レシプロ時代の最期を看た男の話 (19)





1944年2月2日。
リパブリック社のテストパイロット、トム・リベンジャーはその時、XP-72のコクピットにいた。


『はじめまして、トム』

「はじめまして、ベイビー」


このような会話があったかどうかは定かではない。
生まれて間もない“ベイビー”はこれより、初の試験飛行に入るのだ。







SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1460733723





同社の名機、P-47「サンダーボルト」をベースに試作された高速迎撃機、XP-72。

それの見た目は相も変わらず“太っちょ”なままだった。
だが、その重厚な守りに固められた姿が搭乗者に一種の安心感を与えてくれることも、また事実だった。


荒野に囲まれたこのだだっ広い自社飛行場の片隅で、誘導員の“回せ”という指示に従い、作業員が慌ただしく機体に取りつく。
一人が手でプロペラに回転を与えると、もう一人がカウルフラップ内の慣性始動機に突き刺さったクランクを思い切り回した。








しばらくして、前方の作業員が自身の手で“グッド”の形を作り、それを確認したトムは顔に笑みを浮かべる。
その後、彼は作業員が下がった頃合いを見て、プロペラ軸と慣性始動機を直結させた。


P&WのR-4360星形28気筒エンジンがブルンと唸りを上げる。

やがて、巨大な四翅プロペラが力強くはためくと、アスファルト上の塵屑が一斉に宙を舞った。








『トム、怖いよ』

「大丈夫だ、俺がついてる」


命を吹き込まれたそれは、やがて大地をゆっくりと滑り出した。

優れた搭乗者の手によって、操縦桿がゆっくりと引き倒される。
XP-72はその大きな首を起こし、自身を青い空に向かって思い切り蹴り上げることに成功した。








薄雲が、あっという間に眼前に現れた

そのずば抜けた上昇速度に、トムの胸は高鳴った。


『ふふん、どうだい』

「あぁ……すごい奴だよお前は」


やがて、試験飛行高度に到達したXP-72。
トムが右手を置いていたスロットルレバーを、そのまま奥に向かって押し出した。

未知の速度領域に踏み出す時、彼は決まって口ずさんだ。


「最高だ」


……と。








………………
…………
……


「746km/h」

上記の数値は、同時代の多くのレシプロ機を既に凌駕する数値だった。

だが、飛行場でXP-72の帰りを待っていた多くの社員は落胆した。
過給機の無い試作機とはいえ、最終目標値である811km/hには到底及ばない数値であったからだ。

当然、これには報告をしたトム自身も落胆していた。








『ごめんね、トム』

「なに、俺たちの力不足のせいだって」

「気に病むなよ、まだ終わりじゃないさ」


そう言ってトムは、ジュラルミンがむき出しとなったボディに向かって、握り拳をコツンとあてた。

XP-72は飛行場に併設された格納庫で、しばしの眠りにつくこととなる。
速くなって、再び空を飛ぶことを夢見て……。


……
…………
………………



明日が早いので、今日はここまでにします。
短い話なので、明日か明後日には終わります。


しかし、需要あるんすかねこの話(白目)

お読みいただき、ありがとうございます。
読み返していて重大なミスが見つかったので、>>2の内容は以下に置き換えて頂けると幸いです。
申し訳ありません。





同社の名機、P-47「サンダーボルト」をベースに試作された高速迎撃機、XP-72。

それの見た目は相も変わらず“太っちょ”なままだった。
だが、その重厚な守りに固められた姿が搭乗者に一種の安心感を与えてくれることも、また事実だった。


荒野に囲まれたこのだだっ広い自社飛行場の片隅で、誘導員の“回せ”という指示に従い、作業員が慌ただしく機体に取りつく。
一人が手でプロペラに回転を与えると、もう一人が機体後方の慣性始動機に突き刺さったクランクを思い切り回した。

レシプロは全然わからん

>>16
趣味全開のSSで申し訳ないです…

これが終わったらまた普通のSS(ほぼ艦これですが)なんかも書きますので、よければお付き合いください

続きを書くにあたって、プロット上に重大なミスがあったので、申し訳ありませんがスレの立て直しを行います。

内容を考え直すので、一度別のSSを挟ませてください……

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