関裕美「お荷物部署?」 (94)


・アイドルマスターシンデレラガールズのSSです。
・アニメの設定を都合よく使っています。
・キャラ崩壊あり、書き溜めありです。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1460655367

関裕美「こんにちわ。関裕美です」


関裕美「346プロダクションという芸能事務所に所属しています」


関裕美「……アイドルです。一応」


関裕美「私みたいな可愛くない子がアイドルやってていいのかなって思ったりもするけど」


関裕美「お仕事は、一生懸命頑張ろうって、思ってます」


関裕美「でも最近、お仕事がなくて……」


関裕美「私だけでなく、同じ部署の皆もそれは同じみたいです……」

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346プロダクション 美城専務のオフィス



ドア「コンコン」


美城「入りたま」


ドア「ガチャ」


モバP「へっへっへ、専務、あっしをお呼びで?」


美城「……」


モバP「……」


美城「まず第一に」


美城「部屋には入室を許可されてから入りなさい」


美城「第二に」


美城「社会人であるならば上司に対する言葉遣いは弁えなさい」


美城「最後に」


美城「……開いているぞ」


モバP「……」


チャック「……///」


モバP「……重ね重ねのご忠告、痛み入ります」ジーーー

※行間調整します。失礼しました。



モバP「上司と部下ではありますが、ざっくばらんにやりたいものですな」

美城「私はそのような関係を好まない、それに君の立場では相応しい発言とは言えんな」

モバP「…承知いたしました。数々のご無礼、お許しください」

美城「うむ」

モバP「では、失礼いたします」

美城「待て」

モバP「?」

美城「用件がまだだ。せっかちなのか?」

美城「まあ近くに来なさい」

モバP「へい」

美城「はい」

モバP「はい」

美城「はい、座りなさい」

美城「君の部署は立ち上げてどれくらいになる?」

モバP「あのシンデレラプロジェクトと丁度同じくらいになりますかね」

美城「うん、シンデレラプロジェクトと同じ時期だ」

モバP「ご存知でしたか。私どものような部署にも目を向けて下さる」

モバP「さすがでございます」

美城「下手な世辞はやめなさい、悪い気はしないが」

モバP「えっへっへっへっへっへ」

美城「フ……」

モバP「えっへっへっへっへっへっへっへh」

美城「それにしても君の部署の業績はさっぱりだな」

モバP「あれ!?」

美城「シンデレラプロジェクトと比較…するまでもないな」

美城「CD売り上げ、イベント、映画、テレビ番組、CMへの出演含めたメディア露出」

美城「ほとんど成果をあげていないのは一体どういうことだ?」

モバP「しかし今日は生憎の天気ですね。これでは富士山が見えませんなあ」

美城「唐突な世間話で韜晦するのはやめたまえ」

モバP「なんて読むんですか?」

美城「とうかい。ごまかしたり、はぐらかしたりするという意味だ」

モバP「成程、いやあ博識でございますな」

モバP「大変、勉強になりました。では、失礼します」

美城「待て」

モバP「?」

美城「その『?』て顔腹立つ」

モバP「専務、お言葉遣いが」

美城「気を付けよう」

美城「というわけで君の部署は即刻廃止。所属アイドルは別部署へ異動、もしくは…」

モバP「待って」

美城「君には研修としてグアテマラに出向してもらう」

モバP「もう!!せっかち!」

美城「?」

モバP「あんまり急すぎて、承服いたしかねます」

美城「いいところだぞ、グアテマラ」

モバP「おっしゃいますが、グアテマラなんてうまいコーヒーとでっかい火山の国ですよ?」

モバP「それになんです研修って。向こうの芸能界なんて聞いたこともないですよ」

モバP「アイドルでなくてコーヒー豆育てろってか」

美城「うまい。グアテマランジョークか」

モバP「うわあ」

美城「では以上だ。南米は遠い。生水にはくれぐれも気を付けて」

モバP「あいや暫し!暫しお待ちを!」

美城「社会人どころか現代人でもないな」

モバP「各部署にはそれぞれ特色があり、他部署との単純な比較はできかねると思います」

モバP「その、業績が振るわないから即プロジェクト解体とは、いささか性急ではないかと」

モバP「ここは今しばらく様子を見てみましょう」

モバP「奴らには潜在的なポテンシャルが備わっていると確信しております」

美城「何故第三者目線なのだ。君はどの立場で話しているのだ」

美城「…今まではそのやり方でもよかったのだろうが、私が統括している現状は異なる」

美城「目に見える成果を、それもわが社に相応しいやり方で」

美城「君と、君のプロジェクトは、そういった私の要求をクリアしていない」

美城「…まあシンデレラの担当プロデューサーのように、自分のやり方を貫き通す者もいるが」

美城「彼は結果を残している。君は何も残していない」

モバP「……」


美城「君は、何も、残して、いない」

モバP「聞こえてますぅ」

モバP「ハン!シンデレラプロジェクトね!隣の芝ほど青くみえるもんですよ」

美城「その例えは適切ではないな。ふむ、そうだな……」

美城「整えられた我が家の庭の一角がひどく汚れている」

美城「さっさと片付けて完璧な庭にしたいと、誰でも思うだろう?」

モバP「専務んちのガーデニング事情はこちらの与り知る所ではございませんなあ」

美城「そうか。ではこちらからは以上だ。グアテマラでの活躍、期待している」

モバP「んもう!またそれ!!」

モバP「分かりました専務!グアテマラでもニカラグアでもどこでも行きましょう!」

モバP「しかし今しばらく猶予を私に下さい!」

モバP「必ずや専務のご期待に沿う結果を御覧に入れます!」

モバP「ああ見せますとも!」

モバP「私と、私が手塩にかけて育てたアイドルとそのプロジェクト!!」

モバP「…えと」

モバP「プ、『プロジェクトGS』がね!!!」

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向井拓海「……」

村上巴「……」

和久井留美「……」

関裕美「……」

松尾千鶴「……」

モバP「…そういうこと、で」

モバP「専務には、俺がガッツリ言ったから…」

モバP「君たち大事なアイドルを守るために…」

モバP「一番えらい人に、この俺がガッツリ言ったったから…」

千鶴「言い方が恩着せがましい」

拓海「オメーがわりいんじゃねえか」

裕美「私達、これからどうなっちゃうの?」

留美「良くも悪くも、彼の交渉で即解散は免れたみたいね」

裕美「よかったぁ」ホッ

巴「口ばっかり達者で足動かさん罰が当たったんじゃ。あほ」

アホP「…」ツン

巴「ひゃ!つっつくのやめんか!!」




346プロダクション 地下一階 とあるプロジェクトルーム

拓海「つーかなんだよ、『プロジェクトGS』って?アタシは聞いたことねーぞ」

裕美「うん…私も」

千鶴「初耳です」

モバP「…がんこう」

千鶴「は?」

モバP「…『眼光・鋭い』で、GS」

拓海「はあ!?なんだそりゃ」

モバP「皆のこと思い浮かべながら言ってるうちに」

モバP「閃いたプロジェクト名です…」


留美「…どうせ目つき悪いわよ、悪かったわね」

モバP「いや違います」


裕美「『目つき悪い』で『MW』だと言い辛いもんね…」

裕美「ごめんね、気を使わせちゃって…」

モバP「えー違うって」

千鶴「つまり悪口ってことじゃない、最低」

モバP「ちーがーいーまーすー」

巴「…」ツン

モバP「おうっ!つっつくなよお!!」

千鶴「遊んでないで」


拓海「……ったく、で、どーすんだ。これから?」

モバP「うん。とりあえず企画書作る」

モバP「留美さん、すんませんがコーヒー下さい」

留美「分かったわ」

モバP「諸君、今こそ団結して困難に臨まねばなりませんよ」

モバP「ピンチはチャンスです」

モバP「シンデレラやクローネに負けないプロジェクトにして専務を見返す」

モバP「すげー企画書つくっから。マジ。やべーぜ?」

モバP「っべー、マジべー、直木賞獲るよ?獲っちゃうよ?」

巴「あほじゃ」


モバP「そんな訳だから、皆は予定通りレッスンね。終わったら飯食いに行こうよ」

拓海「りょーかい。肉がいーな」

千鶴「この間食べたばっかりじゃないですか…」

巴「うちはパスタが食いたいのう……」

裕美「……いってきます、プロデューサーさん」

モバP「いってらっしゃい。頑張って」

裕美「……」

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346プロダクション レッスンルーム



裕美「はあ、はあ……ふう」

拓海「裕美、おつかれさん。ほい」

裕美「ありがとう…んく」

巴「ベテトレ姐さんのレッスンはしんどいのう…」

千鶴「そうだね。……でも、前と比べたらついていけるようになったかも」

拓海「しっかしはっきり言われたもんだよな」

巴「何がじゃ?」


拓海「アタシらが会社のお荷物ってことさ」

巴「ああ、そのことか」

千鶴「でもうちだけじゃないですから、解散になった部署」

巴「うちらはまだ解散しとらんぞ」

拓海「つっても、それこそシンデレラの連中並みに結果残さねえと駄目なんだろ?」

千鶴「……ハードル高そう、大丈夫かな…裕美ちゃん?」

裕美「んく、んく……ぷはっ」

拓海「いい飲みっぷりじゃねえか!」

裕美「へへ、まだまだレッスンあるもんね、バテてなんかいられないもん」

千鶴「裕美ちゃん……そうだね、頑張らないとね」

ベテラントレーナー「そろそろ休憩終わるぞー」

裕美「はーい!」

拓海「おっしゃあ!気合入れていくか!!」

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巴「いい汗かいたのう!」

拓海「飯いこーぜ」

千鶴「その前にシャワーです」

裕美「ふふ……あっ」

巴「どうした裕美……おう、ニュージェネじゃあ」

拓海「おお、シンデレラのやつらじゃねえか。おーい未央ー!」

本田未央「お、たくみーん!おつかれー。レッスン終わり?」


渋谷凛「お疲れさま、びしょびしょじゃない。ほっとくと風邪ひくよ」

島村卯月「お疲れさまですっ」

拓海「おお、これから皆で飯食いに行くんだ、おめーらもどうだ?」

巴「うちのプロデューサーのおごりじゃ」

凛「ふふ、そっちのプロデューサー、いっつもおごらされてない?」

千鶴「ご予定がなければいかがですか。無理にとは言いませんけど」

千鶴「……色々相談したいこともあるしね」

未央「相談?なになに?なんかあったの?」

千鶴「ハッ……いや、まあ、その」


卯月「お誘いは嬉しいんですけれど……」

凛「これから衣装の打ち合わせ。ごめんね」

拓海「なんだ、それじゃしょうがねえな」

裕美「新しい衣装…?」

卯月「はい、今度のライブでお披露目する新曲用なんですっ!」

千鶴「ライブ……」

拓海「新曲……」


巴「忙しそうじゃな、引き止めたらいかんかったかの?」

凛「大丈夫。ありがとう、巴ちゃん」

未央「今度また皆でご飯行こうね、お隣さん!」

拓海「お、おう。頑張れよー!」

千鶴「お疲れさまです…」

裕美「お疲れさまでーす……」

巴「……同じ地下暮らし出身とは思えんのう」

千鶴「なんだか、惨めな気持ちになってきた」

裕美「ち、千鶴さん……」

巴「さ、はようせんと本当に風邪ひいてしまうぞ」

拓海「へくしょいっ」

拓海「んで、何食いに行く?」


事務所近くのファミレス



拓海「リブロースステーキのセット、ライス大盛り!」

千鶴「……まぐろのたたき丼をお願いします」

裕美「シーフドパエリアのサラダセットを」

巴「カキフライ定食じゃ」

裕美「あれ?パスタは?」

巴「?」

裕美「?」

拓海「あと人数分のドリンクバーたのんます」

 「かしこまりましたあ。少々お待ちくださいませ」


巴「ほいじゃあちょっと行ってくるかの」

裕美「あ、巴ちゃん、私も行くよ」

拓海「じゃあ巴、アタシのコーラと千鶴の……」

千鶴「私は自分で取りに行くから大丈夫」

巴「さっきじゃんけんで決めたじゃろうが」

裕美「千鶴さん、座ってて」

千鶴「なんだか使い走りさせてるみたいで嫌なの」

巴「千鶴は必ずそう言うのお。律儀ちゅーか融通きかんちゅーか」

拓海「クソ真面目なヤツだぜ」

千鶴「じゃ、じゃあ……あったかいほうじ茶でお願いします」


 「……以上でご注文お揃いでしょうか?レシートこちらに失礼いたします」

拓海「あざっす!いただきます!!」

巴「いただきます」

千鶴「いただきます」

裕美「……あれ?なんか忘れてる」

裕美「……いただきます」

拓海「しっかし、未央たち、本当に売れてんだな」

千鶴「よく、テレビに出てる」

千鶴「シンデレラとクローネ、見ない日がないかも……」

巴「……」モグモグ


千鶴「……私たちも、あんな風になれるのかな……」

裕美「…なれるといいよね」

千鶴「……聞こえてた?独り言」

拓海「千鶴の独り言は聞き取りやすいんだよ」

千鶴「うう……恥ずかしい」

裕美「ふふ」

拓海「ははっ」

巴「……」モグモグ

拓海「巴、ゆっくり食えな」

巴「んぐ……わ、分かっとるわい」

千鶴「……ふふ」


 「いらっしゃいませー、二名様ですかー?」

裕美「あ」

千鶴「あ」

拓海「お」

巴「……」モグモグ

留美「……ひどいじゃない」

モバP「ひどいじゃない!」

拓海「やっべ忘れてた。わりーな姐御」

モバP「俺は」

千鶴「すみません留美さん、ここどうぞ」

留美「ありがとう」

モバP「俺は?」

裕美「わ、私店員さん呼ぶね」

モバP「んもう!」

巴「……」モグモグ


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モバP「うん、コーヒーは留美さんの方がおいしいな」

留美「嬉しいわね。毎日淹れてあげるわ」

拓海「姐御は今日もコイツのアシやらされてたのか」

巴「姐御もアイドルじゃぞ」

モバP「うちの部署にも千川さんみたいな人がいればなあ」

拓海「またシンデレラか」

巴「ないものねだりは見苦しいぞ」

モバP「だってえ」

留美「前職が役に立っているわ」

千鶴「でも留美さん昨日は普通のお仕事でしたよね」

留美「……ええ」

裕美「何のお仕事でしたっけ?」

留美「……結婚式の司会よ」

拓海「そいつぁひでえ!姐御に何させてやがんだテメー!」

モバP「仕事だもの」

巴「行き遅れ気にしとる姐御によその夫婦の世話さすたあ」

留美「巴ちゃん」

巴「アンタでりかしぃゆうもんが足らんぞ」

モバP「巴ちゃんに言われるとは」

留美「罪な人よ。責任はきっととって貰うわ」

千鶴「……目が笑ってないじゃない」


モバP「ちょこちょこ仕事はいれてるんだけどなあ」

拓海「先週は仕事一件だけだったぞ」

巴「うちも」

千鶴「私も」

裕美「私は……ひとつもなかった」

モバP「あれ?そうだっけ?」

裕美「プロデューサーさん……」ジッ

モバP「裕美……」ジッ

巴「みつめてごまかそうとしとるぞ」

拓海「馬鹿だねえ」

裕美「……///」ウツムキ

巴「ごまかせたぞ」

拓海「っかあ!裕美、おめーしっかりメンチ切れよ!」

裕美「め、メンチなんて切ってない!Pさん信じて大丈夫かな、って思っただけ」

モバP「信じて」

千鶴「図々しい」


巴「おう信じちゃるからしっかり企画書あげえよ!」

千鶴「もう出来たの?企画書」

モバP「そうねえ…」

モバP「うん。明日の提出には間に合うね」

千鶴「……提出物の期限はしっかり守れるタイプなんですね」

モバP「千鶴。独り言、聞こえちゃってるぞ」

千鶴「聞こえるように言ったの」

モバP「おやおや」

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モバP「それじゃ気をつけて帰ってね。寄り道しないように」

拓海「先公かよ……」

モバP「家に帰るまでがアイドルですからね」

巴「じゃあの、また明日」バイバイ

千鶴「お疲れさまでした」ペコ

留美「お疲れさま。また明日」ペコ

拓海「お疲れっしたー」バイバイ

裕美「お疲れさまでした」ペコ

モバP「お疲れ様でした」バイバイ

モバP「さてと……」

裕美「……」


346プロダクション 地下一階 とあるプロジェクトルーム


モバP「………」カタカタカタ

モバP「………………」カタ、カタカタ

モバP「………………………」カタカタカタ、ッターン!!

裕美「………」

裕美「…………………」

裕美「………………………」

モバP「………ふう、んんん~、ん!!??」

裕美「!?」

モバP「うわあああああああああ!」


裕美「ちょっ」

モバP「あああああああ!!」

裕美「プロデューサー、私、私!」

裕美「関です!!」

モバP「あああああ!!……あ、裕美か」

裕美「ご、ごめんね。そんなに驚くなんて」

モバP「ドアの外からガン飛ばされりゃあ誰だって」

裕美「と、飛ばしてないよ!見てただけだから!!」

モバP「それにしたってお前さん部屋にも入らずに」

モバP「いや違うな」

モバP「裕美、帰ってなかったんか?」


裕美「うん……」

モバP「なしてだべさ」

裕美「……す」

モバP「す?」

裕美「……少し、お話ししたいなって思って…」

モバP「あら可愛い」

裕美「もうっ、茶化さないでよっ」

モバP「ハハ、ごめんごめん。いいよ、話そう。そこ座って」

裕美「ごめんね、お仕事中に」

モバP「なんもなんも」


モバP「はい、コーヒー」

裕美「ありがとう」

モバP「……」

裕美「……」

モバP「どう、最近」

裕美「うん、まあまあ」

裕美「レッスンも頑張れてるし、皆とも仲良く出来てると思う」

裕美「お仕事はあんまりないけれど」

モバP「ごめんね」

裕美「ううん、別に……」

モバP「……」

裕美「……」


裕美「……えと」

モバP「うん」

裕美「お仕事は少ないけど……」

裕美「相変わらず笑顔はへたくそだし、出来ることより出来ないことの方が多いし」

裕美「こんな私がア、アイドルなんて……やってていいのかなって思う」

モバP「うん」

裕美「でも、一生懸命やりたいって思うの」

裕美「出来ること、精一杯…」

モバ「……」

裕美「……」


モバP「…ありがとう」

モバP「大丈夫だよ。君は輝いている」

モバP「今だって、俺の目の前でキラキラしてるよ」

裕美「…ホントに?」

モバP「俺には眩しいくらい」

裕美「……そうだと、嬉しいけど」

モバP「…このプロジェクト、成功するから」

モバP「そうしたらきっと分かるよ」

モバP「一緒に、頑張ろうな?」

裕美「……うん」

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モバP「…………」カタカタカタ・・・

ドア「コンコン」

モバP「裕美か?流石に遅いからもうけえんな……」

今西部長「お邪魔するよ。今西だ」

モバP「あ、部長、お疲れ様です」

今西「残業していると聞いてね」

モバP「慣れないことするから疲れてきましたね」

今西「……一服どうかな?」

モバP「お供します」


346プロダクション地下二階、喫煙スペース



今西「やれやれ、こんな片隅に追いやられて。喫煙者には辛い世の中だねえ」

モバP「ご尤も。時代の流れには逆らえませんね」

今西「やめるかね」

モバP「まさか。続けるにはそれなりに訳があるもんです」

今西「肩身はどんどん狭くなるがね」

モバP「周りが気になるなら、ハナッからやらなきゃいいんです」

今西「……君はやんちゃだな」

モバP「…いやあ」


今西「専務に呼び出されたそうじゃないか」

今西「残業も、そのせいかね」

モバP「ええ、まあ」

今西「……どうするのかね」

モバP「……お荷物ってのは、誰かが担いでいるからお荷物なんです」

モバP「価値がなければ荷物は手放される」

モバP「その値打ちってやつを、担ぎ手の皆さまにお見せしないと」

今西「お手並み拝見だね」

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346プロダクション、美城専務のオフィス


美城「……」ペラ

モバP「……」

美城「……」ペラ

モバP「……」

美城「……」ペラ

モバP「……」

美城「ふむ……」

美城「君の企画、読ませてもらった」

モバP「面白かったでしょう?」

美城「ふむ…そうだな」


美城「『昨今の情勢をかんがるうに』という箇所が面白かった」

モバP「『鑑みるに』の誤りです」

美城「『幻術的には』……忍者かな?」

モバP「『現実的には』」

美城「まて、その後が傑作だ」

美城「『このようなアンブロジーニが必要と考えます』」

美城「中盤に彼を置けば盤石なフォーメーションが築けるのか」

モバP「『アプローチ』!!」

美城「はっはっはっはっは」

モバP「揚げ足取りばっかり!」

美城「当たり前だ馬鹿者ッ!!貴様企画書もまともに書けんのかッ!!」

モバP「ヒッ!!」


美城「今すぐ荷物をまとめてグアテマラに飛べ!見送りはせんッ」

モバP「あああああ……」




美城「というのは冗談だが」

モバP「はい」

美城「眠気を誘う冗長な文章と支離滅裂といって差し支えない論理展開」

美城「時折差し挟まれる的外れな比喩暗喩」

美城「前後の文脈から辛うじて察さねばならぬほどの誤字脱字のオンパレード」

美城「というのは本当だ。初等教育からやり直すがいい」

モバP「お母さんが聞いたら泣くなあ……」


美城「で、ここからが本題です」

モバP「はい」



美城「この方針で結構だ。進めてみなさい」

美城「やれるものならな」

モバP「……ありがとうございます」

美城「残り少ない日本での時間を有意義に過ごすがいい」

モバP「そのつもりです」

美城「ふん、下がってよろしい」

モバP「つーん」

美城「なんだその態度は」

モバP「つんつんつーんだ」

ドア「バタン」

美城「……あれで30近いのだから恐ろしい世の中だ」


346プロダクション 地下一階 お荷物部署の部屋


モバP「…という訳でアホの専務からGoサインがでた」

モバP「いけるぞ」

モバP「プロジェクトPS」

巴「GS」
千鶴「GS」
拓海「GS」
裕美「GS」
留美「GS」

モバP「…プロジェクトGS、スタートですぅ!」ツンツンツンツン

巴「やっ、やめえ!あほぉ」

留美「それで、具体的にはどうするつもり?」

モバP「簡単です。俺が営業かけて仕事をとってくる」

モバP「各自がそれをこなして、評価を高める」

モバP「この繰り返しです」

千鶴「…随分当たり前の話じゃない?」

拓海「ああ、むしろなんで今までやってこなかったのか不思議だぜ」

拓海「まさかテメー、マジでサボってたんじゃねえだろうな」

モバP「過去を振り返る暇はありませんよ皆さん」

巴「なにふんぞり返っとるんじゃ、情けないのう」

>>44  柔らかい口調目指したらこうなっちゃった


モバP「まあこれからこれから」

モバP「というわけで走り始めたこのプロジェクト」

モバP「折角だから皆さんにお披露目したいと思うんだけど」

裕美「お披露目…?記者会見とか?」

モバP「いや、まずは身内の皆様に」

モバP「これから中庭のカフェでゲリラライブかまそうと思うんだ」

拓海「へえ」

留美「えっ」

千鶴「はっ?」

巴「げりららいぶゆうんは普通のと違うんか?」

裕美「え、えええっ!?」


モバP「決行は退勤時刻少し過ぎの17時30分。あと4時間ちょい」

千鶴「ちょ」

モバP「音源、照明、衣装はこちらで用意します」

拓海「何曲やれるんだ?」

モバP「一発バチッとかましてサッと逃げる」

巴「曲は?」

モバP「『Absolute NIne』でいきます、いかが?」

巴「うむ。少し練習しておきたいのう」

留美「巴ちゃんと拓海ちゃん、順応性高いわね」

千鶴「高すぎません!!?ちょっと待ってよプロデューサー!」

モバP「衣装合わせの時間は交渉次第で変わるからね」

千鶴「そうじゃなくって、コレって問題にならないの!?」

モバP「大丈夫。シンデレラんとこはカフェ不法占拠したんだし」

巴「ほうじゃったの」

拓海「ならライブくらいカワイイもんじゃねーか」

裕美「そっか…そうだね。大丈夫か」

千鶴「えぇ…」


モバP「身内だからファン相手じゃないがライブはライブ」

モバP「普段のレッスンの成果を存分に発揮できるぞ」

モバP「君達の実力を、見せつけてやろうよ」

拓海「やったろうじゃねえか」

巴「異存なしじゃ」

モバP「留美さん」

留美「……強引で、乱暴なやり方ね」

モバP「……」

留美「……でも貴方が決めたなら、私は従うわ」

留美「私は貴方のアイドルだものね。ふふ」


モバP「ありがとうございます」

モバP「…千鶴」

千鶴「……どうせ放っておいたって私達は解散させられちゃうもんね」

千鶴「やります。……こうなったらヤケなんだから」

モバP「よし。裕美は?」

裕美「うん……やる。上手く出来るか分からないけど」

裕美「やってみる」


モバP「皆、ありがとう。早速レッスンルームで曲合わせしましょう」

モバP「留美さん、仕切りを頼みます」

留美「貴方は?」

モバP「ゲリラ交渉してきます」

留美「了解したわ。ライブの配置は?」

モバP「扇の形で、1-2-2。フロント関、セカンド松尾村上、サード向井和久井で」

裕美「!!」

留美「…了解しました。じゃあ、皆、行きましょう」

拓海「おっしゃ!行こうぜッ」

巴「時間が惜しい、はよう行くぞ」

千鶴「あ、待って巴ちゃん」



裕美「私が…センター…」

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――――――――――
――――――――
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346プロダクション地下二階 喫煙スペース



モバP「……と、こんな感じでやりたいと思うんですが」

音楽制作P「お前にそそのかされたって言えばいい?」

映像制作P「『社内広報用ですから』」

映像P「って嘘つかれたって言っていい?」

衣装部門P「アタシも適当な嘘ついてアンタのせいにするわ」

モバP「それでいいです。いつもすいませんねえ」

音楽P「今日ヒマだし、たまにはこういう遊びもないとやってらんないしな」

映像P「責任とらずに好き勝手できるならそりゃやるわ」

衣装P「一つ貸しね。今度付き合いなさいよ」

モバP「よろしくお願いします」


346プロダクション 地下一階 お荷物部署


千鶴「戻りました……プロデューサー?」

モバP「……はい、はい。ありがとうございます」

モバP「急な申し出で大変申し訳ありませんが。いいえいいえ」

モバP「助かります、また、お詫びとお礼を兼ねて伺いますので」

モバP「はい、はい。それでは、はい、失礼いたします」カチャリ

留美「……」

千鶴「……」

モバP「……ああ、おかえり」

巴「なんじゃ電話中じゃったか」

モバP「うん。練習どうだった?」

拓海「まあ最近レッスンでよくやってた曲だしな。楽勝だぜ」

モバP「頼もしい」

巴「歌詞もバッチリじゃ」

モバP「素晴らしい」


留美「言われた通りの配置で練習しました」

モバP「ありがとうございます。見栄えするでしょ?あの並び」

留美「ええ……ただ」

モバP「?」


千鶴「裕美ちゃん、大丈夫?」

裕美「う、うん…はは、ごめんね…」

モバP「ガッチガチやないか」

巴「裕美はずっとあの調子じゃ」

留美「センターというのがプレッシャーみたいね」

モバP「あー、まあ、そうか」

モバP「うーん……よし!」

モバP「ちょっと休憩しよう。20分」


拓海「……おう、それじゃあなんか飲むモン買ってくるか」

留美「私も行くわ」

巴「うちも、千鶴は?」

千鶴「私は……」

モバP「これでコーヒー2つ買って来てちょうだい」ピラッ

千鶴「ん……分かりました」

ドア「ガチャ」

ドア「バタン」



モバP「……コーヒーでよかった?」

裕美「うん……ごめんね、プロデューサーさん」


裕美「緊張しちゃって、上手く、表情つくれないんだ…」

裕美「ダンスも、歌も全然…」

裕美「どうしよう…私のせいで失敗しちゃう…!」

モバP「…大丈夫だよ」

モバP「大丈夫。上手くやろうなんて考えなくていい」

裕美「でも…」

モバP「自分で言ったじゃないか、『今できる精一杯をやる』って」

モバP「それでいいんだ。いや」

モバP「それがいいから、裕美がセンターなんだ」

裕美「……」

モバP「大丈夫。信じて」

裕美「……自分を?」

モバP「……月並み?」

裕美「うん……普通だね」

モバP「いやあ」


裕美「…ふふ」

モバP「えっへっへっへっへ」

裕美「……ありがとう。うん、やってみる」

裕美「…違うね、うん、やってやる」


裕美「皆に、見てもらうんだ」

モバP「頼もしい」


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346プロダクション 社屋内



モバP「どーして女ってのは支度に時間がかかるのかしら!」ドタドタ

千鶴「休憩中にUNOなんか始めるからでしょ!」タッタッタッタ

モバP「もう音響は準備できてる。皆が揃ったら始めるよ!」ドタドタドタ

留美「この格好で走るの、辛いわね……色々」タッタッタ

巴「しゃあない、みんなUNOが悪いんじゃ」タッタッタ

裕美「はあ、はあ、ま、待って拓海さん」タッタッタッタ

拓海「早くしろよオメーら、皆帰っちまうぞ!」ブオオオン

未央「たっくみーん!」

拓海「ああ!?おう、未央じゃねえか」


未央「どーしたのそのカッコ!?なんで皆走ってるの!?」

拓海「説明は後だ、未央!オメーの仲間連れて中庭来いよ!」

拓海「面白れーもん見せてやっからさ、じゃな!」

未央「ちょちょ、ちょっと……」

巴「カチコミじゃああ」

千鶴「うう、恥ずかしい……」

モバP「はあ、はあ、はあ、はあ」

留美「頑張って」

裕美「未央ちゃん、絶対に見に来てねっ!」

未央「お、おう……」

ハヤクシロッテプロデューサー!
カチコミジャアアアアアア・・・・・


未央「……うーん何やら面白くなりそうな予感ですなあ」

未央「みんなも呼んで行ってみますか!」


346プロダクション、中庭カフェテラス


安部菜々「……さっきから向こうで何やってるんですかねえ」

多田李衣菜「スタッフさんが動いてる」

木村夏樹「なんか始まりそうだな。見ていこうぜ」

前川みく「……人が増えてきた気がするにゃ」

菜々「定時ですから、この時間は人通りが増えるんですよ」

みく「ふーん……あ、未央ちゃんからメールにゃ」

夏樹「あ、おいアレ拓海だ。ハハッ、すげーダッシュしてる。なんだアイツ」

李衣菜「あれ?お隣さん達じゃん」

菜々「うわあ、皆早いですねえ…あれステージ衣装じゃないですか!?」

みく「『これから中庭でなんかあるらしいよ(*'▽')』……?」


裕美「はあっはあっ…」

モバP「い、息整えながら、マ、ま、マイク、付けて……」

巴「まずっ、ワレがととのええやっ、はあ、はあ…」

千鶴「は、始める前からバテそう…」

留美「み、水、欲しいわね……」

拓海「マイクつけて貰うんだから俯いてんなよー」

モバP「たくみ、おまほん、たのもし…」

拓海「だらしねえなあ…してもよ、イイ感じじゃねえか」

裕美「な、何が…?」


拓海「人が集まってる。作戦通りだな」

巴「ふう…腕がなるのう」

留美「胸も高鳴るわ。色んな意味で」

千鶴「もう、やってやるわよっ」

裕美「出来ることを、精一杯…!」

映像P「モバP、いつでもいいぞ」

モバP「あざっす……あー久々ダッシュしたら気持ち悪くなってきた」

音楽P「じゃ、よろしく」

モバP「…よし、行こうか。いっちょかましてらっしゃい」

プロジェクトGS「「「「「ハイッ!」」」」」


社員A「おいなんか始まる」

社員B「なになに?」

社員C「嘘だろ?ゲリラライブだ」

社員D「社内でとか草生える」



未央「おー!間に合った!」

李衣菜「あ、みおちゃん」

凛「…一体なんなの、未央。急に呼び出したりして…」

卯月「わあっ…!」


美城「……」カツカツカツ・・・

今西「……」コツコツコツ・・・

武内P「……」コツコツ・・・

千川ちひろ「……あら?」

武内P「…千川さん?」

ちひろ「あれ、なんでしょう…?」

武内P「中庭で…ライブ…でしょうか?」

今西「んんん?あれは…」

美城「……」

今西「ほほお、彼が早速始めたようだね」

美城「……君」

武内P「はい」

美城「様子を見てきてくれ。ミーティングはその後だ」

武内P「…分かりました。失礼します」

今西「…いいのかね?」

美城「…よくはありませんよ」


ざわざわ…がやがや…

ア!プロデューサーサン!ドウシタンデスカ?
ヨウスヲミテクルヨウイワレマシテ・・・
ネエ、コレッテキョカトッテアルノ?
イエ・・・ワタシモクワシクハ・・・

がやがや…ざわざわ…

ゲリラライブ!?スッゴイロックジャン!
ウウ、ナンカムカシヲオモイダスニャア・・・

ざわ…ざわ…



裕美「……す~」

裕美「皆さんお疲れ様です!!プロジェクトGS、関裕美です!」

千鶴「松尾千鶴ですっ」

巴「村上巴じゃ」

留美「和久井留美です」

拓海「向井拓海!!」

裕美「ご迷惑おかけします。聞いてください!」



プロジェクトGS「「「「「『Absolute NIne』!!」」」」」





『未来に響かせて!勝ち取るのこの歌で!絶対!!』

    『掴めstarry star!』






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346プロダクション、中庭カフェ



菜々「いらっしゃいませっ!何になさいますか?」

拓海「うっす、コーラっす」

菜々「はーい」

夏樹「ようゲリラアイドル」

拓海「やめろよその呼び方……」

未央「仕方ないよたくみん、あんだけの騒ぎおこしちゃ」

拓海「…アタシは社内でやるだけって聞いてたんだよ」

拓海「それをよー、あのヤロー…」

未央「でもでも、カッコよかった!プロジェクトGS!」

未央「なんか…パワー貰えた気がする」

未央「私たちも、負けてらんないって!」

拓海「へへっ、そうか?」

夏樹「だりー、うっひょうひょ言ってたもんな」

李衣菜「い、言ってないよ!…2、3回だけだって!!」


346プロダクション 自販機コーナー前



城ケ崎莉嘉「でもでも、無許可でやったんでしょー?」

赤城みりあ「叱られたりしなかったの?」

巴「そうじゃな、専務に呼び出されたくらいじゃな」

莉嘉「それってやばくない!?」

巴「こう、皆で並ばされてのう」

巴「『以後、こうした行動は慎むよう気を付けたまえ』」キリッ

巴「これで終いじゃ」

みりあ「怒られなかったんだ。よかったねえ」

巴「おう」

莉嘉「プロデューサーが代わりに怒られたのかなあ?」

巴「大泣きして謝ったんじゃと」

みりあ「わあ…大人なのに泣くんだねえ」

莉嘉「えぇ…カッコ悪ーい」

巴「そうでもないぞ」


346プロダクション レッスンルーム



凛「話題独占だね」

卯月「素敵でしたよ、千鶴ちゃん」

千鶴「そ、そんな…皆さんに比べたらまだまだです」

凛「そんなことないよ、輝いてた。ね、卯月」

卯月「はいっ、凛ちゃん」

凛「それにしてもそっちのプロデューサー、すごいね」

千鶴「それはどうかな…」

凛「うちのプロデューサーが言ってた」

凛「『この流れは彼にとっては予想の範囲内だったでしょう』って」

千鶴「そうなのかな……だとしたら、嬉しいけれど」

千鶴「……プロデューサー、色々やってて」

千鶴「あの日も、クレームが来ないよう、近所に事前連絡してた」

千鶴「……すごいんだ、私のプロデューサー」

卯月「ふふ、千鶴ちゃんなんだか嬉しそうです」

凛「いい顔してるよ、千鶴」

千鶴「ハッ……うう、忘れて…」


都内 とある居酒屋



留美「…まさか映像をネットに流すなんてね」

川島瑞樹「社内の専用チャンネルジャックして、生中継もしてたのよ」

留美「正直そこまでは想定内だったわ、けど」

片桐早苗「直後に動画投稿サイトに配信」

瑞樹「かと思いきや数時間で動画を削除」

早苗「見た人間に何らかのハプニングを予感させるスキャンダラスな手法ね」

瑞樹「諸刃の剣だわ。大企業のやり方とは思えない」

早苗「そのギャップも相まって話題性は抜群」

瑞樹「作戦勝ちね」

留美「どうかしらね…」

高垣楓「私、あのときエントランスにいたんですけど…」

楓「モニターに、その様子が流されていて…」

楓「大画面の留美さんに、もう、ニタニタしてしまいました」

楓「ふふふ…」

留美「……」

瑞樹「……」

早苗「すいませーん、日本酒と生ビールお願いしまーす」


346プロダクション 地下一階 プロジェクトGSルーム



裕美「……」カチ、カチ

裕美「…………」カチ

裕美「………………」

ドア「バタン」

巴「おはよー」

裕美「!」

巴「おう裕美、早いのう」

裕美「お、おはよう、巴ちゃん」

巴「なんじゃパソコンなんか広げて…ははあ」

裕美「な、何…?」


巴「またこないだの映像みちょるんじゃろ。好きじゃなあ」

千鶴「おはようございます…何、裕美ちゃんまた見てるの?」

留美「おはよう、千鶴ちゃん、巴ちゃん」

巴「なんじゃ姐御おったんか、おはようございます」

留美「裕美ちゃんが一番乗りだけどね。はい、コーヒーどうぞ」

裕美「ありがとうございます」


拓海「うーっす、ってなんだアタシが最後か」

千鶴「ずーっと見てて飽きない?それ」

巴「拓海ギリギリじゃ」

拓海「寝坊しちまった」

裕美「なんだか、何回見ても、信じられなくて…」

留美「拓海ちゃんおはよう。みんなも何か飲む?コーヒーかお茶しかないけど」

拓海「いつもすまねえ姐御、コーヒーたのんます」

巴「うちはお茶がいい」

千鶴「私も手伝います」

留美「ありがとう」



拓海「……で、何が信じらんねーんだよ裕美?」

裕美「聞いてたの?」

巴「うちも拓海も地獄耳じゃ」


裕美「この映像…アイドルみたいだなって」

巴「何いうちょる、うちらはアイドルじゃろうが」

拓海「言いたいことは分かるぜ。テレビで見るアイドルみたいだよな」

巴「ちょっと見してみい」

巴「…この日、よく覚えちょらんけど、夕日がえらい綺麗だったんじゃな」

裕美「うん、照明も……」

拓海「眩しかったよな」

裕美「…皆も、とても素敵だった」


留美「何言ってるの裕美ちゃん、あなたもよ」

千鶴「コーヒーとお茶どうぞ」

裕美「そうかな…私、表情すっごい硬いよ」

拓海「いやでもキリッとしてて勇ましいぜ」

裕美「い、勇ましいってアイドルとしてどうなの」

千鶴「…それもプロデューサーの計算通りだったのかな」

巴「?どういうことじゃ?」

留美「笑顔を上手く作れないなら、作らないで済む曲目で勝負するってことかしら」

留美「『Absolute NIne』って、そういう曲だものね」

千鶴「他の部署の子達の感想だったり、ネットの評判とか見るとよくわかる」

千鶴「『格好いい』『綺麗』って」

千鶴「……自分でも信じられないけどね」



裕美「…私、出来ることを精一杯やるって、プロデューサーさんに約束した」

裕美「それでも成功するように、お膳立てしてくれたんだ…」

留美「……」

千鶴「……」

巴「……」

拓海「……」






拓海「……そうかあ?あのプロデューサーが?」

裕美「えっ」


拓海「どうせ行き当たりばったりがうまくいっただけだろ」

巴「うちも信じられん。だってあほじゃもん」

千鶴「ちゃらんぽらんを絵に描いたような人だし」

留美「裕美ちゃん、貴女彼を買い被りすぎよ」

裕美「…そうかな?」



裕美「…うん、そうかもね!」


拓海「…ハハッ」

留美「ふふふ」

巴「アハハハ」

千鶴「ふふふ」

裕美「ふふふ…」






裕美「…プロデューサーさん」

裕美「グアテマラで元気にやってるかなあ…」






ドア「ガッチャ!!バタン!」





モバP「いるよ!!ここにいるよッ!!」


巴「おおプロデューサー、おはよー」

拓海「朝からデケー声だすなよウルセーな」

モバP「だって皆がふざけるんだもん」

モバP「よりによって関ちゃんがふざけるんだもん!」

モバP「さも混乱の責任取って左遷させられたみたいな流れにしたんだもん!」

千鶴「子供みたいな喋り方しないで」

裕美「ふふ、ごめんね、プロデューサーさん」


留美「何言ってるの」

留美「貴方責任取りきってないわよ」

留美「始末書、報告書、関係各所への謝罪文……」

留美「まだまだたっぷり残っているわ」

モバP「もうお家に一週間帰ってないよお…」

モバP「キーボード叩きすぎて腱鞘炎になりそうだよお…」

拓海「弱音吐くなみっともない」

巴「シャキッとせい」


千鶴「…そろそろ始めますか?」

留美「そうね。プロデューサー君、今日の予定を」

モバP「…ゲリラ特需だ、今日も忙しいぞお」

モバP「今だけだと思えよ!」

千鶴「駄目でしょそれじゃ」



裕美「お仕事、一生懸命頑張るよ」

裕美「見ててね、プロデューサーさん!」





関裕美「お荷物部署?」 おしまい

お騒がせしました。どうもありがとうございます
依頼出してきます

皆さんありがとうございます
初投稿でした。とても怖かったけど楽しかったです

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