスを割って―――――――)

?「動くな」

男「っ…」

男(頭に何か硬い物が当たっている、銃口だろうか?映画か何かでよく見るシチュエーションだが…)

男「…敷波か?」

敷波「…!その声!なんで…だってここには…居ないって」

男「それが俺にもよく分からないんだ、とりあえず…それ、下ろしてくれないか?」

敷波「…」

男「俺は無知で、それが原因で吹雪をあんな目に遭わせてしまった…だから、だからこそ君たちの力になりたいと本心でそう思ってるんだ」

敷波「それって同情?」

男「…同情で何が悪い」

敷波「同情なんかでそんなこと言われると腹立つんだけど」

男「勝手だとは思ってる、けれどこれが俺の気持ちなんだ、受け取ってはくれないか…?」

敷波「…それって、アタシ達の司令官になるってこと?」

男「司令官…そういうことになるのかな?」

敷波「なんだよ、軽いな」

男「すまない…」

敷波「…別に…いいけどさ、信用してもいいのかよ。力に…なるって」

男「ああ、俺に出来ることなら」

敷波「…そっ」スッ

男「…」ホッ


敷波「…」

男「敷波?」

敷波「…ぅ、なんだよぉ、なんで、今更」グスッ


男「…」

男(ああ、そうか…この子もそれ程傷ついていたんだ…)ギュッ

敷波「な、何するんだよ…やめて…ょ、やめろってば…」

男「…無理するな」ギュゥウ

敷波「無理なんて…してないし…」

男「頑張った、頑張ったよ、敷波は本当に!ごめんな、本当にごめん」ウルッ

敷波「ぁぁぁあ…うぁ…あたしも…ごめんね…ごめん…」グズグズ

男「敷波…」

敷波「怖かった、怖かったんだよぉ…ホントにもう来ないんじゃないかって…もうこれからずっと二人ぼっちだって…」ボロボロ

男(敷波の体は驚くほど冷たく、小さく震えているのが分かった。…改めて思う、こんな場所、絶対に間違ってる)


執務室前

カタカタ・・・

男(暗闇にある建物の廊下は外の風が窓ガラスに当たり揺れる音と、俺達の足音しか聞こえない)

敷波「ここが執務室。ほら、ね?表札に書いてあるでしょ」

男「本当にここにしか灯りが付かないんだなぁ」

敷波「うん、さっきまであたしも探索してたんだけど、どこもそんな調子で…さ」

男(…ブレーカーか?)

男「…まぁともかく、入ろう」ガチャッ


男(ダンボール以外なにも置いていない部屋の入ってすぐ右の端、吹雪はそこに布を被り横になっていた)

吹雪「…」スースー

敷波「今は落ち着いてるけど昼間、錯乱しててさ…死ぬつもりだったんだ、吹雪」

男「…」

敷波「ここがどういう所で、吹雪に何があったのかあたしにも分からないけど。助けてあげてよ、司令官」

男「…ああ、約束する」

男(敷波は自分の艤装を部屋の隅に置いた。吹雪の物は入渠したからか、見当たらない)

男「そういえば、確かに暖かいなこの部屋」

敷波「暖房器具なんてどこにも無いのに、変だよね」

男「…このダンボールには、何が入ってるんだ?」

敷波「えーっと…布団とか缶詰とかがいっぱい入ってたよ」

男「缶詰か…見ても良いか?」

敷波「うん、はい」

男「君もこれ被ってろ、薄いけど無いよりは良いだろ」パサッ

敷波「…うん」

男「お、本当だ一杯あるな…牛缶、クジラ…食べたことのないものばっかりだ…敷波は何か食べたのか?」

敷波「…ううん」

男「?ああ、缶切りが無いな…っと、あった、これか、君も何か食べたほうが良い、開けるぞ」


敷波「…ふん…そんな優しくしちゃってさ」ボソッ

書き貯めて次の土日に投下します

・・・

敷波「・・・」モクモク

男「・・・」ボー

敷波「ご馳走さまでした・・・どうしたの?」

男「いや・・・吹雪は何を食べていたのかと思ってな」

敷波「ああー・・・そういえばそうだよね、食堂かな」

男「そんなところが?」

敷波「いや?知らないよ、けど、このくらい大きな所ならあると思うんだよね」

男「ああ・・・なるほど」

敷波「あたし、ここを見て回ったのはこの部屋から東側だけだから、西側のどこかかな・・・まー、後で吹雪に聞けば良いか」

男「そうか・・・そういえば敷波は、今日どうやってここに?」

敷波「どうやってかぁ・・・悪いんだけど全然分からないんだよね」

男「気付いたら居たってことか?」

敷波「うん、それで突っ立ってたら吹雪にあの艤装手渡されてさ」

男「そうか、辛かったよな・・・直ぐに戦うことになって」

敷波「ううん?、あたし安心したんだよ、あの艤装を初めて見たときね。上手く言葉には出来ないけど・・・あれは自分の一部なんだって分かったから」

男「・・・そういうものなのか、そういえば艦娘は艦艇?の生まれ変わりなんだったな」

敷波「と言っても、どうも他人事の様にも感じるんだよね、なんでかなぁ」

男「同一の存在だって実感が無いってことか?」

敷波「そうそう、もう一度海に出れるって分かった時、嬉しいって思うはずなんだよね。けど、あたしは・・・いや、なんでもない」

男「・・・なんだ?」

敷波「いや、上手く言葉に出来ないからさ・・・ふぁあ」

男「っと、深夜もいいところなのに長々と付き合わせて悪かった。眠いか?」

敷波「ん・・・いや、大丈夫だよ?」

男「じゃあ、横にだけなっていてくれ。休まるだろう」

敷波「じゃあ、そうしようかな・・・」

男「ああそうだ、入渠ドックの場所って―――――」

・・・

吹雪「・・・」スースー

敷波「・・・」クークー

男「おやすみ、ゆっくり休めよ」

男(建物の西側、確認したいがまだまだ暗闇で何も見えないだろう)

男「俺も今日のところは寝るか・・・」

男(その前にトイレに・・・)

廊下
・・・

男(寒いな・・・布団を被ってるとはいえ寝間着じゃあな)

男「こっちか?」スタスタ

男(敷波が言うには東側は主に個室が並ぶ寮のようなスペースがあったらしい。他に目立つような物は修理を行うドック、演習場、畑・・・後の二つは俺がここに来るときに通った所か)ピタッ

男(寮なら便所くらいあるだろ)スタスタ


・・・

男「っはぁ、はっ」タッタッタ

男「が・・・くそっ、ここもか」ダッダッダ

男「ちくしょう・・・やっぱりか・・・!」ダッダッダッダッダ




男「じょ、女子トイレしかない・・・!!」ガーン


男「ここも、女子、トイレ、か」プルプル

男(あれ、今どの辺りだ?)プルプル

男「い、いや、そんな場合じゃない!もうこの便所で――――――――」

吹雪「その声、男さん!?」

男「っ!!?」ビクッ

吹雪「あ、そんなに驚かなくても・・・」

男「ふ、吹雪・・・起きたのか、良かった」

吹雪「はい、ご迷惑をお掛けしました。・・・本当に」

吹雪「ごめんなさい!私もう、限界で・・・男さんにひどく後味の悪いことをさせようと・・・!!」

男(お、俺も限界かも・・・」プルプル

吹雪「・・・え、それって」

ガシッ

男(う、腕を掴まれた!?)

吹雪「ダメです!早まっちゃ!!・・・わ、私が言えた事じゃないですけど、今日初めて会いましたけど・・・男さんが自決なんて、私、嫌です!!!」

男「ふ、吹雪、何か勘違いしてるが・・・今の台詞、そのままそっくり返すからな」プルプル

吹雪(男さん・・・こんなに震えて・・・え?それじゃあ、もしかして凄い怒ってる・・・?)ビクビク

男「悪かったと思ってるなら、二度とそんなことするな、敷波のためにもだ」プルプル

吹雪「敷波ちゃん・・・そうだ、後で謝らなくちゃ」

男「それと、あと一つ君に言っておきたいことがある」プルプル

吹雪「は、はい!!」ビクッ

男「トイレ借りるぞ」

吹雪「はい!!!・・・へ?」パッ

ドタドタドタ・・・
ガンッ!!ゴロゴロゴロ

吹雪「え、ええ・・・?」

・・・

吹雪「男さんって結構律儀?なんですね」

男「・・・そうかな」

吹雪「私もさっきのことは忘れますよ・・・?」

男「そうしてくれ・・・」

吹雪「・・・」

男「・・・」

吹雪「・・・だ、大丈夫ですよ!!おもr男「言うな」

吹雪「す、すみません」

男「はぁあ・・・俺のクールなイメージが・・・」

吹雪(く、クールなイメージって自分で言うんだ・・・)


吹雪「・・・着替えどうします?」

男「・・・どうしようか」

・・・

男「―――というわけで気付いたらこの建物の外に寝てたって訳だ」

吹雪「そうですか・・・不思議なこともあるものなんですね・・・」

男「けど、君が思ったより元気そうで良かったよ」

吹雪「ゲームのキャラですからね、切り替えは早いんですよ?」

男「っ!!」

吹雪「・・・」


男「・・・それ、敷波の前で言うなよ」

吹雪「はい・・・けど、本当のことですから」

男(これが死のうとした原因・・・か)

男「本当の事でもない。今日ここに来てはっきり分かった、君はちゃんと生きてる。無論敷波もだ」

吹雪「・・・あの時モニター越しに居た私がなんでこのゲームの操作方法を知っていたと思います?」

男「・・・いや、分からない」


吹雪「私、一時期向こうの世界で生活していたんです」

男「なんだって?」

吹雪「本当ですよ?嫌というほど解らされました。色んなグッズや、映像。オマケに私が元居たゲーム自体も見ました」

男「・・・誰かに連れ出されたのか・・・いや、自分一人で行き来したのか?なんにせよ、それが君が一人でこの変な世界に居た原因か」

吹雪「・・・ごめんなさい、今は・・・」

男「あ、いや、すまなかった・・・踏み込み過ぎだな・・・」

吹雪「・・・お願いがあるんです、男さん。今度は時間が掛かるかもしれません、事情も伝えず本当に都合が良いことだと思います。けど!その内・・・今は無理でも、必ず言います」

男「なんだ?」

吹雪「このゲーム・・・私達と海域を開放して行って欲しいんです。具体的には・・・そう、南方海域まで。」

男「・・・考えがあるんだな」

吹雪「はい、男さんも薄々分かっているとは思いますが、今居るここは艦隊コレクションの世界ではありません」

男「・・・」

吹雪「よく似ていますが・・・簡単に言うとハリボテ、鎮守府の外には出られないし操作がなければ海上にも出られません」

男(許可が無ければ外にも出られない・・・安直な例えだが、まるで檻だな)

吹雪「・・・元の、艦これの世界に帰る・・・その手掛かりに私は心当たりがあります」

男「それが南方海域、か?」

吹雪「建造で鎮守府の仲間を増やすだけでも良いんじゃないかとも思いました、確かに寂しさは紛れるかもしれない・・・けど、それだけじゃあ何も解決しないと思うんです」

男「・・・」

吹雪「・・・だめ・・・ですか?」


男「今度は信じていいんだな?」

吹雪「!・・・はい!」

男「ここまで来たんだ、それくらいなら喜んでやろう」

吹雪「・・・ごめんなさい、我儘ばかりで・・・って、男さん!?」


男「・・・ん?おお、体が・・・!?」スゥ・・・

男(全身が薄く・・・透明に?ということは、俺は元の世界に帰るのか・・・・?)

吹雪「えっと、えっと」アタフタ

男「あー、それじゃあ!、一つ俺も我儘だ。一つ条件を付けさせて貰う」

吹雪「条件、ですか?」

男「ゲームのキャラという認識だ、改めろ。思い込めとは言わないが努力しろ!絶t――――――」フッ


吹雪「消えちゃった・・・」

吹雪(・・・無茶言いますね、努力なんてしたって、きっと私はもう・・・)

すみません、とりあえずここまで


翌朝

ピピピピピ・・・カチッ

男「…朝」


男「戻って来たのか…?」

男(目を開くと自分の右手がモニターに張り付いているのが見えた。成程、こうすればあの世界に行けるらしい)

男「…」ゴロン

男(まさか夢でもないだろう…しかし、不思議というか、なんというか…)ムクリ

染み付きズボン「」ビッチャビチャ
 
男(夢であって欲しかった気もするけど)


男「…とりあえずシャワー浴びよう」メソメソ




男(日曜日、俺は溜まっている洗濯物を干してからPCに改めて向き合っていた。開いた母港画面には誰も表示されていない)

男「おーい、誰かいるかー?」

『はーい』

男「敷波か」

敷波『おはよ司令官、結構遅くまで寝てるんだね』

男「休日だからな。おはよう。そっちはどうだ?朝飯食べたか?」

敷波『うん、食べたよ。調理室みたいな所があってさ、吹雪が作ってくれた』

男「そっか…そういえばその吹雪は?」

敷波『ドックに入れてた自分の艤装を取りに行ったよ、手入れするんだって』

男『手入れか…そういえば敷波。吹雪から聞いたよな?これからのこと』

敷波『うん、聞いた。当然あたしも協力するよ』

男「少し怖い目に遭うかも知れないぞ、いいのか?」

敷波『何言ってんだよ、あたし艦娘だよ?それって結構侮辱かも』

男「あ、悪い…つい」

敷波『別にいいけどね、それにアンタはあたしの司令官なんでしょ?しゃんとしろよなー』

男「…そうだな。分かった、任せてくれ」

男(二人共やる気は十分ってことか…そうだ、なら俺もそれに応えなきゃな)

ピンポーン

男「…ん、誰だ?」

敷波『どうしたの?』

男「いや、部屋に誰か来たから少し離れる。画面は付けたままにしておくからそこでは静かにしていてくれ」

敷波『はいはいー、よく分かんないけど黙っとくよ』


男「…はい」ピッ

『お早うございます!』

男「…何の用だ、もう真っ昼間だぞ」

『お見舞いですよ、お見舞い。ほら、お土産も買って来たんですよ?』

男「今取り込み中だからまた会社でな」ピッ

トントントン

男「…さて、PCPC」ボリボリ

ドンドンドン

男「ああもう!!」


?「先輩、生きてましたか?」

男「死んでた方が良かったか?」

後輩「先輩冷たいなぁ―健気で優しい後輩がこうして心配して来てあげたのにー」クネクネ

男「気持ち悪い動きするな」

後輩「あっはっはっはっは!!まぁまぁ、同じマンションに住んでる仲じゃないですか。酒持ってきたんですよ、これでパーッと行きましょうよー」

男(うわぁ…やっぱり出来上がってる)

男「親御さんはどうしたんだ?一緒に住んでる」

後輩「今日はー旅行に行ってますよー」

男「…ちょっとそこで待ってろ、散らかってるから」

後輩「うっす、了解でありまぁす!」



センパイーマダデスカァー?

男「―――――という訳で、酔っぱらいが来る。少しの間切るぞ」

敷波『女の人…っていうか少しの間で済むの?呑むんでしょ?』

男「いや、それは問題ない。また三十分後位にな」

敷波『ふんっ、了解』

サーンーパーイー


男「大きな声出すな、迷惑だろ」

後輩「えー?人のこと言えるんですかー?それー」キュポン

男「もう開けるのか」

後輩「先輩グラスちょーだいー、一昨日のドロドロ聞かせて下さいよー」

男「うん、絶対心配して来て無いよね」ガタッ

後輩「心配してますよ!だから教えてー」

男「やだ、というか聞いてたんだろ?」

後輩「それが私、一昨日は家に居なくてー、昨日の夜帰ってきたんでお父さんの口伝てにしか聞いてないんですよー」

男「絶対言わないからな」

後輩「さんぱいー」

男「君ね、そういう事言うから話さないんだぞ?」

後輩「あー、でも先輩だけかぁーやっぱり女さん居ないと寂しいなぁー」

男「それは悪かったな。持ってきてやったぞ、ほら」

後輩「あざーす!うぇへへ!!今日は寝かせませんよ―?」


二十分後

後輩「」グカー

男(後輩は結局、俺が黙っていたら一人だけで酒を煽り。一方的に喋り倒した後ダウンした)

男「…毎度の事だが、本当に直ぐ寝るな」

男(隣の部屋に寝かせておくか、当分起きないだろうし)

男「しかしなんでプライベートでまでコイツの面倒見なきゃならんのだ…」ズルズル

男(女は毎回毎回良く相手出来てたよなぁ…)ズルズル



吹雪『酔って、知り合いの家を訪問…』

男「月一度位の頻度で来るな」

敷波『その人大丈夫なの?』

男「うーん、大丈夫なカテゴリには入らなそうだな…」

吹雪『あはは…』


男「まぁそんな話はいいだろ。それより、今日はどうすれば良いんだ?」

敷波『そうそう、今日から南方海域?を目指すんでしょ?』

吹雪『はい、ズバリ、『1-1攻略』です!』

男・敷波「『いちのいち?』」

男「マリオか?」

敷波『マリオって何?』

吹雪『…すみません、鎮守府正面海域のことです…』

男「ってことは、…これか。なぁ、君達二人だけでクリア出来るのか?」

敷波『…ん、それはやってみなきゃ分からないだろうけど』

男「しかし、この間みたいになったら…」

吹雪『画面に表示されている物がどこまで「ブラウザゲームの艦これ」に似ているのかは分かりませんが…敵がどれほど強くても、タブーさえ守っていれば大丈夫な筈です』

男「『大破状態での進軍』と『大破状態での出撃』だよな、けどさ、ここは大事を取って「中破状態での進軍」もやめておいた方が良いんじゃないのか?」

吹雪『…け、けど、それだとかなり攻略に時間かかりますよ?』

敷波『心臓に悪いし、あたしもそうした方が良いと思うな。もし吹雪が沈んだりしたら…』

吹雪『私も敷波ちゃんが沈むなんて嫌だよ?大丈夫、沈まない仕様だから…』


敷波『!仕様って…』

吹雪『あ…!そ、そういう意味じゃ無くて…えっと…』

男「あ、あーストップ!まぁ、時間が無い訳じゃないんだ。ゆっくりやっても良いだろ?吹雪」

吹雪『はい…』

敷波『…あたしは、吹雪が死ぬなんて嫌だからね、絶対、嫌』

男(トラウマになってるのか…?無理も無いが…)


男「…大丈夫か?二人共、これから出撃するんだぞ?」

敷波『ごめん、行けるよ。心配いらないから!』

吹雪『…私も大丈夫です!』

男「…分かった、じゃあとりあえず様子見も兼ねて、気楽に行こう。準備は良いんだよな?」

吹雪『はい!出撃しましょう!』

敷波『はーい、行こっか!』

男「…」


吹雪「男さん?」

男「…ああ、悪い。じゃあ出発するぞ」

カチッ

男(出撃画面に切り替わったが)

男「本当に大丈夫なのかよ、そんな情緒不安定で…」

男「…」

男(…今の俺に出来ることは、こうして画面を見ていることだけか)

短いですがここまで



【1-1 鎮守府正面海域】
開始地点

シュウウゥゥゥゥ

サバッ

敷波「うぁっ!…っとと…」グラッ

吹雪「大丈夫?敷波ちゃん」

敷波「うん、平気平気。…あー、けどちょっとだけビックリしたー」

吹雪「あはは…確かに私も全然慣れないや」

敷波「急に海上に放り込まれるなんて、乱暴だよなぁー。…まぁいいけどさ」


敷波(強い海の匂い…艦娘としての二度目の出撃、ってか?)

サァァァァァァァ

吹雪「あ、始まるみたいだよ。進みだした」

敷波「今回旗艦は吹雪だから、あたしはそれに付いて行くってわけね。」

吹雪「うん。遅いけど、止まれないからしっかり付いてきてね!」

敷波「りょーかい!」


数分後

敷波「…ね、吹雪。海の上にいる時って楽しくなる?」

吹雪「艦娘だしね、ちょっとあるかな」

敷波「そっかぁ、あたしも、『しっくり』は来るんだよね」

吹雪「しっくり?」

敷波「レールに乗って、運ばれていくような感覚…って言えば良いのかな」

吹雪「敷波ちゃんはじゃあ、楽しくはならないの?」

敷波「楽しいとは違うかなぁ。違和感はあるんだけどさ、こうして走ってると変に安心するんだ」

吹雪「…安心、かぁ」


敷波「何か言いたげじゃない?」

吹雪「私も、昔はそんな感覚だったなぁって」

敷波「なんだよ、オバサンみたいな事言っちゃって」

吹雪「お、オバサンじゃないよ!」

敷波「…まぁ今度さ、教えてよ吹雪の事。言いたくない事は良いからさ、あたし、まだ全然知らないから」

吹雪「…うん、分かった。…って――――――」







吹雪「―――――敵艦、発見しました!駆逐…ロ級、一隻!」

敷波「フンッ!じゃあサクッと行こっか!」


モニター前

男(S完全勝利、こちら損傷無し、と。)グッ

「進軍」「撤退」


男(…これを押さないままだと自動的に進軍になるみたいだな)カチッ


男「ん?なんだこのちびキャラ…って」

シャアァァァァ

男(ちびキャラと一緒にモニターに表示された羅針盤は、一人でに回りだした。いや、このキャラが回してる演出なのか?)

男「羅針盤ってこんなに景気よく回ったっけな…まあ、いいか。それより次だ」


男(調べたぞ…鎮守府正面海域)

・ABCの全3地点からなる海域 C地点(ボスマス)でB勝利以上を取ればクリア

・最初に必ず踏むA地点は敵駆逐艦が一隻
 ↓
・その後A地点から2方向にランダムでB地点かC地点に分岐
 ↓
・Bマスは駆逐艦二隻固定
 or
・Cマスは軽巡洋艦旗艦固定で、駆逐艦がそれに二隻、あるいは三隻随伴している


男(ゲーム通りならこれで次にボスマスに分岐してくれれば…クリアか?)

ァァァァァ…

男「右下、ボスマスだ…!!」


海上
Aマス付近

吹雪「損傷、無し。 …勝った、ね」

敷波「まぁ、駆逐艦一隻程度ならなんてことないでしょ。艤装の皆が頑張ってるんだもん」

妖精(敷波)「…」ヒョコ

敷波「ね?」

妖精(敷波)「…!」b

吹雪「…」

敷波「そういえば吹雪の艤装の妖精、全然顔出さないね。伝達とかどうしてんの?」

吹雪「…え?ああー、妖精さんは、自分の装備のものしか見えないようになってるんだよ」

敷波「へ?そうなんだ…じゃあこの子見えないの?」プラーン

敷波(妖精)「」ガクガク

敷波「あ、ごめんな」ポトッ

敷波(妖精)「~」シュッ


吹雪「うん、見てみたいよね他の子も、ね?」

吹雪(妖精)「…」ジー

敷波「ふーん…じゃあ艤装を取り替えっこしてみたりとかは出来そうも無いのかな」

吹雪「サイズが合わないっていう事もあるしね…無理なんじゃないかな、聞いたこと無いし」


敷波「そっかぁ…それにしても、次はどの方向に進むのかなぁ。吹雪の妖精待ちだよね」

吹雪「数分後にまた進み始めると思うから。ちょっと休もっか」



敷波「…」

吹雪「…」

敷波「…あー、あれ。日差しが強いね」

吹雪「うん」

敷波「…」

吹雪「…」


敷波「えっとさ、まだ?」

吹雪「後ちょっと…かな、ごめんね、何か中で揉めてるみたいで」

敷波「揉めてる…妖精同士が?それってやばくない?」

吹雪「…あ、ううん。大したことじゃないんだ、皆いつもは仲いいんだよ?敷波ちゃんの方はこういうの無い?」

敷波「うちは今のところ無いかなぁ…皆上手くやってるみたい」

吹雪「そうなんだ…っと、終わったみたい。」

敷波「やっとかぁ、さーて、次は何が出てくるかなぁ…って考えても無駄か」

吹雪「敷波ちゃん。男さんも言ってた、気楽に行こうね! じゃあ、進みます!」


敷波「気楽にね、うん」

敷波(心配してくれてるのかな…どっちかと言うと、あたしは吹雪の方が心配なんだけどなぁ)

…数分後

吹雪「…っ!」

敷波「!居た?」

吹雪「右前方に敵艦、発見です!」

敷波「駆逐艦が…二隻と…なに、あれ」


?「…オオオオオ… …」

吹雪(そっか、前回はボスマスに行かなかったんだ)

吹雪「軽巡洋艦、ホ級だよ…多分、あれらに勝てばこの任務は成功、だと思う」

敷波「気持ち悪い姿だなぁ…フンッ、どうする?もう接近するの?」

吹雪「うんっこのままだと向こうも気付くし、先制攻撃を狙おう」

敷波「戦略とかある?」

吹雪「…旗艦、つまり敵軽巡を集中攻撃できればベストなんだけど、位置的に最初にやるのはリスクが高すぎる…かな」

敷波「随伴してる敵に対して確実に無防備になるしね…確実に駆逐艦からいくってことで良い?」

吹雪「うん、あの最後尾を走ってる駆逐艦、あれをまず背後から落とそっか。行こう!」

敷波「おっけー、取舵いっぱーい!」

ゴゴゴゴ…

駆逐ロ級1「…」

駆逐ロ級2「…ッカッ?」





吹雪「全艦、一斉射!、当たって!」ドンッ


ロ級1「グッ…」

ッガアアアアァ

ロ級1「ァ・・・・ァァ・・・・」ズズズ…


ロ級2「…!」ザザー…

軽巡ホ級「…」ザザ…ザー

敷波「よしっ当たったね!」


吹雪「…敵の攻撃が来る、回避運動します!敷波ちゃん、付いてきて!全速で!」

敷波「え?あ、ああ!分かっ―――――」


ドッ

敷波「…っ!!」

シャアアアア


吹雪「大丈夫!?被害は!」

敷波「だ、大丈夫、かなり近くに着弾したけど、無傷だよ!」

吹雪「もう一隻の攻撃も来る、そのまま移動して!隙を見て雷撃を行います!」

ドッ シャアアア

敷波「よし、外した!」

吹雪(やっぱり、ホ級と比べればロ級の攻撃精度はそんなに強くない…)


吹雪「…あとニ隻…なら」

敷波「もう一回、攻撃来そうだよ!」

ダンッ

吹雪「…っ嘘、このコースで…?」

ドッ

吹雪「あうっ」


シャアアアア


敷波「吹雪っ!」

吹雪「…小破かな、大丈夫、まだ動けます!」

敷波「ね!魚雷、まだ撃たないの!?」

吹雪「…まだ待って」

ホ級「…」ガガガ…

ロ級「…カカッカ!」ガチャッ



敷波「撃ってくる!」

吹雪「今!減速して!こっちも始めます!」

敷波「待ってました!準備出来てるよ!」


吹雪「雷撃、開始!」ポシュッ

敷波「いっけぇー!」ポシュッ


吹雪「離れるよ!加速します!」




ドッガアァァァ


ロ級2「…ァ」ズズズ


敷波「…やったぁ!敵駆逐艦の轟沈確認!」



ホ級「…!」ザザ・・・・ザ・・・

敷波「あ、アイツ逃げるよ!追わなきゃ」

吹雪「…いや、待って」

敷波「へ?なんで…」

吹雪「敵は三隻中二隻撃沈、追撃する必要は無いです。私達の勝ちだよ 被害を増やすリスクを負う必要も無いからね」チャプ…

敷波「…そっか、なんか勝ったって実感湧かないなぁ」

吹雪「あはは…確かに」


敷波「けど凄いね、吹雪。あんなに冷静に動けるなんて…あたしなんて、攻撃が来た所からもう頭真っ白だったよ」

吹雪「そうかな…?ありがとう」

吹雪(けど…本気だったのに…小破、しちゃった。私、やっぱり練度もリセットされてる…?)


敷波「…ん、帰投始まるってさー 起きれる?ほら」スッ

吹雪「…」


敷波「吹雪?」

吹雪「ご、ごめん、ありがとうね」グイッ

敷波「?いいけどさ、ボケっとするのは無事に帰ってからにしろよなー」

吹雪「…うん」

>>82
「精度が強くない
 ⬇
 精度が高くない」
でお願いします

とりあえずここまで



ザザ・・・・ザッザザァーーーーーーー

敷波「吹雪ー」

吹雪「なーにー?」

敷波「前の方に小さい影が見えるんだけどー、あれなんだろー」

吹雪「!もしかして… いいよ!そのまま接近してー!」

敷波「いいのー? まぁ、止まろうにも止まれないか、分かった―!」


吹雪「あの形は…」


モニター前


ガー…

男「…案外あっけなかったな」クタッ

男(俺は今回初めてこのゲームの戦闘画面を見たわけだが、それは無音の中、お互いにひたすらダメージを与えていくという簡素なものだった。実際もこんな感じにお互い棒立ちで戦ってるのか…?)

男「まぁ、それは後で聞くしかないか。次は――――――」


後輩「お、艦これですかー」


男「…うわぁ!?」ガタタ

後輩「あれ、けどおかしいですねー? その母港画面。誰も居ないじゃないですかー」

男「…」

後輩「…なんですか?それ、変顔? ごめんなさい面白く無いですぅ」ゴロリ

男「睨んでるんだよ!そ、それよりも…あー… 起きるの早いな?」

後輩「当たり前ですよー?私は遅刻なんて今まで一回もしてません…から…zzz」

男「…は?」

後輩「…zzz」

男(もしかして寝ぼけてたって言うのか?)

後輩「」グカー

男(なんて奴だ…って、こいつ、艦これをやっているみたいな口振りだったよな…?女性でもああいう物をやったりするのか)

男「そんな事はどうでもいいか…はぁ、また運ばないと」

吹雪『男さん! 艦隊帰投しました!』キンキン

後輩「…んん…んあ…うるさ…ぁい」ムニャ

男「吹雪…! 静かに静かに!」ヒソヒソ

吹雪『え、今の…女の人の声』

男「少し待ってくれ、一分程したら戻ってくる」


執務室


男『とにもかくにも、1-1攻略おめでとう』

敷波「おめでとうー」

吹雪「おめでとうございます」


男『二人共お疲れ様。どうだった?』

敷波「うーん、軽巡はやっぱり駆逐艦とは違ったね。吹雪が居てくれて良かったよ」

吹雪「今までの駆逐艦とは全然形も動きも違うしね、けど慣れれば大丈夫だよ」

男『敵の動きか…いや、俺も見てみたかったな』

敷波「そんなことよりさ、吹雪から聞いたけど、さっき司令官の近くで女の人が艶っぽい声出してたって本当?」

吹雪「し、敷波ちゃん!」

男『…例の酔っぱらいだよ、寝ぼけて絡んで来たんだ』

敷波「ああ…さっき言ってた?」

吹雪「大変ですね…」

男『誤解は解けたか?それよりも艤装外してくれ、ドッグに入れるから』

敷波「さっき更衣室に寄ったからもう外してるよ、お願いー」

男『分かった…そういえば、今日はこの後どうする? 俺としては二人共初めての攻略をやった訳だし、出撃はもうしない方が良いと思うが…』

吹雪「それなんですが、新しくここに来た仲間が居るみたいなんです」

男『新しく…敷波の時みたいな?』

敷波「そうそう、あたしの時と同じらしいね」

吹雪「えっと… あの海域で先程艤装を回収したんです。だから私達、これからこの艤装の子を探しに行こうかなって」

男『艤装を手に入れるとそれに対応した艦娘が現れる…ってわけか。 …いや待て、敷波の時は探す必要も無くそのまま出撃しなかったか?…まさか』

吹雪「…あの、出撃すると鎮守府のどこに居ても艤装と一緒に海上に転送されるんです…えっと…ごめんね」

敷波「うん、許さない」

吹雪「…え」

敷波「だから今日の夕飯も吹雪が作ってね」

吹雪「…ええ?」

男『おいおい』

敷波「めんどくさいんだよー、料理ってさ、じゃあそういう訳でよろしくね吹雪」

吹雪「もう…じゃあ、そういう訳で行ってきますね、男さん」ガチャッ

男『俺も何か手伝うことは…なさそうだな、じゃあ、今日は一旦解散っていうことで。電源は付けておくから何かあったらここで声掛けてくれ』

吹雪「わかりました!」

敷波「そういえば司令官、また深夜来れそうだった?」

男『多分来れるとは思うが…あまり期待はしないでくれよ?』

敷波「別に期待してる訳じゃないけどさ…っじゃあね」



敷波「で、検討は付いてるの?」

吹雪「この鎮守府の敷地内…かな?」

敷波「そっ…まぁ、そんな気はしてたけどね、ゆっくり探そうか そうだ、鎮守府の敷地より外には出られないんだよね?」

吹雪「うん、出られないようになってると思う。」

敷波「決めた、じゃあ鎮守府の出口に連れてってよ吹雪。どうなってるのか見たいしさ」

吹雪「正門? うん、見ておいたほうが良いよね。付いてきて」



?「…」



カツンカツン…

吹雪「――――それで、この階段を降りると正門の近くにある裏口に出られるの」

敷波「ふーん、案外執務室と近いんだね」


カツンカツン…

吹雪「そうそう敷波ちゃん、今日から寮のベットで寝られるよ。暖房の燃料用意しておくから」

敷波「あ、本当に? 布団一枚は流石に体痛くなっちゃうし助かるよ」

吹雪「あはは…そうだよね、私も体痛いや」

敷波「そういえば吹雪は今までどこで寝てたの?まさか執務室…」

吹雪「ふふっ、流石に毎日執務室では寝られないよ、調理室の近くにある部屋で寝てたんだ」

敷波「あの辺りかぁ」

カツンカツン…

吹雪「ほら、あれが裏口だよ」

敷波「やっと外かぁ、この階段ホコリ臭くて嫌だなあたし」

吹雪「掃除しないとね…」

敷波「階段終わり!」

カツンカツンカツン…

吹雪「…」

敷波「よっと、段差ある出口だなぁ… 吹雪、気をつけてね」

吹雪「うん、ありがとう」


敷波「で、あれが正門…って 思ったより小さいな」

吹雪「せっかくだし、門の近くまで行ってみる?」

敷波「うん、行こう行こう」


正門

敷波「なん…だろう、不思議な感じ」ペタペタ

敷波(門を開けたのに、そこにはまだ別の障壁が存在していた。それも透明で見えない)

吹雪「変でしょ? こういうのが敷地全体を覆っているみたいなの」コンコン

敷波「向こう側は見えるのになぁ…家とか見えるけどあっちに人は住んでないの?」

吹雪「…見かけないね、陸側ではまだ」


敷波「へ?じゃあ吹雪は海側では見たことあるの?」

吹雪「定期的に来るよ」

敷波「マジで?」

吹雪「マジで! …って言っても話をしたことも無いんだけどね。食料や資源とかの必需品を運びにうちに来るんだ」

敷波「しかもここに来るんだ… けど、確かに補給が無いと今まで生活出来てないか」

吹雪「…それでね、その人達は南方海域の辺りから来てるみたいなの」

敷波「…なるほど、だから南方海域を目指してるんだ?」

吹雪「うん、あの人達が何処から来ているのか突き止められれば…きっと」

敷波「ここから抜け出せる?」

吹雪「うん」


敷波「そっかそっか…もっと早く言ってくれれば良いのに」

吹雪「上手く説明出来るかわからなかったから、その補給が来た時に言おうかなって思ってて…ごめんね?」 

敷波「…うりゃ!」コチョコチョ

吹雪「え!?ちょ…あははははっ!や、やめ」

敷波「このこの!」コチョコチョ

吹雪「はははは!、ああっ!苦し…」

敷波「ね、吹雪。あたし達って頼りないかな」コチョコチョ

吹雪「そ、そんなことない…ひひっ!あはははははっ!はー、はー」

敷波「それならそのくらいさっき…言ーえーよーなー!」コチョコチョコチョコチョ

吹雪「はははははははっ!はははっ!ゲホッゲホッ」

敷波「あっごめん」パッ

吹雪「やり過ぎだよ…」ハー ハー

ポツ・・・ポツ…

敷波「…あ、雨」

吹雪「へ?雨 …大変!干してた服が濡れちゃう」

敷波「あ!そうだった! 早く戻らないと!」タッタッタ

吹雪「そうだね、戻ろ…って、敷波ちゃん待ってー!」タッタッタ

ザァァァァァァァァ・・・・


?「…」

?「…」ベチャ・・・ベチャ・・・

?「…」ピトッ


?「硬い…まるでガラス、みたいだ」

吹雪「そこに居ましたか、探しましたよ」

ザァァァァ・・・


?「…あー、やっぱり気付いてた?音立てちゃってたしね」

吹雪「…」

?「この壁、いつごろからあったの?」

吹雪「私がここに来た時には既にありました。 …このままだと風邪引きますし、中に入りませんか?手伝いますよ、北上さん」


北上「いいよ、一人で歩けるから」


ロビー

吹雪「タオルどうぞ」

北上「…ん、どうも」


北上「もう一人はどうしたのさ?」トコトコ

吹雪「今頃多分洗濯物を取り込んでくれているはずです」スタスタ

北上「ふぅーん…」

北上(ここは…やっぱり全然変わってないなぁ)トコトコ

吹雪「…あの、その足の怪我どうしたんですか?」

北上「ああ、最初からあったんだよね、困る?」

吹雪「心配してるんですよ」

北上「ああそう、…ま、骨折とかじゃないみたいだし普通に歩けるよ」

吹雪「…そうですか、お風呂入りますか?」スタスタ

北上「お構い無く、で、あなたが秘書艦?」トコトコ

吹雪「秘書艦…そうですね、一応そういうことになってます」

北上「は?どゆこと?」

吹雪「とりあえず、座って話しましょうか」



北上「へぇ、なんか面白い事になってるじゃん。」

吹雪「それと北上さんの艤装なんですけど、ドッグにおいてあります」

北上「ふぅーん、私の艦種って何?」

吹雪「…え?軽巡洋艦の物でしたけど…」


北上「…そっか」

吹雪「それがどうかしましたか?」

北上「どうもしないよ~、じゃあアタシはその艤装でも見てくるかな」スクッ

吹雪「分かりました、じゃあ…」

北上「あーウザいから着いて来なくていいよ」トコトコ

吹雪「…あぁあの! これだけ教えて下さい! 傷が癒えたら私たちに協力してくれますか?」

北上「さーそうだろーね」トコトコ


吹雪「嫌われちゃったかな…」

ここまで

>>104
北上「さーそーだろーね」トコトコ×
北上「さーどーだろーね」トコトコ○



モニター前

北上『まぁ、と言うわけで、よろしく』

男「傷が癒えるまでゆっくり休んでくれ しかし怪我か…」

北上『何?』

男「いや、傷を負った状態で現れるなんて、よくあるケースなのかなと思ってな」

北上『アタシに言われてもね、そうそう、あなたは提督じゃないって事で良いの?』

男「…そうなるな」

北上『ふぅーん、じゃあここはもう軍事施設でもなんでもないわけかぁ』

男「ああ、基本的に皆には、自主的に攻略の協力をして貰っている」


北上『それじゃあアタシは考えさせて貰ってもいい?』

男「え?」

北上『これから声だけの提督でもないオッサンの指示を聞くか、聞かないか、暫く考えさせてくれって言ってんの』

男「そうか…いや、そう思うのも当然だよな… 分かった、呼び出して悪かったな」

北上『…じゃあ失礼しまーす』トコトコ ガチャ

ガチャン


男(こ、心が痛い…)

ガチャ

吹雪『…どうでしたか?』

男「撃沈」ハァ

敷波『何考えてるのか分かんないよね、あの人…』

吹雪『アレが勘に触ったんでしょうか…』


~~~

吹雪「失礼しまー…」ガチャ

『すみません!すみません!デリケートな時期に!』

『あぁ、もう良いから! 真っ直ぐ部屋に帰りなさい!』

吹雪「あ…」

ン?ナンカコエキコエマセンデシタカ?

キノセイダ!マタアシタナ!

北上「…帰っていい?」

~~~

吹雪『すみません、男さんは協力して下さってる側なのに…』

男「いいや、無理も無いさ、むしろアレが普通の対応だろう…」ポリポリ・・・

敷波『というかどっか行っちゃったねアレ、どこに行ったんだろ』

吹雪『大雨が降ってるし、屋内にはいると思うけど…』


男「それじゃあ吹雪、北上の事もあるし攻略は一旦休むか?」

吹雪『そうですね…暫くは演習場で力を磨こうと思います』

敷波『あたしもそれでいいよ』

男「俺は今日はもうそろそろ電源を落とすから、悪いが頼んだぞ…」

吹雪『分かりました、お疲れ様です。』

敷波『じゃあね、司令官』

プツッ

男「…ふぅ」

男(もう八時か…どこかで食べてくるか?)

男「俺も明日から仕事だ…切り替えて行かないとな」ノソノソ





男(支度もOK…さて、出掛けるか)

ピンポーン

男「…なんだよ、はいはーい」

ガチャ


女「…」

男「…おう」

女「おう」

男「…なんの用だよ」

女「忘れ物取りに来たの、生きてた?」

男「死んでたほうが良かったか?」

女「うん」

男「…ああそう。で、何忘れたんだよ」

女「財布」

男「…飯でも食いに行くか?」

女「…」

男「…」

女「…おごりならありがたく行くけど」


食堂

女「彼女を連れて行く店かなここ?」

男「うるさいな、何度も行ってるだろ」

店員「ご注文伺います」

女「じゃあ私このとんかつ定食で」

男「それと味噌ラーメンお願いします」

店員「かしこまりましたー」


ミソラーメントンカツオネガイシマース

男「それで、今までどうしてたんだ?」

女「昨日は…友達の家にお邪魔してた…けど、流石に三日目は悪いし…」

男「後輩も心配してたぞ」

女「うちに来てたの?何か変なことしてないでしょうね」

男「ふざけんな、する訳無いだろ」

女「…そう」


男「どうする…戻ってくるか?」

女「仲直りするなら、まずそっちが謝って」

男「…あの時は俺もカッとなってたからな…その、すまなかった」ペコッ

女「えっ」

男「なんだよ…」

女「何か意外で…うん、こっちもごめんなさい。言い過ぎました」

男「仲直りか?」

女「うん」

男「着拒も解除しておいてくれよ」

女「ふふふ」

男「解除しろよ?」

客(このバカップルうるさいなぁ)パクパク


その夜
自室

男「…おい、寝たか?」

女「…」スゥスゥ

男「…っと」

男(モニターに手を…)ペタッ

女「…」ギュ

男(不意に女は俺の左手を掴んだ。それはまるで、そっちに行くなと言ってるかのように感じた)

男「心配要らないよ…多分な、おやすみ」


鎮守府
中庭

男「…痛っ」

男(寒さに目を開くとそこは例の場所だった。どうやら何回でも来れるらしい)

男「しかしレンガ道の上とは、昨日と微妙に位置が違うな…」ペタペタ


北上「へぇ、駆逐艦達の言ってること本当だったんだ」

男「!北上か?」

北上「やっほ、オッサン」

男(北上は艤装を付けていた。警戒しているみたいだ)

男「…で、待ち構えていたってことは何か言いたいことでもあるのか?」

北上「一つ、アンタにだけ伝えておきたいことがあるんだよね。執務室じゃあマズイでしょ? まぁ付いてきてよ」

男「ああ、分かったよ」


鎮守府


北上「やっぱり話をするなら面と向かってしないとねぇ」

男「ここで話すのか?」

北上「そ、突拍子も無い話なんだけどさ~、いいかな?」

男「既に色々起こってるから俺的には今更って感じだな」

北上「ふーん? まぁけど、その気持ちは分かるかな」

男「…で、話してみろよ」


北上「アタシは一回沈んでるんだ。この海で」

北上「アタシは一回沈んでるんだ。この海で」

男「それは艦艇の頃の話か?」

北上「違う違う、艦娘の時の話」

男「じゃあ…また生き返ったとでも言うのか?」

北上「当たり。いやー、来世は戦艦が良かったんだけどね~ アタシ」

男「驚いたな…どのくらい前の話だ?」

北上「3年前くらい? ここがちゃんとした軍事施設だった頃ね」

男「その時もこんな感じだったのか? その…敷地から出られなかったり、操作が無いと出撃も出来なかったり」

北上「勿論違うよ、こんなふざけた状態じゃない。ちゃんと深海棲艦から国を守ってた鎮守府の一つだった」

男(暫くお互いが沈黙。こうして黙って座っていると雨上がりの土の匂いと潮風が混ざり合いほんのりと流れているのが分かった)

男「良かったら話を聞かせて貰ってもいいか?ここがどういう所だったのか」

北上「まー、それは気が向いたらね」

男「ああ…そう」


北上「さっきも言ったけど、アタシは考えさせて貰うから。攻略」

男「…やっぱり俺が気に食わないからか?」

北上「7割くらいはそれ」

男「覚悟してたとはいえ、そうハッキリと言われると傷つくな…」

北上「第一印象は大事だから、まぁーこれから見てて信頼出来そうなら?って感じで。悪いけど」

男「…で、残りの三割は?」

北上「それはアタシ自身の問題ってやつ?」

北上「なんていうかさ…気持ちの整理が付かないんだよ、色々」スッ

男(北上は手に持っていた銃のような物を宙に向けた。)

北上「あの時の皆は一人も居ないし? 二隻の顔も知らない駆逐艦が代わりに居るし?」ドンッドンッ


ガ・・・ァァァーン・・・

北上「提督は居ないし? 変なオッサンが提督の代わりに居るし? そ…もそもっ!世界がおかしくなってるし!?」ドンッドンッドンッ


ガ…ァガァァァ・・・ン

北上「…」

男「お、おい…障壁にそんなことしたって」

北上「それでもさ」


北上「それでもここはアタシの唯一の居場所? ってやつだったんだよね」

男「…」

北上「だからアタシは協力するかどうかは置いておいて、ここから脱出する気なんてもん、さらさら無いんだよね」

男「脱出する気は無い…か。好きだったんだな、この鎮守府が」

北上「…そうだ、おっちゃんはどうやってここに行き来してるのよ? あの二人に聞いても的を得なくてさー」

男「どうやってって…そうだな、まだ俺自身良く分かってないから上手く説明出来ないが…」




北上「なるほどねぇ、じゃあまだ色々試してないんだ」

男「今日が二回目だからな… 試すって?」

北上「例えばさ、帰る時に吹雪の手を繋いでいたら一緒にあっちに行けるんじゃない?敷波も合わせて二人同時だって行けるかもよ」

男「…いや、あいつらが帰りたいのは『艦これ』の世界だ。俺の世界じゃない」

北上「あら、そうなの?」

男「だが色々応用の効きそうな話だな…人じゃなくて物を持ってくる事も出来そうだ」

北上「しっかし、『艦これ』の世界ね~… 昔のここみたいなものなのかねぇ…ん?」

男「どうした?」

北上「いやー… ちょっと待って、もし吹雪の言っている元の世界ってやつ… ここみたいになってるんじゃないの?」


男「!…おい」

北上「だとしたら、もう存在もしてない物を掴もうとしてる事になる。そうじゃない?」

男「いや! …まて、そもそもこの鎮守府がこうなった原因が分からないんだ、そうとは限らないだろ」

北上「…まぁ、そうなんだけど」

男「…」

男(また暫くの沈黙があった、それもさっきより重い。北上も吹雪の身を案じているらしい、多分な)

北上「…あー、もうアタシ帰ろうかな。眠いし」

男「そうか、長く付き合って貰って悪かったな、おやすみ」

北上「こっちこそ話長くなっちゃってごめんね、じゃーねーおっちゃん」

男(確かに吹雪の話を詳しく聞けている訳じゃあないが、ここの状況を考えると同じく吹雪の居た世界に異常が起きている可能性は否定出来ない)

男「存在していない物か… そうだとしても北上、吹雪は君みたいにそこに居る事を望むんじゃないのか」


北上「…」

北上「人によって変わるでしょ、そんなの」フリフリ


執務室

ギィ・・・


男「…流石にもう誰も居ないか」カチッ

男(執務室の照明は消えていたが、代わりに昼間、吹雪が建物中の廊下の電気を通したらしく、ここに来るのに苦労はしなかった。)

男(それに今日は月が出ていて、屋外を歩けるほど明るかったしな)

男「午前四時か…」

男(朝までやることも無いか… なら、こんなに明るいんだ。昨日行けなかった所を見て回るのも良いかも知れないな)

男(ここから建物の西側。 確か、食堂や工廠施設があるはずだが… ここについての記録でも残されてあれば、何か分かるかも知れない)


男(本当なら…執務室、こういう所にこそそういう資料は残ってそうなもんなんだが)チラッ

男「今更だが、なんでこんなダンボールだけの殺風景な部屋なんだかなぁ…」ハァ



男(開かないドアが等間隔に続く廊下を歩いていると、広い所に出たようだった)

男「ここが食堂か。案外小さいんだな」

男(4人位が座れるテーブルが6つ、ここだけあまりホコリ臭く無いのは吹雪が何時も使って居たからだろうか)


男(まぁ、そんなところか。調理室は…必要無いだろう、次行こう)




男(食堂に構わずそのまま真っすぐと進むと何やらデカく、頑丈そうな扉に突き当たった)

男「ん、プレートに… 工廠?そうか、ここが…」グイッ

男「…っ」グイッグイッ

男(ここも開かない…鍵なのか? ビクどもしないな)

男「どこもかしこも鍵だらけじゃないか」

男「…ん?」

男(じゃあこのすぐ横にある扉はどうだ? 改修工廠か…)ガチャ

男「開いた…」

男(よく分からんが…工廠と繋がってたりしていそうだな)スタスタ

カチッ

男「…何だこりゃあ、何も無い」

男(荒らされたみたいに何も無い棚、石造りの床に背の高いテーブルと一つの炉があるだけ…)

男「工廠には繋がって無さそうだなぁ…」

男「炉の中は…ん?何だこの落書き」

ウョシマイアタマ

男(誰かに宛てたものなのか、それともこの建物に言ったものなのか… なんにせよロマンチックな事をするもんだ、こんな誰にも気付かれないような位置に)

男「…しかし"また会いましょう"か、大した手がかりにはならなさそうだな」ハァ


男「次はどこに…ってああ、もう時間かよ」スゥ・・・

男(自分の体が段々薄くなっていくっていうのは、こうまじまじと見ていると変に怖いもんだな…)

男「…」

男「消える前にここの電気消しておくか、節電節電」


カチッ

日曜日にもう少し投下します

吹雪が改二になっていますが母港はこんな感じで
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira111250.png

ピピピピピピピ・・・カチッ

男「…」ボー

男「ああ、そうだ。今日から仕事だったな…」


男「女?先に起きたのか…?」ノソノソ





会社

男(女は結局家には居なかった。 どこかに買い物にでも行ったのか知らないが、書き置きぐらいしてほしいよ全く)

部長「お、お早う。いつも早いな男君は」

男「お早うございます、部長程じゃあ無いですよ」

部長「負けないぞ?」

男「ハハ… 敵いませんよ、私なんかじゃ」

部長「そうかそうか、まあ、そこは何を競ってるんだっていうツッコミが欲しかったな。 コーヒー飲むか?」

男「ありがとうございます」

同僚「おはようございますー あ、俺にもコーヒー下さい」

部長「同僚君は前の週ミスしたからダメだぞ、もう一度淹れるの面倒臭いしな」ホカホカ

同僚「ほぼ後者の理由じゃないですか。まあいいや、自分で淹れますよ」

部長「まあ、不景気な世の中だ、ウチも競合社に負けないように今日も頑張ろうじゃないか」ズズズ・・・

男「…あ」

男「何競ってるんですか」

部長「ブッ」ビチャ

男「ちょ、大丈夫ですか!? 冗談ですって」

部長「君が言うと本気にしか聞こえないな…」

同僚「おっ産業スパイか?」

男「勘弁して下さいよ…」



男「…」

ダッダッダッダッダ

ガチャッ

後輩「…はぁ、セーフ」チラッ

同僚「社会人としてはアウトだぞ」

後輩「今日は間に合ったんだから良いじゃないですかー」

同僚「教育係の顔が見たいなこりゃ」

男「悪かったな…治らないんだよ」

後輩「あの、私バカにされてます?」

部長「まあ、遅刻さえしなければいいがね、遅刻さえ」

後輩「うっ」グサッ

部長「はっはっは! じゃあ今日の朝礼始めるぞー」



男「…」カタカタ

後輩「先輩先輩」スラスラ

男「…何だ?」

後輩「女さん、戻って来たってホントですか? 大家さんが言いふらしてましたけど」カチッカチッ

男「…本当にあの大家は…マジで引っ越そうかな」カタカタカタカタ

後輩「おお、じゃあ仲直りしたんですねー 良かった良かった」カチッ

男「どうだろうな、今朝フラッとどこかに行ったみたいだが」

後輩「え?荷物もってですか?」

男「いや」

後輩「じゃあ買い物かなんかでしょうに」


男「あんな早朝に買い物する店は限られて来ると思うがなぁ」

後輩「とにかく、また今度お邪魔しますねー」スラスラ

男「ああ、俺の居ない時で頼む」カタカタ


男「…そうだ、後輩君って艦これっていうゲームやってるんだよな?」カタカタ

後輩「え?なんで知ってるんですか」スラスラ

男「酔ってる時に話してたからな」

後輩「なんだ、やってますよー ケッコン艦は六隻居ます!」

男「ケッコン…?」

後輩「簡単に言うと、レベル100以降まで行っている艦娘が六人居るって事ですよ!」

男「滅茶苦茶やってるな…君」カチッ

後輩「男さんも艦これやってるんですか?意外ですねー」

男「…いや、やっては居るんだが」カタカタ

後輩「おお、察するに初心者ってことですか。良いですよ!色々聞いてくれても」

男「手が止まってるぞ、また後に…」カチッ

後輩「私はー やっぱり速吸ちゃんが嫁ですかねー でも矢矧さんとかー電ちゃんも可愛くてー イベントはクソゲーでー 基地航空隊がー 改二がー」ペラペラ


上司「後ー輩ー君ー?」

後輩「ゲッ」

ここまで

ゴタゴタしていて物凄い遅れました…
投下します


鎮守府 演習場

敷波「ここって海みたいだけど… 出られるの?」

吹雪「出られるよ、入り江を利用しているの」

敷波「なるほどね。出口までは敷地内なんだ」

吹雪「そういうこと」

敷波「しっかし、ここ入り江だったんだ… 相当広くない?」

吹雪「砲雷撃戦をやったりするからね、この位広くないと窮屈で戦えないみたい。」

敷波「ふーん… あ、そういえばあの人どうだったの。誘ったんでしょ?」

吹雪「北上さん? 断られちゃったんだ… まだ海上に出るのは難しいのかなぁ」

敷波「そっか。まぁ、あたし達はあたし達でやろっか、吹雪」

吹雪「うん、もう準備も出来てるし始めようかな」

敷波「まず何やるの?」

吹雪「えっと… もう一度言うけど、艤装はしっかり装備してるよね?」

敷波「うん、準備オッケーだって」

吹雪「とりあえず、入り江の中を300周しよっか」

敷波「300…なんだって?」

吹雪「300周」


敷波「まさか燃料のドラム缶をここまで運んで来たのって…」チラッ

吹雪「大丈夫だよ、先導するから。行きます!」ザァァァァァ

敷波「ちょっ、全然大丈夫じゃないんだけどーーー!!!」

北上「…」

ヒュウウウウ…

北上「おお…寒っ」ブルッ

北上(今は… 秋って所なのかねぇ、一気に冷え込んだか、艤装付けてないと寒すぎるわ)

北上「それで、さっきから付けて来てるみたいだけど何?あなた。」

ガサッ

北上「…まぁ、人のこと言えないけどね」

ヒョコッ

女「…バレてた」ブルブル

北上「艦娘…じゃないか、ここ立入禁止だよ? おねーさん」

女「知らない…あなたこそ誰? ここは何処なの…?」ブルブル

北上「…」

女「…」ブルブル

北上「…男って知ってる?」

女「男? そりゃ知ってるけど… なんであなたが?」ブルブル

北上「はぁぁぁぁぁ……… なるほど、なるほどね。何やってんのあのオッサン…」

女「??」ブルブル

北上「建物の中に移動しません?、寒いでしょ」

女「うん」ブルブル



女「この歳でセーラー服を着ることになるとは…」

北上「下着姿よりは良いでしょ」

女「うん、ありがとう。サイズ少し合わないみたいだけど」

北上「おねーさんが小柄で良かったよ。私の替えだからね、それ」

女「へー。北上ちゃんは同じ服しか着ないの?」クルリ

北上「…」

女「どうしたの?」

北上「うん? あー、同じ服しか無いからねぇ…」

女「じゃあじゃあ、私が作ってあげよう」

北上「お、本当に? って違う違う! …とりあえず、おねーさんがここに来た原因を教えます」

女「お願いします」

北上「いい? この場所は―――――――」



会社
帰り道

男「ふぅ、終わり終わり」

男(女の携帯はまだ着拒になってるし、どうしたんだ?)

男「…まぁ家に居るだろ、帰るか」


?「あの」

男「はい?」

?「突然すみません、○○という所で記者をやっている者です! 奥様の事で少しお聞きしたいことがあるのですが、お時間よろしいでしょうか?」

男(記者と名乗る女は、ぼさぼさの黒髪に大きな黒いジャケット、そしてワークキャップを深く被り、怪しさ満点って感じだった)

男「すみません、急いでるんで」ツカツカ

?「そこをなんとか!」タッタッタ

男「しつこい人だなぁ!マスコミってやつは… 妻はあんな奴と不倫なんてしてないって何度何度も言ってますよね!」

?「それですよ! 私もそう思ってます!」

男「は?」

?「それがですね、私が独自に調べた所、あの日の知事の行動と小説家であるあなたの奥様の行動は決定的に噛み合っていない事が分かったんです!」

?「それを証明するためにも取材を受ける気はありませんか? ただ『やってない』だけじゃ読者は納得しませんよ?」


男「信じられないな…あんたは、それで面白い記事になると?」

?「なりませんね、ただ、この事件は別件と絡んで…おっと、詳しくは言えませんが」

男「…分かった、話そう」

大谷「恐縮です! では、この裏にある喫茶店で… ああそう、これ、名刺です。大谷と申します!」

男「どうも」

喫茶店

男「―――――とまぁ、そんなところだ」

大谷「ふむふむ… つまり、その交流イベントのあった日は、早々に男さんが迎えに来て真っ直ぐ帰ったと」

男「…これだけじゃ証明にはならないんじゃないのか?」

大谷「そうですね… 奥様に話を聞くことが出来ればもっと早いんですが」

男「…」

大谷「冗談ですって! …男さんは会場には?」

男「入ったことには入ったけど、入口の近くだけだな」

大谷「この男を見ませんでしたか?」スッ

男(写真には真ん中分けの小太りの男が写っていた。何故か腕組みをしている… 腕組み?)

男「あっ… 見たぞ、この人なら」

大谷「!! そうですか! 何をしていたとか、些細な事で良いので教えてくれませんか?」

男「何って… こんな写真みたいに腕組みをして、壁に寄りかかっていたよ。 会場の中央辺りを見ていたかな」

大谷「壁にですか… それだけ?」

男「それだけだけど… コイツがどうかしたのか?」

大谷「ご存じないですか? 田中謙介。今私が追っている、ある業界にいた人物です。」

男「田中謙介か…」

大谷「あの、よろしければこの写真、奥様にも」

男「ああ、気が向いたらな」

大谷「なにか情報があれば、是非連絡をお願いします」ペコリ

大谷「では、私はこれで! 会計は済ませておきますので、ごゆっくりなさって下さい!」

男「ああ」

男(…何か趣旨がいつの間にか変わっていたような気がするが)

男「本当に不倫疑惑晴らしてくれるんだろうな…おい」


自宅

男「ただいま…」ガチャン

男(部屋は真っ暗だ。女は居ないらしい…本当にどこに行ったんだよ)

男「…また出て行ったのか、それならまだ良いけど」

男(何故かどっと疲れたな…今日は顔出しだけしてさっさと寝よう)ノソノソ



男「…ふぅ」カチッ

男「誰か居るか?」



『居るよ』

男「!!!」ガタガタッ

男「女っ!?なんで…ってまさか!」

『おっちゃん、昨日このおねーちゃんと手繋いだままこっちに来たんでしょ?』

男「北上か… そうだ、そうだよ。はぁー…」

北上『席外したほうが良い?』

男「今、そこに何人居る?」

吹雪『…全員です』

男「…そうしてくれ」



男「女、本当にすまない」

女『ううん。ちょっと寒いけど、良いところだったから、平気だよ』

男「とりあえず、深夜にそっちに行くから」

女『それなら…私の携帯持ってきて。打ち合わせが明日あるの』

男「電波通じるのか…? いや、分かった」

女『あと、不思議な体験が出来て面白かったし、吹雪ちゃんのご飯も美味しかったよ』

男「後で礼言っておかないとな…くぁ…」

女『眠い?』

男「…ああ、じゃあ、また3、4時間後にな …起きていられるか?」

女『大丈夫』

男「…ありがとう」

カチッ

―――――
――――
―――
――

数日前

男『ただいま…』ガチャン

男(って暗いな、出掛けてるのか?)テクテク


男『うわっ居たの?』

女『おかえり』

男『…どうしたんだよ』

女『これ見て』

男(女が向いている先には週刊誌が置いてあった。女はこういうものは普段は買わないから、異常だと思った)

男『何だこりゃ…知事の…が作家の…お前と不倫!?』

女『身に覚えがないんだけど…』

男『この2ショット写真…一昨日のイベントか? おいおい…!』パラパラ

女『今日の昼間、すぐ帰ったけど取材の人が来た…どうしよ』

男『出たのか?』

女『ううん』

男『必要な物があれば俺が買ってきてやる。外出は控えたほうが良い』

男『それにでっち上げのゴシップだ。すぐ帰るって事は信憑性もない。すぐに収まるだろう…』

女『私、やってないよ。不倫』

男『分かってるよ…そうだ、この会社に文句を…』

女『…』



男『…ただいま』ガチャン

女『はい、はい。お願いします…はい…では』ピッ

男『どうしたんだ?』

女『また担当さんから、心配してくれてるみたい…』

男『そうか…いい人が担当で良かったな』

女『うん…』


男『…そうだ、頼まれてたもの買ってきたぞ』

女『ごめん、ありがと』

男『俺は…ちょっと今日は疲れた。寝る』

女『ご飯は?今日は私が作ってみたけど』

男『朝にでも貰うよ』

女『…そう』



男『…』ガチャン

女『おかえりなさい、ご飯にする?お風呂にする?それとも…』

男『…悪いけど、ふざける気にはなれないんだ』

女『遅かったね』

男『ああ、悪い。飯も外で食べてきたんだ』

女『それじゃあ、えっと、朝にでも―――

男『シャワー浴びてくる、女ももう寝ろよ』ガチャン


女『朝にでも…食べてね』



男『行ってきます』

女『…行ってらっしゃい』

男『取材だけど、昨日は誰にも捕まらなかったよ』

女『収まったのかな…家にも来なかった』

男『そろそろ少し位は家の外に出ても大丈夫なんじゃないかな』

女『そうかな』

男『そうだよ、仕事も停めてるんだろ? 再開できそうで良かったじゃないか』

女『うん』

男『…しかし、職場に迷惑が掛からないくて良かったよ。女のペンネーム、皆知らないもんな』

女『…うん』

男『後輩君も黙っててくれたし… これでようやく日常に戻れるよ』

女『…』

男『女?』

女『私は… 今まで通りには暮らせない』

女『男は良いね』

男『何言ってんだよ、大体お前の…!』


女『…!』

男『すまん…その…』


女『…出てく』スクッ

男『…出ていく? おい、本気かよ!』

女『うるさい!!しんじゃえ!!!』

男『…なんだよ、この数日…俺がどんだけ苦労して…!!』



――
―――
――――
―――――


鎮守府
中庭


男「っ…」ムクリ

男(夢か…)


女「おかえりなさい」

男「ここは家じゃないだろ」

女「なんとなく言いたかったの」

男「…」

女「寒いから、建物の中に入ろうよ」

男「あのさ」

女「何?」

男「この前、定食屋で謝った時…実は何を謝ったのか、自分でも良く分かってなかったんだ」

女「知ってるよ」

男「じゃあなんで許したんだ?」

女「私が悪かったから」

男「…あのさ、それじゃあ気が済まないんだ。聞いてくれるか?」

女「…うん」

男「俺は、いつだって自分優先だ。誰かに優しくはしても、正直心から相手の事を想ってやった覚えが一度もない」

女「…」

男「これが俺なんだ、本当にすまなかった…!」

女「許す」

男「…返答早すぎないか」


女「私だって、いつだって自分が大事。だからあの時あなたに怒ったの。お前自身なんかより私を優先しろよーーーってね」

女「これが私。こんな奴の前に完璧で居ようとなんてしないで」

「男さん!!」

男「吹雪!? …あ、全員そこで聞いてたのか!?」

敷波「あちゃー…」

北上「アタシはこっちに居るけどね」ヒョコ

敷波「同じでしょ…」

吹雪「私は男さんのお陰でいくらか救われました!たとえ偽善だったとしても…受け取る側にはそんなの関係ありません!」

敷波「…そうだよ! 少なくとも吹雪よりは優しいね!」

吹雪「ええ!?」


男「皆…」

女「じゃあ、寒いし、早く建物の中に入ろう?」

男「そういえば…女、なんで北上の服を着てるんだ?」

女「結構似合ってるでしょ?」

男「…………そうだな」



女「…」ゲシッゲシッ

男「痛い痛い痛い!」

北上「バカ」

とりあえず今日はここまで


執務室

女「…はい、そうですね…あっ、そこは私としては…」


男(執務室に着いた後、女に持ってきた携帯電話を受け取ると、そのまま編集さんらしき相手と通話を始めた)

男「しかし、まさか電波が入っているとは…」

敷波「ね、ね、司令官。あれ何?」

吹雪「携帯電話だよ、携帯出来る電話」

敷波「へぇー、へぇー! やっぱり通信してるんだ! あんなにちっちゃいのに!」

男「技術の進歩だなぁ」

北上「おっちゃん、ちょっといいかな?」

男「ああ、何?」

北上「朝方に女さん連れて帰るんでしょ? 頼みって程じゃあ無いんだけどさ、あたしに二人で移動する所見せてくれないかな? 気になっちゃって」

男「別にいいが… 何が気になるんだ?」

北上「大したことじゃ無いよ、ここの仕組みを知っておきたいだけだからねー」

男(北上は軽く指を真下に差す仕草をした)

敷波「はい! あたしも良い? そういえばあたしも見たことない」

男「起きていられるか? もう既に深夜も良いところだぞ」

敷波「…子供扱いしないでよ! 大丈夫だって!」

 北上「まぁ、もしその時に敷波ちゃんが起きてれば行こっか」

敷波「何その言い方…寝ないよ!」

北上「え、寝ないの!?」マジデ!?

敷波「…」

ギャーギャー

吹雪「あはは…」

男「はぁ… 吹雪はどうする? 確か一回見ていたはずだけど」

吹雪「私は…うーん、今日はもう休もうと思います。明日も訓練の準備しないと」

男「そうか、精が出るな」

吹雪「そうだ、男さん。明日は何時に来られますか?」

男「え? えーっと…明日も19時過ぎた辺りかな、どうした?」

吹雪「海域を攻略していくにあたって、改めて男さんの見ているモニターとこの世界の連動を確認しておきたいと思いまして」

男「そういえば情報の共有もあまり進んでいなかったな… 分かったよ、明日の20時に執務室に来てくれ」

吹雪「それと皆で話し合ったんですけど… そろそろ艤装の建造をしようかと思って」

男「建造って… 工廠でか?」

吹雪「?そうですけど」

男「いや、この前工廠の前に行ってみたんだが…」

吹雪「開かなかった、ですか?」

男「ああ、鍵持ってるのか?」

吹雪「鍵、掛かって無いんです。あそこ」

男「…確かに鍵穴は無かったが、じゃあどうすれば開くんだ?」

吹雪「開けて下さい! って言うんです。そうしたら妖精さんが内側から開けてくれるんですよ…ふぁあ」

男「妖せ…」

吹雪「ん… どうしました?」

男「もう寝たほうが良いんじゃないのか?」

吹雪「そうですね、ごめんなさい。そろそろ失礼します…」ウトウト

男「ああ、おやすみ!」

ガチャッ バタン

男「…妖精って」

男(寝ぼけてたのか? 随分メルヘンな夢だな…)


敷波「こっの…! はーなーせー!」ジタバタ

北上「放して欲しい?」ギチギチ

敷波「痛い痛い痛い!」バタバタ

男「おい! タンマタンマ!」ドタドタ

女(うるさい…)

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年05月05日 (木) 09:18:16   ID: tsgog514

おもろい

2 :  SS好きの774さん   2016年05月29日 (日) 10:50:55   ID: W7e0SgZH

つまんね

3 :  SS好きの774さん   2016年06月09日 (木) 07:44:44   ID: Chxdvpph

なかなか面白いです

4 :  SS好きの774さん   2016年07月05日 (火) 23:43:33   ID: P-m0rUol

何がしたいのか全く分からん

なんかアンチっぽい嫌な予感するからもう読まないけど、艦これのキャラ下手なアンチとか書くなよ

5 :  SS好きの774さん   2016年07月06日 (水) 12:45:39   ID: Xl2MUqE8

なぜアンチになるのかよくわからんが面白いかどうかはまだ様子見かなー?

6 :  SS好きの774さん   2016年07月16日 (土) 01:29:22   ID: PHr3klb9

アンチだろ。
主人公からしたらただのゲームでしかないのになんで敷波に謝らなきゃならんのよ。

7 :  SS好きの774さん   2016年08月09日 (火) 23:03:37   ID: XlJhlSQV

自分が設定気に入らないだけでアンチ(笑)(笑)(笑)

8 :  SS好きの774さん   2016年09月11日 (日) 01:23:59   ID: bgkvP-NT

何も判らない所から徐々に現状が見えてくる感じが中々。雰囲気も良い感じ
期待してる

9 :  SS好きの774さん   2018年12月29日 (土) 20:36:32   ID: H7YvCWMW

話があっちこっち行くんでよくわからん

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