提督「艦娘の目の前で死んでみる」 不知火「またですか」 (245)


提督「と、いうわけだ、おはよう不知火」

不知火「清々しい朝には到底似合わないお言葉ですね、おはようございます」

提督「二日酔いは大丈夫か」

不知火「少々頭が痛いですが、楽しんで飲んだお酒です、それほどですね」

提督「それは良かった、秘書艦だけでも大丈夫なら滞りないな」

不知火「司令は終始ビールでしたから、気分が悪い時は無理せずにお願いします」

提督「朝早くに起きて酔いを醒ましていた秘書艦に、同じ言葉を返すよ」

不知火「まったく、返す言葉もありませんよ、お互い大事にしましょう」


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提督「艦娘の目の前で死んでみる」 不知火「は?」
提督「艦娘の目の前で死んでみる」 不知火「は?」 - SSまとめ速報
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の続きですが単独でも楽しんでいただけるかと思います
今回もよろしくお願いします


提督「さて、昨日ドッキリを仕掛けた四人の様子はどうだった」

不知火「響と龍驤さんは今朝も司令の心配をされていました」

不知火「龍驤さんは泣き腫らしたのか目が赤くなってましたよ」

提督「まあ、目の前で自殺されたら誰だってそうなるわな」


不知火「曙はもっと酷い状態ですね、夜中目覚めては泣いていたらしいです」

不知火「『夢なら早く覚めてよ』って言いながら、さて、どう落とし前をつけてくれますか」

提督「やりすぎたと思ってるよ、そんなに睨まないでくれ」

不知火「今度、曙に直接謝りに行ってくださいね、絶対にですよ」

提督「ああ、もちろんだ、瑞鳳に関してはどうだ?」

不知火「瑞鳳さんは、なんでしょうか、その」


提督「どうした、歯切れの悪い」

不知火「昨日の一件でその、溜め込んでた思いが爆発してしまったようで」

不知火「まあその、悪いようにはならないと思いますので、安心してください」

提督「あぁ、正直よく分からんが、まあ不知火が言うのなら大丈夫なんだろう」

不知火(ずっと甘い声で司令の名を呟きながら卵焼き作ってたらしいですからね)

不知火(暗い共同キッチンで偶然その光景を見てしまった暁の恐怖は言うまでもないでしょう)

不知火「ええ、また支障が出そうならお伝えします」

提督「あぁ、よろしく頼んだぞ、不知火」


提督「それじゃあ、本日分の仕事でも始めるか」

提督「簡単な話は昨日と同じだ、艦娘の目の前で死んだフリをして、その様子を見る」

不知火「不知火は事前の情報操作と、執務室の様子を司令の私用部屋にあるモニターで確認ですね」

提督「他にも何か協力してもらうかもしれんが、まあそこは臨機応変に、だ」


提督「俺が指を動かしたらネタバレの合図、執務室へと急いでくれ」

提督「徒に長引かせないようにはするが、やばいと思ったら自主的に来てくれて構わない」

不知火「分かりました、不知火も早急に参りたいと思います」

提督「ああ、そこは信頼してるよ」

不知火「ええ、信頼していてください」


【 朝潮 】

不知火「さて、この青空の下で、底抜けの絶望に落とされる最初の艦娘は誰になさるおつもりで」

提督「そうだな、景気づけにご指名、と言いたいところだが」

提督「後数分もしない内に、遠征から艦隊が帰投する、そうだな、不知火」

不知火「はい、そうです、間もなく旗艦が報告に来ると思います」

提督「と、いうことだ、最初のドッキリはその旗艦、朝潮だ」


不知火「朝潮、ですか、性格と言えば性格ですが中身が中身ですね」

提督「朝潮は龍驤とは逆に大人びた子供だからな、大泣きだと踏んでいるが」

不知火「いえ、ネームシップたるもの、どんな場面でも凛々しくあろうとするものですよ」

提督「陽炎のことか」

不知火「陽炎もですよ、時間も押しています、準備をしましょう」


提督「ああ、そうだったな、不知火は廊下で朝潮とすれ違った時、情報を与えてほしい」

不知火「分かりました、どのような内容を伝えればよろしいですか」

提督「艤装に不具合が見つかった、くれぐれも取り扱いには注意するように、と」

不知火「なるほど、では不知火からも、司令に一言を」

不知火「責任感が強い子の取り扱いには十分にご注意を」

提督「ああ、分かった、それじゃあ任せたぞ、不知火」

不知火「はい、失礼します」ガチャ


朝潮「あ、不知火さん、朝からお勤めご苦労様です」

不知火「朝潮、遠征お疲れ様でした」

朝潮「はい、ありがとうございます!」

不知火「少々心配でしたが、不知火の杞憂だったようですね」

朝潮「いえいえ、これも先輩方のご指導のお陰ですよ」


不知火「いえ、少し話が違います、朝潮の練度に関しては最初から心配してませんから」

朝潮「そ、そんな、朝潮なんてまだまだです!」

不知火「朝潮、旗艦に選んでくれた司令の為にも褒め言葉は素直に受け取るべきですよ」

朝潮「は、はい、すいません、ありがとうございます!」

朝潮「では、いったい他にどのような理由があったのですか」

不知火「ええ、艤装に不具合が見つかったそうです、本日中に修正すると」


不知火「自分が思っている以上に威力が増して目測を誤ることが多いらしいです」

不知火「まあ、暴発といった深刻な問題が報告されていないのが救いですね」

不知火「朝潮も、取り扱いには十分注意を払ってくださいね、それでは」

朝潮「分かりました!失礼します!」


不知火「朝潮は本当に真面目ですね、固すぎる部分もありますが」ガチャッ

不知火「モニターよし、画面よし、音量よし、準備は万端ですね」

不知火「さて、新しい一日の始まりです、司令の演技に期待していましょう」

朝潮『失礼します、司令官、遠征のご報告に上がりました』ガチャッ

提督『朝潮か、遠征お疲れ様、今書類から目を離せないからもう少し近くで頼む』

朝潮『はい、まず、遠征では目標としていた...』


不知火「朝潮は恙なく遠征の報告を済ましています、が」

不知火「そういえば、朝潮は以前、遠征は報告までが任務だと言っていましたね」

不知火「右手にはまだ連装砲が握られています、司令もよく覚えているものです」

朝潮『以上です』

提督『なるほど、分かりやすい報告をありがとう』スッ

提督『いつも朝潮はよく頑張ってくれるな、助かるよ』ナデナデ


朝潮『あっ、し、司令官、子ども扱いしないでくださいっ』

提督『なに、日頃の努力を労っているだけだ、今は甘えとけ』

朝潮『あ、ぅ、は、はい』

提督『朝潮は真面目すぎるからな、遠征も大事だが仲間も大切にしないといけない』ナデナデ

提督『不具合が見つかった時は、素直に連装砲は閉まっておくんだぞ、分かったかい』ナデナデ


朝潮『はぃ、わかりました、しれぃかん』ポーッ

提督『こらこら、そんなに脱力してたら何かあった時に困るだろう、朝潮』ジャキッ

提督『あれ、どうした、急に連装砲の安全装置なんて外して』

朝潮『へぁ、どうしました、か...』

朝潮『あ、あれ、なんで、勝手に、うごいて』

連装砲『』ドンッ


提督『ぁ』

朝潮『...え』

提督『あさ、し、お...?』バタッ

提督『』ドクドク

朝潮『...しれい、かん?』


不知火「艤装の不具合と聞いて予想はしていましたが、しかしまあ、相変わらずですね」

不知火「ぼーっとしている朝潮の連装砲が、司令の心臓付近を撃ち抜きました」

不知火「その場に倒れた司令は全く動きません、血の海が広がるだけです」

不知火「全く、司令の演技力には恐れ入ります、しかし朝潮の行動も素晴らしいですね」


朝潮『え、え、だ、大丈夫ですか!司令官!』

朝潮『血が、血が止まらない!はやく、早く止めなきゃ!』

朝潮『司令官!しっかりしてください!司令官!司令官!』

朝潮『司令官!嫌です!お願いします!お目覚めください!司令官!』

朝潮『あ、あぁ、司令官の体、どんどん、冷たく、なって』

朝潮『あ、いや、うそ、司令官、司令官、司令官!』

朝潮『や、いや、いや、いやあああああああああああああ!』


朝潮『司令官!しれいかん!しれいかああああああん!』

朝潮『いやああああああああああああああああああああ!』

不知火「...絶望しかないでしょう、泣き叫ぶしかないでしょう」

不知火「防げた事故ほど後悔が残るものはないですからね」

不知火「さて、そろそろお時間でしょう、司令の指は、まだ」

朝潮『...司令官、すいません、本当に申し訳ありません』


朝潮『せめて、せめて、朝潮も、あちらまでお供いたします』

不知火「ん?」

朝潮『司令官、大好きですよ、司令官』ジャキッ

不知火「まずい!」ガチャッ ダッ

朝潮『さようなら、皆さん、さようなら、司令官』

不知火「待って!早まらないで!朝潮!」


朝潮『さようなら』

不知火「まってええええ!」ガチャッ

提督「朝潮!」ガシッ

朝潮「...へ、ぇ?」

提督「この馬鹿野郎!艤装の不具合っつっただろ!なんでお前が責任とんだよ!」

朝潮「し、しれいかん、え、だって、え」

提督「何かあったら責任とって死ねだなんて誰が言った!それは俺の役目だ!」


朝潮「え、どういう、だって、しれいかんは、しれいかんは」

提督「すまない、全部ドッキリだ、驚かせて悪かったな、すまない」

提督「生きてる、怪我もない、何もない、お前が心配するようなことはない」

朝潮「しれい、かん、しれいかん、しれいかん!」ギュゥ

提督「よしよし」

朝潮「うわあああぁぁぁぁぁん...」


朝潮「すぅ、すぅ」スヤスヤ

不知火「朝潮、泣き疲れてそのまま寝てしまいましたね」

提督「起こさないように移動させるのも大変なもんだぞ」

不知火「後は霰達がお世話してくれるでしょう、お疲れ様です」

提督「お疲れ様、大事にならなくて良かったよ」


不知火「正直、不知火の想像の何倍も、朝潮は大人でした」

提督「殉死が正しいとは思わん、が、しかし、武士の鑑とも言える姿だ」

不知火「司令が朝潮を旗艦に指名した理由がよく分かりましたよ」

提督「朝から目の冴える展開だったな、お陰で眠気が吹っ飛んだ」

不知火「それなら、この珈琲は必要ありませんね」

提督「それとこれとは別問題だ、一日は長い、次も頑張るぞ」

不知火「ええ、もちろんですよ、司令」

明日があるので今日はもう寝ます、すいません
明日の18時前後を目途に一組、夜中2時前後に一人、
日曜に二組書いてその日の夕方には終わるかと思います

また明日もお願いします、今日も一日お疲れ様です


【 青葉 古鷹 】

提督「もうすぐお昼か、次はちゃちゃっと終わらせるか」

不知火「ちゃちゃっと、ですか、死亡ドッキリに素早いも何もないと思いますが」

提督「何、準備を素早くすればある程度の時間は削減できる」

提督「不知火は今回、事前に情報を流さずにそのまま私用部屋に行ってくれて構わない」

提督「それに、今回はそこまで取り乱すことはないだろう、自信を持って言える」

不知火「司令がそこまで言うなら、きっとそうなのでしょう、誰になさるのですか」

提督「青葉、それと古鷹だ、二人一気にいくぞ」


不知火「なるほど、青葉さんはさておき、古鷹さんは余程心配いらないでしょう」

提督「ドッキリをばらすタイミングも簡単に済む、不知火は気軽に見ていてくれ」

不知火「分かりました、珈琲でも飲んで眺めていますね」

提督「部屋にはミルクと砂糖がないからな、必要なら持って行ってくれ」

不知火「ありがとうございます、それでは」ガチャッ


不知火「さて、古鷹さんがいるなら安心ですね、気が楽です」

不知火「青葉さん、もどうでしょう、そこまで取り乱すことはないと思いますが」

不知火「さて、二人が部屋に入ってきました」

古鷹『失礼します、古鷹です』

青葉『失礼します、青葉です』

提督『ああ、少し待ってくれ』

古鷹『どうしましたか、提督』

提督『演習が今良い段階でな、少し見ていたい』


青葉『風に揺れるカーテン、窓から外を見る提督、最高の被写体じゃないですか!』

提督『ははっ、こんなもんいつでもどこでも撮れるだろう』

青葉『いえいえ、せっかくなので一枚お願いします!』

提督『仕方ないなぁ』

青葉『いきますよ、ハイ、チーズ』パシャッ

提督『』バシャッ


古鷹『...え?』

不知火「っ」ビクッ

提督『』バタンッ

古鷹『え、え、提督、え?』

青葉『へ?』


不知火「...ふぅ、さすがにいきなりすぎて驚きました」

不知火「青葉さんがシャッターを下ろした瞬間に、司令の頭に銃弾が」

不知火「演習の流れ弾ということでしょう、実際ありそうで怖いですね」

不知火「司令は窓際に倒れていつも通り動きません、ああ、でも古鷹さんの行動は速いですね」


古鷹『提督?ちょっと!提督!大丈夫ですか提督!』バッ

古鷹『提督!返事をしてください!お願いします!提督!提督!』

古鷹『青葉!青葉は誰か呼んできて!早く!』

古鷹『聞いてる?青葉!青葉った、ら』クルッ

古鷹『あお、ば...?』


青葉『し、司令官の頭が、頭に、銃弾が、あ、青葉が』

青葉『青葉が、こっち向いてなんて、言ったから、から』

青葉『ど、ドッキリ、ですよね、だって、あんなに笑顔で、写真を』カメラミル

青葉『...ぁ、あぁぁぁぁ』ヘナヘナ

古鷹『青葉!どうしたの!ちょっと!青葉!』

青葉『ああぁぁぁ、青葉が、青葉が、司令官を、あぁぁぁ、ぁぁ...!』


古鷹『青葉!しっかりして!まだ助かるから!青葉!』

古鷹『提督の笑顔を!もう一回見たいんでしょ!ほら、さっき撮ってた!』

古鷹『この写真みた、い、に』

古鷹『ひぁ』ペタッ

古鷹『あぁぁ、こんなのって、こんなのってぇぇ...』ポロポロ


不知火「青葉さんはへたり込んだまま頭を抱えて」

不知火「古鷹さんはカメラを見たまま涙をポロポロと流しています」

不知火「古鷹さんがこうなるとは予想外でしたね、いや、というよりも」

不知火「あのカメラに写ってるんでしょうね、そんな絶望が」


青葉『青葉が、青葉が、どうしよう、やだ、だれか、だれかぁぁ...』

古鷹『ああぁ、あぁ、ぅああああぁぁぁぁ...』

提督『』ピクッ

不知火「さて、司令の指も動いたことです、ネタ晴らしのお時間ですね」

不知火「カメラも見せてもらいましょう、そこに何が写ってるのか」

不知火「失礼します、司令」ガチャッ

古鷹「あぁ、しらぬい、ごめん、ごめん、提督が、提督がぁぁ...」

不知火「大丈夫ですよ、古鷹、カメラ、少し失礼しますね」スッ

不知火「...あぁ、なるほど、そういうことですか」

不知火「確かに、こんなものが撮れてたら、そうなりますよね」

不知火「司令、これ以上長引かせても不利益にしかなりませんよ、さあ」


提督「...そうだな、すまない、傷跡を残してはいけないんだったな」

古鷹「あ、ぇ、あ、てい、とく」

古鷹「うそ、本当に、本当に提督、なの」

提督「ああ、その目で確かめてんだろ、俺だよ、間違いなく」

古鷹「ほんと?ほんとにほんと?死んでない?生きてるよね!」

提督「ドッキリだよ、すまんな、見ての通りピンピンだよ」

古鷹「ああ、もう、なんだぁぁ、よかったよぉぉぉ...」ポロポロ


提督「ほら、青葉、いつもの威勢はどうした、うなだれんな、顔上げろ」

青葉「ごめんなさい、ごめんなさい、しれい、かん...しれいかん?」

提督「ドッキリだよ、ドッキリ、お前好きそうだろ、こういうの

青葉「どっき、り?じゃあ、しれいかんは、いきてる...」

提督「ほら、どんな顔してんだよ、その呆けた顔写真で撮んぞあおば、っと」

青葉「司令官!司令官!よかった!よかった!よかったぁぁぁ!」ダキッ

提督「まったく、鼻水拭けって、な?」

青葉「うわああああああああああん!しれいかあああああああん!」


古鷹「もうこんな悪質なこと止めてくださいね、本当に心配しましたから」

青葉「こ、今度は絶対に騙されませんからね!本当ですよ!」ズズッ

古鷹「ほらほら、青葉、鼻水拭きなよ、それじゃあ提督、失礼しました」

提督「ああ、青葉のご機嫌頼んだぞ古鷹、それじゃあ」


提督「これで午前の部終了か、久しぶりに気軽に死んだ振りができたな」

不知火「もうこれくらいのことでは胃が慣れてしまいましたよ、悔しいですね」

提督「なに、どうせするんだ、負担が少ないことは良いことじゃないか」

提督「それにしても、古鷹があそこまで折れるとはな、何が写ってた」

不知火「答えるに値しませんね、司令自身が狙ったタイミングでしょう」

提督「よくご存じで」


不知火「敬愛する者が狙撃される瞬間、しかも血飛沫が飛び散る瞬間ですよ」

不知火「写真は脚色することなく現実を突きつけてきますからね」

提督「このご時世、脚色してない写真の方が少ないぞ、というのは野暮だな」

不知火「脚色されているのは、いつだってその背景ですから」

提督「まあ、その辺は青葉の方がよっぽど詳しいだろうな」

不知火「青葉さんも古鷹さんも認めざるを得ませんよ、僅かな希望も打ちのめして」


提督「悪趣味は自覚している、自覚しているからこそ手は緩めないさ」

提督「下手に希望を持たせるより、よっぽど人道的だ、なあ、不知火」

不知火「それは結果論ですよ、渦中の人間に結果は分かりませんから」

提督「この手の話はいつだって平行線だ、分かる時はその時だ」

不知火「それなら不知火は司令と、相容れることはないでしょう」

提督「そうであることを願っているよ、さあ、一度休憩しよう」

また深夜に戻ってきます、今度は不沈艦が出てきます、失礼します


【 雪風 】

提督「味噌汁美味しかった、ありがとう」

不知火「二日酔いに効果があると聞いたので、どういたしましてです」

提督「午後は後三組、昨日よりも一組多い」

不知火「一般業務もありますからね、夕方までには終わらせましょう」


提督「秘書艦と言えど業務は他の艦娘と同じだ、残業は避けたい」

不知火「不知火は秘書艦の前に伴侶ですよ、お手伝いいたします」

提督「仕事が気になって眠れないだけだろう、じゃあどんどん行くか」

提督「午後最初の標的は雪風だ、お前の姉妹艦だな」

不知火「雪風ですか、あの子は強いですよ」

提督「乗り越えてきた死線の数が違うからな、生半可に折れるとは思っていない」


提督「ただ、今回はあいつのトラウマを呼び起こすかもしれない、その時は」

不知火「不知火が駆けつけます、傷跡を残す前に」

提督「まあ、あいつは物分かりがいい、傷跡が残るほどやわじゃないさ」

不知火「雪風のことは信頼していますが、司令のその言葉には信頼がおけませんね」

提督「今回でその信頼を取り戻すように頑張るさ、不知火は私用部屋に行ってくれ」

不知火「全く、頼みますよ本当に、失礼します」


不知火「さて、今回も事前に情報は流さず、ということは自死はありませんね」

不知火「あの子にはそういうものを見せたくないので、ホッと一安心、とはいきません」

不知火「むしろ、不気味な不安感さえ覚えます、雪風の強さを信じましょう」

雪風『しれぇ!失礼します!』ガチャッ

提督『ああ、入っていいぞ、前回はMVPの活躍だったそうじゃないか』

雪風『はい!雪風、頑張りましたっ!』


不知火「雪風、忙しくて最近会ってませんでしたが、随分と成長しているようですね」

不知火「部屋の中に怪しいものはありません、いったい司令は何をお考えでしょう」

提督『確か、雪風は褒賞として造花を希望していたな』

雪風『そうです!丹精込めて作ったものでないと、感謝の気持ちが伝わらないので!』

提督『そうか、お姉さん達も喜んでくれるといいな』

雪風『はい!きっと、喜んでくれます!』


不知火「...あっ」ポロッ

不知火「いけない、柄にもなく涙が」

不知火「不知火は、本当に良い妹を持ちました」

不知火「中止、というわけにはいきませんね、もうここまでくれば腹はくくっていますから」

不知火「ごめんなさい、雪風、後からウンと可愛がってあげますから、許してください」


提督『確か、この棚の一番上に置いてあったはずだ』

提督『雪風、脚立を支えておいてくれ』

雪風『本当ですか!分かりました!えへへっ』

提督『ありがとう、っと、思ったより高いとこにあるな』

提督『よし、もう少しで手が届きそうだ』


雪風『し、しれぇ、ふらついてますが大丈夫ですかっ?』

提督『あ、あぁ、もう少しでとれ...うわっ!』ガシャッ

雪風『きゃあ!』

雪風『ってて、しれぇ、大丈夫ですか?』

雪風『...しれぇ?』


不知火「雪風の呆けた声が、余計にむなしくなります」

不知火「脚立から落ちた司令は、執務机の角に頭をぶつけて、そのまま」

不知火「その後頭部が血の海に染まっていくのを、雪風は見てることしかできません」

不知火「打ち所が悪かった、運がなかった、そんな死に方ですが」

不知火「雪風は、誰よりもその言葉に敏感です、から」


雪風『えっ、えっ、しれぇ?しれぇ?』ユサユサ

雪風『しれぇ、起きましょうよ、嘘ですよね、しれぇ』

雪風『しれぇ、しれぇ!しれぇったら!ねえ!しれぇ!』

雪風『目を空けてください!もう、一人は嫌です!しれぇ!』

雪風『もう残されるのは嫌です!お願いです!最後、まで、しれぇ』

雪風『そんな、しれぇ、いや、いやああああああああ!』


雪風『また、また、こうなるんだ、雪風は、雪風が』

雪風『私が、私がいるからっ、こんなことに、なって!』

雪風『幸運艦とかじゃない、違う、違う、死神、なんだ』

雪風『雪風は、やっぱり死神なんだ、死神なんだぁぁぁぁぁぁっ!』

雪風「やだあああああああああ!しれえええええええええええ!」

不知火「そんなこと、言ってはいけませんよ、雪風」ガチャッ


雪風「え、あ、しらぬい、さん?」

不知火「死神だなんて、そんなこと言わないでください、あなたは幸運の女神ですよ」

不知火「あなたに守られた幾百の命もあるのです、あなたが繋いだ幾千の命があるのです」

不知火「自分を卑下するようなことは言わないでください、お願いします」

不知火「ほら、この悪趣味司令、いつまでお昼寝してるんですか、起きましょう、起きなさい」

提督「ってぇ!分かった!起きるから!手の甲を踏むな馬鹿!」


雪風「え、し、しれぇ?」

不知火「すいません、雪風、この性悪提督のせいでこんな思いをさせてしまって」

不知火「いたずらですよ、真に受けないでください」

雪風「いた、ずら?じゃ、じゃあ、しれぇは」

不知火「ええ、この通りです、全然大丈夫ですよ」


提督「お前が踏んだところはクソ痛いけどな、このシスコン野郎」

不知火「司令、頭をぶつけた時に言語中枢までやられてしまいましたか」

不知火「あぁ、すいません、元々でしたね、不知火の落ち度です」

提督「てめぇここぞとばかりに言いまくりやがって」

雪風「あ、あの、お二人とも...」

不知火「それと、雪風」

雪風「は、はい!」


不知火「この部屋は持ち主の性格を表すように、華やかなものがありません」

提督「おまえなぁ」

不知火「秘書艦の身としては、退屈な業務の中にも癒しが欲しいと思っています」

不知火「ですので、不知火の心を癒してくれる素敵なお花を、是非作ってくれませんか」

雪風「へっ?あっ、うん!」

雪風「雪風、頑張って作りますねっ!」

不知火「ありがとう、雪風、あなたは良い子ですね」ナデナデ

雪風「えへへっ、えへへへへ」


雪風「それじゃあ雪風、失礼しますねっ!」

提督「ああ、今日はゆっくり休めよ、お疲れ様」

不知火「はい、お花はゆっくりでいいですよ、それじゃあね」

不知火「さて、司令、何か言うことはありませんか」

提督「はいはい、俺が悪かった」

不知火「その言葉は違いますよ、司令」


提督「あぁ?謝る以外にねえだろ、他に何を求めてんだ」

不知火「そういう意味ではありません、司令だけが謝るのは違うということです」

不知火「不知火の方こそ、数々の暴言失礼しました」

不知火「いくら姉妹艦とは言え、感情に流され過ぎました、申し訳ありません」

提督「ああ、もう別に良いよ、そんなことは」


不知火「そんなこと、ではありませんよ、不知火にとっては」

提督「お前は秘書艦以前に陽炎型だろう、当たり前のことだ」

提督「お前は俺が当たり前のことを言ったら怒るのか、そういうことだ」

不知火「司令には敵いませんね」

提督「こういうことを言うのは性に合わん、ほら、さっさと次にいくぞ」


不知火「分かりました、司令」

提督「なんだ、まだ何かあるのか」

不知火「雪風の褒賞、覚えていてくれてありがとうございました」

提督「ああもう、顔が熱くなる、どういたしまして」

不知火「素直じゃない人ですね」

提督「やかましい」

一度寝ます、お昼頃来ると思います、失礼します


【 如月 睦月 】

提督「ふぅ、落ち着いた味の珈琲は心も落ち着くな」

不知火「そういうものを淹れましたので、お下げしますよ」

提督「ああ、ありがとう、助かるよ」

不知火「こういうものはテンポが大事ですからね、次に参りましょう」


提督「そうだな、その前に、私用部屋からこの部屋までどれくらいかかる」

不知火「そうですね、普通に行けば三〇秒もかかりません」

不知火「急げば一五秒ほどで着くと思いますが」

提督「一五秒か、念には念を入れときたいな」

不知火「どうしましたか」

提督「次は不測の事態が発生するかもしれない、楽観視はできない」


提督「一五秒もあれば余程大丈夫だとは思うが、万が一もある」

提督「今度はドッキリの時、執務室に不知火もいてほしい、良いか」

不知火「分かりました、何かあれば早急に対応します」

提督「ああ、必要最低限だけ反応すればいい、舞台を刺激するのは危険だからな」

不知火「必要最低限ですね、了解です」


不知火「しかし、それほど司令が心配なさるとは意外ですね」

提督「今までのものとは趣向が違う、一応言っとくが万が一だ、信頼はしてる」

不知火「なるほど、それでは、肝心のお相手は?」

提督「仲良しこよし姉妹だよ、睦月と如月だ」


睦月「失礼しますっ、睦月型1番艦、睦月です」

如月「失礼しまぁす、睦月型2番艦、如月よ」

提督「ああ、すまんな、演習が終わってすぐだと言うのに呼び出してしまって」

不知火「すいません、重要な用事ではないんですが、午後の業務の都合上」

如月「まったく、レディを急かす男は嫌われるわよぉ?、」

睦月「にゃんですかぁ、もしかして、ケッコンの申請ですか、ですか!」


提督「いや、上部から最新鋭兵器のサンプルを渡されてな」

提督「軽量化に重点を置いているらしいからな、その感想をお願いしたい」

睦月「なるほどぉ、そんなことなら睦月と如月ちゃんにお任せあれ!」

如月「ふふっ、せっかくの提督のお願いだものね、もちろん協力するわ」

提督「ありがとう、こちらがその支給品だ」スッ


睦月「おぉっ、これはこれは、軽い単装砲だにゃあ」

如月「ええ、これくらい軽いと、如月達の負担も少なくなるわね」

提督「ああ、駆逐艦のフットワークの軽さ、それを更に生かす為とのことだ」

提督「支給品とは言えまだ未完成だ、扱いには注意してくれよ」

如月「子供じゃないんだから、ね、提督?」

提督「ではその支給品について説明していく、まず、先程も言ったが...」クルッ


提督「ところで、軽量化に伴ってスケールも小さくなったが...」ペラペラ

如月(ねぇ、睦月ちゃん、ちょっと提督を驚かしてみない?)ヒソヒソ

睦月(えぇ、そんなのダメだよぉ、ちゃんと話は聞かなくちゃ)

如月(大丈夫大丈夫、ちょっと空砲撃ってみるだけだからね)

睦月(もう、如月ちゃんったら)


不知火(まあ支給品の説明なんて真面目に聞いてる人はそういませんしね)

不知火(なるほど、司令はこうなることを見越して、ですか)

不知火(支給品は最初実弾が入っていません、お二人もよくご存じですが)

不知火(全く、お行儀の悪い姉妹もいたものです、どうなってもしりませんよ)


睦月(や、止めた方がいいって)

如月(もう、睦月ちゃん心配しすぎだから、それじゃあ、いくわよ)ジャキッ

提督「そして、この軽さが生かされるのが俺の緊急時だ、なぜなら」

提督「ちょっと、二人ともちゃんと聞いてるか」クルッ

如月「それ、どっかぁん!」パンッ ザシュッ

提督「ぁ...」ドクドク

不知火「ひっ...!」


睦月「え?」

如月「あ、れ...」

提督「」バタッ

不知火「ひぁ、あぁ、あぁぁぁ...」ヘナヘナ

不知火「し、しれい、いや、いやぁぁ...」


不知火(あ、あぁ、ダメです、二人を監視しなきゃダメ、なのに)

不知火(いざ目の前にすると、うう、動揺が、止まらなくて)

不知火(なんで、なんで、涙が、涙が出て、きて)グスッ

不知火「あぁぁぁ、しれえぇぇぇ...」ポロポロ


如月「う、うそ、え、だって、支給品って最初、え」

如月「実弾、入ってないのに、でも、て、提督は」

睦月「如月ちゃんの、せいだよ」ボソッ

如月「ち、ちがう、そんな、そんなつもりじゃ」

睦月「違わないっ!」バッ

睦月「全部!全部!如月ちゃんのせいだよ!この、人殺し!」ガシッ


如月「ちがう、ちがうの、本当に、ほんとうにっ」

睦月「如月ちゃんが!殺したじゃないの!今!ここで!」

如月「ちがう、違う!違う!違う!うわあああああああああああ!」

睦月「何が違うの!司令官を殺したのは、事実じゃない!」

睦月「私!まだ伝えてないこともある!私だけじゃない!それなのに!」


睦月「返して!司令官を返してよ!返して!返せ!」グッ

如月「むつき、ちゃん、く、くるし」

睦月「返せええええええええええええええ!」ググッ

如月「ぁ、ぁ、っぁ、や、め」

パァンッ

睦月「なっ!」バッ


如月「が、かはっ」ドン

提督「勘弁してくれ、血気盛んな奴多すぎだろこの鎮守府」

不知火「あ、し、しれい...」

提督「さて、お話の続きだ、この単装砲は緊急時、人間にも扱えるようになっている」

提督「反動が大きく使用は難しいが、このように空砲でも十分に相手を威嚇することは出来る」

提督「と、いうことだ、大丈夫か如月、立てるか」


如月「へっ、あ、うん、ありが、とう」

睦月「しれい、かん?なんで、え、でも、さっき」

提督「冷静になれ睦月、支給品に最初から実弾が入ってるなんてありえんだろ」

睦月「あっ、そ、それじゃあ、これは、どういう」

提督「単なるドッキリだよ、ほら、そう強張んな」


睦月「な、なあんだ、ドッキリ、かぁ、司令官、生きて、生きてるん、だ」

睦月「だ、だって、そうしないと、な、涙が、止まらなく、て」

睦月「し、しれいかん、司令官の、ばか!ばか!う、うぅ」

睦月「うわあああああああああん!しれいかああああん!」

提督「ほらほら、だからそう泣くなって、な」


提督「如月もごめんな、俺が全部悪い、睦月のことを責めないでくれ」

如月「ほ、本当よ、こんな悪趣味なことは、これからは絶対に、やめ、て、うぅ」

如月「うわああああん!生きててよかったああああああああ!」

提督「如月もかよ、ああもう、泣くだけ泣いとけ」


不知火「...」グスッ

提督「ああ、もう一人増えたところでなんも思わんからお前も泣きたいなら泣けよ」

不知火「大丈夫です、お見苦しいところは見せられませんから」ズビズビ

提督「はいはい、鼻水拭いてから喋ろうな」


睦月「本当にごめんね、如月ちゃん、あんなことしちゃって」

如月「ううん、如月も、睦月ちゃんの忠告無視して、ごめんなさい」

提督「ほら、辛気臭い顔すんな、間宮アイスの無料券やるからこれで機嫌直して来い」

提督「ただし、大盛アイスの無料券、それも一枚だけだからな」

提督「ちゃんと二人で半分個して食べろよ」


如月「ふふっ、提督も優しいところあるのね、でもこういうことは二度としないでよ」

睦月「本当に!今度あったら、睦月ちゃん只じゃおきませんからね!はい!」

提督「はいよ、それじゃあ二人共、後はゆっくり休めよ」

如月「ええ、そうさせてもらうわ、お疲れ様、提督」

睦月「はい!失礼します!お疲れ様でした!」

提督「ああ、お疲れ様」


提督「まあこうして、最悪のケースは防げたが」

提督「不知火、秘書艦として感情と仕事は分け隔てた方がいいぞ」

不知火「...はい」ションボリ

提督「今はこのような形だが、流れ弾や誤射が絶対ないとは言い切れない」

提督「そういう時、この鎮守府をまとめるのはお前だからな、不知火」

不知火「はい、すいませんでした」ドヨーン


提督「分かればいい、と、いうことでだ」

提督「俺も感情と仕事は分け隔てて考えようと思う、不知火」スッ

不知火「なんでしょう、か...」

提督「不知火」ナデナデ

不知火「し、しれい...?」

提督「ドッキリだとしても、だ、あそこまで気に掛けてくれて嬉しくない奴はいない」

提督「不知火、ありがとう」

不知火「...それは、ずるいですよ、司令」グスッ


【 摩耶 】

提督「落ち着いたか、不知火」

不知火「ええ、なんとか、すいませんでした」

提督「今回、沢山の迷惑をお前に掛けているからな、どうってことないさ」

提督「っと、もうこんな時間か、夕餉前に一般業務を半分は終わらせておきたいな」

不知火「と、なると時間的にはこれが最後ですね」

提督「そうだな、本日分の仕事納めだ」


不知火「その言葉、昨日も聞きましたよ」

提督「ああ、まだ全体の仕事納めじゃないからな」

不知火「なるほど、明日は何時に来ればよいですか」

提督「そうだな、少し朝早い方が助かる、いつもの始業時刻と同じだ」

不知火「分かりました、それではマルキューマルマル、執務室ということで」

提督「明日が正真正銘最終日だ、気合い入れてこいよ」


不知火「もちろんです、それでは、明日に繋げる本日の仕事納めですね」

提督「ああ、こんな小春日和の一日はそうだな、摩耶にでも納めてもらうか」

不知火「摩耶さん、ですか、それはそれは楽しそうなことになりそうですね」

提督「ああ、あいつは竹を割ったような性格の奴だからな」

提督「口は悪いかもしれんが、ある意味、一番素直な奴だよ」


不知火「随分とお気に召されているようですね」

提督「この鎮守府はお利口さんばかりだからな、ああいう奴は良い意味で浮くさ」

不知火「すいませんね、お利口さんで」

提督「別に利口な奴が嫌いだとは言ってない、賢い奴は大好きだ」

不知火「それはどうも、今日の締めは如何にして?」


提督「そうだな、少し試してみたかったことがある」

提督「折角の機会だ、そいつをちょっとやってみたい」

不知火「なるほど、不知火の役割はありますか」

提督「有る、大有りだ、むしろお前が今回の主役だ」

不知火「それは腕が鳴りますね、主演女優賞を獲得出来るように頑張りますよ」


提督「ほざけ、直に摩耶が来る、すぐに用意するぞ」

不知火「分かりました、では、不知火が立つ部隊の脚本を教えていただきましょう」

提督「なに、話は簡単だ、とても簡単だ」

提督「不知火、俺を射殺しろ...今度は泣くなよ?」


摩耶「なんだぁ提督の奴、急に呼び出しやがってよぉ」

摩耶「ちくしょう、アタシが何したっていうんだ、くそ」

摩耶「ダメだ、冷静に考えたら思い辺りしかねぇ、しゃーねえや、腹くくるか」

摩耶「失礼するぜ、提督」ガチャッ

摩耶「この摩耶サマ直々に怒られにきた、ぞ...」


摩耶「な...っ!」

提督「ま、摩耶!助けてくれ!こ、殺され...がはっ!」

不知火「全く、お喋りな人ですね、最期くらい黙っていただけないでしょうか」

摩耶「オ、オイ!何やってんだ不知火!」

不知火「何って、見れば分かるでしょう、理解の足りない人は好きではありませんよ」


摩耶「そんなの知ってる!どうしてってことだよ!」

不知火「どうして、ですか、摩耶さんは面白いことを言う人ですね」

摩耶「っんだと!」

不知火「まず、こういうことをしている時点で、不知火が貴方達の敵であることは明らかです」

不知火「味方でもないのに、そう易々と情報を教える馬鹿がどこにいるでしょうか、それに」

不知火「理由など、言わなくてもお分かりでしょう?」


摩耶「...テメェ!まさか大本営の!」

不知火「あらあら、不知火としたことが、お話が過ぎましたね」

不知火「ヒトゴーフタマル、司令、人生の終業時刻です、冥土のお土産にどうぞ」

提督「はっ、仕事終わりの一杯も味わえねえ業務なんざハナからお断りだ...っ」ゼエゼエ

不知火「そうですか、それは残念です」ガチャッ


摩耶「やらせるか!」ダッ

不知火「練度を考えてください、それは無謀というものですよ、摩耶さん」ガシッ

提督「摩耶!」

摩耶「がっ...くそぉ...っ!」

不知火「さて、お別れの時間です、司令、今までお世話になりました」

提督「く...っ!」


摩耶「待て!待て!待て!なんでだ!なんでだよ!」

摩耶「例えお前が大本営からの回しモンだったとしても、そうだとしてもだ!」

摩耶「その気持ちは!提督を思うその気持ちは本物じゃなかったのかよ!」

摩耶「オイ!答えろよ秘書艦不知火!」

不知火「...感情と仕事を分け隔てずに任務を遂行出来るほど」

不知火「この世界は、甘くないんですよ、摩耶さん」


摩耶「...それでも!」

不知火「もう何も言いません、司令、さようなら」ジャキッ

摩耶「ま、待ってくれ!頼む!お願いだ!」

摩耶「止めろ!止めろ!止めろおおおおおおおおおお!」

不知火「...ごめんなさい」

パンッ


摩耶「あ...」

不知火「......」

提督「」ドクドク

摩耶「あ、ああ、あああぁぁ...」

摩耶「ああああああああああああああああああ!」


摩耶「うわあああああああああああああああああ!」ガバッ

不知火「なっ、がはっ!」ドサッ

摩耶「テメェ!よくも!よくも提督を殺したなああああ!」

摩耶「ぜってぇ許さねえ!殺してやる!殺してやる!殺してやる!」ググッ

不知火「あ、がはっ、やめ...!」


不知火(摩耶さんさっきと全然力が違って...まずい...)

不知火(あ、だめ、いき、が...)

摩耶「死ね!死ね!死ね!」

摩耶「死んじまええええええええええええええ!」

不知火「あ...しれぃ...たす、けて...」


提督「やめろ摩耶ああああああああああああああああああああ!」ガシッ

摩耶「うわああああぁぁぁ、ああぁぁ、あ...あ?」ポカン スルッ

不知火「かはっ...し、しれぃ...」

提督「大丈夫か不知火!怪我してないか!なんともないか!」

不知火「え、えぇ、大丈夫、です」

提督「お前ヤバイならもっと早く助け呼べよ!無理するのはお前の悪い癖だぞ!」


摩耶「え、ちょ、ちょっと待てオイ!いったいどうなって」

提督「摩耶てめえええええええええええええ!」

摩耶「っ、は、はい!」ビクゥ

提督「テメェ俺の不知火に何やってやがんだああああああああ!」

摩耶「はぁ!だってこいつがお前のこと!」

提督「こいつがそんなことするわけねえだろ!」

摩耶「んなの分かるかよ!ってかいったいどうなってんだ!」


提督「不知火!お前ホントに痛いとこないんだな!」

不知火「大丈夫ですよ、司令、耳元で大声出されると、うるさいです...」

提督「心配したんだからな不知火!よかったあああああああああ!」

不知火「ほらほら、服が乱れますよ、落ち着いてください」

不知火「心配性ですね、司令は、ふふっ」テレテレ

摩耶「...何が何だかもうさっぱり分かんねえ」

摩耶「オーイ、お二人さん、オーイ、オーイ...」

また夕餉時に、後15レスぐらいです、何度も中段すいません


摩耶「さて、こんなもんか、反省したか、提督さんよ」

提督「ああ、誠意が足りないなら何度でも言ってやる、ごめんなさい」ボッコボコ

摩耶「これに懲りたら二度とこんなことすんじゃねーぞ」

摩耶「良いストレス解消になったぜ!じゃあな提督!」ガチャッ

提督「おう、それじゃあな、摩耶」


提督「ふう、さて、不知火」

不知火「はい」

提督「氷を持って来てほしい」

不知火「言われずともここに」

提督「助かるよ、くそう、あいつ容赦なく殴ってきやがって」

不知火「自業自得ですよ、全く、良い勉強になったのでは」

提督「とんだ仕事納めだよ、これが最後の一人で助かった」


不知火「一般業務がまだ残ってますよ、明日に回しますか」

提督「そういやそうだったな、仕方ない、今日中に終わらせよう」

不知火「不知火もお供しますよ、どうせ暇ですからね」

提督「ありがとう、今日くらいはお言葉に甘えようか」

不知火「あら、珍しいですね、いつもは拒むのに」

提督「たまには良いだろう、お前と過ごす業務漬けの夜があってもいい」

不知火「浪漫を微塵も感じさせない夜もあったものですね、お供しますよ」


提督「ありがとう、明日で鎮守府大ドッキリ大会は最終日となる」

提督「終わり良ければ全て良し、疲労を残さない程度にしろよ」

不知火「そのお言葉、そのままお返ししますよ、司令」

提督「はは、お前には敵わんな、全く」

提督「明朝、マルキューマルマル、執務室に来てくれ、頼んだぞ」

不知火「分かりました、司令...司令」


提督「どうした、朝早いから文句でもあんのか」

不知火「いえ、その...すいません、なんでもありません」

提督「言いたいことがあるなら言えよ」

不知火「いえ、大丈夫です」

不知火「口にしたくありません、ので」


提督「そうか」

不知火「はい、はい」

提督「夜ご飯は何の気負いもなく食べたい、頑張ろう」

不知火「分かりました」


不知火「......」

提督「......」

不知火「...司令」

提督「どうした」

不知火「絶対に、死なないでくださいね」

提督「藪から棒だな」

不知火「答えてください」


提督「...もちろんだ、不知火」

不知火「約束ですよ」

提督「ああ」

不知火「その言葉、信じてますからね」

提督「ああ、信じてくれ」

不知火「不知火はお利口なので、信じますからね」


不知火「それでは、司令、最後に」

提督「なんだ」

不知火「今日も一日、お疲れ様でした」

提督「ああ、不知火の方こそ、お疲れ様」



おしまい

月末とかに別スレ建てて続けると思います、次が最後になると思います
儚い僕っ娘とか口の悪い駆逐艦とか、一緒にされない姉妹とか秘書艦のお姉さんとか出すと思います
途中何度も抜けてすいませんでした、最後まで見ていただいてありがとうございました

また建てた時はお願いします、それでは失礼します

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年04月09日 (土) 14:26:12   ID: jdpIB-_R

いいね

2 :  SS好きの774さん   2016年04月11日 (月) 21:35:44   ID: gsvFv3td

お、大井っちとた、龍田ちゃんを…出して…

3 :  SS好きの774さん   2016年04月12日 (火) 23:30:55   ID: chdGZFEz

前スレ同様面白いです♩

4 :  SS好きの774さん   2016年04月14日 (木) 03:37:40   ID: XgjaFKLE

やっとでてきたか

5 :  SS好きの774さん   2016年04月23日 (土) 22:43:28   ID: nLLrRFfe

是非時津風もお願いします

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