照「酔いどれアラサー地獄変」 (78)


瑞原はやり(30)「とりあえず生6つ、お願いしま~す☆」

小鍛治健夜(30)「宮永さんって早生まれだったんだね。もしかして二十歳になったばっかり?」

野依理沙(29)「成人! おめでたい!」

赤土晴絵(28)「もうチームの先輩とかと飲みに行ったりした?」

宮永照(20)「この前誕生日が来たばっかりなので、お酒自体初めてです」

戒能良子(22)「それなら自分の限界を知っておいた方がいいね。世界戦に起用されて、
       しかも優勝したとなれば、今まで以上にスキャンダルを狙われるだろうからね」

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はやり「わあ、良子ちゃんの敬語じゃないのって新鮮」

良子「いつもは先輩ばかりでしたからね」

健夜「宮永さんが参加したら一気に平均年齢下がるよね」

はやり「最年長です。平均上げてゴメンね☆」

理沙「私もほとんど変わらない!」

晴絵「戒能さんと宮永さんは、私らとは一回り違うもんなぁ」

照「……瑞原プロは」

はやり「あ、もうプライベートタイムだから“プロ”はなしで」

健夜「うん、オフの時は肩書きから解放されたいよね」

照「でも……」

良子「ノープロブレム。社交辞令じゃなく皆さん気さくな人たちだからね。
   私もいつからかただのさん付けで呼ばせてもらってるから、気にすることはないよ」

照「じゃあ遠慮なく。瑞原さんは――」


はやり「わっ、来た来た~。じゃあ健夜ちゃん、音頭お願いね」

健夜「え……はやりちゃんの方が得意でしょ、こういうの」

晴絵「いや、こういうのはキャプテンが適任かと」

理沙「チームリーダー!」

健夜「……じゃあ。えー、今日は日本中の期待を背負った世界大会、
   日本代表として無事優勝を飾ることができました」

はやり「やったね☆」

健夜「明日からはまたそれぞれのチームで戦うことになるけど、今後も良きライバルとして、
   日本麻雀界を盛り上げていきましょう。宮永さんもプロ2年目にして代表入り、
   チームの一員として活躍してくれました。今後も期待してます」

照「ありがとうございます」

健夜「それじゃあこの1週間お疲れさまでした、乾杯!」

「乾杯!」


晴絵「――ぷうぅ~~、おいしい~~」

理沙「しみる!」

はやり「この一杯のために生きてる~」

健夜「仕事後のビールは幸せだよね~」

良子「宮永さん、初めてのビールの感想は?」

照「……苦い。ちょっと苦手かも、しれないです」

晴絵「無理しないでいいからな」

健夜「うん。甘いのとかいろいろあるから、自分に合ったのにするといいよ」

理沙「ダメ。ゼッタイ。アルハラ!」

はやり「キツかったら残しちゃっていいからね。良子ちゃんが飲んでくれるから」

照「え……」

良子「おまかせあれ。私自身はそんなに強くないけど、裏技で酔わないようにできるから。
   ほら、ここらへんのカクテルならアルコール度数は低めで甘いからいいかもしれないね」

はやり「食べ物たのもっか。照ちゃんも食べたいのあったらどんどん言ってね」


照「あ、私が、その、やります。注文」

晴絵「あはは、チームの先輩にでも教わったか?」

健夜「気を使わなくていいよ。チームの会合とかお偉いさんと行ったら若手が雑用を、
   とか言われるかもしれないけど、ここでは無礼講だから」

はやり「そうそう。むしろ食べたいものすぐ頼めるようにタッチパネル側は譲らないよ」

照「タッチパネル?」

健夜「これで欲しいものの個数を入力するとすぐ作って持ってきてくれるんだよ。
   店員さん呼ぶ手間が省けて便利なんだよね」

理沙「完全個室だからくつろげる!」

晴絵「やっぱガチ麻雀の後はオシャレなバーとかよりも大衆居酒屋でゆったりですよね」

はやり「お酒の席は初めてなんでしょ? 今日のところはお姉さんたちに任せていいんだぞっ☆」

良子「この面子の時は肩の力抜いて大丈夫。むしろ抜かざるを得ない」

照「はい。なんか安心しました」


理沙「安心?」

照「もっとこう、体育会系なのを想像してて……風の噂で聞いてたので」

健夜「噂? どんな?」

照「ひたすらお酌して回らなきゃいけないとか、一気飲みさせられるとか、芸やらされるとか」

晴絵「あー、そういうの聞くよね。でも一気飲みも芸もまずないよ。昔はあったみたいだけど」

良子「未成年飲酒や急性アルコール中毒など不祥事が後を絶たなかったから、
   そういう体質も薄れていったんですよね。私がプロ入りした時にはもう、
   全体の会合なんかはアルコール抜きになってましたからね」

はやり「そうそう。高卒で入ってくる子も多いからって、そうなっちゃったんだよね。
    お酒は二次会で未成年抜きでって。私は良子ちゃんとよく行ってたけどね」

照「え。戒能さん、まさか」

良子「ノーウェイノーウェイ。成人するまではノンアルコールだったからね。
   私は4月生まれだから、我慢するのは1年ちょっとだったけれど」


健夜「ん~~、カルパッチョがおいしい~~」

はやり「やっぱりシーザーサラダはさっぱりしてていいなぁ」

理沙「お刺身が新鮮!」

晴絵「ほら、宮永さんトロ食べちゃっていいよ。私ら赤身派だから。
   からあげもどんどん食べちゃっていいぞ。若いうちはガッツリいけるだろ。
   私なんか油モノ受け付けなくなってきたからなー」

照「はい、いただきます。あ……焼き鳥って串から外すものなんですか?」

晴絵「ん? ああ、盛り合わせなんかはこうすればみんなでいろんなの食べられるし、
   食べるとき口のまわり汚れたりしないだろ」

理沙「女子力!」

はやり「晴絵ちゃんさっすが~」

健夜「手早いよね。私もやるけど不器用で時間掛かっちゃう」

照「そうなんですね」

良子「まあ必ずやらなきゃというわけでもないけどね。嫌がる人もいるし。
   もっと上の人たちと飲んだときは状況に応じてやってみればいいよ」

はやり「そうなんだよね。やらないと気が利かないって言われたり、
    やったら余計なことするなって言われたり」

理沙「からあげにレモンは地雷!」


照「小鍛治さんとかが入った頃は、まだ全体の集まりにもお酒が出てたんですか?」

健夜「うん。私たちの3年下ぐらいから、今みたいになったんだよね」

はやり「ちょうど咏ちゃんの世代だね」

理沙「三尋木さん、画ヅラがヤバい!」

晴絵「あの見た目で酒の席にいたら、あることないこと書かれそうですもんね」

良子「大型新人の三尋木プロを潰されないための対策だって説もあるみたいですね」

照「昔はもっと体育会系だったんですか?」

健夜「そうだね。私が入った時はまだちょっとあったみたい。
   先輩のいびりとか、それこそ芸とか一気飲みとか」

はやり「そうみたいだね。新人の通過儀礼みたいなところあったみたい」

理沙「守ってくれる先輩もいたみたい」

良子「ああ、話には聞きますね。千里山の愛宕監督なんかは、
   若手がお偉いさんに絡まれてるところに割って入ってあしらうのが上手かったとか」

健夜「はやりちゃんもそういうところあるよね」

晴絵「熊倉さんも頼りになる人だったって。まだ女流雀士の地位が低い頃を経験してるから、
   自分の苦労を下にはさせないようにって、にらみをきかせてたみたい」

はやり「今は健夜ちゃんの役目だねっ」


照「あの、皆さんは大丈夫だったんですか、いびりとか」

はやり「あ、うん……」

健夜「そういう席にあんまり呼ばれなかったし……」

理沙「ハブられてた……!」

照「え、なんでまた」

健夜「その、プロ入りしてすぐ先輩たちに勝つようになったらなんか敬遠されて……」

はやり「アイドル活動で忙しかったし、媚び売ってるとか言われて……」

理沙「コミュニケーションが取れなくて……!」

照「……」

晴絵「……まあ不祥事に巻き込まれなくてよかったじゃないですか。
   私は実業団だったけどやっぱりありましたよ、上下関係みたいなの。
   適当にヨイショしてやり過ごしましたけど」

照「……できるかな」

良子「営業モードに入れば大丈夫でしょう」


健夜「宮永さん、ビールはダメそう?」

照「……やっぱりキツいです」

良子「じゃあもらうね。そっち飲んでみて」

照「あ、これはおいしい」

はやり「カルーアミルクは女の子の味方だねっ☆」

良子「あとはカシス系なら無難でしょう」

理沙「いろいろ挑戦!」

はやり「私もビールはもういいや。良子ちゃん、お願~い」

良子「はやりさんもカクテル系をちびちびやってください――」

晴絵「おお~。戒能さん、さすがの飲みっぷり」

健夜「いつ見てもすごい……」

良子「――ぷはっ。皆さんは真似しないでくださいね」


はやり「でも照ちゃんはほんとよくやってくれたよね」

健夜「うんうん。私たちがいずれ第一線を退いても、
   良子ちゃんと宮永さんが日本を率いてくれるから安心だね」

良子「まだまだ先の話ですね。それに次期キャプテンは三尋木プロ(26)でしょう」

晴絵「そうだな。三尋木プロは今回は残念だったよなぁ……」

理沙「代表選考会のタイミングが悪かった!」

照「そうですよね。三尋木プロが万全なら私の代表入りはなかった……と思います」

理沙「え……あ、そういう意味じゃない!」

はやり「うん、勝負は時の運だし。誰が外れててもおかしくなかったよ、健夜ちゃん以外は」

健夜「そんな……」

晴絵「まあ小鍛治さんは確定でしょうね。私も三尋木プロが本調子だったら落ちてたかもな」

照「なんであの時だけ調子悪かったのかな」

良子「あれ、知らなかったの?」

晴絵「宮永さんってテレビ見ない人?」

照「麻雀の試合だけは見ますけど、他はあんまり」

はやり「え~、じゃあお家で何してるの?」


照「本読んでるか……あ、『時にはAMAMI(甘味)に流されて』だけは毎週欠かさず見てます」

はやり「はややっ、ありがと~」

健夜「いいよねあれ。おいしいスイーツ食べるお仕事かぁ」

はやり「役得だけど、毎回収録後が大変なんだからね。カロリーが……」

良子「ゲストを呼ぶ回があったら宮永さんを指名してあげてください」

照「是非お願いします」

晴絵「はは、それならテレビ映えする表情を練習しないとな」

理沙「営業スマイル! あと流暢なコメントも!」

はやり「うん。推薦してみるから、リポート力を磨いといてね」

健夜「それで、テレビ見ないなら『東風フリースタイル雀女』も知らないのかな?」

理沙「通称『フリ雀』!」

照「あ、名前だけは。麻雀バラエティ番組ですよね。何やってるかはよく知らないですけど」

晴絵「こりゃ驚きだな。雀士の間じゃかなり注目されてるんだけどな」

良子「簡単に言うと、毎週チャレンジャーが登場して、麻雀で勝ち抜いていけば賞金がもらえる。
   チャレンジャーは若手雀士の有望株から選ばれる」

理沙「プロアマ問わず!」

晴絵「チャレンジャーが倒さなきゃならないのが、4人の雀スター。
   そしてその先にいるグランドマスター」


照「グランドマスターは小鍛治さんですよね。納得のラスボスだけど、雀スターって?」

晴絵「それはここにいる瑞原さん、野依さん、戒能さん、そして三尋木プロの4人だよ」

照「うわ……」

健夜「赤土さんも隠れ雀スターだよね」

照「隠れ?」

晴絵「ん、まあ一応私もサプライズで対戦することがあるんだ。ほとんど出番ないけどな」

照「それって勝ち抜きどころか1回も勝てる人いないんじゃ……」

はやり「そうでもないんだよ」

理沙「ルールが特殊!」

良子「東風戦で親連なしの短期決戦だから、普通より紛れは多いよ。赤ドラも入ってるし」

健夜「親が和了ろうがテンパイで流局しようが親は流れるの」

理沙「九種九牌親流れ!」

健夜「だから最大でも4局。トビもありだし、1回勝負だとみんなでも負けることはあるよ」

晴絵「まあそれでもほとんどのチャレンジャーは初戦突破もできませんけどね」

はやり「何人ぐらいいたかな。やっぱり口の上手い人は強いよね」

照「え。口って、三味線ありなんですか?」


良子「バラエティだからね。それに他の2人はランダムで打牌するだけで、
   形式は4人打ちでも実質1対1だから他家と結託なんかはできないよ」

理沙「私は苦手……!」

健夜「理沙ちゃんには不利なルールだよね……」

はやり「はやりもちょっと苦手だなぁ。3回早和了りしても親満1回で負けちゃう」

良子「はやりさんはイメージ上、あくどく揺さぶったりできませんからね」

照「私もそういうの苦手かも」

はやり「ふふ~ん、てるちゃんは今からでも番組見といた方がいいかもね」

照「え……?」

はやり「これオフレコね。『フリ雀』の最終回のチャレンジャーはねー、
    宮永姉妹って計画らしいよっ☆」

健夜「ちょっと、はやりちゃん! それ言っちゃまずいでしょ……」

晴絵「あーあ、早くもできあがってきたなぁ」

良子「はやりさんお酒弱いですからね」


はやり「あ~、なくなっちゃったぁ。次はなににしようかな。ウイスキーいっちゃおっかな」

健夜「あんまり強くないのにしなよ……」

はやり「ん~、じゃあ梅酒にする。あ、でも杏もいいな……どっちも気になるよぉ」

健夜「私が杏酒にするから、半分こしよ」

晴絵「……向こうは小鍛治さんに任せておこう」

照「私が呼ばれても勝てる気しない……出るんならせめて初戦は突破したいけど」

理沙「5人ぐらいいた!」

良子「片岡、愛宕は2人目まで行きましたね」

理沙「集中できなかった!」

晴絵「ひたすら喋り通してたからなぁ」

照「それは大変そう」

良子「あとは臼沢が野依さんとはやりさんを突破しました」

照「わ、2人抜きはすごい」

晴絵「マンツーマンであれはズルいよな。東風戦で他家がノータイムで打牌するから、
   消耗は短時間だし。戒能さんとやるときにはヘトヘトになってたけどね」

良子「私はそういうラッキーが重なってますね」


照「もしかして無敗ですか?」

良子「……いや、1回だけ負けたよ」

晴絵「あっははは、あれはしょうがないよ。妹尾だろ?」

理沙「オーラスでトビ寸前から親の大三元!」

照「それは事故ですね……」

晴絵「他家の捨て牌はランダムだから、三元牌を絞るなんてできないんだよな。
   責任払いのルールもなかったし、あんなのやりようがないだろ」

良子「とはいえ屈辱でした」

晴絵「結局次で瑞原さんに速攻でやられてたけどな」

照「……小鍛治さんは?」

晴絵「まだあの人までたどり着いたチャレンジャーはいないよ。だからまだ出番がない」

照「あ、それはそうですよね。じゃあ今のところ臼沢さんが最高?」

良子「いや、1人だけ3人抜きがいるよ」

晴絵「うん。三尋木プロは中ボス的存在だったけど、その時が唯一の敗戦だ」

理沙「獅子原爽!」


晴絵「宮永さんの同期だろ?」

照「はい。話したことはないですけど」

晴絵「いやー、妹尾といい獅子原といい、大学のサークルにもデンジャラスなのがいるもんだよな」

照「インハイでちょっと見ましたけど、そこまで勝てるとは……」

良子「それが――」

はやり「もー! あんなのズルいよ! ヘビとタコで威嚇してくるしさぁ!
    “あれ使おっちゃおっかな~。公式試合じゃないしいいよね~”とか牽制してくるしさぁ!」

照「あれって?」

良子「はやりさんのアイドル人生が終わる禁断の術。まあハッタリで実際には使わなかったけどね」

晴絵「それでペース乱されちゃったんですよね。フリースタイルならではの汚い戦い方だ」

理沙「私もペース乱された!」

健夜「理沙ちゃんがお喋り苦手なのにつけ込んで、いろいろまくし立ててきたんだよね。
   答えようとすると更にかぶせてきて」

良子「放送だとピー音入ってましたけど、いかがわしい話も出してましたよね」

晴絵「テレビで見た人にはわからなくても、その日の観客には丸聞こえなんだよな」

照「うわあ……」


晴絵「あいつの場合、プロとか名門チームの選手と違ってイメージ気にしなくていいからなぁ」

良子「泥臭く勝ちに行ったわけですね」

はやり「それなのにさあ、咏ちゃんとやるときになったらいきなり真剣モードに入るんだよ」

晴絵「三尋木プロにはそういう手じゃのらりくらりとかわされますからね。
   最初にちょっと牽制し合ってたけど、すぐ口数は減りましたね」

良子「そこからは温存していた守護精霊を全解放」

理沙「西場に持ち越す大接戦!」

照「東場で終わらないケースもあるんですね」

健夜「2人の点差が千点未満だと、原点に戻して南場に行くんだよ」

晴絵「紙一重でしたね。南場ももう三尋木プロで決まりかってところから意地の親倍。
   ギリの九百点差で西場突入。熱かったなー」

理沙「最高視聴率!」

良子「初めからそこにピークを持っていくつもりだったんでしょうね。
   3つも4つも同時に力を解放してましたから。私とやる頃には抜け殻のようでしたよ」

はやり「よしこちゃんもズルいよね~。いいとこ取りだ」

健夜「あっ! はやりちゃん杏食べちゃったの!?」

はやり「えへ~実もおいしいんだよね~」

健夜「梅も食べちゃったじゃん! いいとこ取りだよ!」


照「あ、三尋木プロの不調って」

晴絵「収録の次の日が代表選考会だったからね」

良子「禍々しい守護精霊を1人で相手取った翌日では、精神力回復は難しいでしょう。
   私の出番が先だったら、私の方が落ちていたと思いますよ」

晴絵「勝ち負けはともかく、戒能さんとか獅子原みたいなタイプは相手にすると
   かなり精神をやられるからなぁ。まあ一番は小鍛治さんだけど」

照「言わば召喚系ですよね。神降ろしはいましたけど、
  これだけ応用が利くのは2人の他に知らないです」

晴絵「それで一時期ちょっと獅子原バッシングがあったんだよな」

照「え、どうしてですか?」

晴絵「三尋木プロが代表漏れしたのは、素人が空気読まなかったからだって」

良子「日本が負けたら戦犯は獅子原だと」

照「なんかかわいそう」

理沙「でも勝ったから問題ない!」

晴絵「そうですね。それに本人もどこ吹く風だって話ですから」


良子「そういえば、今日は大学の麻雀大会もあったみたいですね。
   宮永さんの同期も全国からこの近くに来てるかもしれないね」

晴絵「偶然会ったりしてな」

照「まさか」

良子「――ちょっと失礼」

はやり「あ、よしこちゃんトイレ? 私の分も出してきて~、あはははは!」

健夜「トイレは出すところじゃなくて入れるとこ……あれ、逆か。ついでに私の分も~」

良子「……」

晴絵「あの2人はもうダメだな」

理沙「いつも真っ先に潰れる!」

照「……これが二代目牌のおねえさん……これが日本最強雀士……お酒って怖い」


良子「……ふう」

良子(そろそろ危険な時間帯……あの人たちはシラフだと非常に気のいい先輩だけど、
   酔うと手の付けられない酔いどれアラサーになる)

良子(成人したばかりの後輩に酒の席へのトラウマを与えるわけにはいかない。
   なんとしても私が守らなくては)

良子「よし、いざ戦場へ――っと」

爽「おっと、すいませーん」

良子「失礼――獅子原さん?」

爽「……おわっ、戒能プロ!」

良子「奇遇ですね」


爽「その節はどうも。まあボコボコにされただけなんですけど」

良子「『フリ雀』のことなら、君が3人を相手にした後だったからね。
   今度はお互い万全のときにお手合わせ願いますよ」

爽「あはは……結果は変わらないと思うけど、お手柔らかに。
  あ、優勝おめでとうございます。もしかして代表のメンバーで来てたり?」

良子「イエス。君の同期の宮永もいるよ。そっちは1人……なわけはないね」

爽「連れがいますよ。大学麻雀のイベントがあって、ちょっとした顔馴染みに会ったもんで」

良子「この前君が土を付けたはやりさんと野依プロも来てるから、
   余裕があったら顔を出すといいかもしれないね。お連れさんが大丈夫なら」

爽「ちょっとぐらいなら大丈夫っすよ。んじゃあ後でちょっくらご挨拶に伺いますね」

良子「出て左の通路を真っ直ぐ突き当たりの間だから。はやりさんのフリフリの靴でわかると思う。
   まあ、君なら守護精霊が探知できるのかもしれないけれど」

爽「やだなぁ、そんな便利なものありませんって。そんじゃ後ほど」

良子「シーユー」


はやり「♪と・き・には~HA・YA・RIに~な・が・され・て~」

健夜「Hu Hu!」

はやり「♪と・き・には~SU・KO・YAに~ト・バ・され・て~」

健夜「四暗単騎で字一色!」

良子「……ショータイムが始まりましたか」

理沙「はやりんfeaturingすこやんバージョン!」

晴絵「いろんな意味で最強の2人組だ」

良子「宮永さんはまた違うの飲んでるね。気持ち悪くない?」

照「今のところ特に。カクテル系は甘くておいしいです」

晴絵「けっこういける口かもな。でも後で一気に酔いが回ることもあるから気をつけろよ」

良子「あ、さっき獅子原に会いましたよ。後で挨拶に来るそうです。
   連れがいるけどちょっとなら大丈夫だと」

晴絵「へえ、それはまた。なんかの巡り合わせかな」

理沙「噂をすれば影がさす!」

良子「私の守護精霊と引かれ合うのかも――――うっ!?」


照「え、戒能さん、大丈夫ですか?」

良子(なんだ……急激に体が重く……目が回る……)

晴絵「あれ、珍しいね戒能さんがダウンするなんて」

理沙「大会! 疲れてた!」

晴絵「後輩の前だし気を張ってたかな? 宮永さん、そこ寝かせといてあげな」

照「あ、はい」

良子(そんなはずは……あ、テスカトリポカがいなくなってる……
   これじゃ酔いから身を守れない……さっき飲んだ分が一気に……
   そうか、獅子原の守護精霊と相殺されたのか……)

はやり「あれ~よしこちゃんおねむ? じゃあてるちゃん一緒に歌お~!」

健夜「ヒューヒュー! featuringテルテル!」

良子「あ……みや、なが……さん……」

照「私なら大丈夫です。ゆっくり休んでください」

良子(……まず……い…………)

理沙「寝ちゃった!」

晴絵「ま、なんかあったら私らでフォローしてあげましょう」


照(戒能さんが寝ちゃってから15分……どうしてこんなことに……)

はやり「いやは~はるえちゃんのレジェンド飲みは豪快だね~」

晴絵「まだまだ~こんなもんじゃないですよぉ~」

健夜「りさちゃんもプンスコ飲みが決まってるぅ~」

理沙「酒もってこい! ぜんぶ!」

はやり「てるちゃ~ん飲んでる~?」

健夜「お酒っておいしいよね~」

照「はい、おいしいです」

はやり「じゃあこれも飲んでみて☆」

健夜「あ~それも甘くておいしいんだよね~」


照「いや、まだ自分のが」

はやり「え?」

照「残ってるので」

健夜「え?」

照「……」

晴絵「な~にやってんの~若造にはもったいないって~私がもらっちゃうよ~」

はやり「いった~!」

理沙「アルコールキチ○イ!」

健夜「略してアチガの伝説!」

晴絵「――ぷあ~!」

はやり「まだあるよ~」

健夜「ごちそうさまが!」

理沙「聞こえない!」

晴絵「っしゃぁ!」

照「……なんだこれ。これ日本麻雀界のトップ集団だよね……」


はやり「ビールすぐなくなっちゃうね~ピッチャーでたのんじゃお」

健夜「また小腹が空いてきたな~みんなもなんか食べる?」

理沙「食べる!」

晴絵「いこういこう」

はやり「とりあえずホッケでしょ~」

健夜「たこわさは外せないね~」

理沙「鶏なんこつ!」

晴絵「おしんこ盛り合わせも欲しいな~」

照「最初と傾向がちがう……」


はやり「手羽先きた~! やっぱりお肉はガッツリ食べなきゃやってられないよね~」

健夜「カルパッチョとか食べた気しないよ」

理沙「トロ! トロ! そしてトロ!」

晴絵「おい照、なにやってんだ?」

照「え、焼き鳥を串から外そうと……」

晴絵「バッカお前、焼き鳥ってのはこうやってなあ! 串のままかぶりつくもんだろうが!」

はやり「外しちゃったら焼き鳥食べた気しないよ~」

照(理不尽……)


晴絵「そういやこの店に獅子原が来てるって。後で挨拶に来るらしいよ~」

健夜「へえ~。プロでもないのに先輩に挨拶かぁ」

はやり「番組で共演したからかな? 意外とちゃんとしてるね~」

晴絵「でもまあ、ツレがいるらしいからホントに来るかわかんないけどね~」

健夜「……出たよ、ツレとか言って。男と2人で居酒屋なんて魂胆見え見え」

照「いや、そういうニュアンスじゃなかったような……」

はやり「大学生だもんね~。しかも部じゃなくてサークルだもん」

理沙「ヤリサー!」

健夜「どーせ飲んだ後はホテルに直行でしょ?」

はやり「いや~飲み直すとか言って相手のアパートに転がり込むんじゃないかな~」

健夜「まったくさぁ、なんで大学生ってあんなに能天気なの?」

はやり「遊ぶことしか考えてないんだよ。はやりはねぇ、研究者の夢も青春も捨てて
    麻雀と稽古に打ち込んでねぇ、真深さんみたいにって……」

健夜「私だって気づいたらこの世界を駆け抜けた感じだなぁ」

理沙「青春を知らない女!」


健夜「晴絵ちゃんは大学行ってたもんね~いいなぁ。
   どうせ私と違って取っ替え引っ替えだったんでしょ?」

晴絵「誰かさんのトラウマでそれどころじゃありませ~ん」

はやり「あ、そうだ。かずみちゃん結婚するらしいよ~」

晴絵「かずみ……善野一美さん?」

健夜「……また1人同期が旅立っていく……」

理沙「学校関係者は出会いが多いからズルい!」

晴絵「あーあ、私も監督時代に合コン行っとけばなぁ……部活優先してたからなぁ……」

照(プロだって男子プロとかアナウンサーとか、いろいろ出会いあると思うけど)

健夜「……照ちゃんってさぁ、彼氏いるの?」

照「いないです」

はやり「とか言って~幼馴染みの彼氏同然の子がいたりするんでしょ」

照「いや、本当にいないです」

晴絵「ふーん……いつから?」

照「いたことないです」

健夜「……またまた~」

照(なんか空気が和らいだような……)


晴絵「よく雑誌に載ってたりしたじゃん。モテただろー?」

照「女子校で寮生活だったので、そういうのは全然」

理沙「中学生の時から有名だった!」

照「中学の時は麻雀漬けでしたし、ちょっと家族の問題があって人と距離置いてたっていうか……
  だからその頃の友達とはほとんど連絡取ってません」

健夜「そっか。学生時代の友達は大事にしなよ」

晴絵「そうそう。そういう古い友達が最後の砦になったりするからね」

はやり「もう仕事関係以外は既婚者かおじさんしかアドレス入ってないよ……」

照「連絡取れる男友達なんて3人ぐらいしか」

健夜「いるじゃん!」

理沙「自虐風自慢!」

晴絵「かぁ~っ! まざまざと差を見せつけられたわ~」

はやり「てるちゃんよく考えて。てるちゃんみたいに若いスター選手、しかもカワイイ。
    これで逆プロポーズして断る男がいる? いないでしょ?
    つまりてるちゃんはすでに3人と同時に婚約してるようなものなの」

照「その理屈はおかしい」

健夜「うわ~やらしい。三股とかいって」

理沙「悪女!」


照「あの、そもそも2人はすでに彼女います」

健夜「寝取る気!?」

理沙「アバズレ!」

照「そんなつもりないです。もう1人も狙ってる子がいるみたいだし」

晴絵「それは遠回しにお前だってアピールしてるんだよ。若いね~」

照「いや、同じ大学の子って言ってるし」

晴絵「はぁ~、やっぱり雑誌で人気上位に入っちゃう子は違うよなぁ」

照「聞いてないし」

はやり「まあはやりたちが高校生の頃はまだああいう雑誌もなかったしね」

晴絵「一般の高校生とか大学生にも購買が見込めるってことでできたんだろうね」

理沙「購買層は男が多い!」

健夜「あったら誰が人気だったんだろ……」

晴絵「……」

理沙「……」

はやり「ねえてるちゃん、この中だったら人気投票の結果どうなってたと思う?」


照「え……それは、皆さん人気者だと」

理沙「キレイゴトはいらない!」

晴絵「そんな堅く考えなくていいからさ、予想してみなよ」

健夜「そうそう、お遊びだよ~」

照(みんな目が本気! 下手を打つと友情破壊される系の質問だよこれ)

はやり「毎月TOP10つけてるんだよね。さ、1位から発表、いってみよ~」

照「あ、でも高校当時のことは知らな」

晴絵「私らの対戦したインハイの映像見たって言ってたよな。そこからなんとなくでいいよ」

照(くっ、詰んだ……いや、前に姉帯さんが熱く語ってたから今の世代の人気投票の傾向はわかる。
  そこに照らし合わせてカドが立たないように持っていくしかない)

照「……わかりました。じゃあ第1位」

理沙「ダラララララララ!」

晴絵「ジャン!」

照「瑞原はやりさん」


はやり「わ、やった~」

健夜「……ふーん」

理沙「なるほど」

晴絵「理由を聞かせてもらおうかな」

照「はい。まず前提として、雑誌の人気投票は購買層や投票する層によって、
  実際の人気とは若干のズレが生じます」

はやり「本格的だぁ」

照「もちろん皆さん実力もビジュアルも文句なしのトップ集団ですが、
  これまでの人気投票の傾向を踏まえて考えると、有利不利が出てきます」

健夜「そこまで考えたんだ」

照「私の知るところ、今の世代では原村さんと真屋さんが首位を争ってるようです。
  この2人は麻雀では最上位の後塵を拝する第2集団ですが、人気では最上位。
  つまり、アイドル的なキャラクターが最も票を集めやすいのです」

晴絵「そう言われればそうだな」

照「瑞原さんはその上麻雀でもトップ争いをする位置にいますから、首位は堅いかと」

理沙「納得!」

照(よし、つかみは上手くいった。口ドラムロールの隙を作らず一気に流れを持っていこう)

照「次に第2位、赤土晴絵さん」


晴絵「え、私? いやぁ~まいったな」

照「アイドル系2人の次に来るのは新子さんや私の後輩・大星淡。
  新子さんはかなりの才女のようで、その知性に惹かれる人が多いとか」

晴絵「そういや晩成余裕だって言ってたな」

健夜「うわ、偏差値70……」

照「赤土さんはデータを重視した知将のイメージがあるので、そこはポイントかと。
  そして何より、この2人は1年生の頃からややもすると生意気と見られるぐらい、
  上級生にも物怖じしないで向かっていくタイプです」

はやり「あ~、はるえちゃんっぽい」

晴絵「いやー私相手が目上でもつい言いたいこといっちゃうからなー。
   なんてーの? 権力に縛られない、みたいな?」

照「トップは優等生タイプなので、ちょっと攻撃的なぐらいが好きな人は赤土さんを支持するでしょう」

健夜「まあ晴絵ちゃんは私たちの中でも唯一長身だし、女性票も期待できるかもしれないね」

理沙「宝塚!」

健夜「……それで、3位は?」

理沙「……!」

照(うわあ~この“べつにムキになってないよ”風を装いながらも
  最下位にはなりたくないオーラのにじみ出た感じ。でもここまで来たら行くしかない)

照「第3位は……野依理沙さん」


理沙「明太子!」

照(安心のあまり変なことを口走ってる)

健夜「……ふーん」

照「まあ聞いてください。今の世代で、トップ集団の中でもひときわコアなファンが
  ついてる選手がいます。永水の滝見さんです」

はやり「あ、よしこちゃんのいとこの春ちゃんだね。
    そういえばはるえちゃんも教え子にそう呼ばれてたよね~」

晴絵「灼はいつまでも私に高校のときの姿を重ねて見てくるからまいるんだよな~」

はやり「やっぱりそうだよね~。よしこちゃんもね~」

照(酔っぱらいは話が脱線すると止まらないからほっとこう)

照「滝見さんの人気の秘訣は寡黙なところ、試合中どんな状況でも表情が変わらないところ、
  地元の名産の黒糖好きというのがアイデンティティになっているところ」

理沙「明太子!」

照「そうです、野依さんもそれらのチャームポイントがすべて当てはまるんです」

照(野依さんって高校は福岡だけど、出身は大分だったような。細かいことはいいよね)

照「口数少ないクール系はいつも一定の人気があるし、上位も妥当かと」

理沙「ミステリアスな女!」

照(ただのあがり症なのにミステリアスって……クールっていうかむしろホットだし)


照「それで、小鍛治さんですが……」

健夜「……」

照(うっ……背後になんかカラフルなでろでろしたのが見える!
  プレッシャーが……でもここさえ乗り切れば……腹をくくろう)

照「……今の世代を参考にすると、小鍛治さんの状況がわかりやすくなると思います。
  身内自慢になって恐縮ですが、私の妹・宮永咲は3年生になってから
  高校麻雀を支配したと言っても過言ではありませんでした」

はやり「うん、そりゃあもう」

健夜「照ちゃんが引退したら一気に群雄割拠の戦国時代に突入して」

晴絵「天江を筆頭に、神代、荒川、龍門渕などなど……覇を競ってたなぁ」

理沙「でもまたすぐ宮永独裁政権が始まった!」

照「そうなんです。咲は勝ちすぎた……いつの時代も民衆は番狂わせを待ち望む。
  判官贔屓で対抗馬に票が集まっていくんです。麻雀では1人勝ちなんだから、
  人気投票まで独占させるわけにはいかないという心理も働くのかもしれません」

はやり「アンチが多いのも強者の宿命ってね」

照「そして小鍛治さんは咲と同じく慎ましやかなタイプですから、
  アクティブに投票しまくる層よりも密かに見守る層にファンが多いはずです」

健夜「そっか。私もあんまり派手派手しい人苦手だし、そうなるかぁ」


照「どなたもそれは抜群の人気ですけど、雑誌の投票で考えるとそうなるかと」

健夜「うん、そうだね。やっぱりアイドルやってるはやりちゃんが一番人気って感じするよ」

はやり「えへへ~。すこやちゃんだってその気になれば絶対売れっ子だよ~」

照(やった! 箱割れしないで平和的解決を迎えた! 奇跡の生還だ!
  ダシに使ってごめんね咲……WEEKLY麻雀TERUでは毎週咲がぶっちぎりの1位だからね)

晴絵「考えてみれば私らみんなバラエティにも出てるし日本代表だし、
   今プロ全体でやっても上位独占しちゃうかもね」

理沙「間違いない!」

はやり「そうだね~。小鍛治世代なんて言われ方もしてるし」

健夜「それじゃしょうがないよね。良子ちゃんとか咏ちゃんとかがその後に続く感じかな~」

晴絵「照も次世代ではナンバーワンなんだし、いいところいけるかもな」

照「いや、そんな……」

照(すいません、真面目に考えたら三尋木プロと戒能さんでワンツーだと思います)

はやり「よ~し、みんなの人気投票上位独占を記念して乾杯だ~」

照(ためらいなく捏造できるところは羨ましい)


健夜「今度は日本酒いっちゃおっか」

晴絵「いいねー」

理沙「いろんな地方のを取り揃えてる!」

はやり「どこのにする? 島根のはないかぁ」

健夜「茨城もお酒はあんまり有名なのないからなぁ」

晴絵「奈良もないか。やっぱり日本酒は米どころが強いな」

理沙「大分もない……!」

健夜「これだから東京はダメなんだよね。有名どころばっかりありがたがってさ」

はやり「そうだよね~。地方から寄せ集めて大きい顔してるし」

晴絵「地方あっての首都だってのに」

理沙「いい気になって見下してくる!」

照(なんという被害妄想)

健夜「あれ、照ちゃんって東京の人だったよね」


照「いや、親の仕事の都合で引っ越しただけで」

晴絵「でもだいぶ都市生活長いだろ。まったく、都会っ子は軟弱だからなー」

はやり「そういうのも麻雀に表れるよね」

理沙「精神が脆い!」

照(まずい、批判される流れに……)

照「いえ、魂は長野県民です! 虫とか食べてました!」

健夜「……そっか~照ちゃんも仲間だね」

晴絵「どうりで最近の若いのにしちゃメンタルが強いと思ったよ」

はやり「長野か……残念、長野のお酒もないなぁ」

理沙「品揃え悪い……あ、大分の焼酎ならある!」

晴絵「焼酎といったら九州だもんなぁ」

理沙「ふふん……!」


健夜「……でも鹿児島とか宮崎には敵わないんでしょ?」

理沙「そんなことない……下町のナポレオンは全国規模!」

健夜「くっ……」

晴絵「そういえば長野ってワイン作りが盛んなんだよな」

照「そうらしいです」

晴絵「奈良はワインは弱いけど梅酒でちょっと有名なんだよ」

健夜「あ、梅酒なら茨城にも有名なのあるよ」

晴絵「ああ聞いたことある。いつもランキングで目にするから」

健夜「こうして考えるとどこにも得意分野があるんだね。
   あれ、島根には全国規模で人気になるイチオシのお酒ないのかな?」

はやり「えっとね……」

健夜「地元に誇れるお酒がないのにお酒好きを名乗っていいのかな~?」

照(まずい、都道府県自慢は荒れる)


はやり「……お酒は日用品なんだから、地酒があれば外に有名な必要はないよね。
    島根には外に誇れる観光地――出雲大社も松江城もあるんだよ」

理沙「くっ……!」

はやり「てるちゃんのところも松本城とかスキー場とかあるもんね」

照「あ、はい」

晴絵「そういうことならうちも奈良の大仏で有名だし、吉野山とか奈良公園も桜の名所だし」

健夜「……茨城にも牛久大仏あるし」

晴絵「えー、大きけりゃいいってもんじゃないでしょ」

はやり「そうそう、歴史がないのは仕方ないとしても風情がないよね~」

晴絵「ま、いばらぎらしいとは言えるかな」

健夜「いばらき!」

はやり「まあまあ、すこやちゃんもりさちゃんも気を落とさないで」

理沙「……大分は温泉大国! 湯布院! 別府!」

晴絵「あふっ!」

はやり「はやっ!」

照(大社とか大仏の方が誇らしい気はするけど、温泉大好きアラサー女子には効果的だ)


はやり「……はやりも友達が旅館やってるからよく温泉行ってるし」

晴絵「私も教え子の旅館たまに泊めてもらうからなー」

健夜「……そういう非日常のものはなくても困らないよね。人が生きるのに一番必要なのは何?
   食でしょ。茨城はね、納豆の生産量が全国一なんだよ!」

理沙「うっ!」

はやり「ひゃあ……」

照(そんな自慢にならない気がするけど、健康食品の話題はアラサー女子には効果的だ)

健夜「他にもねえ、ピーマンとか白菜とかれんこんも日本一なんだから。
   果物だってメロンがあるし。みんなのところにそんなのある?」

はやり「……」

晴絵「……」

理沙「か、かぼす!」

健夜「ああ、あったね。でも食べるってより隠し味でしょ。かぼすじゃお腹は満たせないよ。
   ね、茨城は日本の食生活に大きく貢献してるんだよ。みんな大きな顔しないでもらえるかな」

照(さすがは北海道に次ぐ農業大国茨城県民、ここぞとばかりに)

健夜「まあ対等なのは照ちゃんぐらいかな。長野県もレタスとかしめじとか松茸が全国一だし、
   青森には敵わないけどリンゴっていう名産品もあるからね」


はやり「……食だったら島国の日本でお魚を抜いて考えることはできないよね。
    島根は漁獲量でかなりの上位に入るよ。のどぐろって名産もあるし」

照「あ、足りなくなってるって噂の」

はやり「そうなんだよね~。はやりがインタビューでちょっと話に出したらブームになっちゃって」

照(あれ瑞原さんだったっけ)

理沙「こっちだってとんこつラーメンも明太子もある!」

晴絵「それは福岡でしょ」

理沙「すぐ隣だし一緒!」

はやり「それはずるいよ~。むしろ地元には何もないって認めてるようなものだよね」

健夜「それがありなら茨城なんてほぼ東京だよ」

晴絵「神奈川とか埼玉なら百歩譲って認めるとしても、茨城は接してもいないでしょ」

はやり「そうだよ。東京行くには千葉を通ることになるよ?」

健夜「くそ……千葉のごじゃっぺが……」

晴絵「そう考えると奈良は他に頼らなくても存在感あるよな。学生が修学旅行でよく来るし。
   都道府県全部言わせて最後まで残ることはまずないね」

理沙「京都のバーター!」

晴絵「なにぃ!」


照(まずい、これ以上抗争が激化する前に気を紛らわせなきゃ。
  この人たちが食いつく話って……お酒か……)

照「あの、この泡盛ってよく聞く名前なんですけどおいしいんですか?」

はやり「あ~泡盛かぁ」

健夜「いいよー五臓六腑に染み渡るよ」

はやり「うん、ここはみんな大好き泡盛で乾杯しよう」

理沙「沖縄……いい……!」

健夜「独特の文化だもんね。行ってみたいなぁ」

はやり「お仕事で行ったことあるけど、ほんとに海がきれいだったよ~」

晴絵「沖縄か……そういや私らが小学生のとき全国優勝した沖縄の選手がいたの覚えてる?
   あれね、決勝前に私がアドバイスしてやったんだよ。敵に塩を送っちゃってねー」

健夜「知らないよ……まだ麻雀やってなかったし」

照「他にも食べるもの頼みましょう。お魚がおいしかったな」

理沙「北海道! 産地直送!」

はやり「北海道も雄大で食べ物がおいしかったな」

健夜「さすがに北海道には敵わないな……スト起こされたらカレーが作れなくなっちゃう」


晴絵「そうだなージャガイモがないとなー」

健夜「え? ジャガイモはいらないでしょ。にんじんでしょ?」

理沙「にんじんこそいらない! 大事なのはコーン!」

はやり「えー、カレーなのに甘くしてどうするの。牛乳だよね」

晴絵「え、なに、カレーに牛乳入れるって?」

理沙「邪道!」

はやり「コクが出ておいしいんだよ~。すこやちゃん入れない?」

健夜「あれ……お母さんどうしてたっけ……」

照(今度はカレー論争に……麻雀ではあんなに頼もしかったのに……話題を変えないと……)

照「そういえば獅子原さんって北海道の人でしたよね」

はやり「そうだったね~」

晴絵「そういや挨拶に来るって言ってなかなか来ないな」

照「連れの人がいるみたいだし……」

健夜「よろしくやってるんじゃないの」


理沙「居酒屋プレイ!」

はやり「はややっ、淫行だ」

健夜「サークルとはいえ麻雀界じゃそれなりに有名なんだから、雀士の品格が落ちちゃうよね」

晴絵「けしからんなー、こっちから出向いて教育してやるか」

照「いや、どこの個室かわからないです」

晴絵「しらみつぶしに開けてけばいいんだよ」

照「きっとすぐ来るから待ちましょう! ほら、すぐ泡盛とおつまみも来ますから!」

健夜「そうだね。泡盛楽しみ」

理沙「ししゃも!」

はやり「北海道産のししゃもなんてまず食べられないのにね~」

晴絵「若いと苦手な奴も多いけど、照はししゃも好きか?」

照「はい、よく食べてました。つぶつぶがいいですよね、子持ちししゃも」

健夜「……」

はやり「……」

照(あれ、空気が重く……)


晴絵「……子持ちか……」

健夜「子持ちになる日は来るのかな……」

理沙「まったく想像もつかない……!」

はやり「友達がもう三児の母に……」

晴絵「同窓会で幸せそうにしてるのが応えるんだよな……」

健夜「わかる。プロで活躍しててすごいねって言われるんだけど、
   子育てしてる自分の方がすごいって暗に言われてるようで」

理沙「子育て大変そうにしながら惚気られる……!」

照(地雷だった……話題変えなきゃ)

照「北海道といえば、今年もけっこうな大雪だったみたいですね」

はやり「あぁ~、雪かきが大変そうだよね」

健夜「休みの日も毎日やらなきゃいけないんでしょ? 雪国には住めないなぁ……」


理沙「みんな雪とは無縁!」

晴絵「長野も降るだろ?」

照「地域によるけど、私の住んでたところは北海道や東北なんかと比べたらかわいいもんです。
  この前も妹が“おしろいで厚化粧したみたい”って言ってました。私に似て文学少女で――」

晴絵「……」

理沙「……」

照(あれ、またなんかやっちゃった?)

晴絵「昔はもっとナチュラルメイクでいけたんだけどな……」

理沙「お肌の潤いが違った……!」

はやり「いつも笑顔つくってるから目尻のシワが……」

健夜「私も眉間のシワが……」

晴絵「……そういや照、おまえかなりメイク薄いよな」

はやり「お化粧してるよね?」

照「一応……高校の時に友達が、プロになるなら最低限のメイクぐらいしろって。
  それでクリームとファンデーションもらって使えるようになりました」

健夜「……え、それだけ? 目元は?」

照「いえ、特に」


理沙「チーク! 口紅!」

照「持ってはいるんですけど、面倒でつい……」

はやり「それで通用するのは若さ故だね~」

晴絵「元が良い奴は楽だねー」

健夜「甘いもの好きなんだよね? 肌荒れたりしない?」

照「いえ……別に」

はやり「よく温泉行ってたり?」

照「出不精で……」

健夜「でぶ……?」

照「インドア、インドア派です」

晴絵「余計な肉もついてなさそうだし……運動してる?」

照「運動苦手で……家で本読んでばっかりです」

理沙「体質……妬ましい!」

はやり「それならたくさん飲んでも夜更かししても大丈夫だよね?」

健夜「今日はとことん飲もうか……」

照(この不気味な笑顔……私はしくったのか……?)


爽「さーて、ちょっと気まずいけどご挨拶しとかなきゃな。
  でもさっきいきなりホヤウがいなくなって嫌な予感するんだよな……あ、ここだ」

爽「ん……やけに静かだな。すいませーん、獅子原です。お邪魔してもよろしいでしょーか」

爽「…………あれ? あのー、もしもーし。
  ……入りますよー。失礼しまーす」

はやり「」
健夜「」
理沙「」
晴絵「」
良子「」
照「」

爽「うおっ! 屍の山! 練炭オフか!?」

照「……あ、ししはら、さん……」

爽「おお~宮永さん! 生きてた! なにこれ?」

照「うぅ……戒能さんが寝ちゃって、みんなどんどん酔っぱらっておかしくなって……
  私も飲まされて……気持ち悪い……」

爽「とりあえず水頼むか」

照「だめ……店員さんにこれ見られたら……」


爽「……まずいね。テーブルの上も床もめちゃくちゃだし、
  みんなパンチラしまくりだし。げ、ブラまで落ちてる」

照「え、まさか」

爽「宮永さんのじゃないよ。戒能プロ……は比較的着衣に乱れがない。わかった、はやりんだな」

照「すごい。6人もいるのに。探偵みたい」

爽「なに、簡単なプロファイリングだよ」

照「……こんなの誰かに写真撮られて拡散でもされたら麻雀界が危うい」

爽「個室でよかったね」

照「きっとワイドショーで叩かれるんだ……『日本代表・チーム小鍛治ご乱心』
  『卓上の戦乙女、こっちの卓上では九酒酎ハイ親泣かせ』って。短いプロ生活だった……」

爽「諦めないでよ。私も手伝うから片付け――」

はやり「はや、はや、はややーっ!」

爽「っ!? ……寝言か」

健夜「アラサーだよ!」

爽「うわっ! またかよ。もうアラウンドじゃなくてジャストだろ」


照「くらくらして動けない……寝言で店員さんが様子見に来たら終わりだ……」

爽「……しょーがね、やるしかないか――アッコロ!」

照「わっ……タコ!?」

爽「後に取っときたかったんだけどな。いや、刺身にするってことじゃなくてね」

照「なに、なんか体が……」

爽「アッコロはすべてを赤く染める――つまり血液中の赤血球の数を増やすんだ。
  それでヘモグロビンがアレして、アルコールの血中濃度が、なんか、こう……
  理屈はよくわかんないけどアッコロさんが酔いを覚ましてくれるぞ!」

照「楽になってきた……」

爽「大丈夫そうだね。すぐ全員回復すると思う。そしたらアッコロいなくなるから。
  じゃあ私は退散するわ。面倒くさいことになりそうだし。
  戒能プロには挨拶に行くって言っちゃったから、適当にごまかしといて」

照「あ、お礼……」

爽「いいよ。どっかで会ったら今度は先輩方抜きで飲もう。じゃあね」

照「うん。ありがとう」


良子「ん…………はっ! これは……ひどい有様。宮永さん、無事だった?」

照「はい。1回全員潰れたんですけど、獅子原さんが来て助けてくれました」

良子「後輩に助けられちゃったか……まあ彼女がいなければ私も潰れなくて済んだんだけど」

照「みんなすぐ回復するそうです」

良子「悪かったね。私が止めるつもりだったんだけど」

照「いえ、お酒の恐ろしさが実感できましたから」

良子「あ、片付けなくていいよ」

照「え、でも……」

良子「この人たち自分の乱れ具合を覚えてないからね。起きて見てもらってからにしよう。
   それまでデザートを選んでるといいよ」

照「やった。プリンあるかな」

健夜「うぅ~ん……」

はやり「はややっ、寝ちゃった」

晴絵「……ふあぁ」

理沙「すっきり爽快!」


はやり「わぁ、ずいぶん飲んだんだね~」

健夜「私途中で寝ちゃったけど、すごいね」

晴絵「こんなに……宮永さんと戒能さんか? 酒豪だなぁ」

理沙「飲み過ぎ注意!」

はやり「でもこのグラスの散らかりようはちょっといただけないぞっ」

健夜「氷が散らばっちゃってるね」

晴絵「いくら酒の席といっても、最低限のマナーはあるんだよな」

理沙「お行儀悪い!」

はやり「まあまあ、若気の至りかな」

健夜「うん、みんなで片付けよっか」

晴絵「後輩の尻ぬぐいも先輩の務めだ」

理沙「背中を見て育っていく!」

照「……戒能さん……」

良子「全員正座してください。ハリアップ」


はやり「――はややっ、ゴメンね~☆」

健夜「うう……恥ずかしい……」

晴絵「いやー面目ない」

理沙「は、反省……!」

良子「いつも私がフォローできるわけじゃないですからね。
   まあ、今日みたいなアクシデントはまずないでしょうけど」

照「パフェまであるなんて……でもブリュレも……いや杏仁豆腐……」

晴絵「お詫びにもならないけど好きなだけ食べな」

はやり「もちろんお姉さんたちのオゴリだよ」

健夜「みんなで甘いもの食べて締めようか」

はやり「うん。仕切り直しだね」

照「……ん?」

理沙「二次会!」

晴絵「次はバーにします?」

健夜「落ち着いてジャズバーもいいね」

はやり「はやりは賑やかな方がいいかな」

理沙「ハードロックカフェ!」

照(帰りたい……今度は獅子原さんとゆっくり飲みたいな)


爽「ただいま」

恭子「遅いやないかコラぁ~」

爽「ごめんごめん。ちょっとアクシデントが」

恭子「そうやってみんな私を置いていつの間にかいなくなるんや……
   洋榎もプロになってからトンと連絡よこさん。ゆーこも一流大学でボンボン共と
   よろしくやっとるみたいやし、私みたいな凡人はお役御免なんやぁ~」

爽「忙しいんでしょ。連絡がないのは今の生活充実してる証拠だから喜ぶべきだって話だよ」

恭子「お前高校の時の連中と今でもよく会うって言ってたやないか!」

爽「いやそれは高校のっていうか幼馴染みだから。家めちゃくちゃ近所だもん」

恭子「あーん? 幼馴染みがなんぼのもんじゃい。こちとら高校3年間の……
   けっしゃ、けっしゅ……なんやったか、そうそう、結晶を共有してんねん。
   友情! 努力! 勝利! 全部詰まった結晶や!」

爽「うんうん」

恭子「毎日三麻して、ホンマに仲良くて……それが私のせいで勝利を掴めなかった……!
   みんなの最後の夏に私が引導を渡してしもたんや! うわあああぁぁん!」

爽「……」

恭子「ん、酒がないな。すんませーん! すんまっせーん!」

爽「ちょ、タッチパネルあるから! ていうかそろそろ控えた方が……」


恭子「あん? お前私が大学でなんて呼ばれてるか知ってるか。ヴァル原や。勇敢な戦士の証や。
   ヴァルハラの恭子とは、うちのことやで! なんつって洋榎の真似したりしてな。似てるやろ?」

爽「あー似てる似てる」

恭子「お前に洋榎の何がわかんねん! あいつのウザさはこんなもんちゃうぞコラぁ!
   ホンマにウザくて、でもそれが心地良くて頼りになって……洋榎ぇ~~」

爽「ぜってーヴァル原じゃなくてアルハラの聞き間違いだろ」

恭子「んん? そういやお前も原がつくな。ヴァル原爽やな。はっ、こうなると名字一緒やん。
   もしかしたら生き別れの姉妹とちゃうか? お前何月生まれ?」

爽「んなわけねー……8月」

恭子「マジか! 私も8月や! え、何日?」

爽「2日だよ」

恭子「マジでか! 私は9日や! こらホンマに双子の姉妹で生き別れたんかもなー」

爽「思いっきり違う日だし」

恭子「1週間ぐらい誤差や誤差。よう見てみい。お互いチビっちゃくてスレンダーで……
   ペタンコちゃうで、スレンダーやで。そんで……アホっぽいところは似とらんなぁ。
   私が頭脳担当、お前が体力担当ってところやな」

爽「頭脳担当だいぶ脳細胞死んでるよ」


恭子「おっ来た来た。よし、もっかい乾杯や!」

爽「何回目だよ……今度は何に?」

恭子「うちらの再会に」

爽「それ3回目」

恭子「なんやお前私に会うのイヤやったんか? 私みたいな凡人と関わるのは人生の汚点なんか?」

爽「そんなこと言ってないよ。はい、乾杯」

恭子「おう……お前はなー、私にとってはなー、高校最後の対戦相手なんや」

爽「そう言われてみるとそうだね」

恭子「しかもラス2や。準決と5決、連チャンで卓囲んで、ちっとは親近感持ってもええやろが」

爽「わあー運命だあ」

恭子「まあ結果はボロクソやったけどな。準決じゃあうちら3年が1年坊2人にいいようにやられて、
   5決じゃあ清水谷含めた3年ブーストでも鶴田のアレを止められず……アレなんやったっけ」

爽「リザベーションね」

恭子「そう! なんやねんアレ。あんな特殊なもん凡人にどうこうできるわけないやろ。
   凡人にできるのは居酒屋のリザベーションぐらいってな~」

爽(末原さんって率先して幹事やりそう)

恭子「はあ……結局善野さんに恩返しできないままや……」


爽「監督さんだっけ? その後体は大丈夫なの?」

恭子「おう、ピンピンしとるわ。結婚も決まって……結婚……
   善野さぁ~ん! 結婚なんてしたらイヤや~! なんで私を置いていくんですかぁ~!」

爽「……」

恭子「“もう私に教えられることはないわ”って、まだまだ教えを乞うつもり満々やったのにぃ~!
   メゲるわぁ~もぉ~。お前もメゲるやろ? 善野さんには世話になったもんな」

爽「え、いや別に」

恭子「なっとるやろ! 善野さんの神オーラが日本に平和をもたらしてるんやで。
   名前見りゃわかるやろ。野に善をふりまくただ一つの美や!
   善・野・一・美! これ以上美しい名前がこの世にあるか? いや、あらへん!」

爽「……」

恭子「お前にもじっくり教えといてやるわ。私が高校に入ってからの善野さんとの歩みをな。
   お前もあの人の偉大さが理解できるはずや。ホンマ神やであの人は。善野全能神や」

爽(帰りたい……宮永さん連れてバックレとけばよかった)

恭子「よーし、偉大なる善野閣下に乾杯!」



カン

牌プレス上埜とかMC槓a.k.a.SAKIとかのラップバトルを書きたかったけど挫折した
読んでくれてありがとう
ノーモアアルハラ

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