先輩「時代はギャルなのだよ!」後輩「まーた、始まった」 (100)

今週も自分の妄想が溜まってきたんで垂れ流していきたいと思っています。
よろしければ楽しんでやってください。

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先輩「見た目は派手! 校則破りも厭わないハレンチな格好! それは性に目覚めた男には強烈過ぎる爆弾!」

後輩「あーはいはい。清楚の次はそういう感じの子がいいってことっすね。先輩も多趣味でいらっしゃる」

先輩「同性にも異性にも気軽にボディタッチなんかしちゃったりしてウブな男性諸君を盛大に勘違いさせること間違いなし!!」

後輩「そんでおっさん相手に援助交際なんかさせちゃったりしちゃうんですよね。いわゆるヤリマンビッチってやつっすよ」

先輩「お前はどうして物事をそう歪んだ方向でしか見ることができないんだ……」

後輩「そういう性分なもんでして」ケッ

先輩「しかーし! 俺はそういうギャル業界に一石を投じてみたい!」

後輩「いちいち仰々しいっすね……それでなんなんですか?」

先輩「見た目ギャル。心は清純。これって良くない?」

後輩「そんなのいるわけないでしょ」ハァ

先輩「一見進んでいると思わせといていざそういう時になったら途端に顔を真っ赤にさせて俯いてしまう。そのギャップがたまらんのだよ君ぃ!!」

後輩「まーたそんな天然記念物に目をつけて……いいですか? いい加減現実世界から戻ってこないとえらいことになりますよ?」

先輩「黙れい! 男の妄想というものはいわば負のスパイラル! そう簡単に抜け出せるものではないのだ! お前もそういう経験あるだろ!?」

後輩「……僕はそういうのありませんよ、一緒にしないでください」

先輩「このリアリストめ! いいか! 俺はギャルなんだけど心は清純ですごいギャップが男心をくすぐる……そういう女の子を彼女にしたい!!」デーンッ

後輩「馬鹿だ……本物の馬鹿がここにいる……」







生活指導「こら! お前たち! なんだその服装は! スカートはひざ下5センチだろう!」

ギャル「えー、別にこれくらいいいじゃないですかー。今時そんなロングで履いている奴いないですよ?」

友A「そうそう! もしかして私たちの生足見て興奮しちゃった?」

生活指導「なにを馬鹿なことを言っているんだ! 校則に沿って正しい服装をしなさいと言っているんだ私は! それに髪もお前ら染めているだろう! なんだこの茶髪は!?」

友B「あたしは自毛だっての!!」

友C「もう行こ」

生活指導「あ、こら待ちなさい!」

ギャル「そういうことなんで、ごめんねー!」

生活指導「この……いつか痛い目に遭うぞ!」

ギャル(いつか痛い目……ね。痛い目ならとっくのとうにあってるんだけどな)アハハ



友A「あー、生活指導マジでムカつくわ」

友B「なー、髪型だの服装だのグチグチ……そんなんであたしのなにがわかるんだっつーの!」

友A「あんたすごい茶色だもんねー」

友B「これは自毛だって何回も説明してるってのに……あの野郎……!!」

友C「本当にあいつウザいわ。ギャルもそう思うでしょ?」

ギャル「え? ああうん……そうだね」

友B「どうしたのあんた? 調子悪い?」

ギャル「いや、そんなことないよ。別にそんなことない」

友A「あ、やばっ。あたしこれから彼氏とデートだったわ。ごめんね」

友C「あ、私もー。今日こそ彼氏にバック買ってもらおうっと」

友B「また大学生の彼氏?」

友C「そうそう……なんかどっかの会社の社長の息子らしくってさ、バンバン貢いでくれんの」

友A「なにそれうけるー!」

友B「そういう男に限ってなんか裏があるもんだぞー。気をつけなよ?」

友C「だーいじょうぶだって。彼ったら私の美貌にメロメロなんだから」

友A「そういえばギャルは? 今日はなんか予定ないの?」

ギャル「え!? あたし!? あたしは……もちろん彼氏とデートだよ! 決まってるじゃん!」

友B「げっ、なんだよあたしだけのけ者か?」

友A「ふふっ、ご愁傷様ー! それじゃあね!!」

友C「あたしもこっちだから! じゃあね!!」

友B「んじゃーねー!!」ブンブン

ギャル「………」


友B「あれ? あんたは行かないの?」

ギャル「え!? あ、いやあたしは……こっちだから!」

友B「そっち校舎だよ?」

ギャル「えっと……教室にぃ……忘れ物? しちゃったから!! じゃあね!!」ダッ

友B「……変な奴」



タッタッタ……


ギャル(きっかけは些細なことだったんです。中学の時に仲良くなった子達が初めての夏休みを経てなぜか派手な格好になっていて。私も彼女たちになんとか合わせないといけないと思って自分でもビックリするくらい制服とか崩しちゃって。本当はダメだってわかってるのに髪も染めちゃいました。それから高校に上がってからも自然とそういう友達の輪に入ってしまい……)

ギャル(私はみんなに嘘をつきながら『なんちゃってギャル』を続けてしまっています……)


ギャル「はぁ、いつまでこんな生活続けなきゃならないんだろ……」

「なにか困り事か?」

ギャル「ぴゃう!!」ビクゥゥッ

「くっくっく! 相変わらずユニークな驚き方だな」

ギャル「なんだまたあんたか……あたしになんの用? 生徒会長さん?」

生徒会長「校内でため息をついている生徒を見逃すわけにはいかないだろ? 俺でよかったら相談に乗るぞ?」

ギャル「そういうの間に合ってるんで」

生徒会長「遠慮なんかするなよ。俺とお前の仲じゃないないか。なにか悩み事があるのだろう?」

ギャル「うっざい。そういう男は嫌われるよ?」

生徒会長「むっ、生徒の投票によって決められた生徒会長が嫌われているとは……中々どうして不思議な話だな」

ギャル「そんなの知らないわよ。あたしはあんたに投票した覚えなんてないし。あーし、これから彼氏とデートがあるんで」スタスタ


生徒会長「で、デート!?」

ギャル「……なによ?」

生徒会長「い、いや、学生の本分は勉強だろう! それを無視してデートとは感心しないな! 彼氏共々説教してやらねば……そいつはどんな男だ!?」

ギャル「へぇ、随分とお堅いこというんだねぇ、生徒会長さんは」ニヤニヤ

生徒会長「馬鹿な……これは校則で決まったことであって決して俺が堅いとか柔らかいとかそういうことでは……」

ギャル「あれぇ? もしかしてあんたってば童貞なの?」

生徒会長「ど、どどどど童貞ちゃうわ!」

ギャル「あはは! 必死に否定しちゃってかわいい」ズイッ

生徒会長「ちょっ!? ち、近い……」

ギャル「あーしね、これから彼氏とあーんなことやこーんなことして遊ぶんだー」ウフフ

生徒会長「あーんなことや……こーんなこと!?」

ギャル「よかったら、あんたも一緒にやる?」

生徒会長「な、なんだって!?」

ギャル「だからぁ……一緒にあーんなことやこーんなことしなぁい?」ウフッ

生徒会長「……くぁ///」ボンッ

ギャル「あっはっは! なに本気にしちゃってんの!? 馬鹿みたい! そんじゃあね!」タッタッタ

生徒会長「あ! こら待て!!」



――自宅――


ギャル「なんであんなこと言っちゃったんだろ私……私、そんなエッチな子じゃないよ……」ズーン

母「どうしたの? そんなに落ち込んで」

ギャル「お母さん……いや学校でね」

母「またいつものこと? あんたも自分で気づいてるんでしょ? 今のキャラが無理してるってこと」

ギャル「わかってるんだけどさぁ……これやめちゃったら友達いなくなっちゃうし」

母「そんなんでいなくなっちゃう友達なら必要ないんじゃない?」

ギャル「お母さんには女子高生の友達事情に詳しくないからそんなこと言えるんだよぉ……」ハァ

母「自分に似合わないことして思春期の貴重な時間を無駄にすることの方がお母さんもったいないと思うんどねぇ……お父さんからもなんか言ってあげてくださいよ」

父「まぁ、この子にもそれなりの事情があるってことだろう。好きにやらせたらいいじゃないか」

ギャル「お父さん……」

父「お父さんはお前がどんな格好をしたとしてもちゃんと物事の善悪を考えられる正しい子だって信じているよ」

ギャル「……ありがとう。お父さん!」

父「ちなみにお父さんとしては無理してギャルの格好をしている娘ちゃんをすごくかわいいと思っているぞ!」バーン

母「あんたはまた馬鹿なこと言って!」バシーン

父「痛い、痛い……母さん痛いよ!」

ギャル(二人とも仲いいなぁ……)


――翌朝――

ギャル(ああ、今日も自分を偽る生活が始まる……憂鬱だ)



図書委員「演劇部さん。頼まれていた本なんだけど……これでいいかしら?」

演劇部「わぁ! さすが図書委員さん! この本って中々見つからなかったんだよねー!」

図書委員「まぁ、この本はマイナー中のマイナーだから仕方ないわ」

演劇部「ありがとー! 図書委員さん!!」




ギャル(ああ、いいなぁ……どちらかというと私もこんな感じの綺麗な高校生活を送りたいなぁ……なんて)ハァ


友B「おっす、ギャル。元気してる?」

ギャル「おっすおっすー。今日ももち元気だよー!」

友B「なーに? それは昨日彼氏とよろしくやっちゃったってやつ~?」ウリウリ

ギャル「ま、まぁ、そんなとこかな?」

友B「見せつけてくれちゃってこのこの!」

ギャル「あはは……」

ギャル(ごめんなさい。Bちゃん。私、彼氏なんかいないんでよろしくなんて出来るわけないんです……。というよりよろしくってなんですか?)アハハ


ガラララ……


ギャル「おっすー。みんなおっはよー」

友A「あ、ギャル。それにBもおはよう……」

ギャル「あれ? どうしたのA。なんかテンション低くない?」

友A「そ、それがね……」

友B「どうしたのC? その顔?」

ギャル「うわっ、すごい腫れてる……大丈夫?」

友C「……彼氏と喧嘩した」


友B「喧嘩? そりゃまたどうして?」

友C「彼がお風呂に入ってる時に携帯見たら他の女とメールしてて……それで」

友B「あちゃー、なんでそういうことしちゃうかなぁ」

友C「だって、なんか最近様子が変でさ、気になるじゃん。そしたら……浮気してた」

友B「浮気!?」

友A「それで喧嘩になったってわけ」

友C「携帯のこと問い詰めたらいきなり……」

友B「引っぱたかれたってわけ? 男の風上にもおけねぇな! その男! なあ、ギャル!」

ギャル「え? そ、そうだね! ほんと、信じらんない!」

ギャル(なんか私のあずかり知らないところでとんでもない修羅場が展開されてたー! 彼氏がお風呂に入っている間ってそういうことなの? そういうことなんですか!?)

友C「私、もう別れる!」

友B「おうおう、別れちゃいな別れちゃいな。そんな男ろくなもんじゃないって!」

友C「B~!!」ダキッ

友B「はっはっは……これでお前も彼氏いない同盟の仲間入りなのだ~」

友A「あんたはもうちょっと空気呼んで発言しなさいよ……ねぇ、ギャル?」ハァ

ギャル「そ、そうだねぇ」アハハ



――放課後――


ギャル「私の知らないところでみんな色々と進んでるんだなぁ……」ハァ

生徒会長「また悩み事か?」

ギャル「……なんであんたはあたしの前にこういつもいつも現れるの? ストーカーかなにかなの?」

生徒会長「それは困った。この国では幼馴染と会話を試みるとストーカー扱いされてしまうのか」フム

ギャル「ばっ!!」ガタッ

生徒会長「な、なんだいきなり!?」

ギャル「……お願いだから他の人には秘密にしておいてよ」ヒソッ

生徒会長「なにがだ?」

ギャル「あたしとあんたが幼馴染同士であるってことをよ!」

生徒会長「なぜだ!?」

ギャル「あんたに昔のことペラペラ喋られるとあたしの学校生活に支障がでるのよ!」


生徒会長「そういうもんか? 俺はそう思わないが……」

ギャル「それに、生徒会長であるあんたがこんな学校のルールを守らないような人間と一緒にいちゃ困るんじゃない? 周りにも噂されるわよ? あの生徒会長はビッチと一緒にいるってさ」

生徒会長「俺がそんな噂で動じる様な男だと思っているのか?」

ギャル「思ってるわよ。あんた昔はあたしよりも小さくて泣き虫だったじゃない」

生徒会長「あ、あれは小学校の時の話だろ!」

ギャル「とにかく! あたしに付きまとうのはやめてくれる? はっきり言ってウザイのよ」

生徒会長「ぐっ……」

ギャル「それじゃあ、あーしは彼氏とデートだから。んじゃーねー」ヒラヒラ

生徒会長「……本当は彼氏なんかいないくせに」ボソッ

ギャル「なぁっ!!!」グサッ

生徒会長「本当はこのあとおばさんと一緒に夕飯の買い出しに行って、一緒に夕飯を作りながらおじさんの帰りを待つ健気な娘のくせに」ボソッ

ギャル「な、ななな!! どうしてそれを……!」

生徒会長「昨日ちょっとおばさんに用があってな! その時に聞いたんだよバーカ! お前、なに無理してそんなキャラ作ってんの!! このなんちゃってギャルが!」

ギャル「そ、そそそそんなんじゃねーし! あーしったら日頃から男を取っ替え引っ替えして楽しんじゃってる本物のギャルだし? 今日も渋谷でパーリナイッだしぃ!」

生徒会長「嘘つけ! そんなやつ中間テストで学年3位なんかとるか! どうせ帰って真面目に勉強してんだろ! 予習も復習もばっちりか? おお?」

ギャル「はぁ? あーしったら新世代のギャルなんだしぃ! 遊びも勉強も両立しちゃってるハイブリットギャルだしぃ!!」

生徒会長「そんな進研○ミに出てくるようなギャルなんかいるか!」


副会長「……なんの騒ぎですか。会長」


ギャル「あ……」

生徒会長「ああ、副会長か」


副会長「会議の途中で抜け出したかと思ったらまったくこんなところで油を売っていたのですか?」ギロッ

ギャル「うっ……」

生徒会長「いや、これはだな……」

副会長「ただでさえ抱えている仕事が多いというのに困ります」

生徒会長「すまない」

副会長「あなたも」キッ

ギャル「え……?」

副会長「会長は忙しいんです。仕事の邪魔をするというのならさっさとどこかへ行ったらどうですか? 頭の悪そうな連中ならいっぱいいるでしょう? なにも忙しい会長を捕まえてふざけている暇などないはずです」

生徒会長「副会長! それは違う。俺から彼女に……」

副会長「理由はどうあれ、彼女があなたの時間を奪ったのは事実です」

生徒会長「しかし……」

ギャル「あ……ごめんね。忙しいって知らなくてさ。あたし行くから。邪魔してごめねんね。それじゃあ」タッタッタ

生徒会長「お、おい!!」

副会長「さぁ、会長。行きましょう。まだこなすべき仕事が残っています」

生徒会長「あんな言い方はないんじゃないか?」

副会長「……はて? なんのことを言っているのかわかりません」

生徒会長「どうして彼女にあんなひどい言い方をしたのかと言ってるんだ?」

副会長「いいですか? 彼女はこの学校にとって不要な存在です。規律を乱し、周囲に迷惑をかけるそんな存在なんです」

副会長「悲しいことにこの学校ではそういう輩が少なからず存在します。できることなら全てを排除してやりたいところですが私の権限ではそれはできません」

副会長「そのことから百歩譲って共存することは認めましょう。ですが我々の邪魔をすることは断固として認められません。私も会長も、同じ生徒会役員としてやるべきことがあるんです。それを邪魔するというのであれば私は全力で排除します……なにか問題がありますか?」

生徒会長「………彼女もこの学校の生徒だ。それを蔑ろにすることはできない」

副会長「5組のギャルさん……でしたか。彼女の噂は生徒会にも届いています。なんでも『男狂いのビッチ』だとか」

生徒会長「そんなことはただの噂に過ぎない! 彼女は……」

副会長「彼女は? なんですか?」


ギャル「あんたに昔のことペラペラ喋られるとあたしの学校生活に支障がでるのよ!」


生徒会長「……なんでもない」

副会長「反論が無いようでしたら仕事の続きと行きましょうか」

生徒会長「………わかったよ」






ギャル「……ただいまー」

母「あら、おかえり。今日は随分と遅かったのね」

ギャル「……お母さん、あいつに私のこと言ったでしょ」ジトッ

母「あいつって……ああ、生徒会長君ね。昨日ばったり会ってねぇ。つい話し込んじゃったのよ」ウフフ

ギャル「なんでそういうこと言っちゃうのかなぁ……私がキャラ作ってるのがバレちゃうじゃん!」

母「ああもう。そんなもんさっさと脱ぎ捨てっちゃえばいいのよ!」

ギャル「お母さんは私が学校で一人ぼっちになったっていいんだ……」

母「一人ぼっちじゃないでしょ? 生徒会長君がいるじゃない」

ギャル「えー!?」

母「あら、昔はあんなに仲が良かったのに……昨日久々にあったらいい男になってたじゃない。ありゃ狙い目だってお母さん思うわ」

ギャル「もう! 私とあいつはそんなんじゃないんだから……それにあいつ弱いし泣き虫だし」

母「そんなの昔の話でしょ?」

ギャル「もうこの話はおしまい! 私、明日の予習と復習するから!」

母「……本当になんちゃってギャルなのよね」ボソッ

ギャル「なにか言った!?」

母「ふふっ! なんでもありませーん!」




女の子「やめてよ……返してよ……」

いじめっ子「お前だけこんなの持って生意気だぞ!」

女の子「返して……返してよ……」

いじめっ子「うるさい!」

女の子「きゃっ! ………うううう」

男の子「待て! その子をいじめるな!」

いじめっ子「またお前かよ……しつこいぞ!」

男の子「うぉぉぉぉぉ!!!」

いじめっ子「離れろ……よ!!」

男の子「うわぁぁ!!」

女の子「だ、大丈夫?」

男の子「まだまだぁ!! うわぁぁぁぁ!!!」グスッ

いじめっ子「おりゃ!!」

男の子「うっ……うううう……うああああああ!!!」

女の子「もうやめて……お願いだから……」



ギャル「もうやめて!!!」


チュンチュンチュン………


ギャル「………なんだ、夢か」

ギャル「……嫌な夢見ちゃったな」ハァ


――学校――


友A「みんな、今日って空いてる?」

友B「どうしたのさ急に?」

友C「あたし空いてるよ。昨日彼氏と別れてきたし」

ギャル「あ、やっぱり別れたんだ」

友B「女に手をあげる男なんて最低だからね。あたしも一緒に言ってぶっ飛ばしてやった!」

友A「ぶっ飛ばすなんてあんたね……」

友B「これでも黒帯だからね!」

友C「Bちゃんすごいかっこよかったよ! ありがとね!」

友B「いいってことよ!」ヘヘッ

ギャル(別れ話ってそんなにさらっとやっちゃうものなのか……)

友A「ギャルは? 今日って空いてる?」

ギャル「あたしもダイジョーブ。昨日は多めに復習も予習も終わらせたから」

友B「え? なにそれ。あんたそんなことしてんの?」

ギャル「え!? あ、いやそれは……」アタフタ

友A「知らないのB? ギャルってちょー頭いいんだよ? 確か学年トップ」

友B「マジ!? 知らなかった……」

友C「人は見かけによらないってのはこれだね」ニヤッ

ギャル「いやいや! あたしそんなんじゃないから! トップとかでもないし!!」

友A「じゃあ、何位だったのよ?」

ギャル「さ、3位……」

友C「あんま変わんないじゃーん!」

友B「テスト前にはギャルにノート写させてもらおう。そうしよう!」


ギャル「なんでそんな話になってんのよ……それでA。なんかあんの?」

友A「なんか彼氏がさ、あたし達とカラオケでも行かないかってさ」

友B「Aの彼氏って確か隣の公立だったよな?」

友A「そうそう。多分女子との出会いに飢えた男達でも連れてくるんじゃない? なんか可哀想だから遊んであげてよ」

友C「ってことは新しい出会いのチャンス?」

友B「おっ! さすが小悪魔のC! 目の色が変わったね!」

友C「このまま男に振り回されて終わるのは嫌だからね。早く新しい恋を始めてあの苦い記憶を忘れないと。なんなら一回やっちゃうだけでもいい」

ギャル「や、やっちゃう!?///」カー

友B「ば、馬鹿! 朝っぱらからなに変なこと言ってんだよ!」

ギャル「そ、そうだよ! やっちゃうってどういう……」

友C「なに赤くなってんのよ? ギャルだって彼氏いるでしょ? そんなの日常茶飯事じゃないの?」

ギャル「あ、あったりまえじゃない! 私なんか彼氏に飽き足らず男なんて取っ替え引っ替えよ!!」

友A「おおお……流石に私でもそれはできないわ」

友B「なんていうか……尊敬するぜ! ギャル!!」

ギャル「あ、あははは……」

友A「それじゃ、放課後に駅前で集合だから。よろしく」

B・C「「りょーかい!!」」

ギャル「りょ、りょーかい……」



――放課後――


ギャル「またやっちゃった……どうして私あんなこと言っちゃうんだろう? 嘘なんかついたってしょうがないのに」ズーン

生徒会長「またそんなところで黄昏てるのか?」

ギャル「あ……」フイッ

生徒会長「待て、どこへ行くんだ?」

ギャル「別にどこだっていいじゃん」

生徒会長「いいわけがない。俺はお前に用があるんだよ」

ギャル「そんなこと言っちゃっていいの? あたしといたらあんたのこわーいお仲間がまた来ちゃうよ?」フフッ

生徒会長「……昨日はすまなかった。気分を悪くしただろう。どうしても謝りたくてな」

ギャル「変なの。真面目な生徒会長さんが不真面目なあたしに謝るなんて」

生徒会長「……もういい加減にしないか? お前はそういう人間じゃないだろう?」


ギャル「意味わかんない。あたしはずっと前からこんなんだっつーの。あんたこそずっとあたしのこと勘違いしてんじゃないって。ウザイよ」

生徒会長「そうやって違う自分を演じてなんになるんだよ? お前はそうやってこれからも嘘をつき続けるのか? そんなのお前が辛いだけだぞ?」

ギャル「知ったような口聞かないで。あたしはあたしが思った通りのことをするだけだから。それじゃ、友達待たせてるし行くわ。男待たせてんのよね」

生徒会長「どうせそれも嘘だろ」

ギャル「残念でしたー、今日はAちゃん達と一緒に駅前のカラオケに行くんですー。他の学校の男の子も一緒だもんね~」

生徒会長「なに? なんだと!?」

ギャル「じゃあ、そういうわけなんで! 真面目君の生徒会長さんはお仕事頑張ってくださーい!」タッタッタ

生徒会長「ちょっと待て! そりゃどういうことだ! おい!!」

――カラオケボックス――


友B「今日は最後まで盛り上がっていくぞぉぉぉ!!」ガッ

A・C「おおお!!!」

ギャル「お、おお……」

ギャル(うわぁ……カラオケボックスなんて久々にきたかも。最後に来たのはいつだったけなぁ……)

友C「ほら、ギャルも曲入れなよ」ズイッ

ギャル「え? あたしも歌うの?」

友A「当たり前じゃん。なんのためにカラオケ来たと思ってんのよ」

A彼氏「こら、A。あんまりグイグイ勧めるなよ。ギャルちゃん困ってるじゃん」イチャ

友A「ちょっと! もうどこ触ってんのよ。今日はそういうんじゃないって言ったでしょ?」イチャイチャ

ギャル(うわっ! うわぁぁ///!!)

チャラ男「ギャルちゃんは普段なに歌うの? やっぱりアゲアゲの曲!?」

ギャル「は、はい!?」

茶髪「アゲアゲの曲ってなんだよ……」

イケメン「みんなかわいいからどんな歌でも俺にとっては嬉しいかな」

ギャル「そ、そうなんだ~」

ギャル(どうしよう……こういう時に歌ったらいい曲がなにかわからない……)

チャラ男「じゃあさ! ギャルちゃん俺とデュエットしねぇ!?」

ギャル「でゅ、デュエット!?」

友B「だーめ、ギャルとデュエットするのはあたしなんだから! なー、ギャル?」

ギャル「そ、そうだよー! あんたらなんかがあたしと一緒に歌うのなんか百年早いっつーの!」

チャラ男「うはー! 厳しいねー! そんな君もかわうぃぃねぇぇ!!」

茶髪「ごめん、こいつ絶妙にウザイから気をつけて」

ギャル「あはは……」

友C「はーい! わたし、アゲアゲの曲いっちゃいまーす♪」

チャラ男「おお!! いいぞいいぞー!!」






生徒会長「なんだ、もうこんな時間か」

会計「ああ……なんだってこんなに仕事があるんっすか……」

書記「……忙殺とはまさにこのこと」

生徒会長「まぁ、この学校は生徒の自主性を重んじているからなー。色々やろうとすると色々と仕事が
増える」

会計「忙しい生徒会なんてアニメや二次元の世界だけだと思ってたっす」

生徒会長「ははっ、俺も生徒会に入るまではそう思ってた」

会計「だったら会長はなんで金髪縦ロールのお嬢様風じゃないんっすか?」

生徒会長「お前、情報偏ってんな」

書記「……大体理事長の孫か財閥の娘」

生徒会長「でな、大体主人公の邪魔ばっかしてくんだよ」

会計「それでツンデレなんっすよね」

書記「……『べ、別にあなたのためじゃありませんわ!』」

生徒会長「お、書記さんわかってるね!」

書記「……ゲーマーとしては当然のこと」


副会長「そんなことばかり言ってるから仕事が終わらないんじゃないんですか?」ハァ

会計「副会長ー、今はそういう正論言う時間じゃないっすよー」グデー

副会長「事実です。手を動かしてください。手を」

生徒会長「へーい」

書記「……御意」

副会長「会長。次の生徒総会の議題です」スッ

生徒会長「なになに……野球部の部費を更に上げろ? これどこから?」

副会長「野球部の主将からですね」

生徒会長「そんなの理事長に頼めばいいだろうが……なんでこんな案が生徒総会の議題に上がるんだよ?」

副会長「こちらが調べたところによるとどうやら裏で野球部のコーチが糸を引いてるみたいですね」

書記「……生徒の方から提案が出れば動かざるを得ない」

生徒会長「確かにうちの高校は甲子園常連だからそれなりに優遇しているつもりなんだけど……そういうのあんまり良くないと思うんだよなぁ」

会計「ですねー。うちの高校、野球部が幅をきかせちゃってきかせちゃって超迷惑なんっすよー」

書記「……練習時間を割くために授業サボったりしてる。先生は黙認状態」

副会長「由々しき事態ですね」

生徒会長「まぁ、ちょっとやりすぎな感じではあるな。流石に」

副会長「校内からも野球部の件に関して苦情があがっています。なにか手を打った方がいいかと」

生徒会長「監督はいい人なんだけどなぁ……あのコーチがなぁ……」

書記「……あいつは人間のクズ」

副会長「口は慎みなさい。仮にもこの学校の職員ですよ?」

書記「……でも事実」


生徒会長「野球部は他の部活に比べてかなり優遇されている。上の人間がGOを出すなら俺たちはなにも言えないが、この件に関しては俺たちの見解は……」

会計「NOっすね」

書記「……断固拒否」

副会長「議論に値しません」

生徒会長「了解。副会長。反論のための情報集めを頼む。俺も野球部と直接交渉でもしてみるよ」

副会長「了解しました。それでは次の案件ですが……」


ピリリリリリ………


生徒会長「おっ、悪い」

副会長「……会長。校則では携帯電話の持ち込みは特に禁止されていませんが会議中は電源を切っておくべきでは?」

生徒会長「だからごめんって」

会計「相変わらず副会長は堅いっすねー。さすが『鉄の女』」

書記「……アイアンメイデン」

副会長「人をイギリスの政治家みたいに呼ぶのはやめてください」

生徒会長「誰からだろ……あれ? おばさんからだ。悪い、会議は一旦中止。ちょっと待っててくれよ」

副会長「……しょうがありませんね。会長が戻るまでの間、我々だけで生徒総会の準備をしましょうか」

会計「え? でも会議は中止って言ってたじゃないっすか」

副会長「会議は中止でも準備はできるでしょう?」

書記「………ゲームしたい」

副会長「さぁ、仕事に取り掛かりますよ。それと校内にゲーム機の持ち込みは禁止です。なんど言ったらわかるんですか?」

書記「……私からゲームを奪ったら衰弱死する」

会計「マジっすか!?」

副会長「そんなわけないでしょう……」ハァ





生徒会長「はい、もしもし」

母「生徒会長君? 今どこかしら?」

生徒会長「学校ですけど……なにかあったんですか?」

母「それがね……ギャルがまだ帰ってないのよ。いつもはもう帰ってきても全然おかしくないのに」

生徒会長「え? まだ帰ってきてないんですか?」

母「そうなのよ……あの子ったらどこ行っちゃったのかしら……生徒会長君、なにか聞いてない?」

生徒会長「……あ」


ギャル「残念でしたー、今日はA達と一緒に駅前のカラオケに行くんですー。他の学校の男の子も一緒だもんね~」


母「生徒会長君?」

生徒会長「あ、いや実はですね……」






生徒会長「悪い、待たせた」

副会長「いえ、それで次の資料なんですけど……」

生徒会長「その前に、会計」

会計「なんっすか?」

生徒会長「駅前にカラオケボックスってあるか?」

会計「駅前っすか? たしか、一軒あったっすよ」

生徒会長「そうか……」

副会長「どうしたんです? いきなり」

書記「……打ち上げ?」

副会長「このタイミングでそれはないでしょう……」

会計「あーでもそこのカラオケボックスだったらやめておいたほうがいいっす」

生徒会長「どうしてだ?」

会計「あそこ隣の高校の学生のたまり場になってるんすよ」

副会長「隣の高校って……」

書記「……ガラが悪い奴ら」

会計「よく揉め事になるみたいであんまりおすすめしないっす」

生徒会長「そうか……悪いが今日はここまでだ。ちょっと用事ができた」

副会長「ここまでって……まだ途中ですよ?」

生徒会長「明日やる。とにかく今日はここまでだ。悪いな! それじゃ」

副会長「会長!? 会長ー!」

会計「どうしたんっすかね? 会長?」

書記「……なんか慌ててた」


――カラオケボックス トイレ――


友B「あああ……喉痛ぇ」

友C「あんなにマイク独占したらそうなるよ……」

友B「いや折角カラオケ来たんだからとことん歌わないとな!」

ギャル(知らない間にこんな時間になっちゃった……お母さんに連絡しておかないと)

ギャル(で、でも親に連絡していることなんかがバレたらみんなに白い目で見られる気がする……どうにかして一人にならないとね)

友B「あれ? Aは?」

友C「彼氏とイチャイチャしてる」

友B「なにやってんだか」

友C「Bは一緒に来てた男子、どう思う?」

友B「なよっちい奴らばっかりだなーって」

友C「いつもあんたはそんな感じね……ギャルは?」

ギャル「え? あ、あたしは……彼氏いるしぃ」

友C「そ。じゃあ、イケメンくんはあたしのものね!」

友B「またそれか……この年中発情期」

友C「うるさいわねー。あたしはあんたみたいに色気より食い気みたいな灰色の高校生活を送りたくないだけよ。ねーギャル?」

ギャル「あ、あははは……」

友B「よーし! 戻ってもういっちょ歌うか!」

友C「まだ歌うの~? あんた、ジャイアンみたいな声してんのよ」

友B「ちょっと待て! それどういう意味だ!?」

友C「そのまんまの意味だけど?」

友B「なんだとー!! よーし、戻って勝負するよ!」ガチャッ

友C「望むところよ。あたしの美声に酔いしれなさい!」スタスタ

ギャル(今だ!!)


ギャル「あ、ごめん。あたしちょっと電話するから先行ってて」

友C「ああ、彼氏?」

友B「流石にこの時間まで他の男と遊んでるってわかったらヤキモチでも焼くか?」アッハッハ

ギャル「まぁ……そんなところ?」

友C「OK、先行ってるから」

友B「ギャルも勝負するからね! 覚悟しとけよ?」

ギャル「う、うん……」



ギャル「お母さん怒ってるかな?」ピッピッピ

チャラ男「あれ? ギャルちゃんじゃん」

ギャル「ぴゃい!!」ビクゥ


チャラ男「こんなところでどしたの?」ヘラヘラ

ギャル「え? あ、ああ……ちょっとね」

チャラ男「みんな待ってるぜ? 部屋戻ろ?」

ギャル「あ、あたしはまだいいかな」ソワソワ

チャラ男「ああ、なるほどなるほど……」

ギャル「え? な、なにかな?」

チャラ男「俺、ギャルちゃんの考えてることよーくわかるよ」

ギャル「え?」

チャラ男「友達にはあんな姿見せたくないもんね」

ギャル「ど、どういうこと?」

チャラ男「安心して。俺も同じだからさ」

ギャル(ま、まさかこの人……私がキャラを作っていること知ってるの!?)

ギャル「そ、そうなの。友達にはできれば見られたくない……」

チャラ男「オーケー。心配しなくてもダイジョーブ。俺に任せておいて」ニヤニヤ

ギャル「う、うん……」

チャラ男「さ、ついて来て」グイッ

ギャル「え? あ……」


タッタッタ……




――路地裏――


チャラ男「ほら、ここなら誰も来ないっしょ」

ギャル「あ、ありがと……いや助かったよ。友達に見られると色々と面倒だからさ」

ギャル(お母さん心配してるかな……?)ピッピッピ

チャラ男「………」

ギャル「あれ? な、なんか近くない? どしたの?」

チャラ男「なに言ってんだよ。誘ってきたのはそっちだろ?」

ギャル「は、はぁ!!??」

チャラ男「Aの彼氏から聞いたんだぜ? お前は男なら誰でもいいビッチだって」

ギャル「ま、まぁ、あたしくらいのギャルになるとそういう感じになっちゃうかな~」アハハ

チャラ男「だったらさぁ……いいだろ?」ギラッ

ギャル「い、いいだろって? どういうことなのかな?」

チャラ男「とぼけんなよ。そうやってさっき俺のこと誘ったじゃねーか」ズイッ

ギャル「えぇ!? あ、いやなんか距離がなんか近いかなぁって思うんだけど……ちょっと離れてもらえるとうれしいみたいなー」

チャラ男「ふざけんなよ!」ガンッ

ギャル「ひぃ!!」

チャラ男「そっちから誘っておいて今更そんなことあるか! それとも……ギャルちゃんは無理矢理されるのが好きなの?」

ギャル「い、いや、来ないで……いやっ!!!」


バチィィィィン!!!


チャラ男「………」


ギャル「あ、ご、ごめん……」

チャラ男「オーケー。そういうのがお望みってわけか……」

ギャル「えっ、そんな違っ……!!」

チャラ男「そういうこと言われると襲いたくなるっつーの!!」バッ

ギャル「い、いやぁぁぁぁぁ!!!!」


「お巡りさん、こっちです!!!」


チャラ男「へ? や、やっべ!! 警察!?」

「こっちです! こっちから女性の叫び声が!! 早く!!」

チャラ男「お前覚えてろよ!!」タッタッタッタ

ギャル「………」



生徒会長「大丈夫か?」


ギャル「………警察は?」

生徒会長「……俺の優秀な友人からこの辺りが他校の生徒のたまり場になっていると聞いてな。もしも敵が大勢待ち構えていたとしたら太刀打ちできないと判断し、一芝居打たせてもらった」

ギャル「………」

生徒会長「いやー、この間漫画で読んだ知識がここで役に立つとはなぁ……人生なにがあるのかわからない」ハッハッハ

ギャル「………」

生徒会長「……怪我はないか?」

ギャル「………!!!」ダキッ

生徒会長「ちょっ!?」

ギャル「………た」

生徒会長「はぁ?」

ギャル「ごわがっだよぉぉぉぉぉぉ!!!!!」ビェェン

生徒会長「お、おい! こんなところで泣くな! 今度は俺が警察呼ばれる!!」




ギャル「う、うん……ごめん。ごめんね……それじゃあ」

生徒会長「……終わったか?」

ギャル「うん……みんなには体調悪くなっちゃったって言っておいた」

生徒会長「ならいい。送っていく」

ギャル「う、うん……」

ギャル「………」

生徒会長「………」

ギャル「……どうして」

生徒会長「ん?」

ギャル「どうして来てくれたの?」

生徒会長「おばさんから連絡があったんだ。帰ってこないからなにか知らないかって」

ギャル「あ、連絡……」

生徒会長「安心しろ、もう俺がしておいた」

ギャル「あ、ありがと」

生徒会長「気になってもしかしたらと思って来てみたんだ。そしたら……」

ギャル「……!!」ブルッ

生徒会長「間に合ってよかった。心配したんだぞ?」

ギャル「ごめん……本当にごめん」


生徒会長「……覚えているか? 昔にもこんなことがあっただろ?」

ギャル「………」

生徒会長「お前がいじめっ子に大好きだったぬいぐるみを取り上げられてたんだ。それを止めようとして俺はいじめっ子に向かっていった。結果は返り討ち」

ギャル「あんたがすごい勢いで泣くからいじめっ子ドン引きして私のぬいぐるみ遠くへ投げちゃったっけ」

生徒会長「そんなに泣いてないだろ!」

ギャル「えー、あんなにいじめっ子の服を鼻水だらけにしたのに?」

生徒会長「うっ……」

ギャル「それでもあんたは一緒にぬいぐるみを探してくれた。そしたらもう辺りは真っ暗……こんな感じで一緒に帰ったんだよね」

生徒会長「思ったんだ。あの時。誰かを守れるようになりたいって」

ギャル「え?」

生徒会長「誰かのためになにかしたいって、そんな風に思ったんだ」

ギャル「それで……生徒会長に?」

生徒会長「その通りってわけじゃないけどそれもあると思う」

ギャル「へぇ……すごいじゃん」


生徒会長「だからさ……そうやってお前が無理してるの見てられないんだよ」

ギャル「………」

生徒会長「辛いことがあったら言って欲しい。協力する」

生徒会長「俺がお前を守るから……な?」

ギャル「あんた………」

ギャル「はっ! あーしは今を楽しむギャル中のギャルだよ? 無理なんかしてるわけないじゃん!」

生徒会長「お前……」

ギャル「今日はありがとね? ピンチのとこ救ってくれて。ちょっとかっこよかったよ」スッ


チュッ!


生徒会長「お、お前……なにを?」

ギャル「お礼のチューだけど? ほっぺだけど勘弁してねん♪ お見送りはここまででダイジョーブでーす! じゃね♪」カー

生徒会長「………無理しやがって。顔真っ赤じゃねーか」ハァ







ギャル(ほわぁぁぁぁ!!! ほ、ほっぺにチューって!! ほっぺにチューって!!)カー

ギャル(さ、流石にやりすぎたかな……で、でも助けてもらったし、私ギャルだし……いいよね?)

ギャル(そんなことよりなんの連絡もしてなかったけどお父さんとお母さん怒ってるかな……心配かけちゃったよね……)

ギャル「……た、ただいま」

父「ギャル!!」

ギャル「お父さん。遅くなってごめんなさい! もう二度とこんなことは……」

父「そんなことはどうでもいい! 大丈夫なのか?」

母「もう生徒会長君から連絡が来た時は驚いたわよ。心配したんだから」シュッシュ

ギャル「うん……別に怪我とかはしてないよ」

父「しかしお前がなぁ……父さん意外だった」

母「私も話を聞いた時は笑っちゃいましたよ」シュッシュ

ギャル「へ?」

父「お前は父さんと母さんに似ずしっかり者だと思ってたからな。まさかあんなうっかりなんてするとは思わなかった。はっはっは!」

母「本当。ギャル。周りをちゃんと見て歩かなきゃだめじゃない」シュッシュ

ギャル「ふ、二人共なんの話?」

父「? だって落ちたんだろう?」

ギャル「落ちた? 私が? どこに?」

母「どこって……肥溜めに」シュッシュ


ギャル「へ?」

母「生徒会長君から『ギャルは帰り道の途中、友達と遊んで帰っていたら学校近くの畑の肥溜めに落ちたから学校に戻って着替えと肥溜め臭い体を洗ってるんで遅くなる』って連絡があった時は思わず笑っちゃったわよ!!」シュッシュ

父「お前、今時肥溜めに落ちるって……昭和の小学生じゃないんだから」アハハ

ギャル「……あのボケがぁぁぁぁぁ!!!」ブチッ

母「ちゃんと助けてくれた生徒会長君にお礼言わなきゃダメよ?」シュッシュ

父「ところで母さん。さっきから娘になにをかけているんだ?」

母「なにって……ファ○リーズ」

ギャル「やめて!!!」

母「でもあの匂いってなかなかとれないのよ?」

父「詳しいな?」

母「経・験・談♪」

父「お、おう……」



――翌日――



ギャル「おはよー、昨日は勝手に帰ってごめんね」

友B「おお、大丈夫だったか?」

友A「心配したよー?」

友B「お前は彼氏とずっとイチャイチャしてたでしょーが」

友A「彼氏とイチャイチャしながら心配してたのよ」フフッ

ギャル「あはは……」

友C「聞いてギャル! あたし、イケメン君と付き合うことになったんだー」

ギャル「へー、よかったじゃん! おめでと」

友C「あーりーがとー」キャッキャ

ギャル(え!? あの後から!? 早いなっ!!)

友A「じゃあ、今度さ彼氏達誘ってあたしらでトリプルデートしない?」

ギャル「え?」

友C「いいねいいね~」

友B「ナチュラルにあたしを除け者にしたなお前」

友A「悔しかったらあんたも彼氏作りなさいよ」

友B「あたしは別にいいんだよ。そういうんじゃねーから」

友A「え、やだあんたそういう?」

友B「おいこらどういう意味だ」

友A「ほらこういうのなんて言うんだっけ……」

ギャル「ゆ、百合?」

友A「そう百合だ!」

友C「キマシタワー!!」

友B「なっ! あたしはそんなんじゃねー!」

友A「えー? 本当かなー?」


友B「ふざけんな! あたしは男が好きだよ!!!」


シーン……




友C「B、声が大きいよ……」ヒソッ

友A「なにクラスのみんなに自分の男好きアピールしてんの……!!」プルプル

「ああ、やっぱりそうなんだ……」

「Bさんって派手だもんね……」

友B「なっ!! ううう……///」

友C「じゃあ、今度の土曜日なんかどう?」

友A「いいね! 場所は近くの遊園地でいっか」

友C「きっまりー! じゃあ、ギャル。そういうことだから」

ギャル「え? え!?」

友A「ちゃんと彼氏連れてきなさいよ~?」

友C「そういえばギャルの彼氏見るの初めてかも。ねぇねぇ、どんな人なの?」

ギャル「えっと……その、えっと……」アハハ



――放課後――


ギャル(し、しまったぁぁぁぁぁ!!! どうして私はあんなことをぉぉぉぉ!!!)グアアアア

ギャル(私彼氏なんか出来たことないのにいきなり遊園地でトリプルデートなんて何段飛ばしで大人の階段登ってんのよ!!)グヌヌヌヌ

生徒会長「おい、そんな面白い動きしてどうした?」

ギャル(こうなったらなんとかして誤魔化さなきゃ……でもどうする? 体調不良で行けなくなった? でもそれは昨日の一件で使っちゃったし、連続で使うわけにはいかないよね)ムゥ

生徒会長「おーい、聞こえてないのかー?」

ギャル(前日に別れたってのはどう? 次の日デートがあるのに? 彼氏どんだけ空気読めないやつなのよ)

生徒会長「おーい、学年3位の秀才のギャルさーん」

ギャル(じゃあ、ここへ来る途中で交通事故にあったとかいうのは? あ、でもその流れでお見舞いに行くとかになっちゃったら対処できないし……)

生徒会長「昨日の夜、調子乗って肥溜めに落ちちゃったギャルさーん」

ギャル「私は肥溜めになんか落ちてない!!」クワッ


生徒会長「……やっと反応した。どうしたんだ? なにかあったのか?」

ギャル「……あんたには関係ないっしょ?」

生徒会長「いや、廊下であんな面白い動きしてたら誰だって声かけると思うが……」

ギャル「とにかくあたしは今、人生史上類を見ないほどの大ピンチを迎えてんのよ。放っておいて」

生徒会長「昨日よりピンチなことが起きてんのか。そりゃ大変だな」

ギャル「昨日はよくもあんなこと言ってくれたわね。お陰でお母さんが私にずーっとファ○ブリーズかけ続けてたんだからね!?」

生徒会長「はっはっは! 我ながらいい嘘だと思ったんだがどうだ?」

ギャル「どうもこうもあるか! もう最悪よ……今ちょっと忙しいから放っておいて」ジロッ

生徒会長「昨日も言っただろ。なにかあったら協力するって。なんでもいいから言ってみろ」

ギャル「あんたに頼むことなんて………あ」

生徒会長「どうした?」

ギャル「生徒会長さーん? あたしのお願いちょーっと聞いてくれる~?」ペタペタ

生徒会長「お、おう……わかったから触るな気色悪い!」

ギャル「マジで~? チョベリバー」キャッキャッ

生徒会長「お前、それよくわからないで使ってるだろ?」

ギャル「あれ? おかしいな……本に書いてあったんだけど」


副会長「………会長」


――土曜日 遊園地――


友A「うーん! 晴れたねぇ!」

A彼氏「まさにデート日和ってやつだな」

友C「それにしてもギャルったら遅―い。なにしてんだろ?」

イケメン「まぁ、いいじゃん。もうちょっと待とうよ」


ギャル「ごっめーん! みんな、お待たせ!!!」タッタッタ


友C「もう遅―い! なにやってたのもう!」

ギャル「ごめんごめん! 準備に手間取ってさ」

友A「準備? 準備ってなんの?」

ギャル「え、えーと……め、メイク。そう! メイクだよ! メイクに時間かかっちゃってさー」

友C「それであんたの後ろにいるのが?」

ギャル「そ、紹介するね。この人があたしの彼氏! ほら、挨拶しなよ」

彼氏「こいつの……じゃなかった、ギャルさんの彼氏です。今日は誘ってくれてありがとう」ニコッ

友A「うわっ、あんた随分いい男捕まえたね」

A彼氏「おいおい、なんかおばさんくさいぞお前」

友C「………」

イケメン「どうしたのCちゃん?」

友C「あのー、どこかでお会いしたことありましたっけ?」

彼氏・ギャル((ギクッ!!))


ギャル「い、いやー。そそそそんなことないんじゃないかなー? あははは……ねぇ?」

彼氏「あ、ああ。君と会うのは初めてだと思うよ?」

友A「あー!!!」

彼氏・ギャル「「!!!!!」」

友A「あれじゃない? 俳優のあの人! あの人に超ソックリなんだよ!」

イケメン「ああ! 言われてみれば確かにそうだ! 似てますね!」

彼氏「そ、そうですか? あはは……」

A彼氏「そろそろ開園時間だ。行こうぜ」

友A「そうだね。行こっか!」

友C「よーし! 楽しむぞー!!」


スタスタスタ……


ギャル「……どうやらバレてないみたいだね」

彼氏→生徒会長「一応俺生徒会長だからな……面識が無いわけじゃないだろうし」

ギャル「バレるんじゃないかと思って一瞬ヒヤヒヤしたよ」

生徒会長「なんで俺がお前の嘘に付き合わなきゃならないんだ」ハァ

ギャル「しょうがないでしょ? みんなにはあたしは彼氏持ちの男好きってことになってんだから」

生徒会長「なんでそうやって自分のキャラに無いことするかなぁ……」

ギャル「た、たまたま! たまたま今回あーしの元に偶然彼氏がいないからあんたに頼んだだけで普段だったらあーし、男に困ったことなんかないんだからね!」

生徒会長「はいはい」


ギャル「それにしてもあんた……」

ギャル「メガネ外して髪型変えたら随分と印象変わるんだねー」ペチペチ

生徒会長「顔を叩くな。メガネが無いせいで全然前が見えないんだ。誘導はしっかり頼むぞ」

ギャル「オッケーオッケー! 今日はあたしが手を繋いでてあげる。その方がカップルっぽいっしょ?」

生徒会長「お、おう」


友C「なにしてんのー! さっさと行くよー!」


ギャル「はーい! それじゃあいこっ!」グイッ

生徒会長「お、おい! 急に引っ張るな!」



――お化け屋敷――


ウォォォォォォ!!!


友C「きゃぁぁぁ! イケメン君! こわぁい!」

イケメン「大丈夫だよ。ただの作り物だから」


ガァァァァ!!!


A彼氏「うわぁぁ!!」

友A「なにそんなに驚いてんの? うけるー!」



ギャル「な、なんでお化け屋敷に行くことになってんのよー……」ブルブル

生徒会長「暗くてなにも見えん……おい、絶対に手を離すなよ? 確実に迷子になる」

ギャル「わかってるわよぉ……」


キシャァァァァ!!!


ギャル「ほぁぁぁぁ!!!」ビクゥゥ


生徒会長「お、おい! どうした!? なにがあった!?」

ギャル「な、なんでもない……もう嫌だ」ガタガタ

生徒会長「大丈夫だ。本物なんか出てくるわけないんだから落ち着け」

ギャル「ほ、本物とかそんなこと言わないでよ! 余計怖くなるでしょ!」

生徒会長「お前はゴールを目指して歩くだけでいい。それだけに集中するんだ」

ギャル「わかってるわよ……」ブルブル


ガタンッ!!


ギャル「な、なに!?」

生徒会長「気にするな、ただの演出だ」

ギャル「だけど……」


ガァァァ……ウゴァァァァァ!!!!


ギャル「ひゃぁぁぁぁぁぁ!!!」バッ


ダダダダダダダダダ!!!!


生徒会長「お、おい! 馬鹿! 置いていくなおい!!!」


――出口――


友C「怖かったねー」

イケメン「でもCちゃん楽しそうだったよ?」

A彼氏「あ、あはは……俺にかかればこんなもん……」

友A「あんたまだ足震えてるわよ?」


バッ!!


ギャル「はぁはぁはぁ……!!!」

友C「あ、おかえりーギャル。どうだった?」

ギャル「こ、怖かった……ものすごく」

友A「あれ? あんた彼氏さんはどうしたの? 一緒じゃないの?」

ギャル「………あ」





お化け「うらめしやー!!!」バッ

生徒会長「あ、すみません。つかぬことお伺いしますが出口はこの道をまっすぐでよろしいでしょうか?」

お化け「え? あ、はい。この道をまっすぐに行くと突き当たりますのでそこを右に曲がっていただければゴールです」

生徒会長「どうもありがとうございます」

お化け「通路途中、段差ありますのでお足元ご注意ください」

生徒会長「ご親切にどうも」

お化け「お気をつけていってらっしゃいませー」




ギャル「……ごめん!」

生徒会長「まったく……」

友A「さーて、お化け屋敷も行ったし、これであらかたの乗り物は乗ったかな?」

友C「じゃあ最後はやっぱりあれでしょ!」

ギャル「あれ?」

友C「もちろん! 観覧車―!! もちろん二人一組で!」



――観覧車――


生徒会長「ほとんど前が見えない場合、観覧車をどう楽しめばいいんだ……?」

ギャル「浮遊感とかそんなの?」

生徒会長「まぁ、いいか……とりあえずここでは無理に演じる必要はないからリラックスできる」

ギャル「……そうだね」

生徒会長「あー、疲れた。正直、自分じゃない人間を演じるのがここまでしんどいものだとは思わなかった。お前、こんな毎日送ってるのか? 疲れないか?」

ギャル「そんなの……もう慣れちゃったよ」

生徒会長「……ようやく認めたな」

ギャル「なにが?」

生徒会長「今の自分が無理して『ギャル』ってキャラクターを演じてるってこと」

ギャル「ここまで付き合わせちゃったんだもん。もう認める他ないよね」

生徒会長「どうしてそんなことになったんだ?」

ギャル「女の子同士の友達事情ってやつ? みんなと話合わせてたらいつの間にかこんなことになっちゃってた……」

ギャル「みんなが考える普通と、私の考える普通っていうのはどこか違ってて……私はみんなの普通の中で生きていないと嫌われちゃうから……だからそれが怖かったの。そしてその普通に合わせてるうちにいつの間にか戻れなくなってた」

生徒会長「派手な格好をするのが普通。髪を染めるのが普通。彼氏いるのが普通……か」

ギャル「そう。自分では違うってわかってるんだけどそれを違うって言っちゃったらみんな私から離れていくような気がして怖いの」

生徒会長「それでもお前はお前でしかない。『ギャル』じゃなく、お前でしかないんだぞ? それにこの先、この間のようなことが起こるかもしれない。それでいいのか?」

ギャル「……わからない」

生徒会長「……いいか、これだけは言っておくぞ」

生徒会長「どんなお前でも俺はお前の味方だ。困ったら俺を頼れ」

ギャル「それはそれが生徒会長のお仕事だから?」

生徒会長「違う。お前が俺の幼馴染だからだ」


ギャル「……そっか。ありがとう。その時はそうする」

生徒会長「……ああ」

ギャル「………」

生徒会長「………」


ゴウンゴウンゴウン………


ギャル(き、気まずい……!!!)

ギャル(よくよく考えてみたら今私、幼馴染とはいえ異性の人と二人っきりじゃん! こんな時どうすればいいのよ!!)

ギャル(そ、そうだ! 観覧車なんだから風景を楽しめばいいんじゃない! えーっと外の様子は……!!!)


友A「!!!」イチャイチャ

A彼氏「!!!」イチャイチャ


ギャル(い、イチャイチャしてらっしゃるー!!! 観覧車という密室空間をいいことにイチャイチャしてらっしゃるぅぅ!!!)ガビーン

生徒会長「おい、どうした? そんな面白い動きして」

ギャル「い、いや! なんでもないし!!」

生徒会長「そうか……」

ギャル(まぁ、そうだよね。あの二人は付き合ってるんだもん。二人っきりになったらそれくらいするよね……ってことは)


友C「!!!」チュッチュッチュ

イケメン「!!!」チュッチュッチュ


ギャル「はうあ!!!」ボンッ

生徒会長「ビックリした! なんだよ? 急に大声出すなよ!!」


ギャル「ち、ちげーし! あーし、なんも見てねーし!!」

生徒会長「嘘だな。なんだ、外になんかあんのか? どれ……」

ギャル「だからなんもねーって言ってるし! 言ってるし!!」

生徒会長「はいはいわかったわかった。誤魔化す必要なんかねーから。くそ、やっぱりよく見えねぇな。もっと近づいて……」

ギャル「わあああ!! 他のゴンドラにはなんもないし! だから見ても無駄なんだし!!」

生徒会長「お前、嘘つく時口調変わるから丸分かりだぞ? なんだよ、他のゴンドラで面白いことでも起きてんの? やっぱり気になるな!」

ギャル「だーかーらー!! 違うって言ってるし!!」グイッ

生徒会長「おいやめろ、引っ張るな! そんなことしたら……」


バタッ……


ギャル「あ……」

生徒会長「あ……」


ゴウンゴウンゴウン………



――野球部部室――


マネージャー「主将。コーチから今日の練習メニューが届いています。確認をお願いします」

主将「ああ……わかった、今日もオーバーワーク気味だね。練習後はみんなの体調をチャックして欲しい。それと必要であればマッサージも」

マネージャー「了解です」

主将「必要であれば僕も手伝うから」

マネージャー「いえそんな……主将の手を煩わせるわけにはいきませんよ。主将は練習に集中してください」

主将「ありがとう」

部員「主将! 生徒会長が来ています。なんでも主将にお話があると」

主将「僕に? わかった。マネージャー、悪いけど二人にしてもらっていいかな? 練習は予定通り始めるから」

マネージャー「わかりました。それでは今日の練習もよろしくお願いします」

主将「うん。よろしくね」


生徒会長「いやー、それにしても豪華な部室だな。暖冷房完備って……生徒会室にも分けて欲しいくらいだぜ」

主将「理事会や生徒会には随分と優遇してもらっているよ。感謝している」

生徒会長「あー、そのことに関してなんだが……今度の生徒総会の議題で野球部の部費をもっと上げて欲しいという提案が出てる」

主将「それは本当かい?」

生徒会長「ああ。それも提案者は主将……お前ってことになっているんだ」

主将「そんな馬鹿な。僕はそんなことした覚えはない」

生徒会長「やっぱりか……わかった、そういうことならそれでいい。生徒会はその提案を却下する方針で進めていこうと思ってる。それでいいよな?」

主将「ああ。構わない。この学校には必要以上の援助をしてもらっているからね」

生徒会長「先にそれだけは確認しておきたかったんだ。野球部を敵に回すと後が怖いから」ニシシッ

主将「……すまない」

生徒会長「気にするなって。お前がそんな奴じゃないってことくらいちゃんとわかってるよ」


主将「……最近、部員達の勝手な振る舞いが他の生徒に影響を与えていると聞いているんだ。僕もそれをなんとか止めようとはしているんだがどうにもうまくいかない」

生徒会長「授業の時間も練習している奴がいるんだって?」

主将「……全てコーチの指示だ。『甲子園を目指すなら勉強なんかしている暇があるのか』って一部の部員を焚きつけている」

生徒会長「困ったもんだ。形だけでもいいから授業には出ろよな。まぁ、成績優秀なお前がリーダーだから他の奴らも文句は言いにくいけどな」

主将「いや、それは理由にはならないよ。僕の方からも注意する。どれだけ影響があるかわからないけど……」

生徒会長「頼むな……あとこれはまったく別件の相談なんだがいいか?」

主将「僕に答えられることならなんでも」

生徒会長「俺、好きな子がいるんだけどさ」

主将「……は?」

生徒会長「いや、好きな子とより仲良くなりたいんだけどどうすればいいかなって」

主将「……悪いけどその手の話はちょっと協力できそうにないかな。僕、恋愛ごととか疎いからね」

生徒会長「でもお前モテるじゃん。告白とかされまくってるだろ?」

主将「彼女たちは僕じゃなくて『野球部の主将』に恋してるだけだよ。野球をしていない僕のことなんてなんとも思わないさ」

生徒会長「そんなもんかねぇ……」

主将「なにかあったのかい?」

生徒会長「え!? あ、いや……」

主将「話だけども聞くよ。なにかのヒントになるかもしれない。それに周りの人間は僕に恋愛ごとのことを話したりしないんだよ。どういうわけか」

生徒会長「そりゃ、名門野球部の主将に対してそんなふざけたこと聞く奴なんかいないだろ」

主将「君以外はね」クスッ

生徒会長「ま、まぁ……そうだな」



ゴウンゴウンゴウン………


生徒会長「わ、悪い……!!」サッ

ギャル「………」プルプルプル

生徒会長「そんなつもりはなかったんだ。ただちょっとバランス崩しちゃって」

ギャル「……い、いいよそんなの! あーしならこんなの日常茶飯事だし!」

生徒会長「あー、思いっきりプルプルしてたけのにか?」

ギャル「知らないの? あーしってば男を毎日取っ替え引っ替えで抱きつくなんてそんなの……」

生徒会長「なるほど」ギュッ

ギャル「わひゃっ!!」

生徒会長「大声出すなよ。日常茶飯事なんだろ?」

ギャル「あ、あああったりまえじゃん! ここここんなのわけないって!!」カーッ

生徒会長「なら………」ギューッ

ギャル「あわわわわわ……はう!」ボンッ

生徒会長「俺さ……ずっと前からなんだけど」

ギャル「ずずずずっと前から!? ま、待ってなにを言おうとしているのかなんとなくわかるような気がするけど待って!」

生徒会長「待てってどういうことだよ?」


ギャル「こ、ここここういうのは! なんていうか雰囲気とかが大事なんじゃないかなーって? ね?」

生徒会長「観覧車。二人っきり。いい雰囲気だと思うが?」

ギャル「あー、だねぇ……夕陽なんかバックにあって超ロマンティック……」アハハ

生徒会長「だから俺はお前のことが……」

ギャル「あ、いやだからね! そういうのは別に今じゃなくてもいいんじゃないかな? ね? そうだよね?」

生徒会長「ああもう! いいから俺の話を……!!!」


ガコンッ!


係員「はい、ご乗車ありがとうございましたー!」

ギャル「あ、はい! はい! わっかりましたー」パッ

生徒会長「あ……」




生徒会長「……俺、嫌われてんのかな?」

主将「あはは……」


生徒会長「あのあとあいつ、全然目も合わせてくれなくなっちゃってさ。それっきり」

主将「恥ずかしがっているだけなんじゃない?」

生徒会長「そうかー?」

主将「とにかく、恋愛ごとに疎い一人の男子高校生の意見なんだけど」

生徒会長「おう」

主将「ちゃんと言葉で伝えなければ相手には伝わらないよ?」

生徒会長「相手がそれを拒んできたとしても?」

主将「野球にはこんな有名な常套句があるんだけど」

生徒会長「なんだよ?」

主将「『野球は9回2アウトから』最後まで諦めちゃダメだよ?」

生徒会長「……なんか悪いな! 色々とありがと。とりあえずやってみるわ!」

主将「うん。頑張ってね」

生徒会長「あ、でも部費の件は断固拒否する構えでいくからな。覚悟しておけよ?」

主将「僕もチーム内でなにか不穏な動きがないか調べてみるよ」

生徒会長「ああ、よろしくな」



――放課後――



ギャル「はぁ……」

ギャル(あいつ、なんであんなことしたんだろ……告白、だよね? あれって)

ギャル(あのあと恥ずかしくて目も合わせられなかったし……)

ギャル(もし、仮にあいつが私のことを本当に好きでもう一度告白してきたらどうしよう?)

ギャル「……わかんないよ。そんなの」

副会長「こんなところで待っていても会長は来ませんよ?」

ギャル「うひぃぃ!!」ビクッ

副会長「会長に聞いたとおり、面白い反応をする方ですね」

ギャル「あなたはたしか……」

副会長「副会長と申します。主に生徒会では会長のサポートをさせていただいております。先日はどうも」ペコリッ

ギャル「あたしになんの用? 言っておくけどあたし、あいつを待ってるわけじゃないから。これから彼氏とデートだし」

副会長「またそうやって嘘をつくんですか?」

ギャル「う、嘘じゃねーし!」

副会長「失礼ながらあなたのことを調べさせていただきました。学校での生活態度、成績、それと今までのことも少々」

ギャル「なっ……!」

副会長「調べた結果から結論づけるとあなた……随分と嘘をついていらっしゃるようですね」


ギャル「うう、どうしてそれを……」

副会長「そしてその嘘を止めるために会長があなたを気にかけている……違いますか?」

ギャル「そ、それはあいつが勝手に……!!」

副会長「会長の仕事は学校の運営の手伝い、生徒と職員の橋渡し、それから生徒間での問題解決に至るまでその業務は多岐にわたります」

ギャル「は、はぁ……」

副会長「会長はお忙しい方なんです。これ以上会長の仕事を増やすのはやめていただけませんか?」

ギャル「あ、あんたには関係ないでしょ! なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのよ!」

副会長「そうですか。あくまで二人の関係であるから邪魔をして欲しくないと。あなたはそう言っているのですね?」

ギャル「そ、そういう風に言ったつもりはな、ないけど……まぁ、とにかくそういうことよ! 関係ない奴は黙ってて」

副会長「関係なくはありません!」

ギャル「え?」

副会長「……正直に申し上げます。私は会長を一人の男性としてお慕いしています」


ギャル「ど、どういうこと?」

副会長「私がこの役職についたのも全てあの方を支え共に歩みたいからという個人的な願望です。ですから会長があなたのことを気にかけている現状が個人的に気に食わない」


副会長「嫌な女だと笑いますか? いえ、笑えますか? 嘘をついてかまってもらっているあなたが?」

ギャル「!!!」

副会長「あなたは嘘つきです。そんな嘘まみれの人、会長にはふさわしくありません」ドンッ

ギャル「いっ……」

副会長「返してくださいよ……」

ギャル「え?」

副会長「お願いですから返してください。私たちの会長を返してくださいよ!」ドンッ

ギャル「あう……!!」

副会長「会長があなたと一緒にいるところを見ると胸が張り裂けそうに痛いんです! 私は会長のことが好きなのに! それなのに……あの笑顔は私に向かうことがない!!」

副会長「どうしてあなたはそうやって平然と自分に嘘がつけるんですか! どうしてあなたはそうやって平気に周りに嘘を吐けるんですか!」

副会長「あなたの嘘が! 周りを騙し続けるその態度がどれだけの人に迷惑をかけているか……あなたはわかっているんですか!?」キッ

ギャル「……あ」

副会長「なんとか言ったらどうなんですか! なんとか言ってみなさいよ!!」


ギャル「……そうだよね。あなたの言うとおりかもしれない」

ギャル「私、嘘つきなんだよ。自分のことが可愛くて可愛くてたまらない嘘つきなの。周りの輪の中にいないと怖くて、周りに嘘ばっかりついて」

ギャル「私なんかあいつと一緒にいる資格なんか最初からなかったんだ……」

副会長「………」

ギャル「あいつと一緒にいれないのは……私がギャルだからじゃなくて、私がどうしようもない嘘つきだから……ごめんね。あなたや生徒会の人にまで迷惑かけてたなんて私知らなくってさ……本当にごめん」

副会長「あなた……」

ギャル「もう、あなたたちには関わらないようにする。あいつにだってもうなにもしない……ごめんね」


タッタッタッタ……


副会長「………」




ギャル「………」トボトボ

友B「おー! ギャルじゃん。一緒に帰ろーぜ?」

ギャル「……うん」

友B「どした?」

ギャル「なんでもないって。あーしはダイジョーブ」

友B「………いや、嘘だね」

ギャル「え?」

友B「お前、嘘つく時自分のこと『あーし』って言うだろ。そんでもって素に戻ると自分のこと『私』って言う」

ギャル「あ……」

友B「友達なめんなよ~? あたしだってあんたのことちゃんと見てるつもりなんだからな?」

ギャル「Bちゃん……ううう」ダキッ

友B「おーよしよし。どうしたどうした~? あたしになんでも話してみなって」

ギャル「実はね……」


ギャル「……というわけなんです」

友B「つまりあんたは見た目こんなんだけど中身は清楚ななんちゃってギャルってこと?」

ギャル「そ、その通りです……」

友B「……随分とぶっちゃけたねあんた」

ギャル「ご、ごめんね……軽蔑したよね」

友B「ばーか、そんなわけないっしょ? そんなことより今までそれを見抜けなかった自分が不甲斐ないよ」

ギャル「Bちゃんは全然悪くないよ! 悪いのは全部私だもん」

友B「しかし、あんたが実は成績優秀って話でも驚いたけど実は家では真面目な女の子だったなんてねぇ……しかも生徒会長と幼馴染だったなんて」

ギャル「みんなに本当のこと言ったら嫌われちゃうんじゃないかと思って……」

友B「馬鹿だね。そんなことなんかないのに……」

ギャル「うん……」

友B「ギャル。今まで無理させちゃって悪かったね?」ダキッ

ギャル「Bちゃん……!」ダキッ

友B「あたしはあんたがどんな姿だろうと友達だと思ってるよ? だから少なくともあたしの前では自分でいてくれていいから……な?」ポンポンッ

ギャル「うん……うん……ありがと」

友B「大丈夫?」

ギャル「うん。本当のこと話せてなんかスッキリした気がする……AちゃんもCちゃんも許してくれるかな?」

友B「うーん、大丈夫なんじゃない? 二人ともあんまり深いこと考えてないって。心配しなくてもあたし達は友達だよ」ニカッ

ギャル「うん……ありがと!」

友B「しかしあれだね! これであんたとあたし、彼氏いない同盟の一員ってわけだ」ニシシッ

ギャル「そうなるね」フフッ

友B「そんじゃ、あたしはここだから! じゃあね」

ギャル「うん。Bちゃん。また明日!」

友B「じゃあな!」

友B「ギャルってあんな感じで笑うんだ。あっちの方がやっぱり似合ってるよなー」フフッ



「キャァァァァァァ!!!!!」



友B「え……?」


――生徒会室――


生徒会長「というわけで俺の思ったとおり、野球部の部費の件は主将の名前を使って誰かが提案したみたいだな。主将の名前で提案すれば野球部の総意ってことになる。この学校で野球部を敵に回す馬鹿はいないって思ったんだろうよ」

会計「誰の差金っすかね? こんな汚いことするのは」

書記「……決まってる」

生徒会長「コーチだろうな。まったく、これ却下したら面倒くせーぞ? 副会長、反論材料は整ってるか?」

副会長「………」

生徒会長「副会長?」

副会長「え? あ、すみません。聞いてませんでした……」

書記「どうしたんっすか? 珍しいっすね」

副会長「……鉄の女も元は人」

生徒会長「体調悪いのか? 今日は帰ってもいいぞ?」

副会長「い、いえ……私は大丈夫です。野球部の反論材料の件ですよね? ここに過去10年間使われた部費の収支のデータがあります。これを元にこの提案を却下に追い込みましょう」

生徒会長「流石だな。助かるよ」

副会長「いえ、私は副会長として当然のことをしたまでですから」

生徒会長「よしっ、このデータを元に反論文を組み立てる。幸い、主将はこっちの味方だ。そんなに難しい話じゃないさ」

会計「そっすね。これを機に調子に乗ってる野球部をどんどん追い詰めていくっすよ!」

書記「……目指せ、オーバーキル」フフッ

副会長「………」


ドタドタドタ!!!


生徒会長「なんだ?」


バタンッ!!


友B「会長! 会長はいる!?」


生徒会長「ど、どうした? いきなり入ってきて……」

副会長「我々は現在会議中です。部外者の立ち入りは……」

友B「そんなことどうでもいいんだって! 大変なんだよ!」


友B「ギャルがさらわれた!!!」


生徒会長「なんだって?」


生徒会長「それで? 確かにギャルはさらわれたんだな?」

友B「うん! なんか何人かに連れていかれたのを見たんだ! 追いかけたんだけど見失っちゃって……」

副会長「警察には連絡したんですか?」

友B「もちろんしたよ! でもすぐには動いてくれないみたいで……」

会計「はぁ!? なんのための警察っすか!?」

副会長「目撃情報が一人だけ、現場検証やらなんやらで大規模捜索に移るのは時間が必要なんでしょう」

友B「さらってった奴、たしかこの前カラオケに一緒に来てたやつだったと思う。たしかチャラ男って名前だったはず……」

生徒会長「………あの時のか」

友B「あんた知ってるのか?」

生徒会長「あいつを路地裏に連れ込んで襲おうとしているのを助けたことがある……確信犯だな」

副会長「ですが私達ではどうすることもできません。警察の連絡を待つしかないでしょう」

友B「そんな! そんなことしてたらギャルがなにされるかわかったもんじゃないよ!」

生徒会長「………悪い、後は任せた」

会計「か、会長? どこへ行くつもりっすか?」

生徒会長「探しに行く」

会計「はぁ!? なに言ってんですか!? 危ないっすよ!」

生徒会長「約束したんだ……あいつを守るって」


スッ……


副会長「……危険です。ここは警察に任せるべきです」


生徒会長「行かせてくれ。たとえそうだとしてもこんなとこでじっとしてなんかいられない」

副会長「犯行の様子を聞く限り相手は複数犯だと考えられます。一人で行っても返り討ちになるだけです」

生徒会長「だったら尚更早く見つけないといけない。どいてくれ」

副会長「……どきません」

生徒会長「どいてくれ」

副会長「嫌です。どきません」

生徒会長「どけ!!」

副会長「嫌!!!」

副会長「見つけたとしてどうするんですか……きっと相手はあなたに襲いかかってきます。もしあなたが傷ついたりなんかしたら私は……私は……」グスッ

会計「副会長……」

生徒会長「悪い……それでも俺、困ってるかもしれないあいつのこと放っておけないんだよ」

副会長「それは生徒会長としてですか? それとも……あなた個人としてですか?」

生徒会長「俺個人としてだ。」ニッ

副会長「!!!」

生徒会長「もっとも、これも生徒会長の業務でもあるけどな」

会計「いや、そんなエキセントリックな仕事生徒会長に含まれてないと思うんっすけど……」

書記「……空気嫁」

会計「……すいませんっす」


副会長「……わかりました。そういうことなら仕方がありませんね。生徒会長の仕事なら仕方がないです……でも、これだけは約束してください。二人共、無事で帰ってくるって」

生徒会長「もちろん」

副会長「はい。私もできる限りのサポートをさせていただきます」

友B「あたしも行くよ。ギャルは友達だからね、放っておけない」

生徒会長「ありがとう。それじゃあ、行ってくる!!」ダッ

会計「ああちょっと会長! ストップストップ!!」ガシッ

生徒会長「な、なんだよ!?」

会計「行くって言ったってどこに行く気っすか!? あいつらがどこに行ったか知ってるんっすか?」

生徒会長「そ、それもそうだな……」

友B「どうすんだよ!? こうしている間にもギャルが……」


「話は聞かせてもらったぁぁ!!!」バタァァン



生徒会長「あなたは……先輩!?」

会計「ほ、本物だ……」

書記「……学校の七不思議」

副会長「………」

後輩「ちょっと先輩!? どうしたんですか、いきなり飛び出して!? ってここ生徒会室!?」

副会長「あら、後輩さん。どうしてジャージに着替えてるんですか?」

後輩「あ、ああいいじゃん。そんな細かいことはさ。それよりどうしたんだ? なんかただならぬ雰囲気だけど」

副会長「ああ、それが……うちの生徒がどうやら何者かにさらわれてしまったようなんです」

後輩「ええ!? なにそれ!? 一大事じゃん!」

生徒会長「先輩! なにか方法があるんですか? ギャルを見つける方法が!?」

先輩「俺を甘く見るなよ~? 伊達にお前らより長く生きてないぜ?」ニシシッ

後輩「もしかしてまーた、『学園の女の子の位置は全部俺に任せろ』みたいなくだらないこと言うつもりじゃないっすよね?」

先輩「なっ!? どうしてそれを!?」

後輩「先輩、自分の脳みそが単純なこといい加減理解してくださいよ」

先輩「ぬう! お前は最初からいつもいつも……!!」

友B「おいおい、喧嘩してる場合じゃないだろ!」


先輩「でも活発系かわい子ちゃん! こいつが俺のことを馬鹿にするんだよ! 後輩のくせに!!」

友B「か、かわいっ!!??」

先輩「おお、その恥じらう姿も実に可愛らしい。どうだろう? この俺と一夜のパーリナイッでも……」


ドゴンッ!!!


先輩「んぎゃ!?」

後輩「はいはい~、頭のおかしい子はこっちに行きましょうね~? 専門のお医者さん紹介しますよ~」

先輩「……あ?大きな星がついたり消えたりしている……。あっはは。大きい!彗星かなぁ?いや、違う。違うな。彗星はもっと……バァーッて動くもんな……」アハハ

後輩「あれ? 本当に壊れた? しょうがないなぁ……おりゃ!」ズバッ

先輩「暑っ苦しいなぁ。ここ。出られないのかな?おーい、出して下さ……んぎゃ!!」

先輩「あー、なんだ? 一瞬、宇宙(そら)を駆けた気がした」


友B「親友のピンチなんだ……ふざけてるとあたしがもう一発ぶん殴るよ……?」ゴゴゴゴ

先輩「いやいやちょっとそんな暴力的なことはやめようよ! 折角の可愛らしい顔が台無しだよ?」

友B「だったら早く言えっつーの!」

先輩「わかったって。いやね、このくらいの時期の高二の男子ってのは人間の中でも最も知能が劣化する時期なのよ。次が大学二年な。これよーく覚えておけよ?」

会計「それでどうだって言うんっすか?」

先輩「つまり、後先考えずに女の子かっぱらってやっちまおうって場所は先祖代々脈々と受け継がれているってわけ。先輩から後輩にってな。まぁ、何箇所かあるとは思うがあてもなく探し回るよりもいいだろ」

友B「それでその場所は?」

先輩「あん? そういうのは俺、専門外だから」

会計「ちょっ!? そこまで言っておいてそれはないっすよ!!」

書記「……役立たず」

先輩「そんなこと言わないでよクール系のかわい子ちゃん! 話は聞かせてもらったってだけで助けるとは言ってないじゃーん」ケラケラ

後輩「本当に先輩はいつもいつもなんなんですか……」ハァ

先輩「だって俺、学校から出ると死んじゃう病気だし」

後輩「あからさまに嘘じゃないっすか!!」


先輩「いやいや、これは本当のことなのよ。マジで。とにかく、そういう場所はどこの高校の奴らにでもちゃんとあるってこと。それがわかれば事態は解決ってことじゃないの~?」

友B「あ! AとCの彼氏!!」

先輩「そんじゃま、俺はこれで! 落ち着いたらまた遊びに来るねん♪ ここはかわい子ちゃんが多いことだし。アデュー♪」タッタッタ

後輩「あ、ちょっと!! まったく……あれ? 会長さんは?」

副会長「……先輩の話の途中で飛び出して行きました」

後輩「なんていうかごめんね?」

友B「とにかく、まずはAとCの彼氏に話を聞かないと!!」

副会長「私は各方面に協力を要請してみます。なにかわかったことがあったらその都度ご連絡します」

会計「じゃあ俺と書記ちゃんも一緒に探すのを手伝うってことで」

書記「……サーチアンドデストロイ」ムフフ

会計「いや、殺しちゃだめっすよ?」

書記「……殺さなくても痛めつける方法はいっぱいある」ニヤッ

会長「怖いっす!!」

副会長「くれぐれも無茶はしないでください。あくまで自分たちは素人であることを忘れないように。いいですね?」

「「「了解!」」」


副会長「……私は嫌な女ですね。こんな状況になってもあの方のことよりも自分のことを優先しようとしてしまうなんて……未熟者とはまさにこのことです」スッ

副会長「悔しいですがこれも会長のため。自分の感情など二の次です」

ピッピッピ……

副会長「……もしもし。お父様でしょうか。ええ、そうです。是非ともお力を貸していただきたくて……はい。そうです」

副会長「ええ、私の大切な人達のためです……」


―――――

生徒会長「くそっ! どこだ!? あいつはどこにいるんだよ!?」


ピリリリリリ……


生徒会長「もしもし?」

友B「会長!? ったく、急に宛もなく飛び出して行くなんてどういうつもりだよ?」

生徒会長「いてもたってもいられなくてさ……」

友B「AとCの彼氏から話を聞いた! あの学校の不良どもに有名なたまり場があるんだよ。ギャルも多分そこだと思う!」

生徒会長「本当か!? 場所は!?」

会計「森の奥の廃工場っす! 隣の高校の近くの森って言ったら分かります?」

書記「……会長の携帯宛に地図データを送った。確認して」

生徒会長「ここから大分近いな……わかった。さっそく行ってみる!」

友B「あたしらもそっちに向かってる! だからあたしらが着くまで無茶すんじゃないよ!!」

生徒会長「……それは約束できないな」

友B「え!? ちょっ、おい会長……」プツッ

生徒会長「しかし、一人で無闇に突っ込んでいっても返り討ちに遭うだけだし……どうしたものか」


「どうすんだよ、この花火……!」

「しょうがないじゃん、キャンプの時に使うはずだったのにキャンプダメんなっちゃったんだから!」


生徒会長「花火……」ニヤッ


――廃工場――


ギャル「あれ……?」

チャラ男「……ひひっ! 目が覚めたかよ?」

ギャル「……ここは?」

チャラ男「この間はお巡りが来てダメになったけど改めてギャルちゃんをいただきにまいりましたー」ニヒヒッ

ギャル「あなたは……あの時の? ……うっ」ヨロッ

チャラ男「おっと、逃げようとしても無駄だぜ? 今では結束バンドっていう便利な道具があるからな!」

ギャル「……こんなとこに連れ込んであたしに何する気?」

チャラ男「なにする気って……そんなの決まってんじゃん。あの時の続きだよ」ニヤニヤ

ギャル「ひっ」

不良A「おい、チャラ男。さっさとやらせろよ」

チャラ男「もうちょっと待ってくださいよ、先輩ぃ」

不良B「お前がこの女さらってやっちまおうって言うから協力してやったんだぞ?」

チャラ男「あれうちのガッコの先輩達。言っておくけどあの人達キレさせっとチョーやべえよ?」

不良C「チャラ男~」

チャラ男「わかってますよ。でも、すぐにやっちまうのなんて味気ないじゃないですか~。こういうのはたっぷりと痛めつけてからに限るってもんすよ」ギャハハ

不良A「相変わらずお前はクズだな! でも嫌いじゃねーぜ、そういうの」

チャラ男「あざーす! そんじゃま、どうしてやろっかな~」ヘラヘラ

ギャル「た、助けて……」

チャラ男「へへへ……はっはっはっはっは!!!」


ギィィィィ………


チャラ男「なんだ?」

不良A「誰か入ってきたのか?」

不良B「俺、見てくるわ」

不良C「いってら~」ヒラヒラ



チャラ男「それでこの男が隠れてたと」

生徒会長「………」

不良A「誰こいつ?」

ギャル(あいつ、なんで……?)

チャラ男「よく見たらお前、ギャルちゃんと同じ学校じゃね? 知ってるこいつ?」

ギャル「し、知らない……あーし、こんな奴知らない」

不良B「おい、お前! なんでこんなところに来てんだよ?」

生徒会長「………」

不良A「なに黙ってんだコラァ!!」ガンッ

不良C「答えられない体にしてやろーか?」ヘラヘラ

生徒会長「ひっ! そ、それだけは勘弁してください!!」ペコペコッ

不良B「オラッ! じゃあ答えろや!」

生徒会長「………な本を」

チャラ男「あん?」

生徒会長「そ、その……ここには……エッチな本をひ、拾いに来たんです……」

不良A「は? なにそれ?」


生徒会長「こ、ここにはですね! 昔から雨が降った日の翌日にエッチな本が捨てられている夢のようなスポットがあってですね! 僕は昔からここに通いつめていたというわけでしてなんていうかその……」アハハ


ギャハハハハハハ!!!!


不良A「なんだよそれ!?」

不良B「今時、エロ本探しにここまで来るとか……チェリーボーイかよ!」

不良C「やばい! ちょーウケる!!」


ギャハハハハハ!!!!


生徒会長「そしたらなにか物音がしたんでどうしたのかなって思ってですね……まさか中でこんなことになってるとは思わなくって……これってつまり……そういうことですよね?」

チャラ男「あ? なにお前? なんか文句でもあるの?」

生徒会長「も、文句だなんてそんな……あるわけないじゃないですか! ただその……こういうのってつまり……」

不良B「グチグチうるせーな! 俺たちはこれからこの女をやっちまうんだよ!」

生徒会長「や、やっちまう……?」

チャラ男「なんだったらお前も加わるか? チェリーボーイ君?」


ギャハハハハ!!!


生徒会長「いやいや! 僕はそんなこと……!」

不良C「だったらさっさと帰りなよ。お前はなにも見ていませんでした。オーケー?」

生徒会長「は、はい! も、もちろんです!!」


モクモクモクモク………


チャラ男「ん? なんだこれ? 煙?」

生徒会長「なんか焦げ臭い……」

ギャル「もしかして……か、火事!?」

不良A「げぇ!? 火事!?」

不良B「やべぇじゃん! 逃げようぜ!!」

不良C「冗談じゃねー!!」

チャラ男「あ! 先輩!! ちょっと待ってくださいよ!!」


ダダダダダダダダ!!!


生徒会長「……ふう」

ギャル「ちょっとあんた! なに落ち着いての!? 火事なんでしょ!? さっさと逃げないと!?」

生徒会長「ああ、多分大丈夫じゃないか? 外で花火が燃えてるだけだし」

ギャル「は、花火?」

生徒会長「こんなところで季節外れの花火なんかやる奴いるんだなー」アハハ

ギャル「このペテン師」

生徒会長「俺だって自分の立場ってもんがある。他校の生徒相手に大立ち回りなんかできないさ。立てるか?」

ギャル「う、うん……ありがと」

生徒会長「気にすんな。いつものことだろ?」

ギャル「いつもの……こと」

生徒会長「くっそ……これ解けないな。悪いが落ち着くまでそのままで頼む」

生徒会長「すぐにここを離れよう。奴らが戻ってくるかもしれない」

ギャル「わかった……」

生徒会長「それと一つだけお前に言っておく」

ギャル「……なに?」

生徒会長「俺はここにエッチな本なんて拾いに来てないからな!」

ギャル「……わかってるよそんなこと」クスッ





ギャル「………」トボトボ

生徒会長「………」トボトボ

ギャル「助けてくれて……ありがとね」

生徒会長「ああ」

ギャル「あの……ごめんね? 私のせいで迷惑かけちゃって」

生徒会長「守るって言ったろ?」

ギャル「……ごめんなさい」

生徒会長「どうしたんだよ? いつもみたいに軽口でも叩いてればいいのに。今日はやけに神妙じゃないか」


ダキッ


生徒会長「え?」

ギャル「ふざけてなんかいられないよ……!!」

ギャル「あいつら本当にやばそうな連中だったし、あんた一人で来ちゃうし……もしかしたら殺されちゃってたかもしれないんだよ……?」グスッ

生徒会長「ギャル……」

ギャル「私はどうなったっていいよ。自分の嘘がそもそもの原因だし……でもそれであんたが傷つくのなんて絶対に嫌」

生徒会長「何言ってんだよ! 俺はお前のことが好きだから……」

ギャル「待って……それ以上は言わないで」


ギャル「ごめん……ごめんね……あの子の言うとおりだった。私が嘘つきだから全部あんたに迷惑かけちゃってる」

生徒会長「だからそんなこと……」

ギャル「……もう限界かな」

生徒会長「限界?」

ギャル「前から思ってたんだけどさ、真面目な生徒会長のあんたと不真面目なギャルのあたし、元々住む世界が違うんだよ」

生徒会長「よく言うよ、お前なんちゃってギャルじゃんか」

ギャル「周りはそうは思ってくれない。元々あたしの嘘から始まったんだもん」

ギャル「あたしは男なら誰でもいいって思っているギャルでビッチ……全部あたしが臆病だからついた嘘だけどそれが今のあたしってこと」

ギャル「全部、全部嘘なんだよ。本当は『ギャル』なんて人間どこにもいない。だけどあたしはその『ギャル』として生きていかなきゃいけない……そうやって自分を守ってきたから」

ギャル「滑稽でしょう? 嘘つきは嘘の中で生きなきゃなんないんだよ」

ギャル「その嘘の世界にあんたはいちゃいけない。あんたにはもっとお似合いの人がいるはずだからさ。あたしはこのまま『ギャル』として周りに嘘をつきながら生きていくよ。だから……」

ギャル「お願いだからもうこれ以上あーしに関わらないで……あーしは一人で大丈夫だから」ニコッ

生徒会長「……おい」


ギャル「ほ、ほら! 副会長さんとか良くない? あの子、絶対あんたに気があると思うよ? その証拠にさっき……」


ペシンッ!


ギャル「痛っ……!?」

生徒会長「馬鹿かお前は?」

ギャル「ば、馬鹿っていきなりなによ!? こっちは真剣に……」

生徒会長「嘘つきだとかどうとかゴチャゴチャゴチャゴチャ理屈並べて……だからお前はなんちゃってギャルなんだよ」

ギャル「はぁ!? あーしはなんちゃってギャルなんかじゃないし!」

生徒会長「その嘘つく時だけ『あーし』とか言うのもやめろ。かまってちゃんか!」

ギャル「ち、違うし! そ、そんなんじゃないし!」

生徒会長「……いいんだよ。別に。お前が嘘つきだろうがなんだろうが」

ギャル「え?」

生徒会長「俺だって生徒会長だ。周りの期待に応えるために色々と嘘だってつくさ。周りが期待する『よくできた生徒会長』ってのになるために」

生徒会長「自分ではやりたくないって思ってることを生徒会長だからって理由で押し込めて、笑顔作って先頭たってってさ……そうしているうちに自分ってどうなんだろうって考えることもあるよ。みんな同じなんだ。みんな周りの期待に答えようとして嘘つきになってるんだよ。お前だけが特別なんじゃない」

ギャル「本当に……?」

生徒会長「ああ。まぁ……俺は自分の役目放り投げてお前をからかいに行ったこともあったけど」アハハ

生徒会長「住む世界が違うなんて言うなよ。俺はお前と一緒の世界がいい。それだけじゃダメか?」

ギャル「で、でもあーしは嘘つきで……それでみんなに迷惑かけちゃって……」

生徒会長「それなら俺が思うギャルって人間を教えてやろうか?」

ギャル「え?」


生徒会長「押しの一手にものすごく弱い」ニヤッ

ギャル「あう……///」カー

生徒会長「ほらな?」

ギャル「そ、そんなこと……ないし」フイッ

生徒会長「嘘じゃなくて本当のお前をさ、これからもっともっとたくさん、俺と一緒に見つけていけばいいじゃん。な?」

ギャル「………」

生徒会長「ど、どうかな……?」

ギャル「そ、それってこ、こここ告白ってやつ?」

生徒会長「男を取っ替え引っ変えするビッチなギャルさんにはそれくらい空気と流れでわかると思うんだけど?」

ギャル「ふ、ふーん! 恋愛経験豊富なあーしに言わせてもらえばもうちょっとムードとかロマンティックにしてもらいたいとこだね!」

生徒会長「そうですか、それはどうもすみませんでしたね」

ギャル「しょ、しょうがないから! しょうがないから……い、いいい一緒にいいいいてあげてもいいかなっててててて……」

生徒会長「落ち着け」ハァ

ギャル「お、落ち着いてるし!!!」カー

生徒会長「わかったわかった」

ギャル「………えへへ」

生徒会長(くそう! 可愛いなこいつ!)





チャラ男「やっぱりだ……やっぱりあいつ逃げてやがった!!」

不良A「おいどういうことだよ! チャラ男! 煙んとこいったら花火しかねぇじゃねぇかよ!!!」

チャラ男「きっとあの男っすよ! あの男が俺たちのこと引っ掛けたんっす!!」

不良B「なめてんな……あの野郎ぶっ殺してやろうぜ」

不良C「へへっ……俺は女より喧嘩の方が楽しみだ」

チャラ男「まだ近くにいるはずっすよ。先輩方、追っかけましょう!!」


副会長「あら? お二人の折角のいい雰囲気に水を差すなんてひどいんじゃないですか?」

チャラ男「あ? なんだお前ら?」

会計「別に名乗るほどの者じゃないっすよ? ただ、あの人たちの協力者っす」

書記「……イエーイ。ピースピース」

友B「あんたら覚悟はいいかい!?」パシッ

チャラ男「俺たちを追いかけてきたってわけか。でもいいのかい? お嬢ちゃん達が住む世界とは違う世界の人たちがここにはいるんだけど?」

不良A「よく見たらこいつら可愛くね?」

不良B「もうこいつらでいいか……」ヘッヘッヘ

不良C「喧嘩だ喧嘩!!」キシシ

会計「ちょっと副会長!? なんかやばそうな展開ですけどいいんっすか? 俺たちだけで大丈夫って言ってましたけど!?」

書記「……戦闘モード開始」

会計「だめだ! 会計がやる気っす! あー! 俺デスクワーク派なのにぃぃ!!」

副会長「あくまで抵抗の姿勢有りということですか……仕方ありませんね……各員、応戦準備!」


特殊部隊「「「「はっ!!」」」」ジャキンッ


不良達「「「「は?」」」」

会計「へ?」


副会長「安心してください。銃と言っても暴徒鎮圧用のゴム弾ですから死ぬことはありません。死ぬほど痛いでしょうけど」ウフフ

隊員「両手を頭の上に組んで伏せろ!」

隊員「これは警告だ。従わなければ撃つ!」

不良A「ちょっと待て! じょ、冗談だろ!?」

副会長「冗談なわけがありません。女性を一人拉致しておいて冗談で済むと思っているのですか?」

不良B「いやいや俺たちはそこのチャラ男にそそのかされて……」

チャラ男「は、はぁ!? 先輩たちだってノリノリだったじゃねーか!!」

不良C「うるせぇ! ぶっ殺すぞ!」

副会長「醜い仲間割れは後でお願いします。それではあなた方を拘束します。誘拐等の諸々の罪で」ニコッ

チャラ男「ま、マジかよ! 俺たちそんなつもりじゃなかったんだって!!」

副会長「弁解の余地はありません。もちろん今回の件はちゃんと警察に突き出すつもりですのでご覚悟ください」

書記「……これぞオーバーキル」フフッ

不良A「ふ、ふざけんな! おい、離せよ!!」

副会長「連れて行ってください。あと諸々の根回しもよろしくお願いしますね?」

隊長「了解しました」


ザッザッザッザ……


友B「え? これで終わり?」


副会長「終わりですよ。後はあの方たちに任せておきましょう」

友B「こっからあたしの八面六臂の大活躍シーンは?」

副会長「あるわけ無いじゃないですか。うちの学校の生徒を危険に合わせるわけにはいきません」

友B「そんなぁ……」ガックシ

会計「しかし、まさか会長じゃなくて副会長がお金持ちポジションだったなんて……あの人たちなんっすか?」

副会長「お父様の私設部隊です。お父様にお願いしたら快く動いてもらえました」

会計(副会長怖えええ!!!)

書記「……鉄の女かと思ったら純金製だった」

会計「面白いこと言うっすね……」ハァ

副会長「さてと、私たちの仕事は終わりました。学校に戻って仕事の続きをしますよ」

会計「ええ!? 今日はもういいじゃないっすか! 俺、もう疲れましたよ!!」

書記「……十分な休息は人間の権利」

副会長「そんなこと言っている場合じゃありません。今日は仕事が終わるまで帰しませんからね?」ニコッ

会計「な、なんで俺たちがそこまで!!」

書記「……意図的な悪意を感じる」

副会長「悪意だなんて……そんなもの無いですよ?」

会計「絶対嘘だ。会長が違う女子の元に走ったのが悔しいからっすよ絶対」

書記「……公的な立場を利用した私的な八つ当たり」

副会長「二人共、あんまり勝手なこと言っていますと私にも考えがありますよ?」ニコッ

会計「さぁ! さっさと帰って仕事仕事!!」

書記「……お仕事楽しい!」

友B「まぁそのなんだ……あんたらも大変なんだね」



プチンッ


生徒会長「……これでよし。大丈夫か?」

ギャル「うん。ちょっと痛いけど大丈夫」

生徒会長「よかった……これで一段落ってとこだな。あー、疲れた」

ギャル「……ねぇ」

生徒会長「なんだ?」

ギャル「……私ね、もうこの格好やめてみようと思うんだ」

生徒会長「そりゃ、いきなりだな。大丈夫なのか? その……女子高生の友達事情ってのは」

ギャル「さらわれる前にね、Bちゃんに全部打ち明けてみたんだ。そしたら『どんなギャルでも友達だ』ってさ……それ聞いてなんか吹っ切れたのかも」

生徒会長「なんだよそれ? じゃあ、さっきまでの俺のセリフって……」ズーン

ギャル「いや、あれも大きかったよ!」

生徒会長「いや気を使わなくていいって……」ズーン

ギャル「もーう!」ダキッ

生徒会長「おっ?」

ギャル「う、嬉しかったんだから。い、一緒に見つけようって言ってくれたこと……」

生徒会長「お前……」

ギャル「これからもよろしくね? 生徒会長さん?」

生徒会長「お前、やっぱりかわいいな」

ギャル「はうあ!!」ボンッ

生徒会長「あ、真っ赤になった」アハハ





――――



後輩「せんぱーい。あの時の誘拐事件、解決したみたいですよ」

先輩「ほう? さらわれた女子は無事だったのか?」

後輩「はい。怪我もなかったみたいで」

先輩「……よし!」

後輩「どこへ行くつもりですか?」

先輩「決まっているだろう! さらわれた女子の所だ。きっとまだ心に深い傷を負っているはず! そこに俺が颯爽と駆けつけて彼女の心の傷を癒してやれば……」グフフ

後輩「あー、やめておいた方がいいと思いますよ?」

先輩「なぜだ?」

後輩「そういうことは彼氏の役目だと思いますから」

先輩「彼……氏?」

後輩「さらわれたギャルさんは助けに行った生徒会長とめでたく付き合うことになりました~」パチパチ

先輩「なぁぁぁにぃぃ!? またしてもか!?」

後輩「ギャルさんはこの一件でギャルでいることをやめて、普通の女子高生に戻りましたとさ」

先輩「ちょっと待て!? それって俺が言っていた見た目ギャル。心は清純のパターンでは? ぬぉぉぉぉ!! マジかぁぁぁ!!!」

後輩「まぁ、安全な学校内で口出しするだけだったあんたと危険を負ってまで助けに行った生徒会長とじゃ月とスッポンですよね!」アハハ

先輩「いや待て待て違うんだ! 俺はこの学校を出ると死ぬ病気を患っていてだな……」

後輩「本当は?」

先輩「不良とかに絡まれたら怖いじゃん。痛いの嫌だし」

後輩「うわっ、最低だこの人……」

先輩「あーん!! 彼女欲しいよぉぉぉぉ!!!」


終わり

といったところで以上です。

前回と同じように後日談を投下して終わります。ありがとうございました。


――後日談――




友A「ギャル、大丈夫かな?」

友C「昨日あんなことがあったばっかりだしね……」

友B「あいつならきっと大丈夫だよ。なにせあたしの親友だ」

友A「あんた達、いつの間にそんな仲になったのよ?」

友C「そんなこと言ったらあたしだってギャルの親友だよ!」

友A「あ、あたしもそういう風に思ってるんだからね!」


ガラガラガラ……


「おい、あれ、あれ見てみろよ……」

「誰だあの美少女?」

「転校生?」


友A「見ない顔だね? 誰だろ?」

友C「あんな子クラスにいた?」

友B「お、きたきた」

黒髪少女「お、おはよう……みんな」


友A「お、おはよう……ございます?」

友C「本日はとてもお日柄もよく……?」

黒髪少女「え? え?」

友A「ちょ、ちょっとC。あの子知り合い?」ヒソッ

友C「知らないよ、あんないいとこのお嬢様みたいな子!」ヒソッ

友B「お前、随分変わったなー、そっちの方がやっぱり似合ってるぞ!」

黒髪少女「そ、そうかな?」
友B「おう、すげーかわいい」

黒髪少女「えへへ……ありがとう。Bちゃんが背中を押してくれたお陰だよ」

友B「そんなことねーって。変わったのはあんたの意思さ」

友A「は?」

友C「へ?」

黒髪少女「えっと、どうしちゃったの二人共……?」

友B「そんな鳩が豆鉄砲食らったような顔してさ、もっと話に入ってこいよ」

友A「待ってごめん、ちょっと頭が混乱してる」

友C「あたしも」

友A「ちょっとB! あんたこの子の知り合い?」ヒソッ

友C「随分親しげそうだけど……がさつなBがなんでこんな子と知り合いなのよ!?」

友B「お前ら何言ってんだ? こいつギャルだぞ?」

友A「この子が……」

友C「ギャル……?」

黒髪少女「やっぱり似合わないかな?」

友B「そんなことねーって! すげー可愛いよ!」


A・C「ええええええええ!!!!」


黒髪少女「そんなに驚くこと!?」

友A「全然違うじゃん!」

友C「これどういうこと!?」

友B「あはは!!」

黒髪少女「やっぱり変なのかな……?」


――生徒会室――


ズラッ!!


生徒会長「……なにこの量?」

副会長「会長がサボった分の仕事です」

会計「お、俺たちはちゃんと全て終わらせたっすよ……」ピクピクッ

書記「……し、死ぬかと思った」ピクピクッ

生徒会長「な、なぁ……手伝ってもらっても……」

副会長「『今日中に』終わらせてくださいね?」

生徒会長「ひゃい……」


コンコン……


副会長「どうぞ」

黒髪少女「失礼します。会長います?」


会計「おっ! 会長、彼女さんのご到着っすよ!」

書記「……らーぶらーぶ」

生徒会長「ああ、お前か……悪い、先帰っててもらえるか? ちょっと仕事が立て込んでてよ」

黒髪少女「そういうことか……だったら私手伝うよ」

生徒会長「いやいいって。お前にそんなことさせるわけにはいかないよ」

黒髪少女「この仕事も私を助けてくれた時のものでしょ? これくらいはやらせてよ。ね?」

生徒会長「お、おう……」

会計「書記ぃ……なんかここ甘ったるい感じがするっすよ」

書記「……スイーツ乙」

生徒会長「じゃあ悪いけどこの資料を……」

副会長「会長。申し訳ありませんがこのお方をお借りしてもよろしいでしょうか?」

生徒会長「へ? じゃあ、俺の仕事は?」

副会長「自分でやってください」

生徒会長「そ、そんなぁ……」

副会長「さぁ、行きましょう」ギュッ

黒髪少女「え? え?」


バタンッ


生徒会長「どうしたんだあいつ?」

会計「やばいっす……女と女のバトルっす」

書記「……この泥棒猫がぁ!!」カッ

生徒会長「なぁ、お前ら仕事手伝ってくんない?」

会計「すんませんっす」

書記「……てめぇでやれ」

生徒会長「……はい」



副会長「………」

黒髪少女「………」

黒髪少女(き、気まずい……!!)

黒髪少女(この間、あんなことがあったからなー! しかも結果的にあいつと付き合うことになっちゃったし……どんなことを言えばいいんだろう!! あああああ!!!)グヌヌヌヌ

副会長「あの、なにを面白い動きをしているんですか?」

黒髪少女「はい!?」

副会長「いえ、さっきから無言で動き回っていましたので声をかけづらかったのですが……」

黒髪少女「あ、はい……」

副会長「………」

黒髪少女「あ、あの……私になんの用かな? もしかしてこの間のこと? いやでもあれは私とあいつなりに結論を出したというかあなた達の邪魔は絶対にしないから安心して欲しいというか……そのあの……」

副会長「……申し訳ありませんでした」

黒髪少女「ええ!?」

副会長「先日はあなたに大変失礼な態度を取ってしまい申し訳ありませんでした。あなたと会長の関係をよく知りもせず身勝手なことを言ってしまったことをここに陳謝いたします」ペコッ

黒髪少女「いや、そんなことされても困るよ!」

副会長「これでは足りませんか?」

黒髪少女「そうじゃなくて! あなたが私にここまでする必要があるのかって話!」

副会長「必要ならあります。謝罪しなければ私はあなたにも会長にも顔向けできません。ひどいことを言って……本当に申し訳ありませんでした」グッ

黒髪少女「……顔を上げてよ、副会長さん」

副会長「………」

黒髪少女「私、あなたに感謝してるんだ。あなたの言葉が無かったら私、本当に変わろうなんて思わなかった」

黒髪少女「自分の嘘が他の誰かを傷つけているなんて思いもしなかった。あなたの言葉が無ければ私は周りに甘えて自分勝手に自分を可愛がってばかりいた……だからありがとね」

副会長「……私は大きな誤解をしていたようです」

黒髪少女「え?」

副会長「私は、以前のあなたのような人はこの学校に必要ないものだと思っていました。この学校の運営を阻害する邪魔者、そんな風に考えていました。それは大きな誤解だったようです」

副会長「私は未熟者ですね、物事を自分の価値観という色眼鏡でしか見れていませんでした。会長に振られるのも……当然のことです」フフッ

黒髪少女「副会長さん……」

副会長「わざわざお呼び立てして申し訳ありませんでした。私はこれで……」



黒髪少女「……ねぇ、私と友達になってくれない?」


副会長「え?」

黒髪少女「ダメかな? 嘘つきな私で良ければだけど」

副会長「……その誘い文句は卑怯ですよ? とても」

黒髪少女「そ、そうかな?」

副会長「でもまぁ、いいでしょう」

黒髪少女「じゃ、じゃあ……」

副会長「こんな……色眼鏡をかけた私でよければ」

黒髪少女「えへへ……」

副会長「やっぱりあなたって……」

黒髪少女「はい?」

副会長「可愛いですね」

黒髪少女「えええ!!!」





生徒会長「………」

会計「会長、盗み聞きは良くないっすよ?」

書記「……サーチアンドデストロイ」

生徒会長「お前らが泥棒猫だ女の戦いだーって言うからだろ?」

会計「すんません。俺らてっきり副会長と彼女さんが取っ組み合いの喧嘩になるもんかと」

書記「……キャットファイトに発展」

生徒会長「まぁ、なんとか丸く収まってよかったよ」

書記「……仕事した方がいい」

生徒会長「わかってるよ……」

会計「今日も帰るの遅くなるっすねー」

生徒会長「しょうがないって……サボった分のつけが回ってきたってことで」

書記「……主に会長のせい」

生徒会長「……すんません」



後日談終わり

以上です。よろしければ感想など書いていただけたら幸いです。

また妄想が貯まりましたら投下していこうと思います。
ありがとうございました!

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