男「なにも、はじまらない」(182)


物語が始まることはない。


目指していた夢は、唐突に訪れた理不尽によって奪われた。

大切な人は、約束を裏切り、俺の前に姿を現さなかった。

……俺の全てはその時、何もかも失われた。

結局、俺の物語は始まる前に終わっていた。始まる事さえ許されなかった。

運命は抗えない物であり、ただ受け入れるしかない事を学んだ。

あの日から、俺は動き出せない。

あの時の感情が、俺を縛り付けている。


物語が始まることはない。既に物語は終わったのだから。

この感情を消すことができない限り、何も始まることはできないのだ。だから俺は……



なにも、はじまらない――



男(校舎の外では、運動部の声が響き渡り、中では吹奏楽や軽音楽……様々な音がこの部屋に届く)

男(けど、この空間はそれらの場所とは無縁だ。この部屋は外との関係が絶たれた、静かで……寂しい空間だからだ)

男(漫画研究部……。名ばかりは漫画を書いてそうな部活だ。……実際はただ漫画を読むだけの場所なんだけど)

男(ここはその部室。そして、部員は俺、たった一人。よって、2年生なのに俺が部長になっている)

男(1年前までは先輩達がいて……、あの時は心が楽だった。今以上に何も考えずに済んだからな)

男(先輩達のバカみたいな話を聞いてるだけで、心から笑えてる気がしたし、心地がよかった)


男(……今となっては、心を紛らわせてくれるのは先輩達が残していった漫画だけだ)


男(漫画は好きだ。小説と違って小難しい事を考えずに、物語に入り込める)

男(バカみたいな考えかもしれなけど、俺にはこれが一番だった)


男「そもそも、なんで俺は部活に入ったんだっけ……」


男(……たしか、先輩が俺の好きな漫画のコスプレしてて、それを眺めてたらいつの間にか入ってたんだっけか……)

男(なんとも信じられない理由だ。俺がサッカーを続けていればそんな事は……)


男「……やめよう。考えるだけ無駄だ」


男(……既に、終わったことだ)

~~~~




男「……いってきます」ガチャ…

男(今日も無為な生活が始まる。きっと、今日も何もせずに終わるだろう)

男(……と思っていたけど、どうやら今日は朝から運が無いようだ)

幼馴染「ぁ……」

男(……幼馴染)

男(これまでずっと家を出る時間をずらしてきたというのに、何で今日はこの時間に……)

幼馴染「……」

男「……」

幼馴染「……お、おはよう」

男「ああ」スタスタ

幼馴染「ぇ、ぁ……」

男(まぁ、偶然幼馴染と居合わせたことで何か起こるわけでもない……)

男(それでも彼女を避け続けるのには理由がある)


男(俺は、幼馴染に裏切られ、そして振られたからだ)


男(もう、彼女の近くにはいることはできない)



幼馴染「……男」

~~~~


―教室―



男「……」

友「よう、男。今日もお前のボサボサな髪と暗い顔は変わらねーな!」

友「髪も整えて、もうちょっと笑うようになればお前もモテると思うけどなー」

男「余計なお世話だ」

友「ふぅーん。あ、そうそう!9月ってことだから来月には文化祭だぞ!」

男「それがどうした?」

友「文化祭と言ったらライブ!ライブと言ったらバンド!バンドと言えば幼馴染さんだろ!」

男「は?」

友「あれ、男は去年の幼馴染さんのライブ見てないんだっけ?」

男「……見てないな」

友「じゃあ、あの歌声を聞いてないわけだな。お前、人生の8割は損してるぜ」

友「透き通った声に持ち前の容姿が相まって、それは神秘的な姿だった…」

友「なのにクラスでは誰にでも分け隔てなく明るく接してくれる……、まるで天使みたいな人だ」

男「へぇ……」ペラペラ

友「って、お前はまたそうやって漫画を読みだす…。まさか幼馴染さんの事どうとも思ってないのか?」

男「……そうだな」

友「マジかよお前……!あの幼馴染さんをどうとも思わないの!?男としてどうかと思うぞ!」

男「興味無いものは無いんだ。仕方ないだろ」

友「じゃ、じゃあ……ツンデレとかはどうだ?」

ツンデレ「……」

友「性格はかなりキツ目だけど、やはり欧米の血が入ってるだけあって、すんげぇ綺麗だろ思わねぇか?」

男「興味ないな」

友「じゃあ、委員長は?黒髪ロングであのプロポーション!そこから繰り出される妖艶な笑顔がたまらねぇだろ!?」

男「興味ない」

友「そ、それじゃあ……俺が隠れ推ししてる女さんを紹介するしかないな…!」

友「個性が際立つ、このクラスの美女達の中で一際異彩を放つ無個性!際立つものはないが全てにおいてレベルが高いのが女さんだ!」

男「知らないな」

友「マジで? ……実はお前ホモだろ」

男「そんなわけないだろ。クラスの女子に興味が無いなんて普通にあると思うけど」

友「それが、学年一可愛い子が集まったこのクラスであってもか?」

男「ああ。あると思う」

友「……やっぱりお前ってどこか変わってるよな。逆にお前の好みがどんなのかが知りたいぜ…」

「友ーー!」

友「……どうやら、お前の性癖チェックはここまでのようだな。次までには好みを決めておくんだな」

男「そうしておく」

友「漫画ばっか読んでるなよー!」

男「……余計なお世話だ」


男(本当、余計なお世話だ)

男(おかげで、思い出してしまった……過去の事を)

男(終わった物を思い返しても無駄なだけなんだ……。もう、戻ることはないから)

今回は暗めな話です。
前回同様、マイペースな更新になると思いますができるだけ早く更新できるように努力します…。

ということで今回はここまで。

NTRあるんならスレタイに書いてくれ。そんで幼馴染の設定無かったことにしてくれ

~~~~



男「……いってきます」ガチャ…


男(昨日みたいに幼馴染と遭遇しない様に、家を出る時間を少し早める)

男(早く着いて、時間があるようなら部室に行けばいい。あそこなら何かが起こることなんてないだろう)

男(何よりも大事なことは、他にあるからな……)


男(とりあえず、早く行こう。今日も1日、何も起こらなければいいと願うばかりだ)

~~~~


幼馴染「いってきまーす!」


幼馴染「……」キョロキョロ


幼馴染「……やっぱり駄目、か」

幼馴染(~~~!こんなことで落ち込んじゃ駄目だよ…!)

幼馴染(こんなんじゃ、また男に振り向いてもらえない)

幼馴染「頑張らなきゃ……」


幼馴染(……今日は何かが起こると良いな)

~~~~



男(つつがなく、今日も授業が終わった。部室で少し過ごしてから帰ろう)

男(……思えば、幼馴染が視界に入ることが多かったような)

男(……無いな。どこまで自意識過剰なんだ。幼馴染が俺に何かする訳がない)


「……」


男(あれは……誰だ?)


男(見たことも無い男が部室をずっと見つめている)

男(背も高く、顔もかなり整っている。これほど目立つ条件があるなら俺が知っていてもおかしく無いはずだ)

男(……なんとなく、嫌な予感がする。今日は部室に寄るのは止め――)


「君は……もしかして、ここの部員かな?」


男「あ、ああ。俺はここの部員だが」

「なら、丁度良かった。ちょっとこの部活の事を聞きたかったんだ」

男「は、はあ……」


「俺も漫画は好きなんだ。子供の頃から色んな本を読んできたよ」

「その、漫画を書くとはできないけれどな……。ここは漫画を書いたりする部活なんだろ?」

男「いや、特に活動内容は決まってない。何をするも自由だ」

「……そうか」

男「分かってもらえたならもういいだろう。じゃ、そろそろ俺は帰るんで……」スタスタ

「待ってくれ!」

男「……まだ何か?」

「学校中を案内してくれないか?」

男「……は?」

「実はもうすぐここに転校する予定なんだ。今日はできれば、転校前に校内の事を知れたらと思って……」

男「なら、職員室にでも行って教師に案内してもらえばいい。俺よりよっぽど良いと思うぞ」

「教師と生徒じゃ、見る目線が違うだろ?俺は勿論生徒になるんだから、同じ立場の意見を聞いておきたいんだ」

男「……それなら、適当に生徒会でも」

「……君じゃ、駄目なのか?」

男「……っ」


男(奴の力強く真っ直ぐな瞳に思わず、たじろいでしまった。この目は絶対に退かない、そういう目だ)

男「……分かった。だけど、俺もそこまで詳しくはないからな。そこら辺は理解してもらうから」

「ありがとう…。やっぱり君は思った通りの人だ」

男「……そうか」


男(こいつについて思うことはたくさんある。……その中でも第一に思うこと、それは――)


転校生「俺は転校生だ。君は?」


男(俺はお前が苦手だ。転校生)

~~~~



転校生「今日はありがとう。おかげで滞りなく学校に溶け込めそうだ」

男「あんまり情報は伝えてないけどな」

転校生「そんなことはない。俺が助かったと思ってるんだ。それでいいとは思わないか?」

男「……そうかもな」

転校生「今日は本当に助かった。また会ったら、その時はよろしく頼む」

男「……ああ」

転校生「……」

転校生「……君はとても優しい。けれど、とても不器用なんだな」


男「……え?」

転校生「それじゃあ、またな」

男「……」


男(あいつのあの容姿、性格ならばすぐに学校に溶け込むことができるだろう)

男(……その能力の高さ故に、俺は奴の事が嫌になってしまうだろうな)


男(あいつは、始めることができる)


男(きっと、俺は嫉妬してしまうだろう。奴の関わるもの全てに)

男(昔の自分を見ている様で、嫌になってくる)

男(何より、あいつの最後の言葉……。あれには何の意味が……)

男(とにかく、転校生と関わりを持つのは絶対に止そう。あいつのせいで迷惑を被るのは御免だからな)


男(……今日は、もう帰るか)



男(……校外にはいつも通り運動部の声が響き渡る。中では、吹奏楽や軽音楽、様々な音が俺に届く)


男(その中でも……幼馴染の歌声はいつもより、鮮明に聞こえた)

>>15
あんまり言えないですが、とりあえずその点については安心してもらって大丈夫です。

今回はここまで。

~~~~


ザワザワザワザワ……


転校生「転校生です。みんなと仲良くしたいので、誰でも気軽に話しかけてくれると嬉しいです」

転校生「よろしく、お願いします」


男(あれから数日後……奴はこの前言ったように、この学校に転校してきた)

男(……まさか、同じ学年でクラスも一緒になるとは思いもしなかったが)


「私はこのクラスの委員長をやっている者よ。どうぞよろしく」

転校生「へぇ、君が……。こちらこそ、よろしく」

「あ、あのっ……私は……」

転校生「ご、ごめん。ちょっと聞こえないからもうちょっとはっきり言ってもらえるといいな」ニコッ

「は、はうっ……」


「……フン」

男(クラス中の視線が転校生に注がれている。それもそうだろう。奴の容姿はそれだけの高さを誇っている)

男(加えてあの人当たりの良さだ。これで人の興味、関心を得ないわけがない)

男(転校生はその内クラスの中心になっていくだろう……。というわけで)


転校生「……君は」

男「……」

転校生「同じクラスだったのか……。あの時の縁と言い、君とは何かあるみたいだな」


男(お前みたいな人物は見ていて、そして関わっていると嫌になってくるから近寄ってほしくないんだが)ギロッ


転校生「ハハハ……そうキツイ顔をしないでほしい。とりあえず、これからも色々とお世話になると思う」

転校生「その時はまた、よろしく」


男「……ああ」

~~~~



男(……転校生は予定調和といった感じにクラスに馴染み、そして気づけば自他共に認める程に中心的な存在になっていた)

男(正直、ここまで早いとは思いもしなかった……。それにはきっと転校生の取り巻きの影響が関わっているに違いない)


ツンデレ「……それで、私のお弁当と」

委員長「……私の、弁当」


ツンデレ「どっちを食べるの!!」
委員長「どちらを食べるのかしら……!」

転校生「そ、それはだな……」


女「あ、あの、私のは……」

男(まるで漫画の主人公の様に、あいつの周りには人が集まる。それもクラスの羨望を一身に集めると言わんばかりに)

男(やはり、あいつは……)


友「キー!!何だよ、あいつ!転校生して一週間しか経ってないのにウチのクラス四大美女の三分の一を持ってきやがって!!」

男「それは、あいつは俺達と違って顔は抜群に良いし、性格だっていいからだろ」

友「た、確かにあいつは憎めない奴だけどよぉ……。でもなんか気に入らねぇ!」

友「頼むから幼馴染さんだけはあいつに擦り寄んないでくれよ……!」

男「……言った傍から転校生の方へ行ってるがな」

男(……)

幼馴染「はいはい、喧嘩はそこまで!ツンデレも委員長さんも少し落ち着いて」

幼馴染「……ほら、女もお弁当渡すならはっきり言わなきゃ」

女「あっ、う、うん……」

ツンデレ「わ、わるかったわよ……」

委員長「……すみません。私としたことが少し取り乱してしまったようね」

幼馴染「うん、反省してるならそれでよし!なら、みんなで楽しくご飯食べよー!」

転校生「あ、ありがとう……。おかけで助かったよ」

幼馴染「どういたしまして。転校生君も物事はっきり言わないと……」

男(幼馴染が何かを言おうとした瞬間……。幼馴染は俺の方へと顔を向けようと……)

男(いや、これは俺の勘違いだろう……)

幼馴染「……ご、ごめん。なんでもない。そ、それじゃあ!食べはじめよう?」

転校生「そ、そうだね……」


友「あー、やっぱり幼馴染さんってマジ天使だわー。あの二人を止められるのって幼馴染さんだけだよなー」

男「……ちなみに、あいつは転校生と食事をとっている事に関しては何も思わないのか?」

友「……転校生死すべしっ!!」



男(……奴はまるで物語の主人公の様で、充実した生活を送っている)

男(……その姿を見て、嫉妬と嫌悪の気持ちが出てくる俺は酷く、醜いのだろう。そう思った)

~~~~


―放課後―


男(転校生が来てからここ最近、心の中に嫌なモヤモヤができているような……)

男(転校生の存在。それは俺にとって悪であるには間違いないが……)

男(……見えない何か。俺の忘れた何かが、俺を掴んでいるような気がした)


男「……今日も読むか」


男(最近、クラスで変なラブコメを見せられてるせいで頭が痛い。漫画ですらそういうのを見ないのに……)

男(これからは昼食は部室でとるか……)

コンコン


男「……ん?」


男(うちの部活に訪問者……? ……どうせ顧問か、そこらだろ)


男「どうぞ」

ガチャ……


転校生「……やぁ」


男「……は?」


転校生「すごいな……。まさか、こんなに漫画があるなんて思いもしなかった」

男「うちに何の用だ?少なくともお前が近寄る様な場所では無いと思うが」

転校生「そんなことはない。言っただろ、俺だって漫画は好きだって」

男「そうじゃない。ここはお前みたいな"人物"が近寄る場所じゃないと言っている」

転校生「そんな。漫画が好きなだけな訳ないだろ? 実は――」




転校生「――俺も晴れて、漫画研究部の一員となったんだ」


男(……俺は数秒間、こいつの言っている意味がわからなかった)


男「……お前今なんて言った」

転校生「だから、俺も漫画研究部に入ったって」

転校生「入る部活に迷っていてな……その時、漫画研究部の話を聞いてな」

転校生「部員は男だけなんだろう?それじゃあ、ゆくゆくは廃部になってしまうだろう」

転校生「俺一人じゃあ、足しにはならないだろうけど……それでも少しは助けにはなると思う」

転校生「それにさっきも言ったとおり俺も漫画が好きだしな……。語り合うってのも楽しそうでいいだろ?」


男「……ねぇよ」

転校生「……え?」

男「お前なんて必要ねぇよ」

男「こっちは今までも一人でやってきたし、来年になってこの部活が廃部になったっていいんだよ」

男「俺は今のままで十分だ。だからお前の入る理由にはならない」

転校生「……」

男「だからもう帰れ……」


転校生「やっぱり、君は不器用だな」


男「……何が言いたい」


転校生「君がそう言うと思って、こっちはもう手を打ってある」

転校生「既にもう顧問の先生から許可は得たよ。だから、例え部長の君でも俺をどうにかすることはもうできないってことだ」

男「……はぁ」

男(こいつ……どこまで俺の事を……。もしかして幼馴染が――)

男(……いやいや、幼馴染が会って何日かのやつにそんな事をするはずがない。する、はずがない……」

男(と、とにかく。今はこいつをできるだけ遠ざけるかが大事だ)


男「……なら、一つだけ約束してもらう」


男「この空間を絶対に壊すな」

転校生「分かった。約束しよう」

男「あと、漫画読んでる時は必要以上に関わるな。俺は読むのに集中したいから」

転校生「それじゃあ、漫画で語り合う事ができないじゃないか」

男「だからそんなことする必要はねぇって――」


コンコン


転校生「……誰か来たみたいだな」


ガチャ……


「転校生が入った部活動というのはここでいいのかしら?」


男(……さすがにここまでは想定していなかった)


ツンデレ「うわっ、漫画ばっか……」

女「わわっ、すごい……」

委員長「……漫画研究部。ここはそういう名前で合ってるわね?えーと……」

転校生「彼は男だ。……同じクラスなのに覚えてないのか?」

ツンデレ「えっ、こんなヤツいた……?」

委員長「そうね。私も転校生に言われなければ分からなかったわ」


男(まさか、転校生の取り巻きまでもがこの空間に来ようとは、思ってもいなかった)

男(あと、存在を覚えられてないのは少々癪だな……。仕方ないといえば仕方ないと言えるのだが)

男「……それで、お前らはここに何しにきた。単なる冷やかしなら帰ってもらおうか」

転校生「そうだ。あんまり好奇心とかで迷惑をかけるのは良くない」


男(こいつ……)


ツンデレ「冷やかしなんかじゃないわよ!私達だってれっきとした部員となったのよ!」

男「は?」

委員長「勿論、顧問の許可は取り付けてあるわ。これで何の問題もないでしょう?」

女「あのっ、そのっ、よ、よろしくおねがいします!」

転校生「お、お前らなぁ……」


男(俺は今の光景が現実なのか信じられない。勿論、悪い意味で)

男(……落ち着け俺。今、キレたら不利になるのは俺だ……)

男(解決策を何か探そう……そうだな、まずは……)


男「ちょっと、俺顧問に一発入れてくるわ……」

転校生「ま、待て!もう顧問の先生に何を言おうが無駄だ!」

男「でも俺は顧問のジジイをやらないと気が済まねぇ……!」

転校生「落ち着け男!これで、廃部の可能性もゼロになったんだし悪い事は何もないだろう!?」

男(お前が来てから、悪いことしか続いてないんだが)


ツンデレ「そうよ!もう私達の入部を認めるしか無いのよ!」

転校生「ちょっ、ツンデレ……」

委員長「私達は何も間違った事はしていない。むしろ廃部を止める為には必要なのよ?」

委員長「それで、どうして文句が出るのかしら」

男(てめぇらが転校生目的で来てるのが丸分かりだからに決まってんだろ!!)

女「あ、あわわわわわっ」

転校生「とりあえず、この場は認めてくれ!三人は俺がなんとかするから!」


男「……はぁ。分かった。もう、転校生とイチャつくなりなんでもしろよ」

転校生「ちょ、男……!」

男「その代わり、この部室……空間を崩した時には覚悟してもらう」

委員長「……何だか、癪に触るけど仕方無いわね」

ツンデレ「そ、そうよ!転校生とイチャつくなんて……」ゴニョゴニョ


男(……今まで頭が痛くなる気しかしない……俺の学校の中での居場所はどうなってしまうのか……)

男(そして、俺はこのクソみたいな光景を間近で見なきゃならないのか……)

男(……本当に、頭が痛い)

~~~~



幼馴染「えっ?女、漫画研究部に入ったの?」

女「う、うん。ツンデレちゃんも委員長さんも一緒に……」

幼馴染「それって……転校生君が入ったから?」

女「~~~~~~」カァァ

幼馴染「あー、またそうやってすぐ赤くなるんだから……。かわいいなぁ女は」

幼馴染「……そっかぁ。漫画研究部に、か」

女「……?」

幼馴染「……そうだ、私もたまには遊びに行くよ!」

女「で、でも……、部長、結構厳しいからあんまりオススメは……」

幼馴染「部長って……男?」

女「男……?」

幼馴染「あ、あぁ。ごめんごめん。クラスの男君の事」

女「その人が部長だよ」

幼馴染「……へぇ。そうなんだね」

幼馴染「暇を見つけて行くから、その時はよろしくね」

女「うん……!」

~~~~



転校生「……」

転校生(男が学校を案内した時に唯一、来てない場所……)

転校生(放課後に響く音の中で最も魅力的な声が聞こえる場所……)

転校生「……ここか」

転校生(……第三音楽室。校舎の端にあるこの教室では、なんでも軽音楽部が練習しているらしい)

転校生(あの声は……誰が、響かせているのだろうか……)ガララ








幼馴染「―――」





転校生「」











幼馴染「――あれ?転校生君?どうしたのこんな所で」

転校生「…………あ、いや、ちょっと……」

幼馴染「最近、部活に入ったんだってね。漫画研究部」

転校生「あ、うん」

幼馴染「どうしたの?さっきから歯切れ悪いけど……」ノゾキミ

転校生「なんでもないよ……。ぶ、部活と言えば幼馴染は軽音楽部なんだっけ?」


幼馴染「そうだよ。さっきも文化祭でやる歌の練習してたんだー」

幼馴染「まだ私だけしか来てないから、一人で歌ってたんだけどね」

転校生「そ、そうか……。その、すごく……上手かったよ」

幼馴染「そう?例え、お世辞でも嬉しいよ」

転校生「お世辞なんかじゃない!本当にそう思った!」

幼馴染「え、あ……そ、そう?う、うれしいな……」

転校生「……また聞きにくるかもしれない」

幼馴染「うん、またいつでもおいで。私も、その内そっちの部室に遊びにいくから」

転校生「それをうちの部長が許すか、わからないけどな……」

幼馴染「……」

転校生「あ、部長っていうのは同じクラスの男の事で……ちょっと厳しいやつなんだ」

転校生「でも、幼馴染がそう言ってくれるなら俺も部長を何とか説得するよ」

幼馴染「……うん、ありがと。……どうやら、部活のみんな来たみたいだから練習に戻るね」

転校生「練習中に突然すまなかった。文化祭が今から楽しみだよ」

幼馴染「私もその期待に答えられるように頑張るよ。それじゃあ、また明日」

転校生「ああ。また明日……」




転校生「……」


転校生「男、お前はどうしてここだけを……」

怒涛の大量更新(?)…。


今回はここまで。

友「キー!!何だよ、あいつ!転校生して一週間しか経ってないのにウチのクラス四大美女の三分の一を持ってきやがって!!」

友「キー!!何だよ、あいつ!転校生して一週間しか経ってないのにウチのクラス四大美女の内、三人も持ってきやがって!!」

―――――

―――





男「……あれは」

「あれ、もしかしてそこの君! この格好が何か分かるのか?」

男「えと、ま、まぁ……」

「本当か!? なら、ぜひ漫画研究部に入ろう!というか、もう入部届出そうか!」

男「えっ、ちょ!待って――」


~~~~


男「……」

「……男。またお前はボーッとして何を考えてるんだ」

男「あ、すいません。つい……」

「そんなにあいつの話つまらなかったか?」

男「いや……凄く面白かったです」

「だったら、そのしかめっ面を笑顔にしないとな」グイッ

男「ひょっ、へ、へんぱい……」

「面白いと思ったら、思いっきり笑え。腹の底からどかっとな」

「そうしたら、お前の今考えてる嫌のことも少しは和らぐと思うぜ」

男「……はいっ」

~~~~


「これで、この部も男だけになるのか……」

男「そう、ですね」

「入学した時のお前は抜け殻みたいなヤツだったからな……ホント、苦労した」

男「……すいません」

「そう謝るなって。今のお前なら、前のお前よりかは少しは良くなってるはずだ」

「だから、あんまり悲観するなって」

男「……」

「……最後に、一つだけ」

「人は生きている以上、挫折するのは当たり前だ。挫折に挑戦し続け……乗り越えてこそ人は強くなれる」


男「それって……」

「ああ。アレの最終話の台詞」

「……まぁ、俺はあんまりそうだとは思わない。挫折があまりにも大きくて、乗り越えられそうにない。……そんな時には休んだっていいと思う」

「男。お前にとってこの部室は、壁を乗り越えるまでの休憩地点、お前の居場所だ」

「お前が挫折を越えられるまでここで休め。けど、いつまでもここにいるんじゃダメだ」

「いつかは、乗り越えろ」

男「……はい」


男「今までありがとうございました、先輩。……そして」

男「卒業おめでとうございます」



―――

―――――




男(……はぁ。今日も、あいつらは来るんだよな……)

男(もう、部室にも行かなくても――)

男(……駄目だな。最近こんな事ばかり、考えてしまう)

男(この場所だけは守っていかないといけない……)ガチャ…


ツンデレ「キーッ! もう一回よ!」

委員長「これで何回目だと思ってるの?私に勝てるとでも思ってるのかしら?」

ツンデレ「あんたに勝って、絶対に転校生に弁当渡す権利をもらうんだから……!」

転校生「おい、何で勝手に俺の弁当を渡すことが決まっているんだ……」

女「わ、わたしは……」


男(あー、駄目だ。もう帰りたくなってきた)

男(最近では、ボードゲームやらティーセットやらを持ち込んできている。ここ数日であいつらの私物が大分増えたと思う)

男(正直、これはこれでキレそうなんだが……)

ツンデレ「あっ」

委員長「……チェックメイト」

ツンデレ「ああ、ああああああああ!!」


男(それでもって、騒がし過ぎる。まるで俺がいないかの様に騒ぐから、余計に腹が立つ)

男(注意すると、注意したらで取り巻きが文句を言ってきて、転校生は俺をなんとか説得しようとしてくる)

男(このやり取りが何回かやっていく内になんかバカバカしくなってきたから、もう何も言わなくなった)

男(仕方なく音楽プレーヤーで騒音を遮断するしか無い。俺は放課後の校舎に響く、あの音が好きだったのに……)


男(……問題はまだある)


幼馴染「……おーっ、今日はチェスやってるんだ。どれどれ?」


男(幼馴染までもが、この部室に出入りするようになった)


転校生「ツンデレが持ち込んできたんだけど……思いの外、委員長が強すぎて」

ツンデレ「あー!くやしー!」

委員長「……フン。これも頭脳の差よ」

幼馴染「んー、私もやってみたいなー」

男(きっと、幼馴染も転校生目当てなのだろう)

男(あいつは俺を裏切ったのにもかかわらず、よくこんなに堂々としていられるもんだな)

男(まぁ、つまりは最初から俺の事など、どうでもいいと思っていたんだろう)


男(……情けないな。勝手に一人で思い込んで、勘違いして……)


幼馴染「じゃ、じゃあ……私は、お、男君と……」

転校生「男は今、読書に集中してるから、代わりに俺が相手するよ」

転校生「……男は漫画を読んでいるのを邪魔されると怒るからな」

ツンデレ「そうよ。あんなヤツの相手なんてする必要ないわ」

幼馴染「……」


女「お、幼馴染ちゃん……?ど、どうしたの……?」

幼馴染「あ、いや、なんでもない!じゃあ、転校生君、やろっか」

転校生「ああ。お手柔らかに頼むよ」

幼馴染「フフン、手加減なんかしないからねー」


男(ホント、馬鹿だな。俺は)



幼馴染「……」

男「…そろそろかな…」カチャッ、チャキッ

ピーン ポーン パーン ・・・

男「……行くか」

ガチャッ


ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!


男「!?」

女「ちゃんと準備は出来たかしら」

男「いや待って」

女「え?」

男「この観客の数は何なんだよ」

女「私に聞かないでよ…」


~~~~




男(……転校生達が入部してからしばらくが経った)

男(奴らの部室での傍若無人な態度に頭を悩ませながらも、なんとか俺はまだ耐えている)

男(どうせ転校生がだれかとくっつけば、その内に取り巻きも自然に崩壊するだろうからな……)

男(まぁ、今はそれどころじゃないんだがな)

転校生「それで……俺達は漫画研究部として文化祭で何かしたいと考えているんだ」

男(……文化祭が近くなった事で、学校中が騒がしくなってきた今、こいつらが例外的に騒がないわけがなく)

男「だから、漫画研究部は去年も一昨年も、その前も文化祭では何もやってこなかった。今年もそれに従うつもりだ」

男(文化祭で何かをする。こいつらはそう提案してきた)

男(……文化祭と言えば、男女の仲を近づける絶好の機会だからな。取り巻きが食いつかないはずがない)

男(しかし、漫画研究部は伝統と言うか、決まり事なのかよくわからないが、文化祭では何もやらないのが当たり前となっていた)

男(俺は今年もその伝統に従うつもりだ。今年だけ例外にするつもりはさらさらないし、何よりめんどくさい)

転校生「そこは……なんとかならないのか?」

男「ならない。別にここでやる必要なんかないだろ」

委員長「本当、融通の利かない嫌な男ね……」ボソッ

男「お前らがなんと言おうと、俺の意見を変えるつもりなんてないからな」

ツンデレ「チッ、このド腐れ野郎……」

男「じゃあ、もうこの話し合いはいいな。今日、俺は用事があるから早く帰る」

男「だから、転校生戸締まりは頼んだ」

転校生「……ああ」

男「……」ギィィ


バタン……



ツンデレ「……ホント、あいつムカつくわね……!」

委員長「ああいう男、本当に嫌いなのよね……」

転校生「おいおい、そんなに悪口言ってやるな。男にだって相応の考えが……」

委員長「そんなの別にどうだっていいわ。私達の貴重な高校三年間のイベントをあんなヤツに潰されるなんて、本当に嫌」

ツンデレ「……私も、あんたの意見に賛成だわ」

女「……な、なんとかならないのかなぁ……」

転校生「……」


転校生「俺達だけで、やろう」


~~~~



幼馴染(はぁ……。何だか男の所に行くのにも、無駄な気がしてきた……)

幼馴染(どうにかして男に近づこうとしても、うまくいかない……。ましてや転校生君が邪魔をしている様にも思える)

幼馴染(どうすれば良いんだろ……。そういえば、男はなんで、今部活があんな状況なのに辞めたりしないんだろ……)

幼馴染(……きっと、あの空間に大切な何かがあるんだよね。私達の手出しができないものがあるんだ)


幼馴染(……さて、と。今日も頑張ろう……)


幼馴染(男と、また一緒に……)ガチャ……


幼馴染「……え?」

転校生「あっ、幼馴染。いい所に!ちょっと手伝ってくれないか?」


幼馴染「……これは何をしているの」

委員長「文化祭に向けての準備よ。色々と散らかってたし、ついでに私達の良いように変えてしまおうと思って」

ツンデレ「今まではなんか、殺風景だなーと思ってたし、ちょうどいいかな」

女「わ、わたしは前の部室も結構好きだったけど……」

幼馴染「男の許可は……取ったの?」

転校生「……実はこれはサプライズなんだ。きっと、男も喜んでくれると思う」

転校生「だから、幼馴染も――」



幼馴染「――今すぐ、やめて」


転校生「……ど、どうしたんだ、幼馴染。今何を……」

幼馴染「男がこんな事、望んでいるわけがない!男は何よりもこの空間を大事にしていたはず……」

幼馴染「男は何をされようが部活に行くことを止めなかった。それがきっと何よりの証拠」

幼馴染「あなた達に、いくら自分の居場所を壊されても、大事な物だけは守ろうとしていたのに……!」


委員長「あの人がどう思うと関係ない。これは私達、部員の大多数の意見によって決められたこと」

委員長「あの人の思い出なんて……関係ない」

ツンデレ「大体、あいつの肩を持つなんて幼馴染も間違ってる。悪いのはあいつなんだから」


幼馴染「ふざけないで――」



「――おい」


幼馴染「……!」



男「……これは、どういうことだ?」

今回はここまで。

男(俺の目の前に広がっている光景は、先輩達と過ごしてきた場所とは大きく変わっていて……)

男(俺の唯一の居場所とはあまりにも、違いすぎていた)


男(こいつらは、壊した。俺の大切な空間を……)


男「誰か説明しろ……。なんでここまで変わっているのかを……」

男「この場所を壊した理由を言え……!」


転校生「……文化祭の為だ」

男「文化祭……?俺は言ったよな、何もやらないと」

転校生「ああ。君はやらないと言った。……しかし、俺達は決めた。文化祭の思い出を作ることを」

転校生「何も言わずに進めてしまったことは悪いと思っている。けれど、これも男。君のためでもある」


転校生「君に……少しでも変化があればいいと」


幼馴染「……!」



転校生「男。君は変わることを恐れている」

男「……っ。そんなわけないだろ」

転校生「いや、それは君の強がりだ」

男「……」


転校生「最初から違和感があった……。初めて学校に来た時、男が学校案内したあの時から」

転校生「距離を感じた。歩み寄ろうとしても、いつの間にか遠ざけられている……。そんな気がしてた」

転校生「俺は最初、それが男が俺に配慮しているのかと思ったが……どうやら違ったようだ」

男「……ああ、そうだな。俺はお前に配慮なんざしてない」

男「ただ一つ……、お前の存在がとてつもなく鬱陶しいだけだったな」

ツンデレ「っ!あんた……!」

転校生「落ち着いてくれツンデレ。……これは仕方ないことなんだ」

ツンデレ「……チッ」

転校生「……やはりそうか、男。……だから君は、俺達を拒みつづけたんだろう」

転校生「俺は、常に変わることを考えてきた。その時、その場所で、常に色んな表情を見せていくことを」

転校生「俺が変わることで、みんなが楽しくて、幸せなら、それで良いと思ってきた」

転校生「……そんな人生の中で、君の存在だけが違っていた。だから、俺は君に歩み寄ることを決めた」

転校生「でないと、今までの俺が否定されていくような気がするからな……」

男「それはお前の自己満だ。お前の価値観を勝手に俺に押し付けんな」

男「人には人の見方があるだろ。だから、お前のその気遣いはただ迷惑なだけなんだよ」


転校生「……本当にそうだろうか。変化のない日々というのはとても辛いものだと俺は思う」

転校生「君のしていることには……希望が見えない。負の感情しか生まれてこない」

転校生「俺を拒み、俺の友達を拒み、居場所を変化させることを拒み……。それで、何がいいんだ?」


転校生「――それで、なにかがはじまるのか?」


男「……うるせぇよ」


男「さっきから、分かった様な口で説教を垂れてるようだが、お前の言葉は何一つ響いてない」

男「お前の存在自体が俺にとって悪だ。お前の様な存在が、俺を歪ませる」


男「……出て行け、今すぐに。その女共、全員引き連れてな」

男「言ったはずだ。俺は、この空間を壊すなと。……その条件も守れないぐらいでお前らはここにいる資格なんてない」

男「お前の思惑も行動も、何もかも全て。俺にとっては無駄であり、邪魔だ」

幼馴染「……」

委員長「……あなたの言っている事は間違っているわ。この場合出て行くのはあなたよ、ゲス男」

男「は?」

委員長「部長といえども絶対的な権力を持っているわけでもないのに、あなたの一存だけで私達の行動を縛られるわけ? ありえない」

委員長「部の方針は部員全員で決めるべき事……。この場合、逆らっているのはあなたの方よ」

委員長「出て行きなさい。そして、もう二度と姿を現さないで」

男「……お前、頭大丈夫か?俺の言ったこと理解できていないのか?」

男「お前らは、俺の言った条件を破った時点で終わりなんだよ」

男「俺がてめぇらのクソみてぇなやりとりを黙認する代わりに、空間を壊すなと言ったのを理解できてないのか?」


委員長「……そんなの、認められるわけが――」

転校生「……もういいよ、委員長」

委員長「なんで?これだけ、馬鹿にされてるのに、悪いのはアイツなのに」

ツンデレ「そうよ!さっきから、わけわかんない事言ってるのはあっちよ!」

転校生「……悪いのは、俺達だ。男の条件を破ったのは事実だからな」

委員長「けれど……」

転校生「やめよう。……もう無駄なんだ」


転校生「残念だよ……。君は、分かってくれなくて」


男「……出て行け」

ツンデレ「クソ野郎……」

委員長「……最低な男」

女「……」

ギィィ



転校生「……君はやはり、不器用だ」

男「……」

バタン…



男「……」


男「……お前は、どうしてまだここに残っている、幼馴染……」


幼馴染「……」


男「どうして、一番いて欲しい時にいてくれなくて……一番いてほしくない時にいるんだよ……!」

幼馴染「今の男を一人させるわけにはいかないから……」


幼馴染「こんな状態の男を一人にできないよっ……!」


男「……そんな事が言えるなら、なんであの日、試合を見に来てくれなかったんだ」


男「どうして、あの日、俺を裏切ったんだ……!!」


男「俺はあの日が全てだったんだよぉ!!」

今回はここまで。










―――――


―――



























―2年前―











pppppppp


男「……ん」pi

男「ふぁ~……。よしっ!」


男(さてと、今日もランニングっと……」


男(一週間後に控えた試合……。この試合に勝てば、全国大会への切符を手にすることができる)

男(全国大会……。俺がずっと目標にしてきた場所)

男(努力、そして夢の為なら……俺は努力を惜しまない)

男「……やるぞ、必ず俺は……!」

チュンチュン


男「……」

「男ー、今日もこんな朝から自主トレ?」

男「幼馴染、お前また……。俺につられて早起きしなくていいって」

幼馴染「いいの。男のいつも頑張ってる姿を見てると、こっちも応援せずにはいられないからねー!」

男「けど、昨日も遅くまで、親父さんと歌の練習してたんだろ?」

幼馴染「あーそれは……。まぁ、大丈夫だって!とりあえず、今日もいつもの時間にね?」

男「ああ。それじゃ、いってくる!」

幼馴染「うん、がんばって」ニコッ

男(幼馴染。俺の家の隣に住む同い年の少女。まぁ、なんていうか……幼馴染みってやつだ)

男(両親が音楽関係の仕事に就いていて、その影響で幼馴染は小さい頃から様々な楽器に触れてきている)

男(だから、一般的な楽器はあらかた演奏することができる。そして、何より幼馴染は歌唱力が高い)

男(生まれ持った才能もあるだろうが、最近では親と練習してることもあって、さらに力を伸ばしている)

男(そんな幼馴染の歌を聞くのがサッカー以外での一番の楽しみでもあり、その時間はとても大切なものだ)

男(幼馴染の歌を聞いてると活力に溢れて、俺を後押ししてくれる。……そして、何かが始まる。そんな気がするんだ)

男(それ程にあいつの歌は人の心を動かす力を持っている。だから、俺は幼馴染の歌が好きだ)

男(……歌だけじゃなく、幼馴染のことも好きなんだけどな……)


男「……はっ!トレーニング中にまた俺は……」


男(でも、この気持ちにもいつか決着をつけなきゃな。……よし、決めた……)

男(次の試合に勝ったら、俺は……!)


男「……」ギュッ

男「よっしゃー!!やるぜぇー!!」

~~~~


タッタッタッ


男「すまん、ちょっと遅れた」


幼馴染「せいぜい数分でしょ。気にしてないって」

男「……さんきゅ。じゃあ、学校行こうぜ」



幼馴染「一週間後には全国大会を懸けた大事な試合なのに、よくやるよ」

幼馴染「あんまり無理して怪我たらダメだよ……?」

男「そこには一番気を使ってるから大丈夫だ」

男「……三年間ずっと続けてきたからこそ、今やめるとどうにも体がなまりそうな感じがするんだ」

男「まぁ、流石に試合の何日か前にはしないけど」

幼馴染「男がそういうなら……。本当に今年こそは行かないとね、全国大会」

男「ああ……」

幼馴染「エースの活躍に期待だね……。ね、男?」

男「だから、俺はエースなんかじゃ」

幼馴染「だって男ってばずっと10番つけてきて、今までも大活躍だったでしょ」

幼馴染「それに……私の中の一番は男、だから……」

男「」カァァ

幼馴染「な、なんちゃって!?」

男「い、いきなり、何を言い出すかと思えば……」

幼馴染「え、えへへ……」

男「……」

幼馴染「……」


男「……聞いてくれ、幼馴染」

男「今日、伝えておきたいことがあるんだ」

男「練習終わったら連絡する。そしたら俺の部屋に来てくれ」


幼馴染「……わかった」

~~~~


ガチャ……


幼馴染「……おつかれ。はい、スポドリ」ポイッ

男「おっと、いつも悪いな。なんかもらってばかりで」

幼馴染「これも幼馴染さんのありがたい施しだよー。大事に飲むんだよー」

男「幼馴染の施しには感謝してるよ……。本当に」

幼馴染「……」

男「……」


幼馴染「それで……伝えておきたいことって、何……?」

男「ああ……。じゃ、じゃあ……言うぞ……?」

幼馴染「……う、うん」

男「すー……はー……」

幼馴染「……」


男「今度の試合に勝って……全国決めたら……」

男「お、おれと……つ、つ……」

幼馴染「……」ゴクリ

男「……つ、つづきは、勝ったらいう!!だ、だから……」

男「必ず、俺の試合を見に来て、それで……」


男「俺の姿を見守り続けてくれ……!」


幼馴染「……わかったよ。必ず応援に行く」

幼馴染「絶対、行くから……。ずっと近くで見守ってる。だから、男は必ず勝って……」

幼馴染「私に、その言葉の続きを聞かせてね……?」

男「―――」


男「ああ。ぜったいに、勝つ」


~~~~




男(……ついにこの日がやってきた)

男(一年越しのこの舞台だ……。今度こそは必ず決めてみせる、全国への切符を)

男(そして……幼馴染にも気持ちを伝えて……!)

男(仲間と過ごしてきた日々を思い返す。毎日が楽しくて、辛い時もあった……)

男(……その全ては、この時の為。……行こう、準備は万端だ……!)


男(俺の物語は、ここから始まるんだ……!!)


男「……え?」


男(……試合会場に出て、いち早く幼馴染の姿を探すが……見当たらない)

男(友人や、両親……たくさんの応援してくれている人の中で、いつも一番前で応援してくれていた幼馴染が……いない」


男「……幼馴染……?」

男(……きっと、たまたま抜けだしているだけだ。すぐに戻ってくるだろう)

男(試合に、集中しよう……)


男(……けれど、幼馴染はいくら待っても姿を現さず……)

男(気づけば、前半が終わっていた)


「どうした、男!今日のお前、ちょっと変だぞ!」

男「悪い……」

「キャプテンのお前がそんなんでどうする!いつものお前なら、もっと声を出して、動きがいいはずだろ!」


男「……ああ」

「全国、行くんだろ!」

男「もちろんだ……!」

「なら、気引き締めて、後半行くぞ!」

男「……おう!!」


男(情けない……。俺がここまで感情に動かされるなんて……)

男(俺が、やらなきゃ駄目なんだ……!)

男「……」グッ


男(……しかし、運命は残酷なものだった)


「男!!」

男(ナイスパス……!これなら……!)

男(味方の出したボールを、ゴールに向けて振り抜こうとした、その時……)

男(スパイクが、いつも以上にグラウンドを噛んだ。そのことによってバランスを崩して……)

男「……っ!!」


男(――膝が、ありえない方向へと曲がった)


男「うああああああああああああああああああああ!!」



男(……幼馴染の姿はやはり、見えなかった)

~~~~



「……負けたって」

男「……」

「……男、あなたのせいじゃない。怪我だって仕方の無いこと……」

男「……」

「男……?」


男「……は、ははは………」


男(……今ままで描いてきたものは、全て崩れた)

男(この日の為にずっと、努力してきた。何度も何度も、辛いことを乗り越えてきた)

男(それが、一瞬で崩れた)

男「なにが、夢だ。そんなの、意味ないじゃないか……」

男(……結局、何をしても無駄だったんだ。今までの日々に意味なんて無かった)

男(大事なもの全てに裏切られ……そして、大事なもの全てを失った)


男(物語が始まることなんてなかった……。これで終わったんだ、俺の物語は)

男(……何をしても、その先には望んでいるものなんてない)

男(待っているのは、過酷な現実と運命だけだ)


男(……なら、動かなくていいじゃないか)



男(なにも、はじまらないのだから――)

>>123
男(……今ままで描いてきたものは、全て崩れた)

男(……今まで描いてきたものは、全て崩れた)

















―――


―――――









男「……なんで、転校生が来てから、この部室に来るようになった」

男「大体、あの転校生の周りにいた奴らと同じ理由だろうがな……」

幼馴染「違うっ!!そんなわけ、ないよっ……」

男「なら、どうしてだ……?」

幼馴染「心配、だったから。男の事が……」

幼馴染「転校生君達に囲まれる事で、男が変わらないか心配で……」

幼馴染「それに、また男に近づきたくて……」


男「……今更、よくも言えたもんだな……!」

幼馴染「……っ」

男「……2年前の、あの日。全国を懸けた試合に来なかったくせに、今頃になってよ・・・!!」

幼馴染「……ごめん」

男「お前が、幼馴染が来なかったから、俺は……!!」

幼馴染「ごめん、なさい……」


男「……言えよ。どうして、あの日にお前が試合に来なかった理由を」

男「大事な約束を破ることのできた理由をな……!!」

幼馴染「……」


幼馴染「……病気、だった」


男「……は?」

~~~~



幼馴染(……もう少しで、男の試合。男、今頃必死に練習、してるかな……)

幼馴染(絶対に応援しなくちゃ……。そして、男の気持ちに答える……)

幼馴染(だから、私も頑張ろう……。男も頑張ってるんだから)

幼馴染(男も、頑張ってるはず、だから……)フラフラ


幼馴染(……あれ、おかしい、な。体、が……)フラッ…


バタンッ…


幼馴染「…………んっ」


幼馴染(こ、ここは……?)

「お、幼馴染……!」

幼馴染「お、お父さん……?」

「大丈夫か?どこか、おかしい所はないか?」

幼馴染「頭いたくて、体温がすごく高い気がする……」

「そう、か……」

幼馴染「……お父さん、なんで、私は病院にいるの?」

「……お前は、家で倒れてたんだ。原因はおそらく過労だろう……」

「……きっと、練習が……」

幼馴染「……ううん、お父さんは悪くないよ」


幼馴染「……! お父さん、今は何日!?」

「今は―――」


幼馴染「―――」


幼馴染「いか、なくちゃ……」

「お、おいっ!幼馴染!お前はまだ数日は入院してなくてはいけないんだ!」

幼馴染「そんなのっ、かんけい、ないっ……!」

幼馴染「男と約束したん、だからぁ!ぜったいに応援しに行くって!!」

幼馴染「わたしが、傍にいないと、だめなのっ……!」

「お前の気持ちは、分かる!だが、今はそれどころじゃない!」

幼馴染「やだっ、やだよぉ!いかせてよぉ!!」


幼馴染「男の所に、行かせてよぉ……!!」


~~~~


幼馴染「……男の元に行けなくて……!傍にいることができなかった……!」

幼馴染「自分を恨んだ……!遅くまで、練習し続けた自分を……!」

男「……」


幼馴染「……入院中に、試合に負けた事、男が試合の中で怪我した事を聞いた……」

幼馴染「……なおさら、私はもっと嫌になったよ。自分の事が……」

幼馴染「うぬぼれかもしれないけど、もし私が行かなかったからだと思って、一人で、泣き続けた……」


幼馴染「それからは、退院したら男に謝ることしか考えてなかった……。許してもらえるとは思わなかったけど……」

幼馴染「でも、その時の男はもう変わってしまっていて……私の言葉も、存在も、全てを拒絶した」

幼馴染「私は、弱い。だから、男に近寄ることもできかった……。臆病なんだよ……」


幼馴染「これ以上、男に避けられるのが嫌だった……!」


幼馴染「だから、今頃になって歩み寄ろうとしても、ダメ、だったんだ……!」

男「……」

幼馴染「今になって謝っても、もう遅いよね……」


男「……そうだな。もう、終わったことだからな」

幼馴染「……!

男「今頃、そんな事言われてもどうにもならない……」

男「終わったものは、始めることはもうできないから」

幼馴染「……男」

男「……もう、無理するな。俺の事をいつまでも、気にかけるなよ……」

男「あの日に縛られ続けられるのは俺だけで十分だ……!」

幼馴染「そんなことないよっ!私だって……」

男「もう、いい」


男「もう、いいんだ……」


幼馴染「……だめだよ、そんなの……」

男「……お前も、ここから出て行け」

男「ここは、俺だけの居場所だ。過去に取り憑かれて何もできない、惨めな俺の居場所だ」

男「幼馴染、お前がいていい場所じゃない」

幼馴染「……」


バタンッ……


男「……」


男(……きっと、今日が最後の機会だったのかもしれない。また、俺が動き始めるための)

男(しかし、それら、全てを俺が潰した)

男(変われたかもしれない希望を、許すことのできた罪を……すべて、俺が潰した)

男(歩み寄ってきてくれた人々を……俺は拒絶した)


男(……はじまらないんじゃない。俺が、はじめないだけなんだ)

男(過去に囚われ続けて、また思ってしまうのだ……。自分の望んだ結果は、手に入れることはできないと)

男(一番、弱くて、惨めで臆病なのは……俺だ)


男(こんな人間が、はじめることができないのは当たり前なんだ)


男(夕暮の差す部室。この部室には様々な音が届き、そして、響き渡る)

男(……しかし、今の俺には何も届かない、響くことはない)

男(人の感情や、言葉を避け続けた人物に、響くものなど何もないんだ……)


男「……」


男(……はじまることも、はじめることも、もう、ない)

今回はここまで。

~~~~



「なぁ、最近ちょっと雰囲気悪くないか……?」

「特に転校生とか、委員長がいつもと違う感じするな」

「文化祭まで、残り少ないってのに……」

「ま、このままじゃダメでしょ!やっぱり文化祭に向けて盛り上がっていかないと!」

「だな!」


男「……」


男(文化祭を明後日に控えた今……。学校全体はいよいよと言った感じに文化祭に対する機運が高まってきてた)

男(しかし、うちのクラスでは周りの盛り上がりが嘘みたいに静まっている。原因は……)


転校生「……」

委員長「……」

ツンデレ「……」



男(中心人物のやる気の欠如なのだと思う。……転校生達はあの日から様子がおかしくなっている)

男(部室での一件のせいなのか。……それとも他に何かがあったのだろうか……。どちらにしろ、俺に関係ない)

男(あいつらが勝手に壊した。俺は悪く無いんだ……)



幼馴染「……」


男(……あの日から、幼馴染は一人でいることが多くなっていた)

~~~~



男(……あの日から、部室は俺だけしか出入りしないようになった)

男(一人だけの空間……俺が、何も始められない人間だけが残る空間になっていた)

男(文化祭で、学校中が動いているのにここだけは止まっている……。きっと、この空間はずっと止まったままなのだと思う)



男(……俺がいる限り、ここはずっとそういう場であり続ける)


男(転校生達が移動した物品などは簡単な物以外は戻していない。文化祭が終わったなら、また整理するとしよう)

男(中途半端な感じがして、なんとなく落ち着かないが……今は我慢しよう)

男(どうせ……俺以外にここに来る奴なんて居やしないからな)


コンコン……



男(――その時、もう二度と聞く事がないだろうと思っていたノック音が耳に入る)


男「……?」

男(……まさか、転校生達が……?)

男(いや、それは無い。あの日から何日か経ってもあいつらは姿を現さなかった)

男(だとしたら――)


ガチャ……


幼馴染「……」


男(……やっぱり、お前か。幼馴染……)


男「……言ったはずだ。ここは、お前の来る場所じゃない。と」

男「なのに、なんでお前はまたここに来た……?」


幼馴染「そうだ、ね。ここは私がいたら駄目な場所……。そして――」


幼馴染「男も、ここにいちゃ駄目、なんだよ……」


男「何を、言ってる」


幼馴染「この何日間か、男の事ばかり考えてた。どうしたら、いいのかなって」

幼馴染「あの時から動き出せない男に、なにができるだろうとずっと考えてきた」

幼馴染「……私の中での答えは一つだけだった」

幼馴染「想いを伝える事。……想いを歌に込めて、男に伝えるのが、私が男にできる一番のこと」

幼馴染「……だから、お願いするよ」


幼馴染「――文化祭、私の想いを聞きにきて」


幼馴染「必ず、来てほしい。……私の想いで、男をここから連れだして……」

幼馴染「あの時から止まっている物語を、また、動き出せるように伝えるから……

幼馴染「……あの時に行くことのできなかった私が言うのも、おかしいけどね」

男「……」


幼馴染「……話は、それだけ。……また、ね」


ガチャ……


幼馴染「……待ってるから」


バタン……


男(幼馴染は、まだ俺を……)


男(……あの日、俺の物語は終わったんだ……。もう二度と動き始めることはないはず)

男(ましてや、はじまることさえも……)



男(……俺は、どうすれば……)

~~~~


男(……文化祭は、始まった)

男(学校中が盛り上がっている中……俺はまだ、この場所から動き出せずにいた)

男(文化祭とは隔離された関係のない空間でずっと考えた。俺は、どうするべきなのか……)

男(本当に俺はここにいるべきできはないのか……?また、始めることができるのか……?)

男(……無理だ。俺はもう、何も……)

ガチャ……

「……やはり、ここにいたのか」


男「……お前」

転校生「クラスにも顔を出さないからどこにいるのかと思っていたら……」

男「別に、俺がいてもいなかろうが変わらないだろう」

転校生「……ああ。君が居ても居なくても何も変わらない」

男「なら、お前がここに来る理由はないはずだ……」

転校生「……いいや、あるさ」


転校生「君をここから、出さなくちゃいけない」


男「……」

転校生「……俺は怖いんだ。何もしないことで、何かが終わってしまうことが、すごく怖い」

転校生「みんなの為とかじゃない。本当は俺が終わることに対して、臆病なだけだった」

転校生「上っ面だけだった……。今までの付き合いは、表面上だけで本当に心まで通じあってる事なんてなかった」


転校生「終わってしまえば、失ってしまう縁なんだ……」


転校生「君はもう、終わってしまったから、ここに縛られているのか?」

男「……そうだ。俺はもう終わった人間だ」

男「この場所だけが俺を認めてくれる。何もない俺を、始めない俺を受け入れてくれる」

男「俺の居場所はここだけなんだ……」

転校生「――そんな、ことないだろっ……!」

転校生「君には支えてくれる人がいる。どんなに落ちぶれても助けてくれる人がいるだろうっ!!」

転校生「君は、その人の想いを……無下にするのか?」

男「……っ、それは……!」

転校生「なら、いつまでもこんな所で悩んでないで、早く動き出せ……!」

転校生「自分の弱さを理由にして、誰かを裏切るのはもうやめろ!」

転校生「お前にはあるんだろう!!決して失われることのない大事なモノが!」


男「……転校生」


男(……俺にはあるんだ。終わったとしても失われることのない大事なモノが……)

男(ずっと、見失っていた。俺の進むべき場所を……)

男(幼馴染、お前が俺の答えを……!)


転校生「いけっ!待っているんだろう、大事な人がっ!」

男「……ああ!」


転校生「物語の続きを、はじめるんだ……!」


男(……俺は、転校生の言葉を背に体育館へと走りだした)





転校生「……今の俺って、結構損な役割だよな」

転校生「新しく出来た友人をことごとく捨てて、初めて本当に好きになった人には振られて……」


転校生「しかし、彼女のおかげで分かったよ……。今まで、自分を偽り続けた俺がどれだけ愚かだったかを……」


転校生「君は長い間、苦しんできた……。けど、もうそれは終わりにしていいんだ」

転校生「君と彼女の物語は終わっていない。彼女が居る限り、君の物語は続いていく」

転校生「君には変わってしまっても、終わったとしても、支えてくれる人がいる」



転校生「頑張れ幼馴染……、そして男」

~~~~


男「……間にあった、か……」


男(体育館に着いた時には、既にもう幼馴染のグループの演奏は始まっていた)

男(周りの盛り上がりを見るに、幼馴染の実力、そして人気ぶりが分かる。それほどに異常な盛り上がりだった)

男(聞いたこともない曲だ……。きっと、自分達で作った歌なのだと思う)

男(遠い向こう……ステージの上の幼馴染は、輝いて見える)



男(そんなお前が輝きを失った俺に、どんな答えを、どんな想いを聞かせてくれるんだ……?)

―――。


ワァァァァァァァァ!!


幼馴染『……どうだったでしょうか、私達のオリジナル曲』

幼馴染『みんなが口ずさんでくれるようになるといいなぁ……と思います』

幼馴染『……えーと、それじゃあ、次で最後の曲、です』


幼馴染『本当は、さっきの曲で終わりだったんだけど、私がお願いして急遽、歌うことにしました』

幼馴染『演奏の練習ができなくて、私の歌だけになってしまうけど……』

幼馴染『それでも、想いはしっかりと届くように、歌います』


幼馴染『私の想いを……聞いてください』



『――ENDLESS STORY』

https://youtu.be/n_N8hB7CoPk

男「あ、れ……」


男(気づけば、俺は涙を流していた。突っ伏して、ただ、幼馴染の歌を聞いて、涙を流していた)

男(終わっていない……幼馴染はそう歌った。あの日、終わったと思っていたものはまだ続いているんだと)

男(そして、幼馴染はこんな俺の事を想っていてくれている……)

男(その事がとても、嬉しくて……。同時に、俺自身に悔しさを感じた……)


男(幼馴染はまたはじめようとしているのに、俺は何をしているんだ)

男(俺はいつまで、あの時から動き出せないでいる。俺はいつまで過去に縛り続けられているんだ……!)

男(こんな俺じゃ、幼馴染の傍になんていられるはずない……!)


男(なら、俺は彼女の傍にいられるには……)


男(……もう、決まっているだろ。動き出せばいいだけだ)


男(また、はじめるんだ。俺の物語を――)

~~~~



友「……男?」


男「どうした?俺が何か変なのか?」

友「い、いや……髪切るとお前すっげぇイケメンになって……

友「それに、何か雰囲気が変わったような気が……」

男「はは。よせよ。まだ髪切っただけだろ……」

男「これから、変わっていくんだ」

友「……どうやら、何かいいことあったみたいだな」

男「ああ……」


男「動き始めることができるからな」

~~~~


―部室―


男「……よう」


転校生「髪、切ったんだな」

男「あんだけ長い髪だとサッカーやるのにも不便だからな」

転校生「……そうか、君はまたはじめるんだな」

男「ああ……」

男「……俺はこの部活を辞める。だから、次の部長は転校生、お前だ」

転校生「……喜んで受けるよ」


男「……お前は、始めるキッカケを作ってくれた」

男「だからと言って、感謝はしない……。お前の存在は止まっていた俺をそれ程に苦しめたからな……」

転校生「……」

男「お前の事は苦手だ。その絵に描いたような善人ぶりは俺からしたら気持ち悪すぎる」

転校生「言ってくれるな……」

男「……けど、お前はこれからの俺にとって必要な存在だ」

男「また、止まりそうになった俺を正してくれるはずだからな……」


転校生「……君は、本当に不器用だな」

転校生「素直に友達になってほしいなら、そう言えばいいじゃないか」

男「バ、バカ……そういうことじゃ」

転校生「男、俺だって君は必要な存在だ」

転校生「君は俺に持ってないモノを持っている……」

転校生「君は、終わったとしてもまた始められる強さを持っている」

転校生「それを近くで見ていていたい……。そうして、俺に教えてくれ」


転校生「その強さがどんな物語を描くのかを」


男「……ったく、善人なんだなお前は」

転校生「善人なんかじゃないさ、俺は自分の思っていることを素直に言っているだけだよ」

男「ほんと、良い友人になりそうだよ……」

転校生「ほんとうに、な……」


男「……そういえば、なんでお前は幼馴染と俺のことを知っていたんだ」


転校生「簡単に言うなら、振られた代償ってやつかな」

男「……え」

転校生「実は文化祭の数日前に幼馴染に告白したんだ。……結果は見ての通りさ」

転校生「まぁ、結果は見えてたんだけどな。けど、なんだか悔しいから聞いてやったよ、君たちの関係を」

転校生「ほら、俺は善人なんかじゃないだろ?」

男「……普通はそんなこと馬鹿正直には話さないから」


転校生「そうか……?まぁ、その話聞いたら何だか今までの考えが馬鹿らしくなってな」

転校生「本当の自分を抑えるのをやめたよ……。そしたら。いつの間にかツンデレとかはいなくなってた」

転校生「でも、不思議と心は傷まなかった。きっと、終わっても構わない関係だったんだろう」

男「……」


転校生「……できれば、君とはずっと続く関係だと良い」


転校生「終わることのない、絆を結んでいたいと思うよ……」


男「そうだな……」


~~~~


幼馴染「……」

男「……」


幼馴染「……うん、やっぱり男にはこっちの方が似合ってるよ」

男「それは、外見的な面でか?」

幼馴染「ううん。外見だけじゃなくて、中身的にも、かな」

男「……そうか」


幼馴染「……また始めるんだね、サッカー」

男「いつまでも、あの時から止まってなんていられない」

男「それに残された時間は少ないからな。早く行動しないと」


幼馴染「伝わったんだね、私の想い……」


男「ああ。しっかりとな」


男「……俺は、はじめるよ」


男「幼馴染、長くなるかもしれないが……それまで、待っていてくれ」


男「まずは、あの日の先へといかなきゃならない。あの日に目標を越えなきゃいけない」


男「だから、幼馴染。全国の舞台に行ったら、また、幼馴染の元に行くから」


男「その時はまた俺の言葉を、想いを聞いてほしい……」


幼馴染「うんっ、待ってる……!」


物語は終わらない。


物語は止まることがあっても、終わることは無い。


何かが先をを遮ろうとも、支えてくれる人が居る限り、物語は続いていく。


強い想いがある限り、輝きを放ち続ける。



終わることの無い物語を……彼女と歩んでいこう。


彼女と歩んでいけるなら、必ず見えてくるはずだ……


あの日、描いた物語の続きを――

以上で終わりです。

多少の誤字は許していただけると幸いです。


では、ここまで読んでいただきありがとうございました。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom