カズマ「混浴銭湯大作戦!」【このすば】 (13)

「みんなに集まってもらったのは他でもない。先日お話しした通り、この街に混浴の銭湯を作りたいと思う」

 今日は混浴を作るための具体的な話し合いを……と続けた。

「しかし、それは難しいですな。すでに大衆浴場がありますし」

 商店街会長が渋い声を上げる。

「そうだな。男性客は集まるかもしれんが、女性が来てくれるだろうか?」

「いや、無理でしょうな。やがて男も来なくなって、経営難で潰れるのが目に見えてますね」

 商店街の役員達が無理だと言わんばかりに声を上げる。

「だが、やらない手はない!これが成功すればこの街の男共から金を巻き上げる事が可能だ!」

「そうですね。この資料によると、男冒険者のお風呂に入る回数の平均は3日に1回……。もしこれを1日1回……いや!1日2回にすらできるかもしれません!」

「しかも、牛乳などの売り上げも増える!!儲かるとわかっているのなら、商売人として手を出さない訳にはいかない!」

「し、しかし……女性は来てくれるのだろうか?」

「う、う……ん」

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 沈黙。
 会議の前に案を準備していない場合、会議とはこういうものになってしまう。
 『会議をしてはならない~結論は話し合う前からすでに決まっている~ 』と語ったアニメのキャラがいたが、本当にその通りだと思う。


 その沈黙を俺が格好良く破る。



「俺に考えがある」



「っ!?」

「か、カズマさん!?本当ですか!?」

「エロといえばカズマ、カズマといえばエロ。さすがエロという名を欲しいままにする男だ」

「カーズマ!カーズマ!カーズマ!カーズマ!」

 みんなが俺を称える。ああ、悪くない、悪くないぞ。

 俺はみんなに聞こえるように。

「みんなわかっていると思うが、すべてのカギは女だ。女が来れば男は絶対に集まる。逆に男が来ても女は集まらない」

 みんな静かにうなずきながら聞く。

「まず、女は無料にする。女は無料という言葉に弱い。その分、男の金額をあげてやればいい。バカな男共は多少高くても集まる」

「なるほど。なるほど」


「次に、銭湯で弁当を売る。この弁当や飲み物の金額は、女なら半額だ!」

「どうせなら、そこも無料にしてしまえば?」

「そうですね。男性連中の金額を倍にすれば採算は取れますし」


「それじゃダメなんだ!」

 俺は机を叩き、みんなに真剣に伝える。

「全部無料にするとバカな女共は「え?無料?全部タダって……何か裏があるんじゃないかしら?」と不審がる!それじゃダメだ!みんなが平和で安心な世界を作らないと!」

「た、確かに、最近、布団などの商品の説明会に参加すると無料であれやこれや貰えるという事がありましたが、普通の人は無料すぎて怖がって、一部の強欲な人しか集まりませんでしたね……」

 俺はその通りと言わんばかりに。

「だからの半額だ。女性は中途半端な割引より、『半額』に弱い!『半額』シールを貼ってあるだけで、お得だと勘違いして買ってしまう生き物だ!」

 俺の話を聞いていた商店街の人達が立ち上がり。

「さすが!カズマさんだ!これならいける!」

 俺が静かに言う。

「ちょっと待ってくれ。まだ俺の話は終わっていない」


「ま、まだ、何かあるのか?」

 ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……



「俺の知り合いの、見た目がいい男の貴族に話をつけておいた。開店後の1週間は毎日来てもらう予定だ」

「女共を貴族で釣るってわけか!さすがはカズマさんだぜ!」

「これで女も初日から来てくれるぞ!」

「カズマさんばんざーい!カズマさんばんざーい」



 会議室内には称賛の声がいつまでも続いた。

 
  *  *  *



 今日は混浴銭湯オープンの日だ。
 ちゃんと家でお風呂にも入ってきて、歯も磨いてきた。清潔って大事だと思う。
 ああーーーードキドキしてきた。やばい。超ドキドキしている。


 俺は銭湯の扉を開いた。
 まずは脱衣所、昔ネットで得た教訓をもとに、脱衣所はきちんと男女別にした。
 混浴は紳士じゃないと嫌われる。

 そして----



「いらっしゃいませ……。ってカズマさん!?」

「お風呂に入りに来たんだが、お客さんは多いか?」

 知り合い……友達が入ってきたせいか、少し嬉しそうにするゆんゆん。

「はい。女性の方ばかりですが、お客さんは多いです。やっぱり無料ですし、お弁当とか半額でお得だからでしょうか?」

 そうかそうか。女性のお客さんは多いのか…………ひゃっほーーーい。

「はい。1000エリスになります。ちょうどですね。ごゆっくりどうぞ」

 今日、ゆんゆんは番台として雇っており、この番台に座ると男女の脱衣所が見えるような、日本にあった昔の銭湯のような作りになっている。


「ゆんゆん。無理な事を言って悪かったな。バイトの募集が間に合わなくてさ」

「あっ、いえ……その友達の頼みですし、基本座ってるだけで、時給も高いですし……」

「あとで差し入れを持ってくるからな」

「差し入れ……はぅ……友達っぽい……」

 にへらと表情を崩し、嬉しそうにしているゆんゆんの前で、俺は服を脱ぐ。全力で脱ぐ。

「っ!?」

 急に服を脱いだせいか、ゆんゆんは目を丸くし、すぐに明後日の方向を見る。
 次第に耳まで赤くなっていく。

 ちなみに俺は何も変な事はしていない。
 だって、ここは脱衣所なんだ。脱衣所で服を脱いでも何ら変なじゃない。
 逆に脱がない奴は頭がおかしいと思う。

 俺がどんどん脱いでいく、比例してゆんゆんがどんどん赤くなる。


 やっぱりこの子を雇って正解だった----

 そうだ!番台は男より女だ!
 番台が女なら、女のお客さんも出入りしやすく、恥じらいを見れるという事で男達も楽しみが増える!

 ……

 よく考えたら、もしゆんゆんが男の裸に慣れてしまったら、なんか寂しいな……
 番台のバイトは定期的に入れ変える事にしよう。

 全裸になった俺は扉の前に立つ、この扉の先には沢山のおっぱいが……
 や、やばい。ドキドキしてきた。
 さっきからゆんゆんがこっちをチラ見しているような気がする……
 チラ見するゆんゆんを無性に弄りたいが、今はそれよりこれからの事だ!

 ふぅ……。落ち着け、佐藤和真。俺はできる男だ。



 ドキドキドキドキドキドキ
 やばいやばいやばいやばい




 俺はゆっくり扉を開いた。



「聞いてくださいよ奥さん。この前、バニルさんが80歳の私の事を、まだまだ若い赤子同然だと、言ってくれたのよ。もう嬉しくって」

「あら、まぁ、奥さんも隅に置けないわねー」

「主人に先立たれて60年……。1人は慣れたつもりだったんだけど、やっぱり寂しくなって……ねぇ~」

「なに言ってんのよ。たとえ80歳になろうが90歳だろうが、女は女よー」

「それにしてもここは無料でいいわね。弁当も半額らしいわよ?」

「それはいいわね。毎日通ってみようかしら」

「そういえば、今晩、若い貴族の人がお風呂に入るらしいわよー」

「きゃー!貴族様に惚れられたらどうしましょう?」

「おばあちゃんは100歳になっても若いわねー」


「ゲラゲラゲラゲラ」



 俺はそっと扉を閉じた--------





 急な用事を思い出したし帰るか。

 
  *  *  *



 たまにアクアやウィズが行っていたらしいのだが、平均年齢80歳のババア共のせいで男は近寄る事ができずに、混浴銭湯はすぐに潰れた。

 はぁ……。なんでこうなってしまったんだ……

「カズマーーー!お前のせいで商店街は赤字だ!責任!責任をとれーーー!」

 なぜか俺は商店街の連中に追いかけ回されている。

「うっせぇ!責任者が責任とれよ!何のための責任者だよ!」

「なんだとーーーー!!!!」


 俺は捕まるわけにはいかない!
 男の夢、混浴銭湯を実現するまでは!!


「冒険者を雇って来たぞ!みんなであいつを取り押さえろーーーー!!!」




 俺の戦い(混浴)は始まったばかりだ-----!






       終わり

これにて終わりになります。
読んでくれてありがとうございました!
また機会があればよろしくお願いします!

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