勇者「魔王城で働くことになった」 (40)

森林地帯



ここは、巨大な苔むした木々や植物が鬱蒼と茂るとした森林地帯。
魔物も多く、魔族でも人間でも入らないような環境のため、多くの人々からは死の森として恐れられている。


入ってこない人間もいない訳ではなく
根や植物などで荒い道を越えて歩き続ける、一人の旅人風の男がいた


「………」ガツッガシ



だが、その人間を、食料にするため
一匹の魔物が旅人風の男に向かって襲いかかって来た


「ウガアアアッ!」


茂みから飛び出してきた魔物は、その男を喰らおうとして飛びついた
長年生きていたこの魔物は、何度も人間も食らったことがあり、そのことと同じように考えていた。が



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1460552189


「ちっ」スッ

男は瞬時に腰に掛けてある拳銃に手をかけ、そして


バンッ!



どん、と破裂するような音が、森林に響き渡る。
勢いよく、一瞬だが、激しい音が鳴り響いた


「グォォッ!?」ドサッ


飛びかかった魔物の腹部から血が垂れ、そのまま崩れ落ちる。
何が起きたかわからないまま、魔物は絶命した…


「…はぁ」

「…そろそろ弾丸も少なくなってきたな」

「できれば無駄撃ちはしたくないんだがなあ」

男は銃を弄りながらため息をついた
できることなら銃ではなく剣を使った方がいいのだが、それでも剣はやり過ぎると刃がダメになる
様な硬度の甲殻もあるし、結局のところ拳銃で急所を打ち抜いた方が早いのだ。


「正直剣を振っていた方が楽しんだけどな」


ガシッ テクテク


「…ん。ようやく見えたか」

「意外と綺麗な城なんだな、魔王城」


彼の名前は勇者。
魔王を討伐し、世界を救う者…だった

魔王城


カツ カツ


勇者「…妙だな」

城に入ってから、何の音もせず、自分の足音だけが道に響き渡っている
窓から入ったとはいえ、誰かが入れば気づくだろうし、そもそも城なら兵とかもいるはずだろう


疑問に思いながら道を進んでいくと、大広間に出た。
大広間には何箇所かに花が飾ってあったりがあったりと


勇者「……とても魔族の城とは思えないな」


「そう?もっと恐ろしい物を想像していた?」

「一応住む分には綺麗な方がいいんじゃいの?

勇者「ああ、正直魔物の体内の様な__ッ!」

「あ、そんな怖がらなくていいよ」

勇者「…何者だ?」チャキ

「いや、見れば分かんない?」


俺は剣を構えながら、目の前の魔族と相対する
目を合わせるだけで心臓が鷲掴みされるようなこの感覚……


魔王「僕は魔王だよ」

勇者「ッッッ!」ブンッ

魔王「おっと、危ない危ない」パシン


勇者は魔王に向かって力いっぱい大剣を振り下ろす。
が、魔王に当たる直前で体に当たることなく弾かれてしまった


勇者「ナニ!?」

魔王「おいおい、いきなり剣を振り下ろさないでよ」

勇者「やかましいッ!」ダッ カチャリ


勇者は、魔王から飛び離れ腰に掛けていた
銃を取り、即座に弾を込める。
そのまま魔王に向かい、発砲した


バンッ バンッ バンッ


勇者「ちっ、弾丸でも無傷か」

魔王「おお、それが噂の拳銃とか言う奴か」

魔王「中々使い慣れているようだな」

勇者「結構訓練したんだよ」

魔王「ほう」


勇者(…にしても、銃弾が通らないのか)

勇者(単純に硬いというよりかは魔力的なものみたいなものだな)


勇者は考えていた。
魔王の銃弾をも防ぐ防御を切り崩すことを

だが、その考えは次の魔王の発言で崩れることになる


魔王「…なあ、勇者」

勇者「なんだ」

魔王「ちょっと頼みごとがあるんだが」

勇者「…なんだ、死ねとでも言うのか?」

魔王「ここで働いてほしいんだよ」


勇者「……は?」

魔王「いや、最近人少ないし兵も緩いし」

魔王「有能そうなお前が働いてくれれば便利だと思ったんだよ」

魔王「ちゃんと働けば、胡瓜も渡すしお前の国との連携や貿易面でもいろいろといいよ」


…何をいっているんだこいつは
殺そうとしている相手に向かっ交渉だと?

とりあえず次は魔法を試してみるか


魔王「あ、今の僕には何の攻撃も通じないからね」

勇者「チッ」スッ

勇者(だが、どうしてこいつは俺を働かせるなどと言うんだ?)

勇者(そもそも殺すぐらいこいつには簡単だろうに)

魔王「あ、なんか勘違いしているっぽいけど僕は君のことを見てのことだからね」

魔王「あんましらないんだったら今頃君は肉になって今日のご飯になってたよ」


顔が隠れていて表情は見えないが、嬉々としながらこんなことを話すあたり
やはり魔族なんだろうな


勇者「しかし魔王。いくら頭部を守るための兜でも外して話してくれないか?」

勇者「少し聞きずらい」

すみません
きゅうり→きゅうりょうでした

魔王「うーん、無理」

勇者「頭部が弱点なのか?」

魔王「……」


魔王が少し考え込むと、顔をあげて、こっちを見つめた


魔王「いや、そうじゃないよ。ただ恥ずかしいのさ」

勇者「なんだ?顔面ドクロ男なのか?」

魔王「そんなわけないよ。ただ、働く事を決めてくれないと見せてはあげないよ」

勇者「いや、和平がとれるとはいえ…」

勇者「大聖堂を裏切ることに…」

魔王「あーもー!じれったい!」

魔王「とりあえずこれでも見てバスッと決めなよ!」

勇者「えっと…」


魔王「ちょっとキツいけど給料はこれぐらいで…」ペラ

勇者「!?」

魔王「一応休日と有給に保険とかも…」ペラ

勇者「!!??」

魔王「あと保険とかが…」

勇者「………」

     ♪  ,,;⊂⊃;,、
     ♪    (・∀・∩)   カッパッパ♪
          【( ⊃ #)    ルンパッパ♪

           し'し'


     ♪    ,,;⊂⊃;,、

       ♪  (∩・∀・)   カッパキザクラ♪
           (# ⊂ )】    カッパッパ♪
           `J`J



       ♪  ,,;⊂⊃;,、
     ♪    (・∀・,,,)   ポンピリピン♪
        ((⊂#((⊂)】    ノンジャッタ♪

           し'し'


           カパァー...
     ♪    ,,;⊂⊃;,、
       ♪  (,,,-∀-)   チョーット♪
        ((と__つつ))  イーキモチー♪

勇者「…そんないい話にはには騙されないぞ」

魔王(あれ?おかしいな。転職したくなる本を読みふけってたのに」

勇者「やっぱ嘘じゃないか!詐欺師!」

魔王「あ、しまった声に出てた」

勇者「…やっぱりどうにかして殺す」チャキ


勇者は剣を再び構え、魔王に向かう
何度も切ればなんとかなると思ったのか、無駄な行動を始めた


魔王「無駄なことはやらないほうがいいのに。疲れるだけだよ」

勇者「でいっ!」ブンッ


魔王に向かって振り下ろした剣は、かすりもせず
明後日の方向に向かって飛んでいく。
振った剣が魔王に当りたくなさそうに、地面に落ちた。

勇者「…!?」


勇者は落ちた剣を見、驚き固まった
剣がすっぽ抜けたわけでもなく、しっかりと捉えたはずなのに
剣は向こうに飛んでいったのだ。


魔王「うーん、まだやる?銃弾を弾いて終わりだけど」

勇者「……なんだその魔法は」

魔王「魔法?君が刃をダメにしたくないから僕に当てないでくれたんじゃないの?」


魔王は勇者を馬鹿にするように笑う。
表情は見えないが、どう考えても馬鹿にした顔だと思わせるような声だ

勇者(どうやってもコイツに弾かれるのか…?)

勇者「くぅ、必ず倒してやる」

魔王「えー、諦めなよー。絶対勝てないよー」

勇者「うるさい。あとうざい」


魔王が勇者に向かって色々と言ってくる言葉を流しながら
もしかしたら殺せるかもしれない方法を模索し続ける。
しかしどう考えても弾かれて終わり。と結論が出てしまう


勇者「…なあ、早く死なないか?」

魔王「いやだよ。まだやることやれてないし」

勇者「じゃあさっさとやって死んでくれ。それか捕まってくれ」

魔王「無理。なんで普通に生きてる僕がそんな目に合わなきゃいけないんだよ」

勇者「なに?侵略してるくせに普通か?」

魔王「…まあ侵略っちゃあ侵略っぽいことやってるけど」

勇者「それにお前は普通じゃないだろ」

魔王「君も普通じゃないじゃないか」

勇者「そうだが、お前は異常だろ」

魔王「やめてよ傷つくな」

勇者「……しかしお前は不死身かなんかなのか?」

魔王「体術と魔法の合わせ技だよ。なんてことはないし僕は打たれ弱いよ」

勇者「なるほど。じゃあ常時発動ではなさそうだな」スッ

魔王「残念。常時発動だよ」

勇者「…ばけもの」

魔王「なんとでもいえ。それよりここで働かない?」


勇者「…いやだ。騙そうとしてたのにか?」

魔王「だからそれは少し盛っただけで、結構いい職場だと自負できるよ!」

勇者「…じゃあ侵略をやめろ」

魔王「あれは侵略じゃあ…まあいいや」

魔王「侵略ではないけど、どーせ止めるつもりだったし一人増えるならいいや」

勇者「え?」

魔王「じゃ、明日から働いてね」

魔王「食事は君でも食べれるようなものだから安心して」

勇者「ちょっと待て!お前そんな簡単に!」

魔王「だってどの道やめるつもりなら君を部下にした方がいいじゃないか」

勇者「というか俺はまだ決めてない…」

魔王「はいはい、ぐだぐだと言ってないでしばらく寝てればいいよ」スッ

ボギィ

魔王は勇者の後ろに回り込み勇者を軽く殴る。
血こそでない痛みだが、人間にとっては一撃で意識を奪うほどの痛みだった


魔王「_そうだ。部屋は_があいていたっけ」

魔王「おーい……ここに_」


薄れゆく意識の中、勇者はこれからと
故郷を思い、気を失った

___

今日はここまでです
遅れてすみません

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom